宅建士が債務整理する場合の資格制限や注意事項について

宅建士が債務整理をすると資格を失うと聞いたのですが、本当ですか?


宅建士の方が債務整理をしても資格を失うことはありません。ただし、自己破産をした場合は一定期間、宅地建物取引士の資格制限を受けるため、宅建士として働くことが出来なくなります。
どれくらいの期間資格制限を受けて働けなくなるのでしょうか?


宅地建物取引士として再登録出来るのは、自己破産の免責許可が降りて復権したときになります。復権するまでの平均的な期間は3ヶ月から半年程度です。

ただし、自己破産手続きの状況によっては1年以上も働くことが出来ない可能性もあります。
債務整理を検討する際、資格制限について不安を持つ宅建士が稀にいます。
資格制限を受けてしまうと宅建士として働くことが出来ず、収入がなくなり自己破産後の生活の建て直しが非常に困難になるでしょう。
しかし、資格制限を受けるのは、債務整理の中でも自己破産手続きだけなので安心してください。
任意整理と個人再生は資格制限を受けないため、仕事への影響はありません。
このため、宅建士の方が債務整理を実施する場合には、任意整理や個人再生をおすすめします。
自分自身でどの債務整理方法が最良であるかを判断するのは容易ではないため、最良の選択をするためには無料相談などを利用して弁護士に相談することが重要です。
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- 宅建士が債務整理を行うと資格制限を受けるため、宅地建物取引士の登録が解除され、宅建士として働くことが出来なくなる
- 宅建士が資格制限を受ける期間は平均3ヶ月〜半年程度
- 自己破産をして免責不許可になった場合は復権するまで資格制限を受ける
- 宅建士の方が債務整理を行う場合は資格制限がない任意整理や個人再生を選ぶ
宅建資格は債務整理手続きの種類によっては資格制限を受ける
宅建資格は自己破産によって資格制限を受けるため、制限を受けている間は宅地建物取引士の登録が解除されてしまいます。
つまり、宅地建物取引士は資格制限を受けている間、働くことが出来ません。
一方で、任意整理や個人再生は資格制限がないため、手続きを開始しても宅地建物取引士の登録は解除されることなく、働くことが可能です。
自己破産をした場合は宅建資格が制限される
自己破産の手続きを行うと、手続き中は「破産者」という立場になります。
この破産者になることによって資格制限され、宅地建物取引士の登録が解除されるのです。
宅地建物取引業18条1項には、「破産者で復権を得ないもの」については、宅地建物取引士の登録が出来ないと記載があります。
また、宅地建物取引業18条2項には、宅地建物取引士が自己破産した場合は、自身で登録している都道府県の役所に30日以内に届け出を提出しなければならないと書かれています。
法律違反にならないためにも、宅地建物取引士が自己破産の手続きを開始したらすぐに届け出を行うようにしてください。
宅建資格以外に資格制限される職種
宅建士以外に資格制限される主な職業は以下の表になります。
分類 | 職業名 |
士業 | 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、中小企業診断士等 |
団体役員 | 金融取引業、商工会議所、信用金庫、日本銀行等 |
公職 | 人事院の人事官、教育委員会の教育委員、公証人、公正取引委員、公安委員等 |
他仕事 | 警備員、質屋、貸金業、生命保険募集人、旅行業務取扱管理者、調教師、風俗業管理等 |
弁護士や司法書士、公認会計士といった職種は、破産者になると宅地建物取引士と同様の資格制限を受けるため、復権するまで働くことが出来ません。
一方で、生命保険募集人などは資格制限を受けている間に資格の取得は出来ませんが、すでに資格を持っている場合は保険会社が保険募集人の登録解除の手続きをとらない限り、保険募集人として仕事をすることが可能です。
なお、自己破産の資格制限については自己破産すると職業制限がかかる仕事は?復権するまでの期間と合わせて解説で詳しく解説しています。
自己破産で資格制限された場合復権することで資格制限が解除出来る
前述したように宅地建物取引士の登録は宅建業法によって、「破産者で復権復権とは、破産者の立場から回復することを指します。を得ないもの」は登録が出来ないと定められています。
したがって資格制限の期間は、自己破産の手続きを行って裁判所から免責許可を得て復権するまでです。
ちなみに自己破産の手続き開始から免責が許可されるまでの平均的な期間は、3ヶ月〜半年程度と言われています。
なお、自己破産の制限についは、自己破産の制限から復権するまでの期間はどれぐらいかかるのか?2つの復権方法と合わせて解説で詳しく解説しています。
復権するタイミングは自己破産の手続きによって異なる
破産者から復権するタイミングは自己破産の手続きによって大きく変わってくるため、早く復権したい方は違いを知っておくことが重要です。
手続きごとの復権までの期間については以下の表に記載しています。
手続き名称 | 内容 | 復権までの期間 |
同時廃止事件 | 破産者の財産が少なく、破産手続きの費用を支払える財産すら所有していないケースの手続き | 2ヶ月〜4ヶ月程度 |
少額管財事件 | 管財事件における手続きの負担を減少したもの。利用するためには弁護士に依頼することなどの条件がある | 3ヶ月〜半年程度 |
特定管財事件 | 破産管財人を選任し、選任された破産管財人によって財産の調査処分、債権者の配当まで行う手続き。また、少額管財事件以外の管財事件のこと | 半年〜1年以上 |
少額管財事件については、裁判所によって行っていない裁判所もあるので注意が必要です。
自身がどの手続きになるのかについては、事前に弁護士に相談して確認するようにしてください。
弁護士に依頼することで復権までの時間を短く出来る
弁護士に依頼することで、有利な情報をまとめて申請してくれるため、同時廃止事件として認められやすくなります。
また管財事件になってしまった場合でも、より短時間で復権できる少額管財事件にすることが可能です。
さらに、弁護士に相談することで複雑な自己破産の手続きをスムーズに行ってくれるため、手間や時間が自身で行う場合よりもかかりません。
ただし借金問題に強い弁護士でなければ手続きがスムーズにいかない可能性があるので、借金問題に強い弁護士がいる法律事務所に依頼するようにしてください。
自己破産の免責不許可事由に該当した場合は復権まで10年かかるケースもある
自己破産の手続きで免責許可が得られないケースがあるため、注意が必要です。
免責不許可事由に該当して免責許可が得られない場合は、破産者から復権出来ないため、最大で10年間破産者の立場になってしまいます。
ただしそのような場合でも、借金を完済することや個人再生の手続きをすることで復権が可能です。
免責不許可になった場合や免責不許可事由に該当する可能性があると感じているなら、弁護士に相談するようにしてください。
自己破産の免責不許可事由は借金や過去に自己破産をしているなどがある
免責不許可事由に当たるものは以下の表の内容です。
免責不許可事由 | 法律 | 内容 |
不当な破産財団価値を減少する行為 | 破産法第252条第1項 | 自己破産の手続きを開始する前や手続き中に財産を隠す行為や壊す行為、第三者に譲る行為を行うこと |
不利益な条件での責務負担行為 | 破産法第252条第2項 | 破産することを前提で借金をする行為 |
偏頗弁済に該当する行為 | 破産法第252条第3項 | 債権者を平等に扱わず特定の債権者を優先して返済する行為等 |
借金の原因が浪費や賭博に該当する | 破産法第252条第4項 | パチンコやキャバクラ通いを過度に行い、借金したケース |
詐術を利用して信用取引をする行為 | 破産法第252条第5項 | 支払い能力がないにもかかわらず、金融機関などを騙して借り入れを行う行為等 |
帳簿隠蔽等の行為 | 破産法第252条第6項 | 財産や仕事などに関係する書類を隠蔽や偽造する行為 |
虚偽の債権者名簿を提出する行為 | 破産法第252条第7項 | 故意に架空の債権者名を名簿に記載したり、親しい友人や親からの借金をしているにもかかわらず記載しない等 |
調査に協力しない行為 | 破産法第252条第8項 | 裁判所からの質問に回答しないことや虚偽の回答をする行為 |
管財業務を妨害する行為 | 破産法第252条第9項 | 破産管財人との面談を行わない等の業務がスムーズに出来ないようにする行為 |
過去7年間に自己破産している | 破産法第252条第10項 | 過去7年間で自己破産や個人再生の免責許可を得ているケース |
破産法上の義務に違反する行為 | 破産法第252条第11項 | 財産を隠すなどして破産の手続きに非協力的な行為をしたケース |
ただし、上記のケースでも裁判所の裁量免責裁量免責とは、裁判官が生活の再建のために免責許可を出してもよいと判断したときに、免責不許可事由であっても免責許可を得ることが出来る制度です。によって免責が許可されるケースがあります。
必ずしも免責が許可されると保証されているわけではないため、弁護士に相談するようにしてください。
相談することで裁量免責によって免責許可を得られる可能性があがります。
宅建業を自身で行っている場合は復権するまで事業の継続が出来ない
宅建業を経営している方が自己破産を行った場合は、宅建業を行うために必要な宅建業免許が取り消しになります。
その根拠は、宅建業法第66条で「破産者で復権を得ないもの」に該当する場合免許が取り消されると記載されているためです。
さらに宅建業法5条には、破産者で復権を得ないものには免許を認めてはならないと記載されています。
こういった理由から自己破産を行った場合は、復権後に免許を得るまで事業をすることが出来ません。
自己破産の手続き中でも宅建試験は受けることが出来る
資格制限は宅地建物取引士の登録のみに影響があるもののため、試験は受けることは可能です。
ただし宅地建物取引士の登録が復権するまで出来ないため、合格した場合は登録時期に注意が必要です。
ちなみに、任意整理や個人再生の場合も、資格制限はないため宅建の試験を受験することが出来ます。
宅建資格の制限を受けたくないなら任意整理か個人再生を選ぶ
債務整理によって宅地建物取引士の登録が解除されたくないなら自己破産以外の債務整理の方法を選ぶことをおすすめします。
ただし任意整理と個人再生のどちらの方法も自己破産と違って、借金の返済義務が免除されるわけではありません。
借金の一部を返済する必要があるため、どちらの手続きを行うにも一定の支払い能力が必要です。
任意整理は宅建資格への影響はない
任意整理は債権者と交渉して返済期限や利息の減額などを行う債務整理の手続きです。
特徴としては、借金の大幅な減額が出来ませんが、他の債務整理の手続きよりもデメリットが少ないことが挙げられます。
また宅地建物取引士が任意整理を行っても資格制限はありません。
官報に記載されないことや裁判所の手続きも必要ないため、会社に知られる可能性も非常に低いです。
上記の理由から任意整理の手続きをしても、宅地建物取引士の仕事への影響は基本的にないと言えます。
任意整理は自己破産や個人再生よりもデメリットが少ない
任意整理の主なデメリットは、次の3つです。
- 債務者と債権者が和解しなければ任意整理が行えないこと
- 借金を大幅に減額出来る手続きではないためある程度の支払い能力が必要
- 信用情報機関(ブラックリスト)に事故情報が5年間登録される
上記のようなデメリットがあるものの、他の債務整理の手続きよりもデメリットは圧倒的に少ないため、任意整理を行って返済出来るなら任意整理を選ぶようにしてください。
なお、任意整理については【任意整理のメリット・デメリット】手軽な費用で財産を処分されずに減額可能!元本が残ることには注意で詳しく解説しています。
個人再生も宅建資格への影響はほとんどない
個人再生は借金を大幅に減額出来る債務整理の手続きです。
特徴としては、任意整理よりも借金を減額出来ることや、住宅ローン特則という制度を活用して自宅を手放さないことが可能なことが挙げられます。
任意整理よりも借金の減額幅が大きいため、任意整理で解決出来ない方は個人再生がおすすめです。
また、個人再生にも資格制限はないため、宅地建物取引士の仕事への影響はほとんどありません。
ただし、任意整理と違い官報に記載されるため、会社に知られる可能性はあります。
とはいえ会社に知られても仕事をクビにされる心配はありませんので、安心してください。
なお、個人再生については借金を1/5に減額し住宅も残せる個人再生とは?メリット・デメリットや詳しい手続きについて解説でも分かりやすく説明してあるので、あわせて参照ください。
個人再生は任意整理以上のデメリットがある
個人再生は任意整理よりもデメリットが多く、主なデメリットは以下の4つです。
- ブラックリストに5〜10年登録される
- 一定以上の資産を持てない
- 官報に掲載される
- 手続きが複雑なため弁護士への依頼費用が高額
任意整理との大きな違いの一つがブラックリストの掲載期間です。
ブラックリストに登録されるとクレジットカードやカードローン、銀行の融資などの審査が通らないため、利用することが出来ません。
そのため不便な生活をすることになります。
このように、個人再生は大幅に借金が減額出来るメリットもありますが、デメリットも多いです。
ただし資格制限がないため、任意整理で借金問題を解決出来なさそうなら、個人再生を行うようにしてください。
自己破産を行う宅建士が会社に勤めているのなら事前に職場に相談する
宅建士で会社に勤めている場合は、事前に会社に相談することで解雇が避けられる可能性があります。
会社によっては、部署を変えるなどの対処をしてくれるためです。
例えば、宅建業を行っている不動産会社なら、事務職など宅地建物取引士以外の職種に変えてもらってください。
会社に復権の時期や手続きが問題なく進むことを説明しておくことで、会社もリスク回避が出来ますし、人材の流出を防ぐことが可能です。
ただしどの会社も上記のような対応をとってくれるかはわかりません。
会社に相談するときは、解雇後の対応を考えておくことも重要なポイントです。
債務整理をおこなうなら弁護士に相談
債務整理の手続きは複雑で簡単には出来ません。
また、どの方法が宅建士にとって最適な債務整理の方法かは素人では非常にわかりにくいです。
そのため、債務整理を検討しているのなら、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士事務所に相談することで債務整理の手間が減り、最適な債務整理の方法についてのアドバイスをしてくれるなどの多くのメリットを得られるはずです。
まとめ
宅建士の方が自己破産を行うと資格制限を受けるため、宅建士の登録が一時的に解除されてしまいます。
そのため、資格制限が解除されて宅建士の再登録が終わるまで宅建士として働くことは出来ません。
資格制限が解除されて働けるようになるまでの期間は、自己破産の免責許可決定がされ復権するまでの期間で、平均3ヶ月〜半年程度かかります。
こういった事態を防ぐために、宅建士の方は資格制限の無い個人再生や任意整理で借金問題を解決することがおすすめです。
とはいえ、自己破産でしか解決出来ないケースもあります。
そういった判断を素人が正確にするのは非常に困難です。
自身にとって最良の形で債務整理をするためにも、専門家である弁護士に相談するようにしてください。
宅建士が債務整理をするときに知っておくべきポイントは?
債務整理の手続きである任意整理や個人再生、自己破産で資格制限があるのは自己破産だけです。そのため宅地建物取引士が自己破産した場合は、宅建資格が制限されるので、制限が解除されるまで宅地建物取引士として働くことが出来ません。
宅建士が自己破産したことによって受ける資格制限の期間は、一般的に3ヶ月〜半年程度です。ただし、自己破産の手続きによって期間が異なります。弁護士に依頼することで制限期間を短く出来る可能性が高まるので、弁護士に依頼して自己破産を行うようにしてください。
自己破産の免責許可が不許可になった場合は、他の方法で免責許可を得るまで資格制限が解除されることがありません。そのため、弁護士に相談して今後の対応についてアドバイスをもらうことが重要です。
宅建士の方が任意整理と個人再生を行っても、仕事に影響が出ることはありません。そのため、宅建士の方は自己破産を避ける方が無難です。どうしても自己破産でしか解決できない場合は、事前に会社に相談するようにしてください。
資格制限は宅地建物取引士の登録のみに影響があるもののため、試験は受けることは可能です。ただし宅地建物取引士の登録が復権するまで出来ないため、合格した場合は登録時期に注意が必要です。

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