債務整理すると抵当権付きの住宅はどのように扱われる?

借金の返済が苦しく債務整理を考えているのですが、抵当権付きの不動産があります。その場合、何か影響はありますか?


任意整理や個人再生であれば、抵当権がついている不動産でも手放さずに手続きできる可能性が高いです。しかし、自己破産の場合は抵当権がついている不動産は原則競売となります。
わかりました。借金が500万円を超えているので個人再生を希望します。不動産は共有不動産で、夫と持分が1/2ずつなのですがそれでも大丈夫ですか?


共有名義の不動産でも、住宅を残したまま個人再生が可能です。しかし、抵当権の名義などにもよるので、一度登記簿のコピーや借金の状況がわかる資料を持って相談にいらしてください。
債務整理を検討している方で、抵当権付きの不動産を所有しているケースは多いです。
その場合、債務整理が抵当権に及ぼす影響が気になりますよね。
債務整理の中でも自己破産を選択した場合、抵当権付きの不動産は差押えとなるのが原則です。
そのため、抵当権付きの不動産を残したい場合は、任意整理や個人再生を依頼することをおすすめします。
ただし実際に債務整理した場合、抵当権付きの不動産を確実に残せるかどうかは個々の状況などによりさまざまです。
抵当権付きの不動産を所有している場合は、債務整理に詳しい法律事務所とよく相談のうえ、どの方法を選択するのかしっかりと検討しましょう。
>>【相談無料】当サイトおすすめ借金問題の解決に力を入れる弁護士はこちら

- 任意整理か個人再生なら、抵当権付きの不動産を残して債務整理ができる。
- 個人再生で住宅が残せる要件は複雑なため、弁護士に相談しよう。
- 金融機関へ相談すれば、ローンの返済条件を変更してくれる可能性もある。
債務整理をすると抵当権付きの不動産はどうなる?
前の項目でも述べましたが、債務整理が抵当権付きの不動産に及ぼす影響は、選択する手続きによって異なります。
債務整理には、以下の3つの方法があります。
- 任意整理・・・将来分の利息カットを債権者に交渉する
- 自己破産・・・一定価値以上の財産を手放して債務を0にする
- 個人再生・・・借金総額を1/5程度に圧縮する
それぞれの手続きが抵当権に及ぼす影響を、詳しくお伝えします。
任意整理であれば抵当権付きの不動産に影響なく手続き可能
任意整理は、手続きする債務を選ぶことができます。
そのため、抵当権付きの不動産を手続きから外せば、影響なく手続きが可能です。
逆に、抵当権が付いている不動産を任意整理するのは難しいといえます。
なぜなら、債権者は抵当権が付いている不動産を競売にかければ債権を回収できるので、任意整理の交渉に応じるメリットがないからです。
もしも、抵当権のついている不動産以外の債務を任意整理すれば借金や住宅ローンの返済が継続可能であれば、任意整理を選択するのがよいでしょう。
任意整理のさらに詳しい要件については、以下の記事を参考にしてください。
自己破産で抵当権付きの不動産は競売となる
自己破産時に抵当権が付いている財産は、その抵当権を持っている債権者が競売を実行して優先的に返済を受けることが認められています。
そのため、自己破産をすると抵当権が付いている不動産は競売となるのが原則です。
また、自己破産ではすべての債務が手続きの対象となるので、任意整理のように抵当権のついている債務を手続きから外すことはできません。
自己破産時に抵当権のついていない住宅を残せるかどうかは、住宅の価値や裁判所の判断よります。
ちなみに、抵当権は住宅ローンの返済が終わっていても抵当権抹消登記をしないと外せません。
住宅ローンの返済が終わっている住宅がある場合は、自己破産の依頼前に法務局で抵当権が外れているか確認しておくとよいでしょう。
自己破産の詳しい要件については、以下の記事を参考にしてください。
不動産の連帯保証人が一括請求を受ける
自己破産をすると、返済が残っている債務に連帯保証人が設定されている場合は、連帯保証人が一括請求を受けます。
連帯保証人に返済能力がないと、連帯保証人へ財産の処分や自宅の競売が求められます。
それでも返済が難しい場合は、連帯保証人も自己破産を検討しなければなりません。
住宅ローンの返済が難しくなった場合は、まず任意売却を検討するとよいでしょう。
住宅ローン以外にも借金があり、家計を圧迫している場合は自己破産以外の方法による債務整理であれば、連帯保証人に迷惑をかけずに解決できる可能性があります。
まずは一度、弁護士へ相談してみてください。
個人再生は条件次第で抵当権付き不動産を残して手続き可能
個人再生は借金総額を1/5程度に圧縮し、再生計画に基づいて残債を原則3年で返済していく手続きです。
再生計画とは、個人再生において裁判所に認可を受けた返済計画のことです。
個人再生でも、自己破産と同様にすべての債務が手続きの対象となります。
ただし「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用すると、住宅ローンが残っている住宅を残して手続きができます。
個人再生において住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できるかどうかは、不動産の状態や住宅ローンの返済状況といった条件次第です。
住宅資金特別条項については次の項目で詳しくお伝えしますが、自身の住宅が利用可能かどうかは弁護士に相談するのが確実です。
個人再生の詳しい要件については、以下の記事を参考にしてください。
個人再生で不動産を残せる「住宅資金特別条項」の主な適用条件
個人再生であれば、抵当権が付いている住宅を残しつつ借金総額を大幅に圧縮できます。
ただし、住宅は無条件に残せるわけではなく「住宅資金特別条項」を満たさなければなりません。
そこでこの項目では、個人再生における「住宅資金特別条項」についてお伝えします。
自身の住宅が住宅資金特別条項の要件を満たしているかを個人で判断するのは難しいため、弁護士に相談するとよいでしょう。
債務者が住宅を所有し住んでいる
住宅資金特別条項が適用される住宅は、個人再生を申立てた本人(再生債務者)が所有し住んでいることが条件です。
そのため、別荘や仕事用の住宅などは居住用とはみなされず、適用外となる可能性が高くなります。
現在の所有者が本人であれば、相続によって取得した住宅でも問題ありません。
また、共有不動産の場合は抵当権が再生債務者の名義で設定してあれば、住宅資金特別条項を利用できます。
一 住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。
引用元:「民事再生法第196条」
ローンが住宅の建設または購入に必要な資金で分割払いの契約であること
住宅資金特別条項の適用は、住宅ローンが住宅を建設または購入するために必要な資金で、分割払いの契約であることが条件の1つです。
住宅ローンを組む際に、諸費用ローンも同時に組んでいる場合があります。
諸費用ローンに関しては、使用した用途によって住宅資金特別条項が認められるかが異なります。
例えば、不動産仲介手数料や各種税金など住宅の取得に不可欠な使用用途であれば、諸費用ローンも住宅資金特別条項の対象となる可能性が高いです。
しかし、必要以上に高価な家具や家電などに使用していると、住宅資金特別条項は認められない可能性が高くなります。
諸費用ローンに関しては、最終的に裁判所によって、住宅ローンの総額との比較や使用用途などから総合的に判断されます。
三 住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。
引用元:「民事再生法第196条」
不動産に住宅ローン以外の借入の抵当権が設定されていない
不動産には、住宅ローン以外にもカードローンなどの抵当権が第2順位で設定されていることがあります。
その場合、住宅資金特別条項は適用できません。
なぜなら、第2順位の抵当権者が抵当権を実行してしまうと、住宅は差押えとなり再生計画も変更が必要だからです。
また、住宅に税金の差押登記がされている場合もあります。
その場合、再生計画において税金の滞納分に関して支払い方法の合意があれば、住宅資金特別条項が認められる可能性があります。
抵当権の詳細は、法務局で登記簿謄本を取得して確認が可能です。
オンラインでの申請も受け付けているので、利用するとよいでしょう。
住宅ローンの代位弁済がされて6ヶ月以上経過していない
代位弁済とは、住宅ローンを長期滞納した場合に保証会社が債務者に代わって住宅ローンの返済をすることです。
代位弁済がおこなわれると「代位弁済通知」が届き、保証会社に対して肩代わりしてもらった住宅ローンを返済しなければなりません。
また、代位弁済通知の内容は一括請求であることがほとんどで、返済できないと住宅は差押となるのが一般的です。
そして、代位弁済がされてから6ヶ月以上経過すると、住宅資金特別条項は利用できなくなります。
2 保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
抵当権付きの不動産を残すために債務整理前にすべきこと
ここまでお伝えしたように、抵当権付きの住宅を残して債務整理するにはさまざまな要件を満たす必要があります。
また、債務整理をすると5~10年は新たなローンを組めなくなったり、子どもの奨学金の連帯保証人になれないなどのデメリットもあります。
この項目では、抵当権付きの不動産を残すために、債務整理前にできることをお伝えするので参考にしてください。
金融機関に返済計画の変更を交渉する
住宅ローンの返済は、20~35年程に及ぶのが一般的です。
そのため、途中で経済状況が変わり計画通りの返済ができなくなってしまうことは珍しくありません。
その場合、借入先の金融機関に相談すると、返済計画の変更が認められる可能性があります。
具体的に認められる返済計画の変更例は、以下のとおりです。
- 返済期間を延長して月々の返済額を下げる
- 一定期間だけ、元金の支払を猶予してもらい利息のみ支払う
- 一定期間だけ返済額を下げる
計画通りに返済を続けるのが難しいとわかったら、すぐに借入先の金融機関へ相談しましょう。
その際は、給与明細など返済が難しい根拠となる資料を持参すると、交渉がスムーズに進みやすいです。
相談をせずに滞納してしまうと、のちに返済計画の変更や支払猶予が認めてもらいにくくなってしまいます。
住宅ローンの減額については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
金融機関へ担保権消滅請求をする
担保権消滅請求とは、抵当権付きの不動産を買取った人が金融機関へ抵当権の消滅を請求することです。
担保権消滅請求をするためには、買取った人が抵当権を消滅させる評価額を金融機関へ提案し、支払います。
金融機関がこの評価額に納得しない場合は、不動産を競売にかける可能性が高いです。
そのため、評価額は競売での落札予想価格よりも高めに設定すると、交渉が成立しやすいです。
親類や知人に買取を交渉する
親類や知人で依頼できる人がいるならば、買取を交渉するのも1つの手段です。
親類や知人に買取ってもらった後は、家賃を支払って住宅に住み続けることができます。
売却価格は個人間で自由に決めることができますが、相場よりも大幅に低い価格を設定すると、贈与とみなされる可能性があります。
贈与とみなされると、買い手に贈与税が課せられるので注意が必要です。
また、親類や知人に買取ってもらう場合、買い手は住宅ローンを組めず一括での購入となるのが一般的です。
そのため、資金に余裕のある親類や知人がいない場合は、難しい手段であるといえます。
まとめ
任意整理や個人再生であれば、抵当権付きの住宅を残したまま債務整理をすることは可能です。
しかし、個人再生の場合はとくに、さまざまな要件を満たしている必要があります。
個人再生において、抵当権付きの住宅を残せる条件は複雑であるため、迷ったら弁護士に相談してみるとよいでしょう。
当サイトでも紹介していますが、無料相談を実施している法律事務所が多くあります。
相談の際は、借金の借入状況と収入がわかる資料と、登記簿謄本を持参するとよいでしょう。
登記簿謄本は、法務局に出向いても取得できますし、オンラインでも取得申請を受け付けています。
債務整理と抵当権についてよくある質問
債務整理とは、債権者との交渉や公的制度によって、借金を減額・免除する方法です。弁護士に債務整理を依頼することで、支払督促を止めることもできます。
抵当権とは、不動産などを担保にする権利のことです。債権者が債務不履行になったとき、抵当権者である債権者は、抵当権が設定された資産を優先して差押えることができます。
債務整理の中でも自己破産を選択した場合、抵当権付きの不動産は差押えとなるのが原則です。ただし、任意整理や個人再生を選択した場合、抵当権付きの不動産でも残せる可能性があります。
債権者と交渉して利子の減額をおこなうのが「任意整理」、財産を手放す代わりに借金を全額免除するのが「自己破産」、家など一部の財産を残しつつ借金を1/5~1/10まで減らすのが「個人再生」です。
当サイトで、債務整理の実績が豊富で借金問題に強い弁護士を紹介しています。どの弁護士も親身になって相談にのってもらえるので、ぜひ参考にしてください。→【相談無料】厳選された「債務整理に力を入れる弁護士」はこちら

債務整理の費用はどれくらいかかるものなのか?
借金の返済に追われ、債務整理を検討している人は多いと思います。 しかし、債務整理の費用に不安があり、なかなか債務整理に踏み出せないという人も多いのではないでしょうか。 確かに、債務整理には裁判所や弁護士の費用がかかります。 具体的には、任意…

債務整理すべきタイミングは?10つの基準を紹介
借金の返済が苦しくても、なんとか返済できると思って債務整理をためらう方は意外と多くいます。 債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」などの方法がありますが、タイミングを誤るとその選択肢はどんどん狭まってしまいます。 債務整理は返済が…

債務整理はどのような流れで行われる?必要な書類、期間も合わせて解説
債務整理とは、国に認められた借金減額の手段です。 しかし、ただ申請をすればよいというものではなく、定められた手順に従って審査を受けたり必要書類の準備が必要です。 そのため、まずはそれぞれの債務整理手続きの流れについて理解し、かかる期間につい…