債務整理ではペットはどう扱われる?ローン払いの場合はどうなる?

債務整理手続きを行っても、ペットと一緒にいることはできますか?


財産の保有が制限される自己破産や個人再生を行っても基本的にペットを手放すことはありません。
ただしペットが原因で多額の借金を作ってしまった場合やペットローンの残債が残っている場合は手放すことになるケースがあります。また自己破産の場合は手元に残せる財産が少なく、自宅を手放す必要があるため、飼う場所の問題や経済的な理由からペットを手放すことになるケースも少なくありません。
安心しました。確かに債務整理後にペットを飼う場所は不安ですね。債務整理をしても自宅を残せる方法はあるのですか?


自身に支払い能力があるなら、任意整理で住宅ローンを整理の対象から外すことで残すことが可能です。
また支払い能力が乏しい場合でも、個人再生の「住宅ローン特則」を利用することでペットを飼うための自宅を手元に残せます。
財産の保有が制限されている個人再生や自己破産の場合でも、ペットを売却しても価値があまりないため基本的に手放すことはありません。
ただし、ペットが原因で多額の借金をしてしまった場合やペットローンの残債が残っている場合は、手放さなくてはいけない可能性があります。
一方で任意整理の場合は整理する債務を自由に選ぶことができるため、ペットローンを整理対象から外すことでペットを手放すことはありません。
ただし、任意整理は他の債務整理よりも債務の減額割合が低いといったデメリットがあります。
まずは弁護士へ相談して、自身の状況に合ったアドバイスをもらうとよいでしょう。当サイトでは、無料相談可能な法律事務所を多く紹介していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

- ペットは市場価値がないことが多いため、個人再生や自己破産をしても手放す必要はない。
ただしペットが原因で債務整理をした場合は手放さないといけないケースも稀にある。 - ペットローンの残債が残っている状況で債務整理をすると、ペットを引きあげられる可能性がある。
ただし任意整理ではペットローンを整理の対象から外すことで引きあげられることはない。 - 自己破産を行ったことで自宅が差し押さえされ、ペットの飼う場所に困って手放すケースは珍しくない。
支払い能力が乏しく任意整理で借金が解決できない場合は、個人再生の「住宅ローン特則」を利用することで、自宅を残してペットを飼い続けることができる。
ペットは差し押さえられて手放すケースは非常に稀
ペットは差押禁止財産に含まれないため、差し押さえされる可能性があります。
しかし実際には差し押さえされて手放すケースは非常に稀です。
例えば任意整理の場合は財産を手放す必要がないため、ペットを手放す必要がありません。
また個人再生や自己破産の場合でも、財産を処分する必要がありますがペットは市場価値がないことが多いため、差し押さえされる可能性は低いです。
このように債務整理の手続きが違っても、ペットを手放す可能性は低いといえます。
債務整理をしてもペットを手放さなくても良い理由
債務整理をしてもペットを手放すケースが稀な理由は以下の2つです。
1つ目の理由はペットの売却が困難であることが挙げられます。
犬や猫の市場価値はそれほど高くならないため、資産価値はほとんどありません。そのため差し押さえしたとしても、売却することが非常に困難です。
特に年老いたペットに関しては、売却先を見つけることすら難しいので、差し押さえされることは基本的にありません。
2つ目の理由は、差し押さえてからの管理が手間なうえにリスクがあることです。
ペットは動物であるため餌の与える必要があり餌代がかかります。
さらに糞尿の処理も必要で非常に手間です。
また生き物であるため、病気や死亡するリスクもあります。
こういった理由からペットは差し押さえられる可能性が低いです。
債務整理が原因でペットを手放さないといけない例外
基本的にペットは債務整理によって手放さないといけなくなることはありませんが、手放す必要がある例外的なケースがあります。
それは以下の2つです。
- ペットが原因で債務整理をした場合で手放すケース
- ペットローンを債務整理の対象にするとローン会社に引きあげられるケース
それぞれについて説明します。
ペットが原因で債務整理をした場合は手放さないといけない可能性がある
ペットが原因で債務整理をした場合は、ペットを手放さないといけなくなる可能性が高いです。
特に以下のようなケースでは、ペットを手放す可能性があります。
- 多額の餌代を使っている場合
- トリミングやペットグッズに多額の資金を使用している場合
- 数百万円するような高額なペットを購入している場合
上記のようなケースではペットが原因で借金をしているため、ペットを手放さないと根本的に解決できないと見なされます。
またペットが原因で借金をしているケースで自己破産をする場合は、裁判所から「浪費」とみなされる可能性があるため注意が必要です。
浪費と判断されると「免責不許可事由」に該当します。
免責不許可事由とは借金の免責が認められない理由のことです。
そのため自己破産の手続きをしても、借金を免責することができません。
一方で個人再生は裁判所に浪費と判断されたとしても、再生計画案が不認可になることはないとされています。
ペットローンを債務整理の対象にするとローン会社に引きあげられる可能性がある
ペットをペットローンで購入して残債が残っている場合に債務整理をすると、信販会社によってペットが引きあげられる可能性があります。
ペットローンには、所有権留保がついているケースが多いためです。
所有権留保とは、分割支払いが終わるまで所有権が信販会社に留保される決まりのことを指します。
ただし実際にペットが引きあげられることはほとんどありません。
先述した「餌代や健康管理などの管理コストがかかる」ことや「売却金額があまり見込めない」などのデメリットが大きいからです。
しかし販売資格が必要なく高額での売却が見込める錦鯉などの場合は、引きあげられる可能性が比較的高くなります。
ペットではなく家畜の場合は処分される
牛や豚、鶏を飼っている場合は、これらの動物が家畜かペットかによって対応が違います。
家畜の場合は財産とみなされて換価処分される可能性が高いです。
一方でペットは前述のとおり、処分される可能性はほとんどありません。
家畜とペットの違いとは飼育目的の違いです。
家畜は将来的に食肉などに利用するために処分や売却することを前提で飼育している動物のことを指します。
反面、ペットは愛玩を目的として人間と一緒に暮らしている動物のことです。
一般的に家畜用の動物である牛や豚、鶏の場合でも、裁判所にペットと認められると処分される可能性は低くなります。
ただし、家畜を処分されたくないからと言って、家畜をペットと偽ることは危険です。
家畜をペットと偽った場合には詐欺罪に問われる可能性があります。
自己破産した場合は家を手放す必要がありペットと一緒に住めなくなって手放すケースが多い
自己破産をしても差し押さえされてペットを手放す可能性は非常に低いです。
ただし自己破産によって自宅が処分されることでペットを飼う場所に困り、ペットを手放すケースは少なくありません。
また飼うと費用がかかるペットを、資金不足のために手放すケースもあります。
自己破産の場合は、99万円以下の現金などの必要最低限の財産しか手元に残すことができないため、自己破産直後はペットを飼う余裕がない可能性が高いです。
自己破産をしてもペットを手放さないためには、親族や友人に一時的に預かってもらうなどの対策が必要になります。
債務整理をしてペットを手放さないようにするポイント
債務整理でペットを手放さないようにするためには、自己破産以外の手続きを行う必要があります。
- 任意整理でペットローン以外の借金を整理する
- 個人再生で住宅を残すようにする
自己破産は前述のとおりペットを手放すことになる可能性が高いため、ペットを手元に残しておきたいならおすすめしません。
任意整理でペットローン以外の借金を整理する
任意整理は整理する債務を選択できる債務整理です。選択した債権者と直接交渉して、利息の減額や元金の減額を行います。
そのためペットローンの残債だけを任意整理の対象から外すことが可能です。
対象から外すことでペットが引きあげられる可能性がなくなり、ペットを手元に残しておくことができます。
ただしペットローンを整理対象から外すため、任意整理後もペットローンの残債を支払い続けることが必要です。
支払いを滞納してしまうと最悪の場合、手元に残すことができたペットを引きあげられる可能性があります。
こういった事態に陥らないためにも、自分の支払い能力を把握して、支払い能力に見合った債務整理を行うことが重要です。
任意整理は債務の減額が個人再生ほど期待できないなどのデメリットがある
任意整理のデメリットは以下の3つです
- 債権者の合意がないと任意整理できない
- 個人再生や自己破産ほど債務の減額が期待できない
- 信用情報機関(ブラックリスト)に登録される
上記に記載のあるように債務の減額が期待できないため、支払い能力の乏しい場合は他の債務整理を選ぶことが重要です。
なお、任意整理のメリット・デメリットについては、「【任意整理のメリット・デメリット】手軽な費用で財産処分されず減額可能!元本が残ることは注意」で詳細に解説しています。
借金問題が任意整理では解決しない場合は個人再生を利用し住宅を残すようにする
支払い能力が乏しく任意整理で解決できない場合は、個人再生を利用して住宅を残すようにしてください。
そうすることで自宅がなくならないため、ペットが手元に残っても飼う場所に困ることがありません。
個人再生には、「住宅ローン特則」という制度があり、この制度を利用することで住宅ローンを整理の対象から外すことができます。
住宅ローン特則の目的は生活の基盤である住宅を手元に残すことで、個人再生後の迅速な生活の建て直しにつなげることです。
自身の支払い能力が乏しく、自宅がなくなるとペットを飼うことができない場合は、個人再生を検討してみてください。
個人再生における住宅ローン特則の判断は個人では難しいため、収入や借入、住宅ローン残債のわかる資料を持って弁護士へ相談するとよいでしょう。
個人再生で住宅を手元に残すためには住宅ローン特則の利用条件を満たす必要がある
非常に大きなメリットがある住宅ローン特則ですが、利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 住宅が個人再生を行う本人の所有物であり、居住していること
- 不動産の購入に必要な資金を分割払いにしていること(住宅ローンであること)
- 住宅の床面積の半分以上が住居用であること
- 他の借金の抵当権がないこと
- 保証会社の代位弁済から6ヶ月以上経過していないこと
- 税金を滞納していないこと
住宅ローン特則の利用を検討する場合は、上記の条件を満たしているかを確認するようにしてください。
住宅ローンを滞納していた場合は保証会社の代位弁済から6ヶ月以上経過していなければ住宅ローン特則を利用できる
住宅ローンを滞納していたとしても、住宅ローン特則は利用できます。
ただし保証会社の代位弁済から6ヶ月以上経過していないことが利用するための条件です。
代位弁済とは保証会社が債務者にかわりに銀行にローンの残高を支払うことを指し、滞納後3ヶ月程度で行われます。
つまり滞納してから9ヶ月程度は、住宅ローン特則が利用可能です。
個人再生は任意整理以上のデメリットがある
個人再生は任意整理よりも債務を減額できるうえに、自己破産と違って自宅を手元に残すことができるメリットの大きい債務整理手続きです。
その一方で、一定以上の資産が持てないなどのデメリットが任意整理よりも多くあります。
個人再生の主なデメリットは以下の4つが挙げられます。
- ブラックリストに5〜10年登録されるためクレジットカードや住宅ローンなどが利用できない
- 一定以上の資産を持てない
- 官報に掲載されるため周囲にバレるリスクがある
- 弁護士への依頼費用が高額
個人再生を弁護士や司法書士に依頼すると数十万円の費用がかかります。
例えば弁護士の依頼料の相場は、30万円〜50万円です。そのため依頼をするにはある程度の資金が必要になります。
なお、個人再生の費用については「【個人再生ができる条件】月収や返済能力、手続き費用はどれくらい必要?」で詳しく解説しておりますので、あわせて参照ください。
ペットを手放さずに債務整理をおこなうなら弁護士に相談
債務整理の手続きは非常に複雑なため、自身で行うことは現実的ではありません。そのため弁護士に相談するのがおすすめです。
相談することでペットを手放さないために、どの債務整理が自身にとって最良であるかを一緒に考えてくれます。
家族の一員であるペットを手放さないためにも、借金や住宅ローンを滞納する前に弁護士に相談するようにしてください。
まとめ
ペットは市場価値がないことが多いため、自己破産や個人再生をしても基本的に手放す必要はありません。
ただしペットが原因で債務整理を行った場合は手放さなくてはいけない可能性があります。
また自己破産によって自宅が差し押さえられることで、ペットの飼う場所に困り手放すケースも多いです。
こういった事態を防ぐためには、個人再生や任意整理についてよく理解しておくことが重要です。
個人再生は「住宅ローン特則」制度を利用することで自宅を手放すことを回避できますし、任意整理は債務整理の対象から住宅ローンを外すことで手放す必要はありません。
このように債務整理の手続きによってペットを手放すリスクを排除できます。
しかし債務整理の手続きは複雑でどの方法が最良であるか」判断すること安易ではありません。
自身にとって最良の形で債務整理をするためにも、専門家である弁護士に相談するのをおすすめします。
債務整理のよくある質問
基本的には手放す必要はありません。
しかし、ペットをペットローンで購入して残債が残っている場合に債務整理をすると、信販会社によってペットが引きあげられる可能性があります。
また、自己破産によって自宅を失い、ペットを飼える場所がなくなって手放すケースもあります。
詳しくは弁護士へ相談するとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産後にペット可の賃貸に引っ越すか、厳しければ友人や親戚に預かってもらうことを検討するとよいでしょう。
任意整理によって対象から外すことでペットが引きあげられる可能性がなくなり、ペットを手元に残しておくことができます。
ただし、ペットローンを整理対象から外すため、任意整理後もペットローンの残債を支払い続けることが必要です。
無断で滞納すると弁護士に辞任されて債務整理が失敗する可能性があります。
事前に相談すれば、支払いを待ってもらったり月々の支払いを減額するといった対応をしてもらえることがほとんどです。
そのように対応してもらえば、ペットにも影響はありません。
そのため、費用の支払いが難しくなったらすぐに弁護士へ相談しましょう。
債務整理を原因に、借りている部屋を追い出されることはありません。
ただし、家賃の滞納をしていると、強制退去になる可能性もあります。

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