債務整理を検討する際、資格制限について不安を持つ警備員が稀にいます。
資格制限を受けてしまうと警備員として働くことが出来ず、収入がなくなり自己破産後の生活の建て直しが非常に困難になるでしょう。
しかし、資格制限を受けるのは、債務整理の中でも自己破産手続きだけなので安心してください。
任意整理と個人再生は資格制限を受けないため、仕事への影響はありません。
このため、警備員の方が債務整理を実施する場合には、任意整理や個人再生をおすすめします。
自分自身でどの債務整理方法が最良であるかを判断するのは容易ではないため、最良の選択をするためには無料相談などを利用して弁護士に相談することが重要です。
- 警備員が自己破産を行うと職業制限を受けるため、警備員として働くことができない
- 職業制限を受ける期間は平均3ヶ月〜半年程度
- 自己破産をして免責不許可になった場合は復権するまで職業制限を受ける
- 警備員の方が債務整理を行う場合は職業制限がない任意整理や個人再生を選ぶことが重要
警備員が債務整理を行うと職業制限を受ける?
警備員が債務整理を行うと職業制限を受けるのか(または解雇になるのか)、心配している方もいらっしゃると思います。
まずはその点から整理していきましょう。
自己破産を行うと警備員は職業制限を受ける
警備員が自己破産を行うと職業制限を受けるため、働くことができなくなります。
「警備業法」という法律の14条「警備員の制限」に「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は警備員となってはならないという定めがあるためです。
そのため警備会社で働くときは破産者でないことの証明が必要になります。
つまり自己破産をして復権するまでは、新たに警備員の仕事に就くことができません。
警備員が職業制限される理由
警備員が職業制限される理由は、身辺警護や現金輸送などで他人の財産にふれる機会が多いことが理由です。
例えばALSOKの場合は、コンビニのATMの現金を回収します。
つまり警備員の職業制限の理由は、自身の財産を管理出来なかった人が他人の財産にふれるのは好ましくないためです。
自己破産して職業制限される期間は破産手続きから復権するまで
職業制限を受けるのは、破産手続きの開始決定から復権するまでの期間です。
裁判所で自己破産の開始が決定した段階で、債務者は「破産者」になります。
そして自己破産の手続きが終了し、裁判所の免責許可決定を得ることで復権するのです。
破産者から復権することで、職業制限はなくなります。
ちなみに自己破産の申立から免責許可決定が出るまでの期間は3ヶ月〜半年程度です。
ただし財産の規模が大きい場合や複雑な紛争がある場合には、特定管財事件として扱うため、半年〜1年以上かかるケースもあります。
免責許可決定がされる期間は自己破産の手続きによって異なるため、注意が必要です。
なお、自己破産の制限についは、自己破産の制限から復権するまでの期間はどれぐらいかかるのか?2つの復権方法と合わせて解説で詳しく解説しています。
自己破産の免責不許可事由に該当した場合は復権まで10年かかるケースもある
前述のとおり、自己破産の職業制限は復権するまで解除されることはありません。
そのため、裁判所によって免責不許可事由に該当するとして免責許可がおりなかった場合は、自己破産以外の方法で復権しなければ職業制限が解除されないので注意が必要です。
復権するための方法は以下のパターンです。
- 借金を完済する
- 個人再生を利用する
- 任意整理を利用して借金を完済する
- 破産者手続きから10年経過する
個人再生以外の方法は、借金を完済することや10年という時間経過が必要です。
しかし、自己破産をしようとしていた方が借金を完済することや任意整理で借金を完済することは現実的ではありません。
免責不許可事由に該当する恐れがある場合は、事前に弁護士に相談するようにしてください。
弁護士に相談することで、免責不許可事由であっても借金問題を解決できる最善の方法を提案してくれます。
自己破産の免責不許可事由は借金の原因や過去に自己破産をしている場合などがある
自己破産は裁判所の免責許可決定を受けないと、借金を返済する義務がなくなりません。
そのため、免責不許可事由に該当する可能性がある場合は、よく確認することが重要になります。
免責不許可事由に該当する行為などは以下の表を確認してください。
免責不許可事由 | 法律 | 内容 |
不当な破産財団価値を減少する行為 | 破産法第252条第1項 | 自己破産の手続きを開始する前や手続き中に財産を隠す行為や壊す行為、第三者に譲る行為を行うこと |
不利益な条件での責務負担行為 | 破産法第252条第2項 | 破産することを前提で借金をする行為 |
偏頗弁済に該当する行為 | 破産法第252条第3項 | 債権者を平等に扱わず特定の債権者を優先して返済する行為等 |
借金の原因が浪費や賭博に該当する | 破産法第252条第4項 | パチンコやキャバクラ通いを過度に行い、借金したケース |
詐術を利用して信用取引をする行為 | 破産法第252条第5項 | 支払い能力がないにもかかわらず、金融機関などを騙して借り入れを行う行為等 |
帳簿隠蔽等の行為 | 破産法第252条第6項 | 財産や仕事などに関係する書類を隠蔽や偽造する行為 |
虚偽の債権者名簿を提出する行為 | 破産法第252条第7項 | 故意に架空の債権者名を名簿に記載したり、親しい友人や親からの借金をしているにもかかわらず記載しない等 |
調査に協力しない行為 | 破産法第252条第8項 | 裁判所からの質問に回答しないことや虚偽の回答をする行為 |
管財業務を妨害する行為 | 破産法第252条第9項 | 破産管財人との面談を行わない等の業務がスムーズにできないようにする行為 |
過去7年間に自己破産している | 破産法第252条第10項 | 過去7年間で自己破産や個人再生の免責許可を得ているケース |
破産法上の義務に違反する行為 | 破産法第252条第11項 | 財産を隠すなどして破産の手続きに非協力的な行為をしたケース |
上記の行為などに該当する場合は、自己破産の免責許可を得られない可能性が高いです。
ただし、上記の免責不許可事由でも、裁判所の裁量免責によって免責許可を得られるケースもあります。
裁量免責とは裁判官が生活の再建のために免責許可を出してもよいと判断したときに、免責不許可事由であっても免責許可を得ることができる制度です。
例えばパチンコや競馬などの賭博が原因で借金をしたケースであっても、債務者が真摯に反省しているのであれば、裁量免責で免責許可を得られる可能性があります。
このように免責不許可事由でも免責許可を得ることができるケースもありますが、あくまでも例外的な行為であるため、必ず認められるものではありません。
裁量免責が認められやすくするためには、弁護士に相談することが重要です。
警備員が自己破産して職業制限を受けるなら事前に職場に相談する
警備員の方がどうしても自己破産する必要があり、職業制限を受けてしまう場合は事前に職場に相談することが重要です。
相談することで他の職種に変えてもらえる可能性があります。
例えば、警備会社の場合でも事務職などの仕事があるはずです。
そういった職種に一時的に変えてもらうことで職業制限を受けても会社で仕事を続けることができます。
ただし、会社によっては解雇される可能性もあるため、自己破産はできる限り避けたほうがいいでしょう。
自己破産を隠すことはやめた方がいい
自己破産の手続きを開始して破産者になったことを隠して働くことは法律違反になるため、するべきではありません。
もし黙って働いている場合には、会社に公安委員会の立ち入り検査などが入り迷惑がかかる可能性があります。
そのため警備会社は官報を確認して自己破産を行っているのかを確認しているケースも多いです。
隠そうとしてもバレる可能性が高いので、事前に相談するようにしてください。
ちなみに、警備会社は法律や施行規則で入社時に「誓約書」と「役所の身分証明書」などを提出させて、破産者かどうかチェックすることが義務付けられています。
したがって、復権していないのに警備会社に自己破産したことを隠して就職することはできません。
警備員が債務整理しても職業制限を受けずに済む方法2つ
警備員が自己破産をすると職業制限によって退職になる可能性があります。
そのため自己破産は最も避けるべき方法です。
もし一定の返済能力があり以下の債務整理の方法を選べるなら、そちらをおすすめします。
以下2つの債務整理手続きなら、職業制限を受ける心配はいりません。
- 任意整理
- 個人再生
それぞれについて説明します。
1.任意整理を行う
任意整理は債権者と交渉して、利息のカットや返済期間の延長をしてもらう手続きになります。
メリットは裁判所の手続きが必要ないことや個人再生や自己破産と違って官報に記載されることがないため、会社に任意整理を行ったことがバレる可能性が非常に低いことです。
一方でデメリットもあります。
任意整理は返済が前提の債務整理になるため、一定の支払い能力が必要です。
さらに債権者との交渉で和解できない場合は任意整理を行うことができません。
とはいえ任意整理は債務整理手続きの中で最もデメリットが少ないため、安定した収入があるのであれば任意整理を選ぶようにしてください。
なお、任意整理については【任意整理のメリット・デメリット】手軽な費用で財産を処分されずに減額可能!元本が残ることには注意で詳しく解説しています。
2.個人再生を行う
個人再生は再生計画を提示して、認可を受ければ借金を大幅に減額できる手続きになります。
任意整理よりも大幅に借金を減額できるうえに、自己破産よりはデメリットが少ないのが特徴です。
例えば、「住宅ローン特則」という制度を利用することで住宅ローンが残っていても、自己破産のように持ち家を手放す必要はありません。
一方で個人再生にもデメリットはあります。
それは以下の4つです。
- ブラックリストに5〜10年登録されるためクレジットカードなどが利用出来ない
- 一定以上の資産を持つことが出来ない
- 官報に掲載されるため会社にバレるリスクがある
- 弁護士への依頼費用が高額
個人再生も自己破産と同様に官報に記載されるため、警備会社に官報を見られてバレる可能性は少なくありません。
ただし個人再生は自己破産と違って職業制限がないため、警備員の仕事対する影響は限定的です。
なお、個人再生については借金を1/5に減額し住宅も残せる個人再生とは?メリット・デメリットや詳しい手続きについて解説でも分かりやすく説明してあるので、あわせて参照ください。
債務整理を行うなら弁護士に相談しよう
債務整理の手続きは非常に複雑であるため、素人の方が自身で手続きを行うのは容易ではありません。
そのため、弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に相談することで、手間と時間を節約できるだけでなく、最良の効果が見込めます。
さらに、警備員が債務整理をする際にどういった方法が最適な方法なのか、アドバイスをもらうことが可能です。
まとめ
警備員の方が自己破産を行うと職業制限を受けるため、職業制限が解除されるまで警備員として働くことはできません。
さらに一度職業制限を受けると、自己破産の免責許可決定がされ復権するまで解除されないので注意が必要です。
こういった事態を防ぐためには、自己破産以外の債務手続きの方法である個人再生や任意整理で借金問題を解決することがおすすめの方法になります。
ただし、任意整理と個人再生にもデメリットはあるため、良く理解して選ぶことが重要です。
また、法律の素人が効果的な債務整理を選ぶことは容易ではありません。
自身にとって最良の形で債務整理をするためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
警備員が債務整理をするときに知っておくべきポイントは?
警備員が職業制限を受ける債務整理の方法はありますか?
債務整理の手続きである任意整理や個人再生、自己破産で職業制限があるのは自己破産になります。警備員が自己破産した場合は職業制限を受けるので、制限が解除されるまで警備員として働くことができません。
職業制限を受けた場合どれくらいの期間制限されますか?
警備員が自己破産したことによって職業制限を受ける期間は一般的に3ヶ月〜半年程度です。ただし、自己破産の手続きによって期間が異なります。このように、手続きによって職業制限を受ける期間が変わるため、期間を短くしたい場合は専門家である弁護士に相談するようにしてください。
免責不許可になった場合はどうなりますか?
自己破産の免責許可が不許可になった場合は、他の方法で免責許可を得るまで職業制限が解除されることがありません。例えば、個人再生を行って再生計画が認可されることで免責許可を得ることができます。免責許可が得られなかった場合は。弁護士に相談して今後の対応についてアドバイスをもらうようにしてください。
自己破産以外の債務整理の方法は警備員の仕事に何か影響がありますか?
警備員の方が自己破産以外の債務整理の方法である任意整理と個人再生を行っても、基本的に仕事に影響はありません。そのため、警備員の方は自己破産以外の方法で借金問題を解決するようにしてください。
自己破産以外の債務整理の方法なら会社にもバレずに手続きできますか?
任意整理を選択した場合は官報に記載されることがないため、会社に任意整理を行ったことがバレる可能性は非常に低いです。ただし個人再生を選択した場合は、官報に掲載されるため会社にバレるリスクがあります。どちらの方法を選択するかは弁護士と相談して慎重に決めるとよいでしょう。