税理士が自己破産する場合の注意事項について

税理士が債務整理をすると資格制限を受けると聞いたのですが、本当ですか?


それは違います。債務整理の中でも自己破産手続きを行うと資格制限を受けます。そのため一定の間、税理士として働くことが出来ません。
では自己破産で資格制限を受けずに、借金問題を解決する方法は何かありますか?


「個人再生や任意整理は資格制限を受けずに借金問題を解決出来ます。ただし、デメリットもあるので、特徴を理解しておくことが重要です。
債務整理を検討する際、資格制限について不安を持つ税理士が稀にいます。
資格制限を受けてしまうと税理士として働くことが出来ず、収入がなくなり自己破産後の生活の建て直しが非常に困難になるでしょう。
しかし、資格制限を受けるのは、債務整理の中でも自己破産手続きだけなので安心してください。
任意整理と個人再生は資格制限を受けないため、仕事への影響はありません。
このため、税理士の方が債務整理を実施する場合には、任意整理や個人再生をおすすめします。
自分自身でどの債務整理方法が最良であるかを判断するのは容易ではないため、最良の選択をするためには無料相談などを利用して弁護士に相談することが重要です。
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- 税理士が自己破産を実施すると資格制限されるため一定期間、税理士として働くことが出来ない
- 資格制限される期間は平均3ヶ月〜半年程度
- 自己破産をして免責不許可になった場合は復権するまで資格制限される
- 復権するためには個人再生を利用するなどの4つの方法がある
- 税理士の方が債務整理を実施する場合は資格制限がない任意整理や個人再生を選ぶことがおすすめ
税理士は債務整理の手続きの自己破産をすると資格制限される
税理士が債務整理の手続きの一つである自己破産を実施すると資格制限を受けます。
資格制限とは法律によって破産者に該当した場合に、その職種の資格を失ったり、職種の登録が解除されることです。
税理士の場合は税理士法4条3号に「破産者手続き開始の決定をうけて復権復権とは、破産者の立場から回復することを指します。を得ない者」は税理士となる資格がないと記載されています。
この法律が資格制限される根拠です。
税理士以外に資格制限される職種
税理士以外の職業で資格制限されるものは以下の職種になります。
分類 | 職業名 |
士業 | 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、中小企業診断士、不動産鑑定士等 |
団体役員 | 金融取引業、商工会議所、信用金庫、日本銀行等 |
公職 | 人事院の人事官、教育委員会の教育委員、公証人、公正取引委員、公安委員等 |
他仕事 | 警備員、質屋、貸金業、通関士、旅行業務取扱管理者、調教師、風俗業管理等 |
上記の職種はそれぞれの法律によって資格制限されることが明記されています。
例えば、商工会議所の役員であれば商工会法32条2項1号に破産者で復権していない者は役員になることが出来ないと記載があります。
このように職種ごとに根拠になる法律があるので、気になる方は確認してみてください。
なお、自己破産の資格制限については自己破産すると職業制限がかかる仕事は?復権するまでの期間と合わせて解説で詳しく解説しています。
自己破産して資格制限される期間は一般的には3ヶ月〜半年程度
税理士が自己破産して復権すると、資格制限が解除されます。
しかし、裁判所の免責許可がおりない限り復権することは出来ません。
自己破産の手続き開始から免責許可を得るまでの期間は、平均3ヶ月〜半年程度と言われています。
そのため、この期間は税理士として働くことができません。
またこの期間は自己破産の手続きの流れによって異なるため、注意が必要です。
手続きごとの期間の違いは以下の表にまとめているので確認してください。
手続き名称 | 内容 | 復権までの期間 |
同時廃止事件 | 破産者の財産が少なく、破産手続きの費用を支払える財産すら所有していないケースの手続き | 2ヶ月〜4ヶ月程度 |
少額管財事件 | 管財事件における手続きの負担を減少したもの。利用するためには弁護士に依頼するなどの条件がある | 4ヶ月〜半年程度 |
特定管財事件 | 破産管財人を選任し、選任された破産管財人によって財産の調査処分、債権者の配当まで行う手続き。また、少額管財事件以外の管財事件のこと | 半年〜1年以上 |
ちなみに弁護士に依頼すると時間がかかる特定管財事件から少額管財事件に手続きを変えることが出来る可能性があります。
そのため、自己破産をするなら弁護士に依頼をするようにしてください。
なお、自己破産の制限についは、自己破産の制限から復権するまでの期間はどれぐらいかかるのか?2つの復権方法と合わせて解説で詳しく解説しています。
免責がされなかった際に復権する4つの方法
自己破産には免責不許可事由というものがあり、浪費やギャンブルが原因で借金をして破産手続きをした場合や破産手続きに協力的ではない場合は、免責許可を得ることが出来ません。
一方で事業の失敗や自身が経営者をしている会社の倒産、交通事故による慰謝料や示談金の支払いなど不測の事態で借金をした場合は免責が許可されます。
では、免責不許可になった場合はどういった方法で復権すればいいのでしょうか?
それは以下の4つです。
- 借金を完済する
- 個人再生を利用して当然復権する
- 任意整理を利用して借金を完済し、申立てによる復権を目指す方法
- 破産者になって資格制限が生じてから10年が経過するのをまつ
それぞれについて説明します。
借金を完済して復権をする
当然ですが、借金を完済すれば破産者ではなくなり、復権出来ます。
ただし自己破産をしようとしていた方にとって、借金を完済するのはほぼ不可能です。
完済出来るとすれば、次のようなケースが考えられます。
例えば免責不許可が決まったあとに、遺産相続によってまとまった資金を得ることが出来た場合です。
上記のような稀なケースがなければ復権出来ないため、自己破産を申し立てた方が借金を完済するのは現実的と言えません。
そのため、他の方法を考えるようにしてください。
個人再生を利用して復権をする
自己破産の免責許可が得られなかった方は、個人再生の手続きを行って再生計画が裁判所から認可を受けるとその段階で復権が出来ます。
免責不許可を言い渡された方は、借金返済の免除がされないため、手元に借金が残ったままです。
そのため借金が大幅に減額されることから、自己破産の免責不許可になった方は個人再生の手続きを行って復権を目指す方法が最も現実的な方法といえます。
ただし再生計画で提示した内容を守らなければ、復権が取り消しになってしまい、もう一度資格制限される形になるため注意が必要です。
任意整理を利用して借金を完済し復権する
自己破産で免責許可を得られなかった場合に、任意整理を利用して完済し裁判所に申し立てることで復権することも出来ます。
ただし、任意整理は個人再生と違って借金を完済するまで復権出来ません。
さらに任意整理は個人再生よりも借金を減額出来る手続きではないため、支払い能力によっては現実的な方法ではない可能性があります。
自身の支払い能力を考慮したうえで、どの方法が最適か弁護士に相談するようにしてください。
破産者になって資格制限が生じてから10年が経過するのを待つ
破産手続きの開始決定から、10年経過すると復権が出来ます。
個人再生や任意整理は裁判所の認可や債権者との和解が必要になるため、必ずしも成立するわけではありませんし、全員が完済出来るわけでもありません。
そのためずっと復権出来ない方を救済するために、10年経過での復権が認められています。
自己破産の手続き中でも税理士試験は受けることが出来る
税理士が自己破産で受ける資格制限は税理士資格を一時的に失うものです。
一方で税理士試験などの受験については、破産者であっても受験は出来ます。
ただし、資格に合格しても復権しない限りは税理士資格の登録が出来ないので注意が必要です。
税理士が債務整理をしても資格制限を受けない方法や受けたときの対処法
資格制限を受けない債務整理の方法は次の3つです。
- 任意整理
- 個人再生
- 過払い金請求
それぞれについて説明します。
任意整理なら資格制限されることなく借金問題を解決出来る
任意整理は債権者と債務者が交渉をして返済計画を提示し、利息のカットや延滞損害金のカット、返済期間の延長などを実施する債務整理の手続きです。
デメリットが債務整理手続きの中で1番少なく、自己破産のように資格制限もありません。
そのため、任意整理で借金問題を解決できるのなら任意整理がおすすめです。
ただし、任意整理にも以下のデメリットがあることも理解しておく必要があります。
- 信用情報(ブラックリスト)に5年間登録されるため金融機関の融資が利用できない
- 支払い能力がないと利用出来ない
- 現実的な提案が出来ず債権者の同意が得られない可能性がある
- 借金が無くなるわけではないので、債務整理後も返済しなければならない
借金が大幅に減るわけではありませんが、デメリットが少ないため、生活の建て直しがしやすいのが特徴です。
なお、任意整理については【任意整理のメリット・デメリット】手軽な費用で財産を処分されずに減額可能!元本が残ることには注意で詳しく解説しています。
個人再生も資格制限されることはなく借金問題を解決出来るが任意整理よりもデメリットがある
個人再生は任意整理よりもデメリットが多い債務整理の手続きですが、大幅に借金を減額することが出来るため、支払い能力が乏しい方におすすめです。
また「個人再生は住宅ローン特則」という制度があり、この制度を利用することで住宅ローンを整理の対象から外せるため自宅を守ることが出来ます。
そのため自己破産のように、持ち家を手放す必要はありません。
しかし、上記のような特徴がある一方で、個人再生にも以下のような4つのデメリットがあります。
- ブラックリストに5〜10年登録されるためクレジットローンなどが利用出来ない
- 一定以上の資産を持つことが出来ない
- 官報に掲載されるため会社にバレるリスクがある
- 手続きが複雑なため弁護士への依頼費用が高額
このような決して小さくないデメリットがあるため、個人再生を行う場合は注意が必要です。
なお、個人再生については借金を1/5に減額し住宅も残せる個人再生とは?メリット・デメリットや詳しい手続きについて解説でも分かりやすく説明してあるので、あわせて参照ください。
過払い金返還請求も資格制限されることはない
過払い金返還請求とは、グレーゾーン金利(年20%を超え、29.2%)で契約した借金を返済したものは過払い金が発生しているため、返還請求が出来る制度です。
特に借金の契約をしたのが2010年6月以前である場合には、過払い金が発生している可能性が高いため、過払い金請求により支払った金銭の一部が返還される可能性があります。
このように、返還された過払い金よって借金を全額返済出来たなら、借金問題を解決出来ます、
一方で借金が残った場合は債務整理と同様の扱いになるため、信用情報へ登録されるので注意が必要です。
税理士事務所に所属している場合は自己破産して資格制限される前に職場に相談するのがおすすめ
税理士事務所に所属している場合は、事務所に相談することで事務職などに一時的に変えてもらえる可能性があります。
事務所側も税理士資格を持っていた人材を失いたくないと考えるため、上記の対応をしてくれる可能性が高いです。
ただし、事務所によっては資格制限を知られることで解雇される可能性もあるため、解雇後の対応を考えておくことも重要になります。
また、自己破産をしたことを隠すのはトラブルになる可能性があるため、おすすめしません。
債務整理をおこなうなら弁護士に相談
一般の方が債権者との交渉や再生計画の作成などを行うことは、非常に手間がかかるため、現実的ではありません。
そのため債務整理を行う場合には、債務整理に強い弁護士がいる法律事務所に依頼することをおすすめします。
経験豊富な弁護士に依頼することで、税理士が債務整理をする際の最適な方法や悩みについて、アドバイスをもらうことが可能です。
無料の相談サービスを行っている弁護士法人もあるため、一度相談するようにしてください。
まとめ
税理士の方が自己破産を行うと資格制限を受けるため一定期間、税理士として働くことが出来ません。
さらに一度資格制限を受けると、復権するまで資格制限が解除されないので注意が必要です。
こういった事態を防ぐためにも、個人再生や任意整理で借金の減額を行って解決することをおすすめします。
とはいえ任意整理と個人再生にもデメリットはあるため、良く理解して選ぶことが重要です。
また、法律の素人が効果的な債務整理手続きを選ぶことは容易ではありません。
自身にとって最良の形で債務整理をするためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
税理士が債務整理をするときに知っておくべきポイントは?
債務整理の手続きで資格制限を受けるのは自己破産のみです。資格制限を受けると、制限が解除されるまで税理士として働くことが出来ないので注意が必要です。
税理士が自己破産したことによって資格制限を受ける期間は平均3ヶ月〜半年程度です。ただし、自己破産の手続きによって制限を受ける期間が異なるため、資格制限の期間が短く出来ないか弁護士に相談してみてください。
自己破産の免責不許可になった場合は、個人再生を利用して復権するなどの方法で復権するまで税理士として働くことが出来ません。どういった方法で復権するかを自身で判断するのは難しいため、弁護士に今後の対応について相談するようにしてください。
税理士の方が任意整理と個人再生を行っても、資格制限がされないため仕事には影響がありません。そのため資格制限を受ける自己破産はできるだけ避けるようにしてください。どうしても自己破産をしないと解決出来ない場合は、弁護士に相談することで自己破産をした場合の対処法についてアドバイスがもらえます。
税理士が自己破産で受ける資格制限は税理士資格を一時的に失うものであり、税理士試験などの受験については破産者であっても受験は出来ます。ただし、資格に合格しても復権しない限りは税理士資格の登録が出来ないので注意してください。

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