一棟ビルの売却を検討する際、選択肢のひとつになるのが「不動産買取業者への直接売却」です。
特に築年数が古いビルや再建築不可物件、または借地権や共有持分など権利関係が複雑な物件では、一般市場での買い手探しが難航するケースが少なくありません。弊社にも「仲介で半年以上売れ残ってしまった」「テナントとの調整が進まず市場に出せない」といったご相談が寄せられますが、そのような場合には買取業者への売却を提案しています。
買取の大きな特徴は直接買い取ってもらうことで販売活動を省略でき、スピーディに現金化できる点です。
もっとも、一棟ビルは金額規模が大きく、テナント契約の整理や権利調整が必要になるため、通常の不動産よりも売却手続きが複雑になりがちです。そのうえ、「テナントの退去交渉が進まない」「借入の返済期限が迫っている」といった状況では、特に買取業者が特に頼りになります。
買取業者を選ぶ際には、次のようなポイントを押さえることが重要です。
- 買取対応スピードが早い
- 全国や主要都市など広いエリアに対応している
- 老朽化・空室・再建築不可など特殊な物件にも対応可能
- 弁護士や税理士など士業と連携している
また、相続や法人の資産整理など専門的な背景を伴うケースでは、士業と連携できる業者を選ぶことで、売却後のトラブルリスクを大幅に減らすことができます。
本記事では、一棟ビルの買取に強い業者の特徴や選び方、買取を利用するメリット、実際の取引の流れ、高く売るための工夫についても詳しく解説します。
【はじめに】一棟ビルのおすすめ買取業者の選定基準について
ご存じの通り、ビル売却においては買取業者選びが最も重要といっても過言ではありません。
弊社にも「急な資金需要で時間がないのでとにかく早く売却したい」「テナントとの関係性が悪く交渉が難航している」など、事情の異なるご相談が数多く寄せられますが、最適な業者を選べるかどうかで結果は大きく変わります。
特に重要なのが、複数社に査定を依頼して比較することです。同じビルでも、買取業者によって評価の視点が異なるため、提示される金額や条件に大きな差が生じることがあります。弊社でも「最初に相談した1社だけの査定を信じて売却を進めたところ、後から数千万円高く買う業者が見つかった」というご相談を受けたことがあります。査定をはじめから1社に絞ってしまうと、こうした機会を逃しかねません。
気になる会社があれば、できるだけ早い段階で査定を依頼し、提示条件を見比べることが望ましいです。単に金額だけでなく、「契約条件」「引渡しスケジュール」「瑕疵担保の扱い」なども含めて比較すると、売却後のトラブルを避けやすくなります。
本記事では、業者を選ぶうえで特に差が出やすい「買取対応スピード」「対応エリアの広さ」「ビル種別への対応力」の3点を基準として整理しました。
評価項目 | 基準 |
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買取対応スピード | ★★★:最短3営業日以内 |
対応エリアの広さ | ★★★:全国対応明記 |
ビル種別対応力 | 老朽化・空室・再建築不可・テナント入居中などの対応明記 ★★★:2件以上 |
一棟ビルのおすすめ買取業者4選
一棟ビルの売却を検討する際には、スピード感や対応エリア、訳あり物件への柔軟さなど、業者ごとの特徴を見極めることが大切です。ここでは実績や対応力に定評のある4社をピックアップし、それぞれの強みを一覧にまとめました。
買取業者名 | 業者の特徴(要点) |
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クランピーリアルエステート | 東京を中心に事業用不動産を幅広く取り扱い、訳あり物件のスピーディーな買取に強み。 |
株式会社フレキシブル | 最短即日査定・翌日決済に対応し、築古・再建築不可など条件が難しい物件も積極的に買取。 |
東京土地開発株式会社 | 関東圏を中心に一棟ビルを幅広く買取。再建築不可・底地・任意売却など複雑案件にも対応。 |
株式会社マイダス | 関西エリアで即日買取サービスを展開。ローン残債や再建築不可なども現状のまま買取可能。 |
おすすめ買取業者を選定する際には、単に知名度や規模だけでなく、実際に売主にとって重要となる基準を重視する必要があります。
1. クランピーリアルエステート
評価項目 | 基準 |
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買取対応スピード | ★★★ |
対応エリアの広さ | ★★★ |
ビル種別対応力 | ★★★ |
クランピーリアルエステートは、東京を中心に全国で事業用不動産の買取・仲介を幅広く手掛ける会社です。特に、複雑な事情を抱えた訳あり物件の取引に強みを持ち、オーナーの負担は最小限に、スピーディーな買取を実現しています。 独自のネットワークと豊富な経験を活用し、リアルタイムでの需要や再開発動向を踏まえた評価を行うことで、訳あり物件でも納得感のある価格を提示できます。
弁護士や税理士といった士業事務所と密に連携しているため、登記や契約、税務処理など専門的な手続きも一貫して対応できる体制が整っています。スピード感と専門性を兼ね備え、安心して任せられる相談先として評価されています。
会社名 | 株式会社クランピーリアルエステート |
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本店所在地 | 東京都中央区築地2-10-6 Daiwa築地駅前ビル9F |
問い合わせ方法 | 査定フォーム・LINE・電話 |
電話番号 | 03-6226-2566 |
営業時間 | 平日10:00~19:00 |
代表者 | 大江 剛 |
創業 | 2018年 |
事業規模 | 資本金1億円 |
公式サイトURL | https://c-realestate.jp/ |
2. 株式会社フレキシブル
評価項目 | 基準 |
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買取対応スピード | ★★★ |
対応エリアの広さ | ★★★ |
ビル種別対応力 | ★★★ |
株式会社フレキシブルは、東京を拠点に全国でビルやマンションなど幅広い不動産の買取・仲介を行っています。机上審査なら最短即日回答、10億円までであれば翌日決済が可能と、スピード対応を強みとしており、売却を急ぎたいオーナーに適した選択肢となります。
築古物件・債務整理物件・再建築不可物件など、条件が複雑な不動産にも積極的に対応。10年間で100棟以上の買取を行っており、実績も豊富です。
会社名 | 株式会社フレキシブル |
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本店所在地 | 東京都台東区東上野1-15-3 エムビルⅡ3階 |
問い合わせ方法 | 査定フォーム・電話 |
電話番号 | 03-3832-7077 |
営業時間 | 平日10:00~18:00 |
代表者 | 谷口晶宏 |
創業 | 1992年 |
事業規模 | 資本金1,400万円 |
公式サイトURL | https://www.flexible-fudousan.com/ |
3. 東京土地開発株式会社
評価項目 | 基準 |
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買取対応スピード | ★★ |
対応エリアの広さ | ★★ |
ビル種別対応力 | ★★★ |
東京土地開発株式会社は、関東圏を中心に事業用不動産や一棟ビルの買取を行っている会社です。全国どこでも買取可能とはありますが、東京23区と武蔵野市・三鷹市・立川市・神奈川・埼玉・千葉が主要な対応エリアで、特に性質や特徴をふまえた提案が可能です。
訳あり物件は広く取り扱っていますが、特に再建築不可物件や底地、相続物件、任意売却を積極的に対応しています。公式サイトでは、買取までの期間の明記はありませんが、最短翌日に査定結果が出ると記載があります。
会社名 | 東京土地開発株式会社 |
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本店所在地 | 東京都豊島区南池袋2-12-5 第三中野ビル7F |
問い合わせ方法 | 査定フォーム・電話 |
電話番号 | 03-5904-8255 |
営業時間 | 木~月10:00~19:00 |
代表者 | 深田広志 |
創業 | 2014年 |
事業規模 | 資本金3,000万円 |
公式サイトURL | https://tokyo-tochikaihatu.com/ |
4. 株式会社マイダス
評価項目 | 基準 |
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買取対応スピード | ★★★ |
対応エリアの広さ | ★★ |
ビル種別対応力 | ★★★ |
株式会社マイダスは、大阪・兵庫・京都・奈良と関西で幅広い物件を積極的に買取しています。「即日買取サービス」が強みで、当日査定・最短3日での現金化に対応しています。 「どんな物件も現状のまま買取」を謳っており、ローン残債がある物件や借地、再建築不可物件などの訳あり物件も買取可能です。
ただし、マンション以外の一棟ビルの記載は少なく、問い合わせの際に実績の確認がおすすめです。
会社名 | 株式会社マイダス |
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本店所在地 | 大阪市北区西天満6丁目8-2 ヤノシゲビル505号室 |
問い合わせ方法 | 査定フォーム・LINE・電話 |
電話番号 | 0120-106-833 / 06-6362-0677 |
営業時間 | 木~月 9:00~18:00 |
代表者 | 北垣 公一 |
創業 | 2015年 |
事業規模 | 資本金300万円 |
公式サイトURL | https://www.midas-corp.co.jp/ |
一棟ビルを買取業者へ売却するメリット
一棟ビルを売却する方法には仲介と買取の2つがありますが、ここでは買取の主なメリットを説明します。
手数料がかからない
- 仲介手数料が不要
通常の仲介では数百万円単位の仲介手数料が発生しますが、買取ではそれがかかりません。規模の大きいビルほどこの差は顕著に表れます。 - 修繕やリフォームをせず現況のまま売却できる
古い設備や空室がある状態でもそのまま売却できるため、売主側で改修費を負担する必要がありません。弊社にも「修繕に数千万円かかると言われて途方に暮れていたが、現況のまま売れた」という事例がございます。 - 仲介より迅速かつ確実に売却が可能
仲介では買主探しに半年以上かかることもありますが、買取なら条件さえ整えば即日で契約、数週間以内に現金化できます。借入返済や税金の納期限が迫っているオーナー様には特に大きな利点です。 - 条件の悪い物件でも売却できる場合がある
再建築不可、借地権付き、空室多数など、仲介では買い手がつきにくいビルでも、専門業者ならリスクを織り込んで購入可能です。 - 契約不適合責任が免責されるケースが多い
仲介では売主が建物の不具合に責任を負う必要がありますが、買取では業者側がそれを織り込んで購入するため、売却後のトラブルリスクを大きく減らせます。
これらの点から、買取は「費用や時間の負担を減らし、売却後の不安も抑えられる方法」といえます。多忙なオーナー様や、早期の資金化を重視される方にとって、現実的かつ安心感のある選択肢といえるでしょう。
仲介手数料がかからない
一棟ビルを仲介で売却する場合、成約金額に応じて仲介手数料が発生します。一棟ビルは、戸建てや区分マンションよりも取引額が高いことが多く、売却時の仲介手数料も高額になりがちです。
一棟ビルの売買価格 | 仲介手数料の上限金額 |
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200万円以下の部分 | 売買価格 × 5% + 消費税 |
200万円超〜400万円以下の部分 | 売買価格 × 4% + 2万円 + 消費税 |
400万円超の部分 | 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税 |
例えば、2億円のビルなら約666万円が、5億円のビルなら約1,656万円の仲介手数料が上限となります。これだけの金額が売却益から差し引かれるのは、売主にとって大きな負担です。
その点、不動産会社が直接買主となる買取では、仲介業者を挟まないため、仲介手数料が一切かかりません。買取を選択することで、売却額や料率によっては売主の手元に残るお金が多くなる可能性があり、手数料の計算や支払いに関するやり取りもなくなるので取引の流れがシンプルになります。特に、大規模な一棟物件の売却では、手数料がゼロになる効果は非常に大きいといえるでしょう。
修繕やリフォームなどをせず、そのままの状態で売却できる
通常の仲介では、買主に良い印象を与えるために修繕やリフォーム、クリーニングを施してから売却することが多くあります。見た目や設備を整えておくと、購入希望者が安心して検討しやすくなり、結果的にリフォームにかけた費用以上の価格で売却できる可能性があるためです。
ただし、リフォームや修繕といった施工を行う場合には、どうしても時間と費用がかかります。特に、老朽化した一棟ビルでは、改修工事だけで数百万円単位の大きな出費になることも少なくありません。本来は売却して現金化したいはずなのに、先にまとまった投資が必要になるうえ、場合によってはその費用を売却価格で十分に取り戻せない可能性もあります。
買取業者への売却であれば、建物を現況のまま引き取ってもらえるため、時間的な負担も金銭的な負担も避けられます。買取業者は、購入後に用途に沿って自社でリノベーションや建替えを計画・施工するため、売主が物件に何か手を加える必要はありません。
不動産仲介と比較して、より迅速かつ確実に売却可能
仲介による売却は、買主探しから契約・決済までに数か月かかるのが一般的です。一棟ビルのような高額物件は買主が限られるため、販売期間が長期化するリスクがあります。一般的には相談から4~8ヶ月程度、場合によっては1年以上かかることも珍しくありません。その間に景気変動や需要の減少が起きれば、当初の想定価格から値下げを余儀なくされるリスクも考えられます。
対して、買取業者へ売却する場合は、業者自身が買主となるため、条件さえ合えば即時に契約が成立し、最短で1~2ヶ月程度で現金化が可能です。売却までの期間が短いため、価格が下落するリスクも軽減されます。 迅速かつ確実に売却がスムーズに完結するため、契約に伴う複雑な手続きや入居者対応を買取業者が代行してくれます。相続税納付や資産整理などで期限があるケースでは、売主の負担が軽減される点もメリットといえるでしょう。
条件の悪い物件でも売却できる場合がある
一棟ビルの中には、「築年数が古い」「再建築不可の土地に建っている」「空室率が高い」といった、一般の買主が敬遠する条件を抱える物件も少なくありません。仲介を利用する場合、条件の悪い物件は購入希望者が現れにくく、販売活動が長期化し、最終的に売れ残ってしまうリスクが高くなります。仮に売却できたとしても、大幅な値下げを求められるケースが多く、オーナーにとって納得のいく取引にならないことも多くあります。
一方で、買取業者に直接売却する場合、買取業者は再開発や建替え、リノベーション、あるいは用途変更を前提に取得するため、条件の悪さをそのまま受け入れてくれるケースがあります。特に、訳あり物件を専門に買い取っている業者であれば、豊富な資金力とノウハウを活かして、収益化の見通しを立ててから買い取るため、売主は「買い手がつかないのではないか」という不安から解放されます。市場では価値が低く見られがちな物件でも、現金化への道が開かれることが買取の大きなメリットです。
契約不適合責任が免責されるケースが多い
不動産売却では、引き渡した物件に欠陥がある場合に売主が修補や損害賠償を負う「契約不適合責任」が発生します。売主が負うべき契約不適合責任には法的な上限年数がなく、買主が不適合を知ってから1年以内に通知すれば請求され得るため、契約内容によっては引渡し後も長期間リスクが残ることになります。売却数年後に、修繕や損害賠償を求められる可能性がある点は、売主にとって大きな不安要素です。
対して、買取業者は専門的な調査を行い、リスクを織り込んだ上で査定・買取を行います。そのため、買取業者への売却では、契約不適合責任を免除する契約が結ばれるケースが一般的で、売主は売却後にトラブルを抱える心配が少なくなります。 ただし、法律で一律に免責が義務付けられているわけではなく、売買契約書に特約として記載されていることが重要です。したがって、契約時には必ず契約不適合責任が免責になっているかを確認することが大切です。
一棟ビルの買取査定に影響を与える主な要因
一棟ビルの査定は、単に「立地」や「築年数」だけで決まるわけではありません。実務上は、建物や土地の状況に加え、入居テナントの収益力やエリアの将来性まで、多角的に検討します。
例えば、築年数が古いビルでも、耐震基準を満たしていて修繕履歴がしっかり残っており、安定したテナントが長期契約を結んでいれば、大きく評価が下がることはありません。逆に築浅のビルであっても、空室が多かったり、周辺相場より賃料設定が高すぎて入居が定着しない場合には、将来的な収益性に懸念があると判断されます。
また、エリアの動向も重要な評価軸です。再開発やインフラ整備が予定されている地域では、将来的な需要増が見込めるため評価が上振れすることもあります。一方で、人口減少が進んでいるエリアや競合物件が過剰なエリアでは、空室リスクを織り込んで査定額が抑えられるケースも珍しくありません。
このように、査定は複数の要因を総合的に組み合わせて行うものです。「自分のビルがどの要素で強みを持ち、どこにリスクがあるのか」を把握しておくことで、査定結果の妥当性を理解しやすくなります。
物件固有の要因
分類 | 主な要素 |
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建物の構造・状態 | ・築年数・構造(RC / S / 木造)・耐震性能・修繕履歴・劣化状況・建物面積 |
土地の条件 | 面積・形状・接道状況・用途地域・建ぺい率/容積率・再建築可否・借地権の有無 |
法的制限 | 再建築不可・容積率超過・既存不適格・法令違反建築など |
テナント・入居状況 | 空室率・賃料水準・契約形態(定期 / 普通借家)・保証金 / 更新料・立退きの要否 |
物件固有の要因は、不動産の基本的な情報で、査定の基盤となる要素です。
建物の築年数や耐震性能は安全性と寿命を示し、継続的に建物を活用できるかに影響します。修繕履歴や劣化状況は管理状態を表し、改修が必要なら評価は下がります。土地条件も重要で、接道状況や用途地域は再開発や建替えの可否に関わり、資産価値を大きく左右します。賃貸中なら空室率や賃料水準も重視され、入居者が定着しない物件は収益リスクが高いと判断されます。
収益に関わる要因
分類 | 主な要素 |
---|---|
表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 価格 |
実質利回り | 表面利回りから経費(固定資産税・管理費など)を差し引いたもの |
テナント安定性 | テナント属性(大手 or 個人など)・契約年数の残期間・解約リスク |
地域の賃料相場 | 周辺相場と比べて賃料水準が高い / 安い / 妥当か |
収益に関わる要因は、投資物件としての魅力を測る要素です。
表面利回りに加え、固定資産税や管理費を差し引いた実質利回りを確認することで実際の収益力が見えます。テナントの属性や契約期間は安定性を左右し、地域相場と比べて適正な賃料かも重要です。高すぎれば空室リスク、安すぎれば収益性低下につながるため、持続的に収益を生めるかが評価の焦点となります。
個別的要因
分類 | 主な要素 |
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エリアの魅力 | ・都市中心部か・人気エリアか・再開発エリアか |
アクセス | 駅距離・主要路線や幹線道路へのアクセス性 |
周辺環境 | 商業地域 / 住宅地域 / 工業地域・治安・周辺施設(学校・病院・役所など) |
将来性 | エリアの人口動態・再開発計画・都市計画の変更見込み |
個別的要因は、物件そのものではなく、立地や地域性に関わる要素です。
都市中心部や人気エリアは需要が高く、空室リスクが低いため査定額が上がりやすい傾向にあります。駅からの距離や幹線道路へのアクセス、治安や公共施設の充実度も、テナント需要に直結します。さらに、人口動態や再開発計画など将来性が高い地域は資産価値も伸びやすく、市場で評価されやすい物件といえます。 このように、一棟ビルの買取金額はさまざまな要因によって多角的に査定されるため、まずは業者に査定を依頼してみることをおすすめします。
安心して依頼できる一棟ビル買取業者を選ぶポイント
一棟ビルの売却を検討するとき、どの業者に依頼するかによって取引のスムーズさや最終的な売却価格は大きく変わります。特に、一棟ビルは規模が大きく、権利関係やテナントの有無など複雑な事情を抱えていることも多いため、信頼できる買取業者の協力が欠かせません。
- 買取実績が豊富かどうかをチェック
- 複数の買取業者に査定を依頼し相場価格を把握
- 希望エリアに対応しているか確認
- 士業の専門家と連携しているかチェック
- 再建築不可・老朽化など特殊物件に対応しているかチェック
- テナントが入っている状態でも買い取ってもらえるか確認
ここでは、安心して依頼できる業者を見極めるためのポイントを紹介します。
買取実績が豊富かどうかをチェック
一棟ビルの売却を依頼する際には、業者の過去の取引実績を確認することが重要です。公式サイトに掲載されている買取事例やお客様の声は、業者がどのような物件を扱ってきたかを把握するうえで役立ちます。特に、自分の所有物件と似た条件の事例があるかどうかを確認すれば、過去の実績に基づいた適切な対応が期待できるか判断しやすくなります。
また、第三者の口コミや比較サイトでの評判も参考になります。件数の多さだけではなく、直近の実績や多様な物件への対応力を持つかどうかを見極めることが、安心できる業者を選ぶポイントです。
複数の買取業者に査定を依頼し相場価格を把握
一社だけに査定を依頼すると、提示された金額が本当に妥当かを見極めることが難しくなります。そのため、できるだけ3社以上の業者に査定を依頼し、相場感を把握することが重要です。 なかには、相場より極端に高い金額を提示して契約を急がせる業者もあるため注意してください。契約を急いだ結果、契約直前や契約後に「やはり条件が合わなかった」「追加費用が発生する」といった理由で大幅に減額されるリスクもあります。
簡易的な査定の金額だけを鵜呑みにせず、査定の根拠や説明の丁寧さ、誠実さも併せて確認することが大切です。 この時、担当者の査定基準やプラス要素・マイナス要素の明確な説明の有無、対応の誠実さも大切な判断基準となります。
希望エリアに対応しているか確認
業者によって、全国展開している場合もあれば、特定エリアの地域密着型で買取を行っている場合もあります。対応エリア外の物件は取り扱いできないこともあるため、必ず事前に確認しましょう。
地方や郊外のビルを売却する場合、地域密着でエリアの不動産市場に詳しい業者に依頼できれば、地域の需要や相場に基づいた適正な査定を受けられる可能性が高まります。周辺の再開発計画や人口動態など細かな情報に精通している点は、地域密着の業者の強みです。 一方で、全国展開している業者は、幅広いネットワークや豊富な取引データを持っており、全国的な需要を踏まえた提案が受けられる点がメリットです。特に、「都市部の投資家が地方や郊外の物件を購入するケースを想定して売却する場合」や「広い地域に複数の物件を所有している場合」では、全国展開の業者のほうが有利に働くことがあります。
公式サイトの情報や問い合わせを通じて、自分の所有するビルが対象エリアに含まれるか、売却ニーズに合っているかを確認しておくことが安心につながります。
士業の専門家と連携しているかチェック
一棟ビルの売却は、単純な取引に見えても相続や共有名義など複雑な権利関係が絡むことがあります。何らかのトラブルを抱えた物件の場合、弁護士や司法書士といった士業の専門家と連携している業者を選ぶと安心です。法的・専門的な知識をもとにしたサポートを受けられるため、手続き上のトラブルを未然に防止できます。
また、他の共有者との調整や相続人間での合意形成といった揉めやすく、解決まで時間がかかりやすいケースでも、専門家の力を借りることでスムーズに、かつ確実に売却を進められるでしょう。
再建築不可・老朽化など特殊物件に対応しているかチェック
一棟ビルの中には、法律上の制限で建て替えができない再建築不可物件や、老朽化が進んだ物件、底地・借地権付きなど特殊な事情を抱えたものが少なくありません。いわゆる「訳あり物件」と呼ばれる特殊な物件は、利用方法が限られる上に金融機関の融資が通りにくく、購入後の活用や資産価値の維持が難しいため、買い手が見つかりにくいのが実情です。
しかし、訳あり物件の取り扱い実績が豊富な業者であれば、賃貸需要を活かした再利用やリノベーション、権利関係の整理といった経験に基づく活用ノウハウを持っています。訳あり物件のバリューアップや権利調整に関する知識と実績は、通常の不動産取引だけでは得られない専門性であり、経験を積んだ業者ならではの強みです。 売却先が限られる状況だからこそ、特殊物件への対応力を持つ業者かどうかを見極めることが安心につながります。
テナントが入っている状態でも買い取ってもらえるか確認
ビルの用途や状況によっては、売却時点で複数のテナントが入居している場合もあります。その際に、退去交渉や契約解除を行わずに売却できれば、時間的・労力的・金銭的な負担を大幅に軽減が可能です。入居者がそのまま賃料を支払い続けることで、売却時まで安定した収益を確保できます。
テナントが入ったままでも買い取ってくれる業者を選べば、空室が発生する心配をせずに売却を進められます。 ただし、売却の事実が入居者に知られてしまうと「今後退去を求められるのではないか」と不安を抱き、契約更新を避けて早めに退去してしまうケースがあります。また、ビルオーナーが売却を控えている状況を見越して、賃料の減額や更新料の免除といった条件交渉を持ち掛けられることもあります。
収益低下につながるリスクを避けるためには、入居者に余計な不安を与えず、内密に売却を進めてくれる業者を選ぶことが大切です。入居者との関係を悪化させずに売却できる点は、ビルオーナーにとって大きな安心材料となります。
一棟ビルを買取業者へ売却する流れ
続いては、一棟ビルを買取業者に売却する際の流れを確認しましょう。
- 複数の買取業者に査定依頼
- 現地調査・査定価格の提示
- 購入条件の協議・売買契約の締結
- 必要書類の準備・決済準備
- 決済・物件の引渡し
なお、依頼に際しては、複数の業者に査定を依頼することが重要です。業者によって査定基準が異なる可能性があり、複数業者に査定をしてもらうことで、所有している不動産の相場観や最高値の売却額を確認できます。
複数の買取業者に査定依頼
査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。「机上査定」は物件の基本情報や周辺の取引事例をもとに短時間でおおよその価格を算出でき、気軽に依頼しやすいのが特徴です。一方、訪問査定は実際に担当者が現地を確認し、建物の状態や立地条件、周辺環境を踏まえてより正確な金額を提示します。 そのため、最初に複数業者に机上査定を依頼しておおまかな相場感を把握しましょう。
そして、担当者の対応の迅速さ・誠実さ・丁寧さを確認し、信頼できる業者かを見極めて訪問査定に進むのが効率的です。少なくとも3社を比較すれば、査定額の妥当性だけでなく、各社の対応力やスピード感のおおよその基準も見えてきます。
現地調査・査定価格の提示
訪問査定では、買取業者が実際にビルの外観や内部を確認し、設備状態や劣化の状況、周辺環境、用途地域(土地の使い道を定めた区分)などを調査します。訪問査定の調査結果をもとに算出された査定額が、原則として買取業者を利用した際の売却価格となります。
仲介の場合、販売活動を経て最終的な成約価格が変動しますが、買取では業者から提示された査定額でそのまま契約に進むのが基本です。そのため、売主は「この金額で売却できる」という明確な見通しを早い段階で得られます。
もちろん、提示された価格に納得できなければ、契約を急ぐ必要はありません。一棟ビルのように金額が大きい取引では、業者によって査定額に差が出やすいため、別の業者に査定を依頼して比較したり、金額の引き上げを求めて交渉したりすることは十分可能です。
購入条件の協議・売買契約の締結
提示された査定額に納得できたら、続いては売買の細かな条件について協議します。引渡し時期や残置物の扱い、税金・諸費用の精算方法など、細かい条件を詰めていきます。ここで、契約不適合責任が免責になるのかも確認しておきましょう。
もし提示条件に納得できなければ、契約を無理に進める必要はありません。回答を保留にしたり、他の業者へ改めて査定を依頼したりして比較検討するのも有効です。 すべての条件に合意できた段階で、正式な売買契約書を締結します。契約書には合意に至った全ての条件が記載されるため、漏れなく内容を理解し、不明点があれば必ず契約締結前に確認することが大切です。
必要書類の準備・決済準備
売買契約が締結できたら、決済に向けて必要書類を揃えます。具体的に必要となる書類は買取業者から指示されますが、一般的には下記のような書類が必要です。
書類名 | 入手場所・入手方法 | 区分 |
---|---|---|
登記済権利証or登記識別情報通知 | 登記完了時に法務局から交付(再発行不可) | 必須(紛失時は本人確認情報制度などで補完可) |
登記事項証明書(全部事項証明書) | 法務局orオンライン登記情報提供サービスで取得 | 必須 |
固定資産税評価証明書 | 市区町村役場で発行 | 必須 |
固定資産税納税通知書 | 毎年自治体から所有者へ送付 | 必須 |
建物の図面 | 法務局で取得 | 必須 |
印鑑証明書 | 市区町村役場で発行 | 必須 |
本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど) | 各発行機関 | 必須 |
住民票 | 市区町村役場で発行 | 必須(登記上の住所と現住所に相違がある場合) |
賃貸借契約書・入居者名簿 | ビル所有者が保管(管理会社委託時は管理会社から取得) | 条件付き必須(賃貸中の場合) |
地積測量図(境界確認書) | 法務局で取得(所有者保管・調査士が作成支援) | 条件付き必須(土地を含む場合) |
管理規約・使用細則 | 管理組合or管理会社から入手(管理組合が原本保管) | 条件付き必須(区分所有部分を含む場合) |
建築確認済証・検査済証 | 建築時に所管行政庁が交付(再発行不可) | 任意(台帳記載事項証明書で代替可) |
設備の仕様書 | 建築時の施工会社・設計会社から交付 | 任意 |
建築設計図書 | 設計事務所・施工会社から交付 | 任意(残っていれば) |
工事記録書 | 施工会社から交付 | 任意(残っていれば) |
耐震診断報告書 | 建築士・専門業者が診断し作成 | 任意(築古や用途による) |
アスベスト使用調査報告書 | 有資格の調査者・専門業者が調査し作成 | 任意(築古や用途による) |
売却を決めたら早めに必要書類を集め始めるのがおすすめです。特に、一棟ビルのように規模が大きい物件では、必要な資料が多岐にわたるため、リストを確認しながら抜け漏れがないよう整えることが重要です。 決済日には金融機関との調整も行われるため、スケジュール管理も欠かせません。
決済・物件の引渡し
最後に、決済と引渡しを行います。一般的な買取業者では、決済・引渡し・所有権移転登記を同時に実施するのが基本です。そのため、売主は決済確認と同時に物件の所有権を移転でき、手続きの負担を最小限にして取引を完了できます。
段階的に行う場合は、まず決済を終え、お金を受け取ったことを確認してから、所有権移転登記を行うことになります。先に登記を行ってしまうと、お金を受け取っていないのにビルが他者の所有物になることを意味します。万が一にもお金が受け取れなかったというトラブルが起きないよう、決済が完了してから登記を行いましょう。
なお、登記手続きを担当する司法書士は、一般的には買取業者が手配してくれるため、売主が個別に探す必要はありません。
一棟ビルを少しでも高く売却するポイント
一棟ビルを高値で売却するには、収益性を高める工夫や取引の信頼性を示す準備が欠かせません。物件の魅力を具体的に示せれば、買主からの評価が上がり交渉を有利に進められます。 少しでも高く売却するためのポイントは次のとおりです。
- 満室状態で売却する
- レントロールを作成する
- 修繕履歴を一覧表にまとめておく
- 資産価値が高いタイミングで売却する
事前に対策しておくことで、相場より高い売却価格や好条件で取引が成立させられるかもしれません。
満室状態で売却する
一棟ビルの査定では、入居率が高いほど収益性が安定していると評価されます。空室が多い物件は将来的な収入に不安があると判断され、査定額が下がる傾向があります。そのため、満室に近い状態を維持したうえで売却に臨むことが望ましいといえます。
入居率を高める具体的な方法として「フリーレント」の導入が挙げられます。フリーレントとは、新規入居者に対して一定期間の家賃を無料にする契約条件のことを指します。短期的には収入が減るものの、空室を埋めやすくなり、結果的に物件全体の稼働率を高める効果が期待できます。
売却時には、安定した賃料収入が見込める満室物件が好まれるため、フリーレントを活用して入居率を改善すれば、査定評価や売却価格が向上する可能性があります。
レントロールを作成する
レントロールを整えて提示しておくことは、一棟ビルを高値で売却するために有効な対策です。買主に収益性を明確に示せるため信頼性が高まり、価格交渉を優位に進めやすくなります。 レントロールとは、各テナントの賃料や契約条件、入居状況を一覧化した資料のことです。収益物件の収入構造を一目で確認できるため、投資家や金融機関が物件の価値を判断する際に重視されます。
自分で作成することも可能ですが、正確性を確保するには管理会社に依頼するほうがよいでしょう。 レントロールが欠けていると収益の見通しが不透明になり、買主は将来のリスクを懸念して価格を下げて交渉してくる可能性があります。裏付け資料が整っている物件は安心して投資対象に選ばれやすく、結果として高値で売却できる可能性が高まります。
修繕履歴を一覧表にまとめておく
修繕履歴を整理して提示しておくことも、一棟ビルを高値で売却するための対策となります。建物の維持管理がきちんと行われていると伝わることで、購入希望者が安心感を得られ、売却価格の下落防止につながります。
修繕履歴書とは、工事の内容や実施日、費用、施工会社、対象部位を時系列でまとめた資料です。外壁補修や屋上防水、給排水管の更新、エレベーターの整備といった項目を一覧にすることで、建物の健全性を客観的に提示できます。
修繕の内容や費用が明らかになっていれば、購入後にどの程度の費用が発生するかを予測しやすくなり、買主からの値下げ要求を受けにくくなります。さらに、工事の領収書や報告書を添付しておけば、査定においてプラスの評価を得られる可能性も高まります。
資産価値が高いタイミングで売却する
資産価値が高い時期を選んで売却することも効果的です。買主が積極的に購入を検討する状況では、有利な条件で売却しやすくなります。売却の好機を判断するためには、不動産取引件数や成約価格の上昇傾向、国や日銀が発表する金利動向、周辺地域で進行している再開発計画の公告や報道などが参考になります。
需要が高まっている時期は、投資目的の不動産購入者だけでなく、自社ビルを確保したい企業や新規出店を計画する事業者からも関心を持たれやすくなります。売却を検討する際には、地価の動きや成約事例、再開発の進捗といった公開情報を調べることで、適切なタイミングを判断できるでしょう。
一棟ビルを買取業者に売却する際に発生する費用・税金
一棟ビルを売却する際には、売却益に対して課される税金のほか、契約書に必要な印紙税やローン返済に伴う手数料、抵当権抹消にかかる費用などが発生します。また、建物部分には消費税が課税されるケースもあるため、売却を進める前に全体像を把握しておくことが重要です。
項目 | 課税・発生対象 | 税率・金額の目安 | 発生タイミング |
---|---|---|---|
譲渡所得税 | 売却益(譲渡所得) | 長期:15% / 短期:30% | 売却の翌年に申告・納付 |
住民税 | 売却益(譲渡所得) | 長期:5% / 短期:9% | 売却の翌年に申告・納付 |
復興特別所得税 | 所得税額 | 所得税×2.1%(〜2037年) | 売却の翌年に申告・納付 |
印紙税 | 売買契約書 | 契約金額に応じて定額 | 契約締結時 |
抵当権抹消登記費用 | 抵当権抹消登記 | 登録免許税:不動産1件あたり1,000円+司法書士報酬2〜3万円程度 | 抵当権抹消時 |
全額繰上返済手数料 | ローン完済時 | 金融機関により数万円〜数十万円程度 | 繰上返済時 |
消費税 | 建物部分の売却価格 | 10%(内税・外税は売主が決定可) | 売却時 |
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税
ビル売却で利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」とされ課税されます。譲渡所得は、売却価格から、購入時にかかった購入代金・仲介手数料などの取得費や売却にかかった諸経費を差し引いた残りの金額を指します。
■所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)
所得税15%・住民税5%・復興特別所得税 所得税額の2.1%=合計税率20.315%
■所有期間が5年以下の場合は(短期譲渡所得)
所得税30%・住民税9%・復興特別所得税2.1%=合計税率39.63%
不動産を売却して利益が出た場合は、原則として翌年に確定申告を行い納税する必要があります。なお、給与所得者で年間の譲渡益が20万円以下であれば、所得税の確定申告を省略できる特例が認められています。ただし、この特例を利用して確定申告を行わない場合でも、住民税の課税のために市区町村への申告が必要となることがあります。取り扱いは自治体によって異なるため、居住地の市区町村役所に確認してください。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書など一定の文書に対して課される国税です。不動産の売買契約書も課税文書に該当するため、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。印紙の貼付と消印によって納税が完了する仕組みになっており、正しく処理しなければ契約書が無効になるわけではありませんが、不足分について過怠税(金銭的ペナルティ)が課される可能性があります。
不動産売買契約書に課される印紙税の税額は、契約金額に応じて決まります。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 |
1億円超〜5億円以下 | 10万円 |
5億円超〜10億円以下 | 20万円 |
10億円超〜50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
電子契約を利用する場合は印紙税が不要となるため、取引形態によってコストを抑えられる可能性もあります。
抵当権抹消登記にかかる費用
抵当権抹消登記にかかる費用は「登録免許税+司法書士報酬」で構成され、対象となる不動産の数や依頼の有無によって合計額が変動します。
不動産に設定された抵当権を外すためには、法務局で抵当権抹消登記の申請を行う必要があります。抵当権抹消登記の申請では登録免許税が課され、税額は不動産1件につき1,000円です。例えば、土地2筆と建物1棟に抵当権が設定されている場合は、合計で3,000円となります。 さらに、登記申請を司法書士に依頼する場合には2万〜3万円程度の報酬が必要です。
全額繰上返済手数料
不動産を売却してローン残債を一括返済する場合、金融機関から全額繰上返済手数料が請求されます。金融機関によっては「全額返済手数料」や「期限前完済手数料」と呼ばれることもあります。売却代金をローン返済に充てる人は、必ず事前に金融機関へ確認しておきましょう。
以下はメガバンク4行の全額繰上返済手数料の目安です。
銀行名 | 手数料(店頭・書面) | インターネット申請 |
---|---|---|
三井住友銀行 | 33,000円(税込) | 無料 |
三菱UFJ銀行 | 33,000円(税込) | 16,500円(税込) |
みずほ銀行 | 33,000円(税込) | 不可(全額は店頭のみ対応) |
りそな銀行 | 33,000円(税込) | 無料 |
メガバンクの繰上返済手数料は銀行ごとに条件や方法によって変動するため、実際の金額を確認するには利用している金融機関の公式案内をチェックする必要があります。
消費税
不動産を売却する場合、土地部分は非課税ですが、建物部分には原則として10%の消費税が課されます。 ただし、一般の個人や不動産業以外を営む個人事業主が建物を売却する際には、消費税の納税義務はありません。「自宅や相続で取得した建物を売却するケース」「飲食店経営者やフリーランスが事業と関係なく所有していた物件を売却するケース」では、消費税の対象外となります。
一方で、不動産業を営む個人事業主や法人で、課税売上高が基準を超えて課税事業者となる場合には、建物部分に10%の消費税が課税されます。課税事業者に該当するかどうかは、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えているかで判断されます。課税事業者となった売主は、建物の売却代金に含まれる消費税を内税とするか外税とするかを決定し、定められた期限内に納付しなければなりません。
まとめ
一棟ビルの売却では、金額規模の大きさや権利関係、入居テナントの状況など、一般的な不動産以上に複雑な要素が絡みます。だからこそ、信頼できる不動産買取業者を選ぶことが、取引を成功させるために欠かせないポイントです。
特に、「買取スピードが早く資金化を急ぐ場面に対応できるか」「広いエリアに対応して需要に沿った提案ができるか」「老朽化や再建築不可といった特殊な条件に対応できるか」そして「士業の専門家と連携して法的なリスクに備えられるか」が重要です。 本記事で紹介した基準と業者の特徴を参考に、自分の状況に合った相談先を見極めれば、スムーズかつ安心感のある売却を進められるでしょう。
一棟ビルの買取についてよくある質問
一棟ビルの売却方法は「早さを重視するなら買取」「価格を重視するなら仲介」といえます。
「買取」は不動産業者が直接購入するため、短期間で現金化でき、契約不適合責任を免責してもらえる場合も多い点がメリットです。ただし、市場相場より売却価格が低くなる傾向があります。「仲介」は相場に近い価格で売れる可能性が高い一方で、契約成立まで期間が読めず、希望通りのタイミングで売却できるとは限りません。どちらを選ぶかは、売却で重視する目的によって判断することが大切です。
不動産を売却し、利益が出た場合は確定申告が必要です。
不動産の売却益は「譲渡所得」として扱われ、所有期間に応じて税率が異なります。長期所有(所有期間5年超)は20.315%、短期所有(所有期間5年以下)は39.63%が課税の目安です。売却益が出た場合は確定申告を行い、利益に応じて譲渡所得税を納める必要があります。 利益が出なかった場合や損失となった場合は、原則として確定申告を行う必要はありません。
ただし、売却益が出ておらず、確定申告が不要な場合でも、自治体によっては住民税の申告を求められるケースがあります。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、不動産売却があったことを役所に届け出ておかないと誤って課税される可能性があるためです。利益の有無にかかわらず、必要に応じて市区町村の税務課で確認するようにしましょう。
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