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未登記建物とは?放置のリスク・登記方法・費用・必要書類・相続時の手続きを解説

未登記建物とは?放置のリスク・登記方法・費用・必要書類・相続時の手続きを解説

未登記建物を所有しているにもかかわらず登記しないままでいることは、大きなリスクを伴います。

特に、相続で未登記建物を受け取った際にトラブルの原因となりやすく、放っておくほど手続きが煩雑になるため、早めの対応が大切です。

この記事では、未登記建物とは何かをはじめ、放置するデメリット、登記のメリットとその方法、かかる費用や必要書類などについて解説します。

相続した場合の手続きの流れも紹介するので、未登記建物の相続でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

未登記建物とは

未登記建物とは、文字通り登記のされていない建物を指します。

そもそも登記とは、不動産や法人などに関する情報を公的機関に登録・発表することで、定められた権利や義務を保護したり、取引しやすくするための制度です。新築の建物を取得した際には、不動産登記法第47条に則り、表題登記の申請を1か月以内に行わなければなりません。

通常、建物が新築されたときには登記が行われますが、まれに未登記のままとなっている場合があります。未登記の理由としては、現金一括で建物を購入した場合に、登記を行わなかった、登記についての説明を受けていなかったというケースが考えられます。

一方、購入時に住宅ローンを利用する場合には、金融機関などの債権者に抵当権が発生する都合、登記は必須です。

住宅ローンの制度が整備され、一般的によく用いられるようになったのは1970年代以降であり、それ以前は建物を一括購入することは珍しくありませんでした。そうした建物のなかには、登記しないまま現在まで放置されていることがあります。

なお、建物が未登記であっても固定資産税は発生します。登記の有無にかかわらず、役所は現地調査などによって建物を把握し、課税しているとされます。

参照元:e-GOV「不動産登記法 第47条」

法務局で登記の有無を調べる

建物の登記の情報を調べるには、オンラインで取得する方法と、法務局に行き取得する方法があります。より確実なのは法務局で申請する方法です。

かつて法務局では不動産の登記記録が「登記簿謄本」と呼ばれる紙媒体で管理されていました。現在では、不動産記録はコンピューターで管理されています。

「登記事項証明書」は、このデータを印刷し認証したものの総称です。証明書には現在事項・一部事項などの種類がありますが、「全部事項証明書」には閉鎖された不動産を除いたすべての登記事項が記載されています。

そのため登記の有無を調べるには、全部事項証明書の交付申請を行うのが確実です。

申請の際には、交付申請書の所在の欄に「土地の所在地」、家屋番号の欄には「土地の地番」を記載します。ここで全部事項証明書が出てこない場合は、未登記建物であることがわかります。

このように、法務局に行けば確実に調べられますが、法務局が開いているのは平日のみなので注意が必要です。

固定資産税の課税証明書を確認する

平日に法務局に行くことが難しい場合は、固定資産税の納税通知書に同封されている課税証明書を確認しましょう。記載の仕方は自治体によって異なりますが、課税証明書建物の項目内に「未登記」と書かれている場合があります。

また、登記されていれば法務局により家屋番号が割り振られており、通知書内に記載されます。そのため、「家屋番号」の欄が空欄の場合には未登記建物である可能性が高いです。

未登記建物の放置で考えられるリスク・デメリット

未登記の建物は外見だけで判断できないため、相続したときにはじめて未登記だったと知ることもあります。建物を未登記のまま所有するリスクとデメリットがいくつかあるので解説します。

融資対象にならない

不動産登記には、「所有権保存登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」などの種類があります。これらの登記は、建物の表題登記をしなければ設定できません。

このうち抵当権の設定は、金融機関が不動産を担保に融資する場合に必要となります。抵当権とは、金銭を貸し付けるにあたって債権者側に発生する「債務者の支払いが滞った場合に、対象の不動産を売却して支払ってもらう権利」です。

この権利を行使するためには登記による証明が必要なため、金融機関が未登記建物に融資を行うことはほぼありません。

具体的には、住宅ローンや増改築、リフォームのための資金の融資には、建物に抵当権を設定するのが一般的です。これらの融資を検討する際には、まず登記を済ませたうえで金融機関へと相談しましょう。

売却が難しくなる

未登記建物は売却が難しくなります。

未登記建物を売却すること自体は可能ですが、前述のように未登記建物に対しては、買主も住宅ローンを組めません。買主がローンを利用せず、一括払いができる場合などに売買ができますが、そうした条件付きでは買主を見つけるハードルが高くなります。

もし建物を売却するなら、登記をしておいたほうが買主探しがスムーズです。

固定資産税が高い

未登記建物は、登記されている建物と比べ固定資産税が高くなることがあります。これは、建物が登記されていれば特例や負担措置が受けられるためです。

例えば、住宅として使用されている建物なら、200㎡までの部分に対して、固定資産税なら最大1/6、都市計画税なら最大1/3の額となるなどの税負担軽減が適用されます。

未登記建物は役所が用途などを把握できないためにこのような措置を受けられず、多額の固定資産税を払わなければいけません。

相続で手間や費用がかかる

未登記建物のデメリットのひとつに、相続の際に手間や費用がかかることが挙げられます。

通常、登記を行うことで、第三者に対して「自分がその建物の権利者である」と主張できます。しかし、権利者が複数人となる相続が発生したあとには、権利者全員分の情報や意思確認が必要です。

そのため、未登記建物の相続者が登記する場合には、遺産分割協議書などの所有権を証明できる資料を用意する必要があります。

さらに、登記の際には建物の工事施工者に建築主を証明してもらわなければいけません。しかし、建築してから時間がたっている場合、紛失や処分などで資料がなくなっている、工事施工者がわからない、すでに倒産・廃業している、といったことがあります。

その場合、土地家屋調査士が建物を測量し、書類を作成してもらうことでも手続きができますが、依頼のために費用が必要です。

未登記建物の登記にあたってかかる費用

登記の手続きには、書類の用意や税金の支払いを必要とします。

未登記建物の表題登記では、書類の作成・手続きを司法書士や土地家屋調査士などの専門家に代行してもらうのが一般的です。

依頼相場は10万円~20万円で、建物の敷地面積などによってさらに費用がかかることもあります。

さらに登記を行うにあたって、登録免許税の支払いが必要です。税額は「不動産の評価額×0.4%=登録免許税」の計算式によって決まります。

過料の対象になる

不動産登記法第164条により、建物の表題登記を1か月以内に行わない場合には10万円以下の過料が科されることが規定されています。とはいえ、罰金ではなく過料であり、実際に科されるケースは少ないとされます。

それでも放置し続ければ将来的に過料を科される可能性は否めないため、早めに済ませておくことが大切です。

なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。こちらの規定でも、3年以内に正当な理由なしに相続登記をしない場合に、10万円以下の過料が科されます。

この流れをふまえると、相続登記の義務化以降には表題登記の義務も含めて取り締まりが厳しくなる可能性もあるので注意が必要です。

参照:e-GOV「不動産登記法 第47条 第164条」

未登記建物の登記を行うメリット

未登記建物は、放置せず登記を行うことで得られるメリットもあります。ここからは登記する3つのメリットについて解説します。

権利関係が明確になる

建物を登記することで、その建物に関する権利の主張ができるようになります。

前述のように、未登記建物は権利者が明確でないため、実質的に所有・管理している土地や建物であっても、行使できる権利や得られる措置などが制限されます。

登記によって権利を明確にし、建物の構造や区分け、土地の境界線などを具体的に把握することで、建物や土地を権利者として利用・活用することが可能です。

融資や売買などが可能になる

前述の通り、未登記建物の場合、抵当権が設定できないために融資対象にならず、売却が難しくなります。

登記をすれば増改築やリフォームのための融資を受けやすく、売却の際にも買主を見つけやすくなります。

また、登記により権利関係が明確になると、証明書や書類を作成する手間を減らせるため、売却だけでなく相続時にも手続きがスムーズになります。

解体によるトラブルを防げる

未登記建物でも、解体することは可能です。しかし、未登記建物は公的に所有権があることを証明できないので、解体の際にトラブルに巻き込まれる可能性があります。

例えば相続した建物が未登記だと、他の相続人や受遺者が現れた場合、解体に合意が必要となります。他にも、未登記建物に相続人が複数いた場合や、登記が別の人物でされていた場合にも同様です。こうした他の権利者に無許可で解体を行うと、建物等損壊罪に問われ、刑事罰に処される可能性があります。

登記を行う際には、権利関係を整理し、権利者を明確にすることが前提です。登記を済ませておくことで、他の権利者がいればその人に合意を取ればよく、それ以外の予期せぬトラブルが生じる心配はありません。

未登記建物の登記方法

未登記建物を登記するためには、何を用意し、どのような手続きが必要なのか、まずは登記の方法から解説します。

表題登記

未登記建物を登記するには、まず法務局で「表題登記」を行います。表題登記とは、まだ登記されていない建物や土地に対し、新たに登記簿を作成する手続きのことです。所在・地番・家屋番号・所有者の住所や氏名などの登録を行います。

この際、所有権の証明や建物の図面などの書類が必要で、建物の測量や、固定資産税課・各税事務所の調査をしたりと、手続きは複雑です。自分で行うこともできますが、専門家に依頼したほうがスムーズで確実です。

権利部の登記

表題登記が終わったら、権利部の登記を行います。権利部は甲区と乙区にわかれており、甲区には所有権に関する事項が、乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載されます。

この甲区の事項として、はじめて所有権を記載する場合には「所有権保存登記」を行います。この登記によって対抗力が認められることで、第三者に対して不動産の所有権を主張できるようになります。この登記を行うと抵当権が設定できるようになるので、住宅ローンの利用が可能です。

未登記建物の登記に必要な書類

未登記建物の「表題登記」には以下のような書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 建物図案、各階平面図
  • 建築確認申請書
  • 確認済証
  • 工事完了引渡証明書
  • 施工業者、所有者の印鑑証明書
  • 所有者の住民票
  • 委任状(代理人申請の場合)

さらに、「所有権保存登記」に必要な書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 所有者の住民票
  • 住宅用家屋証明書
  • 委任状(代理人申請の場合)

相続した未登記建物の場合、上記の書類がそろわない可能性があります。自分で行うには手間が多く時間もかかるため、専門家への依頼や法務局で相談することをおすすめします。

未登記建物を相続したときに行う手続きの流れ

未登記建物を相続すると、元の所有者が存命のときより登記の手続きが複雑です。そのような場合、どのような流れで手続きを行えばよいのかを解説します。

1. 遺産分割協議で相続人を決める

相続財産のなかに未登記建物があった場合、まずは相続人全員で集まって遺産分割協議を行い、誰が相続するかを決める必要があります。

また、協議に入る前に未登記建物が他にないかを明らかにしておきましょう。あとになって新たに未登記建物が見つかると、これまでに決めた相続分を含め、再度相続人全員で話し合わなければいけなくなるためです。

遺産分割協議を終えたら、遺産分割協議書を作成します。相続登記の際には、相続人全員がその決定に合意したことの証明が必要です。遺産分割協議書に合意を示した事実や相続の内容、全員分の住所氏名、実印などを残しておくことで、その証明となります。

2. 登記を申請する

相続人が決まったら、表題登記と権利部の登記をします。基本的に通常の未登記建物の登記と同様ですが、表題登記は被相続人名義で行います。

そのため、住民票を取得する際には被相続人のものが必要です。手続きが複雑でそろえる資料も多いため、通常時と同様に専門家への依頼をおすすめします。

未登記建物の登記は自分でやるより専門家に相談

未登記建物を自分で登記する場合、書類作成や手続きの代行を依頼する費用はかかりません。しかし、提出する図面を作成するには正確な測量が必要なことに加え、法律の規定に沿った方法で記載する知識も求められます。

その他の書類を含め、未経験では作成に大きな手間がかかるうえ、不備があれば申請は通りません。最終的には自分で行うことを検討するにせよ、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

まとめ

未登記建物を相続などで所有した際、そのまま放置するのは大きなリスクとデメリットがあります。住宅ローンを利用できないので売却が難しく、リフォームの際にも融資を受けられません。もし未登記建物を所有した場合にはすぐに登記することをおすすめします。手続きや、そのための書類集めは膨大な時間と手間がかかるので、専門家に依頼しましょう。