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遺産分割協議書の書き方は?自分で作成する場合のポイントを解説

遺産分割協議書の書き方は?自分で作成する場合のポイントを解説

遺産分割協議書は、その名のとおり相続人全員が遺産分割協議で取り決めた内容をまとめた書面です。

遺産の分割方法や相続の割合などを記すケースが一般的ですが、財産によって書き方が異なります。

そのため、遺産分割協議書の書き方がわからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、遺産分割協議書の基本的な書き方について、具体的な事例をあげながら解説します。

遺産分割協議書を自分で作成する際のポイントや流れもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

遺産分割協議書の基本的な書き方の項目

遺産分割協議書に決まった形式はありませんが、法的拘束力を持たせるためには以下の項目を記載する必要があります。

  • タイトル・被相続人の情報
  • 相続人の情報
  • 財産についての情報
  • 後文
  • 年月と署名捺印

それぞれの項目について詳しく解説します。

タイトル・被相続人の情報

まずは「遺産分割協議書」というタイトルを書面の上部に記載し、その下に被相続人の情報を記載しましょう。

遺産分割協議書に記載が必要な被相続人の情報は、以下の5点です。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 死亡年月日
  • 本籍地
  • 最後の住所

被相続人の情報を記載する際は、住民票や戸籍謄本、登記簿謄本などを参考にしましょう。

役所から発行された書類を参考にしながら記載すれば、書き間違いを防げます。

相続人の情報

次に遺産分割協議書の前文として、法定相続人全員の氏名および遺産分割協議の事実を記載しましょう。

前文の書き方の一例を紹介します。

令和○年○月○日、上記被相続人の死亡により、相続人である○○および△△、□□の3名全員で協議を行った結果、下記の通りに遺産分割をするように決定した。

前文を記載することにより、遺産分割協議を行った日付や法定相続人が明らかになります。

なお、前文では法定相続人を「甲」「乙」「丙」のように定義づけても問題ありません。

財産についての情報

財産についての情報では、財産別に誰がどの程度の財産を取得するのかを細かく記載します。

遺産分割協議書の中でも最も重要な部分になるため、遺産分割協議で決まった内容に基づき、誤りのないよう記載しましょう。

なお、財産についての情報は、不動産や現金など財産の種類によって書き方が異なる点に注意が必要です。

財産別の詳しい書き方については「【財産別のひな形】遺産分割協議書の書き方例」の項目で詳しく解説します。

後文

後文では、遺産分割協議書の作成枚数や保管者の情報などを記載します。

後文の書き方の例は以下のとおりです。

上記のとおり、遺産分割協議が相続人全員の合意のもとで成立したことを証明するため、本協議書を○通作成して署名・押印し、各自1通ずつ保管するものとする。

基本的に、遺産分割協議書は相続人全員の分を作成し、1通ずつ保管することになります。

そのため、後文では相続人全員が遺産分割協議書を保管するという内容を記載しましょう。

年月と署名捺印

最後に、遺産分割協議が成立した日付を記載の上、相続人全員の署名捺印と住所の記載を行います。

パソコンで書類を作成する場合でも、自筆での署名が必要な点には注意しておきましょう。住所はパソコン入力でも問題ありません。

捺印の際は、印鑑証明書と同じ実印を押します。

【財産別のひな形】遺産分割協議書の書き方例

遺産分割協議書の具体的な書き方は、財産に応じて異なります。

例えば不動産が財産として遺された場合、一軒家やマンション、共有持分などによっても書き方が異なるため注意が必要です。

ここでは、財産別に遺産分割協議書の書き方例を紹介します。

  • 不動産(一軒家)
  • 不動産(マンション)
  • 不動産(共有持分)
  • 未登記建物
  • 配偶者居住権
  • 現預金
  • 上場株式・出資金
  • ゴルフ会員権
  • 葬式費用・債務・借金
  • 自動車
  • 名義財産
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 数次相続
  • 特別寄与料

それぞれ順番に紹介するので、ぜひ参考にしてください。

不動産(一軒家)

不動産の財産情報は、登記簿謄本の項目通りに記載していきましょう。

一軒家の場合、土地と建物に分けて情報を記載する必要があります。具体的な記載例は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次に記載の不動産を取得する。

(1)土地
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・地番 ○○番
 ・地目 宅地
 ・地積 ○○㎡

(2)建物
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・家屋番号 ○○番
 ・種類 居宅
 ・構造 木造瓦葺き平屋建て
 ・床面積 1階部分○○㎡

所在や地番、家屋番号などは省略せずに書き写すことがポイントです。

不動産(マンション)

マンションの場合は「一棟の建物」「専有部分の建物」「敷地権」に分け、各項目に必要な情報を記載していきます。

不動産(マンション)の具体的な記載例は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次に記載の不動産を取得する。

(1)一棟の建物の表示
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・建物の名称 ○○マンション

(2)専有部分の建物の表示
 ・家屋番号 ○○番
 ・建物の名称 101
 ・種類 居宅
 ・構造 鉄筋コンクリート造1階建
 ・床面積 1階部分○○㎡

(3)敷地権の表示
 ・符号 1
 ・所在および地番 ○○県△△市□□番地
 ・地目 宅地
 ・地積 ○○㎡
 ・敷地権の種類 所有権
 ・敷地権の割合 ○○分の△△

「一棟の建物」はマンション全体、「専有部分の建物」は被相続人が所有していた部屋、「敷地権」は土地と建物の権利を示す部分です。

登記簿謄本から該当の項目を探し、正確に記載しましょう。

不動産(共有持分)

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する場合の所有権の割合です。

被相続人が共有持分の不動産を所有していた場合、遺産分割協議書に持ち分の割合を明記する必要があります。

不動産(共有持分)の具体的な記載例は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次に記載の不動産を取得する。

(1)土地
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・地番 ○○番
 ・地目 宅地
 ・地積 ○○㎡
 ・持分 2分の1

(2)建物
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・家屋番号 ○○番
 ・種類 居宅
 ・構造 木造瓦葺き2階建て
 ・床面積 1階部分○○㎡、2階部分○○㎡
 ・持分 2分の1

持分は登記簿謄本や登記事項証明書などで確認できます。

未登記建物

未登記建物は、不動産登記をしておらず、登記簿上に存在しない建物のことを指します。

不動産の登記は法律で義務付けられているため、未登記建物を相続する場合は不動産登記の申請義務を負うことになります。

本来、遺産分割協議書に不動産の情報を記載する際には登記簿謄本を参照しますが、未登記建物には登記簿謄本がありません。

そのため、固定資産納税通知書や名寄帳などを参考にしながら情報を記載していきます。具体的な記載内容は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次に記載の不動産を取得する。

(1)建物
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・家屋番号 未登記建物
 ・種類 居宅
 ・構造 木造瓦葺き平屋建て
 ・床面積 1階部分○○㎡
※未登記建物につき、令和○年度の固定資産納税通知書参考

未登記建物と明記した上で、参考にした情報源についてもあわせて記載しましょう。

配偶者居住権

2020年4月1日の法改正により、配偶者居住権という権利が新設されました。

配偶者居住権とは、被相続人が亡くなった時点で住んでいた建物に、配偶者が無償で住み続けられる権利のことです。

配偶者居住権はあくまでも「住む権利」であり、所有権とは異なります。

住む権利と所有権を分けることにより、配偶者の相続金額を抑えられるため、その他の財産を相続しやすくなります。

遺産分割協議書に配偶者居住権を記載する際の雛形は以下のとおりです。

1.次に記載の不動産について、被相続人の配偶者○○は遺産分割協議の成立日から死亡日まで配偶者居住権を取得し、相続人△△は所有権を取得する。

(1)土地
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・地番 ○○番
 ・地目 宅地
 ・地積 ○○㎡

(2)建物
 ・所在 ○○県△△市□□番地
 ・家屋番号 ○○番
 ・種類 居宅
 ・構造 木造瓦葺き平屋建て
 ・床面積 1階部分○○㎡

土地と建物の項目は、登記簿謄本のとおりに記載すれば問題ありません。

現預金

現預金の遺産分割をする場合、銀行名や支店名、種別、口座番号、口座名義などの記載が必要です。

現金と預金、それぞれの書き方は以下のとおりです。

1.相続人○○は、被相続人の現金を取得する。

2.相続人○○は、次に記載の預金を取得する。
 ・○○銀行△△支店 普通預金 口座番号1234567
 ・○○銀行△△支店 定期預金 口座番号 7654321

遺産分割協議書で金額を記載しても良いのですが、あとから現預金が変動した場合は再び遺産分割協議を実施する必要があります。

そのため基本的には金額の記載はせず、誰がどの現預金を相続するのかを記載するまでに留めておきましょう。

上場株式・出資金

相続財産に上場株式や出資金が含まれている場合、証券会社名や株式数、口座番号などの情報を記載します。

具体的な書き方は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次の金融資産を取得する。

(1)○○証券会社△△支店 口座番号1234567
 ・△△株式会社(銘柄コード:0123)100株
 ・□□株式会社(銘柄コード:4567)200株

金融資産を遺産分割協議書に記載する際は、証券会社からの通知事項を参考にしましょう。

ゴルフ会員権

ゴルフ会員権は、会員制のゴルフ場を優先的に利用できる権利のことです。

ゴルフ会員権を相続する際は、会員権を発行している会社名や会員番号などを記載します。書き方の例は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次の債権を取得する。

ゴルフ会員権
 ○○株式会社 △△ゴルフクラブ
 預託金ゴルフ会員権 会員番号1234567
 証書番号第○号

ゴルフ会員権を所有している方は、一般的に株式や預託金なども同時に所有していることが多いものです。

しかし、一部プレー権のみを保有している会員も存在します。プレー権のみの場合は相続税の対象外となるケースがあるため、一度ゴルフクラブに問い合わせてみましょう。

葬式費用・債務・借金

葬式費用や債務、借金などを「誰が」「どのように」負担するのかを明記することで、後々のトラブルを防止できます。

遺産分割協議書に葬式費用・債務・借金を記載する際の雛形は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次の債務を負担する。
 ・○○銀行の残債務金100万円
 ・△△株式会社の残債務金50万円
 (令和○年○月○日時点での残高)

2.被相続人に係る葬式費用については、相続人△△は全額負担する。

法定相続人のうち、複数人で葬式費用や債務を負担する場合は、誰がどのように負担するのかを細かく記載しましょう。

代表者1名が葬式費用および債務をすべて負担する場合、以下のような書き方でも問題ありません。

1.被相続人に係る葬式費用および債務については、相続人○○が全額負担する。

遺産分割協議で決定した内容に基づき、臨機応変に記載方法を変更してみてください。

自動車

自動車を相続する場合、車検証を参照しながら自動車登録番号や車体番号などを記載しましょう。

遺産分割協議書への書き方は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次の自動車を取得する。
 ・自動車登録番号 世田谷 123 あ 456
 ・車体番号 AB123C-4567890

なお、査定金額が100万円以下の自動車は、遺産分割協議書に記載しなくても問題ありません。

自動車を相続する際に使用する「遺産分割協議成立申立書」を提出するだけで名義変更が可能です。

名義財産

名義財産は、名義と所有者が異なる財産のことをいいます。

たとえば被相続人が子供の名義で銀行口座を作成し、被相続人が管理をしていた場合は名義財産に該当します。

名義が被相続人でなかったとしても、実質的な所有者が被相続人であった場合は、遺産分割協議書に記載しなければなりません。

名義財産を遺産分割協議書に記載する方法は以下のとおりです。

1.相続人全員は、名義人が異なる次の財産が被相続人の財産であることを確認する。
 ・○○銀行△△支店 普通預金 口座番号1234567(名義人 □□)

2.相続人○○は、次の財産を取得する。
 ・○○銀行△△支店 普通預金 口座番号1234567(名義人 □□)

名義人が異なる財産を明記の上、誰が取得するのかを記載しましょう。

銀行預金のほか、株式や保険、自動車なども名義財産に該当する可能性があるので、確認してみてください。

なお、遺産分割協議書に名義財産の記載を忘れてしまうと、協議のやり直しや過少申告のペナルティなどになる恐れがあります。

代償分割

代償分割は、相続人の代表者1名がすべての財産を取得する代わりに、ほかの相続人に代償金を支払う形で財産を分割する方法です。

遺産分割協議書には、誰がどの財産を取得するのか、いくらの代償金をどのように支払うのかを明記しましょう。

具体的な書き方は以下のとおりです。

1.相続人○○は、次の財産を取得する。

※取得する財産をすべて記載

2.相続人○○は、取得した財産の代償として、相続人△△に対して代償金1,000万円を令和○年○月○日までに、△△が指定する銀行口座に振り込んで支払う。

遺産分割協議書に代償分割の記載をせず代償金を支払うと、贈与と見なされ贈与税が課される可能性があります。

換価分割

換価分割は、不動産や株式などの遺産を売却して換金し、法定相続人の間で分け合う方法です。

ただし被相続人の遺産を売却するためには、一旦名義人を変更する必要があります。

そのため、遺産分割協議書にも「誰に名義変更をしたのか」を明記しなければなりません。

遺産分割協議書の書き方は、相続人全員の名義に変更する「共同登記」なのか、相続人代表者1名の名義に変更する「単独登記」なのかによって異なります。

共同登記の書き方は以下のとおりです。

1.次の不動産の換価分割を行うために、相続人○○および△△、□□が各3分の1の割合で共有取得する。

※不動産の情報を記載

2.相続人○○および△△、□□は共同で前項に記載の不動産を売却し、売却にかかる費用をすべて控除した残金を共有持分割合に従って取得する。

単独登記の書き方は以下のとおりです。

1.次の不動産の換価分割を行うために、相続人○○が取得する。

※不動産の情報を記載

2.相続人○○は前項に記載の不動産を売却し、売却にかかる費用をすべて控除した残金を3分の1の割合で相続人○○および△△、□□に分配する。

株式や自動車を換価分割する場合においても、上記と同様の書き方で問題ありません。

数次相続

数次相続は、被相続人が死亡したあと、遺産分割協議を実施する前に相続人が死亡して複数の相続が発生している状態のことです。

数次相続の場合、数次相続が発生している事実がわかるように遺産分割協議書を記載しなければなりません。

たとえば被相続人の父が死亡したあとに相続人の母も死亡した場合は、遺産分割協議書の被相続人の情報の下に、母の情報も同じように記載しましょう。

さらに、条項として以下のように前文に記載します。

被相続人の死亡により相続人全員で協議を行った結果、下記のとおりに遺産分割をするように決定した。なお、相続人の1人である配偶者○○は令和○年○月○日に死亡したため、○○の相続人である△△が遺産分割協議に参加した。

最後に、肩書を記載して署名捺印を行います。

相続人兼被相続人○○の相続人 △△(署名捺印)
住所 ○○県△△市□□番地

「○○」にはあとから亡くなった方の氏名を記入しましょう。

特別寄与料

特別寄与料制度は、被相続人の財産の維持・増加に対して貢献した親族が財産の一部を取得できる制度のことです。

たとえば被相続人の介護や家業の手伝いなどを無償でしていた場合、貢献した分が評価され、特別寄与料として分配されます。

遺産分割協議書には、特別寄与があることを明記の上、誰がどの財産をどの程度受け取るのかを記載しましょう。

1.相続人○○は、被相続人の療養看護に努めたことによる寄与分として、財産の10分の1を取得する。

なお、特別寄与料はトラブルになりやすい部分でもあるため、弁護士などの専門家に相談の上で内容を取り決めると良いでしょう。

遺産分割協議書を自分で作成する場合のポイント

遺産分割協議書を自分で作成する際には、偽造や改ざん、後々のトラブルを防止するような工夫が必要です。

また場合によっては遺産分割協議書が無効になるケースもあるため、注意しながら作成を進めなければなりません。

遺産分割協議書を正しく作成する際のポイントは以下のとおりです。

  • パソコンでも手書きでも良いが、訂正方法に注意する。
  • ページが複数枚になる場合は契印を押す。
  • 氏名や財産を書く順番に気をつける。
  • 後日判明した財産がある場合の条項を入れておく。
  • 無効にならないように注意をする。
  • 公正証書にすることもできる。

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

パソコンでも手書きでも良いが訂正方法に注意する

遺産分割協議書はパソコンと手書きのどちらで作成しても問題ありませんが、手書きで間違えた場合は訂正印が必要になる点には注意が必要です。

なお、余白部分にあらかじめ相続人全員の捨印を押しておけば、少しの書き間違いなら訂正印なしでも訂正できます。

一方、パソコンで遺産分割協議書を作成した場合、ミスタイプをしても画面上で簡単に修正が可能です。

また相続人全員が1通ずつ遺産分割協議書を保管することを考慮すると、印刷するだけで人数分を発行できるパソコンでの作成は非常に便利といえるでしょう。

ページが複数枚になる場合は契印を押す

遺産分割協議書が1ページに収まらず、複数枚になったときは契印を押しましょう。

契印とは、契約書が複数枚であることを証明するために、各ページのつなぎ目に押印することです。

つなぎ目に契印を押すことにより、遺産分割協議書の改ざんを防止できます。

なお、複数枚の遺産分割協議書を作成する際は、製本テープやホッチキスなどを使用するケースが一般的です。

どのような方法で作成したとしても、契印は有効となります。

2部以上になる場合は割印を押す

遺産分割協議書を2部以上作成したときは、割印を押すことで信頼性を高められます。

割印とは、2部以上の契約書を作成した際に、複数の契約書にまたがって押印することです。

複数の書類が同一の内容であることを証明したり、コピーや改ざんを防止したりする目的があります。

なお、遺産分割協議書の割印は義務ではないため、遺産分割協議書の発行部数が多すぎて押せない場合、無理をして押す必要はありません。

割印がなくても遺産分割協議書の効力に変わりはないので、コピーや改ざんを防止したいときのみ押すようにしましょう。

氏名や財産を書く順番に気をつける

遺産分割協議書に決まったフォーマットはないものの、氏名や財産を書く順番に統一性を持たせるとわかりやすい書面になります。

法定相続人の氏名は、一般的に年齢が上の人から順番に記載していきます。

たとえば家族で父親の財産を相続する場合、母・長子・次子の順に名前を記載しましょう。

財産の順番については、不動産を最初に記載します。その後に配偶者居住権や預貯金などプラスの財産を順番に記載し、最後に債務や借金などマイナスの財産を記載しましょう。

後日判明した財産がある場合の条項を入れておく

遺産分割協議書には、後日判明した財産の取り扱いについての条項を入れておきましょう。

家族が急死した場合など、生前に相続についての話し合いが進んでいなければ、あとから財産が見つかるケースがあるためです。

協議のあとに判明した財産の取り扱いは、以下3つのパターンがあります。

  • 遺産分割協議を再度行う。
  • 相続する人を取り決めておく。
  • 相続人全員が法定相続分の割合で取得する。

相続人全員で後日判明した財産をどうするのかを話し合い、対応方法を決めておけば後々のトラブルを防止できます。

無効にならないように注意をする

遺産分割協議書を作成する際は、無効にならないように注意することも重要です。

以下のようなケースの場合、遺産分割協議書が無効となります。

  • 相続人全員が参加せずに遺産分割協議を行った。
  • 認知症や障がいなど、一部の相続人の意思能力が乏しい状態にあった。
  • 責任能力のない未成年が遺産分割協議に参加していた。
  • 特別代理人の選任をしなかった。

遺産分割協議には原則として相続人全員が参加する必要があるため、1人でも欠席者がいた場合、遺産分割協議書は無効となります。

また意思能力が乏しい方や未成年の方が相続人である場合、特別代理人を選任しなければなりません。

特別代理人を選任せずに遺産分割協議を進めると、作成した書面も無効になります。

遺産分割協議書の署名には「特別代理人」と明記することが必須となるため、覚えておきましょう。

公正証書にすることもできる

公証役場に遺産分割協議書の作成を依頼すれば、公正証書として発行できます。

公正証書は公務員である公証人が作成するため、遺産分割協議書の信頼性が高くなるというメリットがあります。

また代償分割や特別寄与料などトラブルにつながりそうな相続がある場合、公正証書を証拠として強制執行が可能です。

遺産分割協議書を公正証書にする場合、以下の書類を用意した上で公証役場に相談しましょう。

  • 被相続人が死亡した事実がわかる書類(戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍など)
  • 被相続人と相続人の続柄を証明する書類(戸籍謄本・改製原戸籍など)
  • 各相続人の印鑑証明書または顔写真つきの身分証明書
  • 各相続人の実印
  • 遺産の対象となる不動産の書類(不動産登記事項証明書および評価証明書)
  • 遺産の対象となる預貯金の書類(預金通帳や残高証明書)
  • その他、相続財産の明細がわかる書類

なお、公証役場で遺産分割協議書を作成する場合、公証人手数料を支払う必要があります。

公証人手数料の金額は遺産分割協議書の内容によって異なるため、公証役場で確認してみてください。

遺産分割協議書を作成する場合の流れ

実際に遺産分割協議書を作成するときは、相続人や財産を入念に確認した上で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議書を作成する際のおおまかな流れは以下のとおりです。

  • 相続人・財産の確定をする
  • 遺産分割協議をする
  • 遺産分割協議書の作成・押印をする

それぞれ順番に解説します。

相続人・財産の確定をする

まずは相続人の確認を行い、全員に遺産分割協議に参加してもらうよう連絡を取ります。

せっかく遺産分割協議書を作成しても、相続人全員が参加していなければ無効になるからです。被相続人の戸籍を調査し、相続人の範囲を確定させましょう。

被相続人が遺した財産の確認や評価なども、同時に進めていきます。

あとから新たな財産が判明すると、遺産分割協議がやり直しになるケースもあるため、遺品やパソコンなどを漏れなくチェックすることが重要です。

住宅ローンや借金など、マイナスとなる財産がないかどうかもあわせて確認してみてください。

遺産分割協議をする

相続人と財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。

事前に相続財産を一覧でまとめた「財産目録」を作成しておけば、遺産分割協議がスムーズに進行するでしょう。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。そのため、全員が納得できるような形で各相続人の相続分を取り決めましょう。

遺産分割協議書の作成・押印をする

遺産分割協議で相続人が合意した内容に基づき、遺産分割協議書の作成を行います。

遺産分割協議書は相続人全員が合意したという証拠になるため、正確な入力が必要です。

内容を相続人全員で確認したら、人数分の部数を発行して署名押印を行います。

以上で遺産分割協議書の作成は完了です。紛失しないよう大切に保管しましょう。

遺言書がない場合、遺産分割協議書が必要

一般的に、遺産分割協議書が必要になるのは遺言書がない場合です。

相続の手続きを進めるにあたり、複数人の相続人がいる場合は「誰がどの財産を相続するのか」という証明書の提示が求められるからです。

たとえば遺産の中に預貯金や不動産があり、名義変更や相続登記の手続きを行う際に遺産分割協議書を提出する必要があります。

もしも遺言書がある場合は、そのまま証明書として使用が可能です。

しかし、遺言書がある場合でも、相続人全員が合意すれば遺言書どおりに遺産を分割しないケースがあります。

遺言書に従って分割しない場合や、遺言書に不備が見つかった場合は、遺産分割協議書が必要になるため注意しておきましょう。

遺言書に従う場合、遺産分割協議書は不要

遺言書の内容や法定相続分に従って遺産を分割する場合、遺産分割協議書の作成は不要です。

法定相続分は、民法で定められている相続人が2人以上いる場合の相続割合です。

基本的には配偶者が相続人となり、その他の親族は次の順序で相続人になります。

相続順位 相続割合
第1順位 配偶者 2分の1 子ども 全員で2分の1
第2順位 配偶者 3分の2 父母 全員で3分の1
第3順位 配偶者 4分の3 兄弟姉妹 全員で4分の1

上記のとおりに相続をおこなう場合、遺産分割協議書を作成しなくても相続手続きが進められます。

また、相続人が1名の場合も遺産分割協議書は必要ありません。

遺産分割協議書は目的に応じて提出場所が異なる

遺産分割協議書は、相続手続きの目的に応じて金融機関や税務署、法務局など提出場所が異なります。

主な提出場所および目的は以下のとおりです。

提出場所 目的
金融機関 口座の名義変更
証券会社 保有株式や債券の移管
法務局 不動産の名義変更(相続登記)
運輸支局 自動車の名義変更
税務署 相続税の申告

提出には基本的に原本を使用する必要があります。

各相続人が保管する分とは別に、公的機関へ提出する分の遺産分割協議書も用意しておくと良いでしょう。

遺産分割協議書作成に期限はないが早めに取り組む

遺産分割協議書の作成期限は、法律で明確に定められてはいませんが、早めに取り組むことをおすすめします。

相続に関する各手続きには期限が設けられており、遅くなるほどさまざまな権利が無くなってしまうからです。

たとえば相続放棄は「相続開始の事実を知ったときから3か月以内」に権利を行使しなければできなくなります。

相続放棄ができない状態になると、債務や借金などマイナスの遺産も相続しなければなりません。

また相続税は被相続人が亡くなってから10か月以内に申告し、納税する必要があります。

10か月を過ぎると延滞税を請求されるため、早めに遺産分割協議書を作成し、納税しましょう。

まとめ

遺産分割協議書の書き方に厳密な指定はありませんが、被相続人や各相続人、財産の情報などを正確に記載する必要があります。

財産によって書き方は異なるため、記事で紹介した雛形を参考にしながら遺産分割協議書を作成してみてください。

遺産分割協議書を作成したあとは、相続人全員で署名押印の上、大切に保管しておきましょう。

遺産分割協議書に関するよくある質問

産分割証明書はどう役立つ?

遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必要であるのに対し、遺産分割証明書は1人の相続人の署名押印のみで成立するため、遠方の相続人がいる場合に役立ちます。

もしも遠方に住んでいる相続人に署名押印をしてもらうために遺産分割協議書を郵送でやり取りすると、時間も掛かる上に紛失の恐れがあります。

遺産分割証明書は法定相続人それぞれが1人で作成できるため、相続人が遠方に住んでいても作成しやすい点がメリットです。

遺産分割協議書の作成は誰に依頼する?

遺産分割協議書は相続人が作成することもできますが、場合によっては士業の専門家への依頼も検討しましょう。

相続人が複数名いる場合は意見がまとまりにくく、トラブルにも発展しやすいからです。

遺産分割協議書の作成のみを依頼するのであれば行政書士、不動産関連の変更手続きがある場合は司法書士に依頼しましょう。

相続税の申告に関する書類作成は税理士に依頼します。

遺産分割に関するトラブル解決から書類作成まで一貫して任せたいのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。