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非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じ!トラブルの予防策を紹介

非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じ!トラブルの予防策を紹介非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じ!トラブルの予防策を紹介

将来の相続を考えた場合に、非嫡出子(例:隠し子)がどう扱われるか、不安に感じる方は多いのではないでしょうか。

なかには、非嫡出子は相続とは無関係だと思う方もいるかもしれません。

しかし、父親から認知を受けている以上、非嫡出子にも相続権が与えられます。法律上、相続割合も、嫡出子(いわゆる普通の子)と同じです。

正当な相続権を持つ以上、遺産分割協議をする際は、非嫡出子の参加が求められます。遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要だからです。

ですが、父親の隠し子と家族が一堂に会する遺産分割協議は、対立を招き、相続トラブルに発展する可能性が高いです。対立を和らげるためには、生前の対策が重要になってきます。

実は、非嫡出子を含む相続は、遺産分割協議を避けることで解決に至りやすくなります。例えば、遺言の作成が考えられます。遺言書を作成し、遺産の分割方法を指定しておけば、非嫡出子と家族が顔を合わせずに相続手続きを進められる可能性が高いです。

この記事では、非嫡出子の相続における位置づけや、非嫡出子の存在が招くトラブル内容、トラブルに対する解決策を紹介しています。

非嫡出子と父親の家族が対立し、相続が泥沼化するのを避けたい方は、参考にしてみてください。記事を読んだあとであれば、非嫡出子と相続との関係が理解でき、やるべきことが明確になるでしょう。

非嫡出子と嫡出子の相続割合は同じ

非嫡出子と嫡出子の相続割合は同じになります。

非嫡出子も嫡出子と同じく、親の子供である事実に変わりはなく、平等に扱われるべきだからです。現行法上、嫡出子と非嫡出子で、相続割合に差を設ける条文も見当たりません。

婚姻してない男女の子供だからといって、相続割合に関し、何か違いがあるわけではないのです。

ただし、嫡出子か非嫡出子かで、相続分が異なる時期はありました

実は、相続分に関する規定は平成25年に改正がされており、改正前の民法(旧民法第900条第4号ただし書き)には以下の文言がありました(現在は削除済み)。

嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし

引用元 法務省

この文言が民法の条文に存在したため、改正前の段階では、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分しか認められませんでした。しかし、そのあと法律改正がされたため、非嫡出子の相続分は嫡出子と同じ扱いになっています。

嫡出子 非嫡出子
改正後(現在) 300万円 150万円 150万円(嫡出子と同じ)

このように、嫡出子か非嫡出子かで、相続分に違いが生じることはありません。

ただし、非嫡出子が相続権を持つには認知が必要です。認知を受けていない子供は、法定相続人にはなれないため、そもそも相続分の話にはなりません。

認知とは、父または母が、婚姻していない男女の間に生まれた子、つまり非嫡出子を、血縁のある子だと認める行為です(詳細は後述)。

非嫡出子とは婚姻関係のない男女との間に生まれた子ども

非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子です。

非嫡出子の具体例として分かりやすいのは、不倫相手との間にできた隠し子です。浮気相手との間にできた隠し子は、非嫡出子の典型例といえます。

また事実婚の夫婦の間に生まれた子も、非嫡出子に該当します。結婚届を役所に提出していないだけで、双方結婚の意思があり共同生活を営んでいれば、事実婚に該当するといえるでしょう。

  • 不倫相手との間にできた子(隠し子)
  • 事実婚をしている男女の間にできた子

両親が「婚姻関係にない」ことが、非嫡出子か否かの判断する上でのポイントであり、非嫡出子を「婚外子」と呼ぶ場合もあります。

非嫡出子は、嫡出子と比べて、不都合を感じる場面もあるかもしれません。非嫡出子が負うデメリットとしては、次のことが考えられます。

  • 相続権を主張するには認知される必要あり
  • 養育費を請求するには認知される必要あり

隠し子や事実婚夫婦の子であっても、親の相続に関して遺産を受け取る権利を主張したり、親に対して養育費の支払いを求めたりできます。

親から認知を受けさえすれば、非嫡出子であっても、嫡出子と同程度の権利を主張できるのです。相続分も、嫡出子非嫡出子で違いはありません。

しかし、非嫡出子が嫡出子と同じ扱いを受けるには、親から認知される必要があります。

事実婚の夫婦から生まれた子であれば、父親からの認知も受けやすいでしょう。しかし、愛人との間に生まれた隠し子の場合、立場的には複雑です。本妻との関係を気にして、父親が認知しない可能性もあります。

非嫡出子側から父親に認知を促すこともできますし、認知が行われるよう裁判所に訴えることもできます。

しかし権利の主張にあたり、認知を得なければならないそのこと自体が、非嫡出子として生まれた子にとってデメリットともいえるでしょう。

非嫡出子は遺留分の請求もできる

非嫡出子は、遺留分の請求もできます。

遺留分とは、遺産相続における最低保証のようなものです。

認知がされている限り、非嫡出子にも遺留分が与えられます。遺留分の割合も、嫡出子と非嫡出子で違いはありません。

相続人が、妻、子(嫡出子)、隠し子(非嫡出子)の3人である場合、各相続人の遺留分割合は次のようになります。遺留分の計算はやや複雑ですが、法定相続分の半分になるケースがほとんどです。

妻(配偶者) 相続財産の8分の2
嫡出子 相続財産の8分の1
非嫡出子 相続財産の8分の1

遺留分は法定相続分と混同しやすいです。

しかし法定相続分は、相続財産の分け方を示した、目安のようなものにすぎません。相続の配分につき具体的な指定が遺言書に記載されていれば、法定相続分よりも、遺言の内容が優先されます。

ですが、遺言の内容が常に100%優先されると、遺族の生活困窮につながったり、不公平を招いたりすることにもなります。

このような過度に偏りのある遺産相続を是正する手段として、民法は遺留分の規定を設けました。遺留分を与える形で、相続人に最低限度の相続分を保証し、相続に対する期待を保護しているのです。

法定相続分と異なり、遺留分には強制力があります。遺留分を侵害する遺言は、死亡後、遺留分権利者から内容を覆される恐れがあります。遺留分は法定相続分よりも、拘束力が強いのです。

ただし、遺留分は主張しなければ効果を得られません。遺留分の主張がされなければ、相続財産の配分は、遺言内容通りになります。

また、遺留分の主張には時効の制限もあります。遺留分侵害請求権の時効は、相続の開始及び遺留分が侵害された事実を知ったときから1年です(民法1048条)。

遺言書を作成する際は、非嫡出子の存在を意識しましょう。

非嫡出子も非嫡出子と同様に遺留分権利者となります。非嫡出子の遺留分を無視した遺言は、非嫡出子からの遺留分侵害請求を招く危険があります。

なお、未認知の非嫡出子は、遺留分を持つことはありませんが非嫡出子側から認知の訴え(後述)を提起される可能性はあります。

非嫡出子が父親の遺産を相続するためには認知される必要がある

非嫡出子が父親の遺産を相続するためには、父親から認知される必要があります。

認知は、非嫡出子に対して、自分の子であると認める行為です。法律上、父と非嫡出子の親子関係は、認知により成立します。

父親の財産を相続したいと考える非嫡出子にとって、父から認知されることは重要です。認知があってはじめて、父親の財産を相続する権利が非嫡出子に与えられるからです

認知がされたあとは、相続に関して嫡出子と同じ扱いがされ、非嫡出子だからといって、法定相続分の割合が減るわけではありません。

認知の方法は複数あり、以下の3つに分類されます。

  • 任意認知
  • 遺言認知
  • 強制認知

認知は父親からするのが基本で、任意認知と遺言認知は、父親からする認知に該当します。

通常、任意認知が選択されますが、認知の事実を明らかにしたくない状況下では、遺言認知が選択される傾向にあります。例えば、不倫相手との間に生まれた隠し子に対しては、遺言認知が選ばれる確率が高くなります。

一方で強制認知は、子供側からアクションを起こす方法です。父親が認知をしない、あるいは拒む場合に、裁判所に訴えて、子供側から認知を迫る流れになります。

非嫡出子に財産を相続させたいと考える父親は、任意認知または遺言認知を検討することになるでしょう。一方、父親の財産を相続したいと考える非嫡出子は、認知を拒まれた場合、強制認知が取り得る手段となります。

父親から認知されているか否かの事実は、戸籍で確認できます。認知がされていれば、父親の戸籍及び認知された子の戸籍に、認知があった旨が記載されるからです。

父親が自分の意志で認知する「任意認知」

任意認知は、父親が自らの意思によりする認知です。

非嫡出子に自分の財産を相続させる意思のある父親は、任意認知をすることになります。

ただし任意認知は、非嫡出子の状況によって、手続き要件が異なります。認知しようとする非嫡出子が成人の場合は、本人の承諾が必要になります。

また、任意認知は相手が胎児であっても可能ですが、その場合は、母親の承諾が必要です。認知の届け出をする際も、胎児の場合は、提出先が母親の本籍地を管轄する市町村役場になります。

未成年の認知 成人した子の認知 胎児の認知
承諾 承諾不要 子の承諾 母親の承諾
届出先の市町村役場 父or子の本籍地(注) 父or子の本籍地(注) 母親の本籍地

(注)父の場合は所在地でもOK

父親が認知する際の、一般的な提出書類は、以下の通りです。

  • 認知届出書
  • 父親の印鑑・本人確認書類
  • 認知する父の戸籍謄本
  • 認知される子の戸籍謄本
  • 子の承諾書(成人した子を認知する場合)
  • 母親の承諾書(胎児を認知する場合)

父親が亡くなった後に遺言によって認知させる「遺言認知」

遺言認知は、遺言による認知です。

認知は、遺言書にその旨を記載する形で、実行することもできます。

遺言書は自らの意思で作成するものであり、その意味で、遺言認知は任意認知の1類型といえるでしょう。

遺言認知は、(少なくとも自分が生きている間は)隠し子の存在を秘密のままにしておきたいと考える父親に、利用される傾向があります。生前中に任意認知をすると、戸籍の記載等から、妻や家族が隠し子の存在を知る可能性があるからです。

隠し子の存在が明るみになると、たいがいの場合、妻や家族はよい気分がしないでしょう。家族間のもめ事に発展する可能性があります。

しかし遺言認知を選べば、隠し子の存在を秘密にしたまま、隠し子に相続財産を渡せます。生前中のトラブルを避けたい方にとって、使い勝手のよい側面が遺言認知にはあるのです。

ただし遺言に認知の旨を記載する以上、相続手続きの過程で、隠し子の存在は明らかになります。

突然現れた隠し子の存在に、家族は驚くはずです。

認知された隠し子は、相続権を有するため、遺産分割にも影響を与えます。隠し子の出現により、家族の法定相続分が少なくなるため、遺産をめぐる争いに発展するかもしれません。

心理的なショックに重ねて、遺産分割協議も複雑になるため、予期せぬ隠し子の存在は家族に混乱をもたらします。

なお、非嫡出子に対して遺言認知をする際は、下記の内容を遺言書に記載します。

  • 認知する意思
  • 非嫡出子の母の氏名・住所・生年月日
  • 非嫡出子の氏名・住所・生年月日
  • 非嫡出子の本籍及び戸籍筆頭者
  • 相続させたい財産の詳細(相続させる財産を指定する場合)
  • 遺言執行者の氏名・住所

法的手続きで認知をさせる「強制認知」

強制認知は、非嫡出子の側からアクションを起こす形での認知です。

父親から認知を拒否された場合に、非嫡出子の側から、強制認知の手段が取られることがあります。

強制認知は、裁判所を通して行われるのが特徴です。父親に認知を望む子が、家庭裁判所に調停を申し立て、調停で決着がつかなければ訴訟に以降します。

非嫡出子の相続で考えられるトラブル

相続人に非嫡出子が含まれる相続は、トラブルが起きやすいのが特徴です。

一般的には、以下のトラブルが発生しやすいです。

  • 死亡後に非嫡出子の存在が判明し家族が混乱する
  • 遺産分割協議が無効になる
  • 非嫡出子と連絡が取れず遺産分割協議が進まない
  • 非嫡出子と嫡出子の対立を招く

非嫡出子の存在は、戸籍の収集がきっかけで、父親の死亡後に発覚するケースが多いです。非嫡出子の存在は相続分にも影響するため、残された家族に混乱を招き、遺産分割協議停滞の原因にもなります。

連絡が取りにくい、心理的に対立しやすい等の特徴もあり、非嫡出子は、相続において悩ましい存在といえるかもしれません。

被相続人が亡くなった後に非嫡出子がいることが分かった

本人の死後、本人に非嫡出子がいた事実が発覚し、トラブルに発展する場合があります。

本人の死後に、非嫡出子の存在が明るみになりやすいのは、相続手続きを伴うからです。

相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集することになりますが、戸籍には認知の事実が記載されています。戸籍を集める過程で「認知」の文字を目にするため、相続人らは、必然的に認知された非嫡出子の存在を知るのです。

父親に非嫡出子がいたからといって、必ずしもトラブルになるとは限りません。しかし、非嫡出子が不倫相手との間にできた子だった場合、事態は深刻になりがちです。

父親の不倫相手の子が、相続分を主張してきたとしましょう。

家族としては、複雑な気持ちになるどころか、嫌悪感を抱く可能性すらあります。父親に隠し子がいたことが原因で、相続財産の取り分が減るかもしれないからです。

しかも民法改正により、嫡出子と同じ法定相続分が、非嫡出子には与えられるようになりました。嫡出子の立場からすると、なんで家族でもない人間が私たちと同じ分の相続分を持つのかと、不快な気持ちを抱くかもしれません。

また、遺産分割協議等、相続では相続人全員の参加や同意が求められる場面もあります。相続の段階ではじめて目にする相手との話し合いはスムーズに行かない場合も多く、手続きが停滞する恐れがあります

このように、相続手続きのなかで突如現れた非嫡出子の存在は、家族に混乱をもたらす危険があるのです。

非嫡出子を含めずに遺産分割協議を実施した結果、手続きが無効になった

非嫡出子の存在を無視して遺産分割協議をした場合、原則、その遺産分割は無効になります。遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要だからです。

非嫡出子の存在は、相続手続きにおける戸籍収集の過程で、明らかになる場合が多いです。

しかし、戸籍収集を怠ったり、戸籍の中身をよく確認しなかったりした結果、非嫡出子の存在が見過ごされるケースもあります。

それゆえ非嫡出子の存在が認識されないまま遺産分割協議がなされ、あとになって遺産分割無効の判定がされてしまう場合もあるのです。

遺産分割が無効の場合、非嫡出子を交えて、あらためて遺産分割協議をすることになります。

再度の遺産分割協議は、贈与税や所得税等、課税のきっかけにもなります。遺産分割協議の無効は、手間がかかるのみならず、経済的な損失にもつながるのです。

遺産分割協議をしたくても非嫡出子と連絡が取れない

遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要です。

認知されている限り、非嫡出子も相続人の地位を有します。それゆえ、有効な遺産分割協議を進めるには、非嫡出子も協議に参加させなければなりません。

しかし、非嫡出子の連絡先や居場所の特定には、労力がかかることがあります。被相続人の家族と非嫡出子は、疎遠な関係である場合が多いからです。

特に隠し子との関係は、疎遠である場合がほとんどです。父親の不倫相手の子と連絡を取り合う関係は、珍しいといえるでしょう。

非嫡出子の連絡先を調べるにあたっては、被相続人の戸籍が有力な資料となります。戸籍には、非嫡出子の本籍地が記載されているからです。

非嫡出子が本籍地に住んでいる場合、戸籍の記載を頼りに、連絡を取れる可能性が高いです。

一方、非嫡出子が本籍地に住んでいない場合、連絡を取るための手段は、より複雑になります。

具体的には、非嫡出子に関する戸籍の附票を請求します。戸籍の附票は、戸籍に記載された人物の住所履歴が記された書面です。戸籍の附票で住所が特定できれば、非嫡出子と連絡が取れるかもしれません。

戸籍や戸籍の附票によっても連絡が取れない場合、不在者財産管理人選任の選択肢があります。

不在者財産管理人は、連絡がつかない人間の代理人です。家庭裁判所へ申し立て、不在者財産管理人の選任が認められれば、不在者財産管理人を非嫡出子の代理人として遺産分割協議に参加させられます。

ただし不在者財産管理人の選任には、予納金の支払い(裁判所に支払う手数料)が必要だったり、管理人の選任まで時間を要したり、不都合な部分もあります。

相続人に連絡の取れない非嫡出子がいると、手間やコストがかかり、遺産分割協議が停滞する可能性が高いです。

非嫡出子と嫡出子が対立する

非嫡出子と嫡出子は、対立しがちです。

非嫡出子が不倫相手の隠し子であった場合、家族としては嫌悪感を抱くのが自然で、両者の対立はさらに深刻になるでしょう。

人間関係の対立は、遺産分割協議の停滞を招きます。

非嫡出子と連絡を取り、遺産分割協議に参加させることに成功したとしても、協議内容につき合意が得られるかは別の話です。

協議内容をめぐり、非嫡出子とその他の相続人が対立する場面はよく見られます。

遺産分割協議の成立には相続人全員の合意が必要で、非嫡出子の同意がない以上、遺産分割手続きは進みません。協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判等、最終的には裁判所の力に頼らざるを得なくなります。

非嫡出子の存在は、人間関係の対立を生み、遺産分割協議を停滞させる要因となります。

非嫡出子との相続トラブルの予防策

非嫡出子の存在が招く、相続トラブルの予防策を紹介します。

  • 戸籍の取得で非嫡出子を有無を確認する
  • 生前中に認知手続きをすませる
  • 遺言書の作成し遺産の分割方法を指定する
  • 生前贈与であらかじめ財産を渡しておく
  • 非嫡出子に相続放棄を求める

家族ができる予防策としては、戸籍の取得が考えられるでしょう。戸籍の記載により、認知済みの非嫡出子の存在が明らかになるため、遺産分割協議書のやり直しを防げます。

一方で、非嫡出子を持つ父親が取り得る対策は、複数考えられます。トラブルを防ぐ上で、特に重要なのは遺言書の作成でしょう。遺言書があると、非嫡出子と家族の折衝を避けられるからです。

配偶者の戸籍を取得して非嫡出子がいないか確認する

相続が発生した場合、家族としてすべき作業は、死亡した配偶者の戸籍の確認です。

戸籍の確認なしに遺産分割協議を進めると、あとで非嫡出子の存在が発覚した場合に、やり直しになる可能性があるからです。

遺産分割協議は、相続人全員の参加が前提となります。(認知された)非嫡出子の存在を無視した遺産分割協議は無効です。認知がされている限り、非嫡出子もれっきとした相続人だからです。

非嫡出子の存在は、戸籍の請求で確認できます。

父親が死亡した際は、父親の戸籍を取り寄せましょう。戸籍には、認知の事実が記載されているからです。戸籍に目を通せば、認知された非嫡出子の存在の有無を確認できます。

ただし、現在の戸籍に、認知の事実が記載されていない場合もあります。転籍があった場合、転籍後の新しい戸籍には、認知の事実が記載されないからです。

A市の戸籍に認知の事実が記載されていても、その後B市に転籍した場合、B氏の戸籍には認知に関する記載がないのです。

戸籍請求の際は、出生から死亡に至るまでのすべての戸籍を収集し、各戸籍をチェックしましょう。現在戸籍の記載のみを頼りに相続人を特定してしまうと、認知された子どもの存在を見逃す可能性があります。

非嫡出子の発覚による遺産分割協議のやり直しを防ぐためにも、相続があった際は、戸籍の収集作業を急がなければなりません。

また、すでに非嫡出子の存在を把握している場合は、相続があった際、すぐに連絡を取れる状態にしておくことも大切です。非嫡出子と連絡が取れなければ、遺産分割協議が進まないからです。

なお、認知がされていない非嫡出子は、戸籍に情報が記載されません。未認知の非嫡出子の存在は、戸籍からは判断できず、特定が困難です。もっとも、認知がされていない非嫡出子は、相続する権利を持たず、相続の対象から外れます。

生前に非嫡出子の認知を行う

非嫡出子のいる方は、生前中に認知の手続きを取っておくほうが、相続後のトラブル回避の点では望ましいです。

認知後は、戸籍に認知の事実が記載されます。それゆえ生前中の認知は、非嫡出子の存在がバレやすく、家族ともめるリスクがあるのは確かです。

家族とのもめごとを避けたい方にとっては、そもそも認知をしないという選択もあり得るでしょう。

しかし、父親が認知をしないでいると、いずれ非嫡出子側から認知を迫られる可能性はあります。認知を拒めば、裁判で訴えられる可能性があります(強制認知)。DNAの鑑定結果が証拠となるゆえ、血の繋がりのある子からの認知要求を退けるのは難しいです。

また、強制認知の訴えは、父親が死んだあとでも実行できます。生前中のみならず、死後においても認知は要求できるのです(死後認知)。

死後認知の制度があるため、父親の死後であっても、非嫡出子は認知を得て相続権を主張できます。死後になってから現れた隠し子の存在は、残された家族にとっては、寝耳に水でしょう。

同じことは、遺言認知にも当てはまります。

遺言認知の場合、家族は、死後になってはじめて遺言の内容を知ることとなります。遺言により、突然明るみになった非嫡出子の存在に、家族が戸惑うのは当然です。

家族が直面する状況を考えると、死後になって、家族が非嫡出子の存在を予告なしで知らされるという状況は取りのぞいたほうがよいでしょう。

生前中に認知をすませ、家族との非嫡出子の間の調整を図れば、相続時のトラブルを未然に防げます。

遺言書を作成する

遺言書の作成は、非嫡出子とそのほかの相続人とのトラブルを防ぐのに役立ちます。

遺言書を作成し、相続財産の分け方を決めておけば、遺産分割協議をする必要がなくなるからです。

非嫡出子を含む相続トラブルは、多くの場合、遺産分割協議が関係しています。

非嫡出子を交えた遺産分割協議には、以下のような問題点があるからです。

  • 非嫡出子をのぞいた遺産分割協議は無効になる
  • 非嫡出子と連絡を取る必要がある
  • 非嫡出子と遺産について話し合う必要がある

相続人らにとって、非嫡出子を交えた遺産分割協議は大変です。

非嫡出子を呼び寄せる必要がありますし、呼び寄せたところで、話し合いが円滑に進むとも限りません。非嫡出子とそのほかの相続人は、会ったこともない、他人の関係である場合が多いからです。

遺産分割協議は、相続人らにとって、トラブルの種といえます。

この点、遺言で遺産分割の方法を指定しておけば、遺産分割を開く必要がなくなります。非嫡出子とそのほかの相続人が顔を合わせることなく、遺産の分割が行われたのと等しくなります。

遺言書を作成し、非嫡出子と家族の間で争いが生まれないような遺産の配分ができれば、非嫡出子にとっても、家族にとってもよい相続となるでしょう。

遺産配分の内容は、遺言をする本人が自由に決められます。非嫡出子に一切の財産を与えない内容にしてもよいですし、非嫡出子に渡す遺産を嫡出子より少なく指定しても構いません。

ただし、遺留分には注意が必要です。非嫡出子が持つ遺留分よりも下回る遺産の配分は、トラブルの原因になります。相続のあと、不満を感じた非嫡出子から、遺留分を主張される恐れがあるからです。認知を受けた非嫡出子には、遺留分も与えられるという事実を、確認しておきましょう。

なお遺言は、遺産の配分を指定するのみならず、認知をするのにも活用できます。法律は、遺言による認知も認めています(民法781条)。

生前贈与を行っておく

生前贈与は、相続トラブル回避の手段になりえます。

生前贈与は、争いの生まない遺産の配分をするのに役立つからです。

生前贈与は、生前中にあらかじめ財産を贈与する行為で、生前贈与された財産は相続財産ではなくなります。

贈与の対象は、誰でも構いません。家族である必要はなく、財産を渡したいと思う相手なら、生前贈与可能です。非嫡出子への生前贈与も、問題なくできます。

相続財産ではなく、通常の財産として非嫡出子に贈与することで、相続時のトラブルを避けられる可能性は高まります。贈与の形ですでに財産を受け取っている非嫡出子としては、相続財産がもらえなくても、納得しやすいからです。また、確実に、非嫡出子に財産を渡す手段にもなります。

生前贈与で事前に財産を渡しておけば、遺産をめぐる対立を避ける手段となり、遺産分割協議が停滞する可能性も低くなるでしょう。

ただし、生前贈与の時期には注意です。

相続発生から10年以内にされた贈与財産については、特別受益(前渡しがされた遺産)として、相続財産に含まれるからです。相続人の中に特別受益を主張する者がいると、話がややこしなくなり、遺産分割の停滞を招きます。

生前贈与を検討するのであれば、早めの実践をおすすめします。

非嫡出子に相続放棄をしてもらう

非嫡出子に相続の放棄をしてもらえば、非嫡出子とそのほかの相続人の、遺産をめぐる対立を避けられます。

相続放棄が成立すると、最初から相続人ではなかったことになり、相続する権利も失われるからです。

ただし、相続放棄は、相続人自らの意思でなされる必要があります。強要による相続放棄は、認められていません。

非嫡出子が相続放棄を受け入れる意思があるのであれば、比較的容易に、トラブルは避けられます。

しかし、相続人にとって、(被相続人に多額の借金がある場合等をのぞけば)相続放棄するメリットは少ないです。非嫡出子が、積極的に相続放棄を受け入れる可能性は低いでしょう。

仮に非嫡出子が、相続放棄をすると約束しても、その約束が守られるとは限りません。相続放棄は、本人死亡後に申し立てられる手続きだからです。事前の相続放棄は認められておらず、「相続放棄します」等の念書にも、法的効果はありません。

非嫡出子に相続放棄を持ちかける際は、生前贈与を実行するなど、何かしらの対価が必要だと思われます。

まとめ

父親に非嫡出子がいる場合、非嫡出子の存在に注意する必要があります。

父親から認知を受けた非嫡出子には、財産を相続する権利が与えられるからです。

しかも、非嫡出子と嫡出子の相続割合は同じです。法律上、非嫡出子という理由のみで不利に扱われることはありません。

非嫡出子の存在は、遺産分割協議で問題となる場合が多いです。

遺産分割協議は全員参加が基本で、非嫡出子も参加することになります。非嫡出子が隠し子である場合、家族が嫌悪感を抱く可能性が高く、相続トラブルに発展しがちです。

非嫡出子とそのほかの相続人の紛争を防ぐには、遺言の作成がおすすめです。遺言書のなかで遺産の分割方法を指定しておけば、遺産分割協議の必要がなくなるからです。

遺産分割協議の必要がなくなれば、非嫡出子と家族が顔を合わせる必要もなくなります。結果として、トラブル発生の可能性も低くなるでしょう。

遺言書の作成に限らず、相続時のトラブルを避けるには、生前中の対策が肝心です。