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前妻の子に相続させない4つの方法!今からできる対処法を解説

前妻の子に相続させない4つの方法!今からできる対処法を解説

前妻との間にもうけた子供には相続権があるため、実の父親が亡くなった時は必ず相続人になります。しかし、なかには「前妻の子に相続させたくない」「後妻と後妻の子に多くの財産を残してあげたい」と考えている方も多いでしょう。
その場合は、遺言書の作成や贈与、生命保険への加入、名義変更など生前のうちに相続対策を取っておく必要があります。そこで本記事では、前妻の子に相続させない方法や注意点について解説していきます。

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前妻・前妻の子に関する相続権についておさらい

ここでは、前妻の子に相続させない方法を見ていく前に、前妻・前妻の子に関する相続権についておさらいしていきます。
特に以下の3つは重要ポイントとして押さえておきましょう。

  • 前妻には相続権無し
  • 前妻のこと後妻の子で法定相続分は同じ
  • 前妻の子にも遺留分はある

前妻には相続権は無し

結論からいうと、前妻との間にもうけた子供には相続権がありますが、前妻本人には相続権がありません。法定相続人になれるのは、被相続人の「配偶者」と「血族相続人(子供・両親・祖父母・兄弟姉妹)」です。そのため、前妻は離婚した時点で配偶者ではなくなり、相続権も失います。
ただし、前妻の子が未成年の場合は前妻が法定代理人になるため、遺産分割協議には前妻が参加することになります。また、親には親権を持つ未成年の子供の財産を管理する権利が民法で認められています。前妻の子が相続した遺産を前妻に使い込まれてしまう恐れもあるため注意が必要です。

前妻の子と後妻の子で法定相続分は同じ

前述した通り、離婚した前妻本人には相続権がありませんが、前妻との間にもうけた子供には相続権があります。離婚によって子供が前妻に引き取られていたとしても、親子であることに変わりないためです。
また、民法では前妻の子も後妻の子も同じように扱うため、法定相続分(民法によって定められている相続割合)も後妻の子と同じです。遺言書がなく、遺産分割協議を行わない場合は、法定相続分通りに遺産分割を行います。

  • 常に相続人:配偶者(現在の妻)
  • 第一順位:子供(子供が先に亡くなっている場合は孫)
  • 第二順位:両親(両親が先に亡くなっている場合は祖父母)
  • 第三順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥や姪)

血族相続人には相続順位があり、常に相続人である配偶者の次に第一順位から相続人になっていきます。その際、前妻の子も後妻の子と順位は同じです。たとえば、後妻・後妻の子・前妻の子・両親・兄・姉が健在の場合、自身が亡くなった時の法定相続人は後妻・後妻の子・前妻の子になります。それぞれの法定相続分は下記の通りです。

相続する人 法定相続分
配偶者(後妻) 2分の1
後妻の子 4分の1
前妻の子 4分の1

相続遺産が5,000万円と仮定した場合、法定相続分通りに分割払いすると後妻は2,500万円、後妻の子と前妻の子はそれぞれ1,250万円相続することになります。

前妻の子にも遺留分はある

法定相続分通りに相続が行われるのは、基本的に故人が遺言書を作成していない場合のみです。故人が遺言書を作成していた場合は、法定相続分よりも遺言書による相続が優先されます。
ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人は「遺留分」という権利を持っています。遺留分とは、兄弟姉妹を除いた法定相続人が最低限相続できる割合のことです。
前妻の子も法定相続人に含まれるため、「前妻の子に相続させない」という内容の遺言書を作成しても、前妻の子は遺留分相当の金額を請求できます。なお、配偶者(後妻)・前妻の子・現在の妻の子の遺留分はそれぞれ以下の通りです。

相続する人 法定相続分
配偶者(後妻) 4分の1
後妻の子 8分の1
前妻の子 8分の1

遺言書の作成によって前妻の子の相続分を少なくするのは可能ですが、一切相続させないのは基本的に不可能です。面倒なトラブルを避けるためにも、遺言書を作成する場合は遺留分を考慮したうえで相続割合を決めましょう。

今からできる!前妻の子に相続させない8つの対処法

今からできる前妻の子に相続させない対処法としては、下記の8つがあります。

  • 生前贈与を行う
  • 生命保険を活用する
  • 自分名義の財産を減らす
  • 遺言書を作成する
  • 相続人の廃除を行う
  • 遺贈・死因贈与によって全ての財産を第三者に取得させる
  • おしどり贈与を活用する
  • 相続放棄をしてもらう

ここからは、上記の対処法についてそれぞれ詳しく解説していきます。

1. 生前贈与を行う

相続対象となる財産は被相続人が保有する財産であるため、後妻や後妻の子に生前贈与を行えば前妻の子の相続分を少なくできます。ただし、故人が亡くなった時点からさかのぼって10年以内に行われた生前贈与は、遺留分を算定する際の基礎となる「相続財産」に含まれるので注意が必要です。
亡くなる10年以上前に生前贈与した分は相続財産に含まれないため、前妻の子の相続分を少なくしたい場合は早めに生前贈与を活用しましょう。

2. 生命保険を活用する

生命保険金は故人の相続財産ではなく、受取人固有の財産として扱われます。そのため、原則として遺産分割協議や遺留分減殺請求の対象外です。
遺留分減殺請求とは、遺留分を全額、または一部しか受け取れなかった相続人が贈与を受けた相続人に対して、全額支払うよう請求できる制度です。
生前に生命保険に加入し、保険金の受取人を後妻や後妻の子に指定しておけば自分が死亡した後に支払われた保険金の全額は後妻や後妻の子の財産になるので、前妻の子には一切相続されません。
また、生命保険に加入すると保険料の支払いが発生します。保険料を支払った分だけ預金残高が減るため、後妻や後妻の子への相続分を確保しつつ前妻の子の相続分を少なくできる点もメリットです。
ただし、保険金の受取人である相続人と他の相続人との間で著しく不公平が生じる場合は、生命保険金も遺産分割協議や遺留分減殺請求の対象となることがあるので注意してください。

3. 自分名義の財産を減らす

前妻の子が相続できるのは実の親名義の財産のみで、後妻名義の財産は対象外です。自分名義の財産を減らせば、それだけ前妻の子の相続分も少なくなります。後妻や後妻の子にできるだけ多く相続させたい場合は、自分名義の不動産や自家用車などを後妻や後妻の子名義に変更しておくと良いでしょう。

4. 遺言書を作成する

相続人と相続割合を自分で決めたい場合は、必ず遺言書を作成しておきましょう。被相続人が遺言書を作成していた場合、遺産分割は法定相続分ではなく遺言書の内容に沿って行われます。そのため、前妻の子に相続させたくない場合は「現在の妻と子供に全て相続させる」という内容の遺言書を作成しておくと良いでしょう。
ただし、前述したように前妻の子には遺留分があるため、前妻の子が相続財産の8分の1を遺留分として請求してくる可能性があります。遺留分が原因の相続トラブルを回避するなら、前妻の子の遺留分を考慮した遺言書の作成がおすすめです。
また、遺言書の方式に不備があったり誰かに無理やり書かされた可能性があったりなど、遺言書に何らかの問題がある場合は内容が無効になってしまいます。そのようなトラブルを回避するためにも、遺言書は「公正証書遺言」を作成しておきましょう。
公正証書遺言とは、故人が生前に法務省管轄の機関である「公証役場」で作成した遺言書のことです。2名以上の証人の前で作成する必要があるため、無理やり書かされた訳ではなく本人の意思による遺言書であることを証明できます。被相続人の希望に沿った相続手続きをスムーズに進めるためにも、生前のうちから作成方法や必要な書類について確認しておきましょう。

5. 相続人の廃除を行う

「相続人廃除」とは、特定の相続人から相続権をはく奪できる制度です。前妻の子が民法892条で定められている下記の条件を満たしていれば、相続人廃除の手続きによって前妻の子の相続権をはく奪できる可能性があります。

  • 被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある場合
  • 著しい非行や悪行があった場合(被相続人のお金を使い込んだ・犯罪行為で家族に迷惑をかけたなど)

また、相続人廃除の手続き方法は下記の2つあります。

  • 生前に被相続人が家庭裁判所に申し立てる
  • 遺言書に相続人廃除の旨を記述し、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる

ただし、相続人廃除が認められるのは民法で定めている条件を満たしていて、かつ廃除が妥当であると家庭裁判所が判断した場合のみです。相続人廃除の手続きを行ったからといって、必ずしもそれが実現するとは限らないので注意してください。

6. 遺贈・死因贈与によって全ての財産を第三者に取得させる

被相続人は、遺贈・死因贈与によって相続人以外の第三者に遺産を相続させる方法もあります。なお、遺贈・死因贈与の意味については以下の通りです。

  • 遺贈:遺言書での一方的な意思表示に基づいて行われる贈与
  • 死因贈与:贈与する側とされる側の双方の合意に基づいて行われる贈与

遺贈や死因贈与によって全ての財産を第三者に渡せば、法定相続人が相続できる財産がなくなるため、前妻の子の相続分もなくなります。しかし、前妻の子から遺留分を請求された場合は、最低限の取り分が前妻の子へ渡ることも頭に入れておきましょう。

7. おしどり贈与を活用する

後妻との婚姻期間が20年以上の場合は、「おしどり贈与(贈与税の配偶者控除の特例)」という制度を活用するのも1つの手段です。おしどり贈与とは、下記の3つの要件を満たす夫婦間の贈与の場合、基礎控除とは別に2,000万円までの控除が受けられる制度のことです。

  • 一定の要件を満たす居住用不動産、または居住用不動産の購入資金の贈与であること
  • 夫婦の婚姻期間が20年以上経過してからの贈与であること
  • 贈与された年の翌年3月15日までに居住用不動産に住んでいて、その後も住む見込みがあること

おしどり贈与を活用すれば贈与税の負担を軽減しつつ、後妻への財産を確実に残せます。贈与した不動産や購入資金は後妻固有の財産になるため、前妻の子には相続されません。
また、通常であれば死亡前の3~7年間のうちに贈与された遺産は相続税の対象になります。旧税制では死亡前の3年間が対象でしたが、税制改正により2024年1月1日から徐々に延長し、最終的には対象期間が7年にまで延びることが決まりました。
しかし、おしどり贈与なら相続開始前3~7年以内の贈与であっても相続税の課税対象にはなりません。相続税対策としてもおすすめな方法です。

8. 相続放棄をしてもらう

被相続人が亡くなった後、後妻や後妻の子が前妻の子に対して相続放棄をお願いする方法もあります。前妻の子が相続放棄をすれば相続人から外れるので遺産の相続ができなくなり、遺留分請求の権利も失います。
しかし、相続放棄するかどうかは前妻の子の判断に委ねられているため、相続放棄の強制はできません。前妻の子が相続放棄に応じてくれる場合は、前妻の子が家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てます。
なお、申し立ては被相続人が亡くなったことを知った日、もしくは自分が相続人であることを知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。相続放棄の申し立てを行うのに必要な書類は以下の通りです。

  • 相続放棄の申述書
  • 相続放棄する者の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票

上記をすべて用意したうえで家庭裁判所に申し立て、正式に受理されれば手続き完了です。

【シーン別】前妻の子との間で発生しやすい相続トラブル

前妻の子との間で発生しやすい相続トラブルとしては、主に下記の4つのパターンが挙げられます。

  • 前妻の子による遺留分侵害額の請求が発生したとき
  • 前妻の子と音信不通なとき
  • 前妻の子が相続の手続きに非協力的なとき
  • 後妻・後妻との子が全ての財産を相続しようとしたとき

ここからは、上記の相続トラブルについてそれぞれ詳しく解説していきます。

前妻の子による遺留分侵害額の請求が発生したとき

前妻の子の遺留分を侵害する遺言書を作成した場合や贈与を行った場合、後妻・後妻の子と前妻の子との間で遺留分トラブルに発展しやすいです。前妻の子が遺留分侵害額の請求を行った場合、遺言書や贈与によって多くの財産を相続した人は前妻の子に対して遺留分侵害の相当額を支払わなければなりません。
トラブルを防ぐためにも、遺言書の作成や贈与を行う場合は、前妻の子の遺留分を考慮することをおすすめします。

前妻の子と音信不通なとき

前妻の子と音信不通だった場合、後妻や後妻の子が前妻の子へ父親の死亡を通達できず、相続手続きが進められないトラブルに発展しやすいです。
特に遺言がない場合、遺産の相続割合を話し合って決める遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議では法定相続人全員の参加・書類へのサインが必要なため、前妻の子と連絡が取れないまま遺産分割協議は進められません。
もし、前妻の子の住所や連絡先が分からない場合は、役所で故人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得して、前妻の子の現在の本籍地を調べます。
本籍地で戸籍の附票を取得すれば前妻の子の現住所が分かるので、その住所宛に手紙を出して連絡を取りましょう。手紙を出しても無視される場合は、専門家への相談や遺産分割調停を行うことを検討してみてください。

前妻の子が相続の手続きに非協力的なとき

前妻の子と連絡が取れても、「疎遠の父親とは一切関わりたくない」「後妻や後妻の子と顔を合わせたくない」などの理由で、前妻の子が相続の手続きに非協力的な場合もあります。また、前妻の子が未成年の場合は前妻が代理人になりますが、前妻が相続手続きに非協力的なケースも多いです。
前述の通り遺産分割協議を行う場合は法定相続人全員の参加が必要なので、法定相続人である前妻の子が非協力的だと後妻や後妻の子に手間をかけさせてしまうことになります。
しかし、遺言書があれば遺産分割協議を行う必要がないため、前妻の子の協力がなくても遺言書の内容に沿って相続手続きが進められます。前妻の子が非協力的な状況でも相続手続きがスムーズに進められるようにしておきたいなら、前妻の子の遺留分を考慮した遺言書を作成しておくのがおすすめです。

後妻・後妻との子が全ての財産を相続しようとしたとき

後妻や後妻の子が前妻の子に財産を渡さず、すべての財産を相続しようとして前妻の子との間でトラブルに発展するケースもあります。前妻の子は夫の子供でも、後妻からしてみれば赤の他人なので、前妻の子に夫の財産を渡したくないと思う方もいるでしょう。
実際に、遺言書や贈与、生命保険の活用など合法的な手段によって後妻や後妻の子が全ての財産を引き継ぐこと自体は問題ありません。しかし、前妻の子は後妻の子と同じように相続権や遺留分請求の権利を持っているため、相続させないように遺産の金額や内容を隠したり相続放棄を迫ったりするとトラブルに発展する原因になります。場合によっては遺産分割調停や審判に発展する恐れもあるため注意が必要です。
そのため、故意に遺産の金額や内容を隠したり、強制的に相続放棄させたりして前妻の子の相続権や遺留分を侵害してはいけません。遺産の金額や内容は前妻の子にも包み隠さず開示し、前妻の子から遺留分を請求された場合はきちんと対応するようにしましょう。

前妻の子に相続させない場合に注意しておきたい点

前妻の子に相続させない場合に注意しておきたい点としては、下記の4つあります。

  • 遺産分割協議には必ず参加してもらう
  • 年110万円以上の贈与には贈与税がかかる
  • 不動産の贈与は登記費用と不動産取得税がかかる
  • 特別受益に該当する場合がある

ここからは、上記の注意点についてそれぞれ詳しく解説していきます。

遺産分割協議には必ず参加してもらう

前述の通り故人が遺言書を作成していない場合は、法定相続人全員で遺産の相続割合を話し合って決める遺産分割協議を行う必要があります。前妻の子も法定相続人になるため、前妻の子にも遺産分割協議には必ず参加してもらいましょう。
なお、前妻の子が未成年の場合は、法定代理人となる前妻に参加してもらう必要があります。前妻の子を除外して、一部の相続人だけで行った遺産分割協議は無効になるので注意しましょう。

年110万円超の贈与には贈与税がかかる

生前贈与を活用すれば後妻や後妻の子に財産を確実に渡せるほか、自分名義の財産が減るので前妻の子の相続分や相続税も少なくできるメリットがあります。しかし、年110万円超の贈与を行うと贈与税がかかるので注意が必要です。贈与税には、1年間(1月1日~12月31日)に110万円の非課税枠が設けられています。
そのため、贈与額が年110万円を超えた場合は贈与額から110万円を差し引いた残りの金額に対して贈与税がかかります。申告する際は、翌年の2月1日〜3月15日までに贈与税申告書を税務署に提出し、贈与税を納めなければなりません。申告が遅れたり申告に虚偽があったりした場合は、延滞税や加算税などのペナルティが科される恐れがあるため注意が必要です。
申告忘れを防ぐためにも、生前のうちに後妻や後妻との子に対して贈与税の申告についての説明や税負担についても説明しておきましょう。
なお、年110万円の非課税枠は贈与する側ではなく、贈与される側に設けられている枠です。たとえば、後妻や後妻の子にそれぞれ100万円を贈与した場合、贈与した金額の合計は200万円ですが、2人分の非課税枠(合計220万円)が使えるので贈与税はかかりません。
後妻や後妻の子に高額な贈与を行う場合は、非課税枠を上手く活用して贈与税の負担を軽減しましょう。

不動産の贈与は登記費用と不動産取得税がかかる

後妻や後妻の子へ不動産の贈与を行った場合は、登記費用不動産取得税が発生します。登記費用は不動産の登記申請の際に発生する手数料で、不動産取得税は不動産の取得時に所有権者に対して課される税金のことです。
また、登記費用には登録免許税も含まれており、登録免許税と不動産取得税の金額はそれぞれ下記の計算式で算出できます。

  • 登録免許税:不動産の固定資産税評価額×2%(税率)
  • 不動産取得税:不動産の固定資産税評価額×4%(税率)

なお、不動産取得税や登録免許税は、贈与か相続のどちらで受け取ったのかによって納める税額が大幅に変わります。
後妻や後妻の子に不動産を贈与する際は、贈与と相続ではどれくらい税額が異なるのか、どちらがお得になるのか調べておくようにしましょう。

特別受益に該当する場合がある

生前に後妻や後妻の子へ高額な贈与を行った場合は、特別受益に該当する場合があります。特別受益とは、生前贈与や遺贈、死因贈与などによって、一部の相続人だけが特別な利益を得ていた場合にその分も遺産分割時の計算に含める制度のことです。
高額な贈与が行われると、贈与を受けた相続人固有の財産が増える代わりに故人名義の財産が減ってしまうので、ほかの相続人の取り分も減ってしまいます。
贈与を受けていない相続人からすれば、贈与を受けた相続人だけが得をするのは不公平です。そこで相続人の間の公平性を図るために、ほかの相続人が納得しない場合は特別受益を相続財産に加算する「持ち戻し」が行われます。
そのため、後妻や後妻の子への生前贈与が特別受益であると前妻の子が主張してきた場合、その主張が正当であれば特別受益に相当する額が後妻や後妻の子の取り分から減額されます。ただし、生前贈与ではすべての贈与が特別受益に該当するとは限りません。特別受益に該当するのは具体的に下記のようなケースです。

  • 大学の学費や留学費用
  • 結婚の際の持参金・支度金(結納金や挙式費用は除く)
  • 不動産や不動産の購入資金
  • 有価証券や金銭債権
  • 事業資金の援助

通常の扶養の範囲を超えない援助や生命保険金、おしどり贈与、相続人でない孫への教育資金の贈与などは特別受益に該当しません。
また、持ち戻しの対象となるのは、被相続人の死亡時からさかのぼって10年以内に行われた贈与のみです。それよりも前に行った贈与は特別受益に該当するものであっても持ち戻しの対象外になります。

前妻の子との相続トラブルを避けるための遺留分対策

前妻の子には「遺留分」という最低限の財産を相続できる権利があります。生前に前妻の子に相続させないための対策をとった場合、前妻の子の遺留分を侵害してしまうと後妻・後妻の子と前妻の子との間で相続トラブルに発展する可能性が高いです。
そのような事態を防ぐためにも、生前に下記の対策をとっておくことをおすすめします。

  • 遺留分請求に備え現金や生命保険を準備しておく
  • 生前のうちに前妻の子に遺留分放棄をさせる

ここからは、上記の対策についてそれぞれ詳しく解説していきます。

遺留分請求に備え現金や生命保険を準備しておく

前妻の子から遺留分を請求された場合でも対応できるよう、生前に遺留分相当額の現金を用意しておくのがおすすめです。また、生前に生命保険に加入し、受取人を後妻や後妻の子に指定しておけば、生命保険金を遺留分の支払いに充てられます。

生前のうちに前妻の子に遺留分放棄をさせる

遺留分による相続トラブルを防ぐには、生前のうちに前妻の子に遺留分放棄をさせる方法も有効です。遺留分放棄とは、相続人本人が家庭裁判所で申し立てを行い、自ら遺留分の権利を手放す手続きのことです。
相続放棄は被相続人の死後にしか申し立てができませんが、遺留分の放棄なら生前でも死後でも可能です。
生前に前妻の子が遺留分を放棄してくれれば、相続開始後に遺留分侵害額請求ができなくなります。遺言や贈与などで後妻や後妻の子に全ての財産を相続させたとしても、相続トラブルで後妻や後妻の子に迷惑をかけてしまう心配はありません。
しかし、遺留分の放棄に応じてもらうには相続人が不動産や現金などそれなりの対価を得ていることが前提です。前妻の子に財産を何も残さないことはできないので注意してください。

まとめ

前妻の子には相続権があり、後妻の子がいる場合は均等に遺産を分ける必要があります。しかし、遺言書を作成すれば法定相続分に関係なく、被相続人が相続人や相続割合を自由に決められます。ほかにも、生前贈与や生命保険の活用、名義変更などの方法により、後妻や後妻の子へ確実に財産を渡しつつ、前妻の子への相続対策も可能です。
ただし、前妻の子には相続遺産の8分の1の遺留分があります。遺言書や贈与によって遺留分を侵害していた場合は、前妻の子から遺留分を請求される恐れがあるので、相続トラブルを回避するなら遺留分を考慮して対策を行うようにしましょう。もし、相続対策やトラブルで何か困ったことがあれば、弁護士や司法書士などの専門家への相談を検討してみてください。

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更新日 : 2024年11月15日
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