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【家の名義変更】親から子に変更する際の費用や手続き、必要書類

【家の名義変更】親から子に変更する際の費用や手続き、必要書類

家を名義変更する際には、さまざまな書類を準備したうえで手続きを進める必要があります。

また登録免許税や贈与税など複数の税金が発生するので、かかる税金の種類や計算方法、節税方法なども知っておくことが大切です。

本記事では親から子へ家の名義を変更する予定の方に向けて、手続きの流れや必要な書類、かかる費用について解説します。この記事を読むことで、名義変更の手続きの流れや支払うべき税金などを知り、流れに沿ってスムーズに手続きを進めることができます。

親から子に家の名義変更が必要となる2つのパターン

住宅などの財産を親から子に引き継ぐ際には、名義変更を行います。

名義変更とは、法務局で不動産の所有者を変更する手続きのことです。名義変更をしておかないと、誰が不動産の所有者なのかを第三者に証明できず、相続や売却などの手続きに際してトラブルに見舞われる可能性があります。

親から子への名義変更が必要になるパターンとしては、譲り渡す側の親が生きているうちに行う「生前贈与」と、親が死亡してから行う「相続」があります。

  • 生前贈与:親が死亡する前に、子が家の名義を譲り受けるケース
  • 相続:親が死亡してから、相続で家を譲り受けた際に名義を変更するケース

次章からは、上記2つのケースに分けて手続きの流れや必要な書類などを詳しく解説します。

【生前贈与】存命の親から子に家の名義を変更する際の手続きの流れと費用

親が生きているうちに子へ家を譲る場合は「生前贈与」の手続きが必要です。

生前贈与における名義変更の手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 必要書類を集める
  2. 贈与契約書を作成する
  3. 生前贈与の登記を行う

この章では3つのSTEPを詳しく解説します。

1. 必要書類を集める

生前贈与に必要な書類を、親側(贈与者)と子側(受贈者)ごとに、名称や入手可能な場所、かかる費用や注意点などを紹介します。

親側(贈与者)が用意する書類:4点

  • 固定資産評価証明書
  • 印鑑証明書
  • 登記事項証明書
  • 登記識別情報通知書または登記済権利証

固定資産評価証明書は、贈与する家が位置する市区町村の役所で入手できます。かかる費用は自治体によって異なりますが、1物件当たり300円程度です。

印鑑証明書は親(贈与者)の住民票がある市区町村の役所で入手できます。費用は1通当たり500円程度です。
登記事項証明書は法務局で入手できます。かかる費用は1物件当たり600円です。ただしオンライン請求(郵送)であれば1物件500円で済みます。

登記識別情報通知書または登記済権利証は、贈与する不動産を入手した際に法務局から発行されている書類です。そのため、家の名義人自宅などに住宅関連の書類とともに保管されていることが一般的です。この書類は基本的に再発行ができないので、自宅などをしっかり探してください。

どうしても見つからない場合、「事前通知」または「資格者代理人による本人確認情報の提供」などの手続きを行うことで登記の申請は可能です。

子側(受贈者)が用意する書類:1点

子(受贈者)が用意する書類は住民票のみです。住民票は受贈者が住む市区町村の役所で入手可能で、1通当たり300円程度かかります。

2. 贈与契約書を作成する

必要書類が用意できたら、贈与契約書を作成します。
贈与契約書は、契約内容を明確にし、不動産が贈与されたものであると証明する書類です。実は贈与契約書がなくても生前贈与を行うことはできます。

しかし、正式に契約書としておくことで、親が死亡した際の相続時に争いが起こるなどのトラブルを防止できます。ほかにも、贈与時の登記がスムーズになる、税務調査で不当な相続税の徴収を回避できるなどのメリットがあるため、作成することをおすすめします。

贈与契約書のフォーマットに決まりはないので、インターネット上の記事などを参考にして自力で作成することもできます。ただし、内容に間違いがあると無効になることもあるので、行政書士などの専門家に依頼したほうが無難です。

3. 生前贈与の登記を行う

必要書類や契約書が用意できたら、登記申請書と登記原因証明情報を作成し、生前贈与の登記(家の名義変更)を行います。登記申請書については法務局のホームページから様式および記載例をダウンロードできるため、事前に作成しておくとスムーズです。登記原因証明情報の記載例も法務局のホームページで確認できます。

参照:法務局「不動産登記の申請書様式について」
参照:法務局「記載例」

ここまでに集めた書類と贈与契約書、登記申請書などを持って、贈与する不動産を管轄する法務局に行き、登記をしたい旨を申し出てください。

その際、登録免許税を印紙で納めます。

上記を済ませると、1~2週間程度で法務局の手続きが終わります。名義が適切に変更されているかは非常に重要なので、法務局から登記事項証明書を入手し、しっかり確認することをおすすめします。また、生前贈与を受けた人は、期限内に「不動産取得税」と「贈与税」を支払う必要があります。

登録免許税と不動産取得税、贈与税の詳細については後述します。

【相続】死亡した親から子に家の名義を変更する際の手続きの流れと費用

親が死亡してから家の名義変更を行う場合、「相続」の手続きが必要です。

相続における名義変更の手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 相続人を決める
  2. 必要書類を集める
  3. 名義変更の登記を行う

以下では3つの流れを詳しく解説します。

1. 相続人を決める

親の死亡によって、子が家を相続するケースでは、親は「被相続人」、子は「相続人」と呼びます。
相続人の決め方については、被相続人が「遺言書」で相続人を指定する方法と、被相続人の死亡後に行う「遺産分割協議」の2種類があります。

決め方1:遺言書

被相続人である親が、生前に遺言書で相続人を指定していれば、遺言書に沿って相続人が決まります。

ただし、遺言書が被相続人の自書でない場合や押印がない場合、内容が不明瞭な場合など、民法に沿っていない遺言書は無効となることもあります。

また、遺言書の内容が法定相続人の遺留分(法律で決められた最低限の遺産の取り分)を侵害する場合には、家を譲り受ける人がほかの相続人からの請求で遺留分を支払わなければなりません。

決め方2:遺産分割協議

遺言書が存在しない場合や、遺言書があっても家についての記述がない場合、また遺言書が有効でなかった場合などで、相続人が複数存在するケースでは遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議に決められた形式はありませんが、相続人全員が集まって協議することが必須です。また分割の内容を決定するためには相続人全員の合意が欠かせません。
後日トラブルが起こることがないように、遺産分割協議の内容と結果は書類に記し、相続人全員の署名と実印を押しておきましょう。

2. 必要な書類を集める

ここからは相続によって家を譲り受ける際の名義変更で必要な書類を紹介します。
遺言書で相続人が決まった場合と、遺産分割協議で決まった場合とでは用意する書類が異なるので、それぞれの場合に分けて解説していきます。

遺言書がある場合の書類

遺言書がある場合に必要な書類は以下の5点です。

  • 登記事項証明書
  • 被相続人(親)の死亡時の戸籍
  • 被相続人(親)の戸籍の附票
  • 相続人(子)の現在の戸籍
  • 遺言書

登記事項証明書は、相続する不動産を管轄する法務局で入手可能です。費用は1物件当たり600円、オンライン請求(郵送)は500円です。

被相続人(親)の死亡時の戸籍は、被相続人の最後の本籍地があった市区町村の役所で入手可能です。費用として450円かかります。

被相続人(親)の戸籍の附票は、被相続人の本籍地がある市区町村の役所で入手できます。費用は300円程度です。

相続人(子)の現在の戸籍は、相続人の本籍地がある市区町村の役所で入手できます。費用は450円です。

遺産分割協議を行った場合の書類

遺産分割協議で行った場合に必要な書類名は以下の6点です。

  • 登記事項証明書
  • 被相続人(親)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など
  • 被相続人(親)の戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍
  • 相続人(子)の住民票
  • 遺産分割協議書

登記事項証明書は、相続する不動産を管轄する法務局で入手可能です。費用は1物件当たり600円、オンライン請求(郵送)なら500円です。

被相続人(親)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、親の出生から死亡までの本籍地の市区町村役場で入手できます。転籍が少ない人、近隣での転籍しかしていない人なら手間がかかりませんが、被相続人が何度も転籍している場合は大きな手間がかかります。費用として戸籍謄本が450円、除籍謄本および改製原戸籍謄本は750円が各所で必要です。

被相続人(親)の戸籍の附票は、被相続人の本籍地がある市区町村の役所で入手できます。費用として300円程度が必要です。

相続人全員の戸籍は、相続人それぞれの本籍地にある市区町村の役所で入手できます。1通当たり450円がかかります。

相続人(子)の住民票は、相続人が住んでいる場所の市区町村の役所で入手できます。1通当たり300円程度です。

3. 名義変更の登記を行う

必要な書類がそろったら、登記申請書を作成し、相続する家を管轄している法務局に行って名義変更の登記を行います。また、窓口に行かなくても、郵送やオンラインで登記を行うことも可能です。

登記を行ってから1~2週間程度で法務局の手続きが終了するため、名義変更が適切にできているかどうかは確認しておいてください。

相続では、登記の際に「登録免許税」と、定められた期限内に「相続税」を支払う必要があります。詳しくは後述します。

親から子へ家の名義変更でかかる税金

親から子に家を贈与、または相続する際の名義変更時に発生する税金について、種類と発生する条件、金額の算出方法などを解説します。

登録免許税

「登録免許税」は家の名義変更をした際に発生する税金です。税金を払う義務があるのは、新たな名義人となった人です。

生前贈与と相続のどちらの場合にも支払う必要がありますが、税率は異なります。以下に固定資産税評価額が同じ住宅をサンプルとして、生前贈与と相続の際の登録免許税の違いを記載します。住宅の固定資産税評価額は3,000万だったとしましょう。

【生前贈与時の登録免許税】
「贈与する不動産の固定資産税評価額 × 2%」で算出できます。
登録免許税の額は「3,000万円 × 2% = 60万円」です。
【相続時の登録免許税】
「相続する不動産の固定資産税評価額 × 0.4%」で算出できます。
登録免許税の額は「3,000万円 × 0.4% = 12万円」です。

参照:国税局「No.7191 登録免許税の税額表」

不動産取得税

「不動産取得税」は、不動産を購入したときや贈与されたときに1度だけかかる税金です。相続の場合は発生しません。不動産取得税を払う義務があるのは、不動産を新たに取得した人です。生前贈与の際に名義変更の手続きをすると半年以内に納税通知書が届くため、記載の期日までに納税する必要があります。

不動産取得税額は「固定資産税評価額 ×税率」で算出できます。税率は本来4%ですが、2024年3月31日までに取得した住宅や土地については軽減措置によって3%とされています。軽減措置は延長される可能性もあるので、贈与をする際や受ける際は、その時点での税率を確認してください。

例えば住宅の固定資産税評価額が3,000万円の場合、「3,000万円 × 3% = 90万円」の不動産取得税が発生します。

参照:総務省「不動産取得税」

贈与税

贈与税は贈与を受けた人が支払うべき税金です。贈与税は一般贈与と特例贈与で控除額が異なりますが、親から子への贈与の場合、控除額が高い特例贈与が適用されます。

住宅を生前贈与された場合の贈与税額は、「(贈与された財産の価額 – 基礎控除額110万円) × 税率 – 控除額」で算出できます。税率と控除額は国税庁のホームページで公開されている速算表で確認可能です。

参照元:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

例えば、贈与された住宅の評価額が3,000万円だった場合、基礎控除額は110万円、税率は45%、控除額は265万円なので、「(3,000万円 – 110万円) × 45% - 265万円 = 1,035.5万円」が贈与税です。

なお、贈与税は贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日に申告を行うことが義務付けられています。

相続税

相続税は、死亡した親などから財産を受け継いだ(相続した)場合に、相続した人が支払う税金です。相続した家や現金などにかかる税を個別に算出するのではなく、相続される財産すべてを対象として計算します。

また、相続税には「3,000万円 + 600万円 × 相続人の数」の基礎控除額が定められています。相続した財産の額から借金などの負債を差し引いた額が、基礎控除額を超える場合に相続税がかかります。

例えば、財産を子3人で相続する場合、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円」です。

このとき、財産総額が7,000万円であれば、課税遺産総額(課税対象となる財産の総額)は「7,000万円 – 4,800万円 = 2,200万円」と算出されます。子が3人なので、法定相続分の1/3ずつで分けると一人当たりが課税される取得額は約733万円です。

法定相続分で分けた取得額が1,000万円以下なら税率は10%なので、733万円 × 10% = 73.3万円が、子一人当たりの相続税額です。

このあと、全員分の相続税額を合算して相続税の総額を出します。それを実際の取得割合に応じて按分し、各種税額控除を差し引くと、最終的に各人が納める相続税額が算出できます。

このケースのように相続人が子3人のみで取得割合も1/3ずつ、税額控除も考慮しない場合は、一人当たりの最終的な納税額も73.3万円になります。

なお、相続税の支払いは、親の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に支払うよう定められています。

参照:国税庁「相続税のあらまし」

親から子への家の名義変更にかかる税金を抑える方法

上述のように親から子に家を贈与または相続すると、高額な贈与税や相続税がかかることがあります。しかし、以下のような制度を活用すれば税金の負担を軽減できます。

相続時精算課税制度で2,500万円までを非課税にする

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の祖父母や父母から、18歳以上の子や孫に財産の贈与があったときに、最大2,500万円までを非課税にできる制度です。

2,500万円を超えた部分には20%の課税がされますが、従来の贈与税の算出方法より税額を抑えることができます。

ただし、相続時精算課税制度は贈与する側が生きている間に行うもので、親が死亡して相続が発生したときには、この制度を利用して贈与されていた財産すべてが相続財産として相続税の対象となります。

そのため、実質的には課税の先送りにすぎない場合がある点には注意してください。

また、相続時精算課税制度を一度選択すると、次項で述べる暦年贈与は利用できません。

この点について、2024年1月以降は、相続時精算課税制度を選択した場合でも、年に110万円までは贈与税と相続税の両方がかからない基礎控除が設置されることが取り決められています。

参考:財務省|贈与税に関する資料

暦年贈与制度で年間110万円まで非課税にする

暦年贈与制度を選択すると、年に110万円までの贈与なら非課税にできます。110万円を超えないように家の持分を分割して少しずつ贈与することで大きな節税効果が見込めます。この制度には申告の必要がないというメリットもあります。

ただし、暦年贈与を行っているという記録を残すために、贈与契約書を作っておくことをおすすめします。また、毎年同じ月日に同じ金額の暦年贈与を行うと、税務署から定期贈与とみなされ、初年度に一括で贈与税がかかる場合があります。暦年贈与の月日や金額には注意が必要です。

まとめ

家の名義を親から子に変える必要があるのは、生前贈与か相続が発生したときです。それぞれ、登記事項証明書や戸籍謄本など多数の書類の準備や手続きが必要になるため、できるだけ早めに取りかかるようにしましょう。

また、家の名義変更に際しては登録免許税や贈与税などの税金も発生します。期日までに適切に納付できるよう、税金の種類や計算方法なども把握しておくことが大切です。