共有名義で片方が死亡したら相続人が財産を引き継ぐ
共有名義の片方が死亡した場合、自動的にもう片方の共有者が相続するわけではなく、亡くなった共有者のの相続人が財産を引き継ぐことになります。
遺言がある場合は、遺言の内容に基づいて相続が行われます。遺言がない場合、法定相続人による遺産分割協議や遺産分割調停を通じて相続人が決定されるケースが一般的です。
法定相続人の範囲や相続順位、相続割合は以下のように決まっており、上位の順位の人がいる場合、下位の順位の人は相続人になれません。
法定相続分について
順位 |
相続関係 |
相続割合 |
第1順位 |
配偶者と子 |
配偶者 1/2 子 1/2 |
第2順位 |
配偶者と直系尊属(父母・祖父母) |
配偶者 2/3 直系尊属 1/3 |
第3順位 |
配偶者と兄弟姉妹 |
配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4 |
共有名義人が他の相続人に優先して共有持分を相続できるというルールはないことを理解しておきましょう。
相続人がいなかった場合は特別縁故者が引き継げる
遺言がなく、法定相続人もいない場合は特別縁故者が共有持分を相続できる可能性があります。
特別縁故者とは、被相続人と親しい関係にあった人で、法定相続人がいない場合に相続する権利を持つ人です。
民法958条の2項では、以下のような人が特別縁故者になれると定めています。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
特別縁故者が相続をする場合は、家庭裁判所において「相続財産分与の申し立て」を行う必要があります。申し立ての一般的な流れは以下の通りです。
- 相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てする
- 相続人の捜索を公告し、相続人がいないことを確定させる
- 「特別縁故者に対する財産分与の申し立て」をする
相続財産管理人とは、相続人に代わって遺産を管理する人のことで、一般的に弁護士や司法書士が選ばれます。相続人を捜すための公告は6か月以上の期間を定めて行うこととされており、公告の期間満了後3ヶ月以内に「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」をする流れになっています。特別縁故者が財産分与を請求するためには、1年程度かかることを見込んでおいたほうがよいでしょう。
また相続財産管理人の選任申立をした人は、相続財産管理人が手続きを進めるための費用として、10〜100万円程度の「予納金」を支払う必要があります。
なお、相続人だけではなく、特別縁故者もいない場合は、最終的に共有名義人が、亡くなった人の持分を取得することになります。
共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受
遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、
法九五八条の三の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産
分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存するこ
とが確定したときにはじめて、法二五五条により他の共有者に帰属することになる
と解すべきである。
裁判所 平成元年11月24日 最高裁判例
相続人全員が共有持分を放棄したらどうなる?
相続をする際は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産も引き継がなければなりません。債務超過となっている場合や、親族と疎遠になっている場合などは相続放棄を選択する場合もあります。
相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、相続順位に基づいて他の法定相続人が相続することになります。では、相続人全員が相続放棄をした場合、自動的に共有者に所有権が移動するのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
相続を放棄しただけでは共有者に移転されない
相続人全員が相続放棄をしたからといって、自動的に共有者に所有権が移転するわけではありません。というのも、相続放棄があったからといって、相続人がいないことが確定するわけではないからです。
たとえば、死後認知が行われた、離縁や離婚の無効の裁判が確定したなどの理由で、遺産分割をする際には戸籍上に存在しなかった人が相続人として出てくる可能性があります。
死後認知とは?
法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子と、なくなっている父親との間に法律上の親子関係を成立させる手続きのことです。
相続人がいないことを確定させてから、その時点で初めて「共有者への所有権移転」という選択肢が生まれます。
共有持分を移すには相続財産管理人の選任申し立てが必要になる
相続人全員が共有持分の相続を放棄したケースにおいて、もう片方の共有者が被相続人の持分の移転を希望する場合は、相続人がいないことを確定させる必要があります。
家庭裁判所に対して、相続財産管理人の選任を申し立て、相続人捜索の公告を行ない、相続人の不存在が確定するのが一般的な流れです。
相続人の不存在が確定し、特別縁故者に対する財産分与が行われない場合に、共有者に所有権が移転されます。
共有名義人の片方が死亡した場合の相続手続き
共有名義人の片方が亡くなった場合の相続手続きの一般的な流れは、次の通りです。
- 遺言書があるかを確認する
- 相続人を調査して確定させる
- 相続財産を確定させる
- 遺産分割協議を行って協議書を作成する
- 相続税申告・納付や相続登記を行う
最後のステップである相続税の申告には、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内という期限が設けられています。全体の流れを理解しておけば、スムーズに手続きが進み、期限内に手続きを終えられるでしょう。
1. 遺言書があるかを確認する
相続の際は遺言書の有無をまずは調べましょう。遺言書には法的効力があり、その内容によって相続人や相続割合が大きく変わる可能性があります。
遺言書があり、その中に共有持分の相続について明記されていれば、それに従って登記をしましょう。
なお、遺言書には、自分で記述する「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が記述する「公正証書遺言」などの種類があります。
公正証書遺言や、「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合を除いて、遺言書は、登記申請前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度のことです。
2. 相続人を調査して確定させる
遺言書がなかった場合は、遺産分割協議に基づいて相続することになります。遺産分割協議とは、相続人全員で行う遺産の分け方についての話し合いのことです。一人でも相続人の参加が欠けている場合、その協議は無効になるので、相続人の調査をして相続人を確定させることが必要になります。
被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本を集めることで、相続人を確認することが可能です。戸籍謄本は、本籍地のある市町村役場の窓口、または郵送で取得できます。
3. 相続財産を確定させる
共有名義の不動産以外の財産の有無を調べ、相続財産を確定させましょう。
相続をする際には以下3つのうち、いずれかの相続方法を選択します。
- 単純承認:プラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借入金や未払いの税金など)もすべて相続する
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する
- 相続放棄:すべての財産を相続しない
しかし、財産の総額や種類が確定しないと、どの方法を選択すべきか判断できません。
財産の調査は自分で行うこともできますが、相続財産が多い場合は多大な時間や労力がかかるだけではなく、調査漏れが発生する可能性もあります。また、相続財産に不動産が含まれる場合は、適切な評価額を算出するのは難しくなるでしょう。
なお、相続放棄や限定承認の期限は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内なので、それまでに財産調査を終わらせる必要があります。
相続には期限があるため、自分だけで調査するのが難しいと感じた場合は弁護士や司法書士などの専門家に依頼しましょう。
4. 遺産分割協議を行って協議書を作成する
相続人や相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を実施します。
相続する人や財産の種類、金額などを話し合うことになりますが、直接全員が集まらなくても電話やメール、手紙などで話し合いを進めることも可能です。また、全員の合意さえあれば、法定相続割合とは異なる分け方をすることも認められています。
遺産分割の内容が決まったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書に記載すべき内容は、以下のとおりです。
- 被相続人の最後の住所、氏名、死亡日
- 相続する財産の具体的な内容(分割方法)
- 相続人全員の住所・署名・実印
もし、遺産分割協議がまとまらない場合は、裁判所に調停を申し立てましょう。調停でも合意が成立しない時は、審判に移行します。審判では、裁判所が双方の主張を考慮しながら、適切な分割割合を決定します。
5. 相続税申告・納付や相続登記を行う
遺産分割協議が合意に達したら、相続税の申告・納付と不動産の共有持分を登記します。
相続税は、被相続人が死亡したことを知った日から10ヶ月以内に現金で納付するのが原則です。また、所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記することが義務付けられています。
相続税の納付が遅れると延滞税が課されるため、注意が必要です。また、正当な理由がないまま登記をしない状態が続くと、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。
なお、登記の際は相続税以外にも登録免許税がかかることもおぼえておきましょう。登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4 %です。
共有名義不動産の相続税はどうなる?
不動産を相続する場合、相続税の負担が大きくなる可能性もあるため、相続税の目安を知るために、計算方法についても理解しておきましょう。
以下では、共有名義の不動産にかかる相続税について詳しく解説します。
相続した共有持分のみに発生する
相続税は、共有持分の評価額に対して課税されます。
例えば評価額3,000万円のマンションを夫婦の共有名義で5割ずつ所有している場合、共有持分の1,500万円に対して課税されます。
相続税の計算方法
相続税は以下の3ステップで計算をします。
- 課税対象財産の総額を計算する
- 法定相続分で分けた際の相続税額を求める
- 相続税合計額を按分する
具体的なシミュレーションをしながら、それぞれ確認していきましょう。
課税対象財産の総額を計算する
まず、相続した共有不動産も含めて、課税対象となる財産の総額(課税遺産総額)を計算します。
課税遺産総額は、正味の遺産総額(預貯金や不動産などの相続財産から債務や葬儀代などを差し引いたもの)から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引くことで求められます。
たとえば、評価額が1億円(被相続人の共有持分は2分の1)の不動産と預貯金7,000万円を2人の法定相続人(配偶者・子)が相続するとしましょう。このケースでの課税遺産総額は、5,000万円+7,000万円ー4,200万円=7,800万円です。
なお、共有名義の不動産は「相続税路線価」を参考に評価額が決まります。
相続税路線価とは?
国税庁が毎年7月に発表している、宅地1㎡あたりの評価額のことです。
法定相続分で分けた際の相続税合計額を求める
課税遺産総額を計算できたら、法定相続分(民法で定められた相続割合)で分けた際の相続税合計額を計算します。
たとえば、課税遺産総額が7,800万円で、法定相続人が配偶者と子のみの場合、法定相続分はそれぞれ2分の1です。さらに以下の税率表を参考にして、法定相続人それぞれの相続税を求めます。
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
1,000万円超から3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
5,000万円超から1億円以下 |
30% |
700万円 |
1億円超から2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
2億円超から3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
3億円超から6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
国税庁 No.4155 相続税の税率
配偶者:3,900万円×20%−200万円=480万円
子:3,900万円×20%−200万円=480万円
相続税合計額は、480万円+480万円=960万円です。
相続税合計額を按分する
実際の相続割合に応じて、相続税合計額を按分します。
たとえば、先程のケース(正味の遺産総額が1億2,000万円、相続税合計額は960万円)で、配偶者が4分の3、子が4分の1を相続した場合、配偶者が支払う相続税は720万円、子が支払う相続税は240万円です。
一方、子ども1人が相続を放棄した場合、配偶者のみが財産を相続することになります。
配偶者には相続税の配偶者控除があり、正味の遺産総額が法定相続分までの相続または1億6,000万円までなら課税されません。今回のケースでは、正味の遺産総額は1億2,000万円であるため、相続税は非課税になります。
共有名義の片方が死亡した際に確認すべきこと
共有名義の片方が亡くなった場合、住宅ローンの有無を確認することが重要です。なぜなら、債務は相続財産に含まれるため、住宅ローンが残っている場合、共有持分を相続することにより相続人が返済義務を負うことになるからです。
住宅ローンの有無を確認する際は、不動産の登記情報を調べましょう。登記情報は法務局で取得でき、住宅ローンが残っている場合は「抵当権」が設定されているケースが一般的です。
また、団体信用生命保険(団信)に加入しているかどうかも確認しておきましょう。団信は、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合に、住宅ローン残高相当額が金融機関に支払われる保険です。団信に加入していれば、共有名義の片方が亡くなった場合に住宅ローンの返済義務が免除されます。
共有名義から単独名義に変更する際のポイント
不動産を共有名義のままにしておくと、管理や処分の際に共有者の同意が必要になるため、自由に賃貸に出したり売却したりできなくなる可能性があります。
権利関係が複雑になるのを避けるために、共有名義人の死亡をきっかけにして、共有名義から単独名義に変更したい場合は、以下の方法を検討してみましょう。
- ほかの相続人に代償金を支払う
- 預貯金などほかの遺産を多めに分配する
以下で詳しく解説します。
ほかの相続人に代償金を支払う
共有名義の不動産を単独名義に変更する際には、一人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法があります。この方法は「代償分割」と呼ばれています。
たとえば、もともと父親と長男が共有していた不動産があったとしましょう。父親が亡くなり、その不動産の共有持分が3,000万円と評価され、兄弟間で相続が行われることになった場合、兄が全ての不動産を取得し、弟に1,500万円を支払うケースが考えられます。
ただし、不動産の評価方法でトラブルにならないように注意しましょう。不動産の評価方法には以下の4通りがありますが、代償分割の際は時価を採用するのが一般的です。
時価 |
実際の不動産取引における売買価格(実勢価格) |
公示価格 |
国土交通省が発表している土地の価格 |
相続税路線価 |
相続税や贈与税の計算に用いる評価額(公示価格の約80%) |
固定資産税評価額 |
固定資産税の計算に用いる評価額(公示価格の約70%) |
いずれにしても話し合いで評価方法について、合意を得ておくことが重要になります。
預貯金などほかの遺産を多めに分配する
預貯金や株式など、不動産以外の遺産もある場合は、1人が不動産の共有持分を相続し、預貯金などの金融資産は他の相続人へ多めに分配するのも一つの手です。
この方法であれば、代償金を支払う資力がなくても、不動産の共有持分を相続しやすくなる可能性があります。
ただし、不動産を相続しなかった人が不満を抱くこともあるので、適切な分け方を慎重に検討する必要があるでしょう。遺産分割の方法について悩んだ場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
共有名義に関する相続トラブルを起こさないための対策
共有名義の不動産で相続が発生すると、権利関係が複雑になることがよくあります。共有名義で不動産を所有している人は、以下のような対策を行うことで、相続人同士のトラブルを避けられるでしょう。
- 身近な親族以外に共有名義を与えるのは避ける
- 共有名義の持分を生前贈与する
- 遺言書を作成して共有名義人に持分を相続させる
- 家族信託を利用する
- 共有持分を譲渡または売却する
以下で、これらの対策について詳しく解説します。
身近な親族以外に共有名義を与えるのは避ける
不動産を夫婦共有名義にしている状態で、配偶者が亡くなった場合、共有持分を配偶者の血族など、関係性の薄い親族が相続するケースもあります。しかし、将来的に不動産の活用を検討している場合、共有名義を与えるのは親しい親族に限定しておいた方がよいでしょう。
なぜなら、共有不動産においては売却や賃貸など、不動産活用をする場合、共有者から合意を得る必要があるからです。他人に近い親族と不動産を共有していると、意思疎通がとりづらく、話し合いがまとまらないこともあるでしょう。
共有名義の持分を生前贈与する
共有名義の不動産持分を生前に贈与しておくと、相続トラブルを防げる可能性があります。
父と子で不動産を共有していた場合に、父から子に共有持分を贈与するようなケースが考えられるでしょう。ただし、年間110万円以上の贈与に対しては、受贈者(贈与によって財産を受け取った人)に贈与税がかかるので注意が必要です。
また他の相続人から「特別受益の持ち戻し」を主張される可能性もあります。特別受益の持ち戻しとは、被相続人から生前贈与などで受け取った利益(特別受益)がある場合に、この特別受益を遺産の中にいれて相続分を計算することで、相続人間の不公平感を減らすための方法です。
特別受益の持ち戻しが提起された場合には、特別受益分を相続財産に加え、その金額に応じて相続分を計算し、計算後の特別受益者の相続分から特別受益分を差し引くことになります。
たとえば、兄弟2人だけで父親の財産(1億円)を相続する際に、兄だけが4,000万円の生前贈与を受けていたケースを考えてみましょう。
特別受益の持ち戻しをしない場合、 相続財産1億円を2分の1ずつ相続するので、兄5,000万円、弟5,000万円を相続します。
一方、特別受益の持ち戻しをする場合、相続財産は1.4億円として計算し、特別受益を受けている人は特別受益分を控除するので、兄3,000万円、弟7,000万円を相続します。
生前贈与を考慮せずに遺産分割を行うよう指示したい場合は「〜(相続人)への生前贈与に対して、特別受益の持戻しを免除する」といった旨の遺言書を残すことで、相続財産の計算から生前贈与した財産を外すことが可能です。
遺言書を作成して共有名義人に持分を相続させる
遺言書を作成しておけば、共有持分の相続人を指定できるため、相続トラブルを防ぎやすくなるでしょう。共有名義人にご自身の持分を単独で相続するよう、遺言書で指定しておけば、権利関係が複雑になるのを防げます。
ただし、遺留分の侵害につながるような内容の遺書を作成していると遺留分侵害額請求が行われる可能性があるので注意が必要です。
遺留分とは?
故人が遺言によって財産の分配を決めた場合でも、一定の法律により保護された遺族が最低限受け取ることが保証される財産の部分のことです。
たとえば兄弟で不動産を共有しており、兄があらかじめ遺言書で弟に共有持分を単独で相続するよう指定していたとします。このとき、兄に配偶者がいる場合は、配偶者からの遺留分侵害額請求が発生するリスクがあるということです。
また、書式に不備があったり、内容が不明瞭だったりすると、遺言書は無効になる可能性があります。遺言書を作成する場合は、無効とならないよう「公正証書遺言」で作成しておくと安心です。
公正証書遺言とは?
公証人が遺言者の意志を正確に記録し、その遺言の内容を公正証書として作成する遺言の形式です。
家族信託を活用する
家族信託は、契約内容に基づいて家族に財産管理や運用、処分を一任できる制度です。委託者、受益者、受託者の3者で構成されています。
- 委託者:財産を信託する人
- 受益者:信託された財産を管理・運用する人
- 受託者:信託財産からの利益を受け取る人
「委託者と受益者が父、受託者が子」のように委託者=受益者となるケースが一般的です。
認知症に備えた財産管理の方法として用いられることが多くなっていますが、家族信託では共有持分の相続先を指定できます。二次相続、三次相続の方法まで指定できる点が遺言との大きな違いです。
たとえば「自分が亡くなったら配偶者に相続させる」「配偶者が亡くなったら、共有名義の片方の所有者である長男に相続させる」といった指定もできます。
家族信託を活用すれば、意図しない人に共有名義の不動産が相続され、権利関係が複雑になるのを防げるでしょう。
共有持分を譲渡・売却する
共有名義人に自分の持分を買い取ってもらう、もしくは共有名義人の持分を買い取ることで、単独名義にすることにより、相続トラブルを防ぐ方法もあります。
不動産の持分を売却する際は、買取業者に依頼することも可能です。買取業者に依頼すると、一般的に買い手が見つかりにくい共有持分でも売却できるメリットがあります。
しかし、他人との共有が必要になることや、買取価格が安くなる傾向にあるため、親族に持分を買い取ってもらう方が、多くの場合、安心できる選択といえるでしょう。
持分の買取や売却を検討する際には、評価額に関するトラブルを避けるため、不動産鑑定を受けて適切な価値を判断してもらうことが大切です。
まとめ
共有名義の不動産において、名義人の一方が亡くなった際には、その持分が相続財産として扱われます。もう一方の共有名義人が自動的に相続するわけではなく、遺言や法定相続人による遺産分割が必要です。相続人がいない場合は特別縁故者が相続することも可能ですが、家庭裁判所における相続財産管理人の選任などが必要になります。
共有持分の相続時には、相続税の申告や登記変更が必要となるので、手続きの流れを理解しておきましょう。手続きに不安がある場合は、弁護士などの専門家の力を借りることをおすすめします。
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