土地の相続税評価額は路線価方式または倍率方式で計算される
土地の相続税評価額を計算するときは、路線価方式か倍率方式のいずれかを用います。
路線価が定められている地域では路線価方式、定められていない地域では倍率方式を用いるケースが一般的です。
次の項目から、それぞれの計算方法について詳しく見ていきましょう。
路線価が定められている地域では路線価方式を採用する
路線価とは、路線(道路)に面している土地の1㎡当たりの評価額のことであり、千円単位で表示されています。
路線価が定められている地域では、路線価方式で土地の相続税評価額を計算するのが一般的です。ここでは路線価方式による計算方法や調べ方について解説します。
路線価による評価額の計算方法・調べ方
路線価による相続税評価額の計算方法は以下のとおりです。
路線価×宅地面積(㎡)×補正率=相続税評価額
路線価方式で相続税評価額を計算する際には、土地に隣接する道路の路線価を基準とし、宅地面積や補正率などを乗算します。
たとえば路線価が10万円、宅地面積が200㎡、補正率が0.90だった場合の相続税評価額は以下のとおりです。
10万円(路線価)×200㎡(宅地面積)×0.90(補正率)=18,000,000
今回のシミュレーションでは、相続税評価額は1,800万円と算出されました。
路線価を調べたい場合、国税庁が毎年7月に更新している「財産評価基準書」を確認しましょう。
財産評価基準書のサイトで都道府県を選択後に「路線価図」をクリックしてください。その後に住所を順番に選択していくと、地域ごとの地図が表示されます。
路線価は千円単位での表示なので、自分の所有している土地に隣接している路線に「100」と表示されていた場合、路線価は10万円ということになります。
宅地面積については、固定資産税の納税通知書で確認が可能です。
また土地の形状や立地環境によっては、補正率を計算式に組み込む必要があります。補正率は、使用しにくい土地の評価額を減額をするためのものです。
補正率には、奥行価格補正率や不整形地補正率、がけ地補正率など複数の種類が存在します。たとえば奥行きや土地の形状などに問題があったり、敷地内にがけがあったりする場合は、補正率を計算式に組み込みます。
相続税評価額が下がれば相続税の節税につながるため、路線価方式で相続税評価額を計算するときには、補正率の調査が必須です。
なお、相続税評価額が下がりやすい土地や補正率についての詳細は、後ほどの項目で詳しく紹介します。
路線価が定められていない地域では倍率方式を採用する
倍率方式は、路線価が定められていない地域で用いられる計算方法です。所有している土地の固定資産税を基準に計算します。
固定資産税額は、毎年4月〜5月ごろに役所から送られてくる納税通知書で確認が可能です。見つからない場合は、市区町村役場や都税事務所などに申請して確認しましょう。
倍率方式による評価額の計算方法・調べ方
倍率方式による相続税評価額の計算方法は以下のとおりです。
固定資産税評価額×評価倍率=相続税評価額
評価倍率は、路線価が定められていない地域の評価額を計算するために、地域ごとに定められています。
たとえば固定資産税評価額が3,000万円、評価倍率が1.1倍だったときの相続税評価額は以下のとおりです。
3,000万円(固定資産税評価額)×1.1(評価倍率)=33,000,000
今回のシミュレーションでは、相続税評価額は3,300万円となりました。
評価倍率を調べるときは、国税庁の「財産評価基準書」にアクセスしましょう。
都道府県を選択し、「評価倍率表」の「一般の土地等用」をクリックしてください。市区町村を選択すると、町や地目ごとに倍率が記された一覧表を確認できます。
一覧表の中から該当の評価倍率を探し、計算式に当てはめて相続税評価額を計算してみましょう。
なお、倍率方式で計算する際は、土地の評価額を減額するための補正率を考慮する必要はありません。
立地環境や土地の形状などを考慮した補正は、すでに固定資産税評価額の中に含まれているケースが大半を占めているからです。
借地権の相続税評価額の計算方法
借地権は、自宅などの建物を建てるために土地を借りる権利のことです。第三者から土地を借りて建物を建てている場合、借地権も相続財産の対象となり、相続税が課税されます。
借地権には主に「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があり、それぞれで相続税評価額の計算方法が異なります。
普通借地権と定期借地権の計算方法を詳しく紹介するので、借地権を相続する場合はぜひチェックしてみてください。
普通借地権の場合
普通借地権は、契約を更新し続けることにより、半永久的に土地を借り続けられることが特徴です。
借地権の存続期間は最短30年となっており、初回更新は20年、以降の更新は10年と決められています。正当な理由がない限り、地主は契約更新を拒否できません。
普通借地権の相続評価額の計算式は以下のとおりです。
自用地評価額×借地権割合=相続税評価額
自用地評価額は借地と隣接している路線価に、宅地面積(㎡)と補正率を乗算して計算します。
たとえば路線価が30万円、宅地面積が100㎡、借地権割合が70%だった場合の相続税評価額は以下のとおりです。
30万円×100㎡(自用地評価額)×0.7(借地権割合)=21,000,000
自用地評価額は3,000万円ですが、借地権割合を乗算すると相続税評価額は2,100万円になりました。
借地権割合は、土地の評価額の中で借地権に相当する割合のことです。借地権割合が高くなるほど、土地の相続税評価額も上がる計算になります。
住宅地の借地権は一般的に60%〜70%程度ですが、都市部や一等地などになると80%〜90%に設定されているケースもあります。
借地権割合は、国税庁の公式サイトに掲載されている地域ごとの路線価図で確認が可能です。
定期借地権の場合
定期借地権は、契約期間を定めて土地を借りることが特徴です。契約期間が終了したら、借地人は地主に土地を返還しなければなりません。
一般的に定期借地権は更地返還となるため、建物がある場合は、建物を取り壊してから返還する必要があります。
定期借地権は、以下の要素から相続税評価額を計算します。
- 定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
- 定期借地権等の設定時における宅地の通常の取引価額
- 課税時期における定期借地等の残存期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率
- 定期借地権等の設定期間に応じる基準年利率による複利年金現価率
経済的利益の総額については、権利金や前払地代、差額地代などを合計して計算します。取引価額は、借りている土地が市場で取引されているときの相場価額です。
複利年金現価率は、相続した時点で残っている契約期間や設定期間に基づき、国税庁が定めている基準年利率から計算します。
以上を踏まえた定期借地権の計算方法は以下のとおりです。
自用地評価額×(経済的利益の総額÷取引価額)×(残存期間年数に応じる複利年金現価率÷基準年利率による複利年金現価率)=相続税評価額
一例として、自用地評価額を5,000万円、経済的利益を1,000万円、取引価額を6,000万円、残存期間年数に応じる複利年金現価率を19.600、基準年利率による複利年金現価率を18.327でシミュレーションをしました。
5,000万円×(1,000万円÷6,000万円)×(19.600÷18.327)=8,926,150
自用地評価額が5,000万円であるのに対し、相続税評価額は892万6,150円となりました。
なお国税庁が公開している端数処理の方法に従って、小数点以下第3位未満を四捨五入して計算しています。
定期借地権の正しい評価額を計算するのは非常に複雑で専門知識も必要になるため、無理せず税理士に任せることも検討してみてください。
貸家建付地の相続税評価額の計算方法
貸家建付地は、所有している土地にアパートやビルなどの建物を建て、第三者に貸している土地のことです。
自分で建物を使用する場合と比べ、第三者に貸している場合は土地の用途が制限されることになります。そのため、貸家建付地の評価額は下がる傾向にあります。
貸家建付地の相続税評価額の計算方法は以下のとおりです。
自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=相続税評価額
自用地とは、自分で使用する土地のことです。貸家建付地の相続税評価額を計算するときには、自用地評価額から借地権割合や借家地割合、賃貸割合を差し引く形になります。
借地権割合は、自用地評価額の中で借地権に相当する割合です。地価が高くなるにつれ、借地権割合も高くなる傾向にあります。
借家権割合は、貸家建付地の評価をするときに用いられる割合のことであり、全国一律30%と決められています。
賃貸割合は、建物の床面積に対し、実際に貸し出している部屋の床面積の割合です。空室は賃貸割合に含まれないため、空室が少ないほど賃貸割合が高くなります。
一例として、自用地評価額が3,000万円、借地権割合が40%、借家権割合が30%、賃貸割合が90%だった場合のシミュレーション結果は以下のとおりです。
3,000万円(自用地評価額)×(1-0.4×0.3×0.8)=26,760,000
自用地評価額は3,000万円ですが、貸家建付地として評価すると2,676万円となりました。自用地評価額のうち、約300万円が非課税になります。
土地がマンションの敷地である場合の相続税評価額の算出方法
分譲マンションなどを購入している場合、部屋だけでなく土地の一部を所有しているとみなされます。
マンションには敷地権割合が定められており、部屋ごとに土地の持分割合が決められているためです。持分割合は共有する建物を所有する割合のことであり、売買契約書に記載されています。
部屋の相続税評価額は固定資産税評価額と同じであるため、計算は必要ありません。
土地については、マンションの敷地全体の評価額を計算したうえで、敷地権の持分割合を乗算します。
路線価がある地域の計算方法は以下のとおりです。
路線価×敷地面積(㎡)×持分割合=相続税評価額
路線図に掲載されている路線価に、マンション全体の敷地面積を乗算するとマンションの評価額がわかります。
マンション全体の評価額に持分割合を乗算すれば、相続税評価額の算出が可能です。
たとえば路線価を50万円、敷地面積を500㎡、持分割合を1.5%とした場合の計算方法は以下のとおりです。
50万円(路線価)×1,000㎡(敷地面積)×1.5%(持分割合)=7,500,000
マンション全体の評価額である5億円に持分割合を乗算すると、相続税評価額は750万円という結果になりました。
路線価のない地域の場合は、以下の倍率方式で算出します。
固定資産税評価額×評価倍率=相続税評価額
一例として、固定資産税評価額が2,000万円で評価倍率が1.1倍だとすると、相続税評価額は2,200万円になります。
固定資産税評価額には土地の持分割合が反映されているため、倍率方式は持分割合を計算に組み込む必要はありません。
相続税評価額が下がりやすい土地
相続税を節税するためには、相続税評価額を少しでも下げることが重要です。相続税評価額が下がりやすい土地の特徴は以下のとおりです。
- 形が整っていない土地
- 間口が狭い土地
- 奥行きが長すぎるもしくは短すぎる土地
- 間口と奥行きの比率が基準を超えている土地
- がけ地(傾斜が30度以上)が含まれている土地
- 地積規模の大きい土地
- 踏切や線路に面している土地
- セットバックが必要な土地
- 隣に墓地がある土地
- 土砂災害特別警戒区域などに指定されている土地
- 共有名義になっている土地
それぞれのケースについて詳しく解説します。
形が整っていない土地
長方形や正方形の地は整形地と呼ばれ、三角形やL字型、台形など形が整っていない土地は不整形地と呼ばれます。
不整形地は建築や土地の利用に関する制限が発生しやすいことから、不整形地補正率を適用して評価額を下げられます。
不整形地補正率を算出するためには、かげ地割合の計算が必要です。
まず不整形地を直線で四角形に囲み、想定整形地を作ります。想定整形地の中にある、不整形地以外の部分を「かげ地」と呼びます。
かげ地割合は「かげ地の面積÷想定整形地の面積」で計算します。
かげ地の面積については、想定整形地の面積から不整形地の面積を差し引いて計算しましょう。
たとえば不整形地の面積が200㎡、想定整形地の面積が350㎡の場合、計算方法は以下のようになります。
(350㎡-200㎡)÷350㎡=0.428
上記のシミュレーションでは、かげ地割合は約42%という結果になりました。
かげ地割合の計算が終わったら、国税庁が公開している「不整形地補正率表」を参照し、補正率を確認しましょう。
間口が狭い土地
道路に隣接する間口が狭い土地は出入りがしにくいことから使いにくいとされており、間口狭小補正率によって不動産評価額を下げることが可能です。
間口狭小補正率は、間口距離と地区区分によって決定します。間口距離とは、土地と道路が隣接している距離のことです。
地区区分は国税庁が決めている地域ごとの区分であり、以下の7通りがあります。
- ビル街地区
- 高度商業地区
- 繁華街地区
- 普通商業・併用住宅地区
- 普通住宅地区
- 中小工場地区
- 大工場地区
地区区分は地域ごとの路線価図に掲載されています。
間口距離と地区区分がわかったら、国税庁が公開している「間口狭小補正率表」を参照し、補正率を調べてみてください。
奥行きが長すぎるもしくは短すぎる土地
土地の奥行きが長すぎたり短すぎたりする場合、利用価値が低いとみなされ評価額も低くなります。
奥行きに問題がある場合には、奥行価格補正率を適用して評価額を下げます。
奥行価格補正率を適用する際には、まず土地の奥行きが何メートルなのかを調べてください。
次に国税庁が公開している「奥行価格補正率表」を参照すれば補正率がわかります。
間口狭小補正率と同様に、奥行価格補正率も地区区分によって数値が異なるため、事前に路線価図で地区区分を調べておきましょう。
間口と奥行きの比率が基準を超えている土地
間口距離に対して奥行きが長すぎる場合は、土地の利用効率が下がることから評価額が低くなります。
間口と奥行の比率を「奥行距離÷間口距離」で計算し、2以上の数値が出た場合のみ奥行長大補正率を適用できます。
つまり、間口の幅に対して奥行が2倍以上の長さだと減額が可能です。
間口と奥行の比率が算出できたら、国税庁が公開している「奥行長大補正」を参照し、補正率を調べましょう。
がけ地(傾斜が30度以上)が含まれている土地
宅地内に傾斜30度以上のがけ地が含まれている場合、がけ地補正を適用して評価額を減額できます。平坦な土地と比べ、がけ地は用途が限られるためです。
がけ地補正を適用するためには、土地の総面積に対してがけ地面積が一定の割合を超えている必要があります。
がけ地の割合を計算する方法は以下のとおりです。
がけ地の面積÷土地の総面積=がけ地の割合
算出したがけ地の割合が0.1以上であれば、がけ地補正率を相続税評価額に適用できます。
たとえば、がけ地の面積が10㎡、土地の総面積が100㎡の場合は「10㎡÷100㎡=0.1」なので、補正率の適用が可能です。
なお、かげ地補正率はかげ地割合のほか、斜面の方位によっても変動します。
がけ地の斜面が東向きの場合は東、東南の場合は東と南の補正率を平均した数値を適用しましょう。
がけ地割合と方位の調査が完了したら、国税庁が公開している「がけ地補正率表」で補正率を調べてみてください。
地積規模の大きい土地
相続した土地の面積が広大である場合、地積規模の大きい土地に当てはまる可能性があります。
具体的には、三大都市圏では500㎡以上、その他の地域では1,000㎡以上の土地が該当します。
地積規模の大きい土地を路線価方式で計算する場合、計算式は以下のとおりです。
路線価×奥行価格補正率×各種画地補正率×規模格差補正率×宅地面積(㎡)
規模格差補正率は、地域や土地の大きさによって異なります。国税庁が公開している「規模格差補正率表」を参照して計算してみてください。
一例として、上記の計算式に各種数値を当てはめて計算しました。
30万円(路線価)×0.90(奥行価格補正率)×0.70(各種画地補正率)×0.95(規模格差補正率)×500㎡(宅地面積)=89,775,000
補正率なしの場合は30万円×500㎡で1億5,000万円の評価額ですが、補正率を適用すれば約8,977万円にまで下がります。
地積規模が大きい場合は、規模格差補正率を適用できるかどうかを必ず確認しましょう。
踏切や線路に面している土地
踏切や線路に面している土地の場合、評価額が10%減になる可能性があります。騒音や振動などが生活環境に影響を与えることが考えられるためです。
ただし、踏切や線路が近いからといって、必ず10%減額できるわけではありません。
10%減額が適用される条件は以下のとおりです。
- 騒音レベルが基準値を上回っている
- 路線価に騒音や振動の影響が反映されていない
環境省が設定している環境基準によると、昼間は50~60デシベル、夜間は40~50デシベルを超える騒音があると、土地の価値が著しく低下していると判断されやすいです。
また、すでに路線価に騒音や振動の影響が反映されていると、10%の減額は認められません。
路線図を確認して周辺の土地よりも路線価が低い場合、騒音や振動が反映されている可能性があります。
セットバックが必要な土地
セットバックとは、建物を新築したり建て替えたりするときに、土地と道路の境界線を後退させることです。
建築基準法第24条2項では、4m幅以上の道路に建物を建てることが義務付けられています。
しかし、建築基準法が定められる以前に建てられた古い建物の場合、条件を満たしていないケースがあります。
条件を満たしていない建物は、建て替えに際して道路幅を確保するために道の中心線から2mの位置までセットバックをしなければなりません。
セットバックが必要な土地は通常よりも価値が下がるため、70%を控除して30%で土地を評価できます。
たとえば土地の評価額が3,000万円の場合、セットバックによる補正を適用すれば「3,000万円×30%」で評価額は900万円にまで下がります。
隣に墓地がある土地
土地に墓地が隣接していると購入したいと考える方が通常よりも少なくなることから、土地の市場価値が下がってしまいます。
そのため、墓地が隣接している土地は相続税評価額を10%ほど下げられる可能性があります。
ただし、墓地が隣接しているだけで必ず10%減額を適用できるわけではない点には注意が必要です。
路線価や固定資産税評価額に墓地の評価減が反映されている場合、10%の減額は適用されません。
また、墓地の面積が小規模で一部の親族しか把握していないケースであれば、減額は適用されない可能性が高いです。
隣接している墓地が土地の評価に与える影響については、明確な基準が設けられていません。迷ったときは土地の評価に強い税理士に判断を仰ぎましょう。
土砂災害特別警戒区域などに指定されている土地
土砂災害特別警戒区域に指定されている土地は、土砂災害が発生したときに建物の損壊や生命の危険が生じる恐れがあります。
通常よりも買い手が付きにくいことから、特別警戒区域補正率を適用して評価額を下げられます。
路線価方式で土砂災害特別警戒区域に指定されている土地の評価額を計算する方法は、以下のとおりです。
路線価×各種画地補正率×特別警戒区域補正率×宅地面積(㎡)=土地の相続税評価額
上記の計算式に、各種数値を当てはめて計算結果をシミュレーションしてみました。
30万円(路線価)×0.90(各種画地補正率)×0.80(特別警戒区域補正率)×200㎡(宅地面積)=43,2000,000
通常の評価額は「30万円×200㎡」で6,000万円ですが、補正率を適用したことにより、4,320万円にまで減額されています。
特別警戒区域補正率は、土地の総地積に対する特別警戒区域の地積の割合によって変動します。
「特別警戒区域の地籍÷総地積」で計算し、割合が0.10以上であれば補正率の適用が可能です。
なお、土砂災害特別警戒区域に該当するかどうかは、ハザードマップポータルサイトで確認できます。住所を入力して検索してみてください。
共有名義になっている土地
土地が共有名義になっている場合は、相続する土地を分割することになるため、必然的に評価額が下がります。
たとえば相続する土地が両親の共有名義になっており、100㎡の土地をそれぞれ50%ずつ所有しているとします。
父が亡くなって長男に土地を相続することになった場合、父の持分のみで相続税評価額を計算します。路線価を20万円と仮定した場合の計算方法は以下のとおりです。
20万円(路線価)×100㎡(宅地面積)×50%=10,000,000
母の持分である50%は相続税評価額に入らないため、相続税評価額は通常2,000万円のところ、50%を差し引いて1,000万円になります。
また、共有名義になっている土地は、相続トラブルの原因になりやすいという点も評価額に考慮されます。
もしも共有者が複数名いる場合、土地の活用に合意が得られなかったり、連絡が取れなくなったりするケースが少なくありません。
共有名義になっている土地は活用方法に制限が発生することから、評価額が下がる可能性があります。
土地の相続税に関する基礎知識
土地の相続税評価額を計算する際には、相続税に関する基礎知識も頭に入れておく必要があります。知っておきたい基礎知識は以下のとおりです。
- 土地は「相続時の時価」に対して課税される
- 土地の相続税がかからないケースもある
- 相続税を抑えるために活用できる制度がある
それぞれの基礎知識について詳しく見ていきましょう。
土地は「相続時の時価」に対して課税される
土地の時価とは、今現在に土地を売買したときの相場価格のことです。
土地の価格は周辺環境や政治経済などで変動するため、相続税は「相続時の時価」に対して課税されるルールになっています。
そのため、土地を相続する際は土地の時価を適切に評価することが重要です。
しかし、時価を知るためには専門知識が必要になることから、一般の人が適切な評価額を算出するのは簡単ではありません。
専門知識がなくても土地の時価を評価する方法として、路線方式と倍率方式の2種類の計算方法が用意されています。路線価や固定資産税評価額に基づいて計算すれば、時価の算出が可能です。
ただし、評価額を減額するための補正率については、自分で調べるのが難しいケースもあります。
評価額を適切に減額できなければ、土地の評価額が高くなり、結果的に相続税も高額になってしまいます。
正しい評価額を算出して節税対策をしたいときは、税理士に依頼すると良いでしょう。
土地の相続税がかからないケースもある
相続税には基礎控除が設けられているため、遺産総額が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。そのため、相続税の申告自体が不要になります。
基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば法定相続人が3人の場合は「3,000万円+(600万円×3)=4,800万円」なので、遺産総額が4,800万円以内であれば、相続税が発生しません。
もしも遺産総額が基礎控除額を上回っていたとしても、特例を適用すれば相続税が減額され、ゼロになるケースもあります。
相続税を抑えるために活用できる制度がある
相続税を抑えるためには、国が用意している制度も活用する必要があります。土地の相続税を節税できる制度は以下のとおりです。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減の特例
- 未成年者控除
- 相次相続控除
- 障害者控除
各制度の概要や、利用できる条件などについて詳しく解説します。
「小規模宅地等の特例」の対象になる場合
小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たしたときに相続税評価額を減額できる制度のことです。
たとえば自宅として使用している土地を配偶者や同居家族などが相続した場合、評価額を80%減額できます。
なお、小規模宅地等の特例を適用するためには細かな条件が定められているため、事前の確認が必要です。
自宅として利用していた場合や事業用に利用していた場合、第三者に貸していた場合など、土地の使い方によって減額できる割合が異なります。
減額できる土地の面積にも上限が設けられており、上限を超える土地については減額の対象になりません。
また、遺産分割協議が終わっていない場合は小規模宅地等の特例を適用できないため、注意しておきましょう。
「配偶者の税額軽減の特例」の対象になる場合
配偶者の税額軽減の特例は、被相続人の配偶者から相続した遺産の相続税が一定額まで非課税になる制度です。
配偶者が多額の財産を残して亡くなったとき、残された配偶者に相続税の大きな負担がかかると生活できなくなる可能性があるため、このような制度が設けられています。
配偶者の税額軽減の特例が適用されれば、以下のいずれか大きい方の金額まで非課税になります。
非課税の基準となる金額は1億6,000万円までですが、法定相続分の範囲内であれば1億6,000万円を超えても相続税はかかりません。
法定相続分は、民法で定められている相続の割合のことです。たとえば相続人が配偶者と子供である場合、法定相続分は1/2ずつと決められています。
極端な例をあげると、配偶者の遺産総額が50億円だったとしても、法定相続分の範囲内であれば非課税となります。
非常に節税効果の高い制度なので、配偶者から遺産を相続するときは、配偶者の税額軽減の特例を適用しましょう。
「相次相続控除」の対象になる場合
相次相続とは、10年以内に2回以上の相続が発生したときに、相続税の負担を軽減するための制度です。
たとえば父親が亡くなって相続をした後、すぐに母親が亡くなって新たな相続が発生した場合、短期間で相続税が2回発生することになります。
相続人が短期間で高額な税金を負担するのを防ぐため、相次相続控除の制度が設けられています。
相次相続控除額の計算方法は以下のとおりです。
①×③/(②-①)×④/③×(10-⑤)/10=各相続人の相次相続控除額
- ①今回の被相続人が前の相続で課せられた相続税額
- ②今回の被相続人が前の相続で取得した純資産額
- ③今回の相続で相続人全員が取得した純資産価額の合計額
- ④相次相続控除額を受ける相続人が取得した純資産額
- ⑤前回の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て)
上記の計算式に当てはめれば、相続人1人あたりの相次相続控除額がわかります。
なお、一次相続の際に配偶者が相続する場合、10年以内に二次相続が発生する可能性が高いです。
二次相続では配偶者の税額軽減の特例が適用できないうえ、相続人の人数が減ることから基礎控除額も減額され、相続税が高くなってしまいます。
配偶者が相続をするときは二次相続のことを考慮した節税対策が必須となるため、税理士に相談してみてください。
「未成年者控除」の対象になる場合
相続人が18歳未満の未成年の場合、未成年者控除を適用して相続税の減額が可能です。
具体的には、相続人が18歳になるまでの年数1年につき10万円をかけた金額が相続税から控除されます。
たとえば相続人が15歳の場合、18歳になるまでの年数は3年なので「3年×10万円=30万円」の控除が可能です。
未成年者控除を適用するための条件は以下のとおりです。
- 相続・遺贈によって財産を取得していること
- 相続・遺贈で財産を取得したときに18歳未満であること
- 相続・遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること
- 相続・遺贈で財産を取得した未成年者が法定相続人であること
未成年者控除を適用するためには、法定相続人である未成年が相続・遺贈で財産を取得している必要があります。取得した財産が一切ない場合、未成年者控除は適用できません。
「障害者控除」の対象になる場合
相続人が障害者の場合は、障害者控除を適用して相続税を減額できます。親族が亡くなった後も障害者の方の生活を守るため、このような制度が設けられています。
障害者控除の適用条件は以下のとおりです。
- 相続・遺贈によって財産を取得していること
- 相続・遺贈で財産を取得したときに85歳未満の障害者であること
- 相続・遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること
- 相続・遺贈で財産を取得した障害者が法定相続人であること
障害者控除の金額は、一般障害者と特別障害者で異なります。
一般障害者は「満85歳になるまでの年数1年×10万円」で、特別障害者は「満85歳になるまでの年数1年×20万円」です。
たとえば相続人が50歳の一般障害者である場合、計算方法は以下のとおりです。
(85歳-50歳)×10万円=350万円
年齢によっては大きな控除ができるため、障害者の方が相続をする際は障害者控除を適用しましょう。
相続税の節税対策なら税理士への相談がおすすめ
相続税を最大限まで抑えて節税したいときは、土地の評価に関する知識や経験が豊富な税理士に相談しましょう。
土地の評価は専門性が高く複雑なうえ、補正率や特例など、節税につながる要素を適切に活用しなければなりません。
専門知識がないのに土地を評価してしまうと、ミスが生じたり節税が全くできなかったりという事態に陥る可能性が高いです。
税理士に依頼すれば土地の評価はもちろん、相続税申告に関する業務をすべて一任できます。
相続税を節税したい場合や、申告に関する負担を軽減したい場合は、相続税の経験が豊富な税理士に依頼してみてください。
まとめ
土地の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で計算が可能です。相続税評価額は相続税に大きな影響を与えるため、正しく計算をする必要があります。
相続税評価額の計算には専門知識が必要な部分が多いので、困ったときは税理士に相談するのがおすすめです。土地の評価に強い税理士に依頼すれば、節税対策を含めて適切に土地を評価してもらえます。
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