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遺族年金の手続きはいつまで?受領までの流れを紹介

遺族年金の手続きはいつまで?受領までの流れを紹介

遺族年金は、国民年金もしくは厚生年金の被保険者あるいは被保険者であった人が亡くなったときに、その方に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。

遺族年金には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。

それぞれ支給される金額や支給期間、受給対象となる親族も異なり、亡くなった方の加入状況などによって、いずれかまたは両方を受給することが可能です。

遺族年金は残された家族の生活を保障するための制度ですが、亡くなってから5年以内に請求手続きをしなければ、時効によって請求できなくなる可能性があります。

また、遺族年金の請求開始から実際に年金が支給されるまでには4カ月程度の期間を要するため、亡くなったあとの生活をしっかりと維持するためにも早めに手続きすることが大切です。

この記事では、遺族年金の受給手続きや必要書類などについて解説します。2025年に向けて改正が議論されている遺族年金制度についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。

遺族年金の手続きと受給までの期間

亡くなったあと、遺族年金の手続きはいつまでに行わなければならないのでしょうか。請求から支給されるまでの期間を含めて解説します。

  • 手続きは亡くなった日の翌日から5年以内に行う
  • 手続き開始から支給開始まで約4カ月かかる

手続きは亡くなった日の翌日から5年以内に行う

遺族年金は、被保険者が亡くなって自動的に支給が開始されるわけではなく手続きが必要です。

請求手続きは、生計を維持していた人が亡くなった日の翌日から5年以内にしなければなりません。5年以内に手続きすれば、それまで受け取っていなかった期間の支給分も遡って受け取ることができます。

ただし、請求しないまま5年を経過したときは、年金を受け取る権利は時効によって消滅します。やむを得ない事情で時効完成前に請求できなかった場合、その理由を書面で申し立てることにより請求権を消滅させないことも可能です。

手続き開始から支給開始まで約4カ月かかる

遺族年金は、請求手続き後すぐに受け取れるわけではありません。年金の受給資格を取得した日(亡くなった日)から初回受取まで約4カ月の期間を要するため、早めに手続きをすることが大切です。

遺族年金の受け取りまでの流れは次のとおりです。

  1. 受給資格の取得(家族の死亡)
  2. 年金請求手続き
  3. 「年金支払通知書」「年金振込通知書」を日本年金機構から送付
  4. 遺族年金の受け取り(初回)
  5. 遺族年金の定期的な受け取り

2.の必要書類の提出とともに年金請求の手続き完了から、3.「年金支払通知書」「年金振込通知書」が届くまで、約60日かかります。さらに、3.「年金支払通知書」が届いてから4.遺族年金の初回受け取りまでに要する期間は、約50日です。

5.遺族年金の定期的な受け取り後は、2ヶ月に1回、偶数月の15日に支給されます。

遺族年金はいつまで受給できる?

では、遺族年金はいつまで受給できるのでしょうか。遺族基礎年金、遺族厚生年金それぞれの受給要件や支給額も含めて解説します。

  • 遺族基礎年金:子どもが18歳になるまで受給できる
  • 遺族厚生年金:原則として生涯にわたり受給できる

遺族基礎年金:子どもが18歳になるまで受給できる

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者であった人が亡くなったときに、子のいる配偶者もしくは子どもが受け取ることができる年金です。

遺族基礎年金は、亡くなった方に生計を維持されていた子どもが18歳になった年度の末日(3月31日)まで受給することができます。

子どもが障害年金の障害等級1級または2級の状態にある場合、受給期間が20歳まで延長されます。

ただし、受給権者である妻や夫あるいは子どもが亡くなったり、結婚したりした場合など、一定の事由が発生した場合、遺族基礎年金の受給権は消滅します。

遺族基礎年金を受給するには、亡くなった人が次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

【亡くなった人の要件】

  • 国民年金の被保険者である間に死亡した
  • 60歳以上65歳未満の国民年金の被保険者で、日本国内に住所を有していた方が死亡した
  • 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡した
  • 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡した

国民年金については、原則として、保険料の納付済期間が加入期間の3分の2以上あることが必要です。
また、老齢基礎年金については、保険料の納付済期間と保険料免除期間および合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある人に限られます。

合算対象期間とは、老齢基礎年金などの受給資格期間を計算する際に、期間の計算には算入されるが年金額には反映されない期間です。

遺族基礎年金の受給権者は、子のある配偶者または子です。死亡当時に胎児であった子も出生以降に遺族年金の対象となります。

ただし、配偶者や子の年収が850万円未満であることが必要です。

日本年金機構「遺族基礎年金」

遺族厚生年金:原則として生涯にわたり受給できる

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方に生計を維持されていた遺族が受給できる年金です。

遺族厚生年金を受給できる期間は、受給権者が誰かによって異なります。

【受給権者が妻の場合】
子どもがいる妻、もしくは30歳以上の妻は、一生涯受給することができます。一方、子どもがいない30歳未満の妻は、5年間に限り受給できます。

【受給権者が子もしくは孫の場合】
18歳になった年度の末日(3月31日)まで受給することができます。ただし、障害等級1級・2級の状態にある場合は20歳になるまで受給可能です。

【受給権者が夫の場合】
子のない夫は55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます。支給対象となる子が先順位にいる場合、夫には支給されず子どもに支給されます。

【受給権者が父母もしくは祖父母の場合】
父母もしくは祖父母が55歳以上の場合、60歳から一生涯受け取ることができます。

遺族厚生年金を受給するためには、亡くなった人が次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

【亡くなった人の要件】

  • 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した
  • 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した
  • 1級・2級の障害厚生年金を受けとっている方が死亡した
  • 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡した
  • 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡した

厚生年金保険については、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が年金加入期間の3分の2以上であることが必要です。

また、老齢厚生年金については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計期間が25年以上あることが必要となります。

遺族厚生年金の受給対象者は、亡くなられた方に生計を維持されていた次の遺族のうち、最も優先順位が高い方です。

  1. 子のある配偶者
  2. 子のない配偶者(夫の場合、55歳以上であること)
  3. 父母(亡くなったとき55歳以上であること)
  4. 祖父母(亡くなったとき55歳以上であること)

日本年金機構「遺族厚生年金」

遺族年金を受領するまでの流れ

では、遺族年金を受け取るにはどのような手続きや書類が必要なのでしょうか。受領開始までの流れについて解説します。

  1. 死亡届の提出
  2. 必要書類の準備
  3. 遺族年金請求書の作成
  4. 役場または年金事務所へ提出
  5. 年金証書・年金決定通知書の送付
  6. 年金受給開始
  7. 以降2ヵ月ごとに年金を受給

1. 死亡届の提出

年金を受けている方が亡くなった場合、年金の受給権がなくなるため受給権者死亡届(報告書)の提出し、受給停止の手続きが必要です。

受給停止の手続きは、年金事務所もしくは年金相談センターで、厚生年金・共済年金は10日以内、国民年金は14日以内に行わなければなりません。

手続きを行わず、故人の口座に年金が振り込み続けられると、最悪の場合、詐欺罪に問われる可能性もあるため必ず手続きしましょう。

死亡届の提出時には、亡くなった人の年金証書と死亡の事実を証明できる次のいずれかの書類が必要となります。

  • 住民票除票
  • 戸籍抄本
  • 市区町村長に提出した死亡診断書の写しまたは死亡届の記載事項証明書

また、年金は2ヶ月に1回、前月と前々月の分が振り込まれる後払いの方法のため、亡くなったタイミングに関係なく、未支給年金が発生します。

年金の受給停止手続きをする際に、同時に「未支給年金・未支払給付金請求書」という書類を渡されるため、併せて手続きしましょう。

2. 必要書類の準備

遺族年金の請求に必要な書類を準備します。

  • 基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号が分かる書類
  • 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 死亡者の住民票の除票
  • 請求者の収入が確認できる書類
  • 子の収入が確認できる書類※義務教育終了前は不要
  • 市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)の写しまたは死亡届の記載事項証明書
  • 受取先金融機関の通帳等(本人名義)

死亡原因が交通事故など第三者の行為によるものの場合、別途次の資料が必要です。

  • 第三者行為事故状況届(所定の書式あり)
  • 交通事故証明または事故が確認できる書類
  • 確認書(所定の書式あり)
  • 被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類
  • 損害賠償金の算定書※すでに決定済の場合

その他、他の公的年金から年金を受け取っている場合は、その年金証書が必要です。

かけていた年金の種類や状況によって必要書類が変わるため、市区町村や年金事務所の窓口などで確認しながらしっかりと準備しましょう。

日本年金機構「遺族基礎年金を受けられるとき」

日本年金機構「遺族厚生年金を受けられるとき」

3. 遺族年金請求書の作成

遺族年金請求書を作成、提出します。

年金請求書は、日本年金機構のホームページからダウンロードするか年金事務所でも配布しています。

年金請求書の主な記載項目は次のとおりです。

  • 亡くなった方の住所・氏名・生年月日・基礎年金番号
  • 請求者の住所・氏名・生年月日
  • (基礎年金番号と異なる記号番号が記載された年金手帳などがある場合)その記号番号
  • 年金の振込先情報
  • 生計を同じくする子の氏名・住所
  • 請求者の年金受給状況
  • 亡くなった方の年金の加入履歴
  • 死亡年月日・亡くなった原因
  • 生計維持関係 など

亡くなった方や請求される方の状況によって記載事項は異なるため、記載方法は、年金事務所もしくは日本年金機構のホームページで確認してください。

日本年金機構「遺族年金の届書」

4. 役場または年金事務所へ提出

役場もしくは年金事務所へ必要書類を添付し年金請求書を提出します。

遺族基礎年金は、住所地の市区町村役場の窓口になり、遺族厚生年金は、年金事務所または街角の年金相談センターが提出先となります。

また、亡くなった方が死亡した時点で国民年金第1号被保険者の場合、市(区)役所または町村役場の国民年金の担当窓口へ提出します。

国民年金第1号被保険者とは、国内に住所がある20歳以上60歳未満の自営業者、農業者とその家族もしくは学生、無職の方です。

亡くなった方が国民年金第1号被保険者以外の場合、近くの年金事務所または街角の年金相談センターなどへ提出します。

5. 年金証書・年金決定通知書の送付

年金請求をして約60日程度で、日本年金機構から「年金証書」と「年金決定通知書」が送付されます。

年金証書は、年金を受給する資格を証明する書類です。基礎年金番号が記載されており、受給開始後に各種手続きを行う際にも必要になることがあるため大切に保管しましょう。

年金決定通知書は、支給される年金の額が決まったときに送られてくるもので支給される年金額が記載されています。将来、受給額が変更になったときも送付されてくる書類です。

また、年金を口座振込で受給する場合、年金振込通知書が送付されてきます。年金振込通知書は、口座振込で受給する場合に支払期ごとの年金額を通知するものです。

年金額が改訂された場合もしくは源泉所得税・特別徴収する介護保険料などに変更があった場合に送られてきます。

6. 年金受給開始

年金証書が送付されてから、おおむね50日程度で初回の年金受給が開始されます。ただし、2つ以上の年金を受け取る権利のある方など調整が必要な場合は50日以上かかる場合もあります。

最初に受け取る金額は、原則として受取り開始年月から直前の受取り月の前月分までです。受取り開始年月は、年金証書に記載の「受給権を取得した月」の翌月です。

なお、年金は亡くなった月まで受け取ることができるため、未支給年金がある場合、亡くなった人と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。

7. 以降2ヵ月ごとに年金を受給

年金は、原則として偶数月の15日(土日祝日の場合は、直前の営業日)に受け取れます。

2ヶ月おきに受け取る年金は、受け取り月の前2ヶ月分です。例えば、4月に支給される年金は、2月分と3月分になります。

2025年の遺族年金制度改正について

遺族年金制度は、残された遺族の生活を保障するための制度ですが、2025年に向けて改正案が協議されています。

遺族基礎年金は、2012年の社会保障・税一体改革の年金改正法によって、遺族基礎年金の支給対象をそれまでの母子家庭のみから父子家庭にも拡大されています。

しかし、遺族厚生年金は、妻に対しては、子がない場合でも終身で給付され、さらに、40歳から65歳までの間は中高齢寡婦加算という定額部分(遺族基礎年金の4分の3相当)も支給されます。

一方、夫に対しては、妻が死亡した時に55歳以上であった場合に60歳から支給されるのみです。

養育する子がいる場合は、子に遺族厚生年金が支給されるため男女差は無いとも言えますが、養育する子がいない場合には、男女間で差があるのが現状です。

これは、現行の遺族厚生年金制度が、男性が主に家計の担い手であった時代の制度設計となっており、今のように、夫婦ともに働くことが一般化している時代とは合っていないことから生じているといえます。

そのため、今後、夫に対する遺族厚生年金の年齢要件の撤廃や子のない妻に対する遺族厚生年金の有期化などが議論されており、現行の遺族年金制度と大きく変わる可能性があります。

まとめ

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、それぞれの条件を満たした場合、両方を受給することもできます。

ただし、遺族年金は、生計を支えていた人が亡くなった翌日から5年以内に請求手続きをしなければ時効で請求できなくなる可能性があるため注意が必要です。

また、請求手続きをしてすぐに支給されるわけではなく、支給開始までおおむね4カ月程度の時間を要します。その間の生活費なども考えることが必要な場合もあるため早めに手続きしましょう。

遺族年金の請求は、市区町村の役場の窓口もしくは年金事務所、街かどの年金相談センターで手続きができます。

支給が始まると、原則として、遺族基礎年金は子が18歳になるまで、遺族厚生年金は生涯にわたり受給できます。

ただし、遺族厚生年金の支給期間や支給額などについて、2025年の改正に向けて協議されており、今後変わる可能性があります。

遺族年金に関するよくある質問

遺族年金の手続きを忘れたらどうなりますか?

遺族年金の請求手続きは、生計を維持していた人が亡くなった日の翌日から5年以内に手続きが必要です。

遺族年金を受給する権利は、5年で消滅時効を迎えるため、期限内に手続きしない場合受け取れなくなる可能性があります。

夫が死亡したら遺族年金はいくらもらえますか?

遺族年金における、遺族基礎年金、遺族厚生年金の支給額は次のとおりです。

【遺族基礎年金】

●子がある配偶者が受け取る場合

・昭和31年4月2日以後生まれの方
 816,000円+子の加算額

・昭和31年4月1日以前生まれの方
 813,700円+子の加算額

●子が受け取る場合

次の金額を子の数で割った額が1人あたりの支給額となります。

816,000+2人目以降の子の加算額

・1人目、2人目の子の加算額:それぞれ234,800円
・3人目以降の加算額:それぞれ78,300円

【遺族厚生年金】

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。

ただし、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月未満の場合、300月とみなして計算します。

また、一定の条件に該当する場合、「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」が適用され、遺族厚生年金に加えて支給される場合があります。

日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」

日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

父子家庭でも遺族基礎年金は受給できますか?

父子家庭でも遺族基礎年金は受給できます。

遺族基礎年金の支給対象は、2012年の年金改正法により、それまで母子家庭のみだったものが父子家庭にも適用範囲が拡大され、2014年4月から施行されています。