相続税の還付とは払い過ぎた税金を取り戻せること
被相続人が亡くなり遺産を受け継ぐことになると、相続税が発生します。相続税は相続開始を知ってから10ヶ月以内に申告しなければなりません。相続税は「申告納税制度」を採用しているため、自らが相続財産の評価額を算定し、相続税を計算しなければなりません。
そのため、相続税の計算ミスや相続財産の過大評価、減額要素の見落としなどが原因で、本来よりも多くの相続税を納め過ぎてしまうことがあります。もし、相続税を払い過ぎてしまった場合、相続税申告をした税務署で「相続税の更正の請求」の手続きを行えば、「相続税還付」を受けられる可能性があります。相続税還付とは、過去に払い過ぎた相続税を取り戻せる制度のことです。
相続税還付で返金された分は、払い過ぎた税金を取り戻したに過ぎないため、受け取る際に課税対象にはなりません。そのため、相続税の払い過ぎに心当たりがあったり、自分で計算したため合っているか不安だったりする方は、一度税理士などの専門家に相談してみるのがおすすめです。
相続税還付申告の期限は最長5年10ヶ月以内
相続税の還付申告には時効があるため、申告期限を過ぎると相続税の還付は受けられません。払い過ぎた相続税の還付を受けるには、相続税の申告期限(相続開始を知った日から10ヶ月後)を含め、5年10ヶ月以内に税務署で「相続税の更正の請求」の手続きを行う必要があります。
たとえば、被相続人の死亡日が2024年3月1日の場合は、相続税の還付申告の期限は下記のようになります。
相続開始を知った日 |
2024年3月1日 |
相続税の申告期限 |
2025年1月1日 |
相続税還付申告の期限 |
2030年1月1日 |
なお、相続税の還付が受けられる場合でも、税務署は電話や郵便などで通知してくれないので注意が必要です。相続の還付が受けられるかどうかは申告内容を見直し、自分で相続財産の再評価や相続税の再計算をして税務署に請求を行わなければなりません。
還付金が振り込まれるまでの期間は約2~6ヶ月
相続税の更正の請求手続きを行った後は審査が行われ、審査が認められれば納め過ぎた相続税の還付が受けられます。審査期間の目安は2~6ヶ月程度ですが、場合によっては1年以上かかることもあります。
審査後、相続税還付が受けられる場合は「相続税の更生通知書」、受けられない場合は「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が届きます。
相続税の過払いが発生する理由
相続税の過払いが発生する主な理由としては、下記の3つが挙げられます。
- 土地の税額評価は難しいため適切に評価されていなかった
- 依頼した税理士が知識・経験不足だった
- 適用できる控除や特例を活用していなかった
ここからは、上記の理由についてそれぞれ詳しく解説していきます。
土地の税額評価は難しいため適切に評価されていなかった
税務署に納める相続税は相続財産ごとに評価額を算定し、それに基づいて計算する必要があります。相続財産の税額評価に誤りがあると、正確な相続税の金額を算出できません。特に土地の評価方法は難解で複雑なため、適切に評価されなかったことで相続税の過払いが発生するケースが非常に多いです。土地の評価額の計算方法は下記の2通りあります。
- 路線価方式:「1㎡あたりの路線価×土地の面積」
- 倍率方式:「土地の固定資産税評価額×国が定めた倍率」
路線価とは、1㎡あたりの土地の評価額のことであり、土地が接する道路によって異なります。毎年3月には路線価の「公示価格」が公表され、路線価は公示価格の80%が基準になっています。
公示価格とは国が毎年公表している土地の基準価格であり、土地を売買したり公共事業に使用する土地を取得したりする際に価格の指標として算出されます。毎年1月1日に不動産鑑定士が評価し、3月に国税庁から公表されるので、土地の相続が発生したら必ず確認しましょう。
一方で、倍率方式は路線価が定められていない土地の評価で使用する計算方法で、倍率は国税庁が公表する「路線価図・評価倍率表」で確認できます。固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される「納税通知書」に記載されています。相続時に納税通知書が見つからなければ、「固定資産評価額証明書」を入手すれば確認可能です。
固定資産評価額証明書は、相続する土地が位置する市区町村の役場で入手できますが、基本的には所有者本人とその関係者しか取得できません。相続人の場合は必要書類を揃えれば入手できるので、入手する際は以下の書類を揃えて取得申請をしましょう。
- 本人確認書類
- 所有者の除籍謄本
- 取得しに来た人物が遺言執行人であることが確認できる遺言書
しかし、上記の計算方法だけでは適切に土地を評価することができません。なぜなら、土地の形状や周囲の状況、利用形態など様々な要素によって評価額が大きく変わってくるからです。形状がいびつな土地や急斜面の土地、家屋の建築に一定の制限がかかっている土地など、マイナス要素がある土地であれば評価額の減額が認められています。
しかし、専門知識や実務経験のある人がしっかりと現地調査しないと、減額できる要素を漏れなくすべて把握するのが非常に難しいため、相続財産に土地が含まれている場合は相続税の過払いが発生しやすいのです。
依頼した税理士が知識・経験不足だった
依頼した税理士が知識・経験不足だったことで、相続税の過払いが発生するケースも少なくありません。税理士も弁護士や医師と同じように、それぞれ得意とする分野があります。相続税の依頼件数は法人税や消費税、所得税など他の分野と比べて圧倒的に少ないため、相続税申告を専門としている税理士は少ないのが現状です。
また、税理士試験で相続税法は必須科目ではないため、相続税法について全く勉強したことがないという税理士も少なくありません。相続財産を適切に評価し、相続税を正確に計算するためには、相続税に関する専門的な知識や実務経験が求められます。
相続税申告の知識や経験が乏しい税理士に依頼すると、土地の評価方法や相続税の計算を誤ったり、評価額を減額できるポイントを見落としたりして、相続税を多く納め過ぎてしまう事態が発生しやすいです。税理士は税務のプロではありますが、税理士全員が相続税の申告に精通しているわけではありません。そのため、相続税の申告を税理士に依頼する場合は、相続税に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
適用できる控除や特例を活用していなかった
相続税には下記のような各種控除や特例が用意されているため、活用できれば相続税の減税が可能です。
- 配偶者控除
- 未成年者控除
- 障がい者控除
- 贈与税額控除
- 外国税額控除
- 相次相続控除
- 小規模宅地等の特例
上記のうち、以下の4つの控除については申告をしなくても活用できます。
- 未成年者控除
- 障がい者控除
- 贈与税額控除
- 外国税額控除
上記4つ以外の控除や特例については、控除後に相続税が0になる場合であっても、期限内に税務署へ申告しなければ適用されません。各種控除や特例の要件を満たしているにも関わらず、税務署への申告を忘れてしまうと、相続税を多く納め過ぎてしまうことになります。
各種控除や特例を適用し忘れても、税務署から郵便や電話などで通知されることはありません。相続税関連の税制は毎年改正されており、改正内容によっては相続税の計算方法が変わる場合があるので、相続税の申告や還付の可否を判断する場合は最新情報をチェックしておきましょう。
相続税還付申告の流れ
相続税の還付を受けるためには、税務署で相続税の更正の請求手続きを行い、申請内容を認めてもらう必要があります。相続税還付申告の具体的な流れとしては下記の通りです。
- 提出した申告書類を見直す
- 相続税申告書を修正・更正の請求書を作成する
- 各種通知が届いた後に還付金が振り込まれる
ここからは、上記の手続きについてそれぞれ詳しく解説していきます。
1. 提出した申告書類を見直す
相続税の還付が受けられるか確認するためには、まず税務署に提出した相続税の申告書類を見直し、相続財産の評価額や相続税を計算し直す必要があります。還付の判断は専門知識や実務経験がないと難しいため、まずは相続税に強い税理士を探して、還付を受けられるか判断してもらいましょう。税理士が決まったら、提出した申告書類を持参して税理士に確認してもらってください。
2. 相続税申告書を修正・更正の請求書を作成する
相続税の還付が受けられる可能性が高いと判断された場合は、次に相続税申告書の修正・更正の請求書の作成を行います。相続税の修正申告書と更正の請求書は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。
更正の請求書には、請求の理由となる事実を証明するための書類を添付しなければなりません。特に土地の評価方法は非常に複雑で、専門知識や実務経験がないと適切に評価するのが難しいため、不動産鑑定士と連携している相続専門の税理士に依頼することをおすすめします。
なお、更正の請求に不備があると再手続きが必要になるため注意が必要です。再手続きは、相続開始を知ってから5年10ヶ月の期限内であれば何度でも可能です。しかし、期限を過ぎると再手続きであっても請求できなくなるため、スムーズに進めるためにも税理士に依頼するのをおすすめします。
3. 各種通知が届いた後に還付金が振り込まれる
相続税申告書を修正・更正の請求書の作成が終わったら、期限内に管轄の税務署に提出しましょう。税理士に書類の作成を依頼した場合は、税理士が税務署に提出してくれます。書類の提出が完了すると、税務署で還付が必要なのかどうか審査が行われます。審査が認められれば、税務署から「相続税の更正通知書」が送付される流れです。
そして、その数日後に「国税還付振込通知書」が届き、2週間以内に指定した口座へ還付金が振り込まれます。審査が認められなかった場合は、前述の通り税務署から「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が送付されます。更正請求が認められなかったことに納得いかない場合、通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内であれば税務署で不服申立ての手続きが可能です。
相続税還付を受けやすい土地の特徴
土地は評価方法が複雑で評価額を正確に算定するのが難しいため、評価ミスによって相続税を払い過ぎてしまうケースが非常に多くあります。特に下記に当てはまる土地を相続した場合は、評価方法の誤りや減額要素の見落としが起こりやすいため、相続税の還付を受けられる可能性が高いです。
- 500平米以上の大きな土地
- 登記簿情報よりも土地面積が小さい土地
- 利便性や利用価値が低い土地
- 上空に高圧電線が通っている土地
- 庭内神祠がある土地
- 駐車場・車庫に活用されている土地
- 商店やアパート等に活用されている土地
- 山林・田畑の土地
ここからは、上記の特徴についてそれぞれ詳しく解説していきます。
500平米以上の大きな土地
相続した土地の面積が500平米以上ある場合は、「地積規模の大きな宅地の評価」という特例の適用によって相続税が下がる可能性があります。相続した土地が「地積規模の大きな宅地の評価」の要件を満たす場合は、「路線価×面積」で算出した評価額から2~4割程度の減額が可能です。「地積規模の大きな宅地」の定義は、地域によって異なります。
- 三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)の地域:500平米以上
- 三大都市圏以外の地域:1,000平米以上
ただし、面積の要件を満たしていたとしても、下記のいずれかに当てはまる場合は「地積規模の大きな宅地」から除外されるため、評価額は減額できません。
- 市街化調整区域にある宅地
- 工業専用地域に指定されている地域にある宅地
- 容積率が400%(東京23区の場合は300%)以上の地域にある宅地
- 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地(大工場地区内にある5万平米以上の土地)
相続した大きな土地が「地積規模の大きな宅地」の要件を満たしているかは、現地調査をしっかりと行わないと判断が難しいでしょう。
登記簿情報よりも土地面積が小さい土地
測量技術が未熟だった明治時代以前にある古い土地の場合、実際の土地面積よりも大きく測量され、現在も不正確な情報が登記簿に記載されているケースがあります。
もし、実際の土地面積が登記簿上の土地面積よりも小さい場合は、その分土地の評価額が減少します。期限内に申請をすれば相続税の還付が受けられる可能性が高いため、登記された時期を確認し古くから所有している土地の場合は再測量してみるのがおすすめです。
利便性や利用価値が低い土地
下記のような土地は利便性が低く、資産価値が下がりやすいため、土地の評価額の減額補正が行えます。
<利便性の低い土地の例>
- 正方形や長方形に整えられていない不整形地(三角形やL字型など)
- 地面が斜めになっている傾斜地
- 道路に接していない無道路地
- 間口が狭い土地
利便性が低い土地の減額補正は、土地の形状や区域などによって細かく補正率が定められています。また、相続した土地の利用価値が著しく低いと認められる場合も、土地の評価額を減額できるため、相続税の還付が受けられる可能性が高いです。
<利用価値が低い土地の例>
- 周辺の宅地と比べて著しく高低差がある宅地
- 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
- 騒音や震動が激しい宅地
- 墓地と隣接している土地
- 有害物質によって土壌が汚染されている土地
相続した土地に利用価値が低いと認められる部分があれば、対象となる土地の評価額を10%減額できます。利便性や利用価値が低いと認められる部分は図面だけでの判断ができないため、しっかりと現地で調査する必要があるでしょう。
上空に高圧電線が通っている土地
土地の上空に高圧電線が通っている場合、送電線の電圧や土地と電線の距離によっては「家屋が建てられない」「構造や用途などに制限がかかる」など、土地の利用に一定の制限がかかるケースがあります。もし、高圧電線の影響で土地の利用に制限がかかる場合は、土地の評価額を下記のように減額可能です。
利用制限 |
減額割合 |
家屋の建築ができない |
50%と借地権割合のうち、いずれか高い割合 |
家屋の構造や用途などに制限がかかる |
30% |
借地権割合とは、土地全体のうち借地権が占める割合を指します。土地の権利には、土地を所有できる「所有権」と、家を建てるために借りられる「借地権」の2種類があります。家屋の建築ができない土地を相続する際は借地権割合を基準に減額割合が決まるため、土地を貸し出している場合は借地権割合を必ず確認しましょう。
借地権割合は、駅や繁華街の周辺など利用価値が高いエリアの土地ほど高くなり割合は30~90%と定められています。土地ごとの詳しい割合は国税庁が公開している「財産評価基準 路線価図・評価倍率表」で住所を検索すれば確認可能です。借地権割合は10%刻みで変化し、「財産評価基準 路線価図・評価倍率表」ではA~Gの7段階で表されています。Aが最も高い90%で、B、Cと10%ずつ減少する仕組みです。
郊外や利用用途に制限がある土地の場合、借地権割合か定まっていないケースも多々ありますが、「家屋の建築ができない」場合は最低でも50%の減額が可能です。
また、家屋の構造や用途に制限がかかっている場合、高圧電線の所有者との間に「地役権」が設定されていれば登記簿から制限の内容を確認可能です。地役権とは、ある用途のために他人の土地を利用する権利のことを指します。上空に高圧電線がある場合、家屋が上空の高圧電線に影響しないよう利用制限をかけるために、高圧電線を所有する事業者と高圧電線下の土地の所有者との間で地役権を設定するケースがあります。
地役権を設定した場合は登記が必要になるため、地役権で設定されている内容がわからない場合は登記簿で確認しましょう。登記されていない場合は、高圧電線の管理者への確認が必要です。なお、市街化調整区域の山林や農地など、原則として家屋の建築ができない土地の場合は、上空に高圧電線が通っていたとしても土地の評価額は減額できません。
庭内神祠がある土地
「庭内神祠」とは、不動尊や地蔵尊、道祖神、庚申塔などのご神体を祀って日常礼拝のために使われているものを指します。この庭内神祠がある敷地については、相続税法で「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」として相続税の非課税財産にすると規定されています。
たとえば、自宅の土地が200平米あって、そのうち10平米が庭内神祠の敷地であると認められれば、10平米の敷地は非課税の対象となるため、土地の評価額に加える必要はありません。以前は庭内神祠がある土地でも課税対象でしたが、2012年7月から非課税となりました。ただし非課税の対象となるのは、信仰を目的として設置した庭内神祠のみです。租税回避や節税目的で設置したと判断された場合は非課税にならないのでご注意ください。
駐車場・車庫に活用されている土地
駐車場や車庫に活用されている土地は、駐車場・車庫の形態によって評価方法が変わってきます。下記に当てはまる場合は土地の賃貸借に該当しないため、通常の宅地と同様に自用地として評価します。
- 土地の所有者が更地の状態で駐車場・車庫を貸している場合
- 土地の所有者がアスファルト舗装やフェンスの設置などを行った上で駐車場・車庫を貸している場合
一方、下記に当てはまる場合は土地自体を賃貸借していることになり、自用地の価額から賃借権の価額が控除されるため、土地の所有者が駐車場・車庫を貸している場合と比べて土地の評価額は安くなります。
- 土地の所有者が業者に土地を貸して、その業者が駐車場・車庫を管理している場合(土地を駐車場や車庫として不動産屋に貸し出し、管理は不動産屋が行っている)
また、下記に当てはまる場合は「貸付事業用宅地」として「小規模宅地等の特例」が適用できるため、駐車場・車庫として活用している土地の評価額を50%減額できます。
- 相続または遺贈によって取得した土地であること(生前贈与は対象外)
- 相続税の申告期限までその土地を所有していること
- 土地の相続人が相続税の申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、かつ貸付事業を営み続けていること
- 相続開始の3年以上前から貸付事業を営んでいること
ただし、「小規模宅地等の特例」が適用されるのは200平米までで、200平米を超えた部分の評価額は減額されません。また、下記に当てはまる場合も「小規模宅地等の特例」の対象外です。
- 青空駐車場(砂利やアスファルト、精算機、屋根などの構築物が一切ない駐車場のこと)
- 親族や知人に無償または低額で貸している場合
- 貸駐車場の一部に自家用車を止めている場合
このように、駐車場や車庫として活用している土地であれば、通常の宅地と比べて評価額が安くなるケースがあります。しかし、この点についてしっかりと理解しておかないと、通常の宅地と同様に評価してしまい、相続税の払い過ぎにつながります。
商店やアパート等に活用されている土地
商店やスーパー、アパート、マンションといった公共施設・商業施設に活用されている土地も、相続税の還付が受けられる可能性があります。公共施設・商業施設に活用されている土地は評価方法が特殊なため、専門知識がないと評価ミスによって相続税の過払いが発生しやすいです。
また、アパートやマンションなどの賃貸住宅に活用されている土地は、「貸付事業用宅地等」として「小規模宅地等の特例」の対象になるため、200平米までの部分の評価額を50%減額できます。ただし、相続税の申告期限までに土地を売却または他人に譲渡してしまった場合は、「小規模宅地等の特例」の対象外になるのでご注意ください。
山林・田畑の土地
山林や田畑は土地が広大になるケースが多く、農地・山林の種類や宅地転用の可否などによって評価方法も変わるため、評価額を正確に算定するのは非常に難しいです。たとえば、山林を相続した場合は下記の3つに区分に分け、区分に応じた計算方法で評価額を算定します。
- 市街地山林:市街地にあり、宅地の影響を大きく受ける山林のこと
- 中間山林:市街地山林と純山林の中間に位置する山林のこと
- 純山林:市街地から遠く離れた場所にあり、宅地の影響をほとんど受けない山林のこと
市街地山林は容易に宅地転用が可能なので、中間山林や純山林と比べて評価額が高額になります。しかし、土地が急斜面で宅地転用が難しい場合や、多額の造成費がかかる場合は、市街地にある山林であっても純山林として評価できます。
純山林として評価できるにもかかわらず、市街地山林として評価していた場合は、本来よりも多く相続税を納め過ぎているため、相続税の還付が受けられることになります。
相続税還付をする際の税理士事務所の選び方
相続税の還付が受けられるか判断するには相続税についての専門知識や経験が求められるため、税理士事務所に依頼するのがおすすめです。相続税還付を依頼する税理士を選ぶポイントとしては、下記の3つが挙げられます。
- 相続税還付の実績が豊富であるか
- 不動産鑑定士と連携している事務所であるか
- 税理士費用が完全成功報酬型であるか
ここからは、上記のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。
相続税還付の実績が豊富であるか
税理士事務所に相続税還付を依頼する場合は、相続税還付の実績が豊富であるか必ずチェックしておきましょう。一口に税金といっても、相続税や法人税、所得税、消費税、固定資産税など様々な種類があります。そのため、税理士も弁護士や医師と同じように、それぞれ得意分野や専門分野が異なります。
相続税は他の分野と比べて依頼件数が圧倒的に少ないため、相続税の実務経験がほとんどない税理士も数多くいます。相続税還付に関しても専門的な知識や実務経験が求められるため、相続税還付を依頼するなら相続税を専門的に取り扱っており、相続税還付の実績も豊富な税理士事務所に依頼するのがおすすめです。実績が豊富な税理士事務所なら、スムーズに説得力のある書類を作成できるので、還付も認められやすいでしょう。
不動産鑑定士と連携している事務所であるか
相続税の過払いは相続した土地の評価ミスによって発生するケースが多いため、相続税の還付を受けられるかどうか判断するには土地の再評価が必要です。しかし、土地の評価方法は非常に複雑で、税理士であっても適切に評価するのは難しいです。
そのため、土地評価のプロである不動産鑑定士からのサポートが必須となります。不動産鑑定士と連携している税理士事務所なら、別々に依頼しなくてもワンストップで対応してくれるので手間がかからないほか、不動産鑑定士からのサポートによって適切に土地を評価してもらえる可能性が高いです。
税理士費用が完全成功報酬型であるか
相続税還付は税務署での審査が行われるため、税理士に依頼して申請を出したとしても、必ず還付金が受け取れるとは限りません。着手金がかかる税理士事務所に依頼した場合だと、結果がどうなっても着手金は必ずかかるので、還付に失敗すると税理士費用だけ余計にかかってしまうことになります。
一方、完全成功報酬型の税理士事務所に依頼すれば、相談や手続きをしてもらったとしても還付が成功しなかった場合は報酬が一切発生しないため、金銭的にも安心して依頼ができます。なお、相続税還付の成功報酬は税理士事務所によって異なりますが、還付額の25~40%が一般的です。
まとめ
相続税は自己申告制であるのに加え、相続財産の税額評価の算定や相続税の計算が複雑なため、本来納めるべき金額よりも相続税を納め過ぎてしまうケースも少なくありません。特に土地は評価方法が非常に複雑で、税務のプロである税理士であっても適切に評価するのが難しいため、相続財産の中に土地が含まれている場合は相続税の過払いが発生しやすいです。
税務署は相続税を払い過ぎていたとしても通知はしてくれないので、相続税の還付を受けるには自分で申告内容を見直し、相続財産の再評価や相続税の再計算をして税務署に請求を行わなければなりません。相続税を払い過ぎていないか不安に感じた方は、不動産鑑定士と連携している相続専門の税理士への相談を検討してみてください。
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