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死亡退職金とは?相場や相続税の計算方法、受取人を解説

死亡退職金とは?相場や相続税の計算方法、受取人を解説

死亡退職金とは、退職金制度がある企業において、労働者の死亡により支給される退職金です。

死亡退職金は、亡くなった人(以下「被相続人」)の預貯金や土地、建物といった本来の相続財産ではなく、受取人固有の財産とされています。
ただし、税法上は、死亡をきっかけに受け取る財産であることから「みなし相続財産」として相続税の対象となります。

死亡退職金の受取人は、会社の就業規定で指定されている場合はそれに従い、就業規定で指定されていない場合は、原則として法定相続人です。死亡退職金の受取人は、他の相続財産も含めて、相続税を期限までに納付しなければなりません。

死亡退職金の相続税は、法定相続人の数や他の相続財産などで複雑になることも多いため、不安な方は税理士に相談しましょう。

この記事では、死亡退職金の相場から受取人、請求に必要な書類、相続税の計算方法まで徹底解説します。

死亡退職金とは労働者の死亡により支給される退職金

死亡退職金は、勤務先に退職金制度がある場合に、労働者の死亡によって企業等から支給される退職金です。死亡退職金は、金銭だけでなく、物や権利を含めて死亡退職金として支給される金品をいいます。

ここでは、生前に受け取る退職金との違いを含めて、死亡退職金の概要について解説します。

請求日から原則7日以内に支払われる

死亡退職金は、原則として請求があった日から7日以内に支払われます。

労働基準法23条では、使用者(会社)側に、相続人など死亡退職金を請求する権利のある人から支払いの請求があった場合、7日以内に賃金のほか積立金や保証金など、労働者の権利に属する金品を労働者に返還する義務を定めています。

ただし、死亡退職金の支給に関してトラブルにならないために、会社の就業規則に退職金の受取人や支払期日が規定されている場合は別です。
その場合、労働基準法より優先して、就業規則で規定された期日に従って支払われます。

参照:労働基準法23条|e-GOV法令検索

死亡退職金と生前退職金は支給対象が異なる

ともに勤務先の企業から支払われる死亡退職金と生前退職金ですが、支給される対象は異なります。

退職金は、通常、退職金の規定に従い、算定賃金や勤続年数などをもとに算定されるため、「賃金の後払い」の性格を有するものです。そのため、生前退職金は、労働者本人に支給されるものです。
一方、死亡退職金は、労働者本人の退職金を受け取る権利を相続した法定相続人などの遺族に支給されます。

また、課税関係についても、生前退職金には所得税が課税されるのに対し、死亡退職金は相続税が課税されるという違いがあり、納付する税額も異なります。
生前退職金は、通常支給されるときに所得税や住民税が源泉徴収されますが、死亡退職金は、相続財産(相続税の課税対象)にあたり源泉徴収されません。

参照:退職金と税| 国税庁

参照:死亡による退職の場合| 国税庁

相続放棄しても死亡退職金は受け取れる

死亡退職金は、相続放棄(民法938条以下)をした法定相続人も受け取れます。

相続放棄は、亡くなった人(以下「被相続人」)の財産や権利義務のすべてを受け取ることを拒否する意思表示です。相続放棄した相続人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。
そうすると、相続放棄した相続人は、死亡退職金を受け取れないと思われるかもしれません。

ただ、死亡退職金は、被相続人が生前に保有していた土地や建物等の不動産、預貯金などの本来の相続財産ではなく、会社の退職規定等に従って支給される受取人固有の財産(権利)とされています。

そのため、相続放棄の対象となる相続財産に死亡退職金は含まれず、相続放棄した相続人も受け取ることができます。受取人が指定された死亡退職金は、相続財産には含まれませんので、原則として遺産分割協議の対象にもなりません。

役員の死亡退職金は株主総会で決議される

会社の役員が亡くなって支給される死亡退職金については、会社の定款に支給額や支給時期が規定されている場合を除き、株主総会の決議にもとづいて支給されます(会社法361条)。

役員の死亡退職金について、定款に死亡退職金について規定されているケースは少なく、取締役会で株主総会への上程の決議をし、株主総会の決議を経て支給されることが一般的です。株主総会で死亡退職金の額などが決議されますが、支給されないこともあります。

死亡退職金の相場は1,000~2,000万円程度

退職金制度がある企業では。死亡退職金は必ず支給されます。厚生労働省の調査によると、退職金制度がある企業の割合は74.9%となっており、企業規模の大きい会社ほど退職金制度をもうけている割合は高い傾向です。

企業によって、退職金の算出方法に違いがありますが、退職時の基本給や勤続年数、役職などを加味した支給率をもとに計算されるケースが多いようです。
図表1は、厚生労働省の退職給付額の調査結果をまとめたものです。

図表1 退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)
勤続年数 大学・大学院卒 高校卒
勤続20~24年 1,021万円 557万円
勤続25~29年 1,559万円 618万円
勤続30~34年 1,891万円 1,094万円
勤続35年以上 2,037万円 1,909万円

上記の表は、管理・事務・技術職の退職給付金を表したものですが、勤続年数ならびに大卒か高卒かで給付額に差があることが分かります。大卒の場合、概ね1,000万円〜2,000万円の退職給付金となっています。
ただし、この統計は平均的な給付額ですので、具体的な給付額を知るには、勤務先で退職金に関する就業規定を確認してください。

参照:令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省12・18P

死亡退職金の受取人は遺族

死亡退職金は、原則として、会社の退職金規定で受取人が指定されている場合、規定に従って支給されます。一方で、退職金規定で受取人の指定がない場合、通常、法定相続人(遺産分割協議を含め)が受取人となります。

ここでは、それぞれについて、死亡退職金の受取人、順位について解説します。

会社の退職金規定で受取人が指定されている場合

退職金規定で受取人が指定されている場合、一般的に、労働基準法施行規則42条~45条等に準じて規定されているケースが多いです。

  • 第1順位:労働者の配偶者
  • 第2順位:労働者の収入で生計を維持していた労働者の子、父母、孫及び祖父母
  • 第3順位:第2順位に該当しない労働者の子、父母、孫及び祖父母、兄弟姉妹

第3順位の受取人について、労働者が遺言や会社側への指定によって、特定の受取人を指定している場合は、その指定された人が受取人となります。

会社の退職金規定で受取人が指定されていない場合

会社の退職金規定で受取人が指定されていない場合、死亡退職金は「みなし相続財産」となり、原則として法定相続人が相続し、受け取ることになります。「みなし相続財産」については次章で詳しく解説します。

法定相続人とは、民法で定められた相続財産を承継する権利のある人です(民法886条以下)。被相続人の配偶者は常に相続人となり、その他の相続順位は以下のとおりです。

  • 第1順位:死亡した人の子
  • 第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母)
  • 第3順位:死亡した人の兄弟姉妹

第2順位の人は第1順位の相続人がいない場合、第3順位は、第1順位、第2順位の相続人がいない場合に相続人になります。

会社の退職金規定で受取人が指定がされていない死亡退職金は、遺産分割協議の対象となる相続財産です。他の相続財産なども含めて協議の結果、死亡退職金の受取人や分割方法が決まることもあります。

死亡退職金は「みなし相続財産」のため相続税がかかる

相続税は、被相続人の死亡によって取得した財産に対してかかる税金です。相続税の対象となる財産には、預貯金や土地、建物などの不動産のほか、宝石や貸付金、著作権など、金銭的価値のあるものすべてが含まれます。

この点、死亡退職金は、被相続人の本来の相続財産ではなく、死亡退職金の受取人固有の財産であることから、相続税の課税対象にならないとも考えられます。
ただ、死亡退職金も、被相続人本来の相続財産ではありませんが、死亡をきっかけとして受け取るものであることから、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象です。

なお、死亡退職金以外にも、生命保険金(死亡保険)や一定金額を超えた弔慰金などもみなし相続財産として相続税がかかります。

参照:No. 4105 相続税がかかる財産| 国税庁

相続税の課税対象は死亡日から3年以内に支給が確定した金額

相続税の課税対象となる死亡退職金は、被相続人の死亡から3年以内に支給が確定したものです。死亡から3年経過後に支給が確定した死亡退職金は、相続税ではなく所得税(一時所得)の課税対象となります。
また、被相続人の死亡から3年以内に支給が確定していれば、実際に死亡退職金を受け取る日が3年を経過している場合でも、相続税の課税対象です。

なお、相続税の納付期限は、被相続人の死亡を知った日(通常は、死亡の日)の翌日から10か月以内です。
もし、納付期限内に死亡退職金の支給が確定しない場合は、死亡退職金を含めずに申告手続きをすすめる必要があります。

参照:No. 4117 相続税の課税対象となる死亡退職金| 国税庁

参照:No. 4205 相続税の申告と納税| 国税庁

非課税枠は500万円×法定相続人数

受け取った死亡退職金のすべてが相続税の課税対象になるわけでありません。死亡退職金は、残された家族の生活を支えるものであることから非課税枠(非課税限度額)がもうけられています。

・死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

法定相続人は、死亡した労働者の配偶者や子、両親や祖父母、兄弟姉妹です。
例えば、相続人が配偶者と長男、長女の場合、法定相続人の数は3人となり、非課税枠は、500万円×3人=1,500万円となります。

法定相続人のなかに、相続放棄をした相続人がいる場合でも、非課税枠の計算上、相続人の数に含めることができます。
ただし、非課税枠が適用されるのは、相続人が死亡退職金を受け取った場合だけです。遺言等で相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合には非課税枠は適用されません。

なお、死亡退職金以外のみなし相続財産に生命保険金がありますが、死亡退職金と同様に生命保険金にも非課税枠(500万円×法定相続人の数)があります。
死亡退職金と生命保険金の両方を受け取る場合、それぞれについて非課税枠を併用して適用できます。

参照:No. 4114 相続税の課税対象となる死亡保険金| 国税庁

弔慰金は基本的に非課税

労働者が死亡した場合に、死亡退職金のほかに、使用者(会社)から弔慰金を受け取る場合があります。

弔慰金は、死亡退職金と異なり、亡くなった労働者を弔い遺族を慰める、もしくはそれまでの功労に対して支給されるもので、基本的に相続税は課税されません。
ただし、退職給与の規定等に照らして実質的に退職金に相当すると判断されるものや次の金額を超える弔慰金は、課税対象となります。

(1)被相続人の死亡が業務上の死亡である場合
   死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でない場合
   死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

※普通給与は、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額

死亡退職金と弔慰金は、相続税の取扱いが異なる点に注意しましょう。

参照:No. 4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い| 国税庁

死亡退職金の相続税の計算手順

死亡退職金を受け取った場合、どれくらいの相続税がかかるのか、計算手順について事例を交えて解説します。死亡退職金の計算手順は次のとおりです。

  1. 1、死亡退職金の非課税枠を計算
  2. 2、各相続人の相続金額を計算
  3. 3、各相続人の非課税枠を計算
  4. 4、各相続人の課税金額を計算

具体的に、以下の事例で相続税の課税金額を算出してみます。

【事例】

・死亡退職金の総額:2,000万円
・相続人:配偶者と長男、長女の3人
・分割方法:法定相続分に従って分割

1、死亡退職金の非課税枠を計算する

まず、死亡退職金の非課税枠(非課税限度額)を計算します。

「非課税枠=500万円×法定相続人の数」です。
法定相続人(配偶者、長男、長女)は3人ですので、非課税枠は、500万円×3人=1,500万円となります。

2、各相続人が相続する金額を計算する

次に、各相続人が相続する金額を計算します。事例では、法定相続分に従って死亡退職金をそれぞれが相続します。法定相続分(民法900条)は、以下のとおりです。

図表2 法定相続分
相続人 法定相続分
子および配偶者が相続人 配偶者:1/2 子:1/2
配偶者および直系尊属が相続人 配偶者:2/3 直系尊属:1/3
配偶者および兄弟姉妹が相続人 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4

複数の子どもや直系尊属、兄弟姉妹がいる場合は、それぞれの相続分は等しくなります。

事例では、配偶者と子が相続人ですので、法定相続分は、配偶者1/2、長男1/4、長女1/4となり、それぞれの死亡退職金の相続金額は次のようになります。

配偶者:2,000万円×1/2=1,000万円
長男:2,000万円×1/4=500万円
長女:2,000万円×1/4=500万円

3、各相続人の非課税枠を計算する

次に、各相続人それぞれに適用される非課税金額を計算します。

1、で計算した非課税枠(非課税限度額)1,500万円を相続割合に応じて按分しますので、各相続人の非課税枠は以下のようになります。

配偶者:1,500万円×1/2=750万円
長男:1,500万円×1/4=375万円
長女:1500万円×1/4=375万円

4、各相続人の課税金額を計算する

各相続人の相続税の対象となる課税金額を計算します。
課税金額は、受け取る死亡退職金から非課税枠を控除して求めますので、各相続人の課税金額は以下のようになります。

配偶者:(相続金額)1,000万円-(非課税額)750万円=250万円
長男:(相続金額)500万円-(非課税額)375万円=125万円
長女:(相続金額)500万円-(非課税額)375万円=125万円

なお、死亡退職金の相続税の計算方法について解説しましたが、最終的な相続税額は、預貯金や不動産など他の相続財産を含めて、相続税の基礎控除額や配偶者控除などを加味しながら算出する点には注意してください。

死亡退職金の請求に必要な書類

死亡退職金の請求に必要な書類は以下のものです。

  • 退職金請求書
  • 労働者の死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書や除籍謄本など)
  • 労働者と死亡退職金を請求する人(受取人)の関係を確認できる書類(戸籍謄本など)

死亡退職金の支給は、会社の退職金規定に沿って行われますので、詳細は勤務先の企業に確認しましょう。
なお、死亡退職金は、例外的なケースを除いて相続税が課税されますので、源泉徴収票の交付はありません。

死亡退職金がもらえないケースはある?

ここまで死亡退職金について解説しましたが、労働者が亡くなった場合でも死亡退職金が支給されないケースもあります。

退職金制度が無い場合はもらえない

勤務先の企業に退職金制度がない場合、そもそも請求できる退職金がなく支給されません。
厚生労働省の調査では、約25%の企業が退職給付制度がありませんが、企業によっては、死亡弔慰金や功労金という名目で支給している場合もあります。

企業に損害を与えた場合はもらえない可能性がある

退職金制度がある会社でも、懲戒解雇になるなど損害を会社に与えた労働者は、死亡退職金が支給されない可能性があります。

例えば、労働者の死亡後に、社内調査で多額のお金を横領していたことが判明したようなケースです。多くの企業では、懲戒解雇(会社側が一方的に労働者との雇用契約を解約する処分)のときに、退職金の支給を拒否できる規定をもうけています。

ただ、労働者の死亡後に業務上横領などの背信行為が判明した場合は、原則として死亡退職金を支払う必要があると考えられています。
これは、既に死亡した労働者を懲戒解雇できないこと、死亡した時点で遺族には死亡退職金を請求する権利が既に発生している点などからです。

ただ、過去の裁判例などでは、懲戒処分前に退職していた従業員による退職金請求が権利濫用にあたり許されないという判断もあり、労働者の背信行為や損害の程度によっては、会社側は死亡退職金の一部もしくは全額の支払いを拒否できる可能性もあります。

死亡退職金に関する相談先は?

遺族が死亡退職金を請求するとしても、受取人や請求方法、相続財産に含まれるか否かなど確認すべき点も多くありますし、期限内に相続税を納付しなければなりません。
ここでは、死亡退職金の請求や相続税について、相談先となる司法書士や税理士、弁護士について解説します。

司法書士

司法書士は、相続登記を含めて登記手続きのプロです。
司法書士が登記以外にも、相続に関連して行うことができる業務はあります。

  • 遺産整理業務
  • 戸籍の収集など相続関係の調査
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続関係図の作成
  • 自筆証書遺言の検認※ など

※自筆証書遺言の検認とは、遺言の存在や内容を相続人に知らせ、検認の日時点の遺言書の形状や日付、署名、遺言の内容などを明確にして遺言書の偽造、変造を防止する手続きです

相続財産のなかには、死亡退職金のほか土地や建物等の不動産が含まれているケースが多く、2024年4月1日からは相続登記の義務化が始まります。司法書士であれば、相続登記を含めて相談することが可能です。
必要書類の取得費用や登録免許税などの実費を除き、報酬部分は司法書士事務所によって異なり、弁護士と比べると比較的リーズナブルに依頼できる司法書士事務所もあります。

参照:司法書士とは|東京司法書士会

参照:遺言書の検認|裁判所

参照:令和4年分相続税の申告事積の概要|国税庁

参照:相続登記が義務化されます|東京法務局

税理士

税理士は税金の専門家であり、税務相談から確定申告書や相続税申告書など税務書類の作成、確定申告の代理などを依頼できます。相続税の申告、納付するには、死亡退職金を含めた預貯金や土地建物など相続財産全体から税額を算出することが必要です。

税理士であれば、死亡退職金だけでなく相続財産全体のシミュレーションをしてもらえますし、相続に強い税理士であれば節税対策のアドバイスを受けられることもあるでしょう。

弁護士

死亡退職金の請求には、民法をはじめ労働基準法や会社法、各企業の退職金規定など、さまざまな法律や就業規定が関係します。
弁護士は、法律事務に関して制限なく取り扱うことができますので、死亡退職金の支給に関して企業とトラブルや紛争に発展した場合も、専門的なアドバイスや対応が可能です。

また、遺産相続についても、幅広く取扱いできますので、遺言の内容や遺産分割協議等で相続人間で紛争になった場合にも、調停や審判のほかさまざまな法的な請求にも対応できます。相続人間で交流がない、仲がよくないなど、遺産相続でトラブルになりそうな場合は、あらかじめ相談しておくと安心です。

ただし、不動産の名義変更登記や相続税の申告については、弁護士が取り扱うことは少なく、提携する司法書士や税理士などに任せるケースが多くなります。

死亡退職金が特別受益とみなされる可能性もある

死亡退職金は、本来受取人固有の財産であり、亡くなった人の相続財産には含まれません。
ただし、死亡退職金が賃金の後払いとみなされる場合は、遺産(相続財産)の先払いとして、特別受益となる可能性があります。

特別受益とは、複数の相続人がいる場合に、特定の相続人のみが贈与や遺贈などで亡くなった人から受けた利益をいいます(民法903条)。
例えば、相続人の一人が相続発生前に住宅購入資金として1,000万円の資金援助を受けていた場合に、特別受益と判断されることがあります。生前に受けた贈与などが特別受益と認められれば、遺産分割の際に持ち戻しの対象となり、相続財産の分割方法が変わります。

ただし、特別受益は相続人間の公平を図るための制度ですが、特別受益にあたるか否かの判断は難しいケースが多くなります。
死亡退職金については、原則として特別受益にはあたりませんが、例外的に、退職金規定のなかで受取人に関する明文がなく、会社側が個別に判断した者に支給する場合などに特別受益にあたる場合があります。

まとめ

死亡退職金は、会社の退職給付に関する規定に従って支給される受取人固有の財産であり、原則として相続遺産ではなく、遺産分割の対象となりません。
ただし、税法上は、みなし相続財産として相続税の対象となりますので、他の相続財産を含めて相続税の納付期限までに、申告・納付する必要があります。

また、死亡退職金の相場は、企業規模や勤続年数で異なりますが1,000万円〜2,000万円となっています。勤務先の退職給付の規定で受取人や支給される時期など確認し、必要書類を準備のうえ、請求手続きをすすめましょう。

ただ、就業規則に死亡退職金に関する規定がなかったり、遺言などで受取人が指定されているケースもあり、会社もしくは相続人間でトラブルになる可能性もあります。
もし、死亡退職金の請求手続きや相続人同士でもめそうで不安という方は、司法書士や税理士などの専門家に相談しましょう。