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相続する遺産がない場合の手続きは?相続税の申告や相続放棄を解説

相続する遺産がない場合の手続きは?相続税の申告や相続放棄を解説

相続する遺産がない場合、遺産相続をする必要はありません。

しかし、遺産というのは単に現金や預貯金に限らず、不動産や株式、借金なども含まれます。そのため「遺産がない」と思っていても、実際は何かしらの遺産があることも珍しくありません。

大金となり得る株式を持っているなら、放置したままにするのは得策とは言えません。また、不動産を持っているなら放置していると今後固定資産税が相続人に発生しますし、場合によっては不動産の劣化によってトラブルに発展することも考えられます。

そのため、相続する遺産がないと思っている場合でも、被相続人の遺産の内容は正しく把握することが大事です。

また、場合によっては「実際は遺産があったはずが使い込みによってなくなった」というケースも考えられます。このようなケースに該当する場合は「不当利得返還請求」や「不法行為にもとづく損害賠償請求」で裁判が可能です。

これらの裁判は手間や労力がかかるだけでなく、時効によって訴えられなくなってしまう可能性もあるため、スムーズに問題を解決するためにも弁護士に依頼することをおすすめします。

本記事では、このように相続する遺産がないときに覚えておきたい重要なポイントを網羅してまとめています。ぜひ参考にしていただき、遺産相続の際に役立ててください。

相続する遺産がない場合の手続きは基本的に必要ない

相続する遺産がない場合は基本的に手続きをする必要はありません。

しかし、遺産というのは亡くなった人が所持していた現金や預貯金だけでなく、不動産や株式なども含まれます。さらに借金やクレジットカードの未払金などのマイナスの財産も、相続することになっています。

そのため、相続する遺産がないと思っていても、実際はすべての遺産を把握しきれていないだけで遺産がある可能性も少なくありません。

遺産がないと判断したときに想定される以下2つの例で、どのような処理が行われるのか確認しておきましょう。

  • 遺産はないが生前贈与があった場合
  • 遺産における金銭はないが不動産はある場合

それぞれのケースを解説していきます。

遺産はないが生前贈与があった場合

遺産はないが生前贈与があった場合、つまり被相続人が亡くなる前に被相続人から財産の贈与があった場合は、遺産分割協議を行う必要はありません。

遺産がある場合は遺産分割協議をする必要がありますし、さらに生前贈与があった場合だと、相続人同士が公平に遺産を相続できるように「特別受益の持ち戻し」が行われます。「特別受益の持ち戻し」をした場合、生前贈与された分を遺産総額に戻して遺産分割の計算を行います。

たとえば、夫が亡くなり、妻と子1人が相続人で、子が500万円の生前贈与をされ、残った遺産が1500万円だった場合の遺産分割は以下のような形となります。

妻の相続分 子の相続分 備考
特別受益の持ち戻しをしない場合 750万円(1,500万/2) 750万円(1,500万/2) 子は生前贈与と合わせて1,250万円を受け取っている
特別受益の持ち戻しをする場合 1,000万円(1,500万+500万/2) 1,000万円(1,500万+500万/2) 生前贈与分と遺産を合計して計算する

ただし、これらは生前贈与があり、そのうえで被相続人に遺産がある場合の計算方法です。生前贈与された利益分は実際に遺産に戻すのではなく、あくまで計算をするために戻すだけです。生前贈与の利益分が減ることはありません。

そのため、遺産がなく生前贈与があった場合は、生前贈与された利益分は戻らず、遺産も0円で相続に影響しないため、遺産分割協議をする必要はありません。

なお、生前贈与によって被相続人の遺産がなくなり、受け取れるべき遺産がなくなってしまった相続人は、生前贈与を受けた人に対して「遺留分侵害額請求」ができます。

遺産における金銭はないが不動産はある場合

被相続人に現金や預貯金などの遺産がなくても、不動産がある場合も考えられます。不動産も遺産に含まれるため、分割方法を決めるために遺産分割協議をする必要が出てきます。

不動産は現金とは違って、単純に分割できません。そのため、以下のいずれかの方法で遺産分割を行います。

分割方法 内容 主なケース
現物分割 そのままの形で不動産を分割する 土地を分割して相続人がそれぞれの土地を取得する
代償分割 1人が不動産を得て、その代償となる金銭をほかの相続人に支払う 相続人の1人が1,000万円の不動産を得て、もう一人の相続人に500万円の金銭を支払う
換価分割 不動産を売却して得たお金を相続人で分割する 不動産を1,000万円で売り、2人の相続人が500万円ずつ受け取る
共有分割 相続人が共有して不動産を所有する 共同名義で不動産を賃貸に出して利益を相続人で分割する

被相続人の不動産を放置をしたままだと、不動産が劣化したり、敷地内の樹木が隣家にまで伸びたりして、近隣住民に迷惑をかけてしまう可能性があります。場合によっては損害賠償を請求されるような事態にもなり得ます。

また、不動産を相続して所有する場合は、今後固定資産税が発生したり、管理をする必要が出てきたりするため、相続人で入念に相談をして決めましょう。

なお、後述の「相続税が発生するかどうかは「基礎控除」で確認しよう」でも解説しますが、不動産の評価額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告手続きが必要です。たとえ現金や預貯金などの遺産がなくても、不動産だけで相続税が発生する可能性があることは理解しておきましょう。

相続する遺産がないか確認するための方法

亡くなった人に遺産がないように思えても、実際は遺産があったというケースは少なくありません。

不動産を放置すると近隣トラブルが発生する可能性がありますし、借金を放置すると相続人が財産を強制差し押さえされる可能性があるなど、遺産の放置にはさまざまなリスクが発生します。

そのため、以下の方法で相続する遺産がないか確認しましょう。

  • 預貯金:金融機関からの郵便物をチェック・問い合わせを行う
  • 不動産:名寄帳を取り寄せる
  • 株や金融資産:証券会社や金融機関からの書類を確認する
  • 借金:郵便物の確認・信用情報機関へ確認する

それぞれの確認方法を詳しく解説します。

預貯金:金融機関からの郵便物をチェック・問い合わせを行う

預貯金は金融機関からの郵便物や預金通帳をチェックしましょう。使っている金融機関が判明したら、残高証明書の発行を依頼し、預貯金にどれだけの遺産があるのかを調査します。

なお、被相続人の預貯金は、メインで使っている金融機関の口座だけでは、すべてを把握できていないこともあります。たとえば、貸金庫を借りていた場合は、貸金庫に現金が入っている可能性も考えられるでしょう。ほかにもメインで使っている口座以外に、定期預金口座を作っており、遺産の多くを定期預金に入れている可能性もあります。

そのため、金融機関からの郵便物を確認し、普段使っている口座が判明したとしても、別の金融機関を使っている可能性も考慮して、入念に調査をしましょう。

なお、預金通帳からは、記入されているお金の流れから、不動産や証券の有無なども確認できます。預貯金から固定資産税が支払われている場合は不動産があることがわかりますし、配当金があれば株を持っていることなどがわかります。

そのため、口座が確認できた場合は、通帳の記入も行いましょう。

不動産:名寄帳を取り寄せる

被相続人が不動産を所有しているかどうか調べる方法はさまざまありますが、名寄帳を取り寄せるのが一番手っ取り早いでしょう。名寄帳は管轄の市区町村役場にて取得の申請ができます。「管轄の地域+名寄帳」で検索すれば取得の手順を確認できます。

納税通知書でも被相続人が所有している不動産を確認できるものの、非課税の不動産に関しては把握できません。名寄帳は非課税の不動産も記載されているため、漏れなくチェックできます。

ただし、名寄帳は管轄の地域の不動産しか記載されていません。そのため、別の地域にも不動産があると考えられる場合は、その地域の市区町村役場にて名寄帳を取り寄せなければいけません。不動産を持っている場合は、役場納税通知書や権利証などが自宅に保管されている可能性が高いため、併せて確認しながら調査を進めていきましょう。

株や金融資産:証券会社や金融機関からの書類を確認する

株のような現金ではない金融資産は、遺産相続の際に特に調査漏れしやすい遺産と考えられます。

基本的に株式や投資信託などを所有している場合は、年間取引報告書が年に1回郵送で送られます。しかし、被相続人が年間取引報告書を保管していなかったり、電子交付にしていたりで、現物の報告書が見つからない場合もあります。

書類が見つからない場合は、株にかかわる口座の開設先が確認できる「株式会社証券保管振替機構」に問い合わせましょう。どのような資産を保管しているか一切見当がつかない場合は、思い当たる各金融機関にも問い合わせてみてください。

書類がない場合は、株やその他の金融資産は手探りで探すことになるため、非常に手間がかかりますが、高額な遺産が眠っている可能性も否めません。そのため、思いつく限りの金融機関に問い合わせて入念に調査しましょう。

借金:郵便物の確認・信用情報機関へ確認する

被相続人の借金を調査する際は、郵便物を確認しましょう。借金の滞納をすると多くの場合で、自宅に滞納の旨を知らせる郵便物が届くので、そこから大半の未納分は確認できます。

より明確に借金の有無や額を確認したい場合は、信用情報機関へ情報の開示請求をすると良いでしょう。クレジットカードやローンなどの金融機関は、取引の履歴を信用情報機関に共有・登録しています。

そのため、信用情報機関に登録されている内容の開示請求をすることで、被相続人が残した借金の大半を確認できます。

被相続人の遺産に借金しか残っていない場合は、後述する「マイナスの遺産がある場合の手続き」もぜひ参考にしてください。

あったはずの遺産がない!遺産の使い込みが生じるケースがある

これまで亡くなった人に遺産がない場合の手続きについて紹介しましたが、そのほかのケースとして「遺産があったはずなのになくなった」というのも考えられます。

これはいわゆる「遺産の使い込み」というもので、以下のような事例で発生します。

  • 同居していた人が被相続人の預貯金を勝手に引き出した
  • 被相続人の不動産や株式を勝手に売却して資金を得た
  • 被相続人の介護をしていた人がお金の管理を装って横領した
  • 被相続人の遺品整理時に出てきた現金や貴金属を横領した

このようにして「遺産があったはずなのになくなった」という場合は、別で手続きを行う必要が出てきます。

しかし、遺産の使い込みがあった場合はまず最初に証拠を集めなければいけません。また、相続発生前に遺品の使い込みをしたのが親族だった場合は、窃盗罪は適用されず処罰の対象にはならないため、使い込みの返還請求・損害賠償請求をする必要が出てきます。

次の章の「あったはずの遺産がない場合の対処法」でも詳しく解説しますが、返還請求・損害賠償請求は非常に手間や労力がかかりますし、時効によって請求ができなくなる場合も考えられます。そのため、遺産の使い込みがあった場合は弁護士に相談することも検討しましょう。

なお、親族以外、たとえば訪問介護員が被相続人の自宅へ訪問して、遺産を使いこんでいた場合は横領や窃盗の罪が成立します。この場合は警察に相談することで逮捕してもらえる可能性はありますが、弁護士に相談して示談で解決することも可能です。

あったはずの遺産がない場合の対処法

あったはずの遺産がない場合、遺産の使い込みが相続発生前か発生後かで対処の仕方は異なります。

それぞれのケースで、どのように対処をするべきなのか確認しましょう。

遺産の使い込みが相続発生前に発生したケース

遺産の使い込みが相続発生前だった場合は、遺産の使い込みをしたのかどうかの判断や証拠集めは非常に難しいです。

たとえば、親が被相続人で子が同居していた場合、親が子のためにお金を使うことは珍しいことではありません。親が子の生活費を負担していたぐらいでは、子が遺産の使い込みをしていると判断はできないでしょう。

また、子が親のお金を使って大きな買い物をしたとしても、それが親からのプレゼントによって購入したものなのか、そもそも遺産の使い込みと判断できる額なのかなど考慮するべき点は数多くあります。

被相続人との関係性、被相続人や使い込みが疑われる人の経済状況・生活水準などによっても判断は異なってくるため、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談し、遺産の使い込みであると判断できた場合は「不当利得返還請求」もしくは「不法行為に基づく損害賠償請求」が可能です。つまり遺産を使い込んだ人を訴えて裁判をして遺産を返してもらうという手続きをします。

遺産の使い込みが相続発生後に発生したケース

相続が発生した、すなわち被相続人が亡くなった時点で、被相続人の遺産は遺産分割の対象となります。つまり、遺産の使い込みが相続発生後だった場合は、使い込みをした人は遺産を確実に着服しているということになります。

遺産の使い込みが相続発生後であることが判明している場合は言い訳ができないため、話し合いをすれば着服した遺産を返してもらえる可能性もあります。裁判をすると手間がかかるため、可能な限り話し合いによって解決を目指しましょう。

「話し合いに応じてもらえない」「感情的になって話が進まない」という場合は、弁護士に依頼しましょう。たとえ裁判をしない場合でも、弁護士に依頼することで話し合いを円滑に進めることができますし、相手にプレッシャーも与えられます。

話し合いで解決できない場合は「不当利得返還請求」もしくは「不法行為に基づく損害賠償請求」が可能です。

「不当利得返還請求」の時効は5年、または10年

「不当利得返還請求」の時効は「権利を行使できることを知ってから5年」もしくは「権利を行使できるときから10年」です。言い換えるなら「遺産の使い込みを知ってから5年」もしくは「遺産の使い込みをされたときから10年」です。

そのため、遺産の使い込みがあった時期が相続発生前で長い期間が経っている場合は、時効になってしまうかもしれません。

遺産の使い込みが発覚したら早急に証拠を集めて、手続きをする準備を進めましょう。また、話し合いによる解決にこだわりすぎると時効を過ぎてしまう可能性も考えられます。

可能な限り話し合いで解決したいところですが、時効が迫っている場合は裁判の準備を始めましょう。

「不法行為に基づく損害賠償請求」の時効は3年

「不当利得返還請求」ではなく「不法行為に基づく損害賠償請求」として訴えることも可能です。

「不法行為に基づく損害賠償請求」の時効は「遺産の使い込みを知ってから3年」もしくは「遺産の使い込みをされたときから20年」です。遺産の使い込みをされた時期が10年以上経過している場合は「不当利得返還請求」ができないため「不法行為に基づく損害賠償請求」をしましょう。

ただし、遺産の使い込みを知ってから3年でも時効となってしまうので、使い込みが発覚したらすぐに行動することが肝心です。

相続税が発生するかどうかは「基礎控除」で確認しよう

たとえ相続の遺産がないと思っていても、不動産や株などによって遺産の相続をする可能性は十分考えられます。

遺産の相続をする際に特に覚えておきたいのが「相続税」です。

相続税は貧富の差をなくすために作られたものです。申告しなかった場合は延滞税や加算税などのペナルティが発生する可能性があるため、ルールはしっかりと確認しておきましょう。

遺産が基礎控除の額より少ないなら相続税の申告は不要

遺産が基礎控除の額より少ないなら相続税の申告は不要です。反対に基礎控除の額より多いなら、申告が必要になります。

基礎控除額とは、税金の支払いが免除になる額のことです。遺産の総額から控除額を引いて、残った額に対して税が発生するという仕組みになっています。

そのため、遺産を相続する際は、遺産の額を明確にすることが大事です。

基礎控除額は3000万円+600万円×法定相続人の数で算出

相続税の基礎控除額は以下のように計算します。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

つまり、法定相続人が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円です。

なお、法定相続人の数は、相続を放棄した人がいたとしても変わりません。たとえば、被相続人の配偶者と子2人が法定相続人だとして、子2人が相続を放棄したとしても、基礎控除額は3人分の4,800万円のままです。

基礎控除額を算出する際の注意点

基礎控除額を算出する際は、以下の内容も確認しておきましょう。

  • 代襲相続がある場合は実子と同様に法定相続人にカウントされる
  • 養子も実子と同様に法定相続人にカウントされる

それぞれ解説していきます。

代襲相続がある場合は実子と同様に法定相続人にカウントされる

被相続人の子が被相続人より先に亡くなっている場合は、被相続人の孫が相続人となります。このように本来相続人になるはずだった人の代わりに、相続人になることを代襲相続といいます。

代襲相続があった場合でも、同様に法定相続人にカウントされるので間違えないようにしましょう。

養子も実子と同様に法定相続人にカウントされる

被相続人の養子も、実子と同じように法定相続人にカウントされます。そのため、被相続人が亡くなり、配偶者と養子1人がいる場合は、2人が法定相続人となるため、基礎控除額は4,200万円となります。

ただし、法定相続人に養子がいる場合、法定相続人になれる養子の人数は以下のように制限されます。

  • 法定相続人に実子がいる場合→養子1人まで
  • 法定相続人に実子がいない場合→養子2人まで

つまり、配偶者と養子3人以上がいた場合でも、法定相続人となるのは妻と養子2人で合計3人が限度となります。

相続税がかからない場合でも申告が必要になるケース

前述したように、遺産が除額内であれば相続税が発生することはありません。しかし、相続税がかからない場合でも、申告が必要になるケースは一部あります。

  • 配偶者控除を利用した時
  • 小規模宅地等の特例を利用した時
  • 広大地評価を利用した時

つまり、ほかの控除や制度によって相続税が0円になる場合でも、申告をしなければ認められないということです。

それぞれのケースを確認しておきましょう。

配偶者控除を利用した時

配偶者控除とは、配偶者が遺産を相続をする際に一定額控除されるというものです。被相続人の配偶者で遺産を相続する際は、1億6,000万円まで控除されるという内容です。

配偶者が基礎控除を超えて相続する場合に利用することになります。

しかし「配偶者だから1億6,000万円まで非課税だ」と勝手に判断することはできず、申告が必要になります。申告不要なのは基礎控除までの額なので間違えないようにしましょう。

小規模宅地等の特例を利用した時

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした場合に相続した不動産の評価額を50~80%まで軽減できる制度です。

そのため、遺産が5,000万円の不動産のみで、基礎控除額が4,200万円だったとしても不動産の評価額を減額することで、基礎控除額内に収めて相続税を発生させないことも可能です。

しかし、小規模宅地等の特例を利用するには申告をしなければ適用されません。自己判断で「小規模宅地等の特例に該当するから評価額が低くなって基礎控除内になる」と勝手に決めることはできません。

広大地評価を利用した時

広大地評価とは、相続した土地の面積が広大で条件を満たす場合に土地の評価額が最大65%まで減額される制度です。

小規模宅地等の特例と同じように、本来基礎控除額内の評価額ではなかったとしても、広大地評価によって基礎控除額内に収めることは可能です。

しかし、こちらも申告をすることで適用される制度なので、ご自身の判断で勝手に「土地が広いから相続税は0円になる」と決めつけてはいけません。

特に広大地評価の判断は非常に難しいため被相続人が大きな土地を持っているから相続税を節約したい」と考えているなら弁護士に相談することをおすすめします。

相続税の申告期限

相続税には申告期限があります。前述したように、遺産が基礎控除額内なら申告をする必要はありませんが、基礎控除額を超えているなら期限内に申告しなければいけません。

申告が遅れるほど延滞税や加算税によって支払うべき税金が大きくなってしまうため、期限はしっかりと確認しておきましょう。

被相続人の死亡を知った日から10カ月以内が期限

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内となっています。たとえば、1月1日に被相続人が亡くなったことを知った場合は11月1日が期限となります。

基本的には「亡くなったことを知った日=亡くなった日」と考えて問題ありません。ただし、孤独死で亡くなった日がわからない場合は、警察などから連絡を受けて判明したときが「亡くなったことを知った日」となります。

仕事が忙しくて遺品整理が進まない、遺品整理が億劫といった理由で、気が付いたら10カ月を過ぎてしまうことは考えられるため、申告期限は常に意識して遅れないようにしましょう。

申告期限が過ぎても3年以内であれば特例は適用される

10カ月の申告期限を過ぎたとしても「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出することで、期限を3年まで伸ばすことが可能です。

ただし、この書類は遺産分割が間に合わなかったときのための書類です。つまり、遺産相続で話し合いがまとまらず、やむを得ず10カ月を超えてしまう場合に提出するものです。

そのため、提出をする際は「分割されていない理由」「分割の見込みの詳細」を説明する必要があります。理由もなく申告期限を延ばせるというわけではありません。

3年を過ぎた場合でも特例を受けられるケースもある

また、3年を過ぎた場合でも、特例によって期限を延長できることがあります。もちろん「やむを得ない」と判断されるような理由は必要になります。

たとえば、遺産分割の話がもつれて裁判をしている、もしくは裁判の申し立てをする際中だった場合は、やむを得ないと判断されます。

ほかにも、相続人の一人が重度の精神病の治療中で話し合いができない状態だったり、相続人の一人が行方不明だったりする場合も特例で期限を延長できるでしょう。

理由がない限り原則としては10カ月で提出しなければいけないということは念頭に置いておきましょう。

マイナスの遺産がある場合の手続き

相続する際に一切の遺産がないなら手続きは不要ですが、マイナスの遺産がある場合はさまざまな対処をする必要も出てきます。

手続きをせずにマイナスの遺産を相続することもできますし、放棄することも可能です。

ここからはマイナスの遺産がある場合に取るべき対応について解説していきます。

手続きをしない場合│法定相続分の割合でマイナスの遺産も受け継ぐ

何も手続きをしない場合は、法定相続分の割合でマイナスの遺産も受け継ぐことになります。つまり、プラスの遺産と同じように相続人に借金が分割されるということです。

マイナスの遺産よりもプラスの遺産の方が大きい場合は、マイナス分はプラス分によってなくなり、結果として余ったプラス分で、通常の遺産相続と同じように遺産が分割されることになります。

しかし、プラスの遺産は一切なく、マイナスの遺産だけを受け継ぐ場合も少なくありません。そのような場合では、相続人が手分けして借金の負担をするということになります。

借金などのマイナスの遺産は、被相続人が亡くなっても消滅することはなく、相続人の負担となるということは理解しておきましょう。

限定承認│相続して得たプラスの遺産の限度内で債務を相続する

限定承認とは、相続によって得られるプラスの遺産額を限度として、マイナスの遺産も相続するというものです。

たとえば、プラスの遺産が500万円、マイナスの遺産が600万円だったとしても、相続するマイナスの遺産は500万円まで、つまりプラスの財産で相殺できる額になります。残りの100万円は支払いをしなくても責任を問われることはありません。

被相続人の遺産の内容がわからない場合に限定承認をすることで、マイナスの遺産が想定より多かったときに備えられます。

ただし、相続人全員で手続きをする必要があり、さらに限定承認の手続きが終わるまでは財産に手を付けることはできません。そのため、すでに遺産に手を付けてしまった場合は、限定承認はできません。

遺産分割をする際は、最初に被相続人にマイナスの遺産がないか相続人全員で考え、マイナスの遺産の負担が不安な場合は限定承認をしましょう。

相続の開始があったことを知った翌日、つまり被相続人が亡くなったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述します申述する家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄している裁判所です。被相続人が離れたところに住んでいた場合は、それだけ手間がかかることを理解しておきましょう。

相続放棄│全ての財産の引き継ぎを放棄する

被相続人の財産に借金しか残っていない場合は「相続放棄」をするというのも一つの手です。相続放棄をすれば、相続権を失うためプラスの財産と一緒に、マイナスの財産も相続する必要はなくなります。借金だけしか残っていないなら相続放棄をしたほうが、金銭的な負担は抑えられるでしょう。

相続放棄をしたい場合は、限定承認と同じように相続の開始があったことを知った翌日から3カ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所に申述します。

なお、相続放棄をしても、その後は次の順位の相続人が相続権を得ることになります。つまり、親戚の誰かに被相続人の借金を押し付けるという形になってしまいます。

借金だけを押し付ける形で相続放棄すると、親戚間でトラブルになってしまう可能性が高いでしょう。そのため、相続放棄は次の順位の相続人に相談することをおすすめします。

まとめ

相続する遺産がない場合は遺産相続は必要ありません。しかし、遺産というのは不動産や借金なども含まれるため「遺産がないと思ったら実際はあった」というケースも珍しくありません。

遺産がないと思い込んで、不動産や借金を放置してしまうとさまざまなリスクが発生します。そのため、相続する遺産がないかは入念にチェックしましょう。

マイナスの遺産がある場合は、限定承認や相続放棄をすることで、借金を背負うリスクから逃れられます。なお、遺産の使い込みがあったことで、相続人のプラスの遺産がなくなってマイナスの遺産が発生しているという可能性も考えられます。

このように「相続する遺産がない」というのは、何らかのトラブルが発生している可能性も考えられるため、必要に応じて弁護士への依頼も検討してください。