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2024年11月現在

二世帯住宅で相続税を節税できる?小規模宅地等の特例の活用を詳しく解説

二世帯住宅で相続税を節税できる?小規模宅地等の特例の活用を詳しく解説

「二世帯住宅の相続税対策はどのようにすればいい?」「相続税対策として利用できる制度が知りたい」これから二世帯住宅の建築を検討している人や現在すでに居住している人の中には、相続税対策について気になるという人もいるのではないでしょうか。

二世帯住宅を相続する際にかかる相続税も、一般的な土地や建物を相続するときと計算方法は変わりません。

ただし、土地は資産価値が高く相続税が高額になりやすい傾向にあるため、二世帯住宅の相続税対策では「いかに節税効果のある制度を活用するか」が重要だといえるでしょう。

おすすめなのは、「小規模宅地等の特例」を活用することです。小規模宅地等の特例とは、一定の要件にあてはまる土地を相続した場合に、土地の評価額を最大80%減額できる特例のことです。

相続税自体を減額できる制度ではありませんが、相続税の計算に使用する「評価額」が下がることで、大きな節税効果を得られる可能性があります。

この記事では、二世帯住宅の節税方法について、「小規模宅地等の特例」を中心に解説します。相続税の節税対策として有効なほかの制度についても解説しているため、相続税の節税について気になる人はぜひ最後までご覧ください。

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二世帯住宅の相続税対策の前に把握しておくこと

二世帯住宅の相続税対策を行う前に、以下の点について把握しておく必要があります。

  • 二世帯住宅の相続は通常の土地・建物と変わらない
  • 相続財産のうち土地は相続税が高くなりやすい
  • 二世帯住宅は「小規模宅地等の特例」で評価額が80%減税できる

それぞれ解説します。

二世帯住宅の相続は通常の土地・建物と変わらない

相続する不動産が二世帯住宅であっても、通常の土地や家屋と同じように相続が行われます。

相続税についても同様です。相続税は、二世帯住宅やそのほかの不動産、預貯金などの遺産総額から「基礎控除額」を差し引いて求めます。

基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。

基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の人数

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の3人だった場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)です。遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。

ただし遺産総額が4,800万円を超えるときは、超えた部分が相続税の対象になります。

仮に、上記のケースで相続財産の総額が1億円だったとします。この場合、相続税の対象である5,200万円(1億円ー4,800万円)を各相続人が自らの相続分に応じた金額を支払わなければなりません。

相続財産のうち土地は相続税が高くなりやすい

相続財産のうち、土地は相続税が高くなりやすい点に注意が必要です。相続財産には、土地や家屋のほかにも現金や預貯金、有価証券、動産などがありますが、その中でも土地は資産価値がとくに高く、相続税が高額になりやすい傾向にあります。

土地の価値は「評価額」によって決まるため、評価額を抑えられれば相続税の負担を軽減できます。家屋の敷地である「宅地」の評価額を計算する方法は以下のとおりです。

評価方法 計算式 使用する地域
路線価方式 路線価×補正率×面積 「路線価」が設定されている地域
倍率方式 固定資産税評価額×評価倍率 「路線価」が設定されていない地域

「路線価」とは、道路に面した宅地の1㎡あたりの評価額のことです。地域によって設定されているところと設定されていないところがあり、設定されている場合は路線価をもとに評価額を計算します。

路線価が設定されていなければ、「倍率方式」という方法を用いて計算します。倍率方式とは、各市区町村が算出した「固定資産税評価額」をもとに計算する方法です。

路線価や補正率、評価倍率は国税庁のWEBサイトで確認できます。評価額を計算する際に確認するとよいでしょう。

なお、評価額を抑えられる方法には、「小規模宅地等の特例」の利用が挙げられます。小規模宅地等の特例については、このあと詳しく解説します。

参照:財産評価基準書路線価図・評価倍率表|国税庁
参照:土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)

二世帯住宅は「小規模宅地等の特例」で評価額が80%減額できる

二世帯住宅の場合、「小規模宅地等の特例」を利用することで土地の評価額が80%減額できます。

小規模宅地等の特例とは、一定の要件にあてはまる土地を相続したときに土地の評価額を減額できる制度です。対象が二世帯住宅などの居宅であれば、敷地面積のうち330㎡までの部分に対して特例が適用されます。

ただし、330㎡を超えた部分については減額されません。通常どおり、路線価を用いる「路線価方式」や固定資産税評価額を用いる「倍率方式」で計算します。

注意点は、80%減額されるのは「土地の評価額」であり、相続税ではない点です。評価額が下がれば結果的に課税される相続税は少なくなりますが、「相続税が80%減額されるわけではない」ことを覚えておきましょう。

とはいえ、ケースによっては相続税が非課税になることもある節税効果の高い特例です。要件があるなら、ぜひ利用をおすすめします。要件については後述します。

【シミュレーション】二世帯住宅で「小規模宅地等の特例」を利用できる場合とできない場合の比較

二世帯住宅で「小規模宅地等の特例」を利用できる場合とできない場合を比較してみましょう。条件は以下のとおりです。

  • 相続人:被相続人の子ども(1人)
  • 相続人が被相続人の家で同居
  • 敷地面積:300㎡
  • 土地の評価額:8,000万円
  • 土地以外の相続財産:なし
【特例が利用できる場合】
8,000万円(評価額)×20%(特例による減額割合80%)=1,600万円
1,600万円ー3,600万円(相続人1人のときの基礎控除額)=0円
課税価格=0円
相続税額:0円
【特例が利用できない場合】
8,000万円(評価額)ー3,600万円(相続人1人のときの基礎控除額)=4,400万円
4,400万円(課税価格)×30%(税率)ー700万円(控除額)=620万円
相続税額:620万円

このように、特例が利用できる場合とできない場合とでは大きな差が出る可能性があります。小規模宅地等の特例には、優れた節税効果があるといえるでしょう。

上記のケースでは土地以外の相続財産がないという設定でしたが、実際は現金や預貯金、動産といったほかの財産を含めて計算する必要があります。また、被相続人の家族構成によって相続人の人数も異なり、計算が複雑になることもあります。

以下は相続税の税率と控除額の速算表です。

▼相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超え3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超え5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超え1億円以下 30% 700万円
1億円超え2億円以下 40% 1,700万円

参照:No.4155 相続税の税率|国税庁

小規模宅地等の特例が適用となる間取りや要件

二世帯住宅を相続したら、どのようなケースでも特例が適用されるというわけではありません。ここでは、特例が適用となる間取りや要件について解説します。

  • 完全分離型・完全共有型・部分共有型のいずれのタイプも適用可能
  • 居住・保有要件は「誰が宅地・二世帯住宅を相続するか」によって異なる

特例が適用となる二世帯住宅の間取りについて

特例が適用できる二世帯住宅の間取りは以下のとおりです。

  • 完全分離型:玄関が2つあり、それぞれにキッチンやトイレなどの設備がある
  • 完全共有型:玄関が1つしかなく、二世帯で建物全体を共有している
  • 部分共有型:玄関が1つしかなく、キッチンなど一部の設備を二世帯で共有している

二世帯住宅なら、上記のうちいずれのタイプでも特例が適用できます。ただし、以下のケースでは適用されません。

  • 同じ敷地内にある別の建物(母家と離れなど)
  • 区分所有登記を行った建物

同じ敷地内にあっても、それぞれが独立した建物である場合は「同居している」とはいえず特例は適用されません。特例の適用を受けたいなら、2棟の建物を渡り廊下でつなぎ、1棟の建物としてリフォームするなどの方法を検討する必要があるでしょう。

また、「区分所有登記」を行った建物も特例の適用外です。区分所有登記とは、1棟の建物を共有というかたちではなく、それぞれの居住スペースごとに分けて登記する方法です。特例の適用を検討しているなら、区分所有登記は行わないほうがよいでしょう。

ただし区分所有登記を行った場合でも、「建物合併登記」を行いひとつの建物として登記すれば特例の対象になります。区分所有登記については後述します。

居住要件や保有要件について

「誰が宅地・二世帯住宅を相続するか」によってクリアしなければならない居住・所有要件が異なります。以下のとおりです。

▼被相続人の宅地・住宅

宅地の相続人 クリアすべき要件
配偶者 なし
同居の親族 ・相続開始直前から相続税の申告期限までその住宅に住む
・相続開始から申告期限まで宅地・住宅を所有する
同居していない親族 ・被相続人が独身で一人暮らし
・相続開始前3年以内に自分や自分の配偶者、3親等内の親族などの持ち家に居住したことがない
・申告期限まで宅地・住宅を所有する

▼被相続人と生計をともにしていた親族の宅地・住宅

宅地の相続人 クリアすべき要件
配偶者 なし
被相続人と生計をともにする親族 ・相続開始直前から申告期限までその住宅に住む
・相続開始から申告期限まで宅地・住宅を所有する

相続したのが配偶者であれば、無条件に特例が適用されます。被相続人が亡くなる前から同居していた子どもなら、被相続人が亡くなってから申告期限までその二世帯住宅に住み続け、相続した宅地・二世帯住宅を所有し続ければ適用されます。

なお、「相続税の申告期限」は、被相続人が亡くなった翌日から10カ月以内です。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
参照:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁

「小規模宅地等の特例」を利用できる土地の種類

特例を利用できる土地には種類があります。また、土地の種類によって評価額を減額できる面積と割合が異なります。

土地の種類 減額できる面積 減額できる割合
特定住居用地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

それぞれ解説します。

特定居住用宅地等

「特定居住用宅地」とは、相続が開始される直前まで被相続人や被相続人と生計をともにしていた親族が居住していた宅地のことです。一戸建てだけでなく、分譲マンションなどの敷地も含まれます。

適用要件は、「居住要件や保有要件について」で解説したとおりです。たとえば被相続人が配偶者と暮らしていた自宅の敷地を、配偶者が相続したケースなどが該当します。

特例を利用すれば、敷地面積のうち330㎡までの部分について80%の減額が受けられます。

なお、「相続が開始される直前まで居住していた」といっても、以下の要件を満たしているなら、被相続人が介護施設に入居していたとしても適用可能です。

  • 要介護認定・要支援認定を受け、都道府県への届出のある老人ホームに入居した
  • 障害者支援区分の認定を受け、障害者支援施設に入居した

ただし被相続人の施設入居後に相続人が同居を始めた場合、特例は適用されません。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)「特定居住用宅地等」|国税庁

特定事業用宅地等

「特定事業用宅地」とは、被相続人や被相続人と生計をともにしていた親族が個人事業を行っていた宅地のことです。特例を適用するためには、対象の土地を取得した相続人が以下の要件をクリアしなければなりません。

▼被相続人が個人事業を行っていた宅地

事業承継要件 対象の土地上で行われていた被相続人の個人事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、さらに申告期限まで営む
保有継続要件 対象の土地を申告期限まで所有する

▼被相続人と生計をともにしていた親族が個人事業を行っていた宅地

事業継続要件 相続開始直前から申告期限まで、対象の土地上で個人事業を営む
保有継続要件 対象の土地を申告期限まで所有する

特例を利用すれば、敷地面積のうち400㎡までの部分について80%の減額が受けられます。ただし、土地を以下の目的で使用していた場合は該当しません。

  • 不動産貸付業(アパート・マンションなど)
  • 駐車場業
  • 自転車駐輪場業および準事業

上記のような貸付業は、後述する「貸付事業用宅地」に該当します。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)「特定事業用宅地等」|国税庁

特定同族会社事業用宅地等

「特定同族会社事業用宅地」とは、被相続人が50%超えの持株を所有する同族会社の事業に使用していた宅地のことです。特例を適用するためには、対象の土地を取得した相続人が以下の要件をクリアしなければなりません。

法人役員要件 相続税の申告期限時点でその法人の役員である
保有継続要件 対象の土地を申告期限まで所有する
事業承継要件 対象の土地を申告期限まで事業用として使用する

特例を利用すれば、敷地面積のうち400㎡までの部分について、80%の減額が受けられます。
なお、同族会社が行う事業でも、土地が貸付事業に使用されていた場合は後述する「貸付事業用宅地等」に該当します。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)「特定同族会社事業用宅地等」|国税庁

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地とは、貸付事業のために使用していた土地のことです。特例を適用するためには、対象の土地を取得した相続人が以下の要件をクリアしなければなりません。

▼被相続人の貸付事業に使用されていた宅地など

事業承継要件 対象の土地上で行われていた被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに承継し、さらに申告期限まで営む
保有継続要件 対象の土地を申告期限まで保有する

▼被相続人と生計をともにしていた親族の貸付事業に使用されていた宅地など

事業継続要件 相続開始直前から申告期限まで、対象の土地上で貸付事業を営む
保有継続要件 対象の土地を申告期限まで所有する

特例を利用すれば、敷地面積のうち200㎡までの部分について50%の減額が受けられます。

なお、「貸付事業」とは、以下のようなことをいいます。

  • 不動産貸付業(アパート・マンションなど)
  • 駐車場業
  • 自転車駐車場業および準事業

ただし上記に該当する場合でも、相続開始前3年以内に貸付された土地は含まれません。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)「貸付事業用宅地等」|国税庁

「小規模宅地等の特例」を利用する際の注意点

小規模宅地等の特例を利用する場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 相続税が非課税でも相続税申告書の提出が必要
  • 特例の対象物件は、相続税の申告期限まで保有していないと特例が受けられないことがある
  • 二世帯住宅でそれぞれの居住スペースを「区分所有登記」すると特例が利用できなくなる

それぞれ解説します。

相続税申告書の提出が必須となる

小規模宅地等の特例を利用する場合、相続税申告書の提出が必須です。

通常、相続税は遺産総額が基礎控除額以下であれば申告も納税も必要ありません。しかし特例の適用を受けるなら、特例を利用することで遺産総額が基礎控除額未満になったとしても申告する必要があります。

たとえば、以下のケースを例に考えてみましょう。

遺産総額が5,000万円(土地4,000万円+預貯金1,000万円)
基礎控除額が4,200万円(3,000万円+600万円×相続人2人)

上記のケースでは、遺産総額が基礎控除額を上回っているため相続税の申告が必要です。

小規模宅地等の特例を適用した場合、土地の評価額が80%減額され、4,000万円から800万円に下がります。預貯金の1,000万円を足すと遺産総額は1,800万円になるため、相続税は非課税です。

しかしここで「申告が不要になる」と勘違いしないように注意しましょう。特例を利用する際は、適用後の遺産総額にかかわらず相続税申告書を提出しなければなりません。

対象となる物件は相続税の申告期限まで保有する

特例の対象物件は、相続税の申告期限まで保有する必要があります。申告期限までに売却や贈与などで対象の土地を手放すと、特例が適用されないためです。

また、申告してから申告期限までの間に対象の土地を処分した場合、「訂正申告書」を提出しなければなりません。

ただし、「特定居住用宅地」を配偶者が相続したケースは別です。なぜなら配偶者には、特例の対象物件を申告期限まで保有しなければならない「保有継続要件」がないためです。

たとえば、配偶者が被相続人とともに居住していた自宅とその敷地を相続したあと、相続税の申告期限を待たずに自宅を土地ごと売却したとしても、小規模宅地等の特例は適用できます。

とはいえ、配偶者であっても特定居住用宅地以外の土地については保有継続要件があります。申告期限内に手放しても問題ないのは「配偶者が特定居住用宅地を相続した場合のみ」である点に注意しましょう。

区分所有登記をした場合は適用されない

二世帯住宅を「区分所有登記」した場合、特例は適用されません。

たとえば1階に親世帯、2階に子世帯が居住している二世帯住宅で、内部でそれぞれの居住スペースを行き来できない構造になっていたとしても、同居しているとみなされるため小規模宅地等の特例は適用できます。

しかし、それぞれの居住スペースを「区分所有登記」してしまうと、同居しているとみなされなくなり特例が適用できなくなるのです。

区分所有登記とは、1棟の建物の中に存在する構造上・利用上独立している部分ごとに行う登記のことをいいます。分譲マンションやビルなどがよい例です。二世帯住宅の相続時に特例を利用したいなら、区分所有登記ではなく1棟の建物を親子共有で登記する方法を検討する必要があるでしょう。

ただし区分所有登記を行った場合でも、区分所有登記を解消することで特例を利用できるようになります。

ここからは、区分所有登記を解消する方法「建物合併登記」について解説します。

区分所有登記をした二世帯住宅を合併登記する条件

区分所有登記を行った二世帯住宅でも、「建物合併登記」を申請することで小規模宅地等の特例を適用できるようになります。

建物合併登記とは、別々に存在する登記記録をひとつにまとめる登記のことです。登記を行うには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 所有者が同一である
  • 抵当権の内容が同一である

それぞれ解説します。

所有者が同一である

建物合併登記を行うには、親世帯部分・子世帯部分それぞれの所有者が同一でなければなりません。「所有者が同一」といっても、単に氏名が同じであればよいというわけではなく、以下の情報すべてが一致する必要があります。

  • 氏名
  • 住所
  • 持分

たとえば、二世帯住宅の登記が以下のようになっていれば合併登記は可能です。

▼親世帯部分・子世帯部分それぞれの登記状況

氏名 父・息子
住所 父・息子の現住所
持分 父:2分の1
息子:2分の1

しかし、片方の登記状況が以下のようになっていると「所有者が同一」とはいえず、そのままでは合併登記ができません。

氏名 父・息子
住所 父・息子の現住所
持分 父:3分の2
息子:3分の1

上記のケースでは、氏名・住所は一致していますが持分が異なっています。そのため所有権移転登記を行い、どちらかの持分に合わせてからでなければ合併登記はできません。

そもそも所有者が異なる場合や、住所に相違があるときも同様です。所有者が異なる場合は両方の所有者を同一にし、住所が異なっているときは「住所変更登記」を行います。

なお、両方の住所が一致しているケースでも、現住所より前の古い住所になっているときは現住所への住所変更登記が必要です。

抵当権の内容が同一である

建物に「抵当権」が設定されている場合、その内容が同一であることも建物合併登記の条件です。抵当権とは、借入をして不動産を購入する際に、金融機関が購入する不動産を担保にとる権利です。

抵当権の内容には、以下の項目があります。

  • 登記の目的
  • 受付年月日
  • 受付番号
  • 登記原因とのその日付

親世帯部分・子世帯部分ともに同じ内容の抵当権が設定されているなら問題ありませんが、片方だけに設定されている場合やそれぞれ異なる内容の抵当権が設定されているときは合併登記を行えません。

たとえば1階部分を父が現金で購入し、2階部分は子どもが住宅ローンで購入したため、2階部分だけに抵当権が設定されているといったケースでは合併登記ができません。この場合、子どもの住宅ローンを一括返済して抵当権を抹消するのが理想的な方法です。

なお、所有者の登記上の住所が現住所より前の古い住所になっているときは、現住所への住所変更登記が必要です。

相続税の節税対策として有効なほかの制度

「小規模宅地等の特例」のほかにも、相続税の節税対策として有効な制度がいくつかあります。ここでは、相続税の節税対策として有効な制度を紹介します。

  • 年間110万円までであれば非課税で贈与を受けられる「暦年贈与」
  • 贈与者の子どもや孫が最大1,000万円まで非課税で贈与を受けられる「住宅取得資金等の贈与」
  • 婚姻期間20年以上の夫婦であれば2,000万円まで非課税で贈与を受けられる「贈与税の配偶者控除」
  • 一時的に贈与税が2,500万円まで非課税になる「相続時精算課税制度」

暦年贈与:年間110万円まで非課税

年間110万円まで非課税で贈与できる「暦年贈与」も、相続税の節税対策として有効な制度です。贈与額が年間110万円以内であれば申告も不要です。

110万円を超えると超えた部分について贈与税がかかるため注意が必要ですが、110万円ずつ何年にもわたって贈与をすれば、たとえば1,000万円や2,000万円といった大きな金額でも非課税で贈与できます。

なお、贈与できる財産に制限はありません。不動産や動産といった、金銭以外の財産でも贈与の対象にできます。

ただし以下の理由から、不動産を毎年110万円ずつ贈与していくことはあまり現実的ではありません。

  • 贈与を行うたびに「所有権移転登記」を法務局に申請する必要がある
  • 登記の際に毎回登録免許税がかかる
  • 不動産取得税や、司法書士に登記を依頼した場合は司法書士への報酬も発生する

また、暦年贈与を行うなら、「定期贈与」や「名義預金」にみなされないよう注意しなければなりません。定期贈与とは、あらかじめ贈与額の総額が決まっている贈与のことです。

たとえば、「1,000万円を10年にわたって毎年100万円ずつ贈与する」というような贈与契約を結んだケースなどが該当します。この場合、たしかに年間の贈与額は110万円以内ですが、契約金額は1,000万円であるため、その1,000万円に対して贈与税がかかります。

定期贈与とみなされないためには、以下のような工夫が必要です。

  • 毎年贈与のたびに「贈与契約書」を交わす
  • 毎年贈与額や日にちを変える

そして名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる預金のことです。名義預金とみなされると、贈与ではなく相続財産に該当します。

たとえば子どもや孫の口座に毎年110万円を振り込み、そのことを子どもや孫が知らなかったり自分で管理していなかったりした場合、贈与のつもりでも名義預金とみなされる可能性があるため注意しましょう。

名義預金とみなされないためには、以下のような工夫が必要です。

  • 毎年贈与のたびに「贈与契約書」を交わす
  • 贈与を受けた人が自分で財産を管理する

なお、暦年贈与の非課税額は、このあと紹介する「住宅取得資金等の贈与」や「贈与税の配偶者控除」と併用することで増額できます。

参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

住宅取得資金等の贈与:最大1,000万円まで非課税

最大1,000万円まで非課税で贈与を受けられる「住宅取得資金等の贈与」を利用するのもよいでしょう。住宅取得資金等の贈与とは、住宅購入にかかるお金を贈与で受けた場合に、一定の要件を満たすことで贈与税が非課税になる制度です。

非課税になる金額については、住宅が「省エネ等住宅」に該当するかどうかによって異なります。

住宅の種類 非課税額
省エネ等住宅 1,000万円以内
それ以外 500万円以内

「省エネ等住宅」とは、以下のうちいずれかに該当する住宅のことをいいます。

  • 断熱等性能等級4以上
  • 一次エネルギー消費量等級4以上
  • 耐震等級2以上
  • 免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級3以上

「一定の要件」には、以下のように贈与を受ける人(受贈者)と住宅に関する要件があり、それぞれクリアする必要があります。

▼受贈者の要件

  • 贈与者の子どもや孫
  • 贈与された年の1月1日時点で18歳以上
  • 合計所得金額が2,000万円以下(床面積が40〜49㎡なら1,000万円以下)
  • 平成21年〜令和3年分までの贈与税の申告時に制度の適用を受けていない
  • 住宅を配偶者や親族などから取得していない
  • 贈与された年の翌年3月15日まで、または遅くとも翌年12月31日までにその住宅に居住する

▼住宅に関する要件

  • 住宅が日本国内に存在する
  • 床面積が40〜240㎡
  • 床面積の2分の1以上を受贈者の居住スペースとして利用している
  • 未使用の住宅・昭和57年1月1日以降に建築された使用済の住宅・使用済で耐震基準に適合することが証明できる住宅のいずれか

制度を利用する場合、贈与税が非課税でも申告が必要です。贈与の翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告を行いましょう。

なお、前述した「暦年贈与」や後述する「相続時精算課税制度」との併用が可能です。

参照:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

贈与税の配偶者控除:2,000万円まで非課税

「贈与税の配偶者控除」を利用すると2,000万円まで非課税で贈与できます。贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間20年以上の夫婦に認められた、贈与税を非課税にできる制度です。「暦年贈与」と併用すると、最大2,110万円まで非課税で贈与を受けられます。

制度を利用するための要件は以下のとおりです。

  • 婚姻期間20年が過ぎたあとに贈与を受けた
  • 配偶者が居住するための土地・建物の購入資金である
  • 贈与の翌年3月15日までに居住しその後も居住し続ける
  • 住宅が日本国内に存在する
  • 同一の配偶者からの贈与には一度しか利用できない

制度を利用する場合、贈与税が非課税でも申告が必要です。贈与の翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告を行いましょう。

また、贈与税が非課税になっても、以下の税金がかかる点に注意が必要です。

課税される税金 課税のタイミング 税率
不動産取得税 不動産購入時 固定資産税評価額×3%
登録免許税 不動産登記申請時 固定資産税評価額×2%

なお、前述した「暦年贈与」や「住宅取得資金等の贈与」との併用が可能です。

参照:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

相続時精算課税制度:一時的に2,500万円までが非課税

「相続時精算課税制度」を利用することで一時的に2,500万円まで非課税で贈与できます。相続時精算課税制度とは、生前贈与を受けた時点では贈与税がかからず、贈与者が亡くなり相続が発生したときに一括して税金を精算する制度です。

相続発生時には、生前贈与で受けた財産と相続した財産の合計が相続税の対象になります。あくまでも「相続が発生するまでの間贈与税がかからない制度」であり、遺産総額によっては相続税がかかる点に注意しましょう。

しかし、うまく活用すれば高い節税効果を期待できるのもたしかです。以下のとおり、贈与税と相続税とでは非課税枠に大きな差があるためです。

税金の種類 非課税枠
贈与税 年間110万円以内
相続税 3,000万円+600万円×相続人の人数

たとえば、3,000万円の財産を親から相続した場合と贈与した場合にかかる税金を比べてみましょう。

【相続した場合】
基礎控除額(3,600万円)より相続した財産額のほうが少ないため非課税
※相続人1人で計算しています。
【贈与した場合】
3,000万円(贈与額)ー110万円(非課税枠)=2,890万円
2,890万円×45%(特例税率)=1,300万5,000円
1,300万5,000円ー265万円(控除額)=1,035万5,000円
納税額=1,035万5,000円

このように、大きな差が出ました。要件をクリアできるなら、検討してみるのもよいでしょう。

注意点は、「相続時精算課税制度選択届出書」を管轄の税務署に提出すると、贈与者が亡くなるまで制度が適用され続ける点です。途中で暦年課税への変更はできません。

なお、相続時精算課税制度を利用するための要件は以下のとおりです。

  • 贈与者(父母や祖父母)が贈与の年の1月1日時点で60歳以上になっている
  • 受贈者(子どもや孫)が贈与の年の1月1日時点で18歳以上になっている

そのほか、適用されるには贈与税の申告も必要です。贈与の翌年の2月1日〜3月15日に申告書を提出しましょう。

参照:相続時精算課税の選択|国税庁
参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

まとめ

二世帯住宅で相続税を節税する方法について、「小規模宅地等の特例」を中心に解説しました。

記事の中でも解説したとおり、二世帯住宅で小規模宅地等の特例が適用されると建物敷地の評価額が80%減額されるため、その分相続税の節税につながります。

ただし、「区分所有登記」をしている場合など、ケースによっては小規模宅地等の特例が受けられないこともあります。損をせずに済むよう、自分のケースがどのような特例の対象になるのかをよく確認するようにしましょう。

「暦年贈与」や「住宅取得資金等の贈与」といったほかの制度もチェックし、「どの制度を利用するのがお得か」を見極めることも重要です。

制度がよくわからない、専門家からのアドバイスがほしいという場合は、相続税に精通した税理士に相談することをおすすめします。

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更新日 : 2024年11月15日
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