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相続税の申告漏れのペナルティとは?バレる理由や申告漏れを回避する方法! 

相続税の申告漏れのペナルティとは?バレる理由や申告漏れを回避する方法!

相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡日の翌日より10ヵ月以内です。相続額が「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」の基礎控除内に納まらない場合は、相続税の申告を行う必要があります。なお、意図的に無申告だった場合や申告期限に間に合わなかった場合はもちろん、手続きの際に申告漏れがある場合はペナルティとして追徴課税を課されるおそれがあります。申告をしなかった場合は無申告加算税、少ない金額で申告した場合は過少申告加算税、悪質な財産隠しなどは重加算税が課され、最大40%の税率で追徴課税を課されます。さらに、納付期限に間に合わなかった場合の延滞税も徴収されます。

税務署は高い調査力を有しているため、財産の隠ぺいなどは高い確率で見抜かれます。ペナルティを課されないためにも、正しい申告を行うことが重要です。自分で申告を行うのが不安な場合や申告漏れを防ぎたい場合は、相続を専門とする税理士に相談しましょう。

本記事では、相続税の申告漏れがあった際のペナルティや、税務署に申告漏れがバレる理由について解説します。さらに、申告漏れが起こりやすいケースや、申告自体が不要なケース、税務署に申告漏れを疑われる可能性が高いケースにも触れていきます。申告漏れを回避する対策や判明した際の対処法、追徴課税を支払えないときの対処法も説明するので、これから相続税の手続きをする方は参考にしてください。

相続税の申告漏れがあった場合のペナルティ

相続税の申告漏れが判明した場合のペナルティは追徴課税です。「納付期限に間に合わなかった」「申告自体をしなかった」など、状況によって課される追徴課税の種類は異なります。

  • 延滞税:納付期限に間に合わなかった場合(2.4~14.6%)
  • 無申告加算税:正当な理由なく相続税の申告を行わなかった場合(5~20%)
  • 重加算税:意図的に隠ぺいや偽装した場合(35~40%)
  • 過少申告加算税:少ない金額で申告して納税した場合(5~15%)

延滞税:納付期限に間に合わなかった場合(2.4~14.6%)

相続税は、被相続人の死亡日の翌日より10ヵ月以内に申告し、所轄税務署もしくは最寄りの金融機関で納付する必要があります。近年はクレジットカードでの納付も可能で、相続税額が1,000万円未満かつカードの決済可能額以下であれば利用できます。

相続税の納付が何らかの理由で期限に間に合わなかった場合は、延滞税を課されます。具体的には、相続税の申告はしたものの納付が間に合わなかった場合、期限後に修正申告した場合、税務調査で更生・決定処分を受けた場合などが該当します。

延滞税の税率は、納付期限の翌日から実際に納付するまでの日数に応じて下記のように変動します。

納付期限の翌日から2ヵ月以内の場合 年2.4%(原則は年7.3%)
納付期限の翌日から2ヵ月を経過した場合 年8.7%(原則は年14.6%)

※令和6年1月1日~令和6年12月31日の税率

延滞税の割合は、原則の税率と各年の延滞税特例基準割合※を元に計算した税率のいずれか低い割合を適用します。原則よりも低い税率が適用されているのは、延滞税特例基準割合の計算で用いる銀行の金利が低いためです。

※前々年9月から前年8月までの期間、各月の銀行の新規短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合に、年1%の割合を加算したもの

無申告加算税:正当な理由なく相続税の申告を行わなかった場合(5~20%)

正当な理由がないにもかかわらず、相続税の申告を期限までに行わなかった場合は、無申告加算税が課されます。正当な理由とは災害発生が原因で申告が難しい場合や、新たな相続人の発生によって相続額に変化が生じそうな場合などが該当します。

無申告加算税の税率は期限後申告の時期によって異なり、さらに納付すべき税額によっても税率が変動します。なお、期限後の申告となるため、先述した延滞税も課されます。

期限後申告の時期 納付税額50万円以下の部分 納付税額50万円を超えた部分
税務調査の事前通知前 5% 5%
税務調査の事前通知後から税務調査までの期間 10% 15%
税務調査後 15% 20%

過去5年以内に無申告加算税もしくは重加算税を課されたことがある場合は、上記に税率10%が加算されます。

重加算税:意図的に隠ぺいや偽装した場合(35~40%)

脱税を目的とした財産の隠ぺいや偽装により、税務調査で悪質と判断された場合は、重加算税を課されます。重加算税の税率は申告の有無に応じて異なります。無申告加算税および過少申告加算税に代わる税金のため、これらが二重に課されることはありませんが、納付期限を過ぎていれば延滞税が課されます。

無申告の場合 40%
過少申告の場合 35%

過去5年以内に無申告加算税もしくは重加算税を課されたことがある場合は、上記に税率10%が加算されます。

過少申告加算税:少ない金額で申告して納税した場合(5~15%)

本来申告すべき財産額より少ない額で申告し、納税額も少ない場合は、過少申告加算税を課されます。過少申告加算税に該当するのは、計算ミスや勘違いによる過失による申告漏れです。意図的に過少申告している場合は、先述した重加算税が適用されます。

過少申告加算税は本来の納税額との差額に対して課され、税率は修正申告の時期によって下記のように変動します。なお、期限内に納税していない場合は延滞税も課されます。

修正申告の時期 期限内納税額と50万円のいずれか多い額に納まる部分 期限内納税額と50万円のいずれか多い額を超える部分
税務調査の事前通知前 なし なし
税務調査の事前通知後から税務調査までの期間 5% 10%
税務調査後 10% 15%

相続税の申告漏れはバレる!その理由は?

相続税の申告漏れは税務署に高確率でバレます。国税庁の「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、令和4事務年度の実地調査件数8,196件のうち、申告漏れ等の非違件数7,036件。無申告や申告額が過少であると想定された事案を対象に行われた調査ではありますが、税務署はしっかり調べ上げて申告漏れを見抜くことがうかがえる結果です。また、相続税で税務調査の入った方の約80%が修正申告を行っているといったデータも存在します。修正申告の割合が多いということは、税務署が事前に申告漏れを把握している裏付けとなるでしょう。

税務署が申告漏れを把握できるのは、下記のような理由からです。それぞれ詳しく解説していきます。

  • 市町村役場の死亡届の情報は税務署にも共有される
  • 生命保険金の支払調書が税務署に送られる
  • 税務署からお尋ねが送付される
  • 税務署が亡くなった方名義の口座を照会する
  • 不動産の相続登記からバレる可能性もある

市町村役場の死亡届の情報は税務署にも共有される

人が亡くなると、遺族は住所地の市町村役場に死亡届を提出します。この死亡届の情報は税務署に共有されます。死亡の事実を知った税務署は、「KSKシステム」と呼ばれる納税者の申告情報等を管理するコンピューターシステムで、故人の生前の所得や財産状況を調査します。調査によって故人が基礎控除を超える多額の財産を残しているかの予想ができるため、遺族が相続税の申告をしなければ申告漏れを疑われます。

生命保険金の支払調書が税務署に送られる

亡くなった人の生命保険金を相続人が受け取る際、保険会社より相続人に支払調書が送付されます。この支払調書は税務署にも提出されるため、お金の流れが筒抜けとなっています。下記の生命保険の非課税枠に納まらない額のお金を受け取っているにもかかわらず、申告していない場合は税務署にバレてしまいます。

生命保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

税務署からお尋ねが送付される

税務署は相続税が発生しそうな相続人に「相続税のお尋ね」を発送します。内容は、被相続人の生前の職業や預貯金の額、所有する不動産などの相続財産と、法定相続人の人数を確認するための書類です。一般的には被相続人が亡くなって6~8ヵ月のタイミングで届きます。回答は任意の書類ですが、税務署は「相続税が発生する」と見込んで送付しているため、財産隠しなどを疑われないためにも回答するのが望ましいです。

この書類は相続人に申告を促すとともに、税務署側が相続税が発生するかを判断するために送付されているため、お尋ねへの回答や申告がない場合は税務調査の対象となることがあります。そのため、無申告や申告漏れがある場合は税務署にバレます。

税務署が亡くなった方名義の口座を照会する

税務署は強力な調査権限をもっており、相続税の申告漏れが疑われる場合は、裁判所を通さずに被相続人名義の銀行や証券会社の口座を照会できます。そのため、口座の残高や預金額に加え、口座の動きなども確認することが可能です。多額の引き出しがあれば、タンス預金などを疑われることもあります。

被相続人の家族や親族、関係者の銀行口座も調査できるため、お金の流れが筒抜けとなり、場合によっては過去の贈与税の申告漏れなどもバレてしまうおそれがあります。

不動産の相続登記からバレる可能性もある

税務署は不動産登記の確認もしています。相続によって不動産を取得する場合、名義変更を行う必要があります。その際、変更理由に「相続」と記載するため、財産を取得したことが税務署にバレてしまいます。

なお、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。正当な理由を除き、3年以内に登記・名義変更しない場合は10万円以下の過料の対象となります。

相続税の申告漏れが多くみられるケース

相続税の申告漏れは珍しいことではありません。正しく申告しているつもりでも、後から新たな財産が見つかって申告漏れが発覚することもあります。申告漏れが多く見られるのは下記のようなケースです。

  • 子どもや孫名義の口座を利用した預貯金がある
  • 隠れ財産が見つかった
  • 骨とう品や美術品など高価な財産がある

子どもや孫名義の口座を利用した預貯金がある

生前贈与として子どもや孫名義の銀行口座に預貯金をするケースも多いですが、場合によっては生前贈与と認められず、相続の際に申告漏れとして扱われるおそれがあります。

例えば、贈与を受けた側の子どもや孫が口座の存在に気づいていなかったり、贈与した側の親や祖父母が通帳や印鑑を管理していたりする場合は、子どもや孫の名前を借りた名義預金と判断され、相続税の課税対象となります。

後述しますが、生前贈与であることを証明する「贈与契約書」を作成しておくと、相続と見なされるのを防げます。また、通帳や印鑑は口座の名義人である子どもや孫が管理し、贈与するお金は銀行振込で送金すると、贈与の証拠としやすいでしょう。

隠れ財産が見つかった

相続税の申告期限を過ぎてから隠れ財産が見つかり、申告漏れとなるケースもあります。土地や家屋といった、わかりやすい財産は申告漏れしにくいですが、現金や預貯金、有価証券などは後から見つかるケースも多い模様です。

申告漏れを防ぐためには、相続財産をしっかりと調査することが重要です。被相続人の通帳やキャッシュカード、郵便物などから取引のあった金融機関を特定し、残高証明書を発行すれば預金額や保有している有価証券を把握できます。

骨とう品や美術品など高価な財産がある

被相続人が趣味で集めていた骨とう品や美術品などが、申告漏れとなるケースも稀に見られます。相続人が骨とう品や美術品の存在に気づいていなかったり、その価値を知らなかったりする場合でも申告漏れと見なされるため注意が必要です。

こういったケースを防ぐためにも、相続前に高額な骨とう品や美術品が遺産に含まれるかを確認しておくのが望ましいです。相続時に骨とう品や美術品を発見した場合は、鑑定士に依頼して時価を算出しましょう。

相続税申告が不要なケース

相続額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除内に納まっている場合は、申告の必要はありません。また、申告期限の翌日から5年経過して時効が成立すれば申告、納税の義務が消失します。時効が成立するのは稀で、さらに7年まで時効が延長するケースも存在します。

基礎控除内に相続額が納まっている

相続財産の合計額が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しないため、申告も納税も必要ありません。

相続税の基礎控除は、下記の計算式で算出できます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、「3,000万円+(600万円×3人)」の計算式になり、基礎控除額は4,800万円となります。

時効が成立している

相続は被相続人の死亡日より発生し、そこから10ヵ月後が申告期限となります。申告期限の翌日から5年経過すると時効が成立し、納税の義務が消失します。

ただし、「相続税を減らすために財産を隠した」といった悪質なケースでは、相続税の時効が7年に延長されます。また「法律で定められていることは知っていて当然である」と判断されるため、「申告義務を知らなかった」「期限を忘れていた」といった悪意のないケースであっても時効の延長は免れません。

また、時効が成立することは稀です 。先述した通り、税務署は強力な調査権限をもっているため、財産隠しなどを行っても時効成立前に税務署にバレてしまうでしょう。

税務署に相続税の申告漏れを疑われる可能性が高いケース

税務調査はある程度ターゲットを絞って行われます。申告漏れを疑われる可能性が高いのは下記のようなケースです。

  • 金融資産の割合が多い
  • 名義預金の可能性がある
  • 相続開始前の引き出し額が多い
  • 相続財産の金額が大きい
  • 国外財産を保有している
  • 申告をしていない
  • 税理士に依頼せず自分で申告を行った
  • 家族名義の資産が多い
  • 生前に不動産所得や株式譲渡があったのに申告額が少ない
  • 被相続人の社会的地位が高かった

金融資産の割合が多い

相続財産のなかで預貯金や株式、債権などの金融資産の割合が多い場合は、申告漏れを疑われる可能性が高いです。不動産のようなわかりやすい財産と比較すると、金融資産は隠ぺいしやすいと考えられているため、税務署も隠している財産がないか調べ上げます。

名義預金の可能性がある

専業主婦や未成年の子ども、孫など収入がない家族名義の銀行口座に多額の預貯金がある場合、申告漏れを疑われる可能性があります。これは被相続人の財産を資金源とした名義預金と判断されるためです。 口座や印鑑の管理を被相続人がしていた場合も名義預金として見なされ、相続の対象となります。

相続開始前の引き出し額が多い

被相続人が亡くなる直前などに、被相続人名義の銀行口座から多額の引き出しがあると申告漏れを疑われます。脱税のために家族がお金を移動したと判断されるためです。

税務調査の際、被相続人の病歴など生前の状況について質問されることがあります。これは、被相続人本人が預金の引き出しを行える状態だったのかを確認し、家族が故意にお金を移動したかどうかの判断材料にするためです。

相続財産の金額が大きい

相続財産の合計が2~3億円を超えるようなケースでは、疑わしいことがなくても税務調査が入る可能性が高くなります。相続財産が多い分、見落としや計算ミスなどが起こりやすく、さらには意図的な財産隠しなども疑われやすいためです。

国外財産を保有している

過去に国内財産と比較して国外財産は隠しやすいとされ、申告しない例が多数見られました。その関係で、 国外財産を保有している場合は税務調査が入りやすい傾向にあります。近年、海外の金融商品への投資が増加傾向にあるのも理由の1つです。

国税局は国際的な脱税および租税の回避のため、「共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)※」をもとに積極的に情報交換を行い、被相続人の国外財産の把握します。

※非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準

申告をしていない

相続額が基礎控除の範囲内で申告しなかった場合も、申告漏れを疑われて税務調査が入る場合があります。相続財産の見落としや計算ミスなどで、結果的に相続税が発生するケースも多々あるためです。

また、配偶者の税額軽減※1や小規模宅地等の特例※2で、相続税が発生しないケースもありますが、これらの控除は申告書の提出が必要となるため、無申告の場合は適用されません。控除を利用する場合は、きちんと各申告書の提出をしましょう。

※1 被相続人の配偶者の遺産額が1億6千万円、配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからない制度

※2 相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度

税理士に依頼せず自分で申告を行った

相続税の申告は自分で行うことも可能ですが、書類の種類が多い分計算ミスなどが生じやすく、税務調査の対象となる可能性があります。なお、相続税申告に慣れていない税理士が申告書を作成した場合も同じことが言えるので、実績のある税理士に依頼する必要があります。

家族名義の資産が多い

被相続人の家族名義の資産が多い場合も、税務調査が入る可能性が高いと言えます。銀行口座の預貯金が収入に対して多すぎる場合は、生前贈与と見なされることがあります。

例えば、一般的な収入の会社員が何千万円もの財産をもっていたり、収入のない専業主婦や未成年者が数千万円の財産をもっていたりする場合は、税務署から疑われやすいです。

上記のような高額な財産も、生前贈与として適正な手続きをもとに受け取ったお金であれば問題ありません。贈与の基礎控除の範囲を超えており、申告漏れがある場合は追徴課税の対象となるため注意が必要です。

生前に不動産所得や株式譲渡があったのに申告額が少ない

生前、相続人より不動産所得や株式の譲渡などが行われていたにもかかわらず、申告額が少ない場合は申告漏れを疑われます。利益が生じているのにその分を申告していない可能性があるため、税務署に目を付けられやすいのです。

被相続人の社会的地位が高かった

上場企業の社長や重役、医師、弁護士など、被相続人の地位や収入が高い場合は、税務調査されやすいと言えます。相続財産が多いことが見込まれるため、計算ミスや財産隠しなどの可能性が高まるためです。

税務署は不動産や高級車の購入者を確認し、KSKシステム(国総合税管理システム)に情報を入力し、富裕層のリストを作成しています。リストは調査対象の選定に使用されます。

相続税の申告漏れや脱税の疑いを回避するための対策

相続税の申告漏れは追徴課税を課されるため、素早く正しい申告を行うことが重要です。また、生前贈与が認められないケースもあるため、「贈与計画書」の作成で相続と見なされないように対策しましょう。また、相続額が大きい場合や申告漏れを防ぎたい場合は、税理士に依頼するとミスを防げます。

素早く正しい申告を行う

正しい申告を行っていれば、申告漏れや脱税の疑いをかけられる可能性が下がります。大前提ではありますが、提出前に計算ミスなどがないかをしっかりと確認しましょう。仮に税務調査が入ったとしても正しい申告を行っていれば、追徴課税を課されることはありません。

相続税の申告期限は、被相続人の死亡日の翌日より10ヵ月以内です。時間があると考えていても、葬儀や遺品整理などに時間をとられて思うように動けないことも考えられます。申告期限の直前に慌てて動くとミスも生じやすいため、早めに準備を行いましょう。

贈与契約書を作成しておく

生前贈与のつもりでも、名義預金のように相続財産と見なされてしまう場合もあります。贈与の履行を記録する「贈与契約書」を作成しておくと、申告漏れを疑われても贈与であることを証明できます。

贈与契約書は履行日、贈与者と受贈者の氏名、贈与の内容や方法など記載すべき項目が決まっているため、雛形を利用すると作成しやすいでしょう。

相続税の申告は税理士に依頼する

専門家である税理士に依頼すると計算ミスがなくなり、正しい申告ができます。税理士の署名入りの申告書であれば信頼性が高まり、税務署から申告漏れの疑いをかけられにくくなるでしょう。

ただし、相続を専門としていない税理士の場合は、控除の特例や財産評価についての知識が乏しいことも考えられるため、相続について実績のある税理士に依頼すると安心して任せられます。

相続税の申告漏れが判明したときの手続き

相続税の申告後に誤りがあった場合、申告期限内であれば訂正申告、期限後であれば更生の請求や修正申告を行います。各申告の違い、手続きについて紹介します。

訂正申告を行う

申告期限内に申告漏れが判明した場合は、訂正申告を行います。手続きは電子申告(e-Tax)もしくは窓口、郵送で行えます。なお、相続財産の額が大きくなったとしても期限内の申告となるため、追徴課税のようなペナルティは発生しません。

電子申告の訂正方法

電子申告(e-Tax)の場合、オンライン上で簡単に訂正申告ができます。データを再送信するだけなので、訂正したことを税務署に連絡する必要もありません。なお、追加の添付書類がある場合は、申告書等送信表とともに提出します。

電子申告(e-Tax)の手順

  1. 「申告・申請等一覧」画面より再送信するデータを選択する
  2. 「訂正する帳票を選び、内容訂正後に「作成完了」をクリックする
  3. 別名保存確認」画面の申告・申請等名欄に30文字以内の文字を入力し、「別名で保存」をクリックする
  4. 「署名可能一覧」画面より再送信するデータを選び、電子署名を付与する
  5. 送信可能一覧」画面から送信する

訂正申告のやり方・注意点

期限内に複数回申告書を提出した場合、税務署は最後に提出されたものを正式な申告書として受け取ります。手続きは、税務署の窓口や郵送にて訂正した書類を提出すれば完了です。

ただし、添付書類は当初申告で提出しているため、税務署が押した収受印のある控えをコピーして添付する必要があります。また、表題の余白に赤字で「訂正申告」と明記しておきましょう。

必要な書類

訂正済の相続税申告書に加え、申告書や評価明細書に記載した数字を証明するための添付書類、戸籍謄本等の相続人関係を示す書類など、当初の申告で提出した書類一式を用意します。訂正が必要な部分だけを記載した申告書は認められないので注意しましょう。

申告期限

相続税の訂正申告は通常の申告と同様の扱いとなるため、相続発生より10ヵ月以内が期限となります。

更生の請求を行う

更生の請求とは、申告内容の誤りなどによって相続税を支払い過ぎた場合に行う手続きです。払い過ぎた相続税の還付を目的に行われます。

更生の請求のやり方

相続税の更生の請求書、必要書類などを準備して税務署に提出します。郵送もしくは電子申告(e-Tax)でも手続き可能です。税務署に認められれば「相続税の更生通知書」「国税還付金振込通知書」の順に書類が届き、指定された口座に還付金が振り込まれます。

更生の請求を行う際の注意点

更生の請求を行っても、内容が認められずに却下されるおそれもあります。なお、虚偽の内容で更正の請求を行った場合は罰則があり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

更正の請求を行うケース

更生の請求を行うのは下記のようなケースです。

  • 財産が分割されて相続分が減った
  • 分割協議が整い、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用になった
  • 相続人が増えたことにより相続分が減った
  • 遺留分侵害額の請求により、相続分が減った
  • 遺言書の発見により、遺産分割が変動した

用意すべきもの

更生の請求には、相続税の更生の請求書、更生の請求に至った経緯を証明する書類、マイナンバーなどの本人確認書類が必要となります。

請求期限

更生の請求ができるのは、相続税の申告期限より原則5年。相続発生より5年10ヵ月となります。

ただし、更生の請求を行うケースで説明したような特別な事情がある場合は、特例として5年を経過していても更生の請求が可能となります。期限は、その事案が発生した日の翌日より4ヵ月以内です。

修正申告を行う

修正申告とは、納付した相続税の額が少ない場合に行う手続きです。ペナルティとして追徴課税が課されるため、誤りに気づいた場合は早めに修正申告を行う必要があります。

修正申告のやり方

修正申告書や相続税納付書、マイナンバーなどの本人確認書類、追加書類を準備し、税務署に提出します。郵送もしくは電子申告(e-Tax)でも手続き可能です。

修正申告の注意点

修正申告に提出期限はありませんが、税務調査の事前通知後の申告になると過少申告加算税が課されます。最終的な期限は、当初の申告期限から5年ですが、意図的な過少申告の場合は期限が7年に延長されます。

ペナルティが課せられる場合もある

修正申告が遅れると延滞税が課されます。申告期限から2ヵ月を経過すると税率も上がるため、速やかに対応することが重要です。また、先述した過少申告加算税も課され、こちらも対応が遅れると税率が上がるため注意が必要です。

相続税の追徴課税が支払えないときの対処法

相続税の追徴課税が支払えない場合は、税務署に申請して納税猶予制度の利用や借入金などで対処します。それぞれ詳しく紹介します。

税務署に納税猶予を申請する

追徴課税の支払いがどうしても難しい場合は、税務署に申請することで「納税の猶予」「換価の猶予」が認められる可能性があります。

納税の猶予 自然災害や病気、事業の休廃業などによって納税が難しい認められた場合、納税を猶予する制度。猶予期間は1年ですが、完納が難しいと認められる理由がある場合は2年に延長されることもあります。
換価の猶予 納税によって事業や生活の維持が難しくなると認められた場合、財産の差し押さえの売却が猶予される制度。1年の猶予が与えられ、分割で納税できます。ただし、猶予を受けるための担保を有し、納付期限から6ヵ月以内に申請する必要があります。また、猶予をうける国税を除く、国税の滞納がないことも条件となります。

借入金で支払う

追徴課税の支払いが難しい場合、金融機関からの借入金で対処する方法もあります。金利等のリスクはありますが、財産を差し押さえられるのを防ぎたい場合に有効な方法です。

まとめ

相続税の申告漏れは、追徴課税が課されます。対応が遅れるほど税率が上がる仕組みとなっているため、誤りに気づいた際は速やかに対処することが重要です。時効も設けられていますが、該当するケースは稀でほとんどが税務署に申告漏れを見抜かれます。計算ミスなどの申告漏れを防ぎたい、相続税の申告を不安に感じる場合は、相続を専門とする税理士に相談してみてください。