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遺産相続には原則所得税はかからない!かかるケースや確定申告の注意点

遺産相続に所得税は原則かからない!かかるケースや確定申告の注意点

相続が発生したときに、遺産に対してどのような税金がいくらかかるのか、気になっている人もいるでしょう。

相続財産に対して所得税はかかりません。なぜなら遺産相続の場面で発生する税金は、基本的に「相続税」だからです。

しかし、以下のようなケースでは、所得税が課せられることがあります。

相続で所得税がかかる可能性があるケース 必要な手続き
①不動産や株式など相続財産を売却して利益が発生した 確定申告
②家賃収入や株式配当金など相続財産から収益が発生した
③被相続人から死亡保険金を受け取った
④被相続人から未支給年金を受け取った
⑤生前に被相続人が所得を得ていた 準確定申告

①~④のケースでは、相続人が相続財産から所得を得たとみなされるので「確定申告」が必要です。また、⑤のようなケースでは、被相続人が得ていた所得について相続人が代わりに申告する「準確定申告」が必要です。

ただし、確定申告の期限は「所得を得た年の翌年の3月15日まで」であるのに対して、準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」です。また、確定申告は相続人単独で手続きを進められますが、準確定申告は相続人全員で協力しながら手続きを進めなければなりません

申告期限に間に合うか不安な方は、弁護士や税理士などの専門家に早めに相談して、手続きを進めましょう。

今回の記事では、遺産相続で所得税がかかるケースや、所得税の申告方法などを詳しく解説します。

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遺産相続には原則所得税はかからない

相続財産に課税されるのは「相続税」です。相続で財産を取得すると資産は増えますが、所得が増えるわけではないので、所得税が課税されることはありません。同様に、相続財産に対しては住民税も課税対象外です。

不動産や現金などの相続財産から借入金などの債務・葬儀代を差し引いた「正味の遺産額」が、相続税の基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた場合に、相続税がかかります。たとえば法定相続人が3人いるケースであれば、相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円になるので、この範囲内で相続した財産については相続税がかからないということです。

相続税は「相続開始があったことを知った日(一般的には亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内」に、相続で財産を受け取った人がそれぞれ申告・納税する必要があります。

遺産相続で所得税がかかるケース

相続財産に対して直接所得税がかかることはありません。しかし、以下のように相続財産から収益を得た場合や、生前に被相続人が所得を得ていた場合などは所得税が発生します。

  • 不動産や株式など相続財産を売却して利益が発生した
  • 家賃収入や株式配当金など相続財産から収益が発生した
  • 被相続人から死亡保険金を受け取った
  • 被相続人から未支給年金を受け取った
  • 生前に被相続人が所得を得ていた

それぞれのケースについて、詳しくみていきましょう。

不動産や株式など相続財産を売却して利益が発生した

相続した不動産や株式などを売却して得た利益は「譲渡所得」として、所得税の課税対象になります。

譲渡所得の計算式は以下のとおりです。

不動産
土地や建物の売却金額ー取得費(購入代金や購入手数料など)ー譲渡費用(仲介手数料や印紙代など)
上場株式
株式の売却金額ー必要経費(株式の購入代金や手数料など)

出典:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

土地や建物、株式の売却益については、給与所得など他の所得とは合算せずに税額を計算し、確定申告で納税をします(申告分離課税)。税率は以下のとおりです。

土地や建物の売却益 株式の売却益
・長期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年を超える場合):15%
・短期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年以下の場合):30% 
15%

家賃収入や株式配当金など相続財産から収益が発生した

賃貸マンションの家賃収入や株式の配当金など、相続財産から生じた収益は所得税の課税対象です。家賃収入は「不動産所得」、相続した株式から配当金を受け取った場合は「配当所得」として、相続開始日以降の収益は所得税の課税対象となります。

不動産所得と配当所得の計算方法は以下のとおりです。

不動産所得
総収入金額(賃料や更新料など)ー必要経費(固定資産税や修繕費など)
配当所得
受け取った配当金額ー株式取得にかかる借入金の利子

出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

不動産所得は「総合課税」の対象なので、給与所得など他の所得と合算した所得金額に応じた税率が適用されます。

配当所得も原則として総合課税の対象ですが、上場株式等の配当等については申告分離課税を選択することも可能です。その場合、所得税率は15%になります。

被相続人から死亡保険金を受け取った

契約者・被保険者・保険金受取人の関係性によって、死亡保険金に課税される税金は以下のように変わります。

契約者(保険料を支払う人) 被保険者(保障の対象になる人) 保険金受取人 課税される税金
A A B 相続税
B A B 所得税
C A B 贈与税

したがって契約者と保険金受取人が同一の生命保険に加入し、被相続人の死亡に伴い保険金を受け取った場合は、所得税の課税対象になります。

たとえば契約者・保険金受取人を妻、被保険者(保障の対象となる人)を夫とする生命保険に加入し、夫が亡くなったとしましょう。このとき妻が受け取る死亡保険金には、所得税がかかります。

また、死亡保険金の受け取り方によっても、所得の区分が変わります。死亡保険金を一時金で受け取った場合は「一時所得」、年金形式(分割)で受け取った場合は「雑所得」の対象です。

それぞれ以下のように計算します。

一時所得
受け取った保険金額ー払い込んだ保険料ー特別控除額50万円
雑所得
その年に受け取った年金額ー年金額に対応する払込保険料

出典:国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき

一時所得と雑所得はどちらも総合課税の対象なので、他の所得と合算したうえで、所得金額に応じた税率が適用されます。

被相続人から未支給年金を受け取った

被相続人が年金受給中に亡くなった場合や、年金を受け取る権利があるのに請求していなかった場合は、遺族が「未支給年金」を受け取れます。未支給年金は、相続人の一時所得となるため、相続税の課税対象です。

一時所得は以下のように計算します。

総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額50万円

受給した年金額が特別控除の50万円以下であれば所得税は発生しないため、その場合は確定申告は不要です。

生前に被相続人が所得を得ていた

被相続人が、死亡した年の1月1日から死亡日までに所得を得ていた場合、その所得に対しては所得税がかかります。ただし、被相続人自身が納税することはできないので、相続人が「準確定申告」と呼ばれる手続きを行い、所得税を納税します。

相続税の課税対象となるような財産がある場合は、何らかの所得があると考えておいた方がよいでしょう。固定資産税の納税通知書や勤務先から発行される給与明細などを確認し、必要に応じて準確定申告を行います。

所得税の納税者は確定申告または準確定申告が必要

相続財産から収益が発生した場合などは「確定申告」をして、所得税を納税しなければなりません。また、被相続人が生前に所得を得ていた場合には「準確定申告」の手続きが必要です。

手続きの種類 申告者 対象所得 期限
確定申告 納付義務者本人 1月1日から12月31日までの所得 翌年3月15日まで
準確定申告 納付義務者の相続人 1月1日から相続人が亡くなる日までの所得 相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内

相続財産から生じた所得は「確定申告」

相続財産を売却して利益が発生した場合など、相続した財産から所得を得た場合は「確定申告」が必要です。確定申告とは、1月1日から12月31日の間に生じた所得を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に所得税を納税する手続きを指します。

会社員の場合は勤務先で年末調整が行われるため、確定申告は基本的に不要です。ただし、不動産所得や雑所得など、給与所得以外の所得が20万円を超える場合などは確定申告が必要になります。

確定申告の手続き方法は主に以下の3通りあります。

  • 税務署に直接提出する
  • 国税庁のe-Taxから電子申告を行う
  • 税理士に確定申告を依頼する

確定申告を行う方法1.税務署に直接提出する

地域の税務署の相談窓口に行って直接申告書を提出する方法は、最もイメージしやすい確定申告の方法といえるでしょう。書類に不備がないかなど、税務署の職員からその場でチェックを受けられるので、初めて確定申告を行う人にはおすすめの方法です。確定申告所や青色決算申告書など、必要な書類を持参しましょう。

ただし、窓口提出の場合は申告期限が近づくと窓口が混雑し、待ち時間が長くなることが多いというデメリットがあります。

確定申告を行う方法2.国税庁のe-Taxから電子申告を行う

国税庁のe-Taxを利用すれば、自宅からインターネットを通じて確定申告が可能です。e-Tax画面の案内に従って入力を進めていくだけで、申告書の作成や送信まで一連の手続きを進められます。メンテナンス時間を除けば基本的に24時間いつでも利用できるので、自分の都合に合わせて確定申告を進められるのがメリットです。

また、個人事業主の場合はe-Taxで確定申告をすると、最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられるメリットもあります。

ただし、マイナンバーカードやマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォン、ICカードリーダーライターなど、環境を整えなければ利用できません

確定申告を行う方法3.税理士に確定申告を依頼する

複数の所得がある場合や本業が忙しい場合などは、税理士に確定申告を依頼するのも一つの方法です。税理士に依頼することで大きく手間が省けるだけではなく、正確な内容で申告ができるというメリットがあります。また法改正や最新の税制にも精通しているため、節税対策を提案してもらえることもあるかもしれません。

しかし、税理士に確定申告を依頼する場合は、10〜20万円程度の費用がかかります。初回相談は無料の場合もあるので、迷った場合は一度相談してみると良いでしょう。

生前に被相続人が所得を得ていた場合は「準確定申告」

本来確定申告をすべき人が、申告をしないまま亡くなってしまった場合は、相続人が代わりに確定申告を行う必要があります。これが「準確定申告」です。準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。

基本的には亡くなった人が以下にあてはまる場合、準確定申告が必要になります。

  • 事業所得や不動産所得があった
  • 2,000万円以上の給与所得があった
  • 複数の企業から給与をもらっていた
  • 給与や退職金以外で20万円以上の収入があった
  • 公的年金による収入が400万円を超えていた
  • 生命保険の満期保険金などを受け取っていた

また、所得控除を受けられる場合には、準確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。還付金とは、源泉徴収などによって税金を払い過ぎた場合に返還されるお金のことです。

準確定申告の手続き方法

準確定申告には、以下の2通りの方法があります。

  • 相続人全員の署名が入った準確定申告書を、相続人の代表者が提出する
  • ほかの相続人の氏名が入った準確定申告書を各相続人が個別に提出する

個別に手続きを行う場合は、他の相続人に対して申告した内容を通知しなければなりません。

いずれにしても、相続人全員で連絡を取り合い、準確定申告書を作成する必要があります。申告書類の準備ができたら、税務署へ持参・郵送などの方法で提出します。通常の確定申告と同様にe-Taxを利用したり、税理士に依頼したりすることも可能です。

準確定申告で必要な書類

準確定申告で必要な書類は、以下のとおりです。

  • 準確定申告書
  • 被相続人の源泉徴収票
  • 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
  • 被相続人の医療費の領収書
  • 被相続人の控除証明書

準確定申告書は、確定申告書と同じ書式で作成します。還付金を代表者が一括で受け取る場合は、各相続人が署名した委任状が必要です。

確定申告を行うときに注意すべきこと

確定申告や準確定申告をする際には、以下の点に注意しましょう。

  • 確定申告と準確定申告では申告期限が異なる
  • 準確定申告は控除対象の費用が異なる

確定申告と準確定申告では申告期限が異なる

確定申告と準確定申告では申告期限が大きく異なる点に注意しましょう。

確定申告の期限は「所得を得た年の翌年の3月15日まで」です。たとえば、被相続人が9月1日に亡くなった場合は、翌年の3月15日までに手続きをすればよいので、申告期限までに半年以上の余裕が生まれます。

一方、準確定申告の期限は「相続があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。被相続人が9月1日に亡くなった場合は、年内(12月末)に手続きを終えなければなりません。期限内に手続きを終えられなかった場合は、延滞税や無申告加算税などが課せられる可能性があります。

準確定申告は控除対象の費用が異なる

準確定申告でも通常の確定申告と同様に所得控除を受けられます。ただし、控除対象となる費用については項目ごとに以下のような決まりがあるので、控除額を間違えないようにしましょう。

所得控除の種類 所得控除の適用基準
医療費控除 死亡日までに被相続人が支払った医療費が控除対象
各種保険料控除(社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除など) 死亡日までに被相続人が支払った保険料が控除対象
配偶者控除・扶養控除 死亡日時点での親族等の1年間の合計所得金額に基づいて控除額を計算する

まとめ

相続時、遺産にかかる税金は基本的に相続税のみで、所得税はかかりません。しかし、相続財産から収益を得た場合や、死亡保険金・未支給年金を受け取った場合などは、相続人は確定申告をして所得税を納税する必要があります。

また、被相続人が生前に所得を得ていたにもかかわらず確定申告をしていない場合には「準確定申告」が必要です。準確定申告の手続きは相続人全員で進めなければならず、控除対象となる金額の計算も複雑になる可能性があります。

さらに通常の確定申告は「所得を得た年の翌年3月15日まで」が申告期限となっていますが、準確定申告は「相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」に手続きを終えなければなりません。手続きに不安がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。

相続における所得税でよくある質問

青色申告は相続で継承されますか?

被相続人の事業を引き継いだとしても、相続人に対して青色申告が自動的に適用されるわけではありません。そのため、税務署に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

提出期限は被相続人が亡くなったタイミングによって、以下のように異なります。

死亡日 提出期限
1月1日から8月31日 死亡日から4ヶ月以内
9月1日から10月31日 その年の12月31日まで
11月1日から12月31日 翌年の2月15日まで

相続した預貯金に所得税はかかりますか?

相続した預貯金は相続税の対象になるため、所得税はかかりません。預貯金を相続した後に利子が発生した場合、その利子に対しては所得税と住民税がかかりますが、源泉徴収されるため確定申告は不要です。

遺産相続では相続税や所得税の他にも税金がかかりますか?

所得税がかかるケースでは、同時に住民税もかかることがほとんどです。

また、不動産を相続した場合は登記をする際に登録免許税がかかります。亡くなった人が個人事業を営んでいた場合は消費税や個人事業税、不動産を所有していた場合は固定資産税などを、相続人が代わりに納めなくてはならないこともあります。

所得税の準確定申告や確定申告を怠るとどうなりますか?

期限までに確定申告や準確定申告および納税をしなければ、ペナルティとして延滞税と無申告加算税が課されることがあります。青色申告の承認を取り消されることもあるので、必ず期限内に手続きをしましょう。

相続に関する税金を最小限に抑えるための方法はありますか?

相続に関する税金を抑えるためには、被相続人の生前から税金対策を行うことが大切です。個々の状況によって適切な対策は異なるため、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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更新日 : 2024年11月15日
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