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相続税申告を自分でできるかどうかの判断基準や手続きの流れを紹介

相続税申告を自分でできるかどうかの判断基準や手続きの流れを紹介

相続税の申告が必要な場合、専門家に頼らず、自分で申告したいと思う方もいらっしゃるでしょう。

結論からいえば、相続税申告は自分で行うことが可能です。

ただし、相続税に関して調査する内容や集める情報など、手順ごとに相当な時間がかかるほか、専門的な知識が求められる場合もあり、誰でも簡単に自己申告ができるとは考えない方がいいでしょう。

また、相続税申告には申告期限が設けられており、期限までに申告できなかった場合や、控除額以上の相続財産があるにもかかわらず、正確に申告しなかった場合はペナルティ(=追徴課税)の対象となる場合もあります。

追徴課税としては、延滞税・無申告加算税・過少申告加算税・重加算税の4種類があり、2.4%から50%の税金が加算されます。

今回は、相続税申告を自分でできるかどうかの判断基準や、実際に申告する場合の手続きの流れについて解説します。

また、自己申告する場合のポイントやリスク、自己申告しない方がいいケースなども紹介します。

本記事を読めば、相続税を自分で申告できるかどうかを判断できるので、気になる方は最後までお読みください。

相続税申告は自分でできる

結論からいえば、相続税の申告は自分で行えます。

一般的には、税理士に申告を依頼するイメージが強いかもしれません。しかし、実際には約14%の相続人が自分で相続税を申告しています。

逆にいうと、およそ86%の人が相続税の申告を税理士に依頼していることになります。土地などの財産の相続税評価が難しいことや、申告までに時間かかりやすいことが、税理士に依頼する理由と考えられます。

また、相続税の申告ミスは大きなペナルティが伴う恐れがあるほか、細かなルールが設定されているため、専門家に依頼した方が安心できるという側面もあります。

なお、ペナルティとして課せられるのは以下の4種類です。

ペナルティの種類 内容
延滞税 相続税の納付期限までに納税しなかった場合に課せられる。
農期限の翌日から2ヶ月以内は納めるべき税額の2.4%、2ヶ月超えなら8.7%の延滞税が加算される。
※納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて加算
無申告加算税 申告期限前に申告しなかった場合に課せられる。
納めるべき税額の50万円以下の部分に5%~15%、50万円超えの部分に5%~20%の無申告加算税が加算される。
過少申告加算税 納付すべき税額より少なく申告した場合に課せられる。
納めるべき税額の50万円以下の部分に5%~10%、50万円超えの部分に10%~15%の過少申告加算税が加算される。
重加算税 事実を隠蔽・仮想しての申告など、悪質な場合に課せられる。
無申告の場合は納めるべき税額の40%、過少申告の場合は35%が加算される。

参考:実績目標(大)3(税理士業務の適正な運営の確保)|財務省

相続税申告を自分でできるかどうかの判断基準

相続税の申告を自分でできるか、難しいのか、どのように判断すればいいのでしょうか?以下の基準から判断してみるといいでしょう。

  • 相続財産の評価が簡単かどうか
  • 相続人が自分1かどうか
  • 相続税申告に十分に時間を割けるか

それぞれ詳しく解説します。

相続財産の評価が簡単かどうか

相続税の申告を自分でできるかどうかは、相続財産の評価が簡単にできるかを確認しましょう。

仮に、相続する財産が現金や預貯金のみなど、シンプルで計算しやすい場合は、専門家に依頼しなくても申告しやすいといえます。

一方、不動産や非上場株式、事業用財産、贈与がある場合などは、評価額の算出が複雑になります。市場価格が明確ではなく、正しく評価するためには専門的な知識が必要になるためです。

相続財産の評価が難しい場合や、特殊な財産が含まれている場合は、自分で申告するのではなく、専門家に依頼した方がいいでしょう。

相続人が自分1人かどうか

相続税の申告を自分でできるかどうかは、相続人が自分1人かどうかで判断するといいでしょう。

自分以外の相続人がいない場合、遺産分割協議を行う必要がないため、自分で申告しやすくなります。

遺産分割に関するトラブルが発生することがないため、申告しやすい状況が整っているといえるでしょう。

一方、相続人が複数存在する場合や、相続財産が複雑になりやすい場合は、遺産分割協議が必要になるほか、財産評価や相続の割合を決めるのが難しくなります。また、自分だけが相続人だと思っていても、親の再婚で自分以外にも子どもの相続人がいる場合もあり、自分が相続人かどうか定かではない場合もあります。

そのため、相続税は自分で正確に申告するのが難しく、できたとしても相当の時間がかかります。このような場合も税理士に相談したり、相続人の調査や相続税の申告を依頼したりした方がいいでしょう。

相続税申告に十分に時間を割けるか

相続税を自分で申告できるか判断するには、申告のために十分な時間を割けるかどうか確認しましょう。

相続税の申告は自分で行えるものの、申告ができるまでにはかなりの時間がかかるためです。

相続財産が少ない場合や、相続人が1人だけで相続税の申告のために時間を十分に確保できる場合は、自分で申告することを選択しても問題ありません。

一方、時間が取れない場合は無理をせず、専門家に対応を依頼した方がいいでしょう。

相続税の申告に至るまでには、さまざまなプロセスを経なければなりません。

まずは被相続人が遺した財産の調査と評価額の算出を行いますが、財産に関する資料の収集や関連機関や企業への問い合わせなどが必要です。

相続人はそれぞれ相続方法を選択し、相続人全員が集まって遺産分割協議を行います。その際、どのような相続人がいるのか、戸籍謄本などで確認しなければなりません。

遺産分割の割合などに相続人が合意できれば、相続人同士の紛争を避けるために、遺産分割協議書を作成する必要もあります。

残された財産の種類や金額をすべて調査し、遺産分割協議を完了させた上で、ようやく申告書の作成に取り掛かります。

それぞれのステップが複雑であるため、想定以上に時間がかかることもあります。期限までに自分で相続税申告を行うことを選択する場合は、適切なタスク管理と、必要なすべての情報を収集するための時間の確保が必要です。

さらに、相続税の申告は複雑で専門的な知識が必要になるため、申請書の作成にも時間がかかります。

時間がかかることを理解した上で、自分で申告するかどうかを判断しましょう。

相続税申告を自分でしない方がよいケース

相続税の申告は相続人が自ら行えるものですが、中には自分で申告しない方がいいケースがあります。具体的には、以下に該当するケースです。

  • 相続税評価が難しい財産である場合
  • 相続人が複数人いる場合
  • 生前贈与をしている場合
  • 特例制度を活用する場合

それぞれ詳しく解説します。

相続税評価が難しい財産である場合

相続財産に相続税評価が難しい財産が含まれる場合は、自分で申告するのを避けた方がいいでしょう。

評価額を算出するために、複雑なプロセスを経る必要があり、専門的な知識がなければ対応するのが難しいためです。

相続税評価額とは、遺された財産を評価方法に従って計算した財産の価額のことです。

そして、財産の価額を算出する行為を、相続税評価といいます。

遺産となる財産には土地や貸地、建物、マンション、上場株式、預貯金、生命保険金、退職手当金など、ざっと挙げただけでもさまざまなものがありますが、評価方法はそれぞれ異なります。

自分で相続税を申告するということは、財産ごとに異なる評価方法を駆使しながら、すべての財産の評価額を算出するということにもなります。

中には、評価額の算出方法が複雑で、知識がなければ対応が難しいものもあります。最も評価するのが難しいといわれているのが土地の評価で、評価方法に路線価方式と倍率方式の2つがあるほか、評価額の算出ルールが複雑となっています。
なお、土地の相続税評価額について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参照してください。

相続税の申告には期限があるほか、他の相続人との遺産分割協議を済ませる必要もあるため、自分で申告しようとすると時間が足りずに申告期限を過ぎてしまう恐れもあるでしょう。

また、自分で相続税を申告・納付しようとした場合、減額要素を見逃したり、過少申告や過大納付をしたりする恐れがあり、税務調査に入られてしまうケースもあります。

相続税の申告は、自分だけではどうしようもないケースもあるため、難しいと感じる場合は、できるだけ早く税理士に相談した方がいいでしょう。

税理士に対応を依頼すれば、相続税の申告にかかる手間や時間を削減できるほか、控除や特例を正しく利用できたり、税務調査が実施される確率を下げたりできます。また、税務調査が入った場合に、対応を任せることも可能です。

相続人が複数人いる場合

相続人が複数名存在する場合も、自分で申告しない方がいいでしょう。

自分以外にも相続人がいる場合、遺産分割協議が必要になるほか、相続人によって適用できる特例や控除が異なり、納付税額に影響が出るためです。

相続税の申告には、相続人の確認や相続財産の調査や評価が必要です。これらのプロセスを経た後に、遺産分割協議を行い、分割の割合について話し合った上で、相続人全員の合意が必要になります。

相続税に詳しくない場合、複数の相続人を相手に円滑に協議を行い、相続人ごとに特例や控除を正しく適用させるのは、かなり難しいでしょう。

誤った申告をした場合、ペナルティが発生する恐れもあります。

そのため、相続人が複数名存在する場合は、税理士に相談して申告をサポートしてもらった方が賢明です。

生前贈与をしている場合

生前贈与を行っている場合も、相続税の申告を自分で行うのが難しい場合があります。

生前贈与とは、財産を持つ個人が生きている間に、所有する財産を無償で他人に贈与する行為です。

理由としては以下の通りです。

  • 財産の計上漏れが起こる可能性がある
  • 贈与の種類ごとに相続税を正しく計算する必要がある

生前贈与を行った場合、贈与した財産が相続財産として計上されず相続税が正しく計算できないケースがあるため、相続税の申告ミスにつながる恐れがあります。

また、贈与には暦年贈与と相続時精算課税制度を使用した贈与の2種類があります。これらの贈与の種類はそれぞれ異なる税制によって取り扱われるため、専門的な知識がないと適切に申告できない可能性があります。

さらに、相続税の申告手続きは複雑であるため、かなりの時間が必要になるほか、相続税の申告期限までに申告を完了させなければ、延滞税や重加算税などのペナルティを受ける恐れもあります。

生前贈与を行っている場合は、税理士に対応を依頼した方が無難といえます。

特例制度を活用する場合

相続税の特例制度を活用する場合も、自分で申告しない方がいいでしょう。

特例制度を誤って適用させてしまった場合、税務調査やペナルティを受ける恐れがあるためです。

相続税の特例制度とは、相続人への過度な税負担を防止するための制度のことです。

特例制度や控除制度の一例は次の通りです。

特例制度や控除制度 内容
・小規模宅地等の特例
・遺産にかかる基礎控除
相続税の対象となる財産の価格を減らせる
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
・障害者控除
・相次相続控除
・贈与税額控除
相続税額から差し引ける

これらの特例制度や控除制度を適用した場合、相続税額を大幅に低減できる可能性があります。

一方、誤って適用した場合、税務調査の対象となる場合があります。正しい税額を申告できなかった場合は、過少申告加算税や延滞税などが課せられるケースもあります。

特例制度や控除制度を適用させて相続税を申告したいなら、税理士に対応を依頼した方がいいでしょう。ペナルティのリスクを軽減するためにも、どのように対応するのが最善か、よく検討しましょう。

相続税申告を自分で行う場合のリスク

相続税の申告を自分で行う場合、以下に挙げるリスクが伴います。

  • 相続税を多く納めてしまう
  • 時間や手間が多くかかってしまう
  • 税務調査が行われるリスクがある
  • 相続する財産の申告漏れが発生する可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

相続税を多く納めてしまう

自分で相続税を申告する場合、相続税を多く納めてしまう可能性があります。これを過大申告といいます。

過大申告が起きる主な原因は以下の通りです。

  • 相続税制度への理解不足
  • 相続税の計算ミス

所得控除の適用漏れが多いほか、社会保険控除や生命保険料控除を忘れるケースが多い傾向にあり、過大申告につながる可能性が高くなります。

また、過大申告をしても基本的に税務署から連絡が来ることはなく、税務署が指摘することもありません。そのため、課題申告は自分で気付くか、税理士に相談した場合のみに発覚します。

過大申告を避けたい場合は、税理士に対応を依頼するのが無難です。どうしても自分で申告した場合は、過大申告とならないよう注意しましょう。

時間や手間が多くかかってしまう

相続税を自分で申告する場合、申告までに時間や手間がかかります。

相続税を申告できる状態にするためには、さまざまな情報や資料の収集が必要です。また、相続人に対してすべての財産が明かされているとは限りません。そのため、遺品を調べて銀行に照会をかけたり、市役所で台帳を取得したりする必要があります。

さらに、相続人が相続放棄や限定承認を選択する場合、相続開始日から3ヶ月以内に手続きを完了させなければなりません。被相続人が死亡した年に所得を得ており、基礎控除額を超えている場合は、所得税の準確定申告も必要です。

これら1つずつのステップにはそれぞれ時間がかかるため、場合によっては仕事を休んで作業を行わなければならないこともあるでしょう。

また、相続税申告は特殊な作業であり、正しく手順を踏まないと申請しなければならず、ミスが発覚した場合は、申告・納税のやり直しが必要になる恐れもあります。

相続税の申告には、時間も手間もかかることを理解しておく必要があるでしょう。

税務調査が行われるリスクがある

相続税の申告を自分で行う場合、税務調査が行われるリスクが伴います。

専門的な知識を持たずに相続税を申告した場合、計算ミスや申告ミスが起こりやすいためです。

税務署は、相続税の自己申告が正確かを確認するために、税務調査を行うことがあります。

税務調査とは、税務申告を正しく行っているかを確認する調査で、国税庁が管轄する税務署などが実施するものです。

相続税を自己申告する場合、税理士に対応を依頼した場合と比べてミスが起こりやすいため、税務調査が行われやすくなる可能性があります。

税務調査によって、申告漏れや誤りが見つかった場合、追加の税金や過少申告加算税が発生するケースもあります。

国税庁が発表している「令和4年事務年度における相続税の調査庁の状況」によれば、実施された相続税の実地調査(税務調査)のうち、非違割合(申告漏れなど違法と判断された割合)が85.8%となっています。つまり、税務調査が行われたら8割以上の確率で追徴課税が実施されていると考えられます。

さらに、相続財産を隠ぺいしたと判断されてしまうと、重加算税が課せられ、40%の税率での納税が必要になる恐れもあります。なお、先程の調査では税務調査が行われる件数のうち、約15%で重加算税が課せられています。

税金に関する法律は複雑であり、控除や免税措置をすべて理解して適用するのは相当難しいといえます。税務調査のリスクを最小限に抑えたい場合や、ミスによるペナルティを受けたくない場合は、税理士に対応を依頼することをおすすめします。

参考:令和4事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

相続する財産の申告漏れが発生する可能性がある

相続税を自己申告する場合、財産の申告漏れや計算ミスが発生する可能性があります。

相続税の申告漏れとは、相続する財産の一部を申告しなかったり、誤った金額を申告したりすることをいいます。

税務調査によって申告漏れや計算ミスが発覚した場合は、修正申告が必要になるほか、延滞税が課される場合があります。また、本来の納税額よりも少ない金額しか納めていなかった場合は、加算税の支払いが課せられることもあります。

さらに、相続財産を隠ぺいしたと判断されてしまうと、重加算税が課せられ、40%の税率での納税が必要になる恐れもあります。

繰り返しになりますが、相続税の計算は複雑であり、財産の評価や控除、特例の適用などには専門的な知識が必要になります。

相続税を正しく申告する自信がない場合は、やはり税理士に対応を依頼した方がいいでしょう。

相続税申告が不要なケース

相続が生じた場合でも、相続税の申告が不要になる場合があります。具体的には、次に挙げるケースです。

  • 相続する財産が3,000万円以下の場合
  • 相続する財産が基礎控除以下になる場合
  • 基礎控除以外の控除で税額が0円以下になる場合

相続財産の総額が3,000万円以下の場合は、相続税の申告が不要です。また、相続財産の総額が基礎控除以下になる場合も、相続税の申告はいりません。

相続税には基礎控除が設定されています。具体的な控除額は以下の通りです。

相続税の基礎控除額
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

3,000万円を基本に、法定相続人1人につき600万円が控除され、相続人の人数に応じて基礎控除額は変動します。一例を挙げると以下のようになります。

  • 法定相続人が1人の場合:3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
  • 法定相続人が3人の場合:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
  • 法定相続人が5人の場合:3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円

相続する財産の総額が、法定相続人の人数ごとに異なる基礎控除額よりも小さい場合(基礎控除額以下となる場合)は、相続税の申告義務は発生しないことになります。

また、相続税では以下の6種類の税額控除を利用できます。

控除の種類 内容
配偶者の税額軽減(配偶者控除) 被相続人の配偶者が相続や遺贈により取得した遺産の金額が1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない。
未成年控除 相続人が未成年者で一定の条件を満たす場合に、相続額から計算した金額を差し引ける。
贈与税額控除 被相続人が死亡する前3年間の贈与について贈与税を支払っている場合に、その前払いした贈与税額を贈与税額から控除できる。
障害者控除 相続人が障害者で一定の条件を満たす場合に、相続税額から控除できる。
相次相続控除 今回の相続の前10年間で、今回死亡した人が相続税を支払っている場合に、相続税額から控除できる。
外国税額控除 被相続人の財産が外国にあり、その財産に外国で相続税がかかった場合に相続税額から控除できる。

上記の控除を利用して、相続税額が0円以下となるような場合も、相続税は申告しなくてかまいません。

相続税申告に必要な書類

相続税の申告には、いくつかの種類を提出する必要があります。

まず、相続税の申告書を用意します。申告書は国税庁のホームページでダウンロードするか、税務署の窓口で直接もらいます。

また、添付書類の提出も必要です。一般的に提出が必要な書類の種類と入手方法は以下の通りです。

提出する書類 内容 入手方法
戸籍謄本 相続人や被相続人の身分を証明するための書類。生年月日や氏名、親族関係などが記載されている。 各地方自治体の役所や区役所、市役所などで発行される。申請には被相続人や相続人の氏名や生年月日などの情報が必要。即日発行される場合があるが、発行に数日から1週間かかる場合もある。
遺産分割協議書の写し 遺産分割に関する相続人間の協議内容や取り決めを記した書類の写し。相続人が遺産の分割について合意した際に作成する。 相続人間で協議し、合意した内容を書面にまとめる。協議内容や相続人の人数などによって異なるが、数日から数週間程度で完成。
各相続人の印鑑証明書 各相続人の印鑑を公的に登録・証明した書類。相続手続きにおいて、自分の意思を確認するために使用。 各相続人が所在する役所(市役所、区役所、町村役場など)で発行。申請には相続人の本人確認書類が必要。発行には通常数日から1週間程度かかる。
預貯金・借入金などの残高証明書 相続財産の一部として存在する預貯金や借入金の残高を証明する書類。通帳、預金明細書、借入明細書など。 各金融機関(銀行、信用金庫、クレジットカード会社など)で発行。申請には口座番号や本人確認書類が必要。発行には通常数日から数週間程度かかる。
生命保険金・退職手当金などの支払証明書 相続財産に生命保険金や退職手当金などの受給権を証明する書類。保険証券や保険会社から交付される。 保険会社や退職金支払機関から発行される。申請には保険証券や退職手当金の契約書などが必要。発行には数日から数週間程度かかる。
不動産の登記簿謄抄本(登記事項証明書)・地形図 所有権や登記簿上の情報を証明する書類。相続財産に不動産が含まれる場合に必要。登記簿謄抄本には不動産の所有者や担保権などの情報、地形図には不動産の位置や境界などが記される。 各地方法務局で発行。申請には不動産の所在地や登記情報などが必要。発行には通常数日から数週間程度かかる。
固定資産税評価証明書 不動産の評価額を証明するための書類。地方自治体が発行しており、土地や建物の評価額などが記載されている。 各地方自治体の税務署や役所で発行。不動産の所在地や登記情報などが必要。発行には通常数日から数週間程度かかる。

なお、地域や状況によって提出が必要な書類が異なる場合があるため、事前に税務署に確認しておいた方がいいでしょう。

また、書類を揃えるには時間がかかるため、早めに準備に取りかかるようにしましょう。

これらの書類は相続手続きや相続税申告に必要な重要な書類です。手続きには時間がかかる場合があるため、早めの準備と申請が望ましいです。書類の発行に関する詳細な情報は、各発行機関や役所のホームページなどで確認しましょう。

相続税申告を自分で行う場合の手順

ここでは、相続税の申告を自分で行う場合の手順を紹介します。具体的な手順は以下の通りです。

  • 1.法定相続人の確定と相続する財産の調査
  • 2.財産評価額の算定
  • 3.遺産分割協議の実施
  • 4.相続税申告書の作成
  • 5.相続税申告と納付

それぞれ詳しく解説します。

1.法定相続人の確定と相続する財産の調査

相続税の申告を自分で行う場合、最初に法定相続人の確定と相続する財産の調査を行います。

法定相続人とは、民法によって定められた被相続人の財産を相続できる人のことです。

法定相続人となる権利があるのは、被相続人(死亡した人)の配偶者と子ども、親、兄弟・姉妹です。

被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて、誰が法定相続人になり、合計で何人いるのかを調査します。

次に、被相続人が所有する財産を調べます。相続できる財産としては、預貯金や不動産、有価証券、金融派生商品、保険金、動産などがあります。

被相続人の自宅で銀行口座や証券口座、関連する書類などを探したり、金融機関や然るべき窓口に問い合わせたりして、すべての財産を把握しましょう。

2.財産評価額の算定

次に、財産評価額を算定します。

財産の評価額は、土地や上場株式、投資信託など財産の種類ごとに定められており、それぞれの評価額を算定する必要があります。

なお、財産評価額の算定は相続財産の価値を公平に評価するために、財産を取得したとき(被相続人の死亡時)の時価で評価しなければなりません。

また、財産の評価方法は、国税庁が定めた財産評価基本通達による評価方法に従って計算します。

詳しくは国税庁のホームページを確認してください。

参考:財産評価|国税庁

3.遺産分割協議の実施

財産評価額が算定できれば、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人の財産の分割方法や割合について話し合うことをいいます。

遺産分割協議によって、相続人全員が遺産の価値を正確に把握することで、公平な遺産分割が可能になります。

また、被相続人が遺言を残している場合、遺言に記載された内容に合わせて財産を分割します。ただし、遺言に借金を特定の相続人に受け継ぐよう指示されていても、その遺言書は適用されません。

遺産分割協義によって、遺産の分割割合や相続の方法に合意できれば、遺産分割協議書を作成します。なお、遺産分割協議書は相続税の申告時に税務署に提出する必要があります。

4.相続税申告書の作成

遺産分割協議が完了したら、相続税の申告書を作成します。

相続税の申告書とは、相続税の計算や納付に必要な公式文書です。

申告書には第1表から第15表までありますが、必要な帳票のみを作成すれば問題ありません。また、相続税の申告書は、最寄りの税務署か国税庁ホームページで入手できます。

なお、申告書の種類は以下の通りです。

種類 名称 内容
第1表 相続税の申告書 課税価額、相続人それぞれの算出税額、納付税額を計算。
第2表 相続税の総額の計算書 相続税の総額を計算する。
※課税価額の合計額から遺産に関係する基礎控除額を引いた額について、法定相続分ごとの取得価額に対して税率を掛け合わせて相続税の総額を算出。
第3表 財産を取得した人のうち農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書 財産を取得した人の中に農業相続人がいる場合、特例農地などについて農業投資価格によって課税残価格を計算する。
第4表 相続税額の加算金額の計算書 相続税が2割増しになる相続人が財産を受け取った場合に作成する。
※被相続人が死亡した日より前3年以内に贈与があった場合には、第4表の2と第14表を作成する。
第5表 配偶者の税額軽減額の計算書 税額軽減制度の適用のため、軽減額を算出。
第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書 財産をもらった相続人が未成年者や障害者の場合に作成する。
第7表 相次相続控除額の計算書 相次相続控除を受ける場合に作成する。
第8表 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書 課税対象の財産に海外にあるものがあり、外国で日本の相続税に相当する税が課税されている場合や、農地相続人がいる場合に、相続税控除のために作成する。
第9表 生命保険金などの明細書 被相続人の死亡によって配偶者に支払われた生命保険金額の記載と、相続税の課税対象となる金額を算出。
第10表 退職手当金などの明細書 死亡退職金を受け取った場合に作成する。支給された死亡退職金と非課税金額から課税金額を計算する。
第11表 相続税がかかる財産の明細書 相続税がかかる財産を記入し、相続人ごとの取得財産価額を記載。
※第11・11の2表の付表1小規模宅地等についての課税価格の計算明細書には、小規模宅地等の特例を適用して課税価格に参入する価額を計算する。
第12表 農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書 農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地を相続する場合に作成。
※農地を相続する人が2人以上いる場合、1人1枚ずつ作成する。
第13表 債務及び葬式費用の明細書 被相続者の債務や葬式費用の明細を記入、各相続人が負担する債務や葬式費用の合計額を算出。
第14表 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額の明細書 被相続人が亡くなる前3年以内に贈与を受けている場合、相続税の課税対象となる贈与財産価額を計算する。
第15表 相続財産の種類別価額表 第11表、第13表、第14表に記載された内容に沿って、相続される財産の種類別の価額を記入する。

このうち、相続する状況に応じて必要な書類を選択して、申告書を作成します。

詳しい記載方法や申告書の様式については、国税庁のホームページで確認してください。

参考:相続税の申告書の記載例|国税局

参考:相続税の申告書等の様式一覧(平成30年分用)|国税局

5.相続税申告と納付

相続税の申告書の作成が完了したら、実際に申告・納付を行います。

相続税の納付と申告は同時に行う必要はありません。ただし、納付と申告には期限が設定されており、相続の発生を知った日(一般的には、被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内が期限です。

申告や納付の期限が過ぎた場合は、延滞税などのペナルティが課せられる場合があるため、注意が必要です。

申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署となります。また、インターネットによる電子申告も利用可能ですが、その場合は電子申告用に申告書を作成する必要があります。

相続税の納付方法は、以下の方法から選択できます。

  • 金融機関の窓口で支払う
  • クレジットカードで支払う
  • コンビニエンスストアで支払う
  • 税務署の窓口で支払う

相続税申告を自分で行う場合のポイント

相続税の申告は自分で行うことが可能ですが、ルールが細かく決められているため、ある程度の知識が必要になります。

特に、以下に挙げるポイントは理解しておきましょう。

  • 生前贈与も相続税の対象になる
  • 名義預金も相続税の対象になる
  • 税額控除や2割加算の対象になる場合がある
  • 遺産分割が終わってない場合でも期限までに申告する

それぞれ詳しく解説します。

生前贈与も相続税の対象になる

被相続人が亡くなる前に生前贈与を行っている場合も、相続税の対象になります。

生前贈与とは、財産を所有する個人が存命中に財産を無償贈与する契約行為です。

被相続人から相続開始前(被相続人が死亡する前)3年以内に贈与を受けた場合、その財産は相続税の課税価格に加算されます。

相続税の計算において、生前贈与が相続財産とみなされるからです。

また、相続時精算課税制度で贈与された財産は、相続開始前3年以内に限らず課税対象となり、贈与された財産はすべて相続税に加算しなければなりません。

ただし、支払済みの贈与税額と比較して、相続税額の方が低い場合、控除しきれなかった贈与税の還付を受けられます。

なお、贈与の内容を覚えていない場合は、税務署での開示請求で内容を確認可能です。

名義預金も相続税の対象になる

名義預金も相続税の対象になることを理解しておきましょう。

名義預金は、実質的に被相続人の財産と考えられるためです。

名義預金とは、口座の名義人と実際の預金者が異なる預金のことです。

例えば、親が子どもの名義で口座を開設して、子どもの口座に親の収入の一部を入金して管理している場合などが、名義預金に該当します。

被相続人の名義ではないものの、預金の資金源や預金の管理者が被相続人である場合は、名義預金として扱われるほか、名義人が預金の存在を知らない場合や、名義人が贈与を受けた自覚がない場合も、名義預金と判断されることが多いでしょう。

そのため、相続税の申告を自分で行う場合は、名義預金の有無を確認した上で、適切に申告する必要があります。

税務調査によって名義預金の存在が発覚した場合、追加の相続税のほか、過少申告加算税や延滞税などのペナルティを受ける恐れがあるため、注意しましょう。

税額控除や2割加算の対象になる場合がある

相続人の状況によっては、税額控除や2割加算の対象となる場合があることも理解しておきましょう。

税額控除とは、相続人の状況に応じて、相続税額を差し引ける制度です。

未成年者控除や障害者控除など、相続税にはいくつかの控除制度が設けられているため、相続人が該当しないか確認する必要があります。

2割加算とは、相続または遺贈により財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の場合に、相続税額が2割加算されるというルールのことです。

相続人が、被相続人の配偶者や両親、子どもでない場合(被相続人の兄弟や姉妹、甥、姪)、相続税額に2割を上乗せして納税しなければなりません。

これらは、相続税の計算に大きく影響するため、慎重かつ適切に確認・計算する必要があります。

相続税を正しく申告したい場合は、控除や加算があることを押さえておきましょう。

遺産分割が終わってない場合でも期限までに申告する

相続税の申告には、遺産分割協議が必要ですが、協議が完了しない場合でも期限までに相続税の申告は済ませなければなりません。

相続税は期限までに申告できなかった場合のペナルティが重いためです。

相続税は暫定的に申告した後に、修正申告や更正の請求によって正しく申告し直したり、払いすぎた税金が還付されたりします。

遺産分割協議は、相続人への影響が大きいこともあり、スムーズに話し合いが進まないケースがあります。

申告期限を過ぎた場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティを受ける恐れがあります。

遺産分割協議が10ヶ月以内に完了しないと判断した場合は、遺産を分割しないまま暫定的に法定相続分による申告を行いましょう。

申告後に遺産分割協議が完了した場合は、実際の相続分に合わせて再度相続税額を計算し、申告と納税をやり直してください。

相続税の申告と納税をやり直す方法は、以下の通りです。

  • 修正申告(申告期限後に提出した申告額を正しい額に訂正すること)
  • 更正の請求(申告した税額が多いことを知った場合に減額更正を求めること)

申告期限を過ぎることへのリスクが大きいことを理解しておきましょう。

相続税申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内

相続税の申告には、申告期限が設定されています。

申告期限は、相続が始まったことを知った日(一般的には被相続人が死亡したことを知った日)の翌日から10ヶ月以内です。

期限内に申告が完了しない場合、延滞税や無申告加算税が課せられるほか、悪質と判断された場合は重加算税といったペナルティを受けることになるため、注意しなければなりません。

ただし、特殊な状況下で被相続人が死亡した場合は、申告期限が変動するケースがあります。

具体的には以下のようなケースで申告期限は変動します。

  • 事故や災害で死亡した可能性が高いケース
  • 孤独死したケース
  • 失踪したケース

まずは、被相続人が事故や災害で死亡したと認定された場合です。

事故や災害などで死亡した可能性が高いものの遺体を確認できない場合は、調査した官公庁が法律(戸籍法第89条)に基づいて死亡を認定します。これを、認定死亡といいます。

認定死亡によって、戸籍には被相続人が死亡したことが記載されますが、この場合における相続の開始があったことを知った日というのは、「死亡を認定した官公庁が死亡地の市町村長へ死亡の報告を行ったことを相続人が知った日」となります。

次に、被相続人が孤独死した場合です。

孤独死とは、主に1人暮らしの人が誰にも看取られずに死亡することをいいます。

孤独死の場合は、警察から死体発見の連絡を受けた日が、相続の開始があったことを知った日となります。

また、孤独死では戸籍謄本に○月○日~△月△日の間に死亡したといったように、死亡日ではなく死亡期間が記載されます。

この場合、死亡期間後最も遅い日が、相続開始日となります。

ただし、孤独死の場合は相続の開始があった日と、相続の開始があったことを知った日がずれる場合もあるため、相続期限がいつになるのか、税務署や税理士などに確認した方がいいでしょう。

被相続人が失踪した場合も、申告期限が変動します。なお、失踪には以下の2種類があり、それぞれ申告期限が異なります。

失踪の種類 内容 申告期限
普通失踪 行方不明になってから7年間その生死が明らかでない場合に、家庭裁判所に申し立てることにより死亡が認定される。 行方がわからなくなってから7年経過した日が、相続の開始があった日となる。
特別失踪 自然災害などの危難により行方不明となった場合に、災害などの危難が去ってから1年間生死が明らかでないときに、家庭裁判所に申し立てることにより死亡が認定される。 災害などの危機が去った日が、相続の開始があった日となる。

他にも、相続放棄や限定承認を選択する場合は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申請する必要があります。

相続放棄とは、プラスマイナス問わず、被相続人の財産を相続しないことをいいます。また、限定承認は相続財産から借金や債務を精算し、その後に財産が余れば引き継ぐ相続方法です。

相続税申告を自分で行う場合の相談先

相続税申告を自分で行う場合、疑問や不明点が発生した際の相談先があるので紹介します。

相談先 詳細 メリット・デメリット
国税局電話相談センター 税に関する一般的な質問に対する回答を提供。 匿名で気軽に相談でき、予約も不要。
基礎的な相談以外は対応不可、資料を見せて説明・相談できない。相談のたびに担当者が変わる。平日17時までしか利用できない。
所轄の税務署 自信が居住する地域の税務署でも相談可能。税務署の管轄は国税庁のホームページで調べられる。 資料を見せながら相談可能。申告書の書き方、添付書類の説明も受けられる。
一般的な相談しか対応できず、難しい質問に対しては税理士への相談をすすめられる。
予約が取りづらく、30分程しか相談できない。
担当者が相続税に詳しいとは限らない。
税理士会の税務相談センター 税理士会が運営。無料で税務相談に対応。 税理士が面談対応してくれる。
一般的な範囲の質問しかできない。
30分程度しか相談できず、相談日時が限定される。
相続税に強い税理士に相談できるとは限らない。
無料セミナー 金融機関や自治体、非営利団体などが開催。税理士に相談できたり、ワークショップを利用できたりする。 相続税の基礎を学べる。専門性の高い相談ができる可能性がある。
相談できる保証がない。待ち時間があり、相談時間が限られるため、具体的な相談が難しい。
タックスアンサー(国税庁ホームページ) よくある税金質問に対する一般的な回答を調べられる。 インターネット上で好きな時間に調べられる。
疑問を必ず解消できるとは限らない。

他にも、税理士事務所によっては、初回無料相談サービスを提供している場合があります。相続税への対応に強い税理士事務所に相談すれば、自己申告の不明点や疑問を解消できる可能性があるでしょう。

相続税申告が自分でできない場合の依頼相場は、遺産総額の0.5〜1.0%

相続税の自己申告には専門的な知識に加えて、申告書の作成に時間がかかるため、自分で完結させるのが難しい場合もあります。

このような場合は、無理をせずに税理士に対応を依頼した方がいいでしょう。

税理士に相続税の申告を依頼した場合、費用の相場は遺産総額の0.5%~1.0%程度になるのが一般的です。

例えば、遺産相続が5,000万円だった場合、税理士費用の相場は25万円~50万円程度が相場に、遺産総額が1億円だった場合は、50万円~100万円が相場になります。

また、相続税申告の報酬は「基本報酬+加算報酬」という料金体系が採用されているケースが多いです。

この場合、相続税申告のための基本的業務に対する報酬が基本報酬、基本業務以外の追加業務(遺産分割協議書の作成や遺産調査など)に対する報酬が加算報酬となります。

なお、具体的な報酬額は税理士事務所により異なるほか、遺産の内容や相続人の人数、相続税申告の期限までの猶予などで、報酬が前後するケースもあります。

報酬額を公開している税理士事務所もあるため、事前に確認することをおすすめします。

専門家に依頼する場合の費用を安くする方法

相続税の申告は専門家に依頼した方が安心です。しかし、申告を依頼すると費用が発生し、依頼先によっては高額の費用が負担になることもあります。

ここでは、相続税の申告を専門家に依頼する場合に、費用を安く抑える方法を紹介します。具体的な方法は以下の通りです。

  • 複数社から見積もりを取る
  • 相続税専門の税理士に依頼する
  • 財産に不動産がある場合は近隣の税理士に依頼する
  • 財産の分割はあらかじめ決めておく

それぞれ詳しく見ていきましょう。

複数社から見積もりを取る

専門家に依頼する費用を安くするためには、複数社から相見積もりを取ることが大切です。

相見積もりを取ることで、税理士事務所ごとの費用を比較しやすいためです。

また、複数社の見積もりを手に入れれば、税理士費用の交渉が可能になります。他社との価格差や理由を問い合わせれば、抑えた価格を提示してもらえるケースもあるでしょう。

さらに、各社のサービス内容を比較できるのも、相見積もりを取るメリットです。サービスが充実している税理士事務所に相談すれば、状況や希望に合った税理士を見つけやすくなります。

ただし、過度な価格交渉は避けた方が無難です。各社の見積もりを比較した上で、費用の相場は把握し、ある程度安くできるかどうか交渉するにとどめましょう。

費用だけにフォーカスして税理士事務所を選択した場合、ストレスを感じる対応を取られたり、申告に失敗したりする可能性があるため、注意してください。

相続税専門の税理士に依頼する

相続税の申告を専門家に依頼する費用を抑えたい場合は、相続税専門の税理士に依頼することが大切です。

専門の税理士は相続税申告に慣れており、一般的な税理士よりも低コストで高品質なサービスが提供できる可能性が高いためです。

また、相続税の申告は複雑で専門的な知識や経験が必要ですが、専門の税理士は相続分野に特化しており、スムーズで正確な申告が可能です。

ただし、相続税専門の税理士は一般的な税理士と比べて少なく、見つけるのが難しいというデメリットがあります。ポータルサイトや検索エンジンを使って、税理士をうまく見つけられるようにしましょう。

財産に不動産がある場合は近隣の税理士に依頼する

相続する財産に不動産が含まれる場合は、近隣の税理士に対応を依頼した方がいいでしょう。

その地域に詳しい税理士に依頼すれば、不動産の評価や登記情報の取得、地域の特性や規制などに関する知識や情報に詳しいためです。

地域の税務当局や土地登記者とのコネクションがある場合は、手続きもスムーズに完結するほか、面談のスケジュールや資料のやりとりなども簡単に行えます。

さらに、近隣の税理士に依頼すれば、関連する手続きや評価に必要な移動費を節約できるため、税理士費用を抑えられます。

一方、隣県の税理士に依頼した場合、地域の規制や評価基準などの知識が不足している場合があるほか、移動費や宿泊代などの追加費用が発生する可能性があります。

税理士費用をできるだけ抑えたい場合に有効な手段ですので、不動産や自宅から近い税理士事務所に依頼するようにしましょう。

財産の分割はあらかじめ決めておく

相続税の申告を専門家に依頼する費用を抑えたい場合は、財産の分割を決めておくことが大切です。

余計な費用の発生を防げるためです。

遺産分割協議で揉めてしまった場合、お互いが弁護士を立てて争う可能性があります。結果的に多額の費用が必要になるほか、解決までに時間がかかるなど、さまざまなコストがかかってしまいます。

また、遺産分割協議によって相続人間で合意できている場合、協議への対応を税理士に依頼する必要がなくなるため、税理士費用を抑えられます。申告もスムーズに進めてもらえるため、手間や時間の削減にもつながるでしょう。

事前に財産の分割や遺産の処理について明確に決めておくだけで、さまざまなコストを抑えられるのです。

まとめ

今回は、相続税の申告を自分でできるかどうかの判断基準や、手続きの流れについて解説しました。

相続税は自己申告が可能です。ただし、税法は複雑であり、申告までのステップに時間がかかるため、一筋縄にはいかないものと考えておくのが無難です。

相続の状況によっては、自分で申告しようとせず、専門家に対応を依頼するべきケースもあるため、本記事を参考に自分で申告できるかどうかを検討してみてください。