「現金手渡しなら生前贈与の申告をしなくても税務署にばれないのではないか?」と考えている方は多いです。しかし、贈与税の無申告は現金手渡しであっても高い確率で税務署にばれます。
贈与税の無申告がばれた場合、追徴課税や刑事罰のペナルティが課される恐れがあります。ただし、「暦年贈与」や「控除・特例制度」を利用すれば、ペナルティを受けることなく大幅な節税が可能です。
もし、生前贈与に関して何か分からないことや不安なことがあれば、弁護士や司法書士などの専門家へのご相談を検討することをおすすめします。
本記事では、生前贈与の現金手渡しがばれるタイミングや節税方法、贈与時の注意点について解説していきます。正しい節税方法と注意点をよく理解し、ペナルティを受ける事態を防ぎましょう。
生前贈与の現金手渡しはなぜばれる?税務署にばれるタイミングや節税方法
生前贈与の現金手渡しが税務署にばれるタイミング
1年間に110万円を超える生前贈与を受けると、110万円を超える部分に対して贈与税が発生します。
贈与税は自己申告制なので、期限までに税務署へ出向いて贈与税の申告をしなければなりませんが、「現金手渡しで生前贈与をすれば無申告でも税務署にばれないのでは?」と考えている方も多いでしょう。
しかし、現金手渡しであっても下記のタイミングで税務署にばれる可能性があります。
- 「お尋ね」でばれる
- 法定調書でばれる
- 相続発生時にばれる
- 大金の動きでばれる
ここからは、税務署にばれるタイミングについてそれぞれ詳しく解説していきます。
「お尋ね」でばれる
不動産や高級車などの購入、相続など大金が動くことがあった場合、税務署から「お尋ね」というアンケート用紙のような書類が突然送られてくることがあります。
これは、不動産や高級車の購入資金はどのように調達したのか、生前贈与や相続があった場合は正しく申告しているかなどを税務署が確認するために送られてくるものです。
「お尋ね」が届いた場合は、回答用紙に記入して期日までに返送します。
返送しなくてもペナルティが課されることはありませんが、税務調査が行われるリスクが高まります。税務調査は強制的に行われるため、実施が決まった場合に拒否はできません。
また、税務調査で相続税がかかることが判明した場合、控除や特例が利用できなくなったり納税期限を過ぎている場合はペナルティを受けたりする可能性もあります。
「お尋ね」をきちんと返送し、不備や無申告の疑いがなければ税務調査の対象外になる可能性が高いです。そのため、なるべく期日までに返送することをおすすめします。
返送後、税務署は「お尋ね」の内容を確認し、不自然な点が多ければ税務調査を行います。税務署は納税者の年収や保有資産の情報をすべて管理しているため、必要であれば本人や親族、取引先などの金融機関の口座の調査も可能です。
現金手渡しで贈与を受けたり、贈与を受けていないと虚偽の回答をしたりしても、現金を銀行口座から下ろした記録や預けた記録など何らかの痕跡が残るため、税務調査が行われた場合は高い確率でばれます。
法定調書でばれる
「法定調書」とは、法人税法や所得税法などの法律によって、税務署への提出が義務付けられている書類のことです。給与や報酬、生命保険金などの支払いや一定額以上の貴金属の売却などを行った事業者は、税務署に対して法定調書を提出する必要があります。
税務署は事業者が提出した法定調書によって、お金の流れや個人の所得の把握が可能です。そのため、法定調書がきっかけで生前贈与の無申告や過少申告がばれるケースがあります。
特に「生命保険の契約者」「被保険者」「保険金の受取人」がそれぞれ別人の場合、受け取る保険金は贈与税の課税対象になるため注意が必要です。贈与税を申告していなかった場合は、保険会社が提出した法定調書によって贈与税の無申告が税務署にばれることになります。
相続発生時にばれる
相続が発生すると、税務署は相続人が適切に相続税を申告しているか確認するため被相続人の財産調査を行いますが、その過程で生前贈与がばれるケースがあります。
たとえば、被相続人から相続人へ1,000万円の財産が移っていた場合、税務署はその1,000万円が相続と生前贈与のどちらによるものなのか調査します。
税務署は被相続人や相続人、親族名義の銀行口座の預金の流れを過去10年分まで調査できる権限を持っているため、生前贈与の可能性があれば被相続人以外の口座も徹底的に調べ上げます。
現金手渡しの贈与であっても、銀行口座から現金を預けたり下ろしたりする記録など何らかの痕跡が残ることが多いです。そのため、銀行口座を調査されたらほぼ確実に生前贈与の事実がばれます。
もし、調査の過程で過去の生前贈与が判明し、かつ贈与税が無申告だった場合は贈与税や無申告のペナルティが課されるため注意しましょう。
大金の動きでばれる
銀行口座に高額な入金・振込があった場合や本人の収入に見合わない大きな買い物をした場合など、大金が動いたときに税務署は生前贈与が行われた可能性を考えて税務調査を行うことがあります。
もし、税務調査が入った場合は、銀行口座の過去10年分の取引記録や不動産・高級車などの購入履歴、株式の取引履歴などが徹底的に調査されます。
現金手渡しの生前贈与であっても、銀行口座の入出金記録や生前贈与されたお金を不動産や車の購入に使った記録など、何らかの痕跡によって足が付く可能性が高いです。そのため、ほぼ確実にばれると考えておくことをおすすめします。
生前贈与の無申告(未申告)がばれた場合の4種類の罰則
原則、年110万円を超える生前贈与を受けた場合は贈与税がかかるので、贈与を受けた翌年の申告期限までに贈与税を申告する必要があります。
贈与税の納税義務があるにも関わらず、生前贈与を申告しなかった場合は下記のペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。
- 無申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
- 刑事罰
ここからは、上記の罰則についてそれぞれ詳しく解説していきます。
1. 贈与税の申告をしなかったことに対する罰則:無申告加算税
「無申告加算税」とは、贈与税を申告しなかったことに対する罰則です。
1年間(1月1日から12月31日まで)に110万円を超える贈与を受けた場合は、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければなりませんが、期限を超えても申告しなかった場合は無申告加算税が課されるケースがあります。
無申告加算税の税率は、期限を過ぎた後に申告したタイミングによって異なります。
タイミング | 税率 |
---|---|
税務調査の通知が来る前 | 一律5% |
税務調査の通知から、実際に調査が行われるまでの間 | 50万円までの部分:10% 50万円を超える部分:15% 300万円を超える部分:25% |
税務調査が行われた後 | 50万円までの部分:15% 50万円超から300万円以下の部分:20% 300万円を超える部分:30% |
なお、期限までに贈与税の申告をしなかったからといって、直ちに無申告加算税が課されるわけではありません。下記の2つの要件をすべて満たしていれば、無申告加算税は課されません。
- 期限を過ぎてから1ヶ月以内に期限後申告を自主的に行った場合
- 過去5年以内に無申告加算税や重加算税の前歴がなく、かつ納付期限までに税額の全額を納付している場合
申告せずに放置すると、最大30%上乗せされて支払う必要があり余計にお金がかかるため注意が必要です。
2. 悪質な隠蔽などに対する罰則:重加算税
「重加算税」とは、悪質な隠蔽に対する罰則です。前述した無申告加算税は、「申告をうっかりと忘れていた」「贈与税がかかることを自覚していなかった」など、過失によって期限内に申告しなかった場合に課される税です。
しかし、下記のように贈与隠しや脱税などを意図して無申告・過少申告した悪質なケースでは重加算税が課されます。
- 納税義務があることを自覚していながら、意図的に申告しなかった
- 贈与税を少なくする・脱税する目的で過少申告した
- 税務署からの「お尋ね」の文書で虚偽の回答をし、贈与税の申告を免れようとした
重加算税の税率は、無申告か過少申告か、過去5年以内に無申告加算税や重加算税の前歴があるかどうかで異なります。
前歴なし | 前歴あり | |
---|---|---|
無申告 | 40% | 50% |
過少申告 | 35% | 45% |
無申告加算税よりも高い税率を支払うことになるため、贈与税を納める必要があると気づいた時点ですぐに申告しましょう。
3. 納税をしなかったことに対する罰則:延滞税
「延滞税」とは、贈与税や相続税などの税金を期限内に納めなかったことに対する罰則です。延滞税はいわゆる利息のようなもので、納付期限から実際に納付するまでの日数に応じて課されます。
延滞が長引くほど延滞税も高額になる仕組みで、延滞している期間によって下記のように変わります。
延滞期間 | 税率 |
---|---|
納付期限の翌日から2ヶ月以内 | 年7.3%(2022年1月1日から12月31日までは2.4%) |
納付期限の翌日から2ヶ月超 | 年14.6%(2022年1月1日から12月31日までは8.7%) |
納付期限の翌日から2ヶ月を過ぎると延滞税の税率が大幅に上がるため、延滞してしまった場合は早めに納付しましょう。
4. 脱税など悪質な場合の罰則:刑事罰
脱税など重加算税が課されるような悪質なケースでは、加算税のペナルティだけでなく下記のような刑事上の罰が科される場合もあります。
刑事罰が科されるケース | 罰則 | 罰則の内容 |
---|---|---|
理由なく申告していなかった場合 | 単純無申告犯 | 1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金 |
故意に申告をしなかった場合 | 単純無申告ほ脱犯 | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科 |
虚偽による過少申告・無申告の場合 | 虚偽過少申告ほ脱犯・虚偽無申告ほ脱犯 | 10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科 |
納付予定だった税額を納付しなかった場合 | 不納付犯 | 10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科 |
刑事罰によるペナルティは非常に重いので、脱税を意図した過少申告・無申告は絶対にやめましょう。
贈与税の申告の時効は6年
年に110万円を超える贈与を受けた場合は、翌年の確定申告期限までに贈与税を申告しなければなりません。しかし、贈与税の申告には時効があり、原則贈与を受けた日から6年過ぎた贈与については無申告や過少申告があっても加算税を課されることはありません。
ただし、「贈与税の支払いから逃れるためにわざと申告しなかった」というように、無申告や過少申告が「偽りその他不正の行為」に該当する場合は時効が7年に延長されます。
また、贈与先の銀行口座が口座の名義人と実際のお金の所有者が異なる「名義預金」とみなされた場合は、そもそも贈与自体が成立しないため、当然ながら贈与税の時効もありません。名義預金とみなされた贈与は、贈与者が亡くなった後に相続財産に加算されることになります。
現金で生前贈与を行う場合の注意点
現金手渡しの生前贈与の注意点としては、「贈与者と受贈者の双方が合意した上で贈与を行った」という証明が難しく、税務署に贈与の事実を否認される可能性がある点が挙げられます。
もし、相続税対策として生前贈与を行っていた場合、贈与の事実が否認されると、相続財産に贈与した財産が含まれて相続税が増える恐れがあります。そうならないためにも、現金手渡しで生前贈与を行う場合は下記の点に注意して贈与を行いましょう。
- 否認されないよう必ず贈与契約書を作成しておく
- 事実を残すため現金のままではなく口座に入金する
- 相続開始前の7年以内に行われた贈与は相続財産として加算される
ここからは、上記の注意点についてそれぞれ詳しく解説していきます。
否認されないよう必ず贈与契約書を作成しておく
現金手渡しで生前贈与があったことを証明するためにも、贈与契約書は必ず作成しましょう。贈与は贈与者と受贈者の双方が贈与に合意していないと成立しません。
現金手渡しでは両者の合意を立証するのが難しいため、税務署に贈与の事実を否認される可能性が高いです。
そこで、贈与契約書を作成してお互いに保管しておくことで、現金手渡しでも贈与の事実を証明しやすくなります。贈与契約書には、下記の項目を必ず記載してください。
- いつ贈与を行ったのか(贈与を行った日付)
- 何をいくら贈与したのか(贈与した財産と金額)
- どんな方法で贈与したのか(手渡しや振込など贈与の方法)
- 誰が贈与したのか(贈与者の氏名と住所)
- 誰が贈与を受けたのか(受贈者の氏名と住所)
贈与者と受贈者の氏名と住所は手書きにし、印鑑も押しておきましょう。贈与契約書は同じ内容のものを2通作成し、2通がセットであることを証明するために割印を押した上で、贈与者と受贈者がそれぞれ1通ずつ保管してください。
これでほぼ確実に贈与の事実を立証できますが、贈与契約書の立証力をさらに高めるなら、贈与契約書を公証人役場に持って行って確定日付を取るのが有効です。確定日付とは、変更できない確定した日付のことであり、取得すれば確定日付の日には贈与契約書がすでに存在していたことを証明できます。
ただし、「毎年100万円を10年間贈与」などと記載すると定期贈与の対象となる可能性があるため注意が必要です。定期贈与とは、一定期間財産を贈与し続けることであり、対象となると贈与期間に受け取る合計額に贈与税が課税されます。
たとえば、毎年100万円を10年間贈与と記載すると、贈与税対象外の100万円ではなく、100万円×10年間の1000万円から控除額の110万円を引いた890万円が課税対象となります。そのため、契約書の書き方には注意が必要です。
また、定期贈与に該当するのを防ぐために毎年贈与契約書を作っていても、契約書と異なる形で贈与していた場合は受け取った金額が贈与税の課税対象となります。契約書には100万円の贈与とあっても、実際に200万円受け取っていれば200万円分の贈与税がかかるので注意が必要です。
もし、贈与契約書の作成で何か不安なことがあれば、弁護士や司法書士などの専門家への相談を検討してみてください。
事実を残すため現金のままではなく口座に入金する
前述したように、現金手渡しの生前贈与は贈与の事実を立証するのが難しいため、贈与で受け取った現金はなるべく銀行口座に入金しましょう。できれば、現金手渡しではなく銀行口座へ直接振り込むことをおすすめします。
銀行口座に直接振り込む方法なら、贈与者の銀行口座から受贈者の銀行口座にお金が移動した記録が残るため、贈与があった事実を立証しやすくなります。
なお、口座名義人は受贈者本人でも、本人が存在を知らない銀行口座に入金した場合は「名義預金」とみなされるため注意が必要です。そのため、普段から受贈者本人が使用している本人名義の銀行口座を選択してください。
相続開始前の7年以内に行われた贈与は相続財産として加算される
生前贈与をしても、相続開始前の7年以内に贈与した財産は、相続税の計算や遺産分割の基準となる相続財産に加算される点に注意が必要です。
たとえば、被相続人が亡くなった時点での財産が3,000万円で、亡くなる5年前に1,000万円を贈与していた場合、この1,000万円は3,000万円に加算されるため、合計4,000万円を基準に相続税の計算や遺産分割が行われます。
もともとは相続開始前の3年以内の贈与が対象でしたが、2023年度(令和5年度)の税制改正により、3年から7年に延長されました。この税制改正により、2024年(令和6年)1月1日に受けた贈与から徐々に適用年数が延長され、2031年には相続開始前7年以内のルールが適用されます。
ただし、延長された4年の間に贈与された分については、合計100万円まで相続財産に加算されないという軽減措置が設けられているほか、基礎控除もあります。基礎控除額は下記の式で算出可能です。
算出された金額に相続税の合計が収まっていれば相続税はかかりません。
生前贈与における贈与税を節税する方法
生前贈与における贈与税を節税する方法としては、下記の2つあります。
- 暦年贈与の基礎控除枠(年間110万円まで)を利用する
- 4種類の控除・特例を利用する
ここからは、上記の節税方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。
暦年贈与の基礎控除枠(年間110万円まで)を利用する
「暦年贈与」とは、年間110万円までの基礎控除枠を利用して毎年贈与を行う節税方法の1つです。
年110万円以内の贈与であれば贈与税はかかりません。一度に高額な贈与を行うのではなく、長期間にわたって非課税枠内で毎年贈与を行うことで贈与税を節約しつつ高額な贈与が可能になります。また控除を受けられる対象者に条件はなく、基本的に全員が受けられます。
注意点として、暦年贈与を行う場合は贈与の都度に必ず贈与契約書を作成してください。贈与契約書がないと、暦年贈与が「定期贈与」とみなされ、年間110万円以下の贈与であっても贈与税が課税される恐れがあるためです。
定期贈与は最初から合計額を贈与する意図があったとみなされます。そのため、毎年非課税枠内で贈与していたとしても、合計額から非課税枠の110万円を引いた残りの贈与額に対して贈与税が課税されることになります。
定期贈与を疑われないために、「贈与はたまたま不定期に行われただけで、定期贈与ではない」ということの立証が必要です。有効な手段の1つとして贈与の都度に贈与契約書を作成する方法があります。
ただ、毎年同じ日に同じ金額を贈与していた場合は「定期贈与」だとみなされる可能性があるため、毎年贈与するタイミングをずらし、毎年異なる金額で贈与するようにしましょう。
4種類の控除・特例を利用する
贈与の目的や贈与者・受贈者の関係性によっては、下記の控除・特例が利用できる場合があります。
- 贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)
- 教育資金の贈与税の非課税措置
- 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置
- 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
これらの控除・特例を利用すれば、贈与税を大幅に節税可能です。ここからは、上記の控除・特例についてそれぞれ詳しく解説していきます。
1. 贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)
「贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)」とは、夫婦間で下記のすべての要件を満たす贈与が発生した場合、基礎控除の110万円に加え、最大2,000万円まで非課税になる制度です。
- 居住用不動産、またはその購入資金の贈与であること
- 夫婦の婚姻期間が20年以上経過した後の贈与であること
- 贈与が発生した年の翌年の3月15日までに居住用不動産に住んでおり、その後も住む予定があること
おしどり贈与を利用すれば、自宅や自宅の購入資金の贈与でかかる贈与税を大幅に節税できます。また、被相続人が亡くなる前の7年以内に行った生前贈与は相続財産に持ち戻して相続税が計算されますが、おしどり贈与は相続財産への持ち戻しが行われません。
なお、おしどり贈与を利用する場合は贈与を受けた翌年の申告期限までに必要な書類を用意し、税務署で贈与税の申告を行う必要があります。配偶者控除によって贈与税がゼロになったとしても必要なので忘れずに行いましょう。
非課税の対象となる贈与 | 婚姻20年以上の夫婦間で贈与した居住用不動産または居住用不動産の購入資金 |
---|---|
非課税の限度額 | 最大2,000万円まで |
制度の期限 | なし |
贈与税の申告 | 贈与税がかからない場合でも必要 |
参照:国税庁|No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
2. 教育資金の贈与税の非課税措置
「教育資金の贈与税の非課税措置」とは、両親や祖父母などの直系尊属が30歳未満の子供や孫へ教育資金を贈与した場合、受贈者1人あたり最大1,500万円まで非課税になる制度です。
教育資金の対象は幼稚園や小中高、大学など各種学校の入学金や授業料、通学の交通費、給食費、寮費、修学旅行代など多岐にわたります。
ピアノや水泳、英会話、塾など学校以外の教育資金も対象になりますが、この場合は500万円までしか控除されません。対象期間は2013年から2026年3月31日までで、期間内に行われた教育資金の贈与のみ適用されます。
なお、贈与税が非課税の範囲であれば贈与税の申告は不要ですが、金融機関との契約が必要になります。
非課税の対象となる贈与 | 直系尊属(両親や祖父母など)が18歳以上50歳未満の子供や孫に贈与した結婚・子育て資金 |
---|---|
非課税の限度額 | 最大1,500万円まで(学校以外に使う教育資金は500万円まで) |
制度の期限 | 2026年12月31日まで |
贈与税の申告 | 不要(金融機関との契約が必要) |
参照:国税庁|No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
3. 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置
「結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置」とは、両親や祖父母などの直系尊属が子供や孫に結婚・子育て資金を贈与した場合、一定額まで非課税になる制度です。
非課税になる限度額は受贈者1人あたり最大1,000万円までで、このうち結婚関係の費用(挙式費用や衣装代、新居の転居費用など)に充てられるのは300万円までです。
また、非課税の対象となる受贈者の年齢は18歳以上(贈与が2022年3月31日以前の場合は20歳以上)、50歳未満であることが条件です。
ただし、贈与が行われる前年の受贈者の所得が1,000万円を超える場合は、年齢の条件を満たしていても非課税措置は適用されません。
また、この制度の対象期間は2015年から2025年3月31日までで、この間に行われた結婚・子育て資金の贈与のみ適用されます。なお、贈与税が非課税の範囲であれば贈与税の申告は不要ですが、教育資金贈与の非課税措置と同様に金融機関との契約が必要になります。
非課税の対象となる贈与 | 直系尊属(両親や祖父母など)が18歳以上50歳未満の子供や孫に贈与した結婚・子育て資金 |
---|---|
非課税の限度額 | 最大1,000万円まで(結婚関係の費用は最大300万円まで) |
制度の期限 | 2025年12月31日まで |
贈与税の申告 | 不要(金融機関との契約が必要) |
参照:国税庁|No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
4. 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」とは、両親や祖父母などの直系尊属が子供や孫に住宅の購入資金を贈与した場合、一定額まで非課税になる制度です。
非課税になる限度額は、質の高い住宅の場合は最大1,000万円まで、それ以外の一般住宅の場合は最大500万円までです。質の高い住宅とは、省エネ性や耐震性、バリアフリー性の基準を満たす住宅のことを指します。
また、非課税の対象となる受贈者の年齢は18歳以上(贈与が2022年3月31日以前の場合は20歳以上)です。制度の期限はもともと2023年12月31日まででしたが、3年間の延長が決まったため、2025年12月31日までならこの制度が利用できます。
なお、この制度を利用するには贈与金額が非課税の範囲内であっても、贈与を受けた翌年の申告期限までに必要な書類を用意し、税務署で贈与税の申告を行う必要があります。
非課税の対象となる贈与 | 直系尊属(両親や祖父母など)が18歳以上の子供や孫に贈与した住宅取得等資金 |
---|---|
非課税の限度額 | 質の高い住宅:最大1,000万円まで 一般住宅:最大500万円まで |
制度の期限 | 2025年12月31日まで |
贈与税の申告 | 贈与税がかからない場合でも必要 |
参照:国税庁|No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
贈与税の申告期限は贈与をされた翌年の2月1日から3月15日まで
贈与税がかかる場合や一部の非課税制度を利用する場合は、贈与をされた翌年の2月1日から3月15日までに税務署で贈与税の申告・納税を行う必要があります。
前述した4つ非課税制度のうち、贈与税が非課税の範囲であっても贈与税の申告が必要な制度は下記の通りです。
- 贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)
- 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
期限までに申告・納税を行わないと、非課税制度の非課税枠が適用されなかったり、無申告加算税や延滞税など加算税のペナルティが課されたりする恐れがあるのでご注意ください。
贈与税を期限内に納付できない場合はすぐに申告し「延納」可否を確認する
もし、贈与税を期限内に納付するのが難しい場合は、申請期限までに「延納申請書」と「担保提供関係書類」を税務署に提出することで延納申請が可能です。
ただし、延納制度を利用するには下記の要件をすべて満たす必要があります。
- 贈与税の金額が10万円を超えていること
- 事情があって金銭で一括納付するのが困難であること
- 延納税額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ延滞期間が3年以内であれば不要)
延納が認められた場合は最長5年まで延納が可能ですが、延納税額分には年率6.6%の利子税が課されるのでご注意ください。
まとめ
税務署は強力な調査権限を持っているため、現金手渡しの生前贈与であってもほぼ確実にばれます。
もし、無申告や過少申告がばれた場合は、加算税や刑事罰のペナルティが課される恐れがあるので、必ず期限までに正しく贈与税を申告するようにしましょう。
また、暦年贈与や控除・特例制度を活用すれば、ペナルティを受けることなく合法的に贈与税を大幅に節税できます。その際は、今回ご紹介した注意点や条件をチェックした上で贈与を行いましょう。
もし、生前贈与に関して何か分からないことや不安なことがあれば、弁護士や司法書士などの専門家へのご相談を検討してみてください。