印鑑証明書は、重要な契約や手続きの際に、本人の実印が押印されたことを公的に証明するための書類であり、相続手続きのなかでもさまざまな場面で必要となる場合があります。
- 相続登記(法務局)
- 相続税の申告(税務署)
- 預金口座の解約・名義変更(金融機関)
- 相続した自動車などの名義変更
- 株式など有価証券の名義変更(証券会社)
- 死亡保険金の請求(保険会社) など
これらの場面で必要となる印鑑証明書ですが、提出先によって有効期限があるケースとないケースがあります。
金融機関に提出する場合、通常3ヶ月~6ヶ月以内のものが必要である一方、法務局や税務署に提出する印鑑証明書に有効期限はありません。
また、複数の提出先で印鑑証明書が必要な場合、一定の手続きを踏むことで原本を還付してもらうことができるため、1つの印鑑証明書を使いまわすことも可能です。
印鑑証明書は、市区町村の役所あるいはマイナンバーカードがあればコンビニで取得することができますが、印鑑登録をまだしていない場合、相続手続きに先立って準備しておいたほうがよいでしょう。
この記事では、相続手続きのなかで印鑑証明書が必要となるケースから取得方法、原本を還付してもらうための手続きなどについて解説します。
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基本的には相続手続きで必要な印鑑証明そのものに有効期限はない
相続手続きで必要となる印鑑証明書について、有効期限はなく、発行から3ヶ月以上経過している場合でも利用できます。
例えば、印鑑証明書が必要となるケースとして、相続した不動産の名義を亡くなった人(被相続人)から相続人に変更する相続登記をするケースがあります。
このとき、法務局で相続登記を申請する際に添付する遺産分割協議書に押印した相続人全員分の印鑑証明書が必要ですが、印鑑証明書の有効期限はありません。
不動産売買の取引などでも、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書が求められるケースはありますが、そもそも印鑑証明書の効力としては有効期限はありません。
ただし、提出先によって、印鑑証明書の信用性を担保するために3ヶ月や6ヶ月以内などの期限を求められている場合は、それにあわせたものを提出しなければなりません。
なお、相続手続きで、被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本などが必要となるケースにおいても、有効期限はなく使用できます。
ただし、相続人の戸籍謄本については、相続開始時点で生存していたことを証明するため、被相続人の死亡日前に発行されたものが必要です。
印鑑証明の提出先によって有効期限を求められる場合がある
相続手続きのなかで、印鑑証明書を提出する先によって有効期限を求められる場合があります。
- 金融機関の場合:3ヶ月以内または6ヶ月以内
- 法務局・税務署の場合:期限は求められない
金融機関の場合:3ヶ月以内または6ヶ月以内
相続人などが被相続人の預金口座の払い戻しの手続きを行う場合、遺言書や遺産分割協議書の有無などで必要書類は変わりますが、印鑑証明書が必要となることがあります。
このとき、金融機関に印鑑証明書を提出する場合、有効期限を3ヶ月または6ヶ月としている金融機関が多い傾向です。それぞれの金融機関によって定められた有効期限内の印鑑証明書を準備する必要があります。
また、相続人が未成年の場合、親権者または特別代理人の印鑑証明書が必要となる場合があるため、金融機関に確認のうえ準備しましょう。
なお、戸籍謄本についても、有効期限がないものから3ヶ月以内の指定があるものまで金融機関によって異なります。
法務局・税務署の場合:期限は求められない
法務局や税務署に提出する印鑑証明書には有効期限は求められません。
つまり、相続登記や相続税の申告手続きで添付する印鑑証明書は取得日に関係なく利用することができます。ただし、取得してからかなり時間が経過している証明書や日焼けして読みにくくなっている証明書は受け付けてもらえない可能性があります。
相続時に印鑑証明が必要になるケースは6つ
相続時に印鑑証明書が必要となる6つのケースについて解説します。
- 1.相続した不動産を登記するとき
- 2.相続税を申告するとき
- 3.預金相続の手続きをするとき
- 4.相続した自動車の名義変更をするとき
- 5.株や証券信託の相続手続きをするとき
- 6.死亡保険金を請求するとき
1.相続した不動産を登記するとき
相続した不動産の相続登記をするときに、印鑑証明書が必要となる場合があります。
相続登記とは、被相続人から不動産を承継した相続人に名義人を変える所有権移転登記の手続きです。
不動産を誰が承継するかは、遺言や相続人による遺産分割協議、あるいは法定相続分によって決まります。
このうち、遺産分割協議によって相続人を決めた場合、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印で押印します。そして、遺産分割協議を登記原因として相続登記を申請する際に、相続人全員分の印鑑証明書が必要となるわけです。
なお、法務局に提出する印鑑証明書に有効期限はありません。
2.相続税を申告するとき
一定以上の財産を相続し、相続税の申告が必要な場合、印鑑証明書が必要となります。
相続税の申告には、相続人であることを証明するための書類が必要です。遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議書とあわせて相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
税務署に提出する印鑑証明書の有効期限はありません。
3.預金相続の手続きをするとき
被相続人の預金口座の払い戻し、あるいは相続人に名義変更する際、印鑑証明書が必要となります。
このとき、遺言書や遺産分割協議書の有無、あるいは家庭裁判所による調停調書や審判書の有無で必要書類は変わります。
印鑑証明書を金融機関へ提出する場合、有効期限を6ヶ月としている場合が多いため、遺産分割協議書の作成から預貯金の手続きまでに期間があくと、印鑑証明書を取り直さなければならないケースもあります。
4.相続した自動車の名義変更をするとき
相続財産に含まれる自動車やバイクの名義を相続人に変更する際に、印鑑証明書が必要となります。
相続人による遺産分割協議で車を引き継ぐ相続人を決めれば、遺産分割協議書に、車名や登録番号、型式、車台番号などを記載します。
名義変更手続きでは、新しい所有者となる相続人の実印と発行から3ヶ月以内の印鑑証明書が必要です。
5.株や証券信託の相続手続きをするとき
被相続人の財産に株式や投資信託など有価証券が含まれる場合、名義変更の手続きで印鑑証明書が必要となります。
証券会社や信託銀行によって異なりますが、一般的には、3~6ヶ月以内に発行された印鑑証明書が求められます。
6.死亡保険金を請求するとき
被相続人が死亡保険に加入しており、死亡保険金を請求するときに、受取人の印鑑証明書が必要となる場合があります。
保険会社によって異なりますが、発行から3ヶ月以内のものを求められることが多い傾向です。
印鑑証明書の発行方法
では、印鑑証明書はどのように取得すればよいのでしょうか、発行方法について解説します。
各市区町村の役所で発行
役所の窓口で発行する場合、印鑑登録証明書の交付請求書に必要事項を記載し、窓口に提出します。その際に必要となる書類は以下のものです。
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)もしくはマイナンバーカード
- 本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)
- 証明書発行手数料(300円)
印鑑登録証(印鑑登録カード)は、印鑑証明書を発行する際に必要となるもので、市区町村の役場で印鑑登録をしたときに発行されるカードです。
役所に登録された実印が本物であることを公的に証明する書類は印鑑証明書であり、印鑑登録証自体には公的な証明力はありません。
コンビニで発行
コンビニでの印鑑証明書の発行に対応している市区町村であれば、コンビニに設置されているマルチコピー機で発行手続きをすることができます。
ただし、コンビニで手続きする場合、印鑑登録書ではなく、マイナンバーカードを活用しなければなりません。手数料は市区町村で異なりますが、窓口で請求するより安いカースが多いうえ、利用できる時間帯も窓口のように平日の昼間などに限られません。
印鑑登録がまだの方は相続手続きの前に印鑑登録をしよう
印鑑証明書は、印鑑登録しなければ発行することはできません。まだの人は、相続手続きの前に印鑑登録の手続きをしたほうがよいでしょう。
印鑑登録の手続きは、住民登録する市区町村の窓口で行い、登録には、登録する印鑑と運転免許証やパスポートなど顔写真付きの身分証明書が必要です。
本人が手続きを行う場合は、申請した日に手続きは完了します。
代理人が印鑑登録をする際は即日登録ができないため注意
本人の代わりに親族などが代理で印鑑登録することもできますが、本人が手続きする場合と異なり、次のような手続きが必要です。
- 本人が印鑑登録の委任状を作成
- 代理人が窓口で委任状を提出
- 役所から照会書が本人の自宅宛てに郵送
- 照会書に必要事項を記載し役所へ提出
印鑑登録を代理人に委任する委任状を作成し、役所の窓口に提出します。提出から数日程度で役所から照会書が郵送されてきますので、必要事項を記載のうえ、身分証明書(原本)とあわせて、役所の窓口で照会書を提出します。
本人が手続きする場合と比べ、2度役所の窓口に行かなければならず、また、手続き完了まで数日間要するなど、手間と時間がかかる点には注意が必要です。
【印鑑証明書を使いまわしたい方へ】原本を還付してもらう方法
相続手続きのなかで、印鑑証明書を複数の窓口に提出しなければならないケースもあります。このような場合に、原本還付してもらい印鑑証明書を使いまわす方法について解説します。
法務局
相続登記の際に添付する印鑑証明書の原本還付を受けるには、登記の申請人が印鑑証明書の原本の謄本(コピー)を作成のうえ、その謄本に「原本に相違ない」旨の文言を付記することで原本の返還を請求できます。
登記官は、原本によって登記申請書の審査をし、原本と謄本が一致していることを確認のうえ、原本を申請人に返還します。
税務署
相続税の申告の際に添付する印鑑証明書は原本が必要です。
ただし、印鑑証明書のコピーを用意し、「原本に相違ありません」という文言に住所 氏名を記載し、押印したものを提出することで原本還付を受けることができます。
銀行
金融機関の場合、印鑑証明書の原本を提出すれば、コピーをとったうえで原本を返却してもらえます。郵送で手続きする場合は、郵送で原本を返却してくれます。
証券会社
証券会社においても、窓口に原本を提出後、コピーをとって原本を返却してもらえます。郵送で手続きする場合は、郵送で原本を返却してくれます。
まとめ
印鑑証明書は、相続手続きにおいて、さまざまな場面で必要となる書類です。
法務局や税務署などでは印鑑証明書の有効期限は求められませんが、金融機関など提出先によって有効期限内の印鑑証明書が必要となります。
相続手続きを円滑に進めるためにも、提出先に必要な印鑑証明を確認しておくとよいでしょう。
印鑑証明書は市区町村の役場の窓口で取得できるほか、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することも可能です。まだ印鑑登録をしていない人は、早めに住所地の市区町村で印鑑登録の手続きしておいたほうがよいでしょう。
また、相続手続きのなかで、印鑑証明書を複数の窓口で提出しなければならない場合、原本還付してもらうこともできます。ぜひ参考にしてください。
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