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銀行口座を死亡後そのままにした場合の影響は?手続き方法も併せて解説

銀行口座を死亡後そのままにした場合の影響は?手続き方法も併せて解説

死亡した人の口座をそのままにしておいても、違法にはなりません。ただ、一定年数そのままにしておくと、銀行側で休眠口座扱いされてしまいます
そのため、基本的には早めに遺産分割協議を行い、預金の相続人を決めた方が良いでしょう。

ただし、相続放棄を検討する場合は一切手を付けず、そのままにしておくべきです。個人の銀行口座に手を付けてしまうと、相続放棄ができなくなってしまうからです
また、死亡した人の口座から残高を引き出すためには、時間やコストがかかります。もし口座残高が非常に少額なのであれば、引き出すための労力に見合わない可能性があるので、そのままにしておく方が良いでしょう。

個々の状況に応じて、口座をそのままにしておくべきか判断しましょう。

死亡した人の銀行口座をそのままにしても法的罰則はない

意外に思われるかもしれませんが、死亡した人の銀行口座をそのまま放置しても法的に問題はありません

銀行口座の名義人が死亡すると、金融機関がそのことを把握した時点で口座は凍結されて使えなくなります。口座が凍結されるのは、名義人の財産を守る(不正な引き出しを防ぐ)ためです。
故人の預貯金は遺産相続の対象であるため、銀行は正しい残高を確定させる必要があります。

口座凍結のタイミングは死亡届の提出と同時、と誤解されることもありますが、金融機関と役所は連携していないためそのようなことはありません。
金融機関は、遺族から名義人死亡の連絡を受けた時に、名義人の死亡の事実を把握します。

遺族が金融機関に死亡の事実を知らせることは2024年現在、法的義務ではありません。
しかし、故人の口座残高は相続財産になります。相続財産を調査した結果、相続税申告の対象になる場合は手続きをしないと罰則を受けてしまうので、必ず手続きを行いましょう。

死亡した人の銀行口座をそのままにした場合の影響

死亡した人の銀行口座をそのままにしておくと、数次相続発生によって相続手続きが複雑になることがあります。数次相続についてはこのあと説明します。
また、一定年数以上そのままにすると銀行口座が消滅することもあります。

相続手続きが複雑になる

もし死亡した人の銀行口座をそのままにする場合、数次相続が発生するリスクを考えなければなりません。
数次相続とは、相続人が遺産分割が終わる前に死亡したことにより、新たな相続(二次相続)が発生した状態をいいます。
遺産分割は、相続人の数が多いほど複雑になりがちです。数次相続によって関係者が増えれば、相続手続きはさらに難航するでしょう。
そのような事態を避けるためにも、銀行口座などの財産は長期間そのままにしないようにしましょう。

銀行口座が消滅する可能性がある

銀行口座は放置してから5年が経過すると消滅時効にかかります。
信用金庫の場合は放置から10年で消滅時効にかかります。(民法166条)

消滅時効にかかるといっても、時効を迎えたとたん自動的に預金が消滅するわけではありません。これは、銀行や信用金庫が時効の援用をする、つまり「時効なので預金の払戻しはしません」という主張をしなければ成立しないためであり、実際に時効の援用が行われることはまずありません。
とはいえ、いったん消滅時効にかかった口座が遺産に含まれる場合は、財産調査や遺産分割の際に二重三重の手間を要することになりますので注意しましょう。

(参考)政府広報オンライン

(参考)全国銀行協会:預金債権の消滅時効について

(参考)民法第166条:債権等の消滅時効

死亡した人の銀行口座をそのままにしたほうがいいケース

相続放棄する場合や、口座残高が少額の場合、遺産分割協議が長引きそうな場合などは、死亡した人の銀行口座はそのままにしておいたほうがいいでしょう。

相続を放棄する場合

死亡した人の預金を一部でも引き出してしまうと、相続放棄(相続権を手放し、一切の財産を相続しないという選択)ができなくなります。
死亡した人の財産に手をつけた時点で、故人の相続財産をすべて相続する「単純承認」が成立してしまうためです。
なお、財産に手をつけてしまうと相続放棄だけでなく、限定承認(プラスの財産の範囲内でならマイナスの財産を相続するという選択)も認められなくなります。

残高が少額の場合

わざわざ引き出すほどでもない残高の場合は、そのままにしておいてもいいでしょう。
死亡した人の銀行口座からお金を引き出したり、解約したりする場合は、金融機関にもよりますが原則として銀行口座のある支店の窓口に出向かなければなりません。
相続の状況によっても異なりますが、揃えなければならない書類も多いです。
実際の残高と、引き出すのに必要な労力やコストを比較して、そのままにするかどうか検討しましょう。

相続人間での合意が難しい場合

相続人同士の関係が良くない、または相続人の人数が多いなどの理由で遺産分割協議が進みづらい状況では、銀行口座はそのままにしておくべきです。
遺産分割協議に決着が着くまで、相続人全員が銀行口座に一切触れていない状態を維持すれば、相続財産の保全がかないます。
事前に誰がいくら引き出しているから・・・というややこしさがなく、スムーズに話を進められるでしょう。

相続手続き前に銀行口座の預金を引き出す方法

遺産分割協議がまとまる前に、死亡した人の銀行口座からどうしても預金を引き出したい場合もあるでしょう。
その場合は、仮払い制度や仮処分という方法で、正式に預金を引き出すことができます。生前であれば、本人の意思で引き出しておくことも検討できるでしょう。

仮払い制度

仮払い制度とは、「相続開始時の預金残高×1/3×法定相続分」か「150万円」のいずれか低い額を、故人の口座から出金できる制度です。

他の相続人の同意は必要なく、単独での手続きが可能です。

また、仮払い制度を利用するために基本的に必要な書類は、以下の3点です。
金融機関によっては、他に追加書類を求められる場合があります。

・死亡した人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生時から死亡時まで連続したもの)
・相続人全員の戸籍謄本、または全部事項証明書
・払い戻しを希望する人の印鑑証明書

仮払い制度において注意しなければならないのは、この制度を利用することによって単純承認したとみなされることです。
前述の通り、死亡した人の財産に手を付けた時点で、相続人として名乗りを挙げたことになります。
不本意な相続にならないよう、仮払い制度を利用したい場合はまず死亡した人の財産調査を行い、プラスの財産がマイナスの財産より多いことを確認しましょう。

仮処分

仮払い制度を利用しても必要な額のお金が手に入らない場合は、家庭裁判所に仮処分の申し立てができます。
これは家庭裁判所の審判を経て決定されるものなので、仮払い制度よりも利用のハードルが高く、いくつか条件が付けられています。

まず、すでに遺産分割についての調停を申立てていなければなりません。
また、本当に必要な支出のためにしか認められません。例えば、生前から家計を共にしていた家族の生活費を支払うため、死亡した人の葬儀代に充てるためなど、緊急性があり合理的説明のつく理由でなければ認められません。
払戻しの上限額についても、法定相続分に相当する金額とされています。当然ですが、共同相続人の利益を侵害しない範囲で行使することが前提の制度です。

仮処分を申し立てるために基本的に必要な書類は、以下の2点です。

・家庭裁判所の審判書謄本(確定表示がない場合は、審判確定証明書も必要)
・払戻しを希望する人の印鑑証明書

(参考)全国銀行協会:遺産分割前の相続預金の払戻し制度

生前に引き出す

近い将来に相続が開始しそうな状況であれば、本人の同意を得たうえで生前に預金を引き出すことも検討しましょう。
そして、もう使わない銀行口座は解約して整理しておくこともできます。相続対象になる銀行口座の数が少なければ、相続人の負担も軽減されます。

ただし、相続開始後のトラブルを防ぐため、多額の預金を引き出して使途の説明がつかないような乱費をしたり、相続人名義の銀行口座に移すようなことは避けましょう。
また、引き出した預金からまとまった額を使いたい時は、使途の分かる書類を保管しておきましょう。また、生前のうちから相続人となる人に多額の預金を渡してしまうと、将来相続が発生した時に贈与や遺留分に関しての問題が発生する可能性があるため、控えましょう。
あくまでも本人の財産として、タンス預金として保管するのが無難でしょう。現金の状態であれば遺産としても分割しやすく、手続きが簡単で済みます。

銀行口座の相続手続き方法

相続対象の銀行口座を把握後に、以下の手順で手続きを進めましょう。
1.取引のある銀行に連絡
2.必要書類を準備する
3.書類の提出
4.払戻し

1. 取引銀行に連絡

まずは、銀行口座の名義人が亡くなったことを取引金融機関に連絡し、指示を仰ぎます。
金融機関によっては、死亡連絡専用のフリーダイヤルやWEB上のフォームを用意しているところもありますので、調べてみましょう。
記事の冒頭で触れた通り、遺族からのこの連絡を受けると同時に、死亡した人の口座は凍結されます。

2. 必要書類の準備

必要書類は、遺言書がある場合、遺産分割協議書がある場合、遺言書も遺産分割協議書もない場合で変わってきます。
ここからは、3つのケースにおける必要書類の例をご紹介します。
なお、金融機関によって必要書類に若干の違いがありますので、詳しくは取引金融機関に確認してください。

  • 遺言書がある場合
  • 遺産分割協議書がある場合
  • 遺言書も遺産分割協議書もない場合

必要書類

遺言書がある

遺産分割協議書がある

遺言書も遺産分割協議書もない

遺言書

   

遺産分割協議書

 

 

検認済み証明書

   

故人の戸籍謄本または全部事項証明書

相続人の戸籍謄本

相続人全員の印鑑証明書

相続手続き依頼書

故人の預金通帳やカードなど

3. 書類の提出

取引金融機関が定める書式の相続手続依頼書に記入し、必要書類を揃えたら提出しましょう。
大抵の場合、郵送での提出が可能です。
なお、戸籍謄本などの原本を返してほしい場合は、提出時に伝えておけば後で返してくれます。

4. 払戻しなどの手続き

必要書類の確認後、問題がなければ払戻しとなります。
所要日数は金融機関ごとに異なりますが、必要書類到着後1週間程度はかかることが多いです。

必要書類の準備から実際の払戻しまでは、やり取りがスムーズにいけば2週間程度で完了するでしょう。

(参考)裁判所:遺言書の検認

(参考)全国銀行協会:預金相続の手続に必要な書類

まとめ

死亡した人の銀行口座をそのままにしても法的問題はありませんが、銀行は5年、信用金庫は10年の放置で休眠口座とされてしまいます。

遺産分割協議がまとまるまでは、相続財産を守るために、死亡した人の銀行口座は休眠状態で放置するのがよいでしょう。
ただし、時間が経てば経つほど数次相続発生のリスクも高くなるため、遺産分割協議は可能な限り速やかに行いましょう。

遺産分割前に、死亡した人の銀行口座から払戻しを受けることもできますが、その代わりに相続放棄や限定承認ができなくなってしまいます。
各種払戻し手続は、財産調査を十分行ってから利用するようにしましょう。

銀行口座の相続手続きに関するよくある質問

銀行口座の相続手続きにはどれくらいの日数がかかりますか?

必要書類を準備してから最短で約2週間、長いと1ヶ月程度かかります。
必要書類に不足があったりすると、書類の取得し直しのための時間と手間がかかりますので、払戻しまでの日数も長引きます。
なお、死亡した人の銀行口座でローンの利用があったり、資産運用をしていた場合は通常よりも時間がかかるため、1ヶ月程度はかかるものと考えておきましょう。

銀行口座の相続手続きに期限はありますか?

現行の法律では、銀行口座の相続手続きに期限は定められていません。
そもそも、遺産分割の期限自体が定められていないためです。
しかし本文で解説した通り、銀行口座は放置し始めてから10年経つと休眠口座となり、そこからさらに10年経つと残高を国に没収されることがあります。
ある程度の残高があるのであれば、速やかに相続手続きを進めましょう。