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親の会社を相続する方法は?流れや発生しやすいトラブルを解説

親の会社を相続する方法は?流れや発生しやすいトラブルを解説

親が亡くなったり高齢化したことにより会社の相続が必要になったものの、どのように相続すれば良いのかわからず、悩んでいる方も多いでしょう。

親が法人形態で会社を経営しているのか、個人事業主なのかによって相続の方法は異なるため、事前にどちらなのかを確認する必要があります。

個人事業主の事業用の資産は被相続人の所有物とみなされるため、一般的な相続と手順はほぼ変わりません。

一方、法人は「法人格」を持っていることから、会社の資産は被相続人ではなく法人の所有物とみなされます。

そのため、法人の場合は被相続人から「株式の相続」を受けた上で経営権を握る流れになります。相続の手順は以下のとおりです。

  1. 自社株を相続で取得する
  2. 相続した株式の名義を変更する
  3. 株主総会で代表取締役に就任する
  4. 関連機関で名義変更を行う

相続人が後継者として事業を継続する場合、全体の2/3以上の株式を相続する必要があります。2/3以上の株式があれば、株主総会において自分の意思を自由に反映できるからです。

親が会社経営者ではなく個人事業主の場合、一般的な相続と同じように事業用の財産も遺産分割の対象です。

遺産分割協議で誰が相続するのかを決めた後、事業に関する資産を取得して親(被相続人)の廃業届を提出し、事業を承継するという流れになります。

本記事では、親の会社を相続する際の流れや相続の際に発生しやすいトラブルについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

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親の会社を相続する上での基礎知識

親の会社や事業を相続するにあたり、まずは親が会社経営者なのか個人事業主なのかを確認しましょう。会社と個人事業とでは、相続の方法が大きく異なるためです。

法人格の会社を相続する場合、株式などの保有資産を相続した上で株主総会を開き、経営権を譲り受ける必要があります。

一方、個人事業主の財産は個人の所有物であるため、特別な手続きをしなくても相続する権利があります。

次の項目から、親の会社を相続する上での基礎知識について詳しく解説します。

会社の相続とは株式などの保有資産を相続すること

会社経営者の親が亡くなったり、高齢化によって退いたりする場合、子供が会社を相続するケースが多くみられます。

親が所有している個人的な財産は、法定相続人である子供に相続権があります。しかし、会社の場合は相続人だからといって、資産や建物をそのまま承継できるわけではありません。

会社は「法人格」を持っており、人と同じように権利や義務が認められた存在として扱われるため、経営者の個人的な所有物にはならないからです。

そのため、子供が親の会社を相続するためには、会社が発行している株式を相続する必要があります。

株式を保有している株主は株主総会における議決権を持っていることから、会社に関することを決定する権利があります。

株主総会の決議は「1株=1議決権」として多数決で決定するため、保有している株式数が多いほど自分の意思を会社に反映しやすい仕組みです。

たとえば親の会社の代表取締役に就任する場合、親の株式の2/3以上を相続した上で株主総会を開き、議決権を行使すれば会社の経営権を握れます。

会社の相続は、個人的な財産の相続とは手順が全く異なることを把握しておきましょう。

個人事業の場合は相続の流れが法人と異なる

親が会社ではなく個人事業を営んでいた場合は、法人の相続とは流れが異なります。

個人事業主の財産は会社に帰属するわけではなく、あくまでも個人のものになります。そのため、一般的な相続の手続きとほぼ同じように相続が可能です。

たとえば親が自分の土地で個人クリニックを運営していた場合、事業用の資金や土地、建物、物品まですべて相続の対象となります。

個人事業を相続するケースでは、事業用の財産を後継者がすべて相続し、所有権を移行します。

また、相続手続きを進めるにあたって以下の書類の提出が必要です。

  • 死亡届
  • 廃業届
  • 事業廃止届
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(従業員に給与を支払っていた場合)
  • 準確定申告
  • 所得税・消費税の関連書類

個人事業に関する財産を相続するときは、一般的な相続手続きよりも必要書類が多くなります。

なお、個人事業の財産は遺産分割の対象です。そのため、後継者がまとめて相続するのか、あるいは相続人全員で均等に分割するのかなどを遺産分割協議で決めなければなりません。

個人事業の財産を承継する方法が決まっていない場合、相続人同士で「誰がどのように事業を承継するのか」という問題でトラブルに発展する可能性もあります。

トラブルを避けるためにも、個人事業の財産をどのように分配するのか、被相続人の生前に話し合っておくことをおすすめします。

話し合いで決まった内容に基づいて遺言書を作成しておけば、スムーズな相続が可能です。

親の会社(法人形態)を相続する方法・流れ

法人形態の親の会社を相続する流れは以下のとおりです。

  • 1. 自社株を取得する
  • 2. 株式の名義を変える
  • 3. 地位を取得する
  • 4. 関連機関で名義変更を行う

どのような流れで親の会社を相続するのか、次の項目から詳しく見ていきましょう。

1. 自社株を取得する

まずは親の会社の自社株を取得し、株主総会での議決権を得る必要があります。

先述したとおり、株主総会は「1株=1議決権」の多数決で決議が決定するため、自分が経営権を獲得するためには少しでも多くの株式を得なければなりません。

具体的には、株式の1/2以上を保有していれば代表取締役や役員の選任を自由に行えます。

ただし、会社の合併や定款変更などの特別決議を可決するためには、株式の2/3以上が必要になります。親の会社を自由に動かすためにも、相続の際は株式の2/3以上を取得するようにしましょう。

会社を経営していた親であれば、自社株の大半を取得しているはずなので、確認の上で相続手続きを進めてください。

なお、自社株を相続する際には、株式を評価して評価額を算出しなければなりません。

株式の評価方法は上場企業と非上場企業で異なる

株式の評価方法は、上場企業と非上場企業で大きく異なるため注意が必要です。

上場企業の場合、金融商品取引所が公開している市場価格に基づいて株式の評価額を決定します。評価の際には、以下の中から最も低い価額が適用されます。

  • 被相続人が亡くなった日の最終価格
  • 被相続人が亡くなった月の最終価格の月平均額
  • 被相続人が亡くなった前月の最終価格の月平均額
  • 被相続人が亡くなった前々月の最終価格の月平均額

生前贈与によって株式を取得する場合は、「贈与によって株式を取得した日」の最終価格が基準となります。

非上場企業は市場価格が公開されていないため、従業員数や取引金額に応じて会社規模を区分し、別々の評価方法で株式を評価する仕組みです。会社区分と評価方法の詳細は以下のとおりです。

会社区分 評価方法 詳細
大会社 類似業種比準方式 類似業種の株価を基準に、1株あたりの配当金額・利益・純資産価額を比準して評価
小会社 純資産価額方式 会社の総資産から負債や法人税額に相当する額を差し引いて評価
中会社 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 類似業種比準価額と1株あたりの純資産価額に基づいて評価

一般的には上記のいずれかで株式を評価するのですが、特例として「配当還元方式」という評価方式も用意されています。

配当還元方式は、同族関係者(配偶者や親族)以外が株式を相続する際に用いられます。株式を取得することにより得られる年間の配当金額を10%の利率で還元し、株式の評価額を算出する方法です。

なお、非上場株式の計算には専門知識が必要であるため、税理士や公認会計士など相続税のプロに相談することをおすすめします。

2. 株式の名義を変える

株式を取得しただけでは議決権を行使できないため、株式の取得後は名義変更の手続きを行います。

一般的に、株主名簿の変更は証券会社が手続きを代行してくれます。株式を発行している証券会社に連絡し、名義変更の手続きを進めてください。

なお、株式の名義を変更する際には、株券を発行しているかどうかもあわせて確認する必要があります。株券は株主の権利を表章するための有価証券であり、かつては紙で発行されていました。

平成21年の法改正により株券はすべて電子化されましたが、古い会社の場合は株券を紙で発行している可能性があります。

株券を取得していなければ株式を譲り受けたことにはならないので、親の会社が紙で株券を発行していた場合は探し出しておきましょう。

もしも株券が見つからない場合、証券会社に事情を説明し、再発行の手続きを行ってください。

3. 地位を取得する

株式の名義変更が完了した後は、株主総会を開いて代表取締役としての地位を取得しましょう。

株主総会で決議を取る際には、事前に株主からの了承を得るケースが一般的です。そのため、株主総会で揉めて地位が取得できないということはほぼありません。

なお、相続によってすべての株式を取得していたり、全株主から事前に同意を得られたりした場合、みなし決議(書面決議)という方法で株主総会を簡略化できます。

みなし決議は、事前に株主全員から書面やメールなどで同意を得ることにより、株主総会を省略して決議を取り決める方法です。

株主の数が少ない場合や、自分1人で全株式を保有している場合、みなし決議で地位を取得すれば株主総会を開く手間が省けます。

4. 関連機関で名義変更を行う

代表取締役に就任すれば相続の手続きはいったん完了となりますが、他にも関連機関での名義変更など細かな手続きが発生します。

事業内容にもよりますが、具体的に必要な手続きは以下のとおりです。

  • 銀行・証券会社など金融機関の口座の名義変更
  • 許認可が必要な事業の代表者変更手続き
  • 社会保険関連の代表者変更手続き

銀行や証券会社などは代表取締役の名義で登録されているはずなので、新しい代表取締役の名前に変更をしましょう。建設業や製造業など、許認可が必要な業種の場合は許認可の名義変更も行います。

取引先がいる場合は、メールなどで代表取締役が変更した旨を伝え、挨拶回りをするケースもあります。

会社の状況を見ながら、徐々に手続きを進めてみてください。

親の会社を相続する際に発生しやすいトラブル

親の会社を相続する際には、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。

  • 経営権を確保できない
  • 経営権を確保できない
  • 負債も一緒に相続してしまう
  • 会社の相続についてほかの相続人と揉めてしまう

親の会社を相続する際に発生しやすいトラブルについて、詳しく解説します。

経営権を確保できない

親から相続した株式が2/3、または過半数にも満たない場合、経営権を確保することが難しくなります。

たとえば経営者の父が亡くなり、母と子供2人で会社の株式を法定相続分どおりに相続すれば、株式の持分割合はそれぞれ1/3ずつです。

経営権を確保するためには少なくとも過半数の議決権が必要になるため、他の相続人の合意を得なければなりません。

もしも反対されると経営権の確保ができず、相続人同士で揉めてしまう恐れもあります。

仮に相続人の合意を得て代表取締役に就任したとしても、重要事項を決定する際には2/3以上の議決権が必要になるので、自分の意思を自由に反映できなくなる可能性が高いです。

特に相続人の数が多い場合、株式がより細かく分散されるため、1人1人に合意を得ることがより難しくなります。

特定の後継者に会社の経営権を握らせたい場合は、遺言書や生前贈与などで事前に対策をすることが重要です。

被相続人の生前に後継者やほかの相続人と話し合いをし、誰が後継者になるのかを決めておけば、トラブルを防止できます。

会社の相続税が払えない

親の会社の株式を相続すると、相続税が高額になり支払いができないというケースがあります。

相続税対策が不十分だったり、自社株の評価額が思いのほか高かったときに起こりやすいトラブルです。

相続税が高額で一括での支払いが難しい場合は、延納制度を利用しましょう。延納制度は相続税を分割払いで納めるための制度で、以下の条件を満たしている場合に申請できます。

  • 相続税額が10万円を超えていること
  • 現金で納付することが困難な事由があり、かつ納付が困難な金額の範囲内であること
  • 延納税額および利子税額に相当する担保が提供できること
  • 延納申請期限までに延納申請書と担保提供関係書類を税務署に提出すること

「納付が困難な金額の範囲内」というのは、相続財産や納税者の財産をすべて含めても、支払いが難しい金額ということです。

延納税額および利子税額に相当する担保には、土地や建物、国債、有価証券などが当てはまります。ただし延納税額が100万円以下で、3年以内にすべて全額を納税する場合には、担保は必要ありません。

また、延納の申請期限は「相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内」と決められています。期限を過ぎた場合は延納制度を利用できないため、注意しておきましょう。

延納制度のほかには、金庫株(自己株式)を自社で買い取る方法もあります。相続した株式を会社に売却すれば納税者の手元に売却代金が入るため、相続税に充当することが可能です。

ただし、会社に株式を買い取るだけの余力がなければ、銀行などから借り入れをしなければなりません。そのため、金庫株の買い取りは会社に資金が十分にある場合か、返済の目途が立ちそうな場合だけにしておきましょう。

負債も一緒に相続してしまう

親の会社を相続すると、会社が抱えている負債を同時に相続してしまう可能性があります。

もしも会社が銀行などから融資を受けている場合、一般的には代表取締役が連帯保証人になっています。会社を相続して代表取締役に就任すると、連帯保証人の立場を引き継がなければならない可能性が高いです。

経営が順調に進んでおり、返済の目途が立っているのであれば、負債を相続しても大きな問題には発展しません。

反対に、経営が失敗して会社から弁済ができなくなれば、連帯保証人が負債を抱えることになってしまいます。

親の会社の経営状況や負債などを調査し、返済が難しいと判断した場合は、相続しないという選択肢も視野に入れた方が良いでしょう。

会社の相続についてほかの相続人と揉めてしまう

親の会社を相続する際に、誰が相続するのかという問題で揉めるケースも少なくありません。

先述したとおり、親の会社をスムーズに相続するためには、後継者1人にすべての株式を相続させる必要があります。

役員の選任や会社の重要事項を取り決める際には、過半数または2/3以上の議決権が必要になるからです。

もしも後継者が決まっておらず、株式を相続人全員に平等に分配してしまうと、後継者が誰になるのかというトラブルに発展する可能性が高いです。

後継者が1人に決まったとしても、株式が分配されたままの状態だと経営者の意向を会社に反映しにくくなるというリスクもあります。

そのため、会社を相続する際には最初から後継者を1人に決めておき、株式をまとめて相続することをおすすめします。

【親側】会社相続でトラブルを避けるための対策

会社の相続に関するトラブルを避けるためには、経営者である親側の対策も必要です。主な対策は以下のとおりです。

  • 株式を集中させる旨を書いた遺言書を作成する
  • 生前贈与を行う
  • 自社株式を使って家族信託を行う
  • 経営承継円滑化法を活用する

親側ができる会社相続のトラブルを避けるための対策を詳しく解説します。

株式を集中させる旨を書いた遺言書を作成する

会社を特定の後継者に相続してもらうためには、生前に株式を集中させる旨を書いた遺言書を作成しておきましょう。

早い段階で後継者を指定しておき、遺言書には「○○会社の株式をすべて長男の××相続させる」と書いておけば、相続人同士のトラブルを予防できます。

株式が複数人の相続人に分散されることもなくなるので、スムーズな事業継承が可能になります。

ただし、遺言書を作成する際には遺留分の侵害に当たらないかどうかを注意しなければなりません。

遺留分とは、遺言書でも奪うことのできない遺産の割合のことです。

たとえば被相続人の子供だけで遺産を相続する場合、遺留分は遺産総額の1/2になります。遺産総額が1億円あるときの遺留分は以下のとおりです。

子供2人の遺留分:1億円×1/2=5,000万円
子供2人あたりの遺留分:5,000万円×1/2=2,500万円

遺留分は相続人の数に応じて均等に分配するため、1人あたりの遺留分は2,500万になります。

もしも兄がすべての株式を相続したことにより、弟が取得する遺産総額が遺留分よりも少なくなってしまったら、遺留分侵害請求を受ける可能性があります。

遺留分侵害請求は、遺産を多く受け取った相続人に対し、侵害額に相当する金銭の支払いを求める行為です。

遺産の中から遺留分に相当する額を現金で支払えるのなら問題ありませんが、現金がない場合、株式の売却を視野に入れる必要があります。

株式が分散されると経営に支障が出る恐れがあるため、遺言書を作成するときは遺留分の侵害に当たらないかどうかを必ず確認しましょう。

生前贈与を行う

被相続人の生前に株式の贈与を行い、後継者にあらかじめ事業承継を行っておくという方法もあります。

生前贈与は遺贈者と受贈者の双方の合意によって成り立つものなので、お互いの意思を確認しながら事業承継が進められる点がメリットです。

また、他の相続人に対しても誰に会社を継がせるのかを生前に伝えておけば、相続の際のトラブルが起こりにくくなります。

少しずつ事業を承継して経営者の仕事に慣れさせたり、従業員からの理解を得たりしたい場合にもおすすめの方法です。

生前贈与の約束は口頭のみでも可能ですが、トラブルを回避するためにも贈与契約書を作成しておきましょう。贈与契約書を作成しておけば生前贈与を確実に履行できる上、贈与があったことの証明にもなります。

なお、生前贈与を行うと贈与税が発生する可能性があるため、税理士に相談して節税対策を実施しながら贈与を進めてみてください。

自社株式を使って家族信託を行う

家族信託は、信頼できる家族などと信託契約を結び、財産の管理や処分などを任せる制度です。

財産の所有者が認知症になったときや急死したときの対策として、被相続人が元気なうちに家族信託契約を結ぶケースが多くみられます。

信託財産の中には株式も組み入れられるため、家族信託によって自社株式の管理を任せておけば、相続がスムーズに進みます。

家族信託には「委任者」「受託者」「受益者」「帰属権利者」の4つの役割があります。

委任者は財産を預ける人で、受託者は財産の管理を任せられた人のことです。受益者は信託した財産から生じる利益を得る人のことであり、一般的には委任者と同じ人になります。

そのため、親の自社株式を信託する場合だと委任者と受益者が親、受託者と帰属権利者が子供になるケースが一般的です。

家族信託契約を結んだ後に親が亡くなった場合、信託された株式の所有権は帰属権利者に移行します。

家族信託契約により帰属権利者が決められている財産は遺産分割の対象外なので、そのまま自社株式を子供が保有することになります。

また、財産を管理するのは後継者である子供ですが、財産から得られた利益を獲得するのは親なので、生前贈与には当たりません。そのため、贈与税が発生しないというメリットもあります。

経営承継円滑化法を活用する

経営承継円滑化法は、中小企業の経営を円滑に承継するために設けられている法律です。経営承継円滑化法を活用すれば、主に以下3つの支援を受けられます。

  • 事業承継税制
  • 金融支援
  • 遺留分に関する民法の特例

事業承継税制は、会社を引き継いだことで発生する相続税や贈与税などの負担を軽減するための制度です。手続きが複雑で細かな条件もありますが、税金の支払いを猶予または免除してもらえます。

金融支援では、都道府県からの認定を受けることで信用保証協会や金融機関などから資金調達が可能になります。

遺留分に関する民法の特例は、法定相続人全員の合意を得ることにより、「除外合意」または「固定合意」の特例措置を受けられる制度です。

除外合意を行うと、事業用資産を遺留分の計算から外せます。相続財産の中から事業用資産が除外されれば遺留分侵害請求を防止でき、株式が分散するリスクを抑えられます。

固定合意を行った場合は、遺留分を計算する際の株式の価額をあらかじめ固定できます。もしも後から株式の価額が上がったとしても、値上がり分は遺留分の計算には含まれません。

税金や資金調達、遺留分に関する問題を解決できる可能性があるため、経営承継円滑化法の活用も検討してみてください。

親の会社を相続したくない・放棄したい場合はどうする?

「親の会社を相続したくない」「株式を放棄したい」と考えていても、相続放棄は避けたいところです。相続放棄の手続きをすると、株式だけでなくすべての財産を承継する権利を失うからです。

親の会社や株式は相続せず、他の財産は相続したいという場合は、以下のような対策を取りましょう。

  • 会社に株式を買い取ってもらう
  • ほかの株主または第三者に株式を譲渡する
  • 解散・清算の手続きをする

次の項目から、親の会社を相続しない場合の対処法について詳しく解説します。

会社に株式を買い取ってもらう

親の会社経営に関わるつもりがない場合は、株式をいったん相続した後に、会社と話し合って買い取ってもらいましょう。

中小企業は株式が分散されると経営にリスクを与えるため、買い取りに応じてもらえる可能性は高いです。

ただし、非上場株式の場合は市場価格が公開されていないことから、評価額を適切に算出して価格交渉をしなければなりません。

会社の言うとおりの価格で売却すると、相場よりも低い価格になる可能性があるため注意が必要です。

また、株式を売却すると相続税とは別に譲渡所得税が発生します。相続税や譲渡所得税の負担が軽くなるよう、税理士と相談しながら会社と価格交渉を進めてみてください。

なお、財源規制などの問題で会社が株式の買い取りに応じてくれない場合は、ほかの株主や第三者に株式を譲渡することも視野に入れましょう。

ほかの株主または第三者に株式を譲渡する

株式をほかの株主や第三者に譲渡する場合、会社からの承認が必要になるケースが大半を占めています。

非上場企業は会社の経営にとって不都合な人物に株式が渡らないよう、譲渡制限に関する規定が設けられていることが多いからです。

そのため、株式を第三者に譲渡する際には、会社に譲渡承認請求を実施した上で譲渡承認の許可を得る必要があります。

譲渡承認請求を受けた会社側は、株主総会を開いて譲渡承認の特別決議を行います。なお、自分が株式の2/3以上を保有している場合は、単独で特別決議の承認が可能です。

非上場株式を売却する際の注意点として、評価額が適切かどうかをしっかりと見極めなければ、相場よりも低い価格で株式を売却してしまう恐れがあります。

市場価格が公開されている上場企業とは違い、非上場企業は株式の評価額の算定が難しくなるからです。

税理士や公認会計士などの専門家に相談し、適正価格で株式を譲渡するようにしましょう。

解散・清算の手続きをする

会社を引き継ぐ人が誰もおらず、被相続人の世代で会社を終わらせたい場合は、いったん会社を承継してから解散・清算の手続きをしましょう。

解散・清算の手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 株主総会で解散決議を取る
  2. 法務局で解散登記・清算人登記の申請をする
  3. 清算手続きを行う
  4. 株主総会で決算報告をする
  5. 法務局に清算完了の登記申請をする

まずは株主総会を開き、2/3以上の賛成を得て会社解散の特別決議を行います。

特別決議が承認されてから2週間以内に、法務局で解散登記と清算人登記の申請をします。清算人登記をするためには、事前に清算人の選任が必要です。

清算人は、会社解散の業務を執行する役割を担っています。一般的には定款で定められている人や株主総会の決議で選ばれた人が清算人になりますが、選任できなかった場合は代表取締役が清算人になっても問題はありません。

法務局への登記が完了したら、次に清算手続きを進めていきます。財産目録・貸借対照表を作成した上で清算確定申告を行い、固定資産などの売却を行います。

債務や取引先への支払いなどが残っていれば、会社の資産から弁済をしなければなりません。

清算手続きがすべて完了したら、決算報告書を作成の上、株主総会での承認を得ます。最後に法務局で清算完了の登記申請を行えば、解散・清算の手続きは完了です。

なお、会社の解散・清算の手続きには専門知識が必要になります。登記手続きは司法書士、お金関連の手続きは税理士に相談しながら進めると、スムーズに会社の解散・清算が可能です。

まとめ

親の会社を相続する際の手続きは、法人か個人事業主かで大きく異なります。

法人の場合は株式を相続した上で経営権を確保する必要がありますが、個人事業主の場合は通常の相続と同じように資産や事業を承継できます。

会社を相続する際には、親族間の意見の相違やお金に関することでトラブルになるケースも多いため、遺言書や生前贈与、家族信託などで対策しておくことが重要です。

遺産分割や登記に関することは司法書士、税金に関することは税理士に相談しながら、スムーズに事業継承を進めましょう。

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更新日 : 2024年11月15日
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