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夫が死亡した時の銀行口座の名義変更方法を解説!手順や必要書類

夫が死亡した時の銀行口座の名義変更方法を解説!手順や必要書類

「夫が死亡してしまったけど、銀行口座ってどうすればいいの?」と不安に感じている方は多いかもしれません。

夫が死亡してしまった場合、財産の相続人が銀行口座の名義変更をします。口座の名義変更をする場合、手続きをはじめる前に金融機関の預貯金の仮払い制度について確認してください。遺産分割協議前でも、葬式代など直近で必要な資金を引き出せる可能性があります。

その後、金融機関へ連絡し口座を凍結させます。口座を凍結させたうえで、名義変更へ向けた手続きを進めます。まずは残高証明書を取得し、遺言書などがないか確認します。戸籍謄本を調べて、法定相続人が誰になっているのか確認し、遺産分割協議を行ってください。あとは名義変更に必要な書類を集め、窓口に提出すれば手続き完了です。

夫の死後に口座の名義変更をする際は、書類の収集に時間がかかり他の手続きがストップする、相続放棄をする場合は名義を変更しないほうがよいなどの注意点もあります。

なお故人の戸籍謄本をはじめ、口座の名義変更には複数の書類を集めなければなりません。夫が亡くなった直後は、葬儀や各種手続き等で慌ただしい日々を過ごしていることでしょう。弁護士や行政書士といった専門家に、手続きを依頼するのもおすすめです。

本記事では銀行口座の名義変更について、手続きの流れや必要書類、注意点などを解説するので参考にしてください。

夫が死亡すると銀行口座が凍結し預金を引き出せなくなる

夫が死亡してしまった場合、本人が保有していた金融機関の口座が使えなくなってしまいます。金融機関は名義人の死亡を確認すると、銀行が口座を凍結処理してしまうため、預金を下ろせなくなってしまうためです。

銀行口座が凍結されている期間は、遺族であっても口座からの出金は不可能です。ATMはもちろんのこと、銀行の窓口であっても、現金を引き出すことはできません。公共料金やクレジットカードを始めとした、各種引き落としもできなくなります。株式の配当金や不動産を保有している場合は、その賃料の振り込みもできません。

ではなぜ、金融機関は名義人が死亡した際に「凍結」という処置をおこなうのでしょうか。その理由としては、大きく2つが挙げられます。

  • 死亡時点における相続財産を確定させるため
  • 相続人によって勝手に預金の引き出されるのを防ぐため

この場合での銀行口座の凍結は、あくまでも相続のもめごとを防ぐための処置です。そのため遺産分割が確定するまでの処置となります。

金融機関が、口座の名義人の死亡を把握するタイミングとしては、遺族から連絡を受けた時点であることがほとんどです。しかし稀に、新聞や葬儀の案内から、名義人の死亡を把握する場合もあります。このような状況下では、遺族からの連絡がなくても、銀行側が自主的に口座を凍結する可能性があります。

なお、必要なお金を引き出すための方法として仮払い制度があります。制度については後ほど解説するので、参考にしてください。

夫が死亡した場合の銀行口座の名義変更の流れ

夫が死亡した場合、銀行口座の名義変更を行います。名義変更の流れは、以下の通りです。

  1. 金融機関の預貯金の仮払い制度について確認する
  2. 金融機関へ連絡し口座を凍結させる
  3. 残高証明書を取得する
  4. 遺言書を探す
  5. 戸籍謄本を調べ法定相続人を確認する
  6. 遺産分割協議をおこなう
  7. 必要書類を集める
  8. 解約払い戻し・名義変更後の通帳を受け取る

ここでは名義変更における各ステップについて、それぞれ解説します。なお、銀行口座の相続手続きに必要な日数は、おおむね2週間から1ヶ月とされています。

1. 金融機関の預貯金の仮払い制度について確認する

夫が死亡した場合、まずは金融機関の預貯金の仮払い制度について確認してください。

本来、口座が凍結される前に現金を引き下ろす行為は認められていません。しかし仮払い制度の手続きを行うことで、一部の現金が引き出せます。

仮払い制度とは、2019年7月(令和元年)から始まったものであり、被相続人(故人)の預貯金財産について、遺産分割前でも相続人一人からの請求で、銀行から仮払いを受けることを可能とする制度です。仮払いできる金額は、一定金額を上限としています。

仮払い制度では、預貯金口座の相続に伴う出金手続きを行う際、本来であれば法定相続人全員で行う「遺産分割協議」に基づいて手続きすべきところですが、一部の相続人のみからでも出金手続きが可能になります。葬式代をはじめ、故人の医療費や借金の返済、残された相続人の当面の生活費など直近で必要な資金を引き出せます。仮払い制度を活用して引き出せる金額は、以下の通りです。なお上限額は、1つの金融機関で仮払いできる金額です。

150万円または、死亡時の預貯金残高×1/3×法定相続分

例えば預金残高が2,000万円と200万円の場合、相続人が配偶者のみの場合、引き出せる金額は以下の計算式で算出できます。

  1. 2,000万円×2分の1×3分の1=約333万円>上限150万円
  2. 200万円×2分の1×3分の1=約33万円<上限150万円

1の場合、預金額のうち相続できる金額が上限150万円を上回っているため、150万円まで仮払いが可能です。反対に2の場合は、150万円に達していないため、相続分の約33万円まで仮払いできます。

仮払い制度は民法の改正によって誕生した制度です。民法改正前は、共同相続人全員の同意がなければ、遺産分割協議が終わるまで預金額を使えませんでした。共同相続人のなかで1人でも、反対する人がいた場合は、口座残高に手をつけられません。そのため被相続人が突然亡くなった場合、生計をともにしていた配偶者や子どもに大きな影響を与えていました。場合によっては、故人の借金を返したり納税したりするために、配偶者が新たに借金しなければならない事態も発生していたそうです。

民法が改正され、仮払い制度が導入されてからは手続きのみで、一定額の預金額が自由に使えるようになりました。

仮払い制度の手続きに必要な書類は、以下2つが代表的なものです。

  • 故人の戸籍謄本等(出生時から死亡時まで)
  • 相続人の印鑑証明書

金融機関によっては、上記の書類に加えて他の書類が必要なケースもあります。手続きをする前に、問い合わせてください。また仮払い制度を使う際は、以下のような注意点もあります。

  • 他の相続人と相談せずに進めるため、後々トラブルが生じる可能性がある
  • 後から借金が発覚しても、相続放棄ができない

トラブルにならないよう、あらかじめ相続人に相談する、故人の財産を整理しておくなどの対策が必要です。

仮払い制度を利用してもお金が足りないこともあるでしょう。この場合は、家庭裁判所で仮処分という手続きを行うことで、法定相続分までの金額を出金できる可能性があります。

2. 金融機関へ連絡し口座を凍結させる

仮払い制度について調べたのち、金融機関へ連絡して口座を凍結させましょう。遺族が名義人の死亡を伝えた時点で、金融機関は口座を凍結させます。前述したように口座を凍結させることで、他の相続人が勝手に預金を下ろすことを阻止するためです。もちろん他の相続人だけでなく、不正な引出しや犯罪の防止といった観点からも、口座は凍結されるべきでしょう。

金融機関への連絡は、窓口へ出向かずともコールセンターへ連絡するだけで構いません。ただし相続手続きの用紙が必要となるため、窓口へ出向いた場合は必要書類も一緒に入手できます。遠方の場合は郵送してもらえますが、届くまでに時間がかかります。

また口座の凍結に関しては、手続きがややこしくなってしまうケースもあります。それは故人が開設している口座を把握しきれていない場合です。夫婦であっても互いの銀行口座を全て把握しているとは限りません。その場合、故人が所有していた口座を確認する作業が必要になるかもしれません。

口座の確認方法としては、以下の4つが考えられます。

  1. 故人宛の郵便物から推測する
  2. 故人の遺品を確認する
  3. スマホやPCから確認する
  4. 故人の勤務先や友人に確認する

上記の方法で、故人が開設している口座がある金融機関を特定しましょう。もしかしたら、普段はあまり使っていない口座があるかもしれません。確実に利用していたと断言できない、利用の可能性があるという銀行でも調べる方法はあります。支店や口座番号が不明な場合でも銀行名さえわかれば、戸籍謄本等の証明書を提出することで故人名義の口座がないか調べてもらえます。

3. 残高証明書を取得する

故人が所有している口座が特定できたのち、死亡した時点での残高証明書を取得してください。残高証明は、後々おこなう遺産分割協議で必要な書類です。残高証明書とは、特定の日付における預貯金の残高や投資信託、有価証券をまとめたものです。相続手続きの場合は、名義人の死亡日を記載した残高証明書を取得します。

なお残高証明書は、預貯金の履歴まで記載された書類ではありません。故人のお金を管理していた人が本人以外である場合は、他の相続人への説明のために、残高証明と合わせて通帳も保管しておきましょう。場合によっては、他の相続人から預貯金の使い道に疑問を持たれ、説明が求められるケースもあります。

4. 遺言書を探す

故人が遺言書を遺している場合は、基本的に遺言書の内容にしたがって、財産分割を進めます。遺言書のなかで、銀行口座の名義について触れられている可能性もあります。

故人が生前、家族へ向けて遺言書の存在を明かしている場合はよいですが、そうでないケースもあります。後から遺言書の存在を知ることがないよう、公正役場や法務局、公証役場などで遺言書を探しておきましょう。自宅で遺言書が見つかるケースもあります。その際、遺言書が「自筆証書遺言」であった場合は、遺言書の効力を認定する手続きとして、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言といった3つの形式があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、故人が生前、紙とペンで自書した遺言書です。自分1人で作成できるため手軽ですが、内容に誤りがあると遺言書として認められません。また個人で管理するため、紛失や改ざんの恐れもあります。自筆証書遺言で書かれた場合に検認手続きが必要なのは、このためです。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場の公証人によって作成された遺言書です。内容に誤りがないか、公証人を含めた3名が立ち会ったうえで作成されます。公証人が関与するため、確実に有効な遺言を残せるうえ、検認手続きも不要です。しかし遺言作成にあたって関係者が多いため、機密性においては次で紹介する秘密証書遺言よりも劣ります

秘密証書遺言

最後の秘密証書遺言とは、公証役場に封をした遺言書を持参し、証人立会いのもとで公証する遺言書です。立会人のもとで開封されるまでは封がされているため、遺言の内容を秘密にできます。しかしこの方法も自筆証書遺言と同様に、公証人が関与しない状況下で遺言証を作成するため、内容に不備がある場合は無効となるリスクがあります。ただし遺言書といえば、自筆証書遺言と公正証書遺言が主流であり、秘密証書遺言が利用されることは稀です。

5. 戸籍謄本を調べ法定相続人を確認する

次に戸籍謄本を調べて、法定相続人を確認します。

法定相続人を確認するためには、故人と相続人の戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍を含む)を取得してください。故人の出生から死亡までの戸籍謄本には、法定相続人情報が記載されています。

法務局にて法定相続情報一覧の申出を行っておけば、金融機関へ戸籍謄本を提出する必要がありません。一覧図を提出するだけでよいため、後々の手続きの手間が減ります。一覧図で代用できる書類については後ほど解説するため、ここでは口座の名義変更の手続きの際、一覧図で代用できる書類があることだけ覚えておきましょう。なお相続人の戸籍謄本は戸籍抄本でも代用できます。

6. 遺産分割協議を行う

法定相続人が複数人いた場合は、遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、誰がどれだけを相続するかを決める話し合いのことです。遺産分割協議は必ず相続人全員で話し合いを行い、遺産分割協議書を作成し、全員の署名・実印を押印するのが決まりとなっています。相続人のうち、誰か一人でも欠けていると、協議会自体が無効となってしまいます。

しかし遺産分割協議には、全員が参加すること以外にルールはありません。相続人全員で話し合えるならば、どこか1箇所に集まらず、電話やLINEによる話し合いでも構いません。

遺産分割協議を終えたら、取り決めた内容を遺産分割協議書にまとめます。内容に同意したことを表す署名や押印が全員分必要です。その後の遺産分割は、この協議書に沿っておこないます。遺産分割の方法には、以下の4種類があります。相続人それぞれの財産状況に応じて、いずれの方法が適切なのか全員で検討してください。

遺産分割 概要
現物分割
  • 土地や車などを現物のまま分割する
換価分割
  • 土地や車を売却したのち、代金を各相続人へ分割
代償分割
  • 本来の相続できる割合以上の相続をした場合に用いられる方法
  • 多く相続した人が、他の相続人に差分を代償金として支払う
共有分割
  • 法定相続分・遺産分割協議に応じて、各相続人の持分を決める方法
  • 相続後は、財産を処分せずにそのまま全員で共有する

7. 必要書類を集める

口座の名義を変更するには、いくつかの必要書類を揃えなければなりません。必要になる書類は相続人の人数や、遺言の有無によって異なります。なかには印鑑証明書をはじめ、有効期限が定められている書類もあります。具体的な期限や相続届の書式は、金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

金融機関によって定められた必要書類が全て用意できたら、電話で予約をとりましょう。予約によって銀行の窓口を確保し、書類を提出します。予約をせずに銀行へ行っても、受け付けてもらえないことがあるため、必ず事前予約をしてください。

以下より相続人の人数や遺言書の有無といったケースごとに、必要書類を記載します。

相続人が1人の場合

相続人が1人であった場合、以下の書類を用意してください。

  • 金融機関の用意した相続届(名義書換依頼書ともいう)
  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑証明
  • あれば遺言書

なお2.故人の出生から死亡までの戸籍謄本3.相続人の戸籍謄本の書類は、戸籍謄本の章で解説した「一覧図」で代用できます

相続届や名義書換依頼書は、金融機関によって書類の呼び方が異なりますが、いずれも名義変更をおこなう際の申込用紙です。印鑑証明書の使用期限は、一般的に発行から3ヶ月以内です。なお相続を放棄したい場合は相続放棄証明書も必要です。

相続人が複数いる場合

相続人が複数名いる場合は、以下のような書類を用意しなければなりません。

  1. 金融機関の用意した相続届(名義書換依頼書ともいう)
  2. 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 相続人全員の印鑑証明
  5. 遺産分割協議書

この場合も2と3の書類は一覧図で代用可能です。なお、銀行によっては口座名義を変更する場合は遺産分割協議書が不要なケースもあります。

遺言書がある場合

故人によって作成された遺言書がある場合は、以下の書類を用意してください。

  • 金融機関の用意した相続届(名義書換依頼書)
  • 故人の死亡記録が記載されている戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑証明
  • 遺言書

ここでいう相続人とは、銀行口座を引き継ぐ人のことです。

上記5つの書類は、個人でも収集できます。しかし1つ1つ収集するのは時間がかかるでしょう。特に「2.故人の死亡記録が記載されている戸籍謄本」は、故人の出生から死亡まで、全てが記載された戸籍が必要です。全ての法定相続人も把握できなければなりません。速やかに書類を集めるためには、行政書士や弁護士といった専門家の力を借りるのもおすすめです。

8. 解約払い戻し・名義変更後の通帳を受け取る

必要書類を提出してから、およそ2週間〜1ヶ月程度で手続きは完了します。故人が使用していた口座を引き継ぐ場合は、名義変更された通帳を受けとってください。葬式費用がすぐに必要な場合は、すでに解説した仮払い制度を利用するのも手段の1つです。ただし相続人が複数いる場合は、後々トラブルになりやすいため、しっかりと用途と金額を伝えて了承を得ておきましょう。

故人が利用していた銀行口座をもう使用しない場合は、解約してください。口座を解約した場合は、故人名義の口座に入っていたお金が払戻金として受けとれます。現金で受けとる場合もあれば、相続人の口座に直接振り込まれる場合もあります

解約は名義変更とは異なり、その口座は同じ条件では使用できません。同じ条件というのは、例えば故人が定期貯金をしていた場合です。口座開設した時期によって利率が異なりますが、口座を解約した場合は、開設した当時の利率では貯金できなくなります。

また故人が使用していた銀行が、ゆうちょ銀行である場合も注意してください。ゆうちょ銀行の場合、口座の残高はゆうちょ銀行にしか振り込めません。相続人がゆうちょ銀行の口座を保有していれば問題ありませんが、そうでない場合は新たに口座を開設するか現金で受けとるしかありません。

銀行口座が凍結する前にできる準備

名義人が死亡した場合は口座が凍結されます。しかしあらかじめそれを知っていれば、生前からできる対策もあります。具体的な対策は、以下の3つが考えられます。

  1. 口座に全て預けず、ある程度は手元に引き出しておく
  2. 口座の数を増やさない(口座数を減らす)
  3. 生命保険に加入し、死亡時は家族になどに保険金が入るようにする

生前から、上記のような対策をしておくことで、仮払い制度を利用しなくても葬儀費用が支払えます。それぞれの対策について、ここでは詳しく解説します。

口座に全て預けず、ある程度は手元に引き出しておく

口座が凍結した際に困ることとしては、故人の葬儀代を捻出するのが難しい点です。名義人が元気なうちに、ある程度の金額を手元に引き出しておくのが好ましいでしょう。緊急時のためにまとまったお金を手元に置いておくのは、震災時など本人が死亡したとき以外にも役立つはずです。

自分で保管していると使ってしまうかもしれないという方は、親族に託しておくのが賢明です。名義人が死亡したあと口座が凍結される前に、他の相続人の了承を得てお金を引き出すこともできます。その場合は、何に使用したお金なのか後から確認できるよう、領収書を保管しておきましょう。

口座の数を増やさない(口座数を減らす)

生前からできる対策としては、口座をむやみに増やさないことです。口座を増やせばその分、家族が把握するのに手間がかかります。全て把握していたとしても、口座の凍結解除をおこなう手続きに時間がかかるでしょう。また複数の口座にお金が入っていると、遺産分割協議で財産を確定させるのにも時間がかかります。元気なうちに必要な分だけ口座を持っておくよう、整理しましょう。

なかには海外の金融機関にお金を預けている方もいらっしゃるでしょう。相続人であっても、名義人が死亡した後に海外口座の名義変更や解約は非常に大変です。相続人のことを考えると、口座の数だけでなく金融機関も国内だけにしておくことが大切です。

生命保険に加入し、死亡時は家族になどに保険金が入るようにする

生命保険に加入しておけば、死亡時、家族などの保険金受取人に保険金が振り込まれるうえ、生命保険は凍結の対象ではないため残された家族が確実にお金を受けとれます。

生命保険の掛け金を、相続税の非課税枠に留めておけば、相続税もかかりません。非課税枠は、500万円✕法定相続人の人数です。死亡保険金の場合は保険金の受取人が書類を提出してから、通常1週間ほどで入金されます。葬儀にかかる費用や納税資金、遺品整理の使用に活用できます。

ただし非課税枠が適用されるのは、相続税に限定されます。生命保険金の受け取りについては、受取人が誰になるのかによって税の分類が異なります。契約者が故人であり、受取人が相続人の場合は、相続税に分類されるため、非課税枠が適用できます。

主な金融機関における相続手続きの方法

銀行口座を含め、財産を相続したら相続手続きが必要です。しかし相続手続きの流れは、銀行ごとに異なります。ここでは以下4行について解説します。

  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行
  • みずほ銀行
  • ゆうちょ銀行

各銀行で手続きをどう進めていくのか、どのような書類が必要なのか、本章で確認しておきましょう。

相続手続きに必要な書類

銀行で相続手続きをする場合は、以下のような書類が必要です。

  • 銀行指定の預金名義書換依頼書、相続届
  • 夫(被相続人)の出生から死亡までを確認できる連続した戸籍謄本
  • 夫(被相続人)の預金通帳、キャッシュカード、証書など
  • 遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)や遺言書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

基本的な必要書類は上記の通りですが、銀行によって多少異なるケースもあります。本章では前述した4つの銀行のケースを解説します。

なお印鑑証明書や戸籍謄本は、使用できる期限や記載すべき情報の範囲が定められているため、手続きをおこなう金融機関ごとに確認しなければなりません。手続きをおこなう際は、故人の預金通帳キャッシュカードもまとめて用意しておくとスムーズです。

銀行ごとの相続手続き方法

金融機関で相続手続きは、以下のうちいずれかで行えます。

  • 金融機関ごとの相続担当部署
  • 故人の取引支店
  • 相続人(手続きをおこなう人)の最寄り支店

上記のうち、いずれかへ連絡することで相続手続きはスタートします。相続手続きを進めたい旨を伝えると、必要書類を案内されます。書類を揃えて窓口へ提出することで、手続きを進められます。大手金融機関の場合、上記の連絡をすると後日、相続担当部署から必要書類が送付されます。書類の送付には時間がかかるため、余裕を持って手続きをしましょう。

多くの金融機関で、相続届へ相続人・受遺者全員の署名押印が求められます。遺産分割協議前に、書類の請求だけでも進めておくとスムーズかもしれません。

三菱UFJ銀行の場合

三菱UFJ銀行は、店舗または電話で連絡すると、相続オフィスという部門で手続きを担当してもらえます。連絡後に送られてくる書類へ記入し、揃えた必要書類を窓口へ提出することで手続きは完了します。書類に不備がなかった場合は、提出後、2週間程度で手続きが終了します。三菱UFJ銀行へ相続手続きの連絡をする場合は、故人の通帳・キャッシュカードなど、口座番号がわかるものを事前に用意しておくと便利です。

三菱UFJ銀行の相続手続きに関する詳細は、以下で確認してください。

三菱UFJ銀行|相続のお手続き

三井住友銀行の場合

三井住友銀行の場合、店舗または電話、受付フォームで連絡しましょう。UFJ銀行と同様に、相続オフィスという部門で手続きを担当してもらいます。三井住友銀行の場合は、遺言の有無や遺産分割協議書の有無にかかわらず「委任契約書」が必要です。遺言執行者以外が手続きを進める場合は、相続人・受遺者全員の印鑑証明も必要です。

ここでも、銀行へ連絡をする前に故人の通帳・キャッシュカードなどで口座番号を確認しておきましょう。三井住友銀行の相続手続きに関する詳細は、以下で確認してください。

三井住友銀行|相続の手続方法

みずほ銀行の場合

みずほ銀行で相続手続きをおこなう場合は、店舗へ出向く、または電話で連絡しましょう。みずほ銀行では、故人の取引内容に応じた手続きになります。また遺言書の有無によっても、必要書類が異なります。遺言書がある場合は、死亡したことが記載されている戸籍謄本のみでOKです。しかし遺言書がない場合は、16歳以降で死亡時点まで連続した戸籍謄本が必要です。手続き自体は、他の銀行と同様に必要書類を提出してから1~2週間で完了します。

しかしみずほ銀行の場合、所定の相続関係届(窓口で入手可能)の提出が必須です。平日、店舗に出向くか郵送請求をおこなってください。みずほ銀行の相続手続きに関する詳細は、以下で確認してください。

みずほ銀行|相続の手続きについて

ゆうちょ銀行の場合

ゆうちょ銀行の場合は、郵貯指定の「相続確認表」を記入し、郵送または窓口へ持参します。必要書類を再度提出してから1~2週間で完了します。手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 相続の申し出をおこなう
  2. 貯金等照会書の提出する
  3. 相続確認表を記入し、提出する
  4. 「必要書類のご案内」を受け取る
  5. 必要書類を準備する
  6. 貯金等相続手続請求書を記入し提出する

二段階の手続きが必要である点は、他の銀行と異なる点であるため、留意してください。他の方法でも、相続手続きができます。詳しくは相続コールセンターや以下のページで確認してください。

ゆうちょ銀行|相続手続き

夫の死後に口座の名義変更をする際の注意点

夫の死亡後、口座の名義を変更する場合は、以下のような注意点があります。

  1. 故人の口座からむやみに出金しないほうがいい
  2. 預金口座の残高が少ない場合は手続きしても意味がない
  3. マイナスの遺産が多い場合(相続放棄をする)は名義変更しないほうがいい
  4. 戸籍謄本の収集に時間がかかり他の相続手続きがストップするリスクがある
  5. 預貯金の相続手続きを放置するのはリスクがある
  6. 名義変更前に相続税申告の準備をしたほうがいい
  7. 預貯金の相続税評価は相続開始日時点の残高で評価する

それぞれの注意点について、本章で解説します。

故人の口座からむやみに出金しないほうがいい

故人の口座からは、むやみに出金しないほうがよいでしょう。口座からお金を引き出してしまうと、相続の単純承認が成立します。単純承認が成立すると、相続放棄ができなくなってしまいます。また意味なく故人の口座から出金すると、遺産分割協議の際にトラブルの原因にもなり得ます。また出金したお金を申告していないと、税務署から脱税として疑われる可能性もあるでしょう。

口座が凍結されてしまってから、葬儀費用などの支払いが必要になることもあります。このようなケースでは、まず金融機関に問い合わせてみてください。基本的に、凍結後にお金を出し入れすることはできません。しかし金融機関や理由によっては、出金に応じてくれる可能性もあります。自己判断で出金しないようにしてください。

預金口座の残高が少ない場合は手続きしても意味がない

預金口座の残高が少ない場合は、名義変更の手続きをしてもあまり意味がありません。口座変更には時間と労力がかかるため、残高が少ない場合、労力に見合った恩恵が受けられないのです。残高の少ない預金口座は、放置してしまっても大きなデメリットはありません。法的にも期限は定められていません。

なお10年間、入出金のない口座は休眠口座になり、いずれは民間公益活動に使われます。そのため場合によっては、口座をそのまま放置していたほうがよいケースもあります。手続きをおこなう場合は、それにかかる費用や手間が預金に見合うかを検討しましょう。

マイナスの遺産が多い場合(相続放棄をする)は名義変更しない方がいい

財産にマイナスの遺産が多い場合は、相続放棄をします。相続放棄をする場合は、名義変更しないほうがよいでしょう。口座の名義変更も相続財産の処分に該当します。すでに財産の処分を進めていると見なされるため、相続放棄ができなくなってしまいます。

なお相続放棄とは、故人が残した財産の全てを放棄するものです。「なぜ財産を放棄するのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし財産にはプラス要素だけでなく、マイナス要素が含まれるケースもあります。借金や保証債務といった負債も、財産として相続してしまうと、相続人が借金をかかえることになります。このようなケースでは、相続権を放棄します。

繰り返しになりますが、相続放棄の必要性がある場合は、口座の名義変更はしないようにしてください。口座だけでなく不動産の名義変更も、財産の処分に含まれます。

戸籍謄本の収集に時間がかかり他の相続手続きがストップするリスクがある

戸籍謄本の収集に時間がかかることで、他の相続手続きがストップしてしまうかもしれません。銀行口座の名義変更には、被相続人(この場合では夫)の出生から、死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。手続きに詳しくない人が戸籍謄本の収集をおこなうためには、時間や労力がかかります。書類の収集が遅れてしまうと、名義変更以外の相続手続きもストップしてしまいます。専門家への依頼を検討するのがおすすめです。専門家へ依頼する場合は、手続き内容に応じた報酬が発生します。定期的に無料相談を実施している事務所も数多くあるため、まずは無料相談を利用してください。

預貯金の相続手続きを放置するのはリスクがある

預貯金の相続手続きを放置することには、リスクもあります。先ほど、口座の使用に法的な期限はなく、残高の少ない口座は放置してもよいと解説しました。しかし、リスクがまったくないわけではありません。故人の口座を放置することには、以下のようなリスクがあります。

  • 預金を引き出される可能性がある
  • 相続人のいずれかが死亡した場合、手続きが複雑化する
  • 10年以上の放置で休眠口座になる

銀行口座は、名義人の死亡が確認された時点で凍結されます。これは親族からの連絡によって行われる処置であり、死亡したからといって自動的に凍結されるわけではありません。死亡したことを銀行へ伝えずにただ口座を放置していると、悪用されてしまうリスクがあります。具体的には、以下のような事態が想定できます。

  • 身に覚えのない名前で、毎月預金が引き落とされている
  • 故人と同居していた家族が、勝手に出金している

上記のようなトラブルに巻き込まれてしまう可能性があるため、相続するかどうか迷っているケースやる遺産協議で財産分割が決まっていない場合でも、金融機関への連絡だけは済ませておきましょう。

また口座の相続手続きだけでなく、相続に関する手続きには、全ての相続人が関与します。ここでのポイントは相続人全員という点です。本人が口座を相続せず放置していても、法律上の相続人は存在します。そして、その相続人も死亡してしまった場合、次の相続がより複雑になってしまいます。相続権は、相続人が亡くなった後も継続し、次の相続人、またその次の相続人へと引き継がれます。これを数次相続(すうじそうぞく)と呼びます。相続人が認知症で判断能力が低下してしまう、または死亡してしまうと手続きが複雑になります。

銀行口座の相続手続きが放置される場合は、何も意図的に放置されるケースだけではありません。そもそも故人が保有していた口座を、家族が全て把握できず、放置されてしまっているケースもあります。このように長期間、放置された口座は休眠口座になります。休眠口座になった場合、貯金額は金融機関から預金保険機構に移管されます。その後、この預金は民間公益活動のために活用されます。休眠口座に手数料を定めている銀行もあり、口座を利用していないにもかかわらず、毎年手数料が引かれる可能性もあります。可能性は低いものの、金融機関は「時効消滅」も主張できます。

名義変更前に相続税申告の準備をした方がいい

名義変更前に、相続税申告の準備をしたほうが、手続きがスムーズに進みます。預金残高も課税対象となるため、相続を申告しなければなりません。その際、申告書に死亡時の残高証明を添付しなければなりません。通帳が見つからないなど、入出金の履歴が確認できない場合は取引履歴の照会を行います。相続税の申告は、故人(夫)の死亡日から10ヶ月以内におこなわなければなりません。名義変更をする前に、申告の準備をしておきましょう。

預貯金の相続税評価は相続開始日時点の残高で評価する

預貯金の相続税評価は、相続開始日時点の残高で評価されます。このとき普通預金であれば既経過利息を、定期預金であれば相続開始日までの利息から、それにかかる税金を差し引いた金額を含めて評価額とされます。

残高証明発行を依頼する際、評価額も金融機関が計算してくれます。外貨預金であっても、日本円に換算してくれるでしょう。日本円に換算する場合は、相続開始日時点の電信買相場(TTB=Telegraphic Transfer Buying Rate)によって評価されます。

まとめ

夫が死亡した際、銀行口座の名義変更する方法を解説しました。名義人の死亡が確認されると、銀行口座は凍結されます。これは死亡時の相続財産を確定させる、相続人による勝手な預金の出金を防ぐために必要な処置です。

銀行口座の名義変更をおこなうには手続きが必要であり、書類を揃えるにも手間と時間がかかります。弁護士や行政書士といった、専門家へ依頼することでスムーズに手続きを進められます。書類に不備があるなどのリスクも少ないため、手続きに時間がとれない人はぜひ利用してみてください。