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遺産の相続人が子供のみの場合はどうなる?トラブルの対処法や税負担を軽減させる方法

遺産の相続人が子供のみの場合はどうなる?トラブルの対処法や税負担を軽減させる方法

遺産相続で相続人が子供のみだった場合は、子供がそれぞれ平等に遺産を引き継ぐのが一般的です。そのため、遺言書がない場合でも、基本的には子供が遺産を平等に分割するという考え方で遺産分割を進めていきます。

しかし、遺産相続が子供のみだと「介護をした人はたくさん遺産をもらえる?」「長男はたくさんもらうべき?」といった考えが生まれて、トラブルになることも少なくないでしょう。また、遺言書の内容で、兄弟・姉妹間で受け取れる遺産に大きな差が生まれてトラブルになることも考えられます。

介護をした場合は寄与分として多くの遺産を受け取れる可能性がありますが「長男だから」という理由だけで遺産を多く受け取ることはできません。遺言書の指示によって兄弟・姉妹間で受け取れる遺産に大きな差がある場合は、遺留分を請求できる可能性があります。

このように、子供のみで遺産相続をする場合は、トラブルの発生を予見して、それに合わせて適切に対処をすることが肝心です。

そこで本記事では遺産相続が子供のみの場合に覚えておきたい知識、トラブルや対処法などを詳しく解説していきます。

なお、相続時のトラブルを正しく対処をするのは簡単ではなく、相続に関する知識も必要になってくるため、場合によっては相続に関する知識が豊富な司法書士や弁護士に相談することも検討しましょう。

本当に遺産相続人は子供のみ?

遺産相続が子供のみと考えているときに、まず確認したいのが「本当に子供のみなのか」です。

たとえば、母親は過去に亡くなっており、今回父親が亡くなった場合、一般的には相続人は子供のみになります。しかし、父親に前妻との間に子供がいたり、子供が連れ子だったりすると話は変わってきます。

そのため、まずは本当に子供のみなのか、イレギュラーなケースが発生していないのか確認しましょう。

元配偶者との子供にも相続権がある

元配偶者との子供にも相続権はあります。元配偶者と離婚したとしても、子供との親子関係が切れることはありません。そのため、離婚して一緒に暮らしていない場合でも、被相続人の子供は平等に遺産を引き継げます。相続割合に関しても、元配偶者との子供と現配偶者との子供に差はありません。

たとえば、元配偶者との間に2人の子供がおり、再婚してさらに2人の子供ができた場合、相続権がある子供は4人となります。配偶者がおらず、子供のみが相続人となる場合は、合計4人の子供が遺産を四等分するということです。

なお、離婚した相手、つまり元配偶者には相続権はありません。そのため、元配偶者が存命していても同様に子供のみが遺産を引き継ぎます。

連れ子には基本的に相続権がない

法律上で親子関係があるのは、実親子と養親子に限ります。そのため、連れ子には基本的に相続権がありません。

連れ子が相続権を得るには、被相続人が存命のうちに養子縁組によって親子関係を作る必要があります。養子となれば相続権が生まれて遺産を引き継げます。

養子にせずに連れ子に遺産を相続させたい場合は、遺言書を作成すると良いでしょう。ただし、遺言書の作成は一定のルールを守る必要があり、形式や表現方法などを間違えると無効になってしまうこともあります。そのため、遺言書作成の際は、相続に強い司法書士や弁護士に相談することも検討してください。

既に子供の誰かが亡くなっている場合は「代襲相続」にも注意する

すでに子供が亡くなっている場合は、代襲相続が発生し孫が相続人となります

たとえば、子供Aと子供Bの2人のうち、子供Bが被相続人よりも先に亡くなっていた場合、子供Bの子供(被相続人からして孫)が子供Bの代わりに相続人となります。子供Bの子供(孫)が複数いる場合は、それぞれが相続人となり、本来子供Bが相続するはずだった遺産を子供(孫)の数で等分して受け取ることになります。

すでに被相続人の子供が亡くなっている場合、残された子供の遺産の取り分が多くなるとは限らないということは理解しておきましょう。

遺産の相続人が子供のみの場合、基本的には平等に相続権がある

前提として、遺産の相続人が子供だけになるというケースは、基本的に配偶者がいない場合に限ります。配偶者が相続放棄するなどの特殊なケースでない限りは、配偶者と子供が相続人となるので間違えないようにしましょう。

遺産の相続人が子供のみとなる場合は、それぞれの子供が平等に相続権を持ちます。そして遺産のすべては子供の数に合わせて等分されて引き継がれるというのが一般的なケースです。

たとえば遺産が1,500万円で子供が2人だった場合は、遺産を二等分して750万円ずつ引き継ぐ、3人だったら三等分して500万円ずつ引き継ぐという形です。原則としては、兄弟・姉妹ごとに差はなく「長男だからたくさん引き継げる」というようなことはありません。

遺産相続が子供のみの場合に考えられるトラブル

遺産相続が子供のみだと、以下のようなケースでトラブルが発生する可能性があります。

  • 遺産分配が平等でないケース
  • 遺言書で財産分与に大きな差があるケース
  • 親の介護に偏りがあったケース
  • 親の相続財産がはっきりと分からないケース
  • 兄弟姉妹で相続に対する考えが異なるケース

それぞれのケースについて詳しく解説していきます。なお、対処法についても「遺産相続における子供同士のトラブルの対処法」にて解説しているので、併せて確認してください。

不動産など、遺産分配が困難なケース

遺産分配が純粋に平等に行えないことによってトラブルになるケースがあります。

遺産が現金だけなら、現金を子供の数だけ等分して遺産を相続できます。しかし、現金以外にも不動産のような単純に分けられない遺産がある場合も少なくありません。

不動産を分割する場合は以下のような処理をするのが一般的です。

  • 不動産を売ってできた現金を子供で等分する
  • 不動産を相続する子供が不動産の評価額の一部をほかの子供に渡す
  • 不動産を子供で共有もしくは分割して使う

不動産を今度どのように処理するのか揉めてしまうほか、不動産を相続したい子供が複数人いて争いになるケースもあります。

遺言書で財産分与に大きな差があるケース

遺言書があり、財産分与の内容が子供ごとに大きな差があるとトラブルになりやすいです。

たとえば、相続人が兄弟が2人で、遺言書に「長男にすべての財産を相続させる」と記載がされていた場合、次男は一切の遺産を引き継げないためトラブルになってしまうでしょう。

なお、相続人には遺留分といって遺産を最低限取得できる分が決まっています。前述の例だと、次男は遺留分を侵害されているため、遺留分請求ができます。つまり、遺言書を作成しても、子供はその通りに遺産を相続するとは限らず、遺留分を巡って争いが起きてしまうということです。

子供が遺産相続でトラブルに遭わないためには、遺言書は子供が遺留分を侵害しないように作成することが大事です。

親の介護に偏りがあったケース

親の介護に偏りがあった場合でもトラブルになりやすいです。

通常は子供は平等に遺産を分割することになりますが、親が亡くなる前に日常的に介護をしていた子供は、寄与分といって遺産を受け取れる額を上乗せできる可能性があります。

結果として、介護をしていた子供は「自分の時間を費やして親を介護したから遺産はたくさんほしい」という意見で、介護をしていなかった子供は「遠方に住んでいて介護ができなかっただけ」「平等に分けるべき」という意見で対立してしまうことになります。

親の相続財産がはっきりと分からないケース

親の財産がはっきりと分からないことでトラブルになるケースもあります。

たとえば、生前多くの財産を持っていると思っていた親が亡くなり、遺産相続の際に遺産が少ないと「子供の誰かが使い込みをしていたのでは?」「親の財産を横領していた人がいるのでは?」と思われることもあります。

特に親が認知症で、介護をしている子供が日々の買い物をしていたり、財産の管理をしていたりすると、介護をしている子供が遺産の使い込みを疑われてしまいます。

兄弟姉妹で相続に対する考えが異なるケース

子供それぞれで相続に対する考えが異なることで、トラブルになるケースもあります。

たとえば親が亡くなった後に「親は生前私にだけ頼っていた」「遺言書がないだけで私が遺産を受け取るべきだと親が言っていた」と兄弟・姉妹が主張することがあります。遺言書による指定や寄与分などの特殊なケースが発生しない限りは、兄弟や姉妹は平等に遺産を相続しますが、子供それぞれの主張によってトラブルが発生する可能性があることは理解しておきましょう。

また、旧民法では長男が遺産をすべて引き継ぐという制度がありました。そのため、現在もそのような考えのもと「長男がすべての遺産を相続するべき」と主張する可能性も考えられます。

繰り返しになりますが、原則として子供だけで遺産相続をする際は、兄弟・姉妹ごとに差はありません。特別な理由がない限りは平等に分けるのが基本と理解しておきましょう。

遺産相続における子供同士のトラブルの対処法

前述したように、子供のみが遺産相続をする際にはさまざまなトラブルが発生します。トラブルを回避するには以下の対処をしましょう。

  • 遺言書を用意する
  • 家族で話し合いを行う
  • 生命保険金を活用して格差を無くす
  • 親の財産状況を生前に把握しておく
  • 家族信託を活用する

生前に親が対処できることもあれば、子供が対処できることもあります。トラブルにならないように可能な限り対処をしましょう。

遺言書を用意する

最も有効な対処法といえるのが、遺言書の作成です。一定の形式に則って、正しく遺言書を作成できれば、残された子供はその内容に従って遺産相続をするだけなので、トラブルにはなりにくいでしょう。

ただし、遺言書の内容が偏ってしまうと、たとえ正しい形式で作成したとしてもトラブルになってしまいます。そのため、遺言書の内容は、子供達の状況・心情などを察したうえで作成することが大事です。たとえば、介護をしてくれた子供には多く相続させたり、同居をしていた子供には現金ではなく家を相続させたりと、単純に平等に分割するのではなく、ご自身のケースに合わせて作成しましょう。

また、正しい形式に則って作成しないと無効になってしまう可能性もあるので、可能な限りは相続に強い司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

家族で話し合いを行う

家族で話し合いをすることも大事です。

子供からすると、親が生きている間に遺産について話をするのは気が引けてしまうこともあります。そのため、親の立場であるなら、率先して子供を集めて話し合いの場を作りましょう。生きているうちに話し合いができれば、親も子も納得できる形にしやすいです。

亡くなってからでは、親に確認を取ることができないため、子供の一人がでたらめな主張をする可能性も考えられます。親が亡くなった後に子供が争いをしてしまうのは、気持ちの良いものとは言えないため、生前に話し合いを済ませておき、亡くなった後に家族が不満を抱えることなく送り出せる環境を作りましょう。

生命保険金を活用して格差を無くす

生命保険金を活用することも相続時のトラブルの回避につながります。

生命保険の保険金は、指定した受取人が受け取るシステムになっています。そのため、遺産を受け取ってほしい人を保険金の受取人にすることで、トラブルを抑えやすくなるでしょう。

たとえば、1人の子供には不動産を相続させ、もう1人の子供には不動産の評価額に相当する保険金を受け取れるようにすることが可能です。このような形であれば、不動産のような分けにくい遺産があっても平等に相続ができるようになります。

そのほか、生命保険金は相続税対策にもなるほか、亡くなった後すぐに現金化ができたり、相続税資金の準備にも使えたりと、非常に便利です。可能な限り生命保険を活用しましょう。

親の財産状況を生前に把握しておく

親の財産状況は生前に把握しておきましょう。同時に親の立場からしても、子供の財産状況を伝えられるようにしておくことが大事です。

財産状況が分からないと、遺産の使い込みがあった時に気付くのが困難です。また、亡くなった後に遺産が見つからず、眠ったままになってしまう可能性もあります。

そのため、遺産となり得るものの一覧表を作り、亡くなった時にスムーズに遺産相続できるような形にしておきましょう。把握しておきたい主な財産は以下のとおりです。

  • 現金
  • 高価な財産(骨董品・貴金属など)
  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式
  • 貸金庫
  • 生命保険
  • 借金

タンス貯金などで自宅に現金がある場合や、高価な財産がある場合なども、遺品整理の際に誤って処分しないように把握しておくことが大事です。

また、株式はどの証券会社で所有しているのか、貸金庫はどこのサービスを使っているのかなど、細かくチェックしてください。

家族信託を活用する

家族信託を活用するという手もあります。家族信託とは、家族にご自身の財産を託し管理してもらうことです。

家族信託をしておけば、ご自身が認知症になってしまった時でも、認知症になる前の希望に合わせて家族に財産を管理してもらえます。「今後認知症になってしまった時のお金の管理が不安」という場合に特に活躍するでしょう。

また「長男はお金の管理が得意だが次男は金遣いが荒くて遺産を正しく使ってもらえるか心配」という場合でも、長男に家族信託をしておけば、より良い形で遺産を残せるでしょう。

ただし、家族信託にはメリットだけでなくデメリットもあります。司法書士や弁護士などの専門家に、家族信託をするべきなのか相談することも検討しましょう。

子供の税負担を軽減させる方法

子供が遺産相続をする際の不安要素として、ほかにも挙げられるのが「税負担」です。税負担を軽減させる方法としては主に以下の4つがあります。

  • 小規模宅地等の特例を活用する
  • 未成年者控除を活用する
  • 障害者控除を活用する
  • 相次相続控除を活用する

これらの節税方法を確認し、より多くの遺産を使えるようにしましょう。

小規模宅地等の特例を活用する

小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業用もしくは居住用に使っていた宅地を引き継ぐ場合に、評価額の最大80%を減額したうえで税の計算をするというものです。

たとえば、1億円の宅地で80%減額された場合、課税価格に算入する額は2,000万円になります。

小規模宅地等の特例を適用するには、一定の要件に当てはまる必要があり、内容は多少複雑なので司法書士や弁護士に相続の相談をすると同時に、小規模宅地等の特例についても聞いておきましょう。

未成年者控除を活用する

未成年者控除とは、相続人が未成年の場合に適用できる控除です。控除とは、税金がかからないようになる額のことです。

未成年者が満18歳になるまでの年数×10万円が控除額となります。(1年未満の期間は切り上げて1年になる)

たとえば未成年者が15歳だった場合は、18歳までは3年あるため3×10万円で、控除額は30万円です。

未成年の子供に遺産相続する場合は、未成年者控除も考慮したうえで遺産分配をすると良いでしょう。

障害者控除を活用する

障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者である場合に適用できる控除です。一般的に障害者は健常者よりも暮らしで不便になることが多く、障害者控除は、そんな障害者が相続税の負担を減らして暮らしやすくするための制度です。

障害者が満85歳になるまでの年数×10万円、特別障害者の場合は年数×20万円が控除額となります。(1年未満の期間は切り上げて1年になる)

未成年者控除と同様に、障害者の子供に遺産相続をする際は、控除を考慮したうえで遺産配分をしましょう。

相次相続控除を活用する

相次相続控除は、被相続人に対して10年以内に相続が発生していた場合に、前回の相続税額から一定額を控除できる制度です。

前回の相続から1年経過するごとに控除額は10%少なくなります。つまり、10年経過すると相次相続控除はなくなり、1年経過後なら90%の控除を受けられます。ただし計算式は多少複雑で、前回の相続税額から単純に年数分の割合が控除されるというわけではなく、被相続人や相続人の純資産価額なども計算しなければいけません。

被相続人が直近で遺産を相続していた場合は、司法書士や弁護士に相談しましょう。

子供に相続させたくないときの対処法

中には「配偶者がいなくて相続人は子供のみになってしまうけど相続させたくない」と考えている人もいるでしょう。

そんなときは以下の対処法をおすすめします。

  • 遺言書に遺産が渡らないように記す
  • 相続人廃除の手続きを行う

それぞれ解説していきます。

遺言書に遺産が渡らないように記す

遺言書に子供以外の人物に遺産を渡すように記すことで、子供に渡らないようにできます。また、国や地方自治体や団体などに遺産を全額寄付をするというのも一つの手です。

どのような形であれ相続人が子供のみであったとしても、遺産をすべてほかの人物・団体に渡すように遺言書に記せば子供に相続させずに済みます。

ただし、厳密には子供は遺留分を請求できます。そのため、たとえ遺言書にすべての遺産を子供以外に渡す旨を記載しても、子供が遺留分請求をすれば、遺産の一定割合を子供が引き継ぐことは可能です。

遺留分によって子供に遺産が渡るのを避けたい場合は、生前に財産を使い、相続遺産を減らしましょう。

相続人廃除の手続きを行う

相続人廃除によって子供に遺産が渡らないようにすることも可能です。相続人廃除をした場合は、遺留分の請求もできなくなります。

ただし、相続人廃除をするには、家庭裁判所に申し立てる必要があり、さらに以下のような一定の理由がなければ認めてもらえません。

  • 相続人から虐待を受けた
  • 相続人から強い侮辱を受けた
  • 相続人が重大な犯罪行為をし有罪判決となっている

つまり「なんとなく子供が嫌いだから」「子供よりもほかの人にお金を残したいから」といった理由では相続人廃除は認めてもらえません。

子供から虐待や侮辱行為などをされていて、認められる可能性がある場合は、一度司法書士や弁護士に相談してみましょう。

まとめ

遺産相続で相続人が子供のみなら、子供がそれぞれ平等に遺産を引き継ぐというのが基本です。遺産が1500万円で、子供が2人なら750万円ずつ、3人なら500万円ずつ引き継ぐという形です。

しかし、実際は遺産というのは現金だけでなく不動産があって単純に分けられないこともあります。また「介護をしていたから遺産を多く受け取りたい」という意見が出て、相続が複雑になってしまうこともあるでしょう。

そのため、子供のみが遺産相続をする場合は、被相続人が生前のうちに遺言書を作成したり話し合いをしたりと、さまざまな対処をしておくことが大事です。

もし「相続の話し合いを進めたいけど上手くいかない」「すでに親が亡くなって子供だけが相続人の状態でトラブルが発生している」と悩んでいる場合は、相続に関する知識が豊富な司法書士や弁護士に相談してみてください。