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家族の死後に預金を引き出しても違法ではない!ただし相続トラブルには要注意

家族の死後に預金を引き出しても違法ではない!ただし相続トラブルには要注意

入院費や葬儀代などの支払いのため、「死亡した家族の口座から預金を引き出せるのか」「預金を引き出しても違法にはならないのか」気になっている方も多いでしょう。
銀行口座は金融機関が名義人の死亡を知った時点で凍結されますが、凍結前なら引き出しは可能で、家族・親族による引き出しなら基本的に罪には問われません。
しかし、正しい手順を踏まないと他の相続人と民事上のトラブルに発展する恐れもあるので注意が必要です。
そこで本記事では、家族の死後に預金を引き出す際に起こり得るトラブル例やトラブル回避のポイントについて解説していきます。

家族の死後に預金を引き出すのは違法ではない

結論からいうと、家族の死後に預金を引き出すのは違法ではありません。ただし、他の相続人が合意していないにもかかわらず、勝手に預金を引き出すと相続トラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。

刑事上は罪に問われない

家族や親族が死後に預金を引き出した場合、刑事上の罰を科されることはありません。理由としては、窃盗罪や横領罪などの財産罪で適用される「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」という刑法上の特例が深く関係しています。
「親族相盗例」とは、親族間で発生した一部の犯罪行為(窃盗や横領など)または未遂罪については刑を免除、または親告罪とするという法律です。刑が免除される親族の範囲は下記の通りです。

  • 配偶者:法律上の婚姻関係を結んでいる者(事実婚や内縁関係にある者は対象外)
  • 直系家族:両親や子ども、祖父母、孫など直接上下に繋がっている血族
  • 同居親族:6親等以内の血族または3親等以内の姻族で、かつ本人と同居している者

預金の引き出しで窃盗罪や横領罪が成立する場合でも、引き出した人が口座名義人の配偶者・直系家族・同居親族のいずれかに該当する場合は罪に問われません。
口座名義人と同居していない親族が勝手に預金を引き出した場合は親告罪として扱われるため、告訴された場合のみ罪に問われる可能性があります。
ただし、7親等以上の血族や4親等以上の姻族は親族に該当しないため、「親族相盗例」は適用されません。
同居していない親族や親族以外が代理で預金を引き出した場合は、刑事上の罪に問われる可能性があるので注意が必要です。

民事上はトラブルの可能性がある

「親族相盗例」によって刑が免除される家族や親族は、預金を引き出しても刑事上の罪に問われることはありません。しかし、民事上では他の相続人とトラブルに発展する可能性があります。
亡くなった口座名義人の預金は相続財産に該当するため、他の相続人の相続分まで勝手に引き出した場合は民事上の不法行為に該当します。
盗んだお金を弁済しなかった場合は、他の相続人から損害賠償請求や不当利得返還請求の訴訟を起こされる可能性もあるため注意しましょう。

預金引き出し時のトラブルを回避するためのポイント

預金引き出し時のトラブルを回避するためには、下記のポイントをおさえた上で引き出しましょう。

  • 必ず他の相続人に知らせる
  • 自分の口座に入金しない
  • 死亡直前に引き出した預金は相続財産に含める

ここからは、上記のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。

必ず他の相続人に知らせる

亡くなった口座名義人の墓地購入や葬儀代など、正当な理由があって預金を引き出す場合であっても、必ず他の相続人全員に知らせた上で引き出すようにしましょう。
無断で引き出すと他の相続人から相続財産の使い込みを疑われ、相続トラブルに発展するリスクが高まります。
使途不明で不信感を抱かれないよう、使用時期・使途・使用額が分かる領収書を必ず残しておきましょう。

自分の口座に入金しない

家族の死後に口座から引き出したお金を自分の口座に入金したり、自分のために使ったりすると下記のようなトラブルに発展する可能性があります。

  • 他の相続人から相続財産の使い込みを疑われる
  • 贈与とみなされて贈与税が発生する場合がある
  • 相続財産隠しとみなされて税務調査の対象となる場合がある
  • 亡くなった口座名義人に負債があることが後で発覚しても、相続放棄ができなくなる

預金を自分名義の口座に入金するなど、自分のために使ったと見なされた場合は「単純承認」が成立します。単純承認とは、亡くなった人の遺産をプラス・マイナスどちらもすべて相続することです。
預金だけでなく、負債がある場合もすべて相続する必要があります。また他の相続人の相続分まで入金したり、使い込んだりした場合は損害賠償請求や不当利得返還請求の民事訴訟に発展する恐れもあるため注意しましょう。

死亡直前に引き出した預金は相続財産に含める

医療費や介護費、墓地や墓石の購入費、葬儀代などのために引き出した場合でも、死亡直前に引き出した預金は手元現金として相続財産に含めましょう。
これは、相続税の申告漏れを防ぐためです。葬儀代は相続税控除の対象なので、相続財産に含めても相続税申告の際に控除されます。
死亡直前に引き出した預金を相続財産に含めないと、税務調査が入って追徴課税が発生する恐れがあるため、相続税の申告は正しく行いましょう。

家族の死後 (口座凍結後)に預金を引き出す正しい方法

口座名義人が亡くなったことが銀行に伝わると、遺産分割が終了するまで口座が凍結されて預金が引き出せなくなります。
しかし、墓地・墓石の購入費や葬儀代のために、遺産分割が終了する前に凍結口座から預金の引き出しが必要なケースもあるでしょう。
家族の死後 (口座凍結後)に預金を引き出す正しい方法としては、下記の3つが挙げられます。

  • 相続人全員で預金の解約手続きを行う
  • 金融機関による仮払い制度を利用する
  • 家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を認めてもらう

ここからは、上記の方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。

相続人全員で預金の解約手続きを行う

遺産分割が終了する前に預金を引き出したい場合は、相続人全員で預金の解約手続きを行う方法が一番安全です。
相続人全員の同意を得た上で必要な書類を金融機関にすべて提出すれば、2~3週間程度で解約手続きが完了し、預金の払い戻しが受けられます。
預金の解約手続きに必要となる主な書類は下記の通りです。

  • 死亡した名義人の戸籍謄本、除籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 凍結解除を希望する口座の通帳やキャッシュカード

解約手続きに必要な書類は、遺言書や遺産分割協議の有無、金融機関などによって異なります。
遺言書や遺産分割協議書がない場合は、以下の2つの書類を必ず準備しましょう。

  • 死亡した名義人の戸籍謄本
  • 死亡した名義人の除籍謄本

詳細については手続きを行う金融機関で事前に確認しておくことをおすすめします。

金融機関による仮払い制度を利用する

相続人全員の同意が得られず、口座の解約手続きができない場合は、金融機関による仮払い制度を利用する方法があります。
仮払い制度とは、被相続人の入院費や葬儀代の支払いなどのためにお金が必要になった場合、一定の金額であれば凍結中の口座からでも預金が引き出せる制度です。
2019年7月の民法改正により、家庭裁判所の判断を経なくても、金融機関に申請することで直接払い戻しが受けられるようになりました。
各相続人が単独で凍結口座から預金を引き出せるようになりましたが、金融機関に直接申請する場合は引き出せる金額に上限があります。
上限金額は下記のいずれかのうち低い方の金額です。

  • 150万円
  • 死亡時の預金残高×法定相続分×3分の1

上記の金額は金融機関ごとに適用されるため、故人が複数の口座を持っている場合はそれぞれで手続きを進める必要があります。
また、金融機関に申請する際に必要となる主な書類は下記の通りです。

  • 死亡した名義人の戸籍謄本、除籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 払い戻しを希望する相続人の印鑑証明書
  • 申請者の本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)

なお、戸籍謄本・除籍謄本ともに取得する際は、本籍地の役所に請求する必要があります。
被相続人の本籍地が遠方にある場合は郵送でも請求可能です。請求書は自治体ごとに決まったフォーマットがあるので、請求先の役所のホームページからダウンロードし、以下の書類とともに郵送しましょう。

  • 申請者の本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
  • 申請者との関係が証明できる戸籍
  • 手数料750円(定額小為替で準備)
  • 役所からの返送用封筒(申請者の郵便番号・住所・氏名を記入し切手を貼付する)

本籍地は住民票に記載されているので、分からない場合は役所で住民票の取得から行いましょう。

【注意1】故人の口座がゆうちょ銀行の場合は手続きが異なる

故人の口座がゆうちょ銀行の場合は、相続手続きが他の銀行と異なる点が下記の2つあります。

  • 書類の提出が二段階ある
  • 仮払い制度の利用で引き出したお金は、ゆうちょ銀行の口座にしか送金できない

ゆうちょ銀行で相続手続きを行う場合、まずは「相続確認表」という書類に亡くなった名義人の氏名や遺言書の有無、貯金の種類、口座の記号番号などを記入・提出しましょう。
書類を提出してから1週間ほどで、書類の内容をもとに貯金事務センターから必要書類の案内が郵送されます。
案内に記載されている書類(戸籍謄本や印鑑証明書など)を準備し、郵送されてきた「貯金等相続手続書」と一緒に提出します。
書類提出が「相続確認表」と「貯金等相続手続書」の二段階になっているため、他の金融機関と比べて手続き完了までに時間がかかる点に注意が必要です。
また、故人の口座預金の送金先として指定できるのはゆうちょ銀行の口座のみで、他の金融機関の口座には送金できません。
申請した相続人がゆうちょ銀行の口座を持っていない場合は現金での受け取りになります。

【注意2】ネット銀行の場合は故人の口座見落としリスクがある

実店舗を持たないネット銀行の場合、相続手続きのやり方は通常の金融機関と変わりありません。
しかし、ネット銀行は紙の通帳が基本的に発行されないため、故人がネット銀行の口座を持っていたのを見落としてしまうリスクがあります。
実際、相続人の約3割がネット銀行の口座やネット証券の口座、仮想通貨など故人のデジタル資産を発見できていないという調査結果が発表されています。
相続手続きが終わった後にネット銀行の口座が見つかった場合、手続きをやり直す必要があるため注意が必要です。
そのため、故人がネット銀行の口座を持っていないか故人宛の郵送物やカードなどきちんと確認するようにしましょう。

家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を認めてもらう

金融機関による仮払い制度のほかに、家庭裁判所による仮払い制度もあります。
家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」の申し立てを行い、認められれば故人の凍結口座から預金全額または一部を引き出せる制度です。
金融機関による仮払い制度では、1つの金融機関につき最高でも150万円までしか引き出せません。
そのため、墓地・墓石の購入費や葬儀代など高額な支払いが必要なときはお金が足りないケースもあります。
一方、家庭裁判所による仮払い制度では決まった上限額がなく、家庭裁判所が認めた分の金額が引き出せます。
金融機関による仮払い制度の上限を超える支払いが必要なときに便利です。しかし、利用するには下記の条件を満たす必要があるので、あらかじめ確認しておきましょう。

  • 仮払いの必要性があること
  • 遺産分割調停または審判中であること
  • 他の相続人の利益を侵害しないこと

遺産協議の段階や仮払いの必要性がないと判断された場合や他の相続人の利益を侵害する恐れがあると判断された場合は、申請が認められません。
払い戻しは受けられないので注意しましょう。また、申請の際は下記の書類の提出が必要になります。

  • 家庭裁判所の審判書謄本
  • 申請者の印鑑証明書

申請先は遺産分割調停または審判中を申し立てている家庭裁判所です。

正しい方法で預金を引き出した場合でも注意すべきこと

正しい方法で故人の預金を引き出した場合でも、注意すべき点がいくつかあります。

  • 手続きが煩雑
  • 申請から承認まで時間がかかる
  • 遺言書がある場合は引き出しができないことがある
  • 預金を引き出すと、相続放棄ができなくなる可能性がある

上記の中でも特に注意したいのが、故人の口座から預金を引き出すと相続放棄ができなくなる可能性がある点です。
相続には前述の「単純承認」を含めて、下記の3つの選択肢があります。

  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する
  • 限定承認:相続によって得るプラスの財産を限度として、マイナスの財産も相続する
  • 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続しない

故人が引き継ぐ資産以上の負債を抱えていた場合、限定承認か相続放棄を選択すれば相続によって莫大な負債を抱えてしまうのを防げます。
しかし、引き出した預金の一部を生活費など私的に使用した場合は、単純承認とみなされるため相続放棄ができません。
安易に預金を引き出すと相続によって莫大な借金を抱えてしまう恐れがあります。
そのため、故人の相続財産をすべて把握しきれていなかったり相続放棄を検討したりしている場合は、安易に預金の引き出しを行わない方が無難です。
ただし、引き出した預金の全額を入院費や墓地、墓石の購入費や葬儀代など、故人のために使用したのであれば、単純承認は成立しないので相続放棄が可能です。

正しい方法で預金を引き出さなかった場合の相続トラブル例

家族の死後に正しい方法で預金を引き出さないと、下記のような相続トラブルに発展する恐れがあります。

  • 使途を説明できず相続財産の使い込みを疑われる
  • 相続分を超えた預金を引き出し他の相続人から不信を買う
  • 不当な引出しとみなされ他の相続人から損害賠償を請求される
  • 相続放棄が行えず借金を抱える

では、上記のトラブル例をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

使途を説明できず相続財産の使い込みを疑われる

家族の死後に引き出した預金の使途を説明できないと、他の相続人から相続財産の使い込みを疑われてトラブルに発展する場合があります。
故人の葬儀代や墓地・墓石の購入費、入院費など正当な理由で預金を引き出したのであれば、他の相続人も納得してくれる可能性が高いです。
そのため、正当な理由のために故人の口座から預金を引き出して使った場合は、きちんと領収書を残しておき、他の相続人に支出の目的を明確に説明できるようにしておきましょう。

相続分を超えた預金を引き出し他の相続人から不信を買う

自分の相続分の範囲を超える金額を引き出すと、他の相続人から「相続分が減ってしまうのではないか?」という不信を買う恐れがあります。
故人の葬儀代や入院費の支払いなどやむを得ない事情で引き出す場合でも、必要最低限の引き出しに留めておきましょう。
もし、相続分を超える預金の引き出しが必要な場合は、他の相続人全員に支出の目的を説明して同意を得てから引き出すことをおすすめします。

不当な引出しとみなされ他の相続人から損害賠償を請求される

領収書を残しておらず預金の使途を説明できないと、不当な引き出しとみなされて他の相続人から損害賠償を請求される可能性があります。
民事訴訟にまで発展すると相続手続きが長引くほか、余計な手間とお金がかかることになります。
そのため、 相続手続きが終了する前に預金を引き出す場合は他の相続人と話し合い、預金の使い道や金額が分かる領収書はきちんと残しておくようにしましょう。

相続放棄が行えず借金を抱える

相続手続きが終了する前に故人の口座から預金を引き出して使用すると、単純承認とみなされて相続放棄が行えなくなるケースがあります。
単純承認とみなされるのは、引き出した預金の一部を自分の生活費など私的に使用した場合のみです。
故人が預金以上の借金を抱えていることを知らずに私的な使い込みをした場合、相続放棄ができないため莫大な借金を抱えることになります。
そのため、相続手続きが終了する前に預金を引き出す場合は、故人の葬儀代や入院費の支払いなど故人のために使用する範囲に留めておき、私的に利用するのはなるべく控えましょう。

家族の死後に他の相続人が違法に預金を引き出した場合の対処方法

家族の死後に他の相続人が違法に預金を引き出した場合は、下記の方法で対処しましょう。

  • 遺産分割協議で請求する
  • 不当利得の返還請求や損害賠償請求を行う

ここからは、上記の対処方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。

遺産分割協議で請求する

他の相続人が故人の死後に預金を引き出して使い込んでいた場合、使い込んだ分を遺産分割協議で請求可能です。
民法でも、使い込んだ相続人以外の相続人全員が同意すれば、使い込まれた預金も相続財産に含めて遺産分割できることが規定されています。
たとえば、故人の口座に5,000万円があり相続人の1人が1,000万円使い込んだ場合は、使い込まれる前の5,000万円を基準に遺産分割が可能です。
もちろん、使い込まれた分の1,000万円は使い込んだ相続人の取り分から差し引かれるため、他の相続人は本来の取り分で相続できます。

不当利得の返還請求や損害賠償請求を行う

遺産分割協議での解決が難しい場合、他の相続人は預金の使い込みに対する「不当利得返還請求」、または不法行為に対する「損害賠償請求の民事訴訟」を起こせます。
民事訴訟は遺産分割調停を行う家庭裁判所ではなく、民事裁判所(地方裁判所・簡易裁判所)で行います。
ただし、時効を過ぎると、権利が消滅して請求が行えなくなるので注意が必要です。

請求内容 時効
不当利得返還請求 権利を行使できることを知ったときから5年、または権利を行使できるときから10年
損害賠償請求 不法行為を知ったときから3年、または不法行為時から20年

請求が認められるためには、預金の不当な使い込みによって侵害された利益や相手の悪意を立証するための証拠集めが重要なポイントになります。
ただ、個人で証拠を集めようとすると非常に手間がかかるほか、専門的な知識や経験が必要になることも多いです。そのため、民事訴訟に発展した場合は専門家である弁護士への相談をおすすめします。

相続人が認知症や障がい者である場合の対処法

相続人が認知症や障がい者である場合は、相続人の意思能力の有無で手続き方法が異なります。

意思能力が十分にある場合 成年後見人を付けずに遺産分割手続きが可能
意思能力が不十分な場合 成年後見人を付けて遺産分割手続きをするか、法定相続分通りに相続する

障がいを持っていても十分な意思能力がある場合は、健常者と同様に1人で相続手続きを行えます。
認知症や障がいによって意思能力が不十分である場合は、すべての法律行為が無効になるため、遺産相続協議を行う場合は成年後見人を付けなければなりません。
成年後見人を付けず、認知症や障がいで意思能力が不十分な相続人に無理やり署名・捺印させた遺産相続協議書は無効です。
成年後見人は、家庭裁判所に申し出て選任されます。親族が成年後見人になることも可能ですが、家庭裁判所の判断によって弁護士や司法書士などの専門家が選任される場合もあります。
もし、専門家が成年後見人になった場合は、毎月報酬の支払いが必要です。なお、成年後見人は本人の意思能力が回復するか、本人が亡くなるまで継続され、正当な理由がなければ解任できません。
そのため、遺産分割協議が終了した後も報酬を支払い続ける必要があります。成年後見人の報酬を支払い続けるのが難しい場合は、法律で決められた相続分通りに相続する方法をおすすめします。
法定相続分通りに相続する場合は遺産相続協議を行う必要がないため、意思能力が不十分な人でも成年後見人を付けずに相続が可能です。

まとめ

家族や親族が故人の口座から預金を引き出しても刑事上の罪に問われることはありませんしかし、間違った方法で引き出すと他の相続人とトラブルになる可能性があります。
他の相続人の相続分を超える金額を無断で引き出したり、預金の使途を説明できなかったりした場合、不当利得返還請求や損害賠償請求の民事訴訟にまで発展する恐れがあるため注意が必要です。
万が一葬儀代や入院費の支払いなどやむを得ない事情で引き出す場合は、本記事で紹介したポイントを踏まえて正しい手順で行いましょう。
他の相続人に使途を明確に説明できるように領収書もきちんと保管しておくことをおすすめします。