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親の面倒をみない長男をどうする?相続や子供の義務を解説

親の面倒をみない長男をどうする?相続や子供の義務を解説

親の面倒をみない長男がいると、家族間の摩擦や相続問題に発展する可能性があるため、可能であれば長男にも親の世話をさせたいと思いますよね。

しかし、親の世話は長男だけの義務ではありません。
なぜなら、日本の法律では、親の世話はすべての子供が負う義務とされています。
具体的には、民法877条第1項に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養の義務を負う」と明記されています。

これは、親の世話をする義務が長男だけにあるわけではなく、すべての子供が同等の責任を負っていることを示しています。
さらに親の面倒をみないと法的な問題が生じる可能性もあるため、注意が必要です。

それでも、親の世話をしない長男を見過ごすわけにはいきません。親の面倒をみない長男への対策として、以下のような方法が考えられます。

  • 金銭的援助と介護を分担する
  • 親の生活保護受給を検討する
  • 親のお金を利用して介護施設に入居させる
  • 扶養請求調停を申し立てる

また、相続対策も重要です。なぜなら、相続権は原則すべての子供が平等に持っており、受け取り分の調整をしなければ、兄弟姉妹間でトラブルが生じる可能性があるためです。
兄弟間で相続に関するトラブルを避けるためにも、親がまだ元気なうちに以下のことを決めておくとよいでしょう。

  • 親の意思を聞いておく
  • 親の介護をどこまで行うか話し合う
  • 遺言書を作成する
  • 生前贈与を行う
  • 生命保険の受取人にする
  • 家族信託でお金を管理・運用してもらう

本記事では、親の面倒をみない長男に対する対応策、親の面倒を長男がみない場合の相続への影響、親が元気なうちに決めておきたい事項などについて、わかりやすく説明します。親の介護問題や相続問題に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

親の面倒をみない長男への対処法

もし長男が親の面倒をみない場合、家族はどのように対処すべきでしょうか。親の面倒をみない長男に対する対策として考えられる方法は次の4つです。

  • 金銭的援助と介護を分担する
  • 親の生活保護受給を検討する
  • 親のお金を利用して介護施設に入居させる
  • 扶養請求調停を申し立てる

それぞれの内容について1つずつ詳しくみていきましょう。

金銭的援助と介護を分担する

1人が金銭的援助と介護の両方を担当すると、不公平感が生じる可能性があります。そのため、金銭的援助と介護の役割分担を提案することは有効な対処法です。

たとえば、もし長男が介護を避けるなら、金銭的援助は引き受けてもらうように提案してみましょう。
家族全員が負担を共有することで、1人だけが過度なプレッシャーを感じるのを防げます。

また、家族全員で介護のローテーションを組むなどして、負担を軽減するようにしてもよいでしょう。役割分担をする際は、それぞれが「自分にできそうなこと」と「難しいと感じること」を具体的に確認し合うことが重要です。

親のお金を利用して介護施設に入居させる

親のお金を活用して介護施設への入所を手配することも1つの選択肢です。親が一定の財産を所有している場合、その資金を使って介護施設でのサービスを利用できます。また、親の資産だけでは介護費用が足りない場合、兄弟姉妹全員で費用を分担することも検討してみてください。

この方法を選ぶ際は、親の意思を尊重し、意思に沿った施設を選ぶことが大切です。また、介護施設の費用は高額であるため、長期的な視点で資金計画を立てる必要があります。さらに、親が介護施設に入所した後も孤独感をおぼえないように、家族が定期的に訪問するなどの配慮も必要です。

親の生活保護受給を検討する

親と子供の双方が経済的に困難な状況にある場合、親の生活保護受給を検討することも1つの解決策となります。生活保護は「最後のセーフティネット」とも称され、生活に困窮した人々が最低限の生活を維持できるようにするための制度です。

生活保護の支給金を活用して、親の介護施設への入所を検討することも可能です。
ただし、生活保護の申請には一定の要件があり、すべての人が受けられるわけではありません。
まずは、親が生活保護の対象となるかどうかを確認し、ケースワーカーやケアマネジャーに相談することが重要です。

さらに、親が生活保護を受けることで、長男やその他の家族にどのような影響が及ぶのかを把握することも大切です。生活保護は世帯単位で受給されるため、基本的には親が生活保護受給者となれば、同居している子供も生活保護受給者となります。同居していない場合は、扶養義務調査が行われます。これらの点も考慮に入れて検討しましょう。

扶養請求調停を申し立てる

長男が親の面倒をみない場合、兄弟姉妹が扶養請求調停を申し立てることも、有効な対策の1つです。扶養請求調停は、直系血族や兄弟姉妹間での扶養義務について、話し合いが困難または不可能な場合に、家庭裁判所に申し立てる手続きのことです。

扶養請求調停を申し立てることで、裁判所が任命した調停委員が兄弟姉妹間に介入し、話し合いによる合意を目指します。話し合いが成立せず、調停が不成立となった場合には、審判が開始され、裁判所から最終的な判決が下されることもあります。

長男を含め直系家族は親の面倒をみる義務がある

日本の法律では、親の世話をする義務は直系家族に課せられています。
具体的には、民法877条第1項により、「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養の義務を負う」と規定されています。直系血族とは、自分から直接上行または下行する親族、つまり、父母や祖父母、子供や孫などを指します。

これは、親の面倒をみる義務が長男だけに限らず、すべての子供にあることを示しています。
つまり、長男だけに特別な義務があるわけではなく、他の兄弟たちも同様に義務を負っているということです。

参照:民法 | e-Gov法令検索

扶養義務は身体的な介護だけではない

扶養義務とは、親が支援を必要とした際に、子供が親を支援する責任のことです。これは、身体的な介護だけに限りません。

生活費の提供や介護費・医療費の支払いなど、経済的な援助も含みます。
したがって、身の回りの世話や介護を行っていないからといって、扶養義務を果たしていないとは言えないことを覚えておきましょう。

経済的に余裕がない場合は扶養義務が発生しない

日本の法律において、子供は親の面倒をみる義務があるとされています。ただし、この義務は、「自分(配偶者や子供を含む)の社会的地位や収入に見合った生活を維持した上で、余裕がある範囲で、生活に困窮する親族を扶養する義務」と解釈されています。

つまり、自分の生活が手一杯で経済的に困難な状況にある場合は、扶養義務は免除されます。
この「経済的に困難な状況である」という判断は家庭裁判所が個々の生活状況や収入、支出を考慮して行います。判断の基準は、生活扶助基準額を世帯収入が超えているかどうかになります。

長男も含め親の面倒をみないと罪に問われる可能性も

先述のとおり、経済的に困難な状況にある場合、親の面倒をみることは必須ではありません。
しかし、面倒をみないことで万が一のことがあった場合には、以下のような法的責任を問われる可能性があるため注意が必要です。

  • 保護責任者遺棄罪
  • 保護責任者遺棄致傷罪
  • 保護責任者遺棄致死罪

保護責任者遺棄罪(刑法第218条)は、保護する責任のある者が老年者や幼年者などを遺棄したり、必要な保護をしなかったりした場合に適用されます。罰則は3か月以上5年以下の懲役です。

保護責任者遺棄致傷罪は、保護の義務を負っているにもかかわらず、その責任を放棄し、結果的に対象者に傷害をもたらした場合に適用されます。罰則は3か月以上15年以下の懲役です。

保護責任者遺棄致死罪(刑法第219条)は、保護の義務を負っているにもかかわらず、その責任を放棄し、結果的に対象者を死亡させた場合に適用されます。罰則は3年以上20年以下の懲役です。

上記のように、親の面倒をみるかどうかは、自身の経済状況だけでなく、法的な責任も考慮する必要があることを頭に入れておきましょう。

親の面倒をみない長男がいる場合、相続に影響する?

日本の法律では、親が遺言を残さない限り、すべての子供が平等に相続権を持つと定められています。しかし、親の面倒をみない長男がいる場合、その行動が相続に影響を及ぼす可能性があります。相続への影響について、これから具体的に解説していきます。

寄与分によって他の親族に遺産が上乗せされる場合もある

親の世話をしない長男がいる場合、その行動が相続に影響を与えることがあります。
具体的には、親の介護や生活支援に貢献した親族は、その貢献が「寄与分」として認められ、遺産分割の際に考慮されることがあります。

寄与分とは、被相続人(親)の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人(子供)に対し、その貢献度に応じて、相続時に遺産の取得分が増える可能性がある制度です。

身の回りの世話や介護はもちろん、財産管理、家事従事、出資なども寄与分として認められることがあります。そのため、長男が親の面倒をみない場合、他の親族の寄与分が増え、遺産分割に影響を及ぼす可能性があるのです。

ただし、寄与分を主張するには、その事実を証明しなければなりません。また、寄与分が認められるのは、相続人が通常の扶養義務を超えて遺産の維持や形成に特別に貢献した場合です。

たとえば、複数の子がいる中で1人だけが被相続人の生活費を負担したり、無給で事業を手伝ったりした場合などが寄与分として認められる可能性があります。
そのため、通常の扶養義務の範囲内だと認められない場合もあることには注意が必要です。

寄与分を請求する3つの方法

寄与分はどのように請求できるのでしょうか。寄与分を請求する方法は、以下の3つが挙げられます。

  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停
  • 遺産分割審判

1つずつ詳しくみていきましょう。

1. 遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人全員が参加し、遺産の分配方法を話し合う手続きです。この協議では、各相続人が「どの遺産をどれだけ相続するか」について話し合います。このときに、自分の寄与分を認めてもらうための主張を行います。

寄与分が認められる証拠がある場合、他の相続人が納得する可能性が高まります。もし遺産分割協議で寄与分を認めてもらえなかった場合、次のステップとして「遺産分割調停」で主張を続けることになります。

2. 遺産分割調停

遺産分割協議で寄与分が認められない場合、遺産分割調停を通じてその請求を行えます。遺産分割調停は、遺産分割協議で遺産の分割に関する合意に至らない際に、家庭裁判所に申し立てる手続きです。

調停では、双方の事情を聞き、必要に応じて資料の提出や遺産の鑑定を行い、当事者の希望する分割方法を把握した上で、解決策を提示し、話し合いを進めます。ただし、遺産分割調停はあくまで話し合いによる解決を目指すものであり、合意に至らない場合は次の審判へと移行することになります。

3. 遺産分割審判

遺産分割調停で寄与分の請求が認められなかった場合、次の手続きとして遺産分割審判に進むことが可能です。遺産分割審判は、家庭裁判所が当事者の主張や提出資料、職権権限で行う事実調査や証拠調査に基づき、遺産の分割方法を決定する手続きです。

審判が確定すると、調停調書や判決と同等の法的効力を持ちます。
つまり、審判が確定した時点でその内容は変更不可能となり、強制執行も可能です。

ただし、遺産分割審判では、法的に有効な証拠がないと寄与分を認められない可能性があります。
また、証拠があっても寄与分が認められるケースは少なく、法的相続分による遺産分割と判決が下されることも多いです。

遺産分割審判と遺産分割調停の主な違いは、遺産の分割方法に制限があるかどうかです。遺産分割調停は、遺産の分割方法について協議する手続きであるため、遺産の分割方法などに制限がありません。

つまり、相続人全員が合意すれば、その合意した方法で分割されます。一方、遺産分割審判は、裁判所が公平性を保つために客観的な視点から遺産の分割方法を決定します。

長男が親の相続を放棄すると相続人としての権利がなくなる

日本の法律では、相続人は相続を放棄できます。これは、相続人が相続財産だけでなく、相続債務も引き継ぐことを避けるための手段です。相続財産が負債を超える場合、借金を背負うリスクを回避できます。

ただし、相続を放棄すると、その人は相続人としてのすべての権利を失います。
つまり、相続財産を受け取る権利だけでなく、遺言に基づく遺産分割の決定に参加する権利も失うことになる点には注意しましょう。

また、相続放棄は1度行うと、基本的には取消ができません。
そのため、本当に相続放棄をしてもよいかどうかは慎重に判断しましょう。

親が元気なうちに決めておきたいこと

親の介護や遺産相続は、兄弟間でトラブルの原因となることもあります。兄弟間でトラブルにならないためにも、親がまだ元気なうちに以下のことを決めておきましょう。

  • 親の意思を聞いておく
  • 親の介護をどこまで行うか話し合う
  • 遺言書を作成する
  • 生前贈与を行う
  • 生命保険の受取人にする
  • 家族信託でお金を管理・運用してもらう

1つずつ詳しく解説していきます。

親の意思を聞いておく

親が健康である間に、親の希望や意向をしっかりと聞いて理解しておくことが重要です。長男や他の兄弟姉妹の考えよりも、親自身がどのような老後を望んでいるかが大切です。たとえば、自宅での生活を続けたいのか、それとも介護施設でのサポートを受けたいのかなど、親の具体的な希望を聞きましょう。

さらに、親の相続についての意思も明確にしておくとよいでしょう。
特定の子供、たとえば親の面倒をみない長男に対して、親が相続放棄を求めているかどうかを確認しておくことで、将来的なトラブルを避けられます。
具体的な希望を早めに知っておくことで、もし親が急な病気や事故に遭遇した場合でも、親の希望に沿った対応を取れます。

親がまだ元気なうちに、家族全員で集まり、将来について話し合い、計画を立てることが重要です。

親の介護をどこまで行うか話し合う

親の介護は、家族全員が協力して一緒に取り組むべきことです。そのため、親がまだ健康なうちに、どの程度の介護を行うのか、兄弟姉妹で集まって話し合うことが大切です。

具体的には、以下のようなことを事前に話し合うとよいでしょう。

  • 自宅での介護が可能か、それとも専門の介護施設を利用するか
  • 介護を担当するのは誰か
  • 介護費用の負担者は誰か

また、各家族がどの程度の金額を出せるのかや、親の資産や健康状態を確認することも大切です。

事前に話し合っておくことで、突然の介護が必要になった際でも、介護の負担を公平に分散させられます。
さらに、早めに話し合うことで、必要なリソースやサポートを確保する時間が得られ、もし急な介護が必要になった場合のストレスも軽減できます。

遺言書を作成する

親が健康な間に遺言書を作成することは、将来の相続トラブルを防ぐ上で非常に重要です。
遺言書は、親が亡くなった後、親の財産分割の意向をはっきりと示す文書です。
遺言書が存在することで親の意思を尊重し、相続に関するトラブルを避けられます。

たとえば、遺言書に「介護をした子に遺産を譲る」との記載があれば、寄与分を問わず、介護をした子が遺産を受け取ることになるため、相続時のトラブルを未然に防げます。

遺言書の作成に際しては、弁護士など、法律の専門家に相談することをおすすめします。弁護士は遺言書の正しい作成方法、必要な内容、そして法的要件についてアドバイスしてくれます。また、遺言書は定期的に見直し、生活状況の変化に応じて更新することも大切です。

生前贈与を行う

親が健康な間に、生前贈与を検討することは、資産の管理や相続税対策の一環として重要な選択肢です。生前贈与は、親が生存中に子供や孫へ財産を移転する行為で、これにより親の面倒をみた人が遺産を多く受け取れます。

生前贈与には税制上のメリットもあり、年間110万円までの贈与は課税対象外となります。
さらに、結婚や出産のための贈与は1,000万円まで、教育のための贈与は1,500万円までと、非課税枠が拡大します。

相続が発生した際、誰がどの程度の財産を受け取るかについてはしばしばトラブルの原因となります。相続時に問題を引き起こす可能性のある財産を生前贈与することで、相続時のトラブルを避けられるでしょう。

生命保険の受取人にする

親がまだ健康な間に、介護に尽力している人を生命保険の受取人に指定することも重要です。生命保険の受取人とは、保険契約者が亡くなった際に保険金を受け取ることができる人のことを指します。

生命保険金は、基本的に相続財産には含まれず、受取人の個人的な財産となります。 そのため、遺留分の対象にはならないというメリットがあります。

家族信託でお金を管理・運用してもらう

家族信託は、財産の管理、運用、そして処分を信頼できる家族に委ねるという財産管理の方法です。
家族信託の契約では、次に財産権を継承する人を事前に指定することが可能です。

そのため、親が高齢化したり、予期せぬ事態が発生したりした場合でも、資産を保護し、相続手続きをスムーズに進められます。たとえば、認知症などを発症し、親の判断能力が低下した場合でも、家族信託を活用することで、子供が親の財産を適切に管理・処分できます。

まとめ

この記事では、親の面倒をみない長男に対する対策、親の世話をしない長男がいる場合の相続への影響、親が元気なうちに決めておきたい事項などについて解説しました。親の世話をしない長男がいると、家族間での不和が生じたり、相続問題に発展したりする可能性があります。親が支援を必要とするとき、家族が連携して最適な解決策を見つけることが重要です。

親の世話をしない長男がいる場合、その行動が相続に影響を及ぼすことがあります。とくに、親の介護や生活支援に貢献した親族がいれば、その貢献は「寄与分」として認められ、遺産分割の際に考慮されることがあります。

ただし、相続はケースバイケースで異なるため、詳細な情報が必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
多くの法律事務所では、初回の法律相談を無料で行っているため、1度検討してみてはいかがでしょうか。