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代襲相続人を無視して相続手続きはできない!代襲相続によくあるトラブルとは

代襲相続人を無視して相続手続きはできない!代襲相続によくあるトラブルとは

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が相続開始前に死亡や欠格、廃除によって相続権を失った場合に、その人の子どもや孫などが代わりに相続人になる制度です。

相続人になる予定だった人に代わって相続人になった人は、代襲相続人と呼ばれます。

遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ無効になるため、代襲相続人を無視して相続手続きを行うことはできません

代襲相続は通常の相続と比べてトラブルが生じやすいため、弁護士に相談して代襲相続のトラブルに備えることをおすすめします。

本記事では、代襲相続を無視した遺産分割協議が成立するのか、代襲相続に関するよくあるトラブルやトラブルを防ぐためのポイントを解説します。代襲相続でトラブルが起きたときの対処法や、代襲相続と相続放棄に関して把握しておくべきこともまとめました。

代襲相続を無視して相続手続きができるのかを知りたい人は参考にしてください。

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代襲相続人を無視して相続手続きはできない

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が相続開始前に相続権を失った場合に、その人の子どもや孫などが代わりに相続人になる制度です。

代襲相続は、次の場合に生じます。

  • 相続開始前の死亡
  • 相続欠格:相続人が故意に被相続人を死亡させようとしたり遺言書の破棄や偽造、隠ぺいしたりした場合など、相続欠格事由に該当した場合に相続権を失う制度
  • 相続廃除:相続人から虐待を受けたり重大な侮辱を受けたりした場合、相続予定者を相続から外すよう申し立てができる制度

相続人となる予定だった人に代わり相続人になった人は、代襲相続人と呼ばれます。

代襲相続人も法定相続人として数えられます。遺産分割協議は、法定相続人全員で行わないと無効になるため、代襲相続人の存在は無視できません

仮に代襲相続人以外で遺産分割協議を行っても、遺産分割協議書に代襲相続人の署名と押印がない場合は無効となります。被相続人の預金通帳の相続手続きや、相続登記などの遺産分割協議書が必要な相続手続きも、代襲相続人がいなければ進められません。

なお、遺言書で指定された相続人(子あり)が亡くなっていた場合、遺言は無効となります。代襲相続も同じと考えられ、遺言の内容は代襲相続されません。そのため法定相続人全員で分割協議を行う必要があります。

代襲相続に関するよくあるトラブル

代襲相続に関するよくあるトラブルは、以下のとおりです。

  • 代襲相続制度を知らずに遺産分割を行う
  • 代襲相続人を知っているのに無視して遺産分割を行う
  • 代襲相続人に不利な相続jや相続放棄を強要する
  • 代襲相続人が遺産分割協議に協力してくれない

それぞれ解説します。

代襲相続制度を知らずに遺産分割を行う

法定相続人が代襲相続制度を知らないまま、遺産分割を行ってしまうケースがあります。

孫や甥姪に代襲相続権があることを知らず、遺産分割協議を進めてしまうケースです。この場合、他の相続人に悪意はないため、代襲相続制度と代襲相続人がいることを伝えれば、問題ありません

代襲相続人になる人の範囲は、以下のとおりです。

被相続人の直系卑属が相続人の場合 ・被相続人の子どもが亡くなったときは、孫が代襲相続人、孫も亡くなっている場合はひ孫が再代襲相続人になる。
・相続廃除または相続欠格に該当しなければ、何世代先まででも代襲相続が続く。
被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合 ・被相続人の兄弟姉妹が亡くなったときは、甥姪が代襲相続人になる。
・兄弟姉妹が相続人の場合、代襲相続が認められるのは一世代のみ。
そのため甥姪に子どもがいても代襲相続人にはならない。

なお、亡くなった法定相続人に離婚歴などがあり、認知している子や孫がいることを知らずに遺産分割が行われてしまうケースもあります。

遺産分割を行うためには、被相続人の生まれたときから死亡するまでの連続した戸籍を調べて揃える必要がありますが、その段階で代襲相続人の存在が判明する場合もあるでしょう。

しかし戸籍には代襲相続の記載がなく、遺産分割後に代襲相続人がいることが判明するケースもあります

たとえば、次のようなケースがあげられます。

  1. 推定相続人である父親が亡くなった後に、その子どもが死後認知(民法787条)によって代襲相続権を取得したケース
  2. 推定相続人である母親が亡くなった後に、母子の親子関係が確認され、代襲相続人と分かるケース

1の場合、遺産分割は有効で、代襲相続人は相続分に応じた金額をほかの相続人に請求が可能です(民法910条)。死後認知での代襲相続人の判明により、相続権を失う後順位者が遺産分割に参加していた場合は、代襲相続人の保護が優先されます。価格賠償以外にも、相続回復請求権(民法884条)を行使して、現物の引き渡しも請求可能です。

一方、2の場合は、遺産分割は無効となります(最高裁昭和54年3月23日判決)。母子の親子関係は分娩という事実から発生します。そのため、戸籍の記載があるかどうかにかかわらず、相続開始時点ですでに代襲相続人が存在するからです。

代襲相続人を知っているのに無視して遺産分割を行う

代襲相続人の存在は、法定相続人にとってはデメリットになる存在です。相続人の利益や感情の面から、代襲相続人がいることを知っていながらも、協議を勝手に進めたり相続財産を開示しなかったりといった行動をとるケースがあります

何らかの対応をしなければ、ほかの相続人が代襲相続人の遺産まで勝手に取得する恐れもあります。

しかし代襲相続人は、推定相続人の地位を継承しているため、法的な地位は他の相続人と同様です。そのため代襲相続人の同意がなければ、遺産分割協議は成立しません

代襲相続人と連絡がとれない場合でも勝手に遺産分割を行えば無効となります。所在が不明な場合は、不在者財産管理人の選任、または失踪申告の手続きが必要です。

代襲相続人に不利な相続や相続放棄を強要する

法定相続人が有利になり、代襲相続人が不利になる内容で、遺産分割協議を同意させようとする場合があります。

遺産相続は、法定相続分(遺産相続の割合)が法律で定められています。ただし、あくまでも目安のため、相続人の合意があれば法定相続分と異なる遺産相続が可能です。

そのため相続人によっては、金銭的利益や感情を優先し、代襲相続人にとって不利な相続内容を強要してくる場合もあるでしょう

また代襲相続人に対して相続放棄を要求するケースもあります。相続放棄をするかどうかは代襲相続人が自由に決定できるので、不当な要求を受け入れる必要はありません。

しかしほかの相続人から嘘の情報を伝えられたり脅迫されたりして、相続放棄をしてしまう場合もあります

家庭裁判所に相続放棄を受理された後は、撤回できないのが原則です。ただし詐欺や脅迫などがある場合は、相続放棄を取り消せる可能性があります民法96条)。未成年の代襲相続人が、法定代理人(親権者)の同意を得ないで相続放棄した場合も同様です(民法5条)。

なお相続放棄の取消期間は、相続放棄の受理後10年以内または追認できるときから6ヵ月以内です。

相続放棄が取り消されると、受理された期間にさかのぼって相続放棄の効果がなくなるため、代襲相続人を含めて遺産分割協議をやり直す必要があります。

代襲相続人が遺産分割協議に協力してくれない

忙しい・面倒くさい・被相続人や法定相続人と関係が希薄などの理由で、代襲相続人が協議に協力しないケースがあります。

しかし代襲相続人にも相続権があるため、遺産分割協議に参加し、他の相続人と一緒に相続手続きを進めていかなければなりません。

メールや書面でも協議のやりとりは可能なため、事情や双方に生じるリスクなどをしっかり説明して協力を促す必要があります

代襲相続のトラブルを防ぐためのポイント

  • 代襲相続人がいるか調査をする
  • 代襲相続人と遺産相続について話し合う
  • 所在がわからない時は不在者財産管理人を選任する
  • 弁護士に相談して代襲相続のトラブルに備える

それぞれ解説します。

代襲相続人がいるか調査をする

相続人が全員参加していない状態で遺産分割協議をしても、その協議は無効になるため、もう一度やり直す必要があります。

遺産分割が無効とならないためにも、代襲相続人の有り無しを確認することが必要です。代襲相続人の有り無しを確認するためには、だれが法定相続人なのか相続人調査をしなければなりません。

相続人調査とは、被相続人(死亡した人)の相続人は誰なのか、戸籍で調査することです。相続人を調査するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を入手して読解していくことを繰り返し、必要な戸籍を揃えていく必要があります

しかし戸籍謄本は、本籍のある市町村役場でしか取得できません。場合によっては、数十通もの戸籍謄本を取得する必要があり、何ヵ所もの市町村役場とやり取りが必要になります。郵送でも取得できますが、日数と郵便代がかかります。

また戸籍謄本は作成された時代や種類によって様式が異なるため、戸籍を見慣れていない人が正しく読み取るのは困難です。とくに昔の戸籍は、手書きで書かれているものもあり読み解くには知識や経験が必要です。そのため不慣れな人が行うと、相続人を見落とす恐れがあります。

戸籍を取得して読み解くことは、複雑で手間もかかる大変な作業です。個人での調査が難しいときは専門家に依頼するとよいでしょう。

代襲相続人と遺産相続について話し合う

代襲相続が発生することがわかったら、相続人と代襲相続人で話し合い、適切に遺産分割を行うことが大切です。

あらかじめ話し合っておけば、遺産相続が始まったときも慌てずに対応できるため、トラブルが生じにくくなります。他の相続人と代襲相続人が継続的に連絡を取っていれば、お互いに連絡がつかなくなることを避けることもできるでしょう。

なお相続人の調査を行い代襲相続人がいることを確認できても、代襲相続人の連絡先がわからない場合があります。代襲相続人の連絡先は、本籍の戸籍附票から取得できるので、連絡をとって参加を促しましょう

代襲相続人も本来の相続人と同じ相続分を継承することを理解して、協議を行うことが重要です。代襲相続人が複数人いる場合は、人数で均等に按分し相続します。遺留分についても、代襲相続人は本来の相続人の権利をそのまま引き継ぎます。

各相続人の法定相続割合と遺留分は、以下のとおりです。

相続人 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 1 1/2
配偶者と子ども 配偶者1/2:子ども1/2 配偶者1/4:子ども1/4
子どものみ 1 1/2
配偶者と直系尊属(父母・祖父母など) 配偶者2/3:直系尊属1/3 配偶者1/3:直系尊属1/6
直系尊属(父母や祖父母など) 1 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4:兄弟姉妹1/4 配偶者1/2:兄弟姉妹なし

ただし遺留分については、兄弟姉妹以外の相続人に認められています(民法1042条)。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証される、最低限相続できる割合のことです。そのため被相続人の甥姪が代襲相続人になった場合は、遺留分が認められません

また配偶者と一親等(父母と子ども)以外が相続する場合は、相続税が2割加算されます。甥や姪は三親等になるため、相続税が2割加算の対象になることを念頭においておきましょう。

所在がわからない時は不在者財産管理人を選任する

戸籍附票から連絡先は把握できるものの、代襲相続人の所在がわからず連絡が取れないケースがあります。

不在のままだと分割協議を進められないため、不在者財産管理人の選任が必要です。不在者財産管理人とは、行方がわからずまったく連絡も取れない行方不明者の代わりに、財産を管理する人のことです。

行方のわからない不在者のために、適切な方法で財産を管理します。財産目録や収支報告書をつくり、家庭裁判所に定期的に報告する必要があります。

なお不在者の代わりに不在者財産管理人が遺産分割協議をしたり、財産を処分したりする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

不在者財産管理人は、不在者の以前の住所地、または居所地の家庭裁判所へ申し立てを行います。申し立てができる人は、利害関係人(配偶者・相続人・債権者など)と検察官です。不在者との関係や利害関係があるかないかなどを考慮し、適格性を判断して裁判所が決定します。

不在者財産管理人を選任する際の必要書類と費用は、以下のとおりです。

必要書類 ・申立書
・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・不在者の戸籍附票
・財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
・不在の事実がわかる資料
・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書・預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
・利害関係人からの申し立ての場合、利害関係がわかる資料(戸籍謄本(全部事項証明書)・賃貸借契約書写し・金銭消費貸借契約書写し等)
必要な費用 ・収入印紙:800円分
・連絡用の郵便切手(裁判所により異なるため、確認が必要)
・専門家が不在者財産管理になった場合の報酬:1~5万円ほど/月
・予納金が必要な場合:20~100万円

※参照:不在者財産管理人選任 | 裁判所

不在者財産管理人には、弁護士や司法書士などの専門家が選任される場合もあります。その場合は1~5万円/月の報酬が発生します。

また7年以上、代襲相続人が生死不明の状態であれば、失踪宣告の申し立てを行いましょう。失踪宣告とは、生死が不明な人を法律上死亡したものとみなす制度です。不在者の従来の住所地、または居所地の家庭裁判所に利害関係人(配偶者・相続人・財産管理人など)が申し立てます。

申し立てに必要な書類と費用は、以下のとおりです。

必要書類 ・申立書
・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・不在者の戸籍附票
・失踪を証明する資料
・申立人の利害関係を証明する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))
必要な費用 ・収入印紙:800円分
・連絡用の郵便切手(裁判所により異なるため、確認が必要)
・官報公告料4816円(失踪に関する届出の催告3053円、および失踪宣告1763円の合計額)

戦争や船の沈没、震災などの事故・災害により消息不明になった場合は、1年以上生死不明であれば、失踪宣告ができます

弁護士に相談して代襲相続のトラブルに備える

代襲相続は通常の相続と比べて、トラブルに発展することが多いです。しかし弁護士に相談して対策を考えてもらえば、代襲相続のトラブルを予防できます。弁護士であれば、専門的な知識や経験から、最適なアドバイスが可能です。

代襲相続人と他の相続人がもめてしまうと、当事者間で話し合ってもなかなか解決ができません。とくに遺産分割は、相続人同士や代襲相続人と対立が生じやすいので、弁護士が介入するとスムーズに進みます

またトラブルが生じて調停や審判が発生した場合も、適切に対応してもらえます。弁護士に相談すれば、さまざまな制度を把握したうえで、相続人全員が納得できるようサポートしてくれるでしょう。

代襲相続でトラブルが起きたときの対処法

代襲相続でトラブルが起きたときの対処法は、以下のとおりです。

  • 遺産分割協議を再度実施する
  • 連絡しても無視される場合は[遺産分割調停]を申し立てる

それぞれ解説します。

遺産分割協議を再度実施する

遺産分割協議はやり直しができます。遺産分割には時効がないため、相続後何年経っていても遺産分割協議や調停、審判で遺産分割方法を決定できます。

また遺産分割の再協議(やり直し)にも時効はありません。そのため、代襲相続人を知らずに無視してしまっていた場合は、再度遺産分割協議を実施しましょう

自分しか法定相続人がいないと思って、すべての遺産を相続してしまった場合は、代襲相続人と協議を行います。

相続人と代襲相続人との間でトラブルなく解決できるのであれば、相続手続きもスムーズに進められるでしょう。

連絡しても無視される場合は「遺産分割調停」を申し立てる

代襲相続人に連絡をしても応答がない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。遺産分割調停とは、遺産分割の話し合いが相続人の間で合意できない場合に利用できる家庭裁判所の手続きです。

家庭裁判所が代襲相続人を含む他の共同相続人を呼び出してくれます。裁判所から書類が届くので、直接連絡するより無視されにくいでしょう。

それでも代襲相続人が出頭しない場合は、調停は不成立となり審判に移行します。審判とは調停でもまとまらない場合、裁判所の調査官の調査結果をもとに、裁判官が最終的に処分内容を決定する手続きです。欠席者がいても審理手続きが進められるので、代襲相続人が欠席の場合でも遺産分割ができます

代襲相続と相続放棄に関して把握しておくべきこと

  • 相続放棄は相続人が個別で行う
  • 代襲相続人が自分の意思で相続放棄できる
  • 生存している相続人が相続放棄しても代襲相続は発生しない

それぞれ解説します。

相続放棄は相続人が個別で行う

相続放棄は他の相続人と共同で行われる手続きではなく、個別で行うものです。相続放棄とは、故人の資産や負債などの財産に対する権利や義務を相続人が一切引き継がないことです。そのため代襲相続人がいても、さまざまな事情から相続放棄をしたいのであれば、問題なく放棄できます

相続放棄をすると、最初から相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。

相続放棄の期限は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内です。相続放棄を行使しなかった場合、すべて自己責任になるため、期限を知らなかったという言い分は通用しません。ただし借金の存在を期限後に知った場合は、期限を過ぎていても相続放棄できるケースもあります

なお相続手続き前に財産を処分したり隠したりした場合、相続放棄は認められません。この場合、単純承認したとみなされてしまうため、手続きが完了するまでは被相続人の財産は現状のままにしておきましょう。

また相続放棄の期限が迫っていたり、やむを得ない事情により期限内の手続きが難しかったりする場合は「相続放棄の期間伸長」を家庭裁判所に申し立てることができます。申し立てが認められると、相続放棄の熟慮期間が1〜3ヵ月ほど延長されます。

代襲相続人が自分の意思で相続放棄できる

代襲相続人が遺産を相続したくないと考えているのであれば、放棄は可能です。被相続人の財産に負債が多い、トラブルを懸念しているなど、代襲相続人にとってマイナスな要素が大きいのであれば、放棄も選択肢の1つです。

なお相続放棄は、相続人単位で行う手続きです。

そのため父母の財産を相続放棄をしている場合でも、その後祖父母が死亡し財産を引き継ぎたくなければ、祖父母についても相続放棄しなければなりません

たとえば、母が借金をのこして他界したため、相続放棄したとします。その後祖母が亡くなると、代襲相続が生じるため、祖母の財産を相続したくない場合は祖母に対しても相続放棄の手続きが必要です。

一方、母の財産を相続放棄している場合でも、祖母の代襲相続人になって財産を相続することもできます

また祖母の財産を放棄をする前に母が他界した場合、亡くなった母の子は、祖母と母両方の財産を放棄、または祖母の財産のみを放棄できます。ただし母の財産は放棄して、祖母の財産のみ相続することはできません

子(孫)は祖母の相続を選ぶ権利を母から継承しているので、母の財産を放棄をすると祖母の財産を引き継ぐ権利も放棄することになるためです。

次に、叔父や叔母が借金をのこして亡くなったケースをみてみましょう。

叔父が他界し、叔父の配偶者・子どもが相続を放棄した場合は、相続権は兄弟姉妹に移ります。その際、被相続人の兄弟姉妹が他界していると、甥・姪が代襲相続人となります。甥・姪も相続したくない場合は、他の相続人と同様に相続放棄できます。

生存している相続人が相続放棄しても代襲相続は発生しない

生存している法定相続人が相続放棄すると、子どもや孫など代襲相続人に相続権が移ると勘違いしているケースがあります。

法定相続人が全員生存していて、そのうちの1人が放棄した場合、代襲相続は生じません

いくつか例をみてみましょう。

●例1:父が祖母の借金を相続放棄したケース

祖母に借金があり、父が相続放棄をしたとします。相続放棄した父は、初めから相続する権利を持っていなかったと扱われるため、子ども(亡くなった人の孫)には代襲相続が発生しません。もし、子どもにも子ども(亡くなった人のひ孫)がいても、同様です。

●例2:兄弟姉妹が伯母の借金を相続放棄したケース

伯母に借金があり、兄弟姉妹が相続放棄した場合は、放棄した兄弟姉妹は初めから相続する権利を持っていなかったと扱われます。そのため甥・姪には代襲相続が生じません。兄弟姉妹やおじおば(傍系卑属)の場合、再代襲相続は起こらないため、甥・姪の子どもにも相続権は移りません。

なお代襲相続が起きない場合、次の順位の法定相続人に相続権が移動します。

相続放棄した人 相続人
被相続人の子ども(第一順位) ・被相続人の配偶者と父母
・ただし配偶者が相続放棄すると、父母だけに相続権が生じる
被相続人の子ども(第一順位)と父母(第二順位) ・被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹
・ただし配偶者が相続放棄すると、兄弟姉妹だけに相続権が生じる
・被相続人の兄弟姉妹が他界していれば、被相続人の甥・姪が代襲相続人となる
被相続人の子ども(第一順位)・父母(第二順位)・兄弟姉妹(第三順位) ・被相続人の配偶者
・配偶者も相続放棄すると、相続財産法人として扱われる

相続放棄をした場合、自分で次の順位の法定相続人に連絡し、相続権が移動されていることを伝えましょう

また第三順位の兄弟姉妹が他界している場合、第一・第二順位の相続人が放棄すると、代襲相続が起こる可能性があります。

まとめ

遺産分割協議は法定相続人全員で行わないと無効になるため、代襲相続人を無視して相続手続きを行うことはできません

代襲相続は、通常の相続に比べてトラブルが生じやすいです。

代襲相続人と他の相続人がもめてしまうと、当事者間で話し合ってもなかなか解決ができなくなります。当事者で話し合っても解決できない場合は、弁護士に相談することをおすすめします

弁護士であれば、専門的な知識や経験から、最適なアドバイスが可能です。またトラブルが起こって調停や審判が発生した場合も、適切に対応してもらえます。

中立な立場の弁護士が介入すれば、冷静に話し合いができるため、遺産分割協議もスムーズに進みやすくなるでしょう。

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更新日 : 2024年12月02日
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