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相続放棄をすると代襲相続は発生しない!それぞれの関係性や相続放棄の注意点を解説

相続放棄をすると代襲相続は発生しない!それぞれの関係性や相続放棄の注意点を解説

代襲相続とは、死亡や欠格事由への該当、廃除などの理由で相続権を失っている相続人の代わりに、その子などが相続権を得る制度です。

故人の借金が多い、亡くなった親族と疎遠といった理由で相続放棄を検討しているものの、代襲相続が発生して子どもに負担をかけてしまうのではないかと心配している人もいるでしょう。

相続放棄をした場合は元から相続人でないものとみなされるため、代襲相続は発生しません。ただし相続放棄をした場合は次順位の相続人に相続権が移ることもあります。たとえば、被相続人の配偶者や子が相続放棄をした場合は、被相続人の両親や兄弟姉妹が相続する可能性があるということです。

そのためトラブルを避けるためにも、親族に相続放棄することは伝えておいた方がよいでしょう。

なお、相続放棄は自分でも行えますが、相続放棄に関する手続きは複雑であり、注意点も多く存在します。そのため、相続放棄などでお悩みの際には、相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。相続専門の弁護士であれば、相続放棄のアドバイスや書類作成、手続きなどを行ってくれます。

今回の記事では、代襲相続・相続放棄の概要について解説した上で、相続放棄と代襲相続との関係性や、実際に相続放棄をする際の注意点などをわかりやすく解説します。

代襲相続とは

代襲相続とは、本来の相続人が何らかの理由で相続できない場合に、相続人の子などが代わりに相続することです。以下では代襲相続の基本的な仕組みについて解説します。

相続人の死亡・相続人の欠格の際に代襲相続が発生する

代襲相続が発生するのは、民法によって以下3つのケースに限定されています。

  • 相続人が死亡している
  • 相続人が相続欠格事由に該当している
  • 相続人が廃除を受けている

民法891条に定められている相続欠格事由に該当すると相続人の資格を失うため、代襲相続が発生します。

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
e-Gov 民法

相続廃除は被相続人の意思に基づいて、相続人としての権利を失わせることを指します。被相続人に対して虐待や重大な侮辱をした場合や、その他の著しい非行があったときは相続廃除の対象です。

相続廃除には、家庭裁判所の審判に基づいて決定される「生前廃除」と、遺言書の中で意思表示をする「遺言排除」の2種類があります。

代襲相続の範囲

代襲相続の対象になる相続人(被代襲者)は、被相続人の子または兄弟姉妹です。被相続人の父母が相続人となるケースで、父母が死亡している場合は祖父母が相続することになりますが、このケースは代襲相続としては扱われません。

また、本来の相続人である子が亡くなり、その子(孫)も亡くなっている場合は、さらにその子(ひ孫)が代襲相続する(再代襲相続)ことになります。

一方、兄弟姉妹に対して代襲相続が発生した場合は、その子である甥や姪が代襲相続することになります。しかし、甥や姪に対しては再代襲相続の規定はないため、被相続人の甥や姪が亡くなっている場合に、さらにその子が代襲相続することはない点には注意しましょう。

特別な手続きは必要ない

代襲相続自体に特別な手続きや申立ては不要です。そのため、相続財産の調査や遺産分割協議などは、通常の相続と同様の手順を踏めば問題ありません。

ただし相続登記などを行う場合は、本来の相続人がすでに亡くなっていることや代襲相続人が本来の相続人の子どもであることを示すために、戸籍謄本が必要になります。

また、相続欠格によって代襲相続が発生する場合は、相続欠格者自らが作成した「相続欠格事由に該当することの証明書」や印鑑証明書、確定判決の謄本などの添付が必要です。相続廃除の場合は、家庭裁判所から交付された審判書謄本や審判の確定証明書を添付します。

代襲相続人として相続人の数が増えれば節税につながる

相続税は、故人の遺産から債務や葬儀費用などを差し引いた「課税遺産総額」から基礎控除額「3,000万円+法定相続人の数×600万円」を差し引いた金額に対して課税されるものです。代襲相続人として相続人の数が増えると、基礎控除の金額が大きくなるため、節税につながる可能性があります。相続する遺産が基礎控除の範囲内に収まっていれば、相続税は発生しません。

なお、法定相続人の数は死亡退職金や死亡保険金の非課税枠にも影響します。死亡退職金や死亡保険金には、それぞれ「法定相続人の数×500万円」の非課税枠があるため、受け取る金額がこの範囲内であれば相続税の課税対象にはなりません。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を受け取る権利を放棄する手続きのことです。以下では、相続放棄をするメリットや期限など、基本的な知識を解説します。

相続放棄をすべきケース

相続放棄を考えるべきケースとして、借金などのマイナス財産が多い場合があります。被相続人が多額の借金を抱えている場合、その借金も相続の対象です。遺産で払い切れないほど負債が大きい場合は、自己資金で返済をしなければなりません。

また、相続人同士の争いに巻き込まれたくない場合も相続放棄を検討すべきです。相続人間で対立が起きている場合、遺産分割協議がまとまらず、相続手続きを終えることができません。裁判所での調停や審判に発展すると、多大な時間や労力を要します。相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったものとみなされるため、相続人同士の話し合いに参加したり、トラブルに巻き込まれたりする心配がなくなるでしょう。

相続放棄の期限は原則として3カ月

相続放棄の期限は、民法915条により「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)」と定められています。「相続の開始があったことを知ったとき=被相続人が亡くなったことを知ったとき」と考えるケースが一般的です。

3ヶ月の期限を過ぎた場合は単純承認したものとみなされ、相続放棄はできなくなります(民法921条2号)。ただし、合理的な理由があれば3カ月を超えていても相続放棄できるケースはあります。

最高裁の判例によれば、以下の要件を満たした場合、相続財産の全部または一部の存在を認識したときから熟慮期間がスタートするとされています。

  • 被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたことによって、限定承認または相続放棄をしなかった
  • 被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があった
  • 被相続人に相続財産が全く存在しないと信じる相当な理由があった

相続放棄の手続きについて

相続放棄をする際は、相続財産を調査したうえで、家庭裁判所に申し立てを行います。相続放棄は撤回できないので、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含めてもれなく精査しましょう。その際、他の相続人の同意は必要ありません

相続放棄の申述書に、被相続人の住民票除票や申述人の戸籍謄本などを添付し、家庭裁判所に提出します。家庭裁判所から届く照会書を返送すると、相続放棄申述受理通知書が届き、正式に手続きが完了します。

代襲相続と相続放棄の関係性

代襲相続と相続放棄の関係性については、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 相続放棄すると代襲相続は発生しない
  • 代襲相続人は相続放棄ができる
  • 父母の財産を相続放棄しても祖父母の財産を代襲相続できる

それぞれ詳しく解説します。

相続放棄すると代襲相続は発生しない

相続放棄に伴い、代襲相続が発生することはありません。相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされ、相続権自体が発生しないためです。たとえば、被相続人の子どもが相続放棄をしたとしても、その子ども(孫)が代襲相続することはありません。被相続人の負債が多いことを理由に相続放棄を選択しても、子どもに迷惑がかかることはないということです。

ただし、相続放棄をすると次順位の人に相続権が移ります。たとえば、配偶者や第1順位の子どもが全員相続放棄した場合は、第2順位の父母や祖父母が相続することになるのです。放棄したことを伝えておかないと、親族同士でトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。

代襲相続人は相続放棄ができる

代襲相続人が相続放棄を選択することも可能です。たとえば、被相続人の孫2人が代襲相続をした場合、1人が相続放棄すると、もう1人が財産を全て相続します。

ただし、相続放棄をしたときは、再代襲相続は発生しません。先程のケースでいえば、孫が2人とも相続を拒否した場合は、ひ孫が相続するのではなく、直系尊属や兄弟姉妹に相続権が移ります。

父母の財産を相続放棄しても祖父母の財産を代襲相続できる

相続放棄は被相続人ごとに判断されます

たとえば、被相続人が亡くなった後に、被相続人の父(祖父)が続けて亡くなったケースを考えてみましょう。このとき、被相続人の子は、父の相続人であると同時に、祖父の代襲相続人でもあります。もし父親の財産について相続放棄をしたとしても、祖父の財産について代襲相続することは可能です。

遺産相続前に把握しておきたい代襲相続のポイント

代襲相続をする際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 既存の相続人の相続分が変わることはない
  • 代襲相続人の続柄によって遺留分の扱いが変わる
  • 遺言の内容に対しては代襲相続が適用されない

それぞれ詳しく解説します。

既存の相続人の相続分が変わることはない

代襲相続人が現れたとしても他の相続人の相続分は変わりません。代襲相続人は、本来の相続人の相続分を引き継ぐからです。代襲相続人が複数いる場合は、引き継いだ相続分を均等に分けることになります。

たとえば、被相続人の配偶者と子(長男・次男)2人が相続するケースを考えてみましょう。この場合、配偶者が2分の1、子が4分の1ずつ相続します。もし長男が死亡した場合、その子(被相続人の孫)が代襲相続することになりますが、配偶者や次男の相続割合は変わりません。また、長男の子が2人いる場合は、長男の相続分4分の1を折半するため、8分の1ずつ相続します。

代襲相続人の続柄によって遺留分の扱いが変わる

被相続人の直系卑属が代襲相続人であれば遺留分が認められます。被相続人の子が亡くなった場合は、代襲相続によって相続分と同時に遺留分も引き継ぐことになるからです。

遺留分とは?
法定相続人に最低限保証されている遺産の取り分のことです。

一方、被相続人の甥や姪が代襲相続人となった場合は、遺留分が認められません。というのも、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないからです。

遺言の内容に対しては代襲相続が適用されない

遺言の内容に対しては代襲相続が適用されません。民法では、遺言者の死亡する前に遺贈を受取る人が死亡していた場合は遺言は無効になるとされているからです。遺言の中で「相続人の子に対して遺贈する」旨を示しておくことで対処できます。

相続放棄をする際の注意点

相続放棄をする際は、以下の点に注意しましょう。

  • 相続放棄予定の財産に手を付けない
  • 次順位の相続人を把握しておく
  • 相続放棄したら次順位の相続人に連絡する

それぞれ詳しく解説します。

相続放棄予定の財産に手を付けない

相続放棄をする際は、相続放棄する予定の財産を使ったり、処分したりしないようにしましょう。相続財産について、以下のような行為を行うと「単純承認」を選択したものとみなされてしまう(法定単純承認事由)からです。

  • 被相続人の預貯金を使う
  • 被相続人の車を売却する
  • 被相続人の不動産をリフォーム・名義変更する
  • 被相続人の借金を返済する
  • 被相続人が受取人に指定されていた生命保険の保険金・給付金を使う

一度単純承認が成立すると、原則として撤回できないので注意しましょう。

ただし相続した不動産の価値を維持するために建物を修繕したり、腐敗しそうなものを処分したりする行為は「保存行為」として、法定単純承認事由にあたらないとするケースが一般的です。

次順位の相続人を把握しておく

被相続人、配偶者、子ども3人、被相続人の父母の家族構成において、相続放棄した場合に誰が新たな相続人になるのか、ケース別に紹介します。

被相続人の配偶者が相続放棄した場合

今回のケースでは、常に相続人になる「配偶者」と第一順位である「子ども」の3人が相続人になります。

配偶者が相続放棄した場合は、子がすべての財産を均等に相続します。配偶者の相続権が他の親族に移ることはありません。

子どもが全て相続放棄した場合

子ども3人が全員相続放棄した場合は、第2順位である被相続人の父母に相続権が移ります。父母が亡くなっている場合は、祖父母が相続します。

なお、子どもの一部が相続放棄した場合は、第2順位の相続人に相続権が移ることはありません。たとえば、3人の子どものうち1人が相続放棄した場合、子ども2人ですべての財産を均等に分け合うということです。

相続人全員が相続放棄した場合

相続人全員が相続放棄した場合は、相続の利害関係者(被相続人の債権者や特別縁故者など)から家庭裁判所に申し立てが行われ、相続財産管理人が選出されます

特別縁故者とは?
被相続人と生前特別親しい関係にあった人で、法定相続人がいない場合に財産を承継する権利を持つ人のことです。

相続財産管理人が選出された後は、相続人が存在しないことを確認したのち、債務の清算が行われます。清算後、特別縁故者がいる場合は財産分与が行われ、それでもなお残った財産については国庫に納められます。

相続放棄したら次順位の相続人に連絡する

相続放棄をした場合、他の相続人に対する連絡をしておいた方が無難です。たとえば、債権者がいる場合は次順位の相続人が突然督促を受けることもありえます。早めに連絡をしておけば、親族関係を悪化させずにすむうえ、次順位の相続人も相続に向けた準備をしやすくなるでしょう。

なお、借金が多いなどの理由で相続放棄をすると、次順位の相続人も相続放棄をするケースはよくあります。なるべく親族に迷惑をかけたくない時は、次順位の相続人が支払う専門家への依頼費用を負担するのも一つの手です。

まとめ

相続放棄をすると、そもそも相続権自体が存在しないことになるため、代襲相続も発生しません。代襲相続が起こるのは、本来相続人になるべき人が死亡している場合や、欠格事由に該当している場合、相続人から廃除された場合に限られます。

なお、代襲相続人が相続放棄することは可能です。その場合は、他の代襲相続人や次順位の相続人が相続します。

相続放棄を検討している人は、相続放棄によって誰に相続権が移る可能性があるのか理解しておきましょう。関係を悪化させないためにも、相続放棄の影響を受ける親族には必要に応じて連絡しておくのが無難です。

なお、相続放棄は相続放棄すべきかどうかの見極めから、実際の手続きまで専門的な知識がない方が行うのは非常に難しいでしょう。そのため相続放棄に関するお悩みは弁護士に相談することをおすすめします。