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実家の土地相続でよくある兄弟トラブルと解決方法!分け方や注意点を紹介

実家の土地相続でよくある兄弟トラブルと解決方法!分け方や注意点を紹介

実家の土地を兄弟で相続するときは、遺言書の内容や遺産分割協議などで誰が相続するのかを決定します。

しかし、実家の土地相続では「誰が相続するのか」という部分で兄弟トラブルが起こりがちです。実際、兄弟と土地相続で揉めてしまい、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

実家の土地相続トラブルの解決のためには、トラブルの内容に合った適切な対応をすることが求められます。

なお土地の相続トラブルを最小限に抑えるためには、相続に強い弁護士への相談がおすすめです。土地相続で揉める可能性が少しでもあるときは、あらかじめ弁護士に相談しておきましょう。

本記事では、実家の土地相続でよくある兄弟トラブルを原因別に紹介した上で、解決方法について詳しく解説します。

実家の土地の相続問題をトラブルなく解消したい方はぜひ参考にしてください。

実家の土地相続でよくある兄弟トラブルの原因と解決方法

実家の土地を相続する際に、兄弟間で起こりやすいトラブルの原因は以下のとおりです。

  • 遺言書がない
  • 遺言書の内容が不平等
  • 他の兄弟から相続放棄を求められる
  • 不動産の占める割合が多い
  • 共有したまま放置してしまう
  • 売りたい・住みたいで意見が食い違う
  • 相続登記の変更を実施していない
  • 空き家として放置してしまう

次の項目から、それぞれの原因と解決方法について詳しく解説します。

遺言書がない

遺言書がない場合、土地をどのように分割するのかでトラブルに発展する恐れがあります。

遺言書は「どの遺産を」「誰に」「どのように相続させるのか」を意思表示するための文書です。

法律では遺言書の内容が優先されると定められているため、遺言書が残されていれば誰が土地を相続するのかが明確になります。

一方で遺言書が残されていなければ、兄弟間で話し合いをして土地の相続方法を決めることになります。

土地は現預金などとは異なり、均等に分割することが難しい財産であるため、話し合いの際に揉める可能性が高いです。

遺言書がなかった場合の解決方法

遺言書がない場合、実家の土地は法定相続分で相続することになります。法定相続分とは、法律で定められている遺産の相続割合のことです。

たとえば両親が死亡しており、相続人が兄弟3人である場合、法定相続分は1/3ずつになります。そのため、実家の土地も1/3ずつの共有持分として兄弟で相続します。

法定相続分で相続すれば遺産を公平に分けられるので、兄弟間のトラブルを防止できる可能性が高いです。

法定相続分と違う割合で相続する場合は、遺産分割協議を行って相続割合を決めましょう。注意点として、遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の合意が必要です。

もしも遺産分割協議の話し合いに全員が合意しないときは、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを行います。

調停では第三者を通して話し合いを進めるため、感情的になることなく、冷静な解決が望めます。

なお、遺言書があれば上記の話し合いや手続きをすべて省略し、遺言書の内容どおりに相続すれば良いだけです。

両親には生前に遺言書を作成してもらい、兄弟トラブルの防止を図りましょう。

遺言書の内容が不平等

遺言書の内容が不平等だった場合は、相続の際にトラブルに発展する可能性があります。

たとえば1人の兄弟にすべての不動産を相続させたり、一部の兄弟だけ取り分が多かったりする場合などです。

財産の分配方法に偏りが生じていると、取り分が少ない兄弟は納得できず不平不満につながることが予想されます。

遺言書の内容が偏らないようにするためには、生前から兄弟の取り分が平等になるよう作成する必要があります。

しかし、被相続人が亡くなってから不平等な遺言書が見つかるというケースも少なくありません。

相続が発生した後で不平等な遺言書が見つかったときは、遺留分侵害請求で最低限の遺産を確保できます。

遺言書が不平等だった場合の解決方法

遺言書が不平等だった場合は、法律で保証されている遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害請求をしましょう。

遺留分とは、相続人に最低限保証されている遺産相続分です。遺留分侵害請求では、取り分の多い兄弟に対して遺留分の範囲内で金銭の支払いを要求できます。

もしも遺言書に「長男にすべての財産を相続する」と書かれていたとしても、遺留分侵害請求をすれば財産の一部を取り戻せます。

法律で定められている遺留分の割合は、法定相続分の1/2です。

たとえば遺産総額が1億5,000万円で相続人が子供3人の場合、7,500万円が子供全体の遺留分となります。

さらに遺留分を子供3人で分割すると、7,500万円÷3=2,500万円が1人あたりの金額です。そのため、遺留分侵害請求で最大2,500万円を請求できます。

遺言書が不平等で納得できないときは、遺留分侵害請求で本来得られるはずだった遺産の一部を取り戻しましょう。

他の兄弟から相続放棄を求められる

相続放棄とは、被相続人の資産や負債など一切の財産の相続を放棄する権利のことです。

相続放棄は他の相続人から強制されるようなものではなく、あくまでも自分の意思で決めるものです。

しかし、他の兄弟から相続放棄を求められ、どのように対応するのかでトラブルに発展する可能性があります。

たとえば兄弟のうち1人が親と同居して介護や生活費の負担などをしていたことから、他の兄弟に相続放棄を求めるケースなどが該当します。

もしも兄弟の要求に従って相続放棄の手続きを自らの意思で行った場合、撤回や取り消しなどは基本的に認められていません。

そのため、相続放棄をするかどうかは慎重に決める必要があります。

相続放棄を求められた場合の解決方法

相続放棄を求められたとしても、納得ができなければ従う必要はありません。先述したとおり、相続放棄を他の相続人に強制することはできないからです。

そのため、兄弟から相続放棄を求められたときは、相続する財産をすべて調査したうえで慎重に検討してください。

なお相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内と決められています。

すぐに結論が出ない場合、家庭裁判所に「相続の承認または放棄の期間の伸長」を申し立て、相続放棄の期限を延長してもらいましょう。

もしも兄弟に強要されて相続登記の手続きをしてしまった場合、基本的に撤回はできませんが、以下のケースにおいては取り消しが認められています。

  • 詐欺や脅迫によって相続放棄をさせられた
  • 未成年者や成年被後見人などが単独で相続放棄をした
  • 錯誤(誤解)によって相続放棄をした

兄弟から詐欺や脅迫などを受けて相続放棄をした場合、取り消しが認められる可能性があります。

また未成年者や成年被後見人など、法律行為に制限がある方が単独で相続放棄をした場合にも取り消しが可能です。

まれな例ですが、重要な錯誤によって相続放棄をした場合にも取り消しが認められた事例があります。たとえば「資産よりも負債が上回っている」という誤解をして相続放棄をした場合などです。

なお相続放棄を撤回するためには、上記のケースに当てはまっているという証拠の提出が必要になります。

取り消しを認めてもらうためのハードルは非常に高いため、相続放棄を求められてもすぐには応じず、弁護士に相談しながら慎重に検討しましょう。

不動産の占める割合が多い

相続財産の中で現金が少なく、不動産の占める割合が多いと平等に遺産を分けることが難しくなります。

たとえば相続財産が土地と現預金の2種類で、土地の評価額が2,000万円、現預金が500万円だったとします。

実家に住んでいる弟が土地を相続してそのまま住み続けることになった場合、兄は現預金500万円しか相続できないため、不公平が生じてトラブルに発展する可能性が高いです。

土地は均等に分けることが難しいので、上記のようにどちらかが得をするような分け方にならないよう注意が必要です。

不動産を均等に分けるための解決策として、換価分割または代償分割が選択肢に挙がります。

不動産の占める割合が多い場合の解決方法

兄弟のうち1人が実家の土地を相続する際には、代償分割で対応しましょう。

代償分割は、土地などの不動産を相続する代わりとして、他の相続人に現金を渡して平等に遺産を分配する方法です。代償分割で渡す現金を「代償金」といいます。

たとえば弟が2,000万円の土地を相続し、兄が現預金500万円を相続した場合、弟が兄に750万円の代償金を渡せばお互いの相続額が1,250万円となり、不公平はなくなります。

代償金が高額で用意できない場合は、土地を売却して売却代金を分配する換価分割がおすすめです。

実家に住むことはできなくなるものの、土地を現金化することにより、兄弟で公平な分配が可能になります。

遺産のうち不動産の占める割合が多い場合は、代償分割か換価分割を検討してみてください。

共有したまま放置してしまう

土地を相続する際に特定の兄弟が所有することが決まらず、共有持分で引き継いでそのまま放置すると、トラブルに発展する可能性があります。

共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有する際に持っている所有権の割合のことです。兄弟が2人なのであれば、1/2ずつの共有持分割合で土地を管理することになります。

いったん土地を共有状態で相続すれば不公平感はなくなるものの、処分や売却をする際には共有者全員から合意を得なければなりません。

また、共有したままの状態で長年が経過すると、兄弟が死亡したときに土地を子供が相続し、共有者が増えることになります。

世代が移り変わるにつれて共有者が増えていくため、兄弟の子供や孫などを巻き込んだ相続トラブルに発展する可能性もあります。

そのため、土地の問題については、なるべく1つの世代で解決するようにしましょう。

共有名義で揉めた場合の解決方法

共有名義で揉めた場合の解決方法は、主に以下の6つがあります。

  • 共有者全員で不動産を売却する
  • 土地を分割して単独名義にする
  • 他の共有者に自分の共有持分を売却する
  • 第三者に自分の共有持分を売却する
  • 自分の共有持分を放棄する
  • 共有物分割請求訴訟を起こす

他の共有者から合意が得られるのであれば、不動産を売却して売却金を全員で分割する方法がおすすめです。

売却に抵抗があるときは、共有の土地を切り分けて単独名義にすることも可能です。

また共有者の許可を得ず実行できる解決策として、自分の共有持分を売却する方法があります。他の共有者や第三者と交渉して共有持分を売却すれば、相続トラブルから解放されます。

売却先が見つからなかったときは、共有持分を放棄してトラブルから抜け出しましょう。

兄弟と係争をする覚悟で共有名義を解消する場合、共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。

共有物分割請求訴訟を起こせば、裁判の判決によって強制的に共有名義が解消されます。共有者同士の話し合いで解決できなかったときの最終手段と考えましょう。

売りたい・住みたいで意見が食い違う

相続した土地の活用方法について、兄弟間で「売りたい」と「住みたい」の意見が食い違い、揉めるケースもあります。

たとえば「家を売って公平に遺産を分けたい」と考える兄弟と、「住み慣れた家だから売らずにそのまま住みたい」と考える兄弟がいる場合などです。

お互いの希望が正反対であるため、どれだけ話し合いをしても平行線となり、最悪の場合は兄弟仲が悪化する恐れもあります。

意見の食い違いはトラブルに発展しやすい部分であるため、慎重に対応しなければなりません。

意見が分かれた場合の解決方法

売りたい・住みたいで意見が食い違った場合には、現物分割で遺産を公平に分けることが理想的です。

現物分割とは、不動産や預貯金などの財産を1つ1つ誰が取得するのかを決める分配方法です。たとえば住むことを希望している兄に不動産、売却を希望している弟に預貯金や株式という具合に遺産を分配します。

ただし、土地以外の遺産が不十分である場合は、現物分割によって公平に遺産を分配するのが難しくなります。

住み続けることを希望する兄弟に支払い能力があれば、代償金の請求が可能です。しかし支払い能力がなければ請求も困難な上、無理やり売却に合意させると実家を追い出すことになってしまいます。

また、共有分割をすれば相続人全員が所有者になるものの、土地の活用方法で後々揉める可能性があります。

兄弟とのトラブル回避を最優先に考えるのであれば、相続放棄も選択肢の1つです。相続放棄は個人が持つ権利であるため、他の相続人からの合意を得ずに実行できます。

相続放棄をする場合は、家庭裁判所に申述しましょう。申述書や添付書類に不備がなければ、約1カ月で手続きが完了します。

兄弟と売りたい・住みたいで意見が食い違ったときは、現物分割や相続放棄などで対処してみてください。

相続登記の変更を実施していない

兄弟で土地を相続した後、相続登記を実施せずに放置しているとトラブルにつながる恐れがあります。

相続登記とは土地の名義変更のことであり、2024年4月1日から法律で義務化されます。

具体的には、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。相続登記をしないまま3年が経過した場合、過料として10万円以下の支払いが命じられるため、注意が必要です。

なお、法律の施行は2024年4月1日ですが、それ以前に相続が開始した場合でも義務化の対象となります。法律の施行以前に相続した土地の名義変更の猶予期間は3年です。

相続登記の変更をしていない場合の解決方法

相続登記に関するトラブルを防止するためにも、不動産の相続後は速やかに相続登記を行いましょう。

相続登記は時間と労力がかかることから、登記漏れや書類の不備などが生じる恐れがあります。

特に以下のような特殊なケースでは、ミスやトラブルが起こりやすいです。

  • 相続人同士の仲が悪い
  • 不動産を長年にわたって放置していた
  • 相続登記の期限が迫っている
  • 相続した不動産が遠方で足を運びにくい
  • 遺産分割が特殊(父母の相続が二重に発生している場合など)

確実に相続登記を遂行するためにも、弁護士や司法書士などの専門家に依頼してみてください。

なお兄弟のうち1人が土地を相続した場合は「単独登記」、複数人が共有で相続した場合は「共有登記」で相続登記の手続きを進めます。

以下の必要書類を集めた上で、管轄の法務局に提出しましょう。

  • 登記申請書
  • 登記事項証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

必要書類の提出後、不備がなければ2週間~1カ月程度で相続登記が完了します。

手続きの完了後に登記完了証と登記識別情報通知書が交付されるので、名義人が大切に保管しておきましょう。

空き家として放置してしまう

土地を共有分割して兄弟全員で相続することを選んだ場合、誰も実家に住まず空き家として放置してしまうケースがあります。

メンテナンスをしないまま空き家を放置していると老朽化が進み、災害発生時には近隣の住宅に損害を与える可能性もあるため、非常に危険です。

空き家の放置が原因で問題が発生した場合、所有者は損害賠償責任を負わされる恐れがあります。場合によっては数千万円以上の高額な損害賠償を請求されることもあるため、実家を残すにしろ手放すにしろ、空き家についての対応は兄弟間で速やかに決定する必要があります。

もしも空き家を放置した状態が続くと、各自治体から「特定空き家」「管理不全空き家」に指定されます。

特定空き家は、そのまま放置していると倒壊や保安上危険となる恐れがある空き家のことです。管理不全空き家は、1年以上誰も住んでいる気配がなく、いずれ特定空き家に指定される可能性のある建物を指します。

特定空き家や管理不全空き家に指定された不動産には「住宅用地特例」が適用されないため、固定資産税が6倍に上がってしまいます。住宅用地特例は、居住目的で利用されている土地の税金を1/6に軽減する制度です。

また空き家だからといって相続登記を怠ると権利関係が複雑化し、子供や孫の代にまで迷惑をかける恐れがあります。

たとえば空き家の名義を父のままで放置して相続人が全員死亡した場合、空き家の相続人は子供になります。相続人の子供は、父と自分の二世代分の相続登記をしなければなりません。

相続人が1人だけなら相続登記をするだけで済みますが、複数人いる場合は相続人全員と連絡を取り「空き家をどうするのか」を話し合うところから始める必要があります。相続人全員の意見が合致しない場合は、トラブルに発展するかもしれません。

土地を相続した際は、誰も住まないからといって放置せず、適切な対策を取りましょう。

放置してしまう場合の解決方法

相続した実家が空き家になりそうな場合、不動産を売却して売却金を兄弟で分配する換価分割がおすすめです。

なお、建物の状態や立地によっては買い手がなかなか見つからないケースもあります。すぐにでも空き家を処分したいときは、空き家買取専門業者へ売却することも視野に入れましょう。

空き家買取専門業者に依頼すれば、リフォームや解体などはせず、そのままの状態で売却できます。

不動産の価値が低く売却の手間を省きたい場合は、国が用意している「相続土地国庫帰属制度」を活用してみましょう。

相続土地国庫帰属制度は2023年4月27日から新しく始まった制度です。不要な土地や管理が難しい土地などを、国に引き取ってもらえます。

相続土地国庫帰属制度を活用すれば、他の財産は取得した上で土地だけを手放すことができます。

金銭的に余裕があれば、建て替えやリフォームなどをして親族が住んだり、賃貸物件として貸し出したりする方法もあります。土地を売らずに有効活用したい場合におすすめです。

建物が老朽化しており解体する必要がある場合は、解体後に土地を売ったり駐車場として活用すると良いでしょう。

不動産を相続したものの使い道がなくて空き家になりそうな場合は、上記の対策を検討してみてください。

実家の土地を相続する際の兄弟での分け方と注意点

実家の土地を兄弟で相続する際は、以下のような分け方があります。

  • 相続放棄
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 現物分割
  • 遺産分割協議

次の項目から、それぞれの詳細や注意点などについて見ていきましょう。

相続放棄

相続放棄は、相続財産を承継する権利をすべて放棄する手続きです。

不動産や現金などの資産だけでなく、負債の相続も放棄するため、借金が多い場合などは相続放棄をした方が良いケースもあります。

相続放棄をする際には、3カ月の期限がある点に注意が必要です。また、遺産を処分すると相続放棄はできなくなります。

相続放棄の注意点について、それぞれ詳しく解説します。

手続きの期限は3カ月

相続放棄をする場合は、相続の開始があったことを知ってから3カ月以内と決められています。3カ月の期限が経過した場合、原則として相続放棄はできません。

また、3カ月の期限を過ぎると限定承認も不可能になります。限定承認とは、マイナスの財産をプラスの財産の範囲内で相続する方法です。

相続放棄や限定承認は、3カ月間の「熟慮期間」の間に判断しなければならないのですが、家庭裁判所に申述すれば、延長が認められるケースもあります。

たとえば財産調査に時間がかかったり、一部の相続人の所在が不明だったりする場合などです。

3カ月以内に相続放棄の判断ができないときは、熟慮期間の延長を忘れずに申請しましょう。

遺産を処分すると相続放棄は不可能

相続放棄をする際には、相続財産を処分してはいけません。財産を処分すると、相続放棄が受理されなくなるからです。

たとえば相続財産である実家を売却や解体などで処分すると、相続する意思があるとみなされ、相続放棄ができなくなります。

また現預金を引き出したり使ったりしてしまった場合にも、同様に相続放棄はできません。

相続放棄の手続きが受理された後でも、財産の処分行為をすると相続放棄が無効になってしまうため、注意が必要です。

相続人全員が相続放棄をした場合、プラスの財産は最終的に国庫に納められることになります。

そのため相続放棄の意思があるときは、財産には一切手を付けないようにしておきましょう。

代償分割

代償分割は、特定の相続人が実家の土地を取得する代わりに、他の相続人に現金などを支払って平等に遺産を分割する方法です。

兄弟間の不平等をなくしたいときにおすすめの方法ですが、現金以外を代償に使うと税金が発生する可能性があります。

また、代償分割をする際には、遺産分割協議書に明記しなければ贈与税がかかってしまう点にも注意が必要です。

次の項目から、代償分割の注意点について詳しく見ていきましょう。

現金以外を代償に使うと税金が発生する可能性がある

代償金は現金で支払われるケースが一般的ですが、不動産で支払うこともできます。

しかし、不動産の時価が財産の取得費よりも高額である場合は、譲渡所得税が発生する点に注意が必要です。譲渡所得税は、不動産を取得したときの利益に対して課される税金です。

たとえば兄が評価額5,000万円の実家の土地を相続し、弟が現預金1,000万円を相続したとします。

兄が弟への代償として時価2,000万円の不動産を譲渡すれば、お互いの相続額が3,000万円となり、不公平はありません。

しかし、不動産の取得費用が1,000万円で時価が2,000万円に上がっていた場合は、1,000万円分の利益が出たとみなされます。このケースの税金の計算方法は以下のとおりです。

長期譲渡所得:1,000万円(譲渡所得)×20.315%(税率)=2,031,500円
短期譲渡所得:1,000万円(譲渡所得)×39.63%(税率)=3,963,000円

不動産の所有期間が5年以下だと短期譲渡所得、5年以上だと長期譲渡所得の税率になります。

不動産を代償金にする場合は、譲渡所得税が発生する可能性に留意しておきましょう。

遺産分割協議書に明記する必要がある

代償分割を選択した場合は、遺産分割協議書に代償金の金額や支払い方法などの詳細を明記する必要があります。

遺産分割協議書に代償分割の記述がなければ、受け取った側に贈与税が発生してしまう可能性があるからです。

贈与税は第三者から財産を贈与されたときにかかる税金で、年間110万円を超えると発生します。

遺産分割協議書への書き方の例は以下のとおりです。

相続人Aは、前項に記載された不動産を取得する代償として、相続人Bに対して金○○万円を令和○年○月○日までに、相続人Bが指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。振込手数料は相続人Aが負担する。

支払い方法や期限、振込手数料などについて明記しておけば、兄弟間トラブルの防止にもつながります。

代償分割の詳細が決まったときは、必ず遺産分割協議書に明記してください。

換価分割

換価分割は、実家の土地を売却して売却代金を相続人で平等に分割する方法です。兄弟全員が「実家を手放しても良い」と考えている場合に向いています。

注意点として、不動産を売却すると売却益に対して譲渡所得税が発生する可能性があります。また、売却する前に相続登記の手続きを済ませなければなりません。

さらに兄弟間で売却価格の判断をどの程度にするのかを共有しておかなければ、トラブルに発展する恐れがあります。

換価分割の注意点について詳しく解説します。

譲渡所得税が発生する可能性がある

換価分割をするために不動産を売却すると、売却益に対して譲渡所得税が課せられる可能性があります。

譲渡所得税は売却金すべてに課されるのではなく、不動産の取得費用や譲渡費用などを差し引いた「課税譲渡所得金額」に対して課されます。

課税譲渡所得金額の計算方法は以下のとおりです。

不動産の売却額-取得費用-譲渡費用=課税譲渡所得金額

取得費用は、不動産を取得する際に支払った金額です。実家の土地が古く取得費用がわからない場合、売却額の5%を取得費にすることができます。

譲渡費用は、不動産を売るためにかかった諸経費のことです。不動産会社に支払う仲介手数料や、建物の解体費用などが当てはまります。

課税譲渡所得金額がプラスだった場合は譲渡所得税の支払いが必要になるため、注意しておきましょう。また、譲渡所得税の内訳は「所得税」と「住民税」であるため、翌年度の住民税も上がります。

相続登記をする必要がある

不動産を売却するためには、相続登記を行う必要があります。相続登記は不動産の名義変更の手続きのことです。

被相続人の名義のまま不動産の売却はできないため、換価分割を行う場合は、いったん相続名義を行ってから売却の手続きを進める必要があります。

相続登記には、単独登記と共同登記の2種類があります。

単独登記は、代表者1名が相続登記を行って不動産を売却し、他の相続人に売却金を分割する方法です。

手続きが簡潔に済むため、相続人の中に信頼できる人がいれば単独登記で問題ありません。

一方の共同登記は、不動産を相続人全員の共有名義にし、売却手続きを全員の確認のもとで進める方法です。

相続人全員の押印や確認が必要になるため煩雑にはなるものの、勝手に売却代金を使われるという心配がなくなります。

手続きを簡潔にしたい場合は単独登記、相続人全員で確認しながら手続きを進めたい場合は共同登記がおすすめです。

売却価格の判断を兄弟間で揃えておく必要がある

不動産を売却する際は、兄弟間で「最低売却額をいくらにするのか」を決めておかなければ、トラブルにつながる可能性があります。

たとえば兄は「2,000万円で売れれば良い」と考えているのに対し、弟は「3,000万円で売りたい」と考えている場合などです。

共有名義の場合は全員が合意しなければ売却ができないので、兄弟間で最低売却額の認識を統一しておきましょう。

最低売却額の他に、売却までの期限や仲介業者の選定、業者とのやり取りは誰がやるのかなども話し合って決めておけば、後々のトラブルを防止できます。

なお、業者とのやり取りを担当する兄弟は他の兄弟よりも労力がかかるため、謝礼についても検討しておくとベストです。

謝礼の内容は現金や金券、食事など、兄弟が満足できるものであれば何を用意しても問題ありません。

現物分割

分筆による現物分割は、土地を複数に切り分けて各相続人が単独名義で取得する方法です。

物理的に土地を分けるため、兄弟間での不公正さがなくなる点がメリットです。

しかし、土地を切り分けることによって価値が下がる可能性がある点には注意しておきましょう。また、すべての土地が分筆に対応しているわけではありません。

次の項目から、分筆による現物分割の注意点について解説します。

土地の価値が下がる可能性がある

土地を分筆すると敷地面積が狭くなってしまうため、土地の価値は基本的に下がるものと考えましょう。

たとえば土地を半分に分筆したのであれば、土地が狭くなった分、価値が1/2になる可能性があります。

切り分けた分だけ価値が下がる程度なら良いのですが、分筆によって最低敷地面積(敷地面積の最低限度)を下回ってしまった場合、土地の価値が著しく下がる恐れがあります。

最低敷地面積は、建物を建てるために最低限必要な面積です。多くの自治体では、最低敷地面積は100㎡と定められています。

特に都市部になるほど土地が狭くなる傾向にあるので、分筆する場合は最低敷地面積を下回らないように注意しておきましょう。

現物分筆ができないケースもある

土地の分筆は、必ず実行できるわけではありません。土地の形状や市区町村の条例によっては、土地が分筆できないケースがあります。

たとえば土地の形が四角形や長方形でなく、三角形や台形などいびつな場合、平等に切り分けることが難しいと考えられます。

無理やり平等になるよう切り分けたとしても、いびつな形の土地を活用することは困難です。

また景観保護などの条例によって、そもそも分筆が禁止されている地域もあります。

分筆による現物分割は、土地の形状や条例などによって実現できないケースがある点に注意してください。

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分割方法について話し合い、合意形成を図るための手続きです。

遺言書がない場合や法定相続分以外で相続する場合は、遺産分割協議が必要になります。

遺産分割協議に期限は設けられていないものの、相続税の申告期限は10カ月以内なので早めに話し合いを取りまとめる必要があります。

また、遺産分割協議で確定した内容は、原則としてやり直しができません。

遺産分割協議を実施する際の注意点について詳しく解説します。

期限に注意する

遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続税の申告期限を過ぎると延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられ、トラブルにつながります。

相続税の申告期限が「被相続人が死亡したことを知った日から10カ月以内」です。

期限内に財産を調査して遺産分割協議の話し合いを終わらせ、相続税申告と納税を行う必要があります。

兄弟間で相続について揉めると話し合いが長引く可能性もあるため、速やかに遺産分割協議を開始することが大切です。

なお、遺産分割協議の話し合いがスムーズに進まないときは、弁護士に依頼して話し合いに参加してもらう方法がおすすめです。

弁護士に依頼すれば法的な観点から適切なアドバイスがもらえる上、紛争が起きたときの解決まで任せられます。

簡単にやり直しはできない

遺産分割協議で決まった内容は、原則として後から覆すことができません。

相続人全員が合意し、押印・署名した遺産分割協議書には、法的効力が発生するためです。

そのため、遺産分割協議を実施する際は、納得できる条件であるかどうかを入念にチェックしましょう。

遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しないため、納得できない部分があれば合意はせず、話し合いを重ねてください。

なお、遺産分割協議のやり直しに相続人全員が納得すれば、以前の合意内容を解除して新たな条件を設定できます。

法定相続分では土地相続の順位が決められている

民法では相続人の優先順位が決められており、基本的には配偶者が最も優先されます。

相続人の優先順位と法定相続分は以下のとおりです。

相続順位 相続人になる人 法定相続分 備考
第1順位 配偶者と直系卑属(子供や孫) 配偶者:1/2
子供:1/2
子供が複数なら1/2を人数で按分
第2順位 配偶者と直系尊属(父母や祖父母) 配偶者:2/3
両親:1/3
両親が相続するなら1/3を2人で按分
第3順位 配偶者と兄弟姉妹 配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
兄弟姉妹が複数なら1/4を人数で按分

被相続人に配偶者や子供がいれば、配偶者と子供に実家の土地を相続する権利があります。

戸籍上で被相続人の子供になっているのであれば、実子か養子かは関係ありません。血のつながりがなくても、平等に相続の権利があります。

もしも子供が全員死亡している場合は、相続の権利は孫に移ります。

なお、先順位の相続人が1人でもいる場合、後順位の相続人は土地を相続できません。

たとえば被相続人の子供が相続人になるのであれば、被相続人の両親や兄弟姉妹は土地の相続権がないということになります。

後順位の人が相続人になるのは、先順位の相続人が1人もいないケースのみです。

実家の土地相続における主な流れ

実家の土地相続における主な流れは以下のとおりです。

  1. 弁護士や税理士に相談する
  2. 相続人と遺産を明確にして遺言書を確認する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 相続登記・相続税申告を行う

どのような流れで土地相続が進むのか、次の項目から順番に詳しく解説します。

相続の専門家に相談する

実家の土地を相続する際は、専門家に相談しながら進めていくのがベストです。

相続について相談できる専門家と対応できる内容は以下のとおりです。

専門家 対応できる内容
弁護士 ・遺言書の有無の確認
・トラブルが起きたときの紛争解決や遺産分割協議の代理人
税理士 ・相続税の申告
・税務調査に関するアドバイスや立会い
司法書士 ・不動産の相続登記
・紛争に関するアドバイス
行政書士 ・各種書類の作成
・預貯金や株式などの名義変更

相続に関するサポートを一任したい場合は、弁護士に相談しましょう。

弁護士費用は発生するものの、紛争解決から財産調査まで相続に関する業務全般を依頼できるため、手間を最小限に抑えられます。

税金に関する不安がある場合は税理士、相続登記を代行してほしいときは司法書士への依頼がおすすめです。

行政書士に依頼できる業務は他の専門家にも依頼できるため、弁護士・税理士・司法書士から相談する専門家を選ぶと良いでしょう。

専門家に相談する費用が気になるときは、兄弟以外の親族に相談し、間に入ってもらいながら土地相続の手続きを進める方法もあります。

また、地域によっては役所でも相続の相談が可能です。役所の相談は無料であるため、手続きでわからないことがあれば相談しに行きましょう。

なお、役所に相談できるのは、管轄地域に居住している方や勤務している方、在学中の学生に限られるため、注意してください。

相続人と遺産を明確にして遺言書を確認する

次に法定相続人と遺産の内容を明確にし、遺言書を確認します。

法定相続人については、被相続人の戸籍を取得することで確認できます。役所に申請して自分で戸籍を取得するか、弁護士や司法書士に代理取得を依頼しましょう。

遺産については、預貯金や現金、自動車、不動産、有価証券、などが該当します。

預貯金や有価証券などは、残高証明書を請求すれば金額が確定します。また、家の中に現金が残されていないかどうか、金庫や押し入れなどをチェックしてみましょう。

自動車は買取業者に査定してもらえば、現在の価値がわかります。

不動産は評価額を決める必要があるのですが、専門知識がなければ正しい評価をするのは難しいため、税理士に依頼することをおすすめします。

相続人と遺産の調査が完了したら、遺言書の内容確認に進みましょう。

遺言書に封がされている場合は、家庭裁判所で相続人全員の立会いのもとで内容を確認するため、勝手に開封してはなりません。

勝手に開封すると罰則として5万円以下の過料が課せられるため、注意してください。

遺産分割協議を行う

遺言書が見つからなかったときや、法定相続分以外で相続をする場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議では、各相続人に遺産をどのように分配するのかを確定させます。

相続人全員が参加して内容に合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。

1人でも合意を得られなければ遺産分割協議が終わらないので、全員が納得できるような条件にすることが大切です。

遺産分割協議の合意が得られたら、相続人全員が遺産分割協議書に署名・押印をし、印鑑証明書を添付しましょう。

相続登記・相続税申告を行う

遺産分割協議書の作成が完了したら、相続登記の手続きを行いましょう。

管轄の法務局に必要書類をすべて提出すれば、2週間~1カ月ほどで手続きが完了します。

実家の土地をはじめとする遺産を相続した後は、相続税の支払い義務が生じます。

相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日から10カ月以内」なので、期限内に相続税を申告して納めるようにしてください。

なお、相続登記は司法書士に、相続税の申告は税理士に依頼することも可能です。

不備や手間をなくしたい場合は、専門家に相談しながら手続きを進めましょう。

まとめ

実家の土地相続において兄弟間でトラブルが起こったときは、原因ごとに適切な対策を講じることが大切です。

特に対策をせず共有名義のまま実家を放置すると、後々さらに大きなトラブルにつながる可能性があります。

兄弟間で紛争が起きそうなときは、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談すれば紛争解決はもちろん、相続に関する手続き全般を代行してもらえます。

相続登記で悩んでいるときは司法書士、相続税の計算ができないときは税理士など、悩みにあわせて相談先を柔軟に変えてみてください。