タンス預金は申告しないとバレる!
相続税を減らすためにタンス預金を行なっても、税務署にバレてしまいます。
実は、税務署は亡くなった人(被相続人)の銀行口座と家族の口座の入出金明細を照会できます。
被相続人の銀行口座から多額の出金を行なった履歴があるのに、用途が不明な場合「脱税のために財産を隠している可能性がある」と疑われます。
同じように、被相続人の家族の口座に多額の入金履歴がある場合「口座を替えることで相続財産を少なく申告するためではないか」と疑いをかけられます。
また、銀行などの金融機関は利用者の取引情報を10年間保管する義務があります。
被相続人の口座から現金を引き出してから一定の年月が経っていても、過去10年間の入出金履歴を遡って調査ができるためバレる可能性が高いです。
疑わしい入出金がある場合、税務調査が入ります。
必要だと判断されれば家宅捜査により家中を隈なく調べられるため、現金を隠し通すことは難しいでしょう。
タンス預金とは自宅で保管している現金
タンス預金とは、銀行などの金融機関に預け入れをせず、自宅で保管している現金のこと。
タンスで現金を管理していた家庭が多かったときの名残りで、実際の保管場所がタンスでなくても「タンス預金」と呼ばれます。
「まとめて生活費を下ろして手数料がかからないようにしている」「急にまとまったお金が必要になったときに備えて自宅に置いている」など、理由はどうあれ数十万以上のまとまった現金を自宅で保管していれば、タンス預金にあたります。
タンス預金自体は違法ではない
タンス預金自体に違法性はなく、何も問題ありません。
現金が必要なとき、いちいちATMにお金を下ろしに行かないで済みますし、手数料もかかりません。
万が一銀行が破綻したとき、1,000万円を超える預金は保証されないケースがあるため、資産を守るのにも有効です。
以上のメリットからタンス預金を続けている人は一定数存在します。
同時に、デメリットも存在します。
盗難や紛失、火事や地震などの災害で財産を失ってしまうリスクがあります。
また、銀行に預けているとつく利息も発生しません。
相続財産として申告をしないと違法になる
タンス預金そのものは問題ありませんが「知っているのは家族だけだから」と相続財産として申告しないで、相続税や贈与税を減らそうとするのは違法です。
また、意図しない申告漏れに繋がりやすく問題視されています。
被相続人が亡くなったときに所有していた財産は全て相続財産として申告する必要があります。
具体的には、以下は相続税の対象です。
- 土地
- 建物
- 株式や公社債などの有価証券
- 預貯金
- 現金
現金には、自宅で保管されていたお金や貸金庫に預けているお金はもちろん、死亡直前に銀行口座から引き出したお金や財布に入っている現金も全て含まれます。
また、被相続人が危篤状態になったときに医療費や生活費をまとめて引き出しておいたり、亡くなった後の葬式費用を被相続人のお金を使って行なったりする場合があると思います。
例えば、1千万円を引き出し、そのうち医療費として被相続人が亡くなる前に100万円を支払い、被相続人が亡くなった後に葬儀代として200万円を支払ったとしましょう。
この場合、医療費の100万円のみを差し引いた900万円を相続財産として計算に入れる必要があります。
相続財産は「被相続人が亡くなったときに所有していた財産」です。
つまり、葬儀代の200万円は被相続人が亡くなった時点で所有していた現金にあたるため、相続財産として数えなくてはいけません。
名義預金も場合によっては申告をしないと違法になる
名義預金とは、名義人と実際に預金をしている人が異なる預金のこと。
相続においては、被相続人が子どもや孫などの本人以外の名義で残している財産を指します。
名義預金も実は相続財産です。
家族名義の預貯金も「実際の所有者は被相続人である」と判断された場合、相続税を納めなくてはいけません。
- 被相続人と同じ印鑑を使用している
- 被相続人が通帳・印鑑を保管している
- 被相続人から既に贈与された事実が確認できない
上記の3つの条件に当てはまる場合、名義預金と判断される可能性が高く、相続財産として申告する必要が出てきます。
タンス預金の時効は最長7年
法律違反をしても、一定期間が経過することで罰則などが免除される「時効」はタンス預金にも存在します。
税務署は、相続税の申告・納税期限から最長7年間徴税が可能です。
つまり、7年を過ぎると時効が成立し申告や納税義務が免除されます。
相続税の申告・納税期限は、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内と決まっています。
例えば、被相続人が2024年4月1日に亡くなった場合、2024年10月2日が申告・納税期限で、さらに7年後の2031年10月2日に時効が成立します。
税務署による税務調査の方法
税務署による税務調査では、以下の4つの調査が行われます。
- KSKシステムを使った調査
- 過去10年分の預貯金を調査
- 法定調書を使った調査
- 質問や実地調査による調査
KSKシステムや法定調書とは何か、質問や実地調査では何を見られるのかなどを詳しく紹介していきます。
KSKシステムを使った調査
国税庁や税務署は、KSKシステム(国税総合管理システム)により納税者の申告内容や納税の記録を管理しています。
KSKシステム(国税総合管理システム)とは、全国12ヶ所にある国税局と524ヶ所に及ぶ税務署を結ぶネットワークのことで、税務調査や滞納整理に伴う業務効率化のために導入されました。
KSKシステムを使えば、被相続人の過去の収入状況と亡くなったときの財産、相続税の申告内容と過去の記録情報を見比べて齟齬がないか確認することができます。
過去10年分の預貯金を調査
また、先ほど解説したとおり金融機関は10年分の取引情報を保存しています。
税務調査を行う場合、過去10年分の預貯金の調査を行います。
高額な出金記録があるにも関わらず用途が不明な場合、タンス預金を疑われ更なる調査の対象になることがあります。
法定調書を使った調査
税務調査には、法定調書も使われます。
法定調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などの法律によって税務署へ提出する義務が定められている書類のこと。
法定調書は、納税者の収入を把握し脱税を防ぐ役割があります。
例えば、会社は社員に支払った給与は源泉徴収票を提出して、業務委託者に支払った報酬は支払調書を提出して報告します。
法定調書で報告された内容と銀行口座の入出金額を照らし合わせ、出所が不明なお金がないか確認します。
質問や実地調査による調査
調査が進むと、質問や実地調査が行われます。
質問では、仕事内容や現在の収入など直接調査に関わりそうなものから、家族や従業員に関する雑談のようなものまでさまざまなことを聞かれます。
どの質問にも意図があり、間接的な質問からタンス預金がないかどうかを確認しています。
実地調査では、通帳・印鑑などを調べます。
被相続人のものだけでなく、相続人にあたる家族の通帳・印鑑まで調査します。
通帳・印鑑の保管場所まで見る場合もあります。また、自宅の金庫や貸金庫も実地調査の対象です。
不審な入出金があった人以外にも、申告書の計算が誤っていたり申告額が想定より少なかったりすると税務調査の対象になりやすいです。
また、税務署は死亡届で誰が亡くなったかを把握しています。
家族が亡くなったのに相続財産の申告をしていない人も「財産を隠している可能性がある」と思われるため、調査対象になりやすいです。
タンス預金を相続財産として申告しなかった際のペナルティ
タンス預金を相続財産として申告しなかった場合、ペナルティとして以下のような税金を追加で支払います。
また、刑事罰に科せられることもあります。
刑事罰の有無やどの税金が適用されるかは状況によって異なります。詳細を見ていきましょう。
無申告加算税
相続税の申告を期限内に行わなかった場合に課せられます。
2024年1月から加算税制度が改正され、従来よりも支払う金額が増えました。
税率は、納付すべき税額に対して50万円までは15%・50万円を超える分は20%・300万円を超える分は30%となります。
期限を過ぎて1ヶ月以内に申告した場合は「期限後申告」として扱われ、無申告加算税は適用されないこともあります。
税務調査の通知が届く前に申告した場合も同様で、無申告加算税は適用されなかったり軽減されたりします。
延滞税
相続税の申告・納税期限である、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に相続を申告しなかった場合に課せられます。
支払う金額は、税金が完納されるまでの日数に応じて増えていきます。
税率は、期限の翌日から2ヶ月以内の分は年2.4%・期限の翌日から2か月を超えた分は年8.7%です。
税率は、相続が発生した時期によって変動があるため注意が必要です。
過少申告加算税
申告・納税した金額が本来の納税額より少なかった場合に課せられます。
計算の誤りなど意図しない過少申告に対して課せられるため「意図的に相続した財産を隠そうとした」と判断された場合は、別のペナルティがあります。
税率は、追納する税金のうち50万円以内の分は10%・50万円を超える分は15%です。
過少申告加算税も、税務調査の通知以前に申告すれば適用されなかったり軽減されたりします。
重加算税
申告・納税で仮装や隠蔽があり悪質な場合に課せられます。
無申告加算税もしくは過少申告加算税の代わりに支払います。
無申告加算税に代わる場合、相続財産として申告していなかった金額のうち40%を追加で課税されます。
過少申告加算税に代わる場合、35%を追加で課税されます。
「故意に財産を隠そうとした」「調査を誤魔化すために偽装した」などの悪質なケースに適用されます。
相続税の脱税で刑事罰が科せられる可能性もある
相続税を申告しなかったり少なく申告したりすると、脱税行為とみなされ刑事罰が科せられる可能性があります。
正当な理由がなく期限内に申告を行わない「無申告犯」・脱税のために意図的に申告を行わない「ほ脱犯」・偽装や不正行為によって相続税を免れようとする「脱税犯」など、罪状によって罰則が異なります。
最も罪が重い「脱税犯」は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方を科せられます。
タンス預金を見つけた際の相談先は?
タンス預金を見つけ、どうしたらいいのかわからない人もいるでしょう。
相続にあたって何を手伝ってほしいか、そもそも相続をしたいかどうかによって適切な相談先は異なります。
- 申告を手伝って欲しい →税理士
- 相続財産調査を頼みたい →行政書士
- 相続放棄をしたい →弁護士
申告が必要な条件や相続財産調査・相続放棄の詳細を踏まえて、どこに相談すべきか判断しましょう。
申告を手伝って欲しい場合は税理士
タンス預金を含めた相続財産の額が基礎控除額を上回る場合、相続税が発生します。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人数)で計算します。
例えば、相続人が被相続人の配偶者と子ども2人の場合、法定相続人数は3人です。
3,000万円+(600万円×3)=4,800万円が基礎控除額となり、相続した財産が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
「相続税が発生しそう」「申告をプロに手伝ってほしい」というときは、税理士に相談するのがおすすめです。
相続財産調査を頼むなら行政書士
「タンス預金や知らない財産が多数見つかった」「他にもあるかもしれないが把握できていない」というときは、行政書士に相談するのがおすすめです。
行政書士は、相続にまつわる書類の作成だけでなく相続財産調査も請け負ってくれます。
相続財産調査とは、亡くなった被相続人の財産を全て洗い出し、財産額を確定させる調査です。
特に相続財産に不動産が含まれる場合、自分で評価額を見定めるのは難しいでしょう。
把握していない被相続人の財産があると、申告漏れに繋がります。不安がある人は、行政書士に相談しましょう。
相続放棄をするなら弁護士
タンス預金を含め相続放棄をしたい場合は、弁護士に相談しましょう。
相続放棄とは、亡くなった人の財産を全て相続しないことで裁判所での手続きが必要になります。
相続放棄をすると借金やローンなどの負債を引き継がなくて済むため、一般的にはマイナスの財産が多いときに行います。
また、全ての財産を正しく把握できていないと、相続放棄すべきかどうかの判断ミスに繋がります。
相続する財産を確認した上で相続放棄がベストな選択かどうか相談したいときは、弁護士を頼りましょう。
まとめ
自宅で保管しているタンス預金は、申告しなくてもKSKシステムや法定調書を確認すれば不審な点が出てバレてしまいます。
申告自体をしなかったり相続税を少なく申告してしまったりすると、無申告加算税や過少申告加算税、さらに支払いが遅れた分の延滞税を支払わなくてはなりません。
余計なお金と手間を防ぐためにも、まずは相続する財産を全て把握することから始めましょう。
財産の調査や相続放棄の判断、手続きを進めるには専門家への相談がおすすめです。
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