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遺産相続で相手が何も言ってこない!勝手に手続きをされていた場合の対処法

遺産相続で相手が何も言ってこない!勝手に手続きをされていた場合の対処法

「兄弟が勝手に相続手続きをしていた」などの相続トラブルをよく聞きます。
万が一自分抜きで相続手続きが行われていたり、遺産の使い込みが発覚したりしたときは、やり直しを求めたり不当利得返還請求したりすることで対処が可能です。

また「相続が発生しているかどうか、何も連絡がなくてわからない」というときは、被相続人の戸籍謄本や相続放棄があったかどうかを確認するのが有効です。

基本的には、遺産相続が発生しているもしくは発生している可能性があるのに、相手が何も言ってこなくても過剰に心配する必要はありません。
なぜなら、相続手続きの期限は「相続を知ってから」カウントされるからです。

しかし、相続手続きの期限が過ぎてしまった場合、追加で相続税を支払う・相続放棄ができなくなる・高額な固定資産税が課せられる・被相続人の預金が下ろせなくなるといったリスクがあります。
「万が一誰も手続きをしていなかったらどうしよう」と不安なときは、専門家に相談することをお勧めします。

遺産相続で何も言ってこなくても特に問題はない

遺産相続にまつわる手続きの期限の多くは「相続を知った日」から数えます。
つまり、何らかの理由で被相続人が亡くなったことや相続する遺産があることを知るのが遅れても、知らない間は何の期限も発生しないので問題はありません。

ちなみに、相続にまつわる手続きの中でも、比較的期限が短い相続放棄の期限は相続を知った日から3ヶ月以内です。
「相続を知った日から」数える上に、3ヶ月と一定の準備期間が設けられています。

また、遺産を相続するときは「相続人調査」と呼ばれる、だれが相続の対象かを調べるフローが発生します。
相続人調査では、被相続人の戸籍謄本を取り寄せて、だれが相続人なのかを調べます。
その上で、相続人全員でどのように遺産を分割するか取り決め、相続人全員の実印を押した協議書にまとめて提出しなければ遺産相続はできません。

基本的には、だれかが相続を進めるうちに遺産分割協議のための場が設けられるので「万が一自分が相続人であると知らなくて、勝手に相続が進められてしまったら」と過剰に心配しなくても良いでしょう。

遺産相続が始まっているかどうかの確認方法

自分が相続人の一人で「連絡が来ていない可能性がある」と不安な場合は、遺産相続が始まっているかどうかを確認しましょう。

遺産相続が始まっているかどうかの確認には、以下の手段が有効です。

  • 被相続人の戸籍謄本を取り寄せる
  • 相続放棄か限定承認の照会を行う

被相続人の戸籍謄本を取り寄せる

被相続人の戸籍謄本を取り寄せて、被相続人の生死を確認することができます。
亡くなっている場合は、死亡日が記載されています。
遺産を持っている被相続人が既に亡くなっている場合、遺産相続が開始しています。

ちなみに、戸籍謄本は被相続人の本籍地にある市町村役場から取り寄せる必要があります。
被相続人の本籍地がわからない場合、まずは被相続人の住民票を発行して本籍地を確認しましょう。

相続放棄か限定承認の照会を行う

被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所に問い合わせると、だれかが相続放棄や限定承認の手続きを行なっていないか調べることができます。

自分よりも相続順位が高い人が相続放棄を行った場合、知らない間に自分が相続人になっているケースがあります。
相続放棄をしても、次の順位者に伝える義務などはないため自分で確認を行いましょう。

相続順位とは、民法で定められている相続人になる原則の順番のこと。

常に相続人になる配偶者以外は、以下の優先順位が定められています。

  • 第1順位 →子ども
  • 第2順位 →親
  • 第3順位 →兄弟・姉妹

相続放棄申述の有無の照会には、いくつか必要書類があるため事前に調べたり問い合わせたりして書類を揃えるようにしてください。

遺産分割協議は相続人全員が集まっていなければ無効

遺産分割協議は、相続人全員が集まって協議し合意する必要があります。
さらに、相続人全員の署名と実印が入った遺産分割協議書や相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明も必要です
つまり、一人でも相続人が欠けた状態で遺産分割協議が行われても、決定した内容は無効になります。


手続き時に相続人に漏れがないかもチェックされるため、一部の相続人の合意がないまま被相続人の口座からお金を引き出したり不動産の名義を変えたりといったことがされる可能性は低いでしょう。

遺言書があれば遺言執行者から連絡が来る

遺言書がある場合、遺言書に従って遺産を分ける「遺言執行者」が相続人に遺言の内容を通知する義務があります。
もしあなたが遺産を受け取らない相続人であっても、遺言の内容が知らされます。

有効な遺言書がある場合、遺言書に書かれたとおりに遺産が分けられるため、遺産分割協議を別で開催したり全員が参加したりする必要はありません。
遺言執行者は、相続人全員に連絡をしなくても遺産の相続は進められますが、相続が発生したことやその内容は自ずと知ることができます。

勝手に相続手続きがされていたときの対処法

しかし、調べた結果「勝手に相続手続きがされていた」ということもあるでしょう。

ケースに応じた対応は下記のとおりです。

  1. 遺産分割協議が知らぬ間に終わっていた →やり直しを訴える
  2. 遺産を使い込まれた →不当利得返還請求や賠償請求を行う
  3. 遺言書での相続に納得できない →遺留分侵害額請求を行う

それぞれのケースと対応について詳しく解説していきます。

遺産分割協議が知らぬ間に終わっているときはやり直しを訴える

万が一自分が相続人にも関わらず、知らない間に遺産分割協議が完了していたときはやり直しを訴えましょう。

「相続人調査に漏れがあって気づかなかった」「遺産分割協議を行うときに連絡が取れなかった」などの理由があっても、協議に相続人全員が参加していなければ遺産分割協議書は無効です。
また、やり直しには期限が存在しないため、数十年前に終わった遺産分割協議を再度行うことも可能です。

また、相続を行うときに詐欺や脅迫、偽造や財産隠しがあったと発覚したときも前回の遺産分割協議を取り消してやり直せます。

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 銀行口座にあった預金のみを相続財産として遺産分割協議を行ったが、実は他にも不動産や証券などの遺産が多数あったと発覚した
  • 「だれも被相続人から生前贈与を受けていない」という前提で遺産分割協議を行ったのに、高額な生前贈与があったことが発覚した
  • 脅されたり騙されたりして、納得のいっていない遺産分割協議書に無理やり合意させられた
  • 遺産分割協議書を偽造して相続が進められた

遺産を使い込まれたときは不当利得返還請求か損害賠償請求を行う

被相続人が亡くなる前に、一部の相続人が財産を使い込んでいるケースもあります。
遺産を勝手に使い込まれたときは、不当利得返還請求もしくは損害賠償請求を行いましょう。

不当利得返還請求とは、不当に利益を得た人から損失を受けた人が返還を請求すること。

不当利得返還請求を行うには、以下に挙げた4つの条件を満たしている必要があります。

  1. 利得に法律上の原因がない
  2. 他人の財産や労務により利益を得ている
  3. 他人に損失を及ぼしている
  4. 利益と損失に因果関係がある

法律上の原因には、生前贈与などが挙げられます。
仮に親の貴金属や高級時計を子どもが売却していたとしても、親子の間で生前贈与がなされていれば不当利得返還請求が行えません。
ただし、生前贈与には契約書を交わす必要がないため、無断で売却していた場合も生前贈与だと主張される可能性があります。

他人の財産や労務による利益とは、例えば親の預金を子どもが自分の車やブランド品の購入にあてた場合のこと。
親の介護費や治療費にあてていた場合は、勝手に引き出していたとしても利益を得たとはいえません。

また、相続人から不当利得返還請求を行うときは、使い込みがあったことで相続予定だった財産が減り、相続人に損失が発生したと証明する必要があります。

そして、不当利得返還請求を行う請求者が受けた損失と相手が得た利益に因果関係がない場合、利益を得たことが事実でも請求は成り立ちません。

例えば、預金の管理ができない状態になった親から、通帳やキャッシュカードなどを預かった子どもが無断で預金を引き出して、自分の買い物に利用した場合「不当に利益を得た」といえます。
元は親のお金ですが、親が生前に回収できなかった場合「使い込みによって相続人が損失を受けた」と考えられるため、相続人による不当利得返還請求が可能です。

また、不当利得返還請求には時効があります。
権利の発生日から10年が経過すると時効が成立し、請求権が消滅してしまいます。

時効が成立してから不当利得が発覚した場合は、損害賠償請求などの方法で受けた損失に相当する賠償を求めます。

遺言書での相続に納得できないときは遺留分侵害額請求を行う

遺言書の内容に従って行われた相続に納得できないときは、遺留分侵害額請求を行うことができます。
使い込みを相手が認めないときや証拠がないときにも有効な手段です。

遺留分とは、法律に基づいて相続人に最低限保証・確保された財産を指します。
遺留分侵害額請求とは、保証された財産を請求できる手続きです。

兄弟や姉妹を除く相続人は、遺産に対して決まった割合で相続を受ける権利があります。
この権利は、生前贈与や遺言書で奪うことはできません。

被相続人が生前贈与を行なっており、相続する財産が残っていないときも遺留分侵害額請求は可能です。
ただし、相続の開始や遺留分を侵害する贈与もしくは遺言による贈与があったと知ってから1年が経つと請求権が消滅してしまうので注意が必要です。

遺産相続で相手が何も言わずに行う可能性があること

相続におけるトラブルを回避するためには、遺産相続で相手が何も言わずに行う可能性を把握しておきましょう。

ここでは、代表的な2つのリスクを紹介します。

  • 遺産を使い込む
  • 不動産を売却する

遺産を使い込む

遺産を独り占めしようとする相続人がいる可能性は否定しきれません。

別の相続人に遺産を使い込まれてしまった場合、不当利得返還請求などの手段はありますが、使い込んだ後では本来の遺産の総額や自分が受け取れるはずだった金額を把握するのが難しくなってしまいます。

不当利得返還請求を行うときは、以下のステップで進めます。

  1. 不当利得の証拠を集め、不当利得の金額を計算する
  2. 遺産を使い込んだ相続人に不当利得返還請求を行う
  3. 協議や合意書の締結

不当利得の証拠には、被相続人や使い込みを行った相続人の入出金履歴や株式の取引明細書が有力です。
不当利得返還請求は、郵便局が郵便を出した内容や発送日、相手が受け取った日付を証明する「内容証明郵便」を利用して行うのが一般的です。
相手から返信があれば、協議の上合意書を締結し、合意書の内容に応じた遺産の返還に進みます。

使い込んだ相続人が返還を拒否した場合や協議をして条件が折り合わなかった場合は、民事訴訟により返還を求めます。

ちなみに、不当利得返還請求は遺産の使い込みを知ってから5年もしくは遺産が使い込まれてから10年が経過すると権利が消滅してしまうため注意が必要です。

不動産を売却する

実は、不動産は法定相続人が自分の法定相続分の範囲内であれば、勝手に登記を行い売却することができてしまいます。

法定相続分とは、法律で決められている遺産取得割合のことです。

遺産分割協議にあたって、相続人が勝手に一部の不動産を売却したことが発覚しても、既に第三者の手に渡っている場合取り返すのは困難です。
第三者が購入した物件が相続財産であることや遺産分割協議前であることなどを感知していない場合、売買を無効にすることができない可能性が高いからです。

損失が発生するリスクを回避するためにも「相続が発生する可能性がある」と思ったら、なるべく早く調査を行い、相続人や財産の総額を把握しておきましょう。

万が一不動産を勝手に売却されていた場合は、不動産の買主が所有権移転登記を完了していなければ先に登記名義を移すことで取り戻すことが可能です。

所有権移転登記が完了している場合は、売却した相続人から売却によって得たお金を返還させるか、他の遺産を分けるよう交渉する必要があります。

遺産相続の手続きをしなかったらどうなる?

万が一相続人がだれも遺産相続の手続きをしなかったときは、一定のペナルティやリスクが発生します。

  • 追加で相続税を支払う
  • 相続放棄をできなくなり借金を抱える
  • 高額の固定資産税が課せられる
  • 被相続人の預金を下ろせなくなる

追加で相続税を支払うことになる

相続税の申告・納税の期限は、相続を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
例えば、2024年4月1日に相続を知った場合、2024年2月2日が期限です。

期限内に申告・納税を行わなかった場合、ペナルティとして無申告加算税や延滞税といった税金を追加で支払う必要があります。

相続があることを知ったにも関わらず、だれも手続きを行わなかった場合、手元に残る財産が少なくなってしまうので気をつけましょう。

相続放棄をできなくなり借金を抱える

相続する財産には、借金やローンなどの負債も含まれます。
相続を放棄したいときは、相続を知ってから3ヶ月以内に手続きを完了する必要があります。

ちなみに、相続を放棄した場合は預貯金や不動産などの財産も全て相続できなくなります。
被相続人が持つ全ての財産を正しく把握した上で、放棄すべきかどうかを判断すると良いでしょう。

高額の固定資産税が課せられる

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに不動産の登記名義を相続人に変更すること。

相続から3年以内に相続登記が行われなかった場合、10万円以下の罰金が科せられます。

さらに、不動産を放置して市町村から特定空き家に指定された場合、最大6倍の固定資産税の支払いを求められる可能性があります。

居住用の住宅は、課税標準の特例が適用され固定資産税が軽減されているのですが、必要な管理がされていない空き家は、居住用の住宅とは認められません。
行政から「特定空き家」や「管理不全空き家」に認定され、課税標準の特例が適用されなくなった結果、固定資産税が増えてしまうのです。

被相続人の預金を下ろせなくなる

被相続人が亡くなった後、銀行口座を放置し続けると預金が下ろせなくなります。

口座名義人が亡くなると、預金口座は凍結されます。
凍結されたまま放置され、最後の取引から10年が経過すると、口座は自動的に休眠口座となります。
休眠口座にある預金は、2018年に施行された「休眠預金等活用法」に基づいて民間公益活動に使われます。

休眠口座になった時点で金融機関から通知がされますが、さらに10年が経過すると消滅時効を迎え、相続できるはずだった預金を下ろせなくなってしまいます。

自分が相続人であり相続が開始している可能性があるときは、これらのリスクを回避するために相続が始まっているか、財産はどんなものがどのくらいあるかの確認を行なっておくと安心です。
確認や財産の把握が難しい場合、専門家などに相談するのがおすすめです。

まとめ

遺産相続に関する手続きの期限は「相続を知った日」からカウントするため、遺産相続で相手が何も言ってこないからといって必要以上に不安になることはありません。

しかし、万が一だれも相続を進めなかったりあなたが相続人になったことを知らせなかったりした場合、追加の税金の支払いや不要な借金の相続などのリスクが伴います。
相続が始まっている可能性があると思ったら、被相続人が亡くなっているか、だれかが相続破棄をしていないかをまずは確認するのがおすすめです。

確認した結果「遺産分割協議が自分がいないときに行われた」「遺産の使い込みが発覚した」となっても、やり直しや不当利得返還請求で対応が可能です。
状況によっては、専門家にサポートしてもらいましょう。