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男性不妊だけを理由に離婚は認められない!認められるケースや慰謝料を解説

男性不妊を理由に離婚は認められない!認められるケースや慰謝料を解説

子供を授かるために不妊治療を行う夫婦は増加しています。不妊の原因はさまざまで、男性に原因がある「男性不妊」によってなかなか子供を授かれない、というケースもあるでしょう。男性不妊であることを理由に、妻に離婚を迫られている妻との関係が悪化していると感じる…という人もいるでしょう。

不妊が原因となって離婚を考えるようになる夫婦もいるものの、不妊のみを理由とした離婚は、双方が合意している場合以外、法律で認められていません。

ただし、不妊をきっかけとして夫婦関係がうまくいかなくなったセックスレスになってしまった、さらにDVやモラハラが不妊の理由になっている、などの場合であれば、離婚が認められることが多いです。

また男性不妊がきっかけで妻が不倫をして夫婦関係が破綻した、男性不妊だとわかってから妻が性交渉を拒むようになったなどの場合は、夫から妻に慰謝料を請求できる可能性もあります。

離婚は協議離婚から始まり、調停離婚・裁判離婚の流れで進んでいきますが、離婚をしたくない場合は離婚届の不受理申出書を提出し、妻が勝手に離婚届を提出しないように手続きを行っておきましょう。

ここでは、男性不妊を原因とした離婚が認められるケースや慰謝料を請求できるケース、さらに男性不妊の原因や離婚する場合の流れなどを紹介します。

基本的に男性不妊を理由に離婚は認められない

男性不妊をきっかけとして、夫婦のどちらか一方だけが離婚を望んでいても、もう一方が離婚したくないと考えていれば、離婚は認められません。一方のみが望んでいる離婚を認められるのは、民法770条第1項に定められている「法定離婚事由」に該当する場合のみです。

法定離婚事由とは、以下が該当します。

配偶者の不貞行為
配偶者からの悪意の遺棄
配偶者の3年以上の生死不明
配偶者が強度の精神障害にかかり、回復の見込みがない
その他に婚姻を継続しがたい重大な事由がある

男性不妊をはじめとする「不妊」は法定離婚事由に当たらないため、男性不妊のみを原因とした離婚に応じる必要はないでしょう。ただし男性不妊をきっかけとして「法廷離婚事由」に該当する事情が発生したり、性交渉を拒んでセックスレスに陥っていた不妊が原因でDVやモラハラをしていた・されていたなどの場合は、離婚が認められる可能性も高いでしょう。

男性不妊をきっかけとして離婚が認められるケースは、以下で詳しく紹介しています。

男性不妊以外の理由で離婚が認められるケース

男性不妊のみでの離婚は認められませんが、男性不妊をきっかけとした離婚は認められる可能性があります。男性不妊以外の理由で離婚が認められるケースは、以下の通りです。

  • 「法定離婚事由」に該当する
  • セックスレスなど性生活への不満がある
  • 不妊を原因とする、もしくは不妊の理由になるDVやモラハラがある

「法定離婚事由」に該当すれば離婚が認められる

上記で紹介した、法定離婚事由の中に不妊は含まれていません。しかし、配偶者に不貞行為や悪意の遺棄があった場合、または婚姻を継続しがたい事由が発生した場合は、離婚が認められる可能性が高いでしょう。

例えば、夫が不倫をする正当な理由がないのに同居を拒む・生活費を家計に入れないなど生活を見捨てるなどの行動は、法定離婚事由に該当するとみなされるでしょう。

セックスレスだとみなされれば離婚につながる可能性が高い

セックスレスは、はっきりと「法定離婚事由」として記載されていませんが「その他に婚姻を継続しがたい重大な事由」の項目に該当することも考えられます。

実際に、離婚調停・離婚裁判などででは、夫婦の性交渉の問題は重要とされています。実際に離婚調停の申し込みをする際に提出する書類の「離婚したい理由」を記載する欄には「性的不調和」という選択肢も設けられています。

男性不妊であることを理由に妻との性交渉を拒んでいた、逆に妻から拒まれていた場合、「その他に婚姻を継続しがたい重大な事由」の項目に該当する可能性があるでしょう。

またセックスレスが引き金となって、夫婦の不仲につながって夫婦関係が破綻した場合も「その他に婚姻を継続しがたい重大な事由」となって離婚が認められることもあります。

DVやモラルハラスメントが不妊の理由になっている場合も離婚が認められやすい

男性不妊であることがストレスとなり、妻に対してDVやモラハラをしてしまうと「その他に婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断される可能性があります。また男性不妊であり、不妊治療への協力を求められているにもかかわらず、まったく協力しようとしない・責任転嫁するなどの言動・行動も「その他に婚姻を継続しがたい重大な事由」に当てはまるでしょう。

また、DVやモラハラは夫から妻に対して行うとは限りません。妻から男性不妊を理由として暴言を浴びせられたり、暴力を受けたりする場合も同様です。妻からのDVやモラハラを離婚事由と主張し、離婚を申し出ることができます。

双方の合意があれば離婚は可能

男性不妊を理由とした離婚は認められないが、男性不妊をきっかけとして「法廷離婚事由」に当てはまる場合は離婚が認められる可能性がある、と紹介しました。

しかし「離婚」自体はどのような原因・理由であっても、お互いに合意できれば可能です。

例えば、男性不妊であり、夫は子供を望まない一方、妻はどうしても子供が欲しいなどで意見が分かれ、お互いの希望を叶えるために離婚を選択したとします。その場合、男性不妊が理由であっても離婚できるでしょう。

夫婦で話し合い、お互いに納得したうえで離婚するのであれば、問題ありません。

男性不妊が理由で離婚する場合の慰謝料

男性不妊を理由として妻が離婚を望むとなると、気になるのは「慰謝料」の発生です。男性不妊である自分が悪いのではないか、慰謝料を支払わなければならないのでは?と不安に感じる人もいるでしょう。

しかし実際には、夫から妻に対して慰謝料を支払う必要はなく、慰謝料を請求されることも基本的にはありません。一方で、状況によっては妻に対して慰謝料を請求できるケースがあります。

  • 不妊のみが理由なら慰謝料は請求されない
  • 妻に対して慰謝料を請求できるケースがある

この2つを踏まえて詳しく見ていきましょう。

不妊だけが理由なら妻から慰謝料を請求されることは基本的にない

男性不妊が理由で妻から離婚したいと言われた場合でも、慰謝料を請求されることはないでしょう。不妊は、夫婦どちらかだけに一方的な責任があるわけではありません。

もちろん、不妊とは別に「法定離婚事由」に当てはまる行動である不倫をしていたり不妊をきっかけとするセックスレスに陥っていたりDVやモラハラをしてしまった場合は、慰謝料を請求される可能性もあります。

妻に対して慰謝料を請求できるケースはある

男性不妊だけを原因として妻から慰謝料を請求されることはありませんが、反対に妻に対して慰謝料を請求できるケースはあります。

慰謝料を請求できるケースは、以下の2つのケースです。

妻が不倫をしていた
男性不妊がわかってから妻が性交渉を拒むようになった

妻が不倫をしていた場合

不妊をきっかけとして、妻が不倫をしていたら慰謝料の請求が可能です。

不倫されて離婚に至った場合の慰謝料は、200~300万円が相場です。婚姻期間や不倫期間が長いと、さらに高額になるケース場合もあります。また離婚をしなかった場合でも、慰謝料の請求ができます。その場合、50~100万円が相場です。

不倫による慰謝料は、婚姻関係への影響度合いや婚姻していた期間、不倫していた期間、不倫の悪質性などを考慮して金額が前後します。

相場より高くなるケースは、以下の通りです。

不倫期間・婚姻期間が長い
不倫回数が多い
成人していない子供がいる
不倫相手が結婚していることを知っていた
不倫された配偶者が精神疾患にかかった
不倫に悪質性がある(嘘をついた・反省していないなど)

一方で相場よりも低くなるケースは、以下の通りです。

不倫期間・婚姻期間が短い
子供がいない
不倫を反省している
社会的な制裁を受けている
婚姻関係の破綻や離婚の原因が不倫ではない
求償権の放棄の代わりに慰謝料を半分程度支払うと合意した

実際に慰謝料を請求する場合は、該当するケースを参考に、相場に沿った金額を検討しましょう。

不妊の原因がわかってから妻が性交渉を拒むようになった場合

夫婦のどちらかが、一方的にセックスを拒否してセックスレスに陥った場合、セックスを拒んだ側に慰謝料を請求できます。男性不妊だとわかってから妻が性交渉を拒むようになれば、当然夫から妻に慰謝料請求が可能です。

ほかにも、不倫をしていてセックスレスになったセックスレス以外にもモラハラ・DVなどがある場合は、慰謝料を請求できる可能性があるでしょう。

ただし、病気などが原因でセックスができない場合、またどちらもセックスを望んでいない場合は、慰謝料請求の対象にはなりません。

慰謝料の相場は、数十万円~100万円程度です。

妻が男性不妊をきっかけに離婚を考えるようになる理由

男性不妊に限らず、不妊の問題はどちらに原因がある場合でも、夫婦関係に大きな亀裂を入れてしまう可能性があります。妻がどのような理由で男性不妊をきっかけに離婚を考えるようになるのか、見ていきましょう。

  • 不妊治療に対する温度差がある
  • 経済的な負担が大きい
  • 義理の父・母からのプレッシャー

不妊治療に対して夫婦間の温度差がある

男性不妊であることがわかって不妊治療を始める場合、主に負担を感じるのは「妻側」です。問診・触診・視診などは男性も女性も変わりません。しかし、男性の不妊検査は精液検査・採血・超音波検査などであるのに対し、女性は膣内に器具や薬品を入れて検査しなくてはならないのです。女性は、検査の段階から体に痛みを感じます。

また、男性不妊であることがわかっても、体に新たな命を宿るための仕組みを持つ女性側が、仕事を休んで定期的に病院に通ったり、痛みに耐えて検査を受けたりしなくてはならない頻度が高いでしょう。

さらに、男性の場合は自分が男性不妊であることになかなか納得できない傾向があります。自分が不妊なはずがない、と治療に協力しない男性もいるでしょう。そうなると、子供を授かりたいと強く望む妻と夫は、不妊治療に対する温度差が生まれてしまいます。

夫からの協力が得られないと、妻の愛情が薄れていき、離婚を切り出される可能性があります。

経済的な負担が大きい

不妊治療には、経済的な負担も大きくのしかかります。

2022年4月から、不妊治療は保険適用となって3割負担の支払いのみで治療を受けられるようになりました。そのほか、自治体からの不妊治療の援助もあり経済的な負担は多少和らぎましたが、それでも不妊治療にはお金がかかります。

また不妊治療が保険適用となるのは、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であるという条件や、体外受精や顕微授精の回数にも上限が設けられています。

さらに、病院へ通うためのスケジュール調整が難しかったり、治療によって体調不良になる頻度が多かったりすると、有給休暇を使って休むことになりますが、有給休暇がなくなれば休んだ分は欠勤扱いになり、給与も減額します。それでもなかなか授からないとなると、離職しなくてはならないケースもあるでしょう。不妊治療でお金は必要なのに収入が減り、家計への負担はさらに大きくなります。

経済的な負担が大きいと、心の余裕も失われて夫婦関係に亀裂が入りやすいです。

義父母から責められる

夫の男性不妊が原因であり、夫は不妊治療に協力的な場合でも、義理の父・母が同じ考え方であるとは限りません。男性不妊という言葉を聞くようになったのは、まだ最近のことです。

不妊の原因は女性側にあると考える人がほとんどで、特に父親・母親世代は男性不妊という言葉を知らないケースも多いでしょう。

義父母から子供を授かれないことに対して責められると、妻側も離婚を考えるようになるでしょう。妻としても、早く孫を見せてあげたいと思って頑張っているのに「あなたのせいで子供が生まれない」「孫の顔を早く見せてほしい」などと言われると辛いものです。

特に、男性不妊であることを自分の両親に話さない、義父母の味方をするような態度をとっている夫だと、妻からの信頼も失って離婚を切り出されてしまう可能性があります。

男性不妊のよくある原因

男性不妊の原因には、主に3つの障害があると考えられています。

  • 造精機能障害
  • 性機能障害
  • 精路通路障害

造精機能障害:精子濃度や精子の機能が弱まる

精子を作る機能に障害が発生しており、精子濃度や精子の機能が弱まってしまう障害のことです。精子は、精巣の中で作られ、精巣上体を通り抜ける段階で運動能力を備え、受精を行える精子へと変化します。

精巣で精子がきちんと形成されなかったり、精巣上体で成熟できなかったりすると、精子の数が減少する・精子の動きが悪くなる・奇形率が高くなるなどの影響が出て、受精する力がなくなります。

造精機能障害になると自然妊娠を望むのは難しく人工授精・体外受精・顕微授精などを行わなくてはなりません。

性機能障害:性行為に対する意欲や関心が薄れるなどしてうまくできなくなる

性機能障害には、有効な勃起が起こらずに性行為ができない勃起障害と、勃起は起こるものの射精ができない射精障害があります。

勃起障害の場合、動脈硬化や糖尿病などが原因の神経性や血管性もありますが、実は心因性の勃起障害が多いとされています。心因性の場合は、普段からのストレスなども影響を与えますが、不妊治療としてタイミング指導で性行為を行うことに対してプレッシャーを感じ、うまく勃起しないケースも多いです。

一方で、射精障害は射精ができても精液が膀胱内に逆流する逆行性射精精液が出なくなる無精液症マスターベーションでは射精できるのに性行為中には射精ができない膣内射精障害などが該当します。

特に近年増加しているのが、膣内射精障害です。強いマスターベーションに慣れてしまうことが原因であるといわれることが多いものの、ホルモン異常でも膣内射精障害は発生します。自己診断せず、病院で正しい診断を受けて治療を行うことが大切です。

また、包茎も性機能障害の1つです。日本人男性のおよそ7割が「仮性包茎」であるとされており、特別な治療は必要ありません。ただし勃起する際に痛む、いわゆる「真性包茎」と呼ばれる状態になっている人は、治療を受けましょう。

精路通過障害:精子の通り道に何らかの障害がある

精路通過障害は、精子の通り道となっている精管が詰まることが原因で、精巣で作られている精子が外に出られなくなる障害です。精液検査をした際、射精した精液に精子が少ないと乏精子症、そして精子が全くないと無精子症と診断され、精路通過障害が疑われます。

原因は、生まれつき精管が形成されない「先天性精管欠損症」、そのほかに後天性である「尿道炎」「射精管閉塞症」「前立腺嚢胞」「鼠径ヘルニア」などが考えられるでしょう。また症状も、精子の通り道が狭くなっているだけの場合もあれば、完全にふさがっている「精管閉鎖」と呼ばれる状態まで、さまざまなケースがあります。

自覚症状がなく射精自体は普通に行えるため、精液検査をしないと気づくことができません。

検査を受け、閉塞している場所がわかれば「顕微鏡下精路再建術」と呼ばれる手術で精子が出るようになります。また手術で精巣内でつくられている精子を採取できれば、体外受精で使用できます。

男性不妊を理由に離婚する際の流れ

男性不妊を理由として離婚する際の流れは、以下の手順で行われます。

  • 話し合いでの協議離婚
  • 話し合いでまとまらない場合は調停離婚・裁判離婚

1.話し合いをして協議離婚する

離婚は、原則として夫婦ともに合意したうえで行わなくてはなりません。どちらか一方だけが離婚したいと思っていても、お互いに離婚する意思がなければできないのです。そのため、離婚には話し合いが必要です。

話し合いをして離婚をする「協議離婚」を選択した場合でも、離婚の手続きには想像以上の手間がかかります。離婚後に問題が発生しないように、十分話し合いを行っておきましょう。

財産分与や慰謝料の有無などの離婚条件に関しては、離婚協議書を作成しておくとトラブルが防げます。

2.話し合いでまとまらない時は調停離婚や裁判離婚

話し合いをしてもなかなか結論が出せないお互いの意見が一致しない夫婦関係が悪化していて協議ができないという状態のときは、家庭裁判所で調停を行います。調停では、調停委員が間に入り、お互いの要望を伝えながら合意を目指します。

離婚調停で話し合われる内容は、以下の通りです。

離婚をするかどうか
共有財産をどのように分けるのか
慰謝料の必要性や金額
別居時に発生した婚姻費用の負担について

などです。

調停で合意ができれば、調停で決めたことを記載した調停調書を作成して「調停離婚」が成立します。

調停での話し合いがうまくいかなかった場合は、調停での話し合いに基づいて家庭裁判所が審判を下す「審判離婚」、もしくは裁判で離婚を認めてもらう「裁判離婚」へと移行します。ただし、審判離婚は裁判官が決定した内容を当事者が簡単に覆せることや、対象となる条件が限定的であることからあまり使われることはありません。

協議や調停で話がまとまらなければ裁判へと移行します。裁判を申し立てると、調停では決められなかった内容を踏まえて裁判官が判断を下し、結論を出すことができます。裁判で争う内容は、離婚調停で話し合われる内容と同じです。

離婚裁判は「調停前置主義」を基本としており、離婚調停を行った後しか起こすことができません。ただし、配偶者の所在や生死が不明である配偶者が強度の精神病である調停を行っても合意に至る可能性が極めて低いと考えられるときに限り、調停は省略して裁判からスタートできます。

また、民法で定められている法定離婚事由が存在していることも、離婚裁判を起こす際の条件です。

離婚裁判は、原告が家庭裁判所宛てに訴状を提出し、その後裁判所は第1回口頭弁論の期日を指定して通知します。被告には口頭弁論の期日とともに訴状も送付されるため、被告は訴状の内容を確認したうえで答弁書を提出しなくてはなりません。そして第1回口頭弁論が実施され、その後は月1回のペースで口頭弁論が行われます。

最終的な判断は、口頭弁論が終結してから1か月後を目安に判決が言い渡されて決定します。

夫が妻に自身が不妊だと隠して結婚した事例

実際に、男性不妊をきっかけとして離婚につながった事例もあります。昭和62年5月12日に、京都地方裁判所で下された判決です。

事案の概要
夫は、妻に自分が男性不妊である事実を隠して結婚し、夫の不妊を原因として婚姻生活が破綻・妻が精神的損害を被ったことを理由に慰謝料請求が行われた事例です。
裁判所が下した判断
裁判所は、自身の不利な事情を告知しないことが「不法行為」にはあたらないとしたものの、告知されなかった内容が婚姻の決意を左右する重要な事実であったこと、そしてその事実を告知することで婚姻がなくなる可能性があると予想される場合には、告知しないことが「信義則上違法」とされる、そして不法行為責任があるとみなされる場合がある、と結論を出しました。

婚姻生活には性関係が重要である、そして性交不能という事実は子供をもうけられないという結果に直結することを考慮して、違法であると判断されたのです。

最終判決
上記のような事実認定により、妻から夫に対しての慰謝料請求が200万円を限度として認められています。

離婚をしたくない場合は「離婚届の不受理申出書」を提出する

妻が離婚を望んでいても、離婚に合意したくないしっかりと納得できる話し合いをしてから離婚をしたいというときは、まず「離婚届の不受理申出書」を提出しましょう。

不受理申出書とは、夫婦のどちらか一方が勝手に離婚届を提出したとしても、役所が受理しないようにするための書類です。離婚届が提出された役所では、書面の不備がないかどうかは確認しますが、夫婦が共に離婚に同意しているかどうかまでは確認しません。そのため、書類に不備がなければ離婚届は受理されて離婚が成立してしまいます。

不受理申出書を提出しておけば、役所は離婚届を受理できず、離婚は成立しません。知らない間に離婚されていた、という不測の事態を防げるでしょう。

不受理申出は、住まいの市区町村の役所で行えます。

まとめ

男性不妊を理由にして妻から離婚したいと言われると、自分が不妊の原因だったことへのショックとともに、離婚まで切り出されてさらなるショックに襲われるものです。断固として離婚を受け入れないという選択肢もありますが、夫婦関係が破綻してしまえば婚姻生活を継続するのは難しいでしょう。離婚の道を選ぶしかなくなる可能性も高いです。

しかし、男性不妊は離婚の要因として認められていません。妻からの離婚の申し出をすぐに受け入れる必要はないため、しっかりと夫婦で話し合ってから解決の道を探ればよいでしょう。

ただし、男性不妊が原因となって「法定離婚事由」に該当する問題が発生していれば、離婚が認められる可能性が高いです。特に、DVやモラハラ・不貞行為などがあった場合は、慰謝料を請求される可能性もあります。

離婚を切り出されたら、男性不妊をきっかけとして妻に嫌な思いをさせていないかきちんと妻の気持ちを考えて行動できているかを今一度見直してみましょう。そして、話し合いを経て、夫婦関係をもう一度良い方向に進めるために努力するのか、それとも離婚をして夫婦関係をリセットするべきかを考えてみてください。

離婚の際は協議離婚で進められれば良いですが、もしも合意できない場合は調停離婚・裁判離婚へと手続きが進んでいきます。

離婚の手続きや慰謝料の請求、財産分与などでわからないことや不安なことがあれば、弁護士に相談しましょう。プロの視点から法的な面のアドバイスが受けられ、もしもの場合は代理人として離婚手続きを進めてくれます。