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離婚届不受理申出とは?活用シーンや必要なもの、提出方法を解説

離婚届不受理申出とは?活用シーンや必要なもの、提出方法を解説

離婚届不受理申出とは、夫婦の一方が配偶者の合意がないまま離婚届を提出し、離婚が成立してしまうのを防ぐための制度です。役所は離婚届を提出された際、書面上の不備をチェックするだけで、夫婦双方が離婚に同意しているかの確認は行いません。離婚や離婚条件についての話し合いを十分に行いたいときや、相手に親権を取られたくないときなどに活用されます。費用は一切かからず、簡易的な手続きで申出ができます。

離婚届不受理申出をするには、必要事項を記載した申出書と本人確認書類を用意しましょう。郵送による申出は原則として不可で、申請人の本籍地か住所地、所在地の市区町村役場に提出する必要があります。

本記事では、離婚届不受理申出の提出方法や活用シーン、必要なものなどについて詳しく解説します。

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離婚届不受理申出とは勝手に離婚を成立させないための制度

離婚届不受理申出とは、配偶者が勝手に離婚届を提出し、戸籍上は離婚したことになってしまうことを防ぐための制度です。市区町村役場に離婚届不受理申出を提出しておけば、自分の知らない間に離婚届を提出されてしまっても不受理となり、離婚が成立することはありません。

夫婦間の話し合いにより離婚に至るケース(協議離婚)では、基本的に夫婦双方に離婚の意思があることが前提となります。しかし、離婚届を提出する際には夫婦双方が出向く必要はなく、夫婦のどちらかまたは代理人でも提出が可能です。

加えて、市区町村役場側は離婚届の記載内容に不備がないかを確認するだけなので、一方に離婚の意思がなかったとしても、提出された離婚届が完成していれば離婚が成立してしまう可能性があります。

また、離婚時には財産分与や慰謝料、子どもがいれば親権者や養育費を決める必要があります。これらを決めないまま離婚届が受理されてしまうと、あとから請求しても支払いを拒まれたり、不利な条件になったりすることもあるでしょう。

ただ、離婚に同意していないにもかかわらず離婚届が受理されてしまった場合、勝手に離婚届を提出した配偶者は罪に問われることになります。(「離婚届を勝手に提出すると罪に問われる」の項で解説)しかしどんな形であれ離婚が一度成立してしまうと、無効にするには家庭裁判所で調停や訴訟の手続きを行わなければなりません。

こうした事態を未然に防ぐには、離婚届不受理申出をしておくのが効果的です。離婚届不受理申出の有効期限は、申出をした側が取下げない限り無期限なので、一度手続きをしてしまえば以降は勝手に離婚が成立するのを避けられます。

離婚届不受理申出制度の効果的な活用シーン

離婚届不受理申出の活用シーンは、主に以下の通りです。

  • 離婚についての話し合いを解決するため
  • 勝手に親権を取られないようにするため

以下で詳しく解説していきます。

離婚についての話し合いを解決するため

離婚届不受理申出をしておけば、夫婦で離婚や離婚条件についてしっかり話し合い、お互いの合意に至ったタイミングで離婚することができます。

すでに離婚届に必要事項を記入済みだったとしても、離婚の意思が固まっていない段階で勝手に離婚届を提出されてしまうと、心の準備が追い付きません。離婚条件の話し合いを行っていなければ、のちのち金銭面や親権での揉めごとに繋がる可能性もあります。

また離婚届を記入した当時は離婚の意思があったものの、気が変わって「離婚したくない」「もっと条件などを十分に話し合ってから離婚を決めたい」となることもあるでしょう。夫婦で話し合いお互いの合意のうえで離婚を決断したいなら、離婚届不受理申出をしておくことは安心材料になると考えられます。

勝手に親権を取られないようにするため

離婚する際、子どもがいれば親権をどちらが持つか決める必要があり、離婚届にも離婚後の親権者を記載する項目があります。離婚をすること自体には同意していても、配偶者が自身を親権者に指定して勝手に離婚届を提出する可能性があり、そうなると離婚が成立し親権も失ってしまう恐れがあります。

先にも述べたとおり、記載項目に不備さえなければ離婚届は受理される可能性が高く、一度決まった親権者を変更するには、家庭裁判所に親権者変更調停の申立てを行わなければなりません。調停が不成立になった場合は、審判へ移行して裁判官が親権者を決定します。

親権者変更には費用も手間もかかることから、親権を取りたいと考えているなら、あらかじめ離婚届不受理申出をしておくのが賢明です。

離婚届不受理申出の手続き方法

離婚届不受理申出を行うには、離婚届不受理申出書と写真付きの本人確認書類が必要です。

申請人の本籍地か住所地、もしくは所在地の市区町村役場内にある、離婚届不受理申出を受け付けている課で申出をしましょう。申出ができるのは原則として夫婦のみで、郵送や代理人による提出は認められていません。

以下で詳しく解説していきます。

申出する際に必要なもの

離婚届不受理申出を行う際は、以下の書類を用意する必要があります。

  • 離婚届不受理申出書 1通
  • 写真付き本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)

離婚届不受理申出書には、氏名や生年月日、住所や申出日などの必要事項を記入します。

なお離婚届不受理申出書の書式は、地域や役場によって違いはなく全国共通です。直接市町村役場に行って入手できますが、市区町村役場によってはホームページからダウンロードできるところもあります。

役場に行く時間がなかなか取れない方や遠い方は、住んでいる地域の市区町村役場のホームページをチェックしてみてください。なかには記入例が掲載されているケースもあるので、記入例を見て必要項目をすべて記入してから窓口に提出すれば、手続きの時間短縮にもなります。

申出する場所

離婚届不受理申出は、申請人の本籍地か住所地、もしくは所在地の市区町村役場内にある、離婚届不受理申出を受け付けている課で手続きをします。電話や郵送による申出は原則として不可で、窓口に直接出向く必要があります。

とは言え、役場は基本的に8時半頃から17時頃までしか開いていないため、仕事をしている場合などは日中に足を運ぶのは難しいケースもあるでしょう。その場合は、夜間窓口や休日窓口の利用も検討してみてください。

申出ができるのは本人のみ

離婚届不受理申出ができるのは、当事者である夫婦だけです。窓口での本人確認が必要なため、夫婦の代わりに親などの代理人が提出したり、郵送により申出をしたりすることは原則として認められていません。

ただし例外として、公証人による認証がある場合や、公正証書で申出の意思を確認できる場合などは、代理人や郵送による申出が可能なケースもあります。役場に足を運ぶのが難しい場合は、申出をする役場に事前に対応策を確認しておきましょう。

離婚届を勝手に提出すると罪に問われる

離婚届を配偶者の同意なく勝手に提出した場合、以下のような罪に問われる可能性があります。

  • 有印私文書偽造罪
  • 偽造私文書行使罪
  • 公正証書原本不実記載罪
  • 電磁的公正証書原本不実記録罪

これらの犯罪行為を行ったことが警察に発覚すれば逮捕されたり、場合によっては起訴され刑事罰を受けたりすることがあります。

それぞれの犯罪の内容や刑事罰について、以下で解説していきます。

有印私文書偽造罪:離婚届の署名や押印を勝手に行った場合

離婚届の署名や押印を勝手に行う行為は、刑法第159条1項で定められている「有印私文書偽造罪」に該当します。

有印私文書偽造罪が成立した場合、3ヶ月以上5年以下の懲役に罰せられる可能性があります。

偽造私文書行使罪:偽造した離婚届を提出した場合

偽造した離婚届を市町村役場の窓口に提出した場合、刑法第161条1項で定められている「偽造私文書行使罪」に該当します。

偽造私文書行使罪が成立した場合は、有印私文書偽造罪と同様に3ヶ月以上5年以下の懲役に罰せられる可能性があります。

公正証書原本不実記載罪:虚偽の離婚届を提出して、戸籍にウソの内容を記載させた場合

虚偽の内容を記入した離婚届を提出し、戸籍にウソの内容を記載させた場合は、刑法第157条で定められている「公正証書原本不実記載罪」に該当します。

公正証書原本不実記載罪が成立した場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に罰せられる可能性があります。

電磁的公正証書原本不実記録罪:虚偽の離婚届を提出して、戸籍にウソの内容を記載させた場合

刑法第157条で定められている電磁的公正証書原本不実記録罪は、公正証書原本不実記載罪とよく似ていますが、こちらは「電磁的記録」にウソの内容を記載させた場合に該当します。原本がコンピューターで処理される場合に適用されるのが特徴です。

電磁的公正証書原本不実記録罪が成立した場合は、公正証書原本不実記載罪と同様に5年以下の懲役または50万円以下の罰金に罰せられる可能性があります。

離婚届不受理申出のメリット

離婚届不受理申出をすることには、以下のようなメリットがあります。

  • 勝手に離婚届を提出されずに済む
  • 離婚の話し合いをしっかりできる
  • 簡易的な手続きだけで届出ができる

以下で詳しく解説していきます。

勝手に離婚届を提出されずに済む

離婚届不受理申出をすれば、配偶者に勝手に離婚届を提出される心配が不要になります。

離婚に向けての話し合いをしている中で、お互いに意見を譲れず言い争いになってしまうことも考えられるでしょう。険悪な状況になると、一刻も早く離婚したい側がしびれを切らし、勝手に離婚届を提出するという暴挙に出る可能性もあります。

もし必要事項をすべて記入してしまっていた場合は、提出されれば離婚の成立は免れません。一度成立してしまえば撤回するにはコストや時間がかかるため、諦めてしまうことにもなりかねないでしょう。

このような事態を回避するためには、離婚届不受理申出は有効な手段であると言えます。

離婚の話し合いをしっかりできる

離婚届不受理の申出をすることにより、離婚の話し合いがしっかりできるのもメリットです。協議離婚の場合、配偶者が納得できる条件を提示するためには時間がかかってしまうケースもあります。

離婚条件も何も取り決めていない状態で離婚届を提出されてしまうと、子どもやお金のことでのちにトラブルになる可能性もあるでしょう。時間をかけて夫婦双方が納得できる結果に近づけるためには、十分な話し合いの時間を設けることが重要であり、そのためには離婚届不受理申出を検討するのもひとつの手段です。

簡易的な手続きだけで届出ができる

離婚届不受理申出の手続きはきわめて簡単です。名前や生年月日、住所などの必要事項を記載した申出書と本人確認書類を提出するだけで申出ができます。

窓口での待ち時間を除けばほんの数分で終わる手続きで、費用も一切かからないため、負担はほぼないと言えるでしょう。

離婚届不受理申出のデメリット

申請人にメリットが大きい離婚届不受理申出ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 市区町村役場に出向かなければいけない
  • 配偶者にバレるとトラブルになる可能性がある

それぞれ詳しく解説していきます。

市区町村役場に出向かなければいけない

離婚届不受理申出書は、原則として郵送や代理人による提出は不可であり、手続きをするには市区町村役場に直接出向かなければなりません。

本籍地以外の市区町村役場でも提出は可能ですが、本籍地の市区町村役場へ送付されるまで時間がかかる場合があります。そのため、差し迫った状況の場合はできる限り早急に、本籍地の市区町村役場に提出するのがおすすめです。

配偶者にバレるとトラブルになる可能性がある

離婚届不受理申出をしたことが配偶者にバレてしまった場合、逆上されてトラブルになる可能性もないとは言い切れません。

ただ、離婚届不受理申出の手続きをしたことは、相手が離婚届を提出して受理されなかった場合にはじめて明らかになるものです。離婚届不受理申出をした段階で配偶者に通知が行くことはないため、離婚届を提出しなければバレることは基本的にはありません。

まとめ

離婚届不受理申出とは、夫婦の一方が配偶者の合意がないまま離婚届を提出し、離婚が成立するのを防ぐための制度です。離婚や離婚条件についての話し合いを十分に行いたいときや、相手に親権を取られたくないときなどに活用されます。

費用は一切かからず、簡易的な手続きで申出ができるのがメリットです。一方で、市区町村役場に直接出向く必要があることや、相手にバレるとトラブルになる可能性があることはデメリットと言えます。

離婚届不受理申出をするには、必要事項を記載した申出書と本人確認書類を用意しましょう。郵送による申出は原則として不可で、申請人の本籍地か住所地、所在地の市区町村役場に提出する必要があります。

配偶者から離婚届を勝手に提出される可能性がある場合は、離婚届不受理申出を行うことを検討してみてください。

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更新日 : 2024年11月18日
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