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2024年10月現在

別れたくないのに夫から離婚を切り出された!対処法や注意点を解説

夫から離婚を切り出された
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

夫から離婚を切り出されると、突然のことで動揺してしまい、感情的になってしまう人も多いでしょう。夫と離婚したくないのであれば、夫から離婚を切り出された際の対応が重要なポイントになります。

特に、夫に対して冷たい態度をとっていたり仕事や家事育児をすべて夫に丸投げしていたりなど、妻側に原因がある場合は夫の気持ちを理解してきちんと反省し、態度を改める姿勢を見せるのが重要です。

離婚を切り出されて夫を責めたりすぐに離婚を承諾したりすると、夫の気持ちはさらに離れて修復不可能な関係になる恐れがあります。冷静に対処すれば夫も離婚を考え直してくれる可能性もあるため、一人で悩まずに弁護士などの第三者に相談してみるのもおすすめです。

本記事では、別れたくないのに夫から離婚を切り出された場合の対処法や注意点について解説していきます。夫から離婚を切り出されて困っている方はぜひ参考にされてください。

夫から離婚を切り出された際にしてはいけないこと

夫から突然離婚を切り出されると、慌てて頭の中が混乱してしまうかもしれません。しかし、夫と離婚したくないのであれば、少なくとも下記の行動をとるのは絶対にやめましょう。

  • すぐに答えを出してしまう
  • 相手に感情をぶつけて責める
  • 別居をして夫と距離を取ろうとする
  • 一人で悩み解決しようとする
  • 書面にサインをしたり、言質を取られる発言をしたりする

ここからは、上記のやってはいけないことについてそれぞれ詳しく解説していきます。

すぐに答えを出してしまう

ほとんどの人は夫から突然離婚を切り出されたらパニック状態になり、冷静に物事を判断することが難しくなります。そのような状態で無理に答えを出そうとすると、感情的に相手を責めてしまい夫婦仲が修復不可能になるまで悪化したり、相手のペースに飲まれて離婚を決断してしまったりする可能性が高いです。

そのため夫から離婚を切り出されたら、まずは「少し考えさせてほしい」「今すぐ決められない」とはっきりと伝え、すぐに答えは出さずに冷静さを取り戻すまでしばらく時間を置きましょう。そして、夫婦関係を修復できる方法はないのか、それとも離婚に応じるべきなのか自分の気持ちに素直に向き合ってみてください。話し合いによる離婚は夫婦双方の合意がなければ成立しないため、焦って答えを出す必要はありません。

書面にサインをする

夫から離婚を切り出された際、感情的になって離婚届などの書面にサインするのは控えましょう。協議離婚では夫婦双方が合意したうえで離婚届を提出する必要がありますが、役所では夫婦双方に離婚の意思があるかどうかまでは確認しません。離婚届にサインしてしまうと、夫に離婚届を提出されてしまい、離婚が成立してしまう事態が起こり得ます。

離婚の意思がなければ調停や裁判で離婚の無効を主張できますが、手続きが非常に面倒ですし、必ず離婚が無効になるとは限りません。不用意な行動によって後々不利な状況に陥ってしまう恐れがあるため、夫と離婚したくないのであればすぐに離婚届などの書面にサインするのは控えましょう。

相手に感情をぶつけて責める

夫から離婚を切り出された際、感情をぶつけて相手を責めるようなことは絶対にやめましょう。相手を否定するような言動をとってしまうと、夫も感情的になって離婚の意思が固くなってしまい、円満な夫婦関係の修復が絶望的になってしまいます。

夫が離婚を切り出したのは何らかの理由があるはずで、これまでの夫に対する自分自身の言動が原因となっている可能性もあります。夫と離婚せずに結婚生活を続けたいのであれば、まずは冷静になって夫の意見を受け入れましょう。そのうえで、夫が妻に対して不満を抱いているのであれば、その不満を解消するために自分自身が努力していく必要があります。

別居をして夫と距離を取ろうとする

離婚を切り出された後に別居して夫と距離を取ろうとすると、お互いに話し合う機会がないまま別居が長期化してしまう恐れがあります。別居期間が長期にわたると法定離婚事由になる可能性があるため注意が必要です。

法定離婚事由とは、法律で認められている離婚原因のことです。以下の5つのうちどれかに該当すれば裁判所で離婚が認められるため、どちらかが離婚を拒否しても強制的に離婚することになります。

  • 不貞行為
  • 3年以上行方不明
  • 回復の見込みが低い精神病
  • 悪意の遺棄
  • 結婚生活を継続するのが難しい重大な事由

悪意の遺棄とは、特別な原因もなく夫婦間で関わり合ったり協力して生活したりするのを拒否することです。具体的には以下のケースが当てはまります。

  • 理由もなく同居を拒む
  • 生活費を渡さない
  • 義家族と折り合いが悪い
  • 家出を繰り返す
  • DVやモラハラ

一般的に、夫婦での共同生活を放棄された場合に認められます。ただし、一度夫婦関係を見つめ直すために距離を取る目的で行った別居は悪意の遺棄には該当しません。一方で、結婚生活を継続するのが難しい重大な事由には以下のケースが当てはまります。

  • 性格の不一致
  • 家事や育児に非協力的である
  • DVやモラハラ
  • 義家族との不仲
  • 性的な不満や異常がある
  • 浪費癖がある
  • 犯罪により服役中である

別居の原因が上記に当てはまっており、離婚裁判で結婚生活を続けるのが難しいと判断された場合は離婚が認められます。また、別居が2年半程度続いていると、夫婦関係が破綻していると見なされて離婚が成立しやすくなります。

一度別居をすると2年半以内に同居状態に戻れる保証はないため、夫と離婚したくない場合に別居すると不利になる可能性が高いです。そのため、夫から離婚を切り出されてもできる限り別居はせず、夫婦関係の改善に向けて話し合いを進めるようにして下さい。どうしても別居しなければならない場合は、2年までなど期限を決めて行いましょう。

一人で悩み解決しようとする

離婚の問題を一人で抱えて解決しようとすると、精神的に大きな負担になりますし、適切な判断ができず状況をより悪化させてしまう恐れもあります。そのため、夫から離婚を切り出された場合は一人で悩みを抱え込まず、弁護士や心理カウンセラー、家族、信頼できる友人などの第三者に相談するのがおすすめです。誰かに悩みを吐き出すだけでも精神的な負担や不安が軽減されますし、自分では思いつかなかった改善点や解決策も発見できるかもしれません。

夫から離婚を切り出された場合の対処法

夫と別れたくないのであれば、夫から離婚を切り出された後の対応が重要なポイントです。正しく対処することで、夫が離婚を考え直してくれる可能性があります。実際に夫から離婚を切り出された場合は、下記の対処法を試してみてください。

  • 夫の気持ちを理解する努力をする
  • 自分の気持ちを整理して冷静に伝える
  • 円満調停を利用する
  • 離婚届不受理申出書を届出する
  • 弁護士からアドバイスをもらう

ここからは、上記の対処法についてそれぞれ詳しく解説していきます。

夫の気持ちを理解する努力をする

夫から離婚を切り出されたら、まずは冷静になって夫の気持ちを理解する努力をしてください。夫が離婚を切り出してきたということは、そう思うに至った何かしらの理由があるはずです。これまでの夫に対する妻の言動が原因で、夫が離婚を決意した可能性もあります。

もし、妻の言動が原因で離婚を決意したのであれば、これまでの言動を反省し、これから自分を変えていくという姿勢を見せれば、夫も離婚を考え直してくれる可能性があります。離婚したい理由や不満点が分からなければ、どのように改善すればいいのか分からないので、まずは冷静に夫の言い分をしっかりと受け止めましょう。

自分の気持ちを整理して冷静に伝える

離婚を切り出されるとパニックになって冷静な判断ができなくなるため、相手にはいったん回答を待ってもらいましょう。そのうえで自分の気持ちを整理して離婚すべきかどうか、離婚したくないのであれば今後自分はどう変わるべきなのかじっくりと考えてください。どうしても夫と別れたくない場合は、相手の感情に飲み込まれないように「離婚したくない」と冷静に伝え、夫婦関係を改善するための具体的な方法を提案してみましょう。

円満調停を利用する

夫と話し合いをしてもまとまらない場合は、家庭裁判所の「円満調停(夫婦関係調整調停)」を利用して夫との関係修復を図りましょう。円満調停では、家庭裁判所で調停委員が夫婦双方から話を聴きとり、調停委員から夫婦関係を修復するための解決策の提示やアドバイスを受けながら、話し合いによる合意を目指します。

2020年の司法統計によると、円満調停を利用した夫婦の約20%が、離婚せず婚姻を継続する方向で合意に至っています。円満調停を利用する場合は、夫の住所地または夫婦双方の合意によって決めた家庭裁判所に申立てを行いましょう。申立ての際は、下記の書類や費用が必要になります。

  • 夫婦関係調整調停申立書
  • 夫婦の戸籍謄本(申立てから3ヶ月以内に発行されたもの)
  • 収入印紙1,200円分
  • 郵送用の郵便切手(切手代は家庭裁判所によって異なる)

第三者として調停委員を介して話し合った方が、当事者同士で話し合うよりも上手くいくケースが多いです。そのため、必要に応じて利用するか検討するのをおすすめします。とくに、自身のDVやモラハラ、不貞行為が原因で離婚を切り出された場合は裁判に持ち込まれると不利になるため、円満調停の段階で夫婦関係を修復させるのがベターです。自分の意見を通すだけでなく、ある程度は相手の要望を受け入れながら円満調停に臨みましょう。

離婚届不受理申出書を届出する

離婚を切り出してきた夫に離婚届を勝手に提出される心配がある場合は、あらかじめ「離婚届不受理申出書」を役所に提出しておきましょう。離婚届不受理申請とは、夫婦の一方が勝手に離婚届を作成・提出し、協議離婚が成立してしまうのを防ぐ申請です。

協議離婚を成立させるには、夫婦双方に離婚の意思や離婚届の提出意思があることを確認したうえで、役所に離婚届を提出する必要があります。しかし、離婚届を提出する際に夫婦双方に離婚の意思があるかどうかの確認は行われないため、夫に離婚届を勝手に提出されてしまうと、離婚に同意していないにもかかわらず形式上では協議離婚が成立してしまいます。提出に同行しなかった配偶者には、役所より通知が来るため提出されたことに気が付かない可能性は低いです。しかし、すでに受理されてしまっているため通知が来てからでは基本的に取り消しはできません。

一方的に離婚届を提出するのは違法であるため、離婚が成立したとしても調停や裁判で離婚の取り消しを主張できます。しかし、調停や裁判に移行すると大変な労力とお金がかかるため、このような事態を未然に防ぐ方法として、離婚届不受理申出の制度が設けられています。

離婚届不受理申出書を提出しておけば、その後に夫が離婚届を一方的に提出したとしても、役所では受理されないので離婚は成立しません。離婚届不受理申出は、申出をした本人が役所で「不受理申出取下書」を提出するまで有効なので、離婚届を勝手に提出されるという不安を取り除いたうえで冷静に話し合いが行えます。

提出する際は、以下の書類を準備したうえで居住地や本籍地の役所に申請します。

  • 不受理申請書
  • 印鑑(シャチハタ以外)
  • 身分証明書

提出自体は居住地の役所からでもできますが、最終的に原本が本籍地の役場に送付されないと手続きが完了しないため、本籍地でない役場に提出すると受理されるまでに時間がかかってしまいます。

その間に妻に離婚届を提出されると受理されてしまうため、なるべく早く手続きを済ませるためにも本籍地の役所に提出するのがおすすめです。

弁護士からアドバイスをもらう

離婚したくないのに夫から一方的に離婚を切り出された場合は、法律のプロである弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談すれば、離婚せずに済む可能性があるか、夫婦関係を修復する方法があるのか適切なアドバイスが受けられます。

当事者同士での解決が難しければ、弁護士に依頼することで夫との交渉や調停・裁判に移行した場合の代理人も任せられます。ただし、弁護士によって得意分野や取り扱っている案件はそれぞれ異なります。離婚分野の経験が乏しい弁護士に依頼すると、適切なアドバイスや希望通りの結果が得られない可能性が高いです。そのため、離婚問題についてのアドバイスを受けたい場合は、夫婦や離婚の問題に精通している弁護士に相談しましょう。

夫が離婚を切り出す決意をする主な理由

夫が離婚を切り出す決意をする主な理由としては、下記の6つがあります。

  • 他に好きな人ができた
  • 性格や価値観が合わない
  • 妻から言われる文句が限界に達した
  • 帰宅しても気が休まらない
  • 妻が家にいても何もしない
  • 妻から愛情を感じない

ここからは、上記の理由についてそれぞれ詳しく解説していきます。

他に好きな人ができた

他に好きな人ができたことを理由に、妻との離婚を決意したという男性は少なくありません。結婚してから妻一筋という男性も珍しくありませんが、妻以外の他の女性に目移りしてしまう男性も多くいます。

特に「夫婦間でのコミュニケーションが減少して妻に対する愛情が無くなった」「妻に対して不満がある」という男性は他の女性に目移りしやすく、不倫にも走りやすいです。妻と一緒にいるよりも不倫相手と一緒いる方が心地良く、一緒に暮らしたいと思うようになれば、妻との離婚も本気で考えるようになります。

ただし、単に好きな人ができただけなのかすでに肉体関係をもっているのかによって状況は全く異なります。好きな人ができただけであれば、実際はほかに理由がある可能性があるためきちんと確認するのがおすすめです。

一方で、肉体関係がある場合は不貞行為にあたるため、夫と不倫相手に対して慰謝料を請求できます。慰謝料を請求する場合は、2人でラブホテルに入る写真や肉体関係があったことがわかるSNSのやり取りなどの証拠が必要です。しかし、自分で証拠を集めるのは精神的にも体力的にも負担がかかります。また、不倫相手の素性を特定する必要もあるため、不貞行為が許せない場合は探偵や弁護士に依頼しましょう。

性格や価値観が合わない

男性が妻との離婚を決意した理由として最も多く挙げているのが、妻との性格や価値観の不一致です。2022年の司法統計によると、「妻と性格が合わない」という理由で離婚を申し立てた夫の割合は全体の60%以上を占めています。元々夫婦はそれぞれ違う環境で育ってきた他人同士なので、多少なりとも性格や価値観に違いがあるのは当たり前のことです。

妻に愛情があれば性格や価値観の違いをポジティブに捉えたり、許せたりできますが、愛情が薄れていくと妻に対して不満を感じやすくなります。その不満の積み重ねによって夫婦のコミュニケーションも少なくなり、家庭内の険悪な雰囲気に耐えられなくなれば、妻との離婚を決意するきっかけになります。

妻から言われる文句が限界に達した

「収入が低い」「趣味を否定される」など、いろいろと文句を言われれば誰だって嫌な気持ちになりますし、プライドも傷つきます。家族のために仕事を頑張ってお金を稼いでいるのに妻に褒めてもらえず、文句ばかり言われては夫が妻に対して不満を抱くのは当然のことでしょう。その不満が長年の結婚生活の中で徐々に蓄積され、精神的に限界を迎えたときが離婚を考える引き金になります。

帰宅しても気が休まらない

妻がいつも不機嫌で険悪なムードが漂っていたり、細かいことでイチイチ小言を言われたりすると、夫は家に帰っても気が休まりません。仕事で疲れている男性は居心地が良く、安らぎを感じる家庭を求めています。家庭内でも自分の居場所がなければ、次第に家に帰りたくなくなりますし、「離婚して一人になった方が良いかも」と妻との離婚を考えるようになります。

妻が家にいても何もしない

結婚生活は、夫婦がお互いに相手を支え合って築き上げていくものです。妻が働ける状態であるにもかかわらず、仕事も家事も何もしない状態だと、毎日仕事を頑張っている夫からしてみれば「自分だけ大変な思いをしている」「妻は楽ばかりしてズルい」と不公平に感じてしまいます。また、毎日ダラダラして過ごしているような妻に対しては愛情や尊敬の念も抱けません。何もしない妻を養うくらいなら、離婚して独身生活を送った方がマシだと思うのは当然のことでしょう。

妻から愛情を感じない

妻からの愛情を感じず、次第に妻への愛情も薄れていってしまったことで離婚を決意する男性もいます。「性交渉を求めても妻が応じてくれない」「妻に話しかけても冷たい態度をとられる」などの理由をきっかけに、男性は妻からの愛情を感じないと思うようになります。そうなると、自分の居場所はここにはない、妻から必要とされていないと強く感じるようになり、離婚も考えるようになります。

裁判で夫との離婚が認められてしまう具体的なケース

離婚協議や離婚調停で離婚を成立させるためには、夫婦双方の合意が必要になります。夫と別れたくない場合、それに応じなければ離婚は成立しません。しかし、夫がどうしても離婚したいと考えているのであれば、調停後に離婚裁判を起こしてくる可能性もあります。

離婚裁判に発展した場合、妻側に法定離婚事由があると裁判所に認められてしまうと、夫と別れたくなくても強制的に離婚が成立してしまいます。離婚裁判で夫との離婚が認められてしまう具体的なケースとして下記の6つをご紹介します。

  • 妻が不貞行為をした
  • 妻が家出など悪意の遺棄を繰り返した
  • 妻が3年以上の生死不明になっている
  • 妻が強度の精神病にかかっている
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある

ここからは、上記のケースについてそれぞれ詳しく解説していきます。

妻が不貞行為をした

妻が夫以外の人と不倫していた場合は、法定離婚事由の「配偶者に不貞な行為があったとき」にあたるとして離婚が認められる可能性があります。ただし、裁判で離婚が認められるのは、妻が不倫相手と肉体関係を持っていることが証明された場合のみです。民法における不貞行為というのは、「配偶者以外の人と自由な意思に基づいて肉体関係を結ぶこと」を指します。

不倫相手と2人きりで食事をしたり、日帰り旅行を楽しんだりなど肉体関係を伴わない不倫であれば不貞行為に該当しません。また、不倫相手と肉体関係を持っていたとしても、離婚が認められるには夫側がその事実を証明できる証拠(不倫相手と2人でラブホテルに出入りする写真・動画など)を提出する必要があります。

一方で、夫が不倫をしており不倫相手と再婚するために妻との離婚裁判を起こした場合、夫が不倫していた証拠を掴めば夫の意思による離婚は認められません。そのため、ほかに好きな人ができた等の理由で離婚を切り出された場合は夫が不倫していないか調査し、証拠を集めるのがおすすめです。

妻が家出など悪意の遺棄を繰り返した

正当な理由がなく家出を繰り返す行為は、民法で定められている夫婦の同居義務に違反する行為です。同居義務違反は、法定離婚事由の「配偶者に悪意で遺棄されたとき」に該当する可能性があるため、夫から離婚裁判を起こされた場合は離婚が認められる場合があります。ただし、「夫からの暴力やモラハラに耐え切れずに家出をした」など、正当な理由があって家出をした場合は同居義務違反に該当しません。

妻が3年以上の生死不明になっている

妻が3年以上の生死不明になっている状態とは、最後に連絡や消息があってから3年以上行方がわかっていない状態のことです。離婚裁判で法定離婚事由として認められるには、妻の生死が不明であることがわかる以下のような証拠を提出する必要があります。

  • 警察への捜索願
  • 失踪前から動いていないことが分かる住民票
  • 配偶者の両親や親族、同僚などからの陳述書
  • 失踪前から携帯電話の契約内容が変更されていないことが分かる書類

あくまでも3年以上の生死が不明である場合にのみ法定離婚事由として認められます。そのため、生きていることは分かっているが連絡が取れていない場合や居場所が分からない場合は3年以上生死不明であるとは見なされません。

ただし、生きていることがわかっても正当な理由もなく失踪を続けている場合、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。悪意の遺棄も法定離婚事由であるため、裁判で認められれば離婚が成立してしまいます。

夫に離婚を切り出され、追い詰められて失踪すると離婚裁判で不利になり、気づいたときには離婚が成立してしまうケースもあるので、感情に任せて失踪するなどの行動は控えましょう。

妻が強度の精神病にかかっている

妻が強度の精神病にかかっており、長期間治療を続けても回復の見込みがないと判断された場合は法定離婚事由に該当するため、夫からの離婚請求が認められる可能性があります。

  • 強度の精神病:法律上の夫婦の義務(協力義務・扶助義務など)が果たせないほど重症化している精神病のこと
  • 回復の見込みがない:長期間治療を続けても一向に症状が良くならない不治の病であること

ただ、回復の見込みがない強度な精神病を理由に離婚が認められるケースは非常に少ないです。法定離婚事由に該当するからといって安易に離婚を認めてしまうと、強度の精神病にかかっている妻は夫からの経済的支援が受けられなくなり、生活が困窮してしまう恐れがあるからです。

そのため、強度な精神病を理由とした離婚請求では、症状の程度だけでなく、精神病にかかった妻が離婚後も問題なく生活していける環境があるかどうかも重視されます。

その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある

上記の理由以外に、婚姻関係を継続するのが難しい重大な事由が認められた場合、裁判離婚が成立します。重大な事由にはさまざまなケースがあります。ここでは具体的な例をご紹介します。

  • 妻が怠惰で真面目に働かない
  • 夫からの性交渉を長期的に拒否している
  • 妻からDVやモラハラを受けた

それぞれの重大な事由について詳しく見ていきましょう

妻が怠惰で真面目に働かない

法律上、夫婦にはお互いに相手を経済的に養わなければならないという扶助義務が課されています。妻に特別な事情がないのに仕事をせず、家事や育児もしない場合は扶助義務違反にあたります。

扶助義務違反は、法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があるため、離婚裁判に発展した場合は夫からの離婚請求が認められる可能性が高いです。ただし、病気やケガ、親の介護など正当な理由があって仕事や家事、育児ができない場合は扶助義務違反にならないため、離婚理由として認められません。

夫からの性交渉を長期的に拒否している

夫からの性交渉を長期的に拒否している場合も、法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるとして離婚が認められる可能性があります。

ただし、セックスレスを理由に離婚が認められるのは、正当な理由なく長期にわたって性交渉を拒否し、それが原因で夫婦関係が破綻した場合に限られます。病気やケガなど正当な理由があって性交渉に応じられなかった場合や、性交渉を拒否していても夫婦関係が円満な場合は離婚理由として認められません。

妻からDVやモラハラを受けた

妻からのDVやモラハラは、法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。DVとは配偶者などの親密な関係にある人物からの身体的・精神的暴力のことで、モラハラは下記のような言動で相手を精神的に追い詰めることをいいます。

  • 相手の容姿や学歴、趣味などをバカにする
  • 正当な理由なく無視し続ける
  • 過度に束縛する
  • 細かいミスに対して執拗に責め続ける
  • 生活費を渡さない

妻から夫に対し、長期間にわたって身体的な暴力や上記のような精神的虐待が続いた場合は、DV・モラハラにあたるとして離婚が認められる可能性があります。ただし、一時的な夫婦喧嘩で夫に対して暴力を振るってしまった、暴言を吐いてしまったといった場合は、DV・モラハラにあたらないため、離婚は認められません。

夫から離婚を切り出されても離婚しなくて良いケース

結論からいうと、前述の法定離婚事由に当てはまる項目が自分にない場合は離婚裁判でも強制的に離婚させられることはありません。離婚裁判は、あくまでも法定離婚事由が認められた場合のみ離婚に判決が下ります。相手に法定離婚事由があっても自分に非がなければ、合意しない限り基本的に離婚が成立することはありません。

ただし、裁判では相手にのみ法定離婚事由があることを主張する場合は、証拠を提出して裁判官に認めてもらう必要があります。そのため、相手が法定離婚事由に該当する行動をとっていたことがわかる写真や書類などの証拠を集めてから離婚裁判に臨むのがおすすめです。

また、相手からお互い冷静になるために別居を提案されても、安易に受け入れないようにしましょう。お互い合意のうえで別居期間が長引くと裁判では不利になり、最終的には離婚が認められてしまう可能性が高まります。そのため、あらかじめ2年以内など期間を決めて長引かせすぎないようにするなどの対策が必須です。

夫婦関係を修復するために必要なこと

夫婦関係を修復するためには、自分自身が変わろうとする気持ちを持ち、できることからコツコツと行動で示していくことが大切です。まずは、下記のことを実践し、習慣化することを心掛けてみましょう。

  • コミュニケーションをとる努力をする
  • 感謝の気持ちを伝える
  • 期待しすぎず許す気持ちを持つ

ここからは、上記の必要なことについてそれぞれ詳しく解説していきます。

コミュニケーションをとる努力をする

夫婦関係を修復するためには、夫婦でコミュニケーションをとることが非常に大切です。1日の出来事をお互いに話してみたり、一緒に食事を取る・一緒に寝るなど夫婦で同じ行動をとってみたりすることで、お互いに相手に対して愛着がわき、夫婦関係の修復につながりやすくなります。

感謝の気持ちを伝える

ほんのささいなことでも、感謝の気持ちはしっかりと口に出して伝えるようにしましょう。人から感謝されれば誰でも嬉しく感じますし、感謝してくれた相手のためにもっと頑張ろうと思えるようになります。「いつも家族のために仕事を頑張ってくれてありがとう」「仕事で疲れているのに家事を手伝ってくれてありがとう」と、日ごろから夫に感謝の気持ちを伝えることで、夫もあなたを思いやってくれるようになり、お互いに相手を思いやれる関係を築けるようになるでしょう。

期待しすぎず許す気持ちを持つ

夫婦関係を修復するためには、相手に良い意味で期待しすぎず、相手が何かミスをしても許す気持ちを持つことが大切です。相手に期待しすぎてしまうと、相手が期待した行動をとってくれなかったときにイライラしてしまい、相手に対して不満を抱きやすくなります。

夫が掃除や食器洗いなど、あなたのために何かしてくれたのであれば、期待通りにできていなくても、感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。そうすれば、夫も変にプレッシャーを感じることなく、あなたに対して積極的にいろいろなことをやってくれるようになるため、夫婦関係の修復も進んでいくでしょう。

離婚することになった場合に妻がすべきこと

夫から離婚を切り出された際、離婚したくなかったとしても修復が難しければ離婚せざるを得ないでしょう。実際に離婚することになった場合、以下の準備を進めておくのがおすすめです。

  • 離婚条件について整理する
  • 相手に非があるなら証拠を集める

ここからは、離婚することになった場合に妻がすべきことについて解説していきます。

離婚条件について整理する

離婚する際は、以下の条件について決める必要があるため、あらかじめ整理しておきましょう。

決めるべき離婚条件 概要
慰謝料 相手が原因の離婚により精神的な苦痛を被った際に相手から支払われるお金。50~300万円が相場。
財産分与 婚姻期間中に築き上げた財産をすべて半分に分け合う制度。

婚姻期間以外で稼いだ分や購入した分を除き、誰が稼いだかは関係なくすべて夫婦で折半できる。

年金分割 夫婦のどちらか、もしくは両方が厚生年金に加入している場合、誰が支払ったかは関係なく婚姻期間に納めた年金を折半できる制度。

専業主婦で婚姻期間中は年金を納めていなくても、分割すれば夫が支払った分の年金を将来的に半分受け取れる。

親権 未成年の子どもを養育し、財産管理をしたり子どもの法律行為を代理したりできる権利。

子どもがいる場合はどちらが親権を持つのかを決める必要がある。

養育費 子どもの監護や教育に必要なお金のことで、親権を持たない親が親権者に対して支払う。
面会交流 子どもと親権を持たずに離れて暮らしている方の親が子どもと定期的に交流すること。基本的に親権者の都合による拒否はできない。
婚姻費用 生活費や養育費など婚姻生活において必要な費用のこと。

離婚調停や裁判中でも、離婚届を出さない限り夫婦は同等の生活を送れるよう支え合う義務があるため、専業主婦で収入がない場合は夫に生活費を請求できる。

特に、専業主婦だった人や子どもがいる人は、離婚後の生活基盤を整えておく必要があるためお金に関する取り決めはきちんと行う必要があります。慰謝料以外は自分に非があってもなくても請求できますが、具体的な費用は法律で決められていないため相手と話し合い夫婦双方が納得できる形にすり合わせなければなりません。

しかし、夫の方が立場的に強いと夫に有利な形で話が進んでしまう可能性があるため、弁護士にどのような条件で進めるのが最適か相談し、話し合いの場にも同席してもらうのがおすすめです。

相手に非があるなら証拠を集める

相手に法定離婚事由がある場合は、こちらの被害を証明する必要があるため以下のような証拠を集めなければなりません。

  • ラブホテルに不倫相手と入る写真(不貞行為の証拠)
  • DVされたことがわかる写真や診断書(婚姻を継続しがたい重要な事由の証拠)
  • 同意のない別居であることがわかるメールやSNSのやり取り(悪意の遺棄の証拠)

証拠を集める際は、相手の不法行為を立証できるものでなければ意味がないので、まずは離婚条件と同様に弁護士に相談し、どのような証拠が必要か確認しておきましょう。また、不倫現場など自分で証拠を集めるのは、体力的にも精神的にも辛い作業になるため、実際の証拠集めは探偵などを利用するのがおすすめです。

まとめ

夫が離婚を切り出したのには、それ相応の理由があるはずです。これまでの結婚生活を振り返ってみて、自分自身の言動に心当たりがあるのであれば、その点をしっかりと反省しなければなりません。

そして、夫と今後も結婚生活を続けていきたいなら、自分自身の言動を改める・感謝の気持ちを伝える・コミュニケーションを積極的にとるなど、実際に行動に起こして誠意を示すことが大切です。もし、夫から離婚を切り出されて精神的に辛い場合や、今後どのように行動すればいいのか分からない場合は、心理カウンセラーや弁護士などに相談してみてください。

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更新日 : 2024年10月09日
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