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2024年10月現在

離婚における弁護士費用の相場はいくら?かかる費用の内訳や費用を抑える方法

離婚における弁護士費用の相場はいくら?かかる費用の内訳や費用を抑える方法

現在のパートナーとの離婚を検討する際、弁護士にサポートを依頼することで手続きや交渉をスムーズに進められます。とくに離婚調停・離婚裁判への発展や、慰謝料・財産分与などのお金関係の交渉があるときは、専門知識・実績を兼ね備えた弁護士の力は非常に大きいでしょう。

離婚関係でかかる弁護士費用の相場は、20万〜110万円程度です。依頼する弁護士事務所の料金体系、発生した利益(得られた慰謝料など)、離婚の成立・不成立、依頼内容などによって、支払う金額は大きく変動します。

離婚のみが争点の場合に、支払う弁護士費用の主な内訳は次の通りです。

  • 相談料:5,000円~1万円
  • 着手金:20万~40万円
  • 報酬金:離婚成立なら20万~30万円
  • 日当:1日あたり3~5万円
  • 印紙代や切手代などの実費:発生状況により都度変動

離婚だけでなく、慰謝料や財産分与など離婚に附随する他の問題についても対応を依頼したときは、争点ごとにプラスで以下の成功報酬がかかるのが一般的です。

内容 追加料金の相場
慰謝料請求 獲得金額の10~20%
財産分与 獲得金額の10~20%
親権の獲得 10万円~20万円
養育費の獲得 合意金額の2~5年分の10~20%

弁護士事務所によっては、割引料金での着手金やセットプラン(始めから離婚+他の争点を依頼することを前提としたプラン)が設定されているケースがあります。

離婚を弁護士に依頼するときは、弁護士費用の支払い方やタイミングも事前にチェックすることが大切です。弁護士費用は決して安いわけではないので、認識が甘いと家計のやりくりが大変になったり、多額の費用倒れになったりするリスクがあります。

弁護士費用にいくらかかるかシミュレーションしつつ、「相見積もりをとって料金を比較する」「離婚に強い弁護士へ早めに相談する」といった、弁護士費用を抑える工夫も検討しておきましょう。

本記事では、離婚関係を弁護士に依頼する際にかかる費用、高額の弁護士費用を支払ってでも依頼するメリット、弁護士費用を抑える方法、弁護士費用を支払う際に気をつけること、相性のよい弁護士の探し方などを解説します。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

離婚関係の弁護士費用の相場は20万~110万円!内訳も解説

離婚関係の問題を弁護士へ依頼するときにかかる費用は、20万~110万円が相場です。ばらつきがあるのは、「離婚が成立したかどうか」「慰謝料や財産分与が発生したか」などの変数で金額が変わるからです。

弁護士に相談するときの費用の内訳は以下の通りです。

離婚における弁護士費用 相場
相談料 5,000円~1万円
着手金 20万~40万円
報酬金 離婚成立・親権獲得:10万~30万円
慰謝料や財産分与:獲得した利益の10~20%
日当 1日あたり3~5万円
印紙代や切手代などの実費 都度変動

弁護士に依頼するときは、「高額な費用を請求されるのではないか」といった懸念もあるでしょう。適切な相場かどうかを把握するために、費用の内訳を知ることも重要です。それぞれ解説していきます。

相談料の相場は5,000円~1万円

弁護士への相談料とは、弁護士へ具体的な事案について法律相談するときに発生する費用です。相談段階で課題や悩みを弁護士がヒアリングし、実際に案件に着手するかどうかを依頼人と一緒に判断します。

相談料の相場は、5,000円〜1万円(30分〜1時間)です。

ただし多くの弁護士事務所では、初回相談を無料または減額にしているケースがほとんどです。初めて弁護士に相談する人でも気軽に相談できるよう、敷居を低くしています。

事務所によっては、「個人からの依頼なら相談料は何度でも無料」といった料金設定にしているところもあります。

なお相談したからといって、その弁護士事務所へ依頼する必要はありません。少しでも興味があり、信頼できそうだと感じる事務所があれば、気軽に相談してみましょう。

相談することで、「このケースだと法的に離婚は認められるのか」「どのように進めれば離婚を認めてもらえるようになるのか」といった、具体的なアドバイスが受けられます。そのアドバイスを基に、弁護士に依頼して離婚するか、夫婦生活を継続するかなどを決めていきます。

着手金の相場は20万~40万円

「着手金」とは、実際に弁護士へ依頼を行う際に支払う費用です。

着手金は弁護士が仕事に取り組むうえで必要な費用となるため、離婚が成立しなかったといった依頼内容通りの結果が出なくても、原則として返還されることはありません。

離婚問題の依頼に関する着手金の相場は、一般的に20〜40万円です。

ただし依頼内容や事案の難易度によって相場は異なり、事務所によっては「請求金額または獲得金額(経済的利益)の◯割」と設定している事務所や、「交渉が◯時間以上や調停・裁判の期日が◯回超えになると追加料金発生」とする事務所もあります。

例えば「離婚に際して慰謝料を400万円請求したい」といったケースで、着手金が「請求金額×5.5%+10万円」に設定されていると、着手金の金額は[「400万円×5.5%+10万円=32万円」です。

弁護士事務所によっては、着手金が10万円といった安い価格で設定されている可能性があります。しかし、着手金が安い代わりに成功報酬といった他の費用が高額になっているケースが一般的です。

着手金が安いからと安易に依頼するのではなく、依頼内容に関する料金はすべてチェックしておきましょう。

報酬金は慰謝料や財産分与によって獲得した利益の10~20%

「報酬金」とは、いわゆる成功報酬です。離婚が無事に成立した場合に、弁護士に支払う費用となります。

報酬金の相場は、獲得した経済的利益の10〜20%というケースが多いです。離婚や親権など、経済的利益が発生しないものは、固定費で成功報酬が決まっています。離婚、慰謝料、財産分与、親権、養育費のそれぞれの報酬金の相場は次の通りです。

内容 成功報酬の相場
離婚成立 20万~30万円
慰謝料請求 獲得金額の10~20%
財産分与 獲得金額の10~20%
親権の獲得 10万円~20万円
養育費の獲得 合意金額の2~5年分の10~20%

「経済的利益」とは、依頼者が事案を解決することによって得た利益(慰謝料や財産分与によって得た利益)のことを指します。

養育費の場合だと、「実際に支払われた養育費の10%(上限2年分)」といった設定が行われます。

慰謝料や財産分与なしで離婚成立のみを依頼する場合、経済的利益は発生しません。そのため離婚成立に関しては、「離婚が成立したら10万円」といった定額が設定されているケースが多いです。離婚が成立しなかったときは、原則として離婚に関する報酬金は発生しません。

例えば、パートナーの不貞行為によって離婚が成立して慰謝料200万円が発生したとき、報酬金の計算方法が「離婚成功で10万円」「慰謝料×20%」なら、報酬金は「10万円+40万円=50万円」となります。

「成功」の定義や報酬金の計算方法は、各事務所や依頼内容によって異なります。例えば「時間報酬制」なら、弁護士の執務時間に応じて費用が請求されます。

基本的な弁護士費用の中でも、とくに金額が大きくなりやすいのが報酬金です。報酬体系に対して不明点があれば、公式ホームページや無料相談などで事前に確認するようにしましょう。

日当は1日あたり3~5万円

弁護士へ支払う「日当」とは、弁護士が問題解決に向けて事務所の外で活動した際に支払う費用です。裁判所への出廷や、交渉のために相手方の居住地に出向くといったケースが挙げられます。

日当の相場は、1日あたり3〜5万円です。ただし拘束時間や場所によって変動があり、日当の発生要件も弁護士や事務所によって異なります。事前に確認しておくことが望ましいです。

印紙代や切手代などの実費は発生状況により都度変動

弁護士が事件を解決する過程において、「実費」としての費用が発生します。

弁護士の収入のための費用には該当せず、本来は依頼者が支出する費用と言えます。具体的には以下の通りです。

  • 弁護士が事務所を出て移動した際の交通費
  • 依頼者や相手方に郵送物を送付する際の切手代(通信費)
  • 裁判所に納める印紙代
  • 依頼者にお金を振り込む際にかかる振込手数料
  • データ処理費用、資料費用、情報料、書類の取り寄せ費用などの実務に対して発生する費用

例えば弁護士が新幹線で移動する際、グリーン車を利用するか否かで金額に大きな差が生まれます。実費の内訳によっては費用を抑えられることから、弁護士に相談しておくのもよいでしょう。

【ケース別】離婚関係の弁護士費用の相場はいくら?

離婚関係を弁護士に依頼するときは、「調停や裁判をしない協議離婚」「離婚調停への対応」「離婚裁判への対応」の3パターンがあります。

離婚に関する争いが発生したときは、まず夫婦や弁護士での話し合いで解決を目指すのが一般的です。協議で解決しないときは、家庭裁判所を介して話し合いを行う離婚調停へ進みます。離婚調停でも問題が解決しなかったときに、初めて離婚裁判の訴訟提起が可能です。

これらの3段階では、段階ごとに弁護士費用がかかります。おおまかな相場は次の通りです。

段階ごとの費用 相場
協議段階 20万~60万円
離婚調停 40万~70万円
離婚裁判 70万~110万円

なお財産分与や慰謝料請求など別の争点があるときは、上記の金額にプラスして弁護士費用が発生します。慰謝料、財産分与、養育費などは経済的利益の10~20%、親権の場合は10万~20万円程度です。

以下では、それぞれの詳細を見ていきましょう。

調停や裁判をしない協議離婚なら20万~60万円

協議離婚とは、裁判所を介さずに夫婦で話し合って離婚を行うことを意味します。協議離婚の交渉代行の費用相場は20〜60万円です。

前提として、夫婦での話し合いのみで解決すれば、弁護士に依頼する必要はありません。しかし折り合いがつかない場合、弁護士に仲介を依頼する形となります。

離婚以外での交渉代行が発生したときは、離婚問題に関する着手金と成功報酬(離婚が成立した場合)などに加えて、交渉内容ごとの弁護士費用が請求されます。

協議離婚が成立すれば、調停手続きなど裁判所の仲介は不要です。手続きにかかる時間・費用や裁判関係で必要な弁護士費用などがかからないので、もっとも安価で済むタイミングと言えるでしょう。

なお別途5~10万円の費用がかかりますが、協議離婚に基づいて作成する離婚協議書(離婚に関する約束ごとを書面化したもの)は、公正証書で残すのがおすすめです。

公正証書で残しておけば、相手側が離婚協議書の内容を履行しないとき(養育費を支払わないなど)、法律に基づく強制執行が可能になります。別途訴訟を提起する必要がありません。

離婚調停への対応なら40万~70万円

離婚調停とは、離婚に関する諸問題を家庭裁判所で話し合うことです。離婚調停時の弁護士費用の相場は40〜70万円です。

離婚調停は、あくまで話し合いによる解決を目指すことが目的になります。そのため、当事者自身に出席を求められるケースが多いです。

調停の日は夫婦が同じ家庭裁判所にいるものの、調停委員と話している間は夫婦それぞれが別々の部屋となっています。顔を合わせることは、原則としてありません。しかし、調停委員を通じてすり合わせを行う際に、どうしても感情的になってしまうケースがよくあります。

弁護士に依頼して調停に同席してもらうことで、感情的になって権利関係だけを主張するという事態を避けやすくなります。また。相手方との連絡は弁護士が代理してくれるため、配偶者や不倫相手と直接対峙せず、精神的に落ち着いた状態で話し合いを進めやすくなるでしょう。

離婚調停では、協議離婚と同じく夫婦の双方が離婚条件に合意できた場合に成立します。調停が成立したときは、裁判の判決文と同じ効力を持つ、調停調書が作成されます。

もし夫婦間で離婚条件に合意できず、離婚調停が不成立となった場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起しなければなりません。

離婚裁判への対応なら70万~110万円

離婚裁判にかかる弁護士費用の相場は、70〜110万円です。

離婚裁判での解決は費用・時間がかかるものの、裁判で勝訴すれば確実に相手と別れられるのがメリットです。裁判途中で相手との和解が成立すれば、判決を待つことなく早めに問題を解決できます。

離婚裁判で何かしらの決着(取り下げは除く)が付くと、判決書(判決文)や和解調書が作成されます。

ただし離婚訴訟を提起するには、原則として離婚調停を申し立てて話し合いを行った後でなければなりません。これを「調停前置主義(家事事件手続法第257条)」と呼びます。

もし判決書や和解調書に記された金銭面における約束が履行されなかった場合、相手に対する強制執行が可能です。

離婚裁判では難解な議論や証拠の提出など多岐にわたる準備が求められることから、数十万円レベルの支出を覚悟してでも弁護士のサポートを依頼することを推奨します。

なお、実際に離婚裁判にまで発展する可能性は、統計データを見ると非常に低いです。

厚生労働省「離婚に関する統計の概況」によると、離婚裁判の判決で離婚する割合は毎年0.9~1%程度しかありません。

一方で、協議の時点で離婚が成立するケースは約90%です。離婚調停・審判で離婚するケースは9~11%、裁判中の和解離婚は約1.5%となっていました。このように、多くの場合は協議・調停の時点で離婚が成立していると覚えておきましょう。

離婚時にかかる弁護士費用のシミュレーション

弁護士に依頼した場合、どのような費用が発生し、どのくらい金銭的な見返りが得られるのかイメージしてもらうために、状況に応じた弁護士費用についてシミュレーションを行いました。

今回のシミュレーションを行ううえで想定する、弁護士事務所の料金は次の通りです。

費用の種類 料金設定(税込)
相談料 1時間あたり1万1,000円
今回の計算では考慮しない
着手金 協議離婚:20万円
調停・裁判:40万円
報酬金(離婚成立) 協議離婚:20万円
調停・裁判:30万円
報酬金(慰謝料や財産分与などが発生) 協議離婚:10%
調停・裁判:15%
報酬金(親権獲得成功) 20万円
報酬金(養育費成立) 実際に支払われた金額×10%
備考 ・協議から調停や訴訟に進んだときは、追加の着手金に関しては金額を1/2とする
・報酬金は、事件終了時の金額で算出する(離婚裁判まで進んだときは離婚裁判の結果のみを反映)
・実費や日当は考慮しない

離婚に向けた代理交渉を依頼するとき

離婚に向けた配偶者との話し合いで弁護士に代理交渉したときに、「離婚のみが成立した」「離婚のほかに養育費や財産分与について成立したとき」の2つのケースを見ていきましょう。

離婚のみが成立したとき

弁護士に離婚についてのみを依頼したときは、着手金と離婚成立の成功報酬のみがかかります。

  • 着手金:20万円
  • 報酬金(離婚):20万円

このケースでの弁護士費用は、40万円となります。

離婚・養育費・財産分与について成立したとき

離婚に加えて、「養育費が月5万円」「財産分与200万円」について成立したときは、以下の費用が発生します。

  • 着手金:20万円
  • 報酬金(離婚):20万円
  • 報酬金(養育費):(5万円×10%)×24ヶ月=12万円
  • 報酬金(財産分与):200万円×10%=20万円

このケースでの弁護士費用は、72万円となります。

離婚調停で離婚・養育費・財産分与について成立したとき

離婚に関する代理交渉から離婚調停に進んだときは、追加の着手金の発生と、離婚調停の料金テーブルへの移行が行われます。「離婚成立」「養育費月5万円」「財産分与200万円」が成立したときのケースは次の通りです。

  • 着手金:20万円+(40万円×1/2)=35万円
  • 報酬金(離婚):30万円
  • 報酬金(養育費):(5万円×10%)×24ヶ月=12万円
  • 報酬金(財産分与):200万円×15%=30万円

このケースでの弁護士費用は、107万円となります。

離婚裁判で慰謝料300万円を得られたとき

離婚調停から裁判に移行したときは、離婚裁判での料金テーブルが適用されます。離婚+慰謝料300万円が成立したケースは次の通りです。

  • 着手金:20万円+(調停分40万円×1/2)+(裁判分40万円×1/2)=60万円
  • 報酬金(離婚):30万円
  • 報酬金(慰謝料):300万円×15%=45万円

このケースでの弁護士費用は、135万円となります。

高額の弁護士費用を支払ってでも依頼するメリットは?

弁護士費用は20万~110万円と、決して安くありません。しかし弁護士費用を支払ってでも離婚問題の解決を弁護士に依頼することには、以下のメリットがあります。

  • さまざまな法的手続きを代理してくれるので、時間・精神面での負担が減る
  • 離婚協議書の作成や離婚裁判の進行を有利に進められる
  • 離婚条件(慰謝料、財産分与、養育費、親権などを含む)を考えてくれる
  • 相手の不貞行為や親権者としての不適格さの証拠集めを支援してくれる
  • 弁護士を付けたという本気度が伝わり、離婚調停などが有利になる可能性がある

弁護士の法的観点や実務能力を活用せずに離婚を進めると、相手だけが有利な条件になったり慰謝料や養育費が認められなかったりするリスクが高くなります。

確実な離婚に加えて妥当な慰謝料、財産分与、養育費、親権を勝ち取りたいときは、弁護士への依頼がおすすめです。

とくに相手が弁護士を付けているときは、こちらも弁護士を付けていないと、自分1人で法律のプロとの話し合いや法廷でのやり取りを行わなければなりません。相手が弁護士を立てているなら、こちらも弁護士に依頼するのが必須だと言えます。

最高裁判所の「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、令和4年の婚姻関係事件の調停でどちらかが弁護士に依頼しているケースは、62.6%となっていました。令和2年以降は6割超えが続いています。

また日本弁護士会の資料によると、人事訴訟事件における弁護士選任率は2004年~2020年で90~100%で推移しています。人事訴訟事件は9割が離婚訴訟であるため、離婚裁判のほとんどは弁護士が関与していると言えるでしょう。

離婚問題における弁護士費用を抑える8つの方法

離婚問題における弁護士費用を抑える方法は、以下の通りです。

  • 事前に料金設定を確認する
  • 相見積もりを取る
  • 相談料・着手金が不要の事務所に相談する
  • 近場の法律事務所を活用する
  • 弁護士費用の立て替え制度を活用する(法テラス)
  • 分割払い・後払いに対応している法律事務所に相談する
  • 損害賠償請求なら弁護士費用の一部を相手側へ請求する
  • 離婚に強い弁護士へ早めに相談する

それぞれ解説していきます。

事前に料金設定を確認する

弁護士への依頼費用は、各事務所や弁護士によって異なります。公式ホームページや無料相談時に、料金設定を確認しておくことが大切です。

最終的にかかる費用は、弁護士事務所に見積もりを出してもらうことで明らかになります。具体的な内訳を算出してもらうことで、相場と比較して適切な料金設定かどうかを比較しやすくなるでしょう。

相見積もりを取る

複数の弁護士事務所へ相見積もりを取ることで、「どの弁護士事務所の料金が一番安いか」「金額に対するコストパフォーマンスがよいのはどこか」などを比較検討できます。

見積りを見るときは合計費用だけでなく、報酬金の割合や実費の範囲など、内訳までしっかりと目を通すようにしましょう。一見すると同じような料金設定や合計金額でありながら、実際に算出してみると、弁護士や事務所ごとにバラつきが生じることは珍しくありません。

見積りを依頼するときは、こちら側からもできる限り具体的な指示と情報開示を行い、正確な見積りが出せるように協力しましょう。

相談料・着手金が不要の事務所に相談する

初期費用を抑えたいなら、相談料・着手金が不要の事務所に相談する方法もあります。

いわゆる完全成功報酬型の事務所では、依頼者に経済的利益が生じた場合にのみ、弁護士費用が発生します。慰謝料といった金銭を獲得できなければ、成功報酬が発生しないため、費用を支払う必要はありません。

ただし完全成功報酬型は、成功報酬にかかる割合が大きくなる傾向にあります。初期費用が抑えられることは大きなメリットですが、経済的利益が生じた場合に、依頼者の手元に残るお金が少なくなってしまうことを考慮しておきましょう。

近場の法律事務所を活用する

法律事務所を選定する際には、「インターネット上の評判がよい」「依頼費用が安い」「実績が豊富」などを基準に設けるのが一般的です。弁護士費用を抑えたいときは、「自宅から近いか」という観点も大切です。

例えば評判がよい弁護士事務所でも、自宅から距離がある立地なら交通費がかさんでしまいます。また、事務所から裁判所までの距離が遠い事務所だと、実費として請求される金額も高くなってしまいます。

近年ではオンライン法律相談に対応する弁護士や事務所も増えており、気軽に相談や依頼ができる環境が整いつつあります。

とはいえ相談内容によっては直接面談が必要となるケースがあるため、オンライン上で全てを解決できるかは、あらかじめ弁護士に尋ねてみましょう。

弁護士費用の立て替え制度を活用する(法テラス)

弁護士費用を用意できないのであれば、日本司法支援センター(以下、法テラス)の費用の立て替え制度の活用を検討してみましょう。

立て替え制度とは、着手金や実費などの費用を一旦法テラスが立て替え、後に利用者が法テラスに費用を返済する制度です。分割返済(月額5,000~1万円程度)ができるため、早期の返済が難しい人でも安心して利用できます。

ただし利用するには、法テラスが定める以下の条件を満たす必要があります。

  • 収入等が一定額以下であること
  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  • 民事法律扶助の趣旨に適すること

収入等を判断する際には、「収入要件」と「資産要件」を満たさなければなりません。

収入要件は申請者及び配偶者の「賞与を含む、手取りの月収額」が、下記の表の基準に該当するかが判断基準となります。

注意点として、離婚事件など配偶者が相手方の場合は、申込者のみの収入で計算します。

家族の人数 手取り月収額の基準 家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額
1人 ・18万2,000円以下
・東京・大阪など生活保護一級地は20万200円以下
・4万1,000円以下
・東京都特別区は5万3,000円以下
2人 ・25万1,000円以下
・東京・大阪など生活保護一級地は27万6,100円以下
・5万3,000円以下
・東京都特別区は6万8,000円以下
3人 ・27万2,000円以下
・東京・大阪など生活保護一級地は29万9,200円以下
・6万6,000円以下
・東京都特別区は8万5,000円以下
4人 ・29万9,000円以下
・東京・大阪など生活保護一級地は32万8,900円以下
・7万7,000円以下
・東京都特別区は9万2,000円以下

参考:費用を立て替えてもらいたい|法テラス

同居の家族が5人以降になる場合は、1人増えるごとに3万円(東京や大阪などの地域は3万3,000円)を基準額に加算します。

次に資産要件は、不動産(自宅や係争物件を除く)・有価証券などの資産を有する場合に、その時価と現金・預貯金との合計額が下記の表の基準に該当するかが判断基準です。

離婚事件など配偶者が相手方の場合は、資産を合算しません。また将来に負担すべき医療費・教育費などの出費がある場合は、相当額が控除されます。

家族の人数 資産合計額の基準
1人 180万円以下
2人 250万円以下
3人 270万円以下
4人以上 300万円以下

参考:費用を立て替えてもらいたい|法テラス

ただし、収入・資産要件以上に保有していても、家賃、住宅ローン、医療費、養育費の支払い状況といったやむを得ない事情があるときは、要件を満たしたものとして扱われる可能性があります。一度、法テラスにて確認してみてください。

分割払い・後払いに対応している法律事務所に相談する

法律事務所によっては、分割払いや後払いにも対応しています。

通常、弁護士に依頼する際の着手金は前払いです。後払いが認められるかは弁護士次第ですが、以下のようなケースであれば検討してもらえる余地があります。

【経済的利益を獲得できる見込みが高い】

慰謝料といった経済的利益を獲得し、弁護士費用を回収できる見込みが高い

【弁護士との間に信頼関係がある場合】

過去に依頼したことがあり、問題なく支払いを行っていた
親戚や友人など、依頼者と弁護士の間に共通の知り合いがいる

分割払いであれば、後払いよりも柔軟に対応してくれる傾向にあります。回数の上限は事務所によって異なりますが、6〜12回払いが目安となります。

一括での支払いが難しいとお悩みであれば、分割払いや後払いに対応する事務所を探してみましょう。

損害賠償請求なら弁護士費用の一部を相手側へ請求する

原則として弁護士費用は全額が自己負担であり、相手側に請求することはできません。

ただし、損害賠償請求が伴う離婚裁判で慰謝料などが認められたときは、一部の弁護士費用を請求できる可能性があります。請求できる目安は、裁判で認められた損害賠償額の10%程度です。

なお協議離婚、離婚調停、離婚裁判での和解成立の場合は、相手側に弁護士費用を請求しないのが一般的です。

離婚に強い弁護士へ早めに相談する

弁護士費用を抑えたいときは、離婚に強い弁護士へ早めに相談することをおすすめします。

離婚に強い弁護士なら、相手側に対して妥当な慰謝料、財産分与、養育費などを設定し、法的根拠を持って請求してくれます。妥当な金額を勝ち取れれば、費用倒れ(弁護士費用が経済的利益を上回る)になるリスクも減らせるでしょう。

また、離婚調停や離婚裁判へ発展する前に弁護士へ依頼しておけば、調停や裁判に進まずとも協議離婚での離婚ができる可能性を上げられます。

ほとんどの弁護士事務所は代理交渉の金額を調停・裁判対応より低く設定しているため、協議離婚で離婚が成立できれば弁護士費用を一番抑えられます。調停・裁判対応にかかる追加の弁護士費用も、支払う必要がありません。

協議離婚を成立させたいなら、協議の時点で話をまとめられる力を持った弁護士へ、問題がこじれる前に相談するのがよいでしょう。

離婚問題で弁護士費用を支払う際に気をつけること

離婚問題で弁護士費用を支払う際に気をつけることは以下の通りです。

  • 共有財産から弁護士費用の支払いを行わない
  • 料金を支払うタイミング・回数を事前に把握する
  • 弁護士費用の支払い方法は現金・銀行振込が多い
  • 調停・裁判のどちらもだと二段階請求になる可能性がある
  • 弁護士費用は原則として自己負担で支払う
  • 得られる慰謝料などの金額によっては費用倒れになる

弁護士費用はさまざまな項目に分けられており、発生や請求のタイミングも弁護士や事務所によって異なります。料金体系を理解することや、不明点があれば遠慮せずに弁護士に尋ねてみることが大切です。

共有財産から弁護士費用の支払いを行わない

「共有財産」とは、夫婦が結婚生活の中で一緒に形成した財産のことです。その共有財産から弁護士費用を支払ってしまうと、財産分与の際に減額されてしまう可能性があり、金銭的に損する判断になりかねません。

弁護士費用を支払うにあたっては、財産分与の対象にならない財産から費用を捻出することをおすすめします。具体例としては、結婚前から持っていた財産や結婚後に親族から相続や贈与を受けた財産が挙げられます。

料金を支払うタイミング・回数を事前に把握する

弁護士費用を支払うタイミングは、費用の項目によって異なります。

弁護士費用の項目 支払いのタイミング
相談料 法律相談が終了したとき
着手金 仕事を依頼するとき
成功報酬金・日当・実費 事件にかかる対応がすべて終了したとき

着手金に関しては、代理交渉・調停・裁判の段階が進むごとに請求が行われるケースもあります。

あらかじめ支払い時期や費用の概算を確認しておくことで、慌てることなく請求の支払いを行うことができます。料金を支払うタイミングや回数は、あらかじめ弁護士に確認しておくようにしましょう。

弁護士費用の支払い方法は現金・銀行振込が多い

弁護士費用の支払い方法は、事務所によって異なります。一般的には現金払いや銀行振込のみの対応が多いです。近年では、電子決済(クレジットカードやPayPay)に対応している事務所もあります。

銀行振込は利便性が高く、弁護士費用の支払いにおいて、もっとも主流な支払い方法となります。ただし、依頼者であるこちら側が振込手数料を支払うことに留意しておきましょう。

二段階請求になる可能性がある

前述した弁護士費用のシミュレーションの通り、離婚調停と離婚裁判をどちらも行う場合、それぞれに着手金が新たにかかる可能性があります。

例えば調停で着手金20万円を支払った後に裁判へ移行したとき、裁判の着手金として追加で着手金が発生する可能性があります。

また、協議から調停へ段階が移るときも同様に、二段階の着手金を設定している弁護士事務所も珍しくありません。

さらに弁護士事務所によっては、「離婚調停と離婚裁判を別手続きとして認識し、それぞれに着手金と成功報酬を設定している」という弁護士事務所も存在します。弁護士費用が高額になる可能性が高いので、依頼前に報酬体系をしっかりと確認しておきましょう。

弁護士費用は原則として自己負担で支払う

弁護士費用は、原則として全額を自己負担で支払います。離婚相手や不倫相手に請求することはできません。

損害賠償が発生したときは損害賠償額の10%を請求できる可能性がありますが、離婚のみが争点だと損害賠償は発生しないため、相手側が弁護士費用を支払うことはありません。

得られる慰謝料などの金額によっては費用倒れになる

弁護士費用に関する費用倒れとは、弁護士費用が慰謝料や財産分与で得られる経済的利益を超えてしまい、収支がマイナスになってしまうことです。

例えば不貞行為が原因の離婚で慰謝料を請求する場合、得られた慰謝料が20万円だけだと、着手金ぐらいしかまかなえません。20万円を超える部分の弁護士費用は、全額自己負担になります。

とくに慰謝料や財産分与が伴わない離婚成立のみを依頼したときは、成功しても経済的利益が発生しないので確実にマイナスとなります。費用倒れを避けたいときは、「慰謝料や財産分与分をもっと高額で請求できるか」「養育費をもっと高額にできないか」などを、事前に弁護士と話し合うとよいでしょう。

自分と相性のよい弁護士を探すには?

最後に注目したいのが、あなた自身と弁護士との「相性」という点です。

学校や職場や恋愛など多様な環境で過ごしてきた中で、惹かれる人もいれば好ましくないと感じる人もいたでしょう。弁護士も人間であることから、依頼人との「合う」「合わない」といった相性が存在します。

相性がよい弁護士に依頼することで、証拠集めなどの打ち合わせがスムーズに進んだり、親身に相談に乗ってくれたりといったメリットがあります。コミュニケーションが円滑なら、あなた自身もストレスを溜めず、弁護士と積極的に協力して進められるでしょう。

自分と相性のよい弁護士を探すには、以下のポイントを意識してください。

  • 離婚に関する専門性や実績を見る
  • 実際に話して態度や言葉遣いを見る
  • 料金体系を詳細に掲示してくれるかを見る

それぞれ解説していきます。

離婚に関する専門性や実績を見る

弁護士に依頼するときは、離婚に関する高い専門性や実績を持つ弁護士を選びましょう。

離婚関係が得意でない弁護士を選んでしまうと、離婚の成功率が下がる可能性があることに加え、対応の遅さや要領を得ない回答などに対してこちら側がストレスを感じるリスクがあります。

仮に「離婚分野はあまり経験がありません」と言われたら、それだけで強い不安を覚えることになるでしょう。

弁護士の専門性や実績を見るときは、離婚という大分野だけでなく、「慰謝料請求に強い」「親権獲得の実績多数あり」といった、依頼内容に応じた部分にも注目することを推奨します。

実際に話して態度や言葉遣いを見る

弁護士との相性を見るには、実際に対面やオンラインで言葉を交わして見て、こちら側に対する態度や言葉遣いをチェックするのが効果的です。

いくら能力が高い弁護士だったとしても、「威圧感があって話しづらい」「こちらの質問に対して適切に答えてくれない」といった態度が見られると、今後の対応がスムーズに進められない可能性があります。

具体的には、以下のポイントに注目することをおすすめします。

  • こちらの話を親身に聞いてくれるか
  • 言葉遣いがていねいか
  • 自分以外の依頼者を優先していないか
  • 態度が高圧的でないか
  • レスポンスのスピードは適切か

例えば初回の法律相談でも、弁護士によって対応のスタンスは多種多様です。

相槌をたくさん打ちながら、相談者の不安を和らげることに重きを置く弁護士もいます。一方で話の要点を抽出することで、いかにロジカルな解決策を導き出して相談者に伝えるべきかを意識する弁護士もいます。

どちらの弁護士が良い・悪いという問題ではなく、「話しやすい」「この人なら信頼できそう!」といった直感を大切にしてみましょう。

料金体系を詳細に掲示してくれるかを見る

弁護士に依頼するときは、実際に委任契約を結ぶ前に料金体系を詳細に掲示してくれるかを確認しましょう。いくらていねいに対応してくれる弁護士であっても、かかる費用や算出根拠を濁す場合は、後から説明していない別料金を請求してくる可能性があります。

そもそも本当に誠実な弁護士であれば、料金体系を隠す真似はしません。

例えば相見積もりなどを依頼したときに、弁護士費用を詳細に出してくれない弁護士事務所は、始めから選定対象としないといった対応が考えられます。

まとめ

離婚関係の対応を弁護士に依頼するときの費用相場は、おおよそ20万~110万円です。協議離婚までなら比較的安価に、離婚裁判まで進んだときは高額になる傾向があります。

また、離婚以外にも慰謝料、財産分与、養育費、親権などに関する依頼をしたときは、さらに弁護士費用が高額になる可能性があります。

弁護士費用は決して安くありませんが、「確実に離婚を成立させたい」「慰謝料や財産分与でこちら側に有利な条件としたい」といったときは、弁護士の専門知識や実務能力が必要不可欠です。

弁護士費用を抑えたいときは、相見積もりを取って弁護士事務所を選定する、近場の法律事務所を活用する、離婚に強い弁護士に早期解決をお願いするなどの方法がおすすめです。ケースによっては、分割払い・後払いの利用や、法テラスの活用なども検討しましょう。

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更新日 : 2024年10月30日
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