「離婚したいけどお金がない」「お金がない状態での離婚はやめた方がいい?」
離婚したいと思っても、専業主婦(夫)や仕事にブランクのある場合、自分だけの貯蓄や安定した収入がなく、このような悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。
離婚したいけどお金がない場合に取るべき対策としては、次のようなものがあります。
- 別居している場合は、配偶者に婚姻費用を請求する
- 離婚時に受け取れるお金(財産分与、慰謝料など)を活用する
- 離婚後に自治体から受けられる公的支援を受ける
- 専業主婦(夫)で貯金がない場合は就職する
これらの対策を取ることで、離婚前後に一定の資金を確保することができます。
また、離婚を考える場合には、離婚するにはどれくらいの出費があるか、離婚の費用について把握しておくことも重要といえるでしょう。
離婚に際しては下記のような費用が発生します。
費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
別居のための費用 | 賃貸契約の初期費用として家賃の4~5ヶ月分、荷物の運搬費用4万~8万円など |
離婚後の生活費 | 単身世帯で月16万円など |
離婚手続きに必要なお金 |
協議離婚の場合、0円 離婚調停の場合、約3,000円 離婚裁判の場合、約20,000円 |
弁護士費用 |
協議離婚の場合、30万円~60万円程度 離婚調停の場合、50万円~100万円程度 離婚裁判の場合、60万円~100万円程度 |
また、離婚費用を極力抑える方法としては下記のような手段があります。
- 協議離婚で離婚する
- 弁護士の無料相談を活用する
- 法テラスを利用する
その他、弁護士に依頼するメリットなど、離婚でお金がない場合に役立つ情報について詳しく解説しますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
離婚したいけどお金がない場合の対応策
冒頭でも触れましたが、まずは、離婚したいけどお金がない場合の対応策について解説します。
- 別居している場合は、配偶者に婚姻費用を請求する
- 離婚時に受け取れるお金を活用する
- 離婚後に自治体から受けられる公的支援を受ける
- 専業主婦(夫)で貯金がない場合は就職する
詳しくは次の通りです。
別居している場合は、配偶者に婚姻費用を請求する
離婚に向けて別居する場合、あるいはすでに別居している場合は、配偶者に婚姻費用を請求することができます。
婚姻費用とは、夫婦のうちの収入の多い方が少ない方に支払う生活費のことです。婚姻費用には、衣食住の費用、医療費、子ども教育費などが含まれます。
夫婦にはお互いに協力し扶助し合う義務が民法で定められているため、婚姻中は、生活費を支払える者がもう一方の配偶者や子どもの生活費を負担することとされています。このため、別居中でも、相手の方が収入が高く支払い能力がある場合には、婚姻費用の請求が可能です。
なお、婚姻費用は、請求しない限りは支払ってもらえないため、支払ってもらいたい場合は、きちんと請求する必要があります。金額や支払い方法、支払い時期は夫婦で話し合いで決めます。話し合いで決まらない場合は調停を申し立てて決めることも可能です。
金額は、一般的には夫婦の収入や子どもの人数、年齢などに応じて決まりますが、夫婦間で合意すればいくらでもよいとされています。なお、調停や審判では下記の「婚姻費用算定表」を参考に決められます。婚姻費用の金額を決めかねている場合は、参考にするとよいでしょう。
裁判所「婚姻費用算定表」
離婚時に受け取れるお金を活用する
離婚をすると受け取れるお金もあります。具体的には下記の4つです。
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
- 年金分割
詳しい内容は次の通りです。
財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を、離婚に際して公平に分配することです。
夫婦共有名義でなく夫婦どちらか一方の名義の財産でも、夫婦の協力で築いた財産であれば財産分与の対象となります。例えば、婚姻中に夫の収入で夫名義のマンションを購入した場合でも、妻が家事や育児で夫を支えていた場合は、そのマンションも財産分与の対象です。
なお、どちらかが婚姻前から持っていた預貯金などの財産は対象外です。また、どちらかが親から生前に贈与された財産や死後に相続した財産も財産分与の対象外となります。子どもの名義の預貯金は財産分与の対象となるケースがほとんどです。
その他、財産分与の対象となる財産には不動産、現金・預貯金、保険、退職金、その他経済価値のある美術品などがあります。
分配する割合は、夫婦平等に2分の1ずつ分け合うのが基本ですが、夫婦間の話し合いで合意すれば割合を変えることは可能です。
夫婦間で話し合いがまとまらなかった場合は、家庭裁判所に申し立てをすることで財産分与をすることができます。なお、財産分与は離婚から2年経過すると、家庭裁判所に申し立てをする権利がなくなります。そのため、財産分与は離婚前から離婚後2年が経たないうちに請求するようにしましょう。
慰謝料
慰謝料とは、離婚の原因が相手の不法行為にある場合などに、受けた精神的苦痛を慰めるために請求する損害賠償のお金です。
例えば、相手の浮気やDVなどの不貞行為が原因で離婚する場合に請求可能です。
慰謝料の金額は、離婚原因となった相手の不貞行為の内容などで変わります。例えば、離婚原因別の慰謝料の相場は下記のようになります。
離婚原因 | 慰謝料相場 |
---|---|
不貞行為(配偶者が別の人と肉体関係を結んだ場合) | 100万~500万円 |
DVやモラハラ(配偶者から暴行や暴言を受けていた場合) | 50万~500万円 |
悪意の遺棄(配偶者から勝手に別居されたり、生活費を渡されなかったりした場合) | 50万~300万円 |
セックスレス(正当な理由なく一方的に性行為を拒否さ) | ~200万円 |
慰謝料を請求する場合には、配偶者が不法行為を行ったことが前提となります。慰謝料を請求する際には、不法行為を証明するための証拠を集めておくようにしましょう。
慰謝料について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
養育費
親権を獲得して子どもを引き取る場合は、もう一方の配偶者に養育費を請求することができます。
養育費とは、子どもの監護や教育にかかる費用のことです。一般的には経済的・社会的に自立するまでの生活や医療、教育にかかる費用をいいます。
離婚後の養育費は、子どもを監護する親が、他方の親から受け取ります。離婚後、親権を持たない親であっても、子どもの親であることに変わりはないことから、養育費の支払い義務から逃れることはできません。
養育費の支払金額や支払い方法は、夫婦間の話し合いで決めることができます。支払う親の年収や子どもの年齢、人数などによって異なるのが一般的です。
養育費の算定には、調停や裁判でも利用される「養育費算定表」が1つの目安とされるため、参考にするとよいでしょう。
・裁判所「養育費算定表」
養育費について話し合いがまとまった場合には、強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことがおすすめです。万が一、養育費が支払われなくなった場合に、訴訟などの手続きを踏むことなく、強制執行をすることが可能となるためです。
夫婦間の話し合いがまとまらない場合は、調停や裁判などで養育費を請求することも可能です。
年金分割
年金分割とは、夫婦が婚姻期間中に保険料を支払っていた厚生年金について、離婚後、分割してそれぞれの年金にすることです。
分割できるのは、会社員や公務員が加入する厚生年金だけのため、自営業が世帯主の夫婦の場合などは対象外です。
年金分割の分割割合は50%ずつが一般的ですが、夫婦で合意できれば所定の割合の範囲内で変更することは可能です。分割割合が話し合いで決まらない場合は調停や審判で決めることができ、原則として50%ずつとなります。
年金分割の手続きとしては、お近くの年金事務所か年金相談センターに「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」 を提出します。
年金分割の手続きは、離婚をした日の翌日から2年を経過すると行えなくなります。また、既に離婚が成立し、相手が死亡した日から起算して1ヶ月を経過しても請求できません。そのため、分割割合が決まれば早めに手続きを行うようにしましょう。
参考:法務省「年金分割」
離婚後に自治体から受けられる公的支援を受ける
離婚後に自治体から受けられる公的支援もあります。主に子育てに関する支援で、離婚後に親権者となりひとり親となる場合には、利用することがおすすめです。
自治体からの公的支援の例は下記の通りです。
離婚後に利用できる手当 | |
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児童手当 | 中学生までの子どもを養う家庭に支給される手当金。住民票のある市区町村の窓口で申請できる。 |
児童扶養手当 | 18歳までの子どもを養うひとり親家庭に支給される手当金。住民票のある市区町村の窓口で申請できる。 |
児童育成手当 | 18歳までの子どもを養うひとり親家庭に支給される手当金。市区町村によって受給制限が異なる。住民票のある市区町村の窓口で申請できる。 |
ひとり親家庭の住宅手当 | ひとり親家庭で20歳未満の子どもを養い、月1万円を越える家賃を払っている親に支給される手当金。市区町村によっては制度がないこともある。制度がある場合は、住民票のある市区町村の窓口で申請できる。 |
ひとり親家庭の医療費助成制度 | ひとり親家庭で親や子どもが病院で診察を受けた際の健康保険自己負担分を自治体が助成する制度。市区町村によって助成内容が異なる。住民票のある市区町村の窓口で確認・申請できる。 |
保育料の助成 | ひとり親世帯や多子世帯について、保育料の負担軽減が受けられる。例えば、最年長の子どもから順に2人目は半額、3人目以降は無料。 年収約360万円未満相当のひとり親家庭は、2人目は保育料が無料など。住民票のある市区町村の窓口で確認・申請できる。 |
就学時援助 | 小学生・中学生の学校生活で必要な学用品その他を市町村がサポートする仕組み。ひとり親家庭など児童扶養手当を受けている家庭を対象にしているものの、利用対象は市区町村によって多少異なる。住民票のある市区町村の窓口で確認・申請できる。 |
利用できる公的支援の内容や対象は、お住まいの自治体によって多少異なるケースがあります。ご利用の際には、直接お住まいの自治体の窓口に問い合わせるか、あるいは自治体のホームページで確認するようにしましょう。
専業主婦(夫)で貯金がない場合は就職する
専業主婦(夫)で貯金がないといった場合は、就職することも検討した方がよいでしょう。
離婚後、たちまち生活に困ることがないように離婚前に安定した収入を得られる就職先を見つけておくことは大切です。離婚後に家を借りる場合にも仕事に就いている方が審査に通りやすいといえます。
専業主婦からいきなり正社員が難しい場合には、続けることで正社員を目指せるパート・アルバイト、派遣の仕事を見つけるのもよいでしょう。
また、ハローワークでは「マザーズハローワーク」という子育てをしながら就職を希望する女性向けの職業相談窓口を設けているところがあります。子ども連れで就職の相談をしたい人や子育てと仕事とを両立しやすい職場を探している人、子育てで仕事にブランクがあって復帰に不安がある人などが相談しやすい環境が整っています。ご利用に際しては、お近くのハローワークに問い合わせてみてください。
離婚する際に必要なお金
離婚するのに一体いくらかかるのか、必要なお金を把握し準備しておくことも大切です。
離婚時には下記のような費用が発生します。
- 別居するための引越し費用
- 離婚後の生活費
- 離婚手続きに必要なお金
- 弁護士費用
詳しくは次の通りです。
別居するための引越し費用
離婚する場合、離婚後は配偶者と別に住むことになります。また離婚前に別居生活に入る人もいるでしょう。別居する際には引越しに費用がかかります。
具体的には、下記のような引越し費用が発生します。
費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
賃貸契約初期費用(敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料など) | 1ヶ月の家賃の約4~5倍 |
引越し荷物の運搬費 |
荷物の量や運ぶ距離で異なる 同じ都道府県内で4万~8万円(※1) |
家具・家電購入費 | テレビ・冷蔵庫・洗濯機:各4万円~(※2) |
子どもの保育園・幼稚園の入園・転園費 | 認可外の場合、入園料・教材費・制服代など |
子どもの転校費 |
教科書代・制服などの買換え費用 制服買換え:2万~5万円(※3) |
※1 参考:引越し見積もりサイトLIFULL「引越し費用の料金相場を調べる」
※2 参考:価格.com「家電」
※3 参考:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
なお、別居するといっても、実家に戻る場合には上記の賃貸契約初期費用などがかからないため、費用を安く抑えることが可能です。
別居における生活費は婚姻費用として請求できることは既にお伝えした通りですが、別居における引越しの費用を配偶者に請求できる法的な権利はありません。ただし、相手に不法行為などの離婚原因がある場合には慰謝料に上乗せしてもらうなど、話し合い次第で支払ってもらえる場合もあります。そのため、状況や必要に応じて話し合うことがおすすめです。
離婚後の生活費
離婚後の月々の生活費がいくらになるかも把握しておきましょう。
実際に生活していく上では、下記のような費用が発生します。
- 家賃
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 日用品・化粧品購入費
- 税金、社会保険料
目安としては、消費支出の平均月額は単身世帯で約17万円、全世帯平均で約25万円となっています。このため、離婚後一人暮らしの場合は月々約17万円、子どもと暮らす場合は月々約17万円~25万円の間の金額を目安として準備するのがよいといえます。
※参考:総務省「家計調査報告-2023年(令和5年)12月分、10~12月期平均及び2023年平均-」
離婚手続きに必要なお金
離婚の手続きを行う場合にもお金が必要となることがあります。離婚手続きごとにかかるお金は異なり、相場は下記の通りです。
離婚手続き | 手続きにかかる費用 |
---|---|
協議離婚 | 0円 |
調停離婚 | 約3,000円 |
裁判離婚 | 約20,000円 |
なお、上記の費用は、手続きにかかる費用のみで弁護士に支払う費用は含めていません。詳しくは次の通りです。
協議離婚|特にお金は必要ない
協議離婚とは、夫婦で話し合い、離婚や離婚条件について同意した上で、離婚届を市区町村の窓口に提出して離婚することです。離婚する夫婦の9割が協議離婚によって離婚しています。
離婚届を出すのに費用はかからないため、協議離婚では手続き上の費用が発生することはありません。協議離婚は、離婚手続き上、もっとも費用がかからない離婚方法といえます。離婚手続き上の費用を抑えたい場合は、協議離婚がよいといえるでしょう。
ただし、養育費の支払いや親権者の指定など合意した離婚条件について公正証書で残しておく場合もあるでしょう。公正証書は、特に金銭の支払いについて約束を破った場合に強制力を持って回収できるため、作成した方がよいといえます。
公正証書を作成する場合には、公証役場へ公証人手数料を支払う必要があります。公証人手数料の額は、養育費、財産分与など契約に記載する金額に応じて、下記の「公証人手数料算定表」に従って算定されます。
目的の価額 | 公証人手数料 |
---|---|
100万円以下のもの | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下のもの | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下のもの | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下のもの | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 43,000円 |
参考:日本公証人連合会「公証人手数料」
協議離婚の費用については、下記の記事も参考にしてください。
離婚調停|約3,000円
離婚の手続きとして離婚調停を行う場合には、離婚手続き費用として約3,000円かかります。
離婚調停とは、夫婦間の話し合いだけではまとまらない場合に、家庭裁判所に調停の申し立てを行って、話し合いを進めることです。実際の調停は、家庭裁判所で行われ、夫婦は別々の部屋で調停員が交互に話を聞くこととなります。
離婚調停では家庭裁判所に調停の申し立てを行う際に、下記の費用がかかります。
費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
収入印紙代(申立手数料) | 1,200円 |
郵便切手代(裁判所からの通知書の送料) | 1,000円前後 |
夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)の取り寄せ手数料 |
発行手数料(1通):450円 返送用切手代:110円~ |
申し立ての手数料として1,200円を収入印紙で納める必要があり、また、裁判所から各種通知を受け取るための送料を郵便切手で納める必要があります。送料は裁判所ごとに異なるため申し立て時に確認が必要です。大体1,000円前後です。
また申し立てに際して夫婦の戸籍謄本を提出する必要があるため、その取り寄せのための費用もかかります。戸籍謄本は1通当たりの発行手数料は450円ですが、郵送で取り寄せる場合には返送用の切手を同封する必要があります。
これらの費用を合計すると大体3,000円程度の手続き費用がかかるといえるでしょう。なお、調停を開くこと自体にはあまりお金はかからないものの、裁判と同様に時間的なコストはかかります。
離婚調停について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
離婚裁判|約20,000円
離婚手続きとして離婚裁判となった場合、手続き自体にかかる費用の目安は約20,000円です。
離婚裁判は、離婚の話し合いが調停でもまとまらなかった場合に取られる離婚の手続きです。
離婚裁判を行うためには裁判所に裁判の申立手数料と通知書などを送ってもらうための送料を納める必要があります。
費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
収入印紙代(申立手数料) | 13,000円~ |
郵便切手代(裁判所からの通知書などの送料) | 6,000円前後 |
離婚裁判の申立手数料は、基本は13,000円ですが、親権、財産分与などについても請求する場合は、印紙代(申立手数料)が加算されます。また、慰謝料について請求する場合は、請求金額に応じて印紙代(申立手数料)が上がります。
郵便切手代とは、裁判所から通知などの郵便物が送付されてくる際の送料のことです。以上を合わせると、離婚裁判の手続き費用としては最低でも20,000円はかかるといえます。
上記はあくまで手続き自体にかかる費用です。離婚裁判となると、実際には弁護士を立てることが多いため、別途弁護士費用がかかるといっていいでしょう。弁護士費用については、この後に詳しく解説します。
なお離婚裁判の費用については、下記記事も参考にしてください。
弁護士費用
離婚についての話し合いを進める場合、不利な条件で決着しないためにも、弁護士に依頼することが多いといえます。以下では弁護士費用について解説します。
弁護士費用も離婚手続きによって異なります。離婚手続きに別にかかる弁護士費用の目安をまとめると下記の通りです。
離婚手続き | 弁護士費用の相場 |
---|---|
協議離婚 | 30万~60万円程度 |
離婚調停 | 50万~100万円程度 |
離婚裁判 | 60万~100万円程度 |
上記の弁護士費用はあくまでも目安で、実際には、慰謝料や財産分与などで得た金額によって大きく変動します。また、弁護士の報酬は自由化されているため、弁護士事務所によっても異なります。
なお、上記の離婚手続き別の弁護士費用の相場は、それぞれの段階で弁護士費用を払う時の相場です。協議離婚で離婚成立できずに、離婚調停、離婚裁判と続けて弁護士を利用する場合には、それぞれの段階で上記相場の弁護士費用を支払うことになります。
詳しくは以下で解説します。
協議離婚の弁護士費用の相場|30万円から60万円程度
家庭裁判所を介さず、夫婦だけの話し合いで進める協議離婚において、弁護士に交渉を依頼すると30万円から60万円程度の弁護士費用がかかります。
協議離婚で弁護士に支払う費用の大まかな内訳は下記のようになります。
弁護士費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
相談料 | 0~1万円 |
着手金 | 10万~30万円 |
弁護士への成功報酬 |
20万~30万円 依頼人の得た経済的利益の10% |
弁護士に、最初に相談したときに相談料が発生します。相談料については無料で相談ができるケースも少なくありません。正式に依頼することになった場合には、着手金が発生します。着手金は、弁護士に依頼した結果、成功に終わるか失敗に終わるかにかかわらず、支払うこととなります。協議離婚の着手金の目安は10万~30万円です。
無事に離婚が成立するなど弁護士の交渉が成功に終わると、成功報酬として、依頼者が離婚によって得られた経済的利益の10%程度が支払われます。例えば慰謝料300万円を獲得した場合には、300万円の10%の30万円が成功報酬です。協議離婚の成功報酬の相場は20万~30万円ほどといわれています。
これ以外にも弁護士に支払う費用としては日当や実費が加算されます。日当は、現地調査など弁護士が事務所以外の場所で業務を行った場合に請求される費用で3万~5万円が相場です。実費は交渉のために弁護士が支払った交通費や宿泊費、郵送料、コピー代などの費用です。
上記の内訳をまとめると、協議離婚で弁護士に支払う弁護士費用の目安は30万円~60万円ほどといえます。相場に幅があるのは成功報酬の有無によって金額が大きく変わるからです。
また、現在は弁護士報酬が自由化されているため、相談料や着手金、日当、成功報酬の金額も弁護士事務所ごとに異なります。費用を抑えたい場合は、あらかじめ費用を見比べて検討するとよいでしょう。
協議離婚で弁護士に依頼する際の費用相場について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
離婚調停の弁護士費用の相場|50万円から100万円程度
夫婦だけの話し合いでまとまらず離婚調停に臨む場合に、弁護士に交渉を依頼すると50万円から100万円程度の弁護士費用がかかるといわれています。
離婚調停で弁護士に支払う費用の内訳は下記のようになります。
弁護士費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
相談料 | 0~1万円 |
着手金 | 20万~50万円 |
弁護士への成功報酬 |
20万~100万円 依頼人の得た経済的利益の10%~20% |
弁護士に依頼した場合、先述の協議離婚でも解説した通り、相談料、着手金、成功報酬がかかります。
着手金については、協議離婚よりも離婚調停の方が相場が少し高くなり、20万~50万円が目安です。ただし、協議離婚から弁護士に依頼していて、そのまま離婚調停に以降した場合は、離婚調停時の着手金が減額されることもあります。
離婚調停における成功報酬は、依頼者が離婚によって得られた経済的利益の10%~20%程が支払われます。協議離婚の場合と同じく、これ以外に日当・実費が加算されることもあります。
離婚調停のこれらの弁護士費用は合算すると、大体50万~100万円ほどとなるとされています。相場に幅があるのは協議離婚の場合と同様に成功報酬の有無によって金額が大きく変わるからです。
先述の通り、相談料や着手金、成功報酬などの金額は弁護士事務所ごとに異なるため、費用を抑えたい場合は、あらかじめ費用を見比べて検討するようにしましょう。
なお、離婚調停で弁護士に依頼する際の費用相場について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
離婚裁判の弁護士費用の相場|60万円から100万円程度
離婚調停でも離婚が成立せずに離婚裁判に至る場合の弁護士費用は、60万円から100万円が相場といわれています。
離婚裁判で弁護士に支払う費用の内訳は、下記の通りとなります。
弁護士費用の内訳 | 費用の目安 |
---|---|
相談料 | 0~1万円 |
着手金 | 20万~50万円 |
弁護士への成功報酬 |
20万~100万円 依頼人の得た経済利益の10%~20% |
弁護士に依頼した場合、相談料、着手金、成功報酬がかかるのは先述の協議離婚の場合や離婚調停の場合と同様です。
離婚裁判の弁護士費用の相場は離婚調停の場合と似た水準であるものの離婚調停が50万円~100万円であるのに対し、離婚裁判は60万円~100万円と少し高めになります。
なお、成功報酬について、慰謝料や財産分与といった金額のはっきりしたものについては経済的利益の10%~20%が相場ですが、離婚成立や親権獲得といった経済的利益といえないものはそれぞれ20万~30万円が相場となっています。成功内容が増えるとその分、成功報酬も加算されて増える計算です。
例えば、離婚成立で成功報酬30万円、親権獲得で成功報酬30万円、慰謝料300万円の獲得で成功報酬として60万円(300万円×20%)、合計120万円の成功報酬といった計算になります。
先述の通り、相談料や着手金、日当、成功報酬の金額も弁護士事務所ごとに異なるため、費用を抑えたい場合は、あらかじめ費用を見比べて検討するようにしましょう。
離婚裁判で弁護士に依頼する際の費用相場について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
今お金がなくても離婚問題を弁護士に相談するメリット
離婚に際してお金がない場合に、離婚問題を弁護士に相談すべきかどうか迷うこともあるでしょう。
しかし、離婚を考えている場合は、弁護士に相談することがおすすめです。なぜなら、弁護士に相談することで下記のようなメリットが得られ、自分で交渉するよりも結果として受け取るお金が大きくなる可能性があるからです。
- お金に関する助言を受けられる
- 相手との交渉を一任できる
- 離婚条件を抜けなく決められる
詳しくは次の通りです。
お金に関する助言を受けられる
弁護士に相談すると、お金に関する専門的な助言を受けられるメリットがあります。
先述した離婚時に受け取れる財産分与や慰謝料、養育費、年金分割について、より具体的に助言してもらうことが可能です。例えば慰謝料1つにしても、実際に慰謝料を請求することができるかどうかや、どのくらいの金額の請求ができるかなどは個々人の状況によって異なります。そうした個々人の状況に応じた助言をしてもらえます。
財産分与や養育費など、いくら請求できるかがわからないと、離婚後の生活を考えるのも難しくなるでしょう。その点、弁護士に相談すると離婚で得られるお金について具体的に考えられるため、不安を解消することができます。
また、受け取れるお金を確実に受け取るためにはどういった準備が必要かも助言してもらえるため、取り損ねることもないといえます。自分で請求するよりも着実にお金を請求できるでしょう。
相手との交渉を一任できる
弁護士に相談すると相手との離婚交渉を一任できるというのが大きなメリットです。
離婚に際しては、離婚そのものだけでなく親権や財産分与といった離婚の条件についてもさまざまに議論をしなければならなくなります。感情に振り回されずに根拠や論拠をもとに交渉を行わなければ、不利な結果に終わることも少なくありません。
大きな精神的負担、ストレスもかかる中で、難しい内容の交渉を進めていく必要があるため、専門の弁護士に依頼するのがよいといえるでしょう。さらに、特に離婚問題に強い弁護士に依頼すれば、有利な離婚条件を引き出してもらえる可能性が高くなります。
離婚を不本意な結果に終わらせないためにも、交渉は専門家に依頼することがおすすめです。
離婚条件を抜けなく決められる
離婚条件について抜けなく決められる点も、離婚交渉を弁護士に依頼するメリットです。
離婚する際には、慰謝料や財産分与といったお金の問題以外にも、親権の指定や面会交流の内容など決めなければならないことは多岐にわたるといえるでしょう。あらかじめこうした離婚条件をしっかりと話し合って合意しておかないと、離婚してからトラブルになることも少なくありません。
離婚問題に詳しい弁護士であれば、今までの経験や実績から、漏れなく離婚条件を取りまとめることも可能です。プロでないと見落としがちな点についても抜けなくフォローしてもらえます。離婚後も安心して生活するためにも、弁護士の活用がおすすめです。
離婚に必要な費用を抑える方法
離婚時に受け取れるお金や離婚の際に必要となるお金についてお伝えしました。最後にこれらのことを踏まえて離婚に必要な出費を抑える方法について紹介します。
具体的には次のような方法が挙げられます。
- 協議離婚で離婚する
- 弁護士の無料相談を活用する
- 法テラスを利用する
詳しくは次の通りです。
協議離婚で離婚する
離婚に必要な費用を抑えるには協議離婚で離婚するのがよいといえます。
先述の通り、協議離婚とは夫婦の話し合いだけで離婚をすることです。話し合いだけで離婚ができれば、手続きに費用は特に発生しません。弁護士に依頼することなくすめば、弁護士費用も発生することなく離婚が可能です。
仮に弁護士に依頼をしたとしても、先にお伝えした通り、協議離婚の場合は、調停離婚や裁判離婚よりも弁護士費用の相場は低いため、もっとも費用をかけずに離婚ができるでしょう。
弁護士の無料相談を活用する
弁護士に相談したい場合は、無料相談を行っている弁護士を活用すると費用を抑えることができます。
弁護士に相談する場合、一般的には相談料無料となるケースが多く、有料の場合は30~60分で5,000円~1万円ほどとなるケースが多いといえます。
こうした無料相談を活用することで、とりあえず疑問や不安に思っていることを解消できることもあるため、活用してみることがおすすめです。
無料相談では、多くの場合、相談時間が30分など時間が限られているため、あらかじめ相談したい内容をまとめ、優先順位をつけるなどしておくと効率的に相談ができます。
法テラスを利用する
法テラスを利用することで、離婚の費用を抑えることも可能です。
法テラスとは国が設立した法的トラブルを解決するための総合案内所です。法テラスに問い合わせると、お困りごとに応じて、問題解決のための法制度や手続き、適切な相談窓口を無料で案内してもらえます。また、一定の要件を満たせば、無料法律相談や弁護士・司法書士費用などの立替えを利用することも可能です。
法テラスの利用料金などは下記の通りです。
内訳 | 利用料金 |
---|---|
相談料 |
同一案件につき3回まで無料 相談時間は1回30分 |
着手金 | 110,000円 |
日当 | 法テラスが負担 |
実費 | 20,000円 |
報酬 | 標準額86,400円 |
参考:法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」
なお、法テラスの無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立て替えを利用する際には、下記の条件を満たす必要があります。
- 収入と資産が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること(利用目的が感情的な報復や宣伝などではないこと)
無料法律相談を受けられるのは(1)(3)の条件を満たす人です。また、弁護士・司法書士費用などの立替制度を利用できるのは(1)(2)(3)すべての条件を満たす必要があります。
法テラスの無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立て替えといった代理援助は、経済的に余裕がない人を対象にした制度です。そのため、一定以上の収入と資産がある場合には、制度を利用できません。
収入と資産の基準は家族人数やお住まいの地域などによって異なるため、利用に際しては法テラスに確認するようにしましょう。
法テラスの利用については、下記の記事も参考にしてください。
まとめ
離婚したいけどお金がない場合に知っておくべき、下記ポイントについて解説しました。
離婚したいけどお金がない場合は、次の対策をとることで、離婚前後に一定の資金を確保することができます。
- 別居している場合は、配偶者に婚姻費用を請求する
- 離婚時に受け取れるお金(財産分与、慰謝料など)を活用する
- 離婚後に自治体から受けられる公的支援を受ける
- 専業主婦(夫)で貯金がない場合は就職する
また、離婚に際しては次のような出費が考えられるため、あらかじめ把握しておきましょう。
- 別居するための引越し費用
- 離婚後の生活費
- 離婚手続きに必要なお金
- 弁護士費用
さらに離婚費用を抑えるためには下記のような対策を取るのがよいといえます。
- 協議離婚で離婚する
- 弁護士の無料相談を活用する
- 法テラスを利用する
お金がない中で離婚に失敗しないためにも、無料相談や法テラスなどをうまく活用して弁護士に相談することがおすすめです。
離婚したいけどお金がない場合によくある質問
お金が貯まってから離婚すべきでしょうか?
- 離婚の決断が鈍り行動を起こすのがおっくうになる
- 配偶者との生活が長期間に及びストレスとなることもある
- 離婚後働こうと思っていても年を重ねた分、希望の職種につけないことがある
離婚を先送りすると、上記のようにますます離婚がしにくい状況となることもあります。そのため、一度、離婚に詳しい弁護士の無料相談を受けるなど、専門家の客観的なアドバイスを受けることをおすすめします。