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2025年06月現在

離婚調停とは?メリットやデメリット・申し立てるべきケースや流れを解説

離婚調停

離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員(および裁判官)を交えて、離婚の成立や条件について話し合い、当事者の合意による解決を目指す手続きです。協議離婚が成立しない場合に申し立てられ、財産分与や親権、養育費などの離婚条件について第三者を交えた冷静な話し合いを行う場として利用されます。

離婚調停には下記のようなメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
・配偶者に直接会わずに話し合える
・裁判と比べて離婚条件の自由度が高く、柔軟な解決が望める
・親権争いがある場合は、調査官調査を行って専門家の意見を参考にすることもある
・裁判所の調査嘱託で相手の財産を調査できる
・強制執行を可能とする離婚調書を得られる

・長期化してお金や時間がかかる可能性がある
・平日の日中に家庭裁判所に出頭する必要がある

裁判所を介す離婚調停だからこそ得られるメリットが多く、配偶者が話し合いに応じない場合や、夫婦だけの協議では離婚条件がまとまらない場合、DVやモラハラが起きている場合などには、離婚調停が有効な解決策となる場合があります。

なお、離婚調停にかかる主な費用は、申立手続きの費用(3,000円程度)、弁護士費用(50~100万円程度)の2つに分けられます。弁護士なしで調停を行うことも可能ですが、財産分与や慰謝料請求、親権や養育費の獲得といった希望する離婚条件を叶えるためには、弁護士のサポートがあった方が安心です。また、離婚を有利に進めるアドバイスをもらえる他、調停に同席してもらうことも可能です。

本記事では、離婚調停の概要やメリット・デメリット、離婚調停を利用すべきケースなどを解説します。調停の流れや費用、必要期間の他、調停の成立・不成立といった具体例、調停をスムーズに進めるポイントや注意点なども解説していきます。

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南陽輔 弁護士
監修
一歩法律事務所
南 陽輔(弁護士)

離婚調停とは仲介(調停委員会)を入れて離婚について話し合うこと

離婚調停とは、離婚やそれに関連する諸問題について、家庭裁判所で第三者を交えて話し合う手続きです。離婚そのものだけでなく、慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・年金分割など、幅広い項目について話し合いが行われます。

調停は、当事者間の協議だけでは合意が難しい場合や、そもそも冷静な話し合いが困難な状況で利用されます。こうした場合、夫婦のどちらかが家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚調停)」を申し立てることで、正式に手続きが始まります。

調停は「調停委員会」によって進行されます。通常、家庭裁判官1名と男女各1名の調停委員2名以上で構成され、中立の立場から両者の意見を聞き、合意に向けて話し合いをサポートします。

調停で双方が合意すれば、調停成立として法的効力を持つ「調停調書」が作成されます。一方、話し合いで合意に至らなかった場合には調停は不成立となり、離婚訴訟(裁判)を行うか検討することになります。

なお、調停とは裁判所の手続きではあるものの、当事者同士の意思の尊重を重視する傾向があるため、夫婦間で納得できるのであれば離婚条件はある程度自由に決めることが可能です。

離婚調停が成立する割合は約50%

令和2年度の家庭裁判所の司法統計によると、離婚調停の申し立てに対し、調停が成立する割合は約50%にのぼるという結果が出ています。

このうち、約35%は「調停離婚」または「協議離婚届出」により実際に離婚に合意しており、約14%は婚姻の継続に合意しています。

また、「調停に代わる審判(約6%)」は調停が不成立となった場合に、家庭裁判所が職権で離婚を認める審判を下す制度であるため、実質的には離婚が成立したケースとしてカウントできます。

不成立となった割合は約16%にとどまっており、調停取り下げの約21%を含めても、調停を経た結果として離婚に至る割合は決して低くなく、むしろ比較的高めであるといえるでしょう。

離婚調停申し立て総数 58,969件
調停成立 29,646件(約50%)
■内訳
調停離婚:20,516件(約34%)
協議離婚届出:268件(約0.4%)
婚姻継続(別居):8,182件(約13%)
婚姻継続(同居):680件(約1%)
調停不成立 9,998件(約16%)
調停取り下げ 12,720件(約21%)
調停に代わる審判 3,544件(約6%)

参照:裁判所「司法統計 家事令和2年度 婚姻関係事件数―終局区分別」

離婚調停を行うメリット

離婚調停は、夫婦間の話し合いが難しい場合に、家庭裁判所を介して問題解決を目指す手続きです。離婚調停には、主に下記のようなメリットがあります。

  • 配偶者に直接会わずに話し合える
  • 裁判と比べて離婚条件の自由度が高く、柔軟な解決が望める
  • 親権争いがある場合は、調査官調査を行って専門家の意見を参考にすることもある
  • 裁判所の調査嘱託で相手の財産を調査できる
  • 強制執行を可能とする離婚調書を得られる

それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

配偶者に直接会わずに話し合える

離婚調停の大きなメリットの1つが、相手と直接顔を合わせずに話し合いを進められる点です。

調停では、裁判所に設置された「調停委員会」が、夫婦それぞれの主張を丁寧に聞き取ったうえで、間に立って話し合いを仲介してくれます。夫婦が直接顔を合わせないよう配慮されており、通常は別々の待合室で待機し、交互に調停室に入って調停委員と話し合いを行います。調停委員は中立的な第三者として、話し合いの進行役・調整役を担い、争点の整理や意見のすり合わせ、必要に応じて説得なども行います。

協議離婚のように、夫婦が当事者同士で直接話し合う場合、感情が先立ち、口論に発展したり、話し合いが決裂してしまったりすることも珍しくありません。その点、調停では第三者を介すことで冷静な判断がしやすくなり、結果としてスムーズに離婚が成立する可能性が高まります。

また、DVやモラルハラスメントがあるケースでも、相手と直接顔を合わせずに調停を進められるため、安心して話し合いが可能です。調停委員が間に入ることで、精神的な負担を軽減し、より対等な立場での協議が望めます。

裁判と比べて離婚条件の自由度が高く、柔軟な解決が望める

離婚条件を柔軟かつ自由に決められるのも、離婚調停メリットです。

離婚調停では、当事者たちの主張を尊重することに重きが置かれています。また、調停委員会に仲介してもらっているものの、基本的には話し合いによって離婚の可否や条件などが決定されます。そのため、当事者が納得すれば、裁判では通らないような内容でも合意可能です。

たとえば、一定の解決金を取り決める、財産分与を1:1ではなく自由な割合で決める、面会交流の頻度や方法を柔軟に設定する、など多様な取り決めが可能です。

また、調停では離婚だけでなく、慰謝料・財産分与・養育費・親権・年金分割といった関連するすべての条件を一括して話し合うのが一般的です。

協議離婚では親権の指定以外は法的な取り決めがなくても離婚が成立してしまうため、重要な条件が後回しになったり、取り決め自体が曖昧になったりするケースもみられます。その点、離婚調停では必要な取り決めを漏れなく整えやすく、離婚後のトラブル防止につながります。

親権争いがある場合は、調査官調査を行って専門家の意見を参考にすることもある

親権をめぐる争いは、当事者のみの話し合いでは感情的になりやすく、解決が難しい場合もあります。

一方、調停では第三者が介入するため、冷静な話し合いを進めやすくなります。さらに、裁判官の判断で、心理学や社会学などの専門知識を持つ調査官による「調査官調査」が実施されることもあり、子どもの利益を最優先にした現実的な解決が図られやすくなります。

調査官は、親や子どもとの面談、家庭訪問などを通じて、養育環境や親子関係の状況を中立的かつ専門的な視点から調査し、報告書として裁判官に提出します。裁判官は、この調査報告書や調査官の意見を参考に、子どもにとって最善の環境を判断します。

なお、調査官調査は当事者の希望によって行われるものではなく、裁判官が必要と判断した場合に実施されます。

たとえば、親権や監護権の決定が子どもの生活に大きな影響を与える場合や、当事者の主張だけでは事実関係が不明確で、裁判所が判断に迷っている場合などに行われます。また、子どもが10歳以上の場合は本人の意向が重視される傾向にあるため、子どもの意思確認のために調査が行われることもあります。

裁判所の調査嘱託で相手の財産を調査できる

離婚時には、養育費や財産分与をめぐって金銭的な争いが生じるケースも珍しくありません。適切な条件を取り決めるためには、互いの収入や保有財産の内容を正確に把握することが重要です。

離婚調停では、そうした情報を得る手段の一つとして、家庭裁判所の判断に基づき「調査嘱託」という制度を利用できます。たとえば、相手が開示を拒んでいる銀行口座の取引履歴や預貯金の残高を、裁判所が銀行に照会することが可能です。

ただし、調査嘱託は、裁判所が「必要性がある」と判断した場合に限り実施されます。また、調査の対象となる口座を特定するためには、どの銀行の、どの支店にある預金か(銀行名・支店名)といった具体的な情報が必要です。

すべての財産の把握は難しくても、相手が財産を隠している疑いがある場合には、調査嘱託を通じて状況を明らかにでき、より公平・適正な財産分与の決定に役立つでしょう。

強制執行を可能とする離婚調書を得られる

離婚調停で合意が成立すると、「調停調書」という文書が裁判所によって作成されます。

調停調書があれば、いざという時に強制執行を行うことが可能です。たとえば、調停で取り決めた慰謝料や財産分与、養育費の支払いに相手が応じなかった場合、調停調書をもとに相手の財産や給与の差し押さえを申し立てることが可能です。

離婚後の「支払われない不安」に備えたい方にとって、離婚調停は安心感のある制度と言えるでしょう。

離婚調停を行うデメリット

一方、離婚調停には以下のようなデメリットもあります。

  • 長期化してお金や時間がかかる可能性がある
  • 平日の日中に家庭裁判所に出頭する必要がある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

長期化してお金や時間がかかる可能性がある

離婚調停は、時間や費用の面で負担が生じる可能性があります。調停は、当事者双方が合意に至らなければ成立しません。そのため、一方が解決案に納得しない場合や、双方の主張が平行線をたどるような場合には、話し合いが長引き、調停が長期化するリスクがあります。

離婚調停が長引けば、家庭裁判所に何度も出向く必要があるため、仕事のスケジュール調整や交通費の負担など、日常生活にも影響が出る可能性があります。

なお、離婚調停が成立するまでの期間は、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度とされています。ただし、話し合いが難航するような場合には、1年以上かかるケースもあります。

また、「離婚調停にかかる主な費用」で詳しく解説しますが、離婚調停では申立手続きに3,000円程度、弁護士費用に50~100万円程度の費用が発生します。長期化することで弁護士費用がかさむこともあるため、お金と時間のリスクについてはあらかじめ把握しておきましょう。

平日の日中に家庭裁判所に出頭する必要がある

調停は裁判所の手続きであるため、原則として土日祝日や夜間には対応しておらず、調停期日は平日の開庁時間内(通常は午前9時から午後5時)に設定されます。そのため、会社勤めなどで平日日中に時間が取りにくい方にとっては、仕事の都合をつけて休みを取る必要があり、精神的・時間的な負担となることがあります。

また、調停は1回で終わることはまれで、2回、3回と複数回にわたって出頭が求められることが一般的です。そのため、調停のたびにスケジュールの調整や職場への配慮が必要となります。

離婚調停の申し立てを検討すべきケース

離婚調停を行うべきか迷う方もいるかもしれません。以下のような状況に当てはまる場合は、離婚調停の申し立てを前向きに検討してみると良いでしょう。

  • 配偶者が話し合いに応じない場合
  • 夫婦の話し合いで離婚条件がまとまらない場合
  • DVやモラハラが起きている場合

各ケースについて詳しく解説していきます。

配偶者が話し合いに応じない場合

離婚を切り出しても、相手が話し合い自体を拒んでいるような場合は、協議離婚を進めることが難しくなります。そんなときは、家庭裁判所を通じて話し合いを行う離婚調停の申し立てを検討してみましょう。

調停が始まれば、裁判所から相手に出頭を求める通知が届くため、一方的に話し合いを拒否され続ける状況を打開できる可能性があります。早めに調停に進むことで、離婚成立までの時間も短縮されるでしょう。

夫婦の話し合いで離婚条件がまとまらない場合

養育費や慰謝料、財産分与といった離婚条件で意見が対立している場合も、離婚調停が有効です。調停では、調停委員が第三者として間に入り、それぞれの主張を整理しながら合意形成をサポートしてくれます。

ただし、調停に進んだ場合、裁判の判例に基づいた現実的な落としどころが提示されることもあり、希望の離婚条件にまとまらない可能性があります。協議離婚での離婚成立を目指した方が良いケースも存在するため、事前に弁護士に相談しながら進めるのが良いでしょう。

DVやモラハラが起きている場合

暴力や暴言など、相手と安全に話し合うことが難しい場合は、離婚調停の利用を検討しましょう。調停では、原則として配偶者と顔を合わせずに済みます。調停委員が双方から個別に話を聞いてくれるため、精神的にも安心して進めやすいでしょう。

ただし、DVの程度が深刻な場合は、離婚調停の前に身の安全を確保する措置が必要です。保護命令や警察への相談など、適切な支援を受けながら、調停を含めた今後の対応を検討しましょう。

離婚調停に入る前に検討すべき他の手続き

下記のような状況に当てはまる場合は、離婚調停を行う前に、他の手段を検討する必要があります。状況に応じて適切な対応を選ぶことが重要です。

  • 弁護士が交渉に入る場合はまず「協議離婚」を試みる
  • 子どもを連れ去られた場合は「監護者指定・子の引き渡しの審判」の申し立てを行う
  • 相手が行方不明の場合は「離婚裁判」を検討する
  • 深刻なDVがある場合は「保護命令」の申し立てを行う

各ケースについて詳しく解説していきます。

弁護士が交渉に入る場合はまず「協議離婚」を試みる

弁護士に交渉を依頼するのであれば、まずは協議離婚での解決を目指すのが一般的です。当事者同士では感情的になって話し合いが難しい場合でも、弁護士が交渉に入ることで冷静なやり取りが可能となり、調停まで進まずに協議離婚で解決できるケースもあります。

協議離婚で解決できれば、調停に比べて時間的・経済的な負担を抑えられます。離婚問題がこじれそうなときは、早期解決を図るためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談しておくと安心です。

子どもを連れ去られた場合は「監護者指定・子の引き渡しの審判」の申し立てを行う

子どもの親権取得を希望しているにもかかわらず、一方的に子どもを連れ去られた場合は、離婚調停に入る前に「子の監護者指定・引き渡しの審判」を家庭裁判所に申し立てましょう。

「監護者指定・子の引き渡しの審判」とは、裁判所がどちらを監護者とするのが適切か、また子どもを引き渡すべきかを判断する法的手続きです。子どもの住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは当事者間で合意した家庭裁判所に申し立てすることで手続きを進められます。当事者間の争いの程度にもよりますが、およそ半年程度の期間で審判が確定します。

一方、離婚調停はあくまでも当事者同士の話し合いによって合意を目指す手続きです。子どもを一方的に連れ去った相手が自発的に子どもを返す可能性は低く、話し合い自体が形骸化してしまうおそれもあります。

そのため、離婚調停を始める前に、まずは現状の監護関係を法的に整理し、子どもの安全と福祉を確保することが最優先となります。

相手が行方不明の場合は「離婚裁判」を検討する

配偶者の所在が分からず困っている場合は、調停ではなく、離婚裁判を早期に検討しましょう。

通常は「調停前置主義」にならい、調停での解決を目指し、調停が不成立になった際に裁判に進むのが一般的です。しかし、配偶者が行方不明になっている場合、離婚調停を申し立てても調停は成立しません。離婚調停はあくまで当事者双方が出席し、話し合いを行うことが前提となるため、相手が不在では手続き自体が進行できず、不成立に終わってしまいます。

そのため、配偶者が行方不明である場合は、例外的に調停を経ずに離婚裁判へ進むことが認められています。裁判では、民法で定められた法定離婚事由があるかどうかが審理され、「3年以上の生死不明」「悪意の遺棄」「婚姻を継続し難い重大な事由」などが認められれば、離婚が成立します。

深刻なDVがある場合は「保護命令」の申し立てを行う

身体的・精神的なDVが深刻な場合、まずは自身や子どもの身を守ることが最優先です。離婚調停よりも先に「保護命令」の申し立てを行いましょう。

保護命令とは、DVの被害者の申し立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないことを命じる命令です。配偶者暴力相談支援センター、もしくは警察への相談を経て、管轄の裁判所に申し立てすることで手続きができます。申し立てから保護命令の決定までの期間は、およそ2週間程度です。

保護命令を後回しにすると、自宅から別の場所に避難していたとしても、家庭裁判所で待ち伏せされたり、避難先を突き止められたりして、暴力を振るわれるリスクもあります。そのため、調停前に保護命令の申し立てを行いましょう。

保護命令が認められると、加害者に対して接近禁止や自宅退去命令などを発令できるため、身の安全を確保できます。状況によっては、シェルターの利用や警察への相談も視野に入れ、早急な対応を行いましょう。

離婚調停の大まかな流れ

ここでは、離婚調停の大まかな流れについて解説します。具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 家庭裁判所への申し立て
  2. 1回目の調停
  3. 2回目以降の調停
  4. 調停終了

それぞれ詳しく解説します。

1.家庭裁判所への申し立て

まずは離婚調停を家庭裁判所へ申し立てます。

原則、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行いますが、夫婦間で合意している場合は、異なる家庭裁判所への申し立ても可能です。

申立書を裁判所が受理した場合、裁判所と申立人が第1回の調停の日時を決定します。第1回の調停の日時が決定したら、相手方に対して、調停期日通知書と申立書のコピーが送付され、申し立てに対する答弁書を提出するよう求められます。

答弁書とは、申立書の内容を踏まえて反論を記載する書類のことです。

答弁書を提出せずに放置した場合、申立書の内容を全面的に認めたと調停員に受け取られるリスクがあります。

申し立てに必要な書類

離婚調停の申し立てに必要な書類は下記のとおりです。

  • 申立書
  • 事情説明書,お子さんについての事情説明書
  • 連絡先等の届出書
  • 進行に関する照会回答書
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 年金分割のための情報通知書

申立書は相手方に送付するため、裁判所提出分のほかに、相手方用のコピー1通が必要となります。

参照:裁判所「離婚調停を申し立てる方へ」

離婚条件に応じて必要な書類

離婚に伴い、財産分与や養育費、慰謝料請求などがある場合は、下記のような書類も準備しておきましょう。調停委員が夫婦の現状を把握する材料となり、自分の主張に信ぴょう性をもたせるのにも役立ちます。

財産分与がある場合 夫婦の財産を証明する資料
例)
・通帳の写し
・不動産登記事項証明書
・固定資産評価額証明書 など
養育費の請求がある場合 配偶者の収入を証明する資料
例)
・給与明細
・源泉徴収票
・確定申告書
・非課税証明書 など
慰謝料の請求がある場合 不貞行為やDV、モラハラの証拠
例)
・配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りする写真や動画
・暴力を受けたことがわかる写真や診断書
・モラハラ発言の録音 など

2.一回目の調停

離婚調停の申し立てが受理されたら、1回目の調停に入ります。

1回目の調停の日時は、申し立てが受理されてからおよそ1~2ヶ月後となるのが一般的です。

調停当日は指定時間に遅れないよう家庭裁判所を訪問します。ただし、調停前に受付が必要になるため、指定時刻の15分前までには到着しておきたいところです。

なお、平成25年に施行された家事手続法によって、夫婦双方が立ち会うケースが増える調停運用となっています。

それぞれの調停期日の始めと終わりに、夫婦とも調停室に入室し、調停員立ち合いのうえで調停に関する手続きや次回の調停までにそれぞれがまとめておくべき課題について説明されます。

ただし、相手方との対面を避けたい場合は、理由を説明すれば同席を避けられますので安心してください。

当日準備しておくもの

離婚調停の期日当日には持参が必要なものがあります。具体的な持参物は以下のとおりです。

  • 調停期日通知書
  • 印鑑(認印でもOK)
  • 運転免許証やパスポートなどの身分証明書

また、上記以外にも状況によって調停に持参・提出した方が良いものがあります。例えば、以下のようなものです。

置かれている状況 持参するべきもの
離婚の是非について争う場合 離婚の原因を立証する証拠や資料
親権について争う場合 これまでの監護状況や監護実績を立証する証拠や資料
面会交流について争う場合 面会交流の必要性もしくは交流を制限するべき理由を証明する証拠や資料
相手方に養育費・婚姻費用を請求する場合 確定申告書などの年収の証拠や資料
相手方に財産分与を請求する場合 財産目録など財産の内容を証明する証拠や資料
相手方に慰謝料を請求する場合 不貞行為を客観的に立証する証拠や資料
相手方に年金分割を請求する場合 年金分割に関する情報通知書

状況に応じた具体的な持参物や準備物については、離婚問題に詳しい弁護士に事前に相談することをおすすめします。

調停室での話し合い

離婚調停が始まるまでは待合室で待機します。また、受付で直接調停室に向かい、定刻に調停委員に向かうよう指示されるケースもあります。

調停員に呼ばれたら調停室に入室し、はじめに離婚調停についての説明を受けます。
説明が終わった後は、離婚調停を申し立てるまでの経緯、離婚したい理由、求める離婚条件など、調停委員からの質問に答えます。30分程度やりとりを行い、質問が終了したら、一旦待合室に戻って待機します。

退室後は相手方が調停室に呼ばれ、同じように説明・質問が行われます。
その後、調停委員からお互いに主張を踏まえて解決策を提示し、お互いが内容に合意できた場合、調停は成立となります。
合意に至らない場合は、次回(第2回目)の調停期日が設定され、その日は終了です。1回の調停期日は2時間程度、長くても3時間程度で終了するのが一般的です。話し合う内容や争う項目の多さによって、時間は変動すると考えておきましょう。

3.二回目以降の調停

2回目の調停期日は、1回目のおおよそ1ヶ月~1ヶ月半後となるのが一般的です。

一般的に、1回目の調停で離婚成立となることはほとんどありません。2回以上の調停を経て離婚が成立する場合が多いですが、弁護士に対応を依頼する場合、少ない調停回数で離婚調停が成立する場合があります。

2回目の調停の進行は、1回目とほぼ同じです。ただし、1回目の調停を踏まえて、当事者に必要な証拠や資料の準備をするよう指示されるケースがあります。

4.調停終了

調停が終了するのは、以下のケースです。

  • 調停が成立して終了した場合
  • 調停が不成立で終了した場合
  • 調停が取り下げられて終了した場合

それぞれのケースについて詳しく解説します。

「離婚調停が成立したらどうなるの?」「不成立になったり取り下げられたりしたらどうなるの?」という疑問がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

調停が成立して終了した場合

調停でお互いに主張した上で、調停委員会から提示される解決案に対して当事者同士で合意に至れば、調停は終了となります。
合意内容に対して家庭裁判所は調停調書を作成します。

調停調書は裁判での判決と同等の法的な効力があります。相手方が養育費、慰謝料や財産分与など調書の内容に従わなければ、強制執行によって相手方の財産を差し押さえることが可能です。

調停が終了するまでには、平均して3~5回程度の話し合いで内容が取りまとめられるケースが多いといえます。

理解しておきたいのが、調停調書の内容を後から変更できないということです。
そのため、調停が成立する際に読み上げられる調停案の内容に、不足や不備がないか十分に確認しなければなりません。

なお、調停案を読み上げた後に、裁判官から内容に問題ないか聞かれるため、少しでも理解できない部分があれば確認し、必要であれば修正を求めましょう。
修正がない場合、調停案は成立となり、調停調書が作成されます。

調停の成立日から10日以内に本籍地もしくは届出人の住所地の市区町村役場に調停調書と離婚届を提出すれば、離婚は成立します。

調停が不成立で終了した場合

調停によって離婚や条件の合意が得られなかったり、相手方が調停に参加しなかったりした場合は、調停は不成立となり終了します。
特に相手方が離婚を拒絶している場合や、親権者の指定について合意できない場合、財産分与などの法的問題が合意できない場合は、調停が不成立となるのが一般的です。

なお、離婚自体や離婚調停で解決できる法的な問題のみを調停成立として、同時に解決できないものに関しては調停手続きから除外することが可能です。
これは家事事件手続法という法律での「手続の分離」と呼ばれるもので、裁判所の調停委員会の裁量によって判断され、当事者の了承が得られた場合に分離が行われます。

なお、分離された法的な問題は、当事者にどちらか一方が再度調停の申し立てを行います。

参考:家事事件手続法第260条1項4号・35条1項|e-GOV法令検索

調停が不成立になった場合、その事実は覆ることはありません。その後は協議離婚や離婚裁判のいずれかに進むことになります。

なお、離婚に関する主な項目は合意に至っており、離婚を選択することが当事者双方のために場合は、裁判所の職権で離婚の審判を下す審判離婚となるケースがあります。

ただし、審判離婚となるのはレアケースと考えておきましょう。

調停が取り下げられて終了した場合

調停の申立人は、調停の途中で調停を取り下げることが可能です。なお、調停の取り下げには明確な理由の表明や、相手方の了承を得る必要はありません。
調停が取り下げとなるのは、以下のような場合です。

  • 調停以外で夫婦同士が協議して離婚に合意した場合
  • 夫婦関係の修復に至り離婚調停が不要になった場合

ちなみに、調停を取り下げた後にもう一度調停を申し立てることは可能です。しかし、取り下げてからすぐに再度申し立てを行うと、裁判所が不当な申し立てと判断し、調停が認められないケースがあります。
そのため、調停の取り下げに関しては、慎重な判断が必要です。

離婚調停に必要な期間の目安は3~6ヶ月

離婚調停は、状況や話し合う項目の多さによって時間が変動しますが、短い場合で2~3ヶ月程度、平均的には4~6ヶ月程度になるのが一般的です。

ただし、争点が多い場合や双方の主張が平行線を辿る場合などは調停が長引き、1年以上かかるケースもあります。

また、調停期日は平均して2回~4回程度になると考えておきましょう。

離婚調停にかかる主な費用

離婚調停にかかる費用は、以下の2つに大きく分けられます。

  • 申立手続きにかかる費用相場|3000円程度
  • 弁護士に依頼する場合の費用相場|50~100万円程度

それぞれの費用相場について詳しく解説します。

申立手続きにかかる費用相場|3000円程度

離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てを行い、申し立てる側が費用を負担するのが一般的です。

申立手続きにかかる費用の相場は以下の通りです。

  • 離婚調停申立手数料:1,200円
  • 切手代:1,000円程度(家庭裁判所によって異なる)
  • 夫婦の戸籍謄本取得費用:450円
  • 住民票取得費用:200~300円程度

あらかじめ「手続きにはこれくらいの金額がかかる」ということを認識しておくと「突然の出費にモヤモヤする」という心理的なストレスを減らせるでしょう。

弁護士に依頼する場合の費用相場|50~100万円程度

離婚調停は当事者のみで行うことも可能ですが、弁護士を代理人として立てることもできます。

弁護士費用は、弁護士事務所や調停期日の回数などによって異なるものの、50万円~100万円程度が相場です。

弁護士費用の簡単な内訳は以下の通り。

  • 相談料:5,000円~1万円程度
  • 着手金:20万円~50万円程度
  • 報酬金:30万円~100万円程度(獲得できた経済的利益の10~20%程度)
  • 日当・その他実費:3万円~5万円程度

弁護士に依頼すると、費用面で負担になるというデメリットがありますが、必要な手続きを委任できたり、調停への同席を依頼できるため、精神的な負担や手間を軽減できます。

また、法律の専門家であり、交渉や主張に長けている弁護士に対応を依頼するとで、スムーズな離婚や有利な条件での離婚を目指すこともできるので、離婚調停に関する疑問が不安が多い場合は弁護士に依頼すると安心でしょう。

離婚調停にかかる費用に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、費用面に関する疑問が多いという方は、ぜひ参考にしてみてください。

離婚調停の具体例と弁護士費用の目安

離婚調停で発生する弁護士費用は、夫婦間の対立の程度や争点によって大きく変わります。財産分与や慰謝料、養育費などの争点が多いほど、その分、弁護士への成功報酬が発生します。

ここでは調停が成立したケース、不成立になったケース、長期化したケースの紹介と、それぞれの弁護士費用の内訳を紹介します。

調停が成立したケース|財産分与や養育費を円満に決定できた事例

親権争いはないものの、養育費や財産分与の金額に折り合いがつかず、妻側から調停を申し立てたケースです。弁護士に依頼し、調停委員を交えて冷静な話し合いを重ねた結果、夫側は財産分与200万円、養育費として月5万円を支払うことで合意しました。

費用の目安:申立費用 + 弁護士費用(総額約103万円)

費用の内訳は下記のとおりです。

着手金(調停):40万円
離婚成立の成功報酬:30万円
財産分与の成功報酬(200万円の10%):20万円
養育費の成功報酬(5万円×24ヶ月×10%):12万円
申立費用・実費等:1万円

合計:約103万円

財産分与や養育費の成功報酬がある分、弁護士費用が高額になっていますが、獲得した金額も大きくなっています。

調停が不成立になったケース|話し合いが決裂し裁判に移行した事例

専業主婦の妻が、夫の不貞行為を理由に離婚を請求しました。調停では、夫が離婚や慰謝料の支払いを拒否し、合意に至らず不成立になりました。裁判へ移行し、離婚の成立が認められ、さらに妻が慰謝料100万円と財産分与200万円を獲得しました。

費用の目安:調停後に裁判へ移行(総額約111万円)

費用の内訳は下記のとおりです。

着手金(調停+裁判):50万円
離婚成立の成功報酬:30万円
慰謝料の成功報酬(100万円の10%):10万円
親権獲得報酬:20万円
申立費用・実費等:1万円

合計:約111万円

裁判に移行した分の費用はあるものの、最終的に慰謝料と財産分与の獲得ができたため、約200万円のプラスとなっています。

調停が長期化したケース|親権争いが激化し、調停が長引いた事例

子どもの親権を巡って夫婦が激しく対立した事例です。双方、世間体を気にして裁判には進まない方向かつ夫側が調停で親権を譲らなかったため、複数回にわたり1年超の長期調停となりました。結果的に、財産分与をなしにすることで、妻が親権と月6万円の養育費を獲得しました。

費用の目安:長期化による弁護士費用の増加(総額約125万円)

費用の内訳は下記のとおりです。

着手金(調停):40万円
離婚成立の成功報酬:30万円
親権獲得報酬:20万円
養育費の成功報酬(6万円×24ヶ月×10%):14万4,000円円
申立費用・実費・時間加算等:20万円

合計:約125万円

長期化により調停の回数が増えた分、弁護士の日当や時間加算が追加され、総費用が膨らみました。

離婚調停で調停委員から聞かれること

離婚調停は調停委員会に仲介してもらいながら、離婚について協議します。そのため、調停委員はお互いの事情や主張を知るために、さまざまな質問を行います。

では、いったいどのようなことを聞かれるのでしょうか。具体的には以下のような質問を受けると考えておきましょう。

  • 出会いから結婚までの経緯
  • 離婚したい理由
  • 現在の状況
  • 夫婦関係が元に戻る可能性
  • 子どもに関する質問
  • 養育費や財産分与、慰謝料について

それぞれ詳しく解説します。

出会いから結婚までの経緯

離婚調停では、お互いの出会いから結婚に至るまでの経緯を聞かれます。
離婚調停に至った理由を把握するためです。

質問に対しては、どのようにして2人が出会い、結婚から離婚にまで発展したのかを説明すれば問題ありません。

逆に、離婚調停に関係ないような思い出話を喋ると、自分に対する印象が悪くなる場合もあるため、注意してください。

離婚したい理由

離婚調停では、離婚したい理由についても聞かれます。
離婚したい理由は申立書にも記載されますが、内容を深く把握するために調停中でも質問されると考えておきましょう。

そのため、離婚理由について要点を整理しておき、調停委員会に伝わり理解しやすいように説明することが大切です。
ここで嘘をついたり、感情的になって調停委員会に主張が伝わらなかったりすると、逆効果になることもあります。冷静に話すことに努めて、離婚を望む理由を明確に表明しましょう。

なお、調停離婚では法定離婚事由がなくても、最終的に双方が離婚に応じる意思を示せば離婚をさせることが可能です。調停はあくまで話し合いであり、離婚事由があるかどうかを判断する場所ではないからです。調停委員に離婚したい理由を納得してもらい、調停委員から相手を説得してもらうようにしましょう。

例えば、特に理由はないものの、夫のことが気に入らなくなったので離婚したいと主張しても、調停委員は相手を説得できないでしょう。
法定離婚事由以外でも調停委員が相手を納得させやすい理由としては、相手によるモラハラやセックスレスの他、親や親戚との折り合いが悪いといったものが挙げられます。

ただし、これらの理由を上手く説明しなければ、相手方が悪いことを理解してもらえない恐れがあります。実際にどのような行為があったのか具体的に説明する必要がある他、行為の頻度などを丁寧に伝えて、調停委員が理解しやすくなるように工夫しましょう。

現在の状況

離婚調停では、現在の状況についても質問されることが多いでしょう。

調停委員会が現時点での夫婦の問題を整理するために必要であるためです。
具体的には、同居中か否か、別居経験があるか、別居中なら婚姻費用の支払いがあるか、婚姻費用の金額はどれくらいか、といった内容が質問されます。

状況によってはプライベートな質問が飛んでくることもありますが、調停委員は調停内容に対する守秘義務があるため、返答した内容が外部に漏れることはありません。

また、質問に対して事実に反する内容を返答して、後からそれが発覚した場合、調停委員会からの信頼を失うことになります。
質問された内容に対してありのままを返答するようにしましょう。

夫婦関係が元に戻る可能性

離婚調停では、夫婦関係が元に戻る可能性の有無についても質問されます。

離婚調停は離婚を含めて、夫婦関係を調整するための調停であるためです。
夫婦の離婚だけではなく、夫婦関係の再修復が提案されるケースもあることから、調停委員からは夫婦関係の再構築についても質問されるのです。

調停委員からの質問に対して曖昧に回答すると、再構築の可能性があると受け取られかねません。離婚への意思が固い場合は、修復する可能性がないことを明確に伝えることが大切です。

また、夫婦関係の修復のために行った努力の内容や、それでも修復できなかったことも伝えましょう。

子どもに関する質問

離婚調停では、子どもに関しても質問されます。
特に、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合は、以下のような質問があります。

  • 親権についてどのように考えているか
  • 子どもは現在どのように生活しているのか
  • 夫婦が離婚しようとしていることを把握しているのか
  • 夫婦のどちらと同居しているのか
  • 別居している場合は親と会えているのか など

親権がどちらになるかに影響することであるため、こちらもありのままを正確に伝えるようにしましょう。

養育費や財産分与、慰謝料について

離婚調停では、離婚した際のお金のことについても質問されます。
離婚に関わるお金の問題としては、養育費や財産分与、年金分割、婚姻費用、慰謝料などが挙げられます。

例えば、養育費や財産分与、慰謝料を相手方に請求する場合、具体的な請求額を提示するだけではなく、その金額を請求するに至った経緯や根拠を示す必要があります。
特に一般的な相場よりも高い金額を請求する場合は、より明確な根拠や資料の提示が必要です。
子どもに必要な教育費や医療費の見積書や明細書などの資料や、相手方の有責を客観的に証明できる証拠を提示することが求められます。

お金などの離婚条件に関しては相手方と揉めやすい要素でもあるため、事前に弁護士に相談したり、対応を依頼したりして、金額を検討した上で請求することが重要です。

離婚調停を有利にするためのポイント

離婚調停を数多く経験することはほとんどありません。それは相手方も同じです。そのため、離婚調停を有利に進めるためのポイントを把握しておくことが大切になります。

具体的なポイントは以下のとおりです。

  • 主張や希望条件を明確にする
  • 証拠を用意しておく
  • 裁判官の意見を取り入れる「評議」を利用する
  • 譲歩もしながら交渉する
  • 想定問答をまとめておく
  • 調停委員と信頼関係を築く
  • 弁護士に依頼して調停に同席してもらう

それぞれ詳しく解説します。

主張や希望条件を明確にする

離婚調停を有利に進めるためには、自分の主張や希望条件を明確にすることが大切です。自分の主張や希望が調停委員に伝わらなければ、不利な条件での離婚を強いられる可能性があるためです。

調停委員に対して主張・希望をきちんと伝えるためには、調停が始まる前に主張や条件について整理して陳述書としてまとめておきましょう。相手方の不倫やDV行為など、法定離婚事由がある場合も、書面に記録しておきます。書面にまとめておくだけで、口頭で伝えるよりも確実にこちらの考えを伝えられるでしょう。

また、調停期日の1週間前くらいには、書面を調停委員に提出しておくことをおすすめします。

調停委員は普段から裁判所にいる人物ではありません。普段は別の仕事をしていて、調停の直前に集合し提出された書類に目を通して、簡単な打ち合わせをするだけで調停に臨んでいます。調停期日前に時間を持って提出しておくことで、調停委員が書類を読む時間的な余裕ができる可能性があります。

また、膨大な情報の陳述書を提出しても、すべてに目を通すとは考えにくいため、陳述書はA4用紙1枚程度にまとめておきましょう。

その場で考えるだけでは、自分の考えが相手に伝わらないこともあるため、事前の準備をしっかり整えて調停の望むことを意識してください。

証拠を用意しておく

離婚調停を有利に進めるためには、離婚の原因となる事柄を客観的に証明できる証拠を準備しておくことも重要です。相手方の不貞行為やDVといった法定離婚事由にあたる行為がある場合、証拠を提出することで客観的な裏付けとなるためです。

証拠を裁判まで残しておきたいと考える場合があるかもしれませんが、強力な証拠がある場合は責任のある相手方に対して譲歩を求める流れになる可能性があります。

また、法定離婚事由にあたる行為を証明する証拠があることで、調停内でも相手方に慰謝料を請求可能です。

裁判とは違い、離婚調停ではお互いの合意が得られれば相場よりも高額な慰謝料を獲得できる可能性もあります。

さらに、離婚時に請求する財産分与に関しても、預金通帳のコピーや源泉徴収票、保険証書など、相手方と自分の財産が客観的に確認できる資料や証拠があれば請求・計算がしやすくなります。いずれの場合も離婚調停を有利に進められる材料となるでしょう。

裁判官の意見を取り入れる「評議」を利用する

離婚調停では、調停委員が双方の意見を取りまとめて合意を目指しますが、当事者の主張が平行線をたどると、調停が打ち切られてしまうことも少なくありません。そんなときに活用したいのが「評議」です。

評議とは、調停委員会が裁判官を交えて行う内部打ち合わせのことで、当事者の希望に応じて行ってもらうことが可能です。通常、調停では裁判官が表立って調整に関わることはありませんが、こちらが妥当な条件を提示しているにもかかわらず、相手が非合理的な主張を繰り返しているようなケースでは、評議を申し出ることで打開策となることがあります。

たとえば、養育費の支払い額について相場通り月8万円が妥当な場面で、相手が「月4万円が限界」と譲らない場合、調停委員に「評議をお願いできませんか」と申し出ることで、裁判官の判断を仰ぐことが可能です。裁判官の意見として「月8万円が適正」と伝えられれば、相手が折れる可能性が高まり、調停成立に向けた流れが生まれます。

評議は、調停を有利かつ円滑に進めるための重要な手段です。相手との交渉が難航していると感じたら、早めに調停委員へ相談してみましょう。

譲歩もしながら交渉する

離婚調停は、あくまでも話し合いによって合意を目指す手続きです。自分の主張が法的に正しくても、相手が応じなければ調停は不成立となり、最終的に離婚裁判に進まざるを得なくなります。裁判に進めば時間も費用もさらにかかるため、相手との妥協点を探りながら、柔軟に交渉を進めることも大切です。

たとえば、養育費の適正額が月8万円であっても、あえて7万円で合意することで、早期解決が実現する可能性もあります。金銭面だけではなく、親権を持つ側が、相手の希望に配慮して宿泊付きの面会交流を受け入れるなど、相手にとって納得しやすい条件を提示することで、合意に近づくケースも多くあります。

離婚調停では「すべてを勝ち取る」ことよりも、「現実的に合意できるラインを見極める」ことが、最終的な解決への近道となります。

想定問答をまとめておく

離婚調停を有利に進めるためには、事前にリハーサルをしておきましょう。自分が分かりやすく伝えているつもりでも、実際には伝わりにくいケースがあるためです。また、実際に調停の場にいれば、緊張してうまく話せなくなることもあるでしょう。

さらに、調停委員に少しでも良い印象を持ってもらうためには、話し方や伝え方にも工夫が必要です。自分の主張が相手にちゃんと伝わっているか確認するために、友人や知人、弁護士などに相談して事前に応答の練習をし、アドバイスをもらってください。

また、練習相手がいない場合は、自分の応答内容を録音して確認するのがおすすめです。話し方や声色、伝え方など、修正すべきポイントが見つかるはずです。

調停委員と信頼関係を築く

離婚調停を有利に進めるためには、調停委員と信頼関係を築くことが重要です。調停委員には、中立や公平を保つ役割こそあるものの、それぞれ1人の人間であるため、印象が良ければ調停が有利に進む可能性があるためです。

特に、調停の初期の段階では、こちらの主張が無理難題ではなく、相手方の主張がおかしいことを理解してもらうために、調停委員とは言い争わず、良い印象を与えることを意識した方が良いでしょう。

調停委員に良い印象を与えるためには、服装や身だしなみを意識すべきです。華美な服装や清潔感のない服装は避けるようにしましょう。

また、調停委員と話をする際は、感情的にならないように意識し、冷静で落ち着いた対応を心がけましょう。

弁護士に依頼して調停に同席してもらう

離婚調停では、適切に自分の考えや意見を主張するのは簡単ではありません。緊張してうまく話せなかったり、言いたいことを伝えきれずに不利になるケースも考えられます。

そのため、離婚調停には弁護士に依頼して同席してもらうことをおすすめします。弁護士がいれば、法的な知識やこれまでの経験をもとに、主張の組み立て方や伝え方について具体的なアドバイスが受けられます。交渉の場で冷静に対応できるだけでなく、相手の主張に対して適切に反論することも可能になります。

さらに、調停の終盤では「調停条項(調停調書に記載される内容)」の確認が重要になりますが、弁護士が同席していれば、不利な内容が含まれていないか、その場でチェックしてもらえるため安心です。

弁護士に依頼しなくても離婚調停を進めることはできますが、「できるだけ有利に調停を進めたい」「離婚調停に不安がある」という人は、弁護士に相談することを検討してみてください。

「ツナグ離婚弁護士」では、全国550件以上の弁護士事務所を掲載しています。離婚問題に特化した事務所を掲載しており、慰謝料請求・財産分与・親権問題などに特化した離婚弁護士を探すことが可能です。初回相談を相談とする事務所も多数掲載しているため、弁護士を探している方は、ぜひご利用ください。

離婚調停でやってはいけない4つのこと

離婚調停では「やってはいけないこと」があります。調停委員からの信頼を失う可能性があり、調停が不利になる恐れがあるためです。

以下に該当することはしないよう心がけましょう。

  1. 離婚調停で不利になるような発言をする
  2. 断で調停を欠席する
  3. 調停の内容を録音・撮影する
  4. 離婚調停中に別居を始める

それぞれ詳しく解説します。

1.離婚調停で不利になるような発言をする

離婚調停で注意したいのが、不利になるような発言をしないことです。

発言次第では、調停委員からの心証が悪くなる可能性があり、調停が不利に進む恐れがあります。

具体的に避けるべきなのは、以下のような発言です。

  • 相手や調停委員に対する悪口・暴言
  • 自分に都合のよい条件ばかりを強調する発言
  • 簡単に相手の条件を受け入れるような発言
  • 相手と直接交渉したいという発言
  • これまでの意見と矛盾するような発言

それぞれの発言や影響に関して、詳しく解説します。

相手や調停委員に対する悪口・暴言

調停の相手や調停委員に対する悪口や暴言は、離婚調停において不利になる可能性が高いといえます。

離婚調停の場においては、相手の悪口や愚痴などを伝えて、相手を不利にしようとする人がいます。

しかし、調停委員が把握したいのは、申立人が離婚を決断した事実や経緯です。相手の悪口や愚痴は、当事者が相手を許せないことは伝わっても、具体的な事実を伝えることにはならないのです。

そればかりか、調停委員に「感情的になりやすい人物」「相手を貶める発言をする人物」という印象を与えかねません。結果として、自分が不利になる可能性が高いため、相手に対する悪口は慎み、事実や経緯を明確に伝えられるようにしましょう。

また、調停委員に対する暴言も絶対に避けなければいけません。/span>
離婚調停では相手に対する不満で感情的になりやすい状況にあるため、さまざまなことがきっかけで、暴言につながるケースが多いのです。

例えば、以下のようなケースでは苛立ちを感じやすく、暴言につながりやすいといえます。

  • 調停委員がこちらの話を聞かないように感じる
  • 調停委員が相手ではなくこちらばかりを説得しているように感じる
  • 複数回調停を重ねても同じことばかり話し合っているように感じる
  • 以前主張したことを調停員が把握してないように感じる
  • 相手方が前回の調停で決まったことを守ろうとしない

調停委員への暴言は、調停委員だけではなく裁判官からの心証も悪くなることがあり、その後の訴訟にも影響する可能性があります。
できるだけ冷静になるよう努めて、暴言につながらないよう気をつけましょう。

簡単に相手の条件を受け入れるような発言

離婚調停では、相手が提示してきた条件を簡単に受け入れるような発言も避けましょう。相手方の条件に対して譲歩ばかりしていると、不利な条件での離婚となってしまうためです。

離婚調停は、調停委員会が仲介に入り、当事者がどこで折り合いをつけるのか、妥協点を探す性質があります。逆にいえば、適正な判断を下すというものではありません。こちらが相手方の条件に受け入れる人物であると判断した場合、調停委員会はこちらに対してばかり譲歩を求めるよう動く可能性すらあります。

繰り返しになりますが、一度調停が成立してしまうと、後から覆すのは非常に困難です。そのため、譲れないポイントについては自分からも主張することが大切です。

特に、親権や養育費、財産分与、慰謝料など、譲れないポイントを明確に伝え、他の部分で調整できないか協議するようにしてください。

相手と直接交渉したいという発言

調停中に相手と直接交渉したいという発言も、避けるべきです。

調停委員や裁判官から危険人物であると認識される恐れがあるためです。離婚調停は、内容や状況によって協議が難航するケースが多々あり、上記のような発言につながることがあります。

直接交渉を望むのはその方が有利になることをわかっていると考えられる他、相手に何らかの危害が加えられる可能性もあります。

そのため、調停委員や裁判官は直接交渉しないように止めることになります。離婚調停になっている以上、相手方と直接交渉することはできません。/span>それどころか発言によって調停がかなり不利になる他、相手方や子どもに危険が及ぶと判断されると面会交流について相手方に有利な結果になる恐れもあります。

男女問わず、相手と直接交渉する、相手に直接請求するという発言は控えるようにしましょう。

これまでの意見と矛盾するような発言

これまでの主張や意見とは矛盾するような発言も避けてください。

調停委員からの信用を失い、自分が主張することが受け入れられなくなる恐れがあるためです。

提示された客観的な証拠と発言が食い違う場合、単純に発言者を信用するのは難しくなります。

例えば、妻に対して「洗濯や掃除をせず、食事も作らない」と発言した後に、「家事ばかりしていて自分の相手をしてくれない」といった場合、どちらの発言が正しいのか判断できなくなる他、状況によってはどちらの発言も信じてもらえなくなるケースがあります。

離婚調停では論理が通っているか、客観的な事実は何かということが重視されます。これまでと矛盾するような発言があれば一気に不利になることもあるため、十分注意してください。

2.調停を無断欠席する

離婚調停の調停期日は、無断で欠席してはいけません。

無断欠席することで、以下のようなリスクが伴います。

  • 民事調停法により、5万円以下の過料が発生する
  • 調停委員会や裁判官からの印象が悪くなる
  • 調停が不成立となった場合、離婚成立まで時間がかかる
  • 訴訟に発展した場合に不利になる

離婚調停の申し立てがあった場合、第1回期日は裁判所から一方的に日時が指定されます。また、離婚調停は平日の日中に実施されるため、どうしても出席できないケースが発生します。

しかし、無断欠席は上記のようなリスクが発生するため、参加できない場合は必ず裁判所に連絡することをおすすめします。

なお、一度調停に参加すれば、次回以降の調停期日はお互いの予定を確認した上で日程が調整されます。

3.調停の内容を録音・撮影する

離婚調停などの家事調停において、録音や撮影は原則禁止されています。

これは家事事件手続規則と民事訴訟規則によって定められています。どのような理由があった場合でも、基本的に録音・撮影は認められないことを理解しておきましょう。

ただし、メモを取ることに関しては禁止されておらず、ペンやノートを持参して記録することは可能です。協議の内容を忘れないようにする他、次回の調停の日時を記録するためにも、離婚調停にはノートや筆記具を持参することをおすすめします。

参考:民事訴訟規則平成8年12月17日最高裁判所規則第5号第77条|裁判所

参考:家事事件手続規則(原文は縦書き)平成24年最高裁判所規則第8号第126条2項|裁判所

4.離婚調停中に別居を始める

離婚調停中に、相手方と別居を始めるのも避けるべきです。離婚調停中はお互いに夫婦の関係にあり、夫婦には民法によって同居の義務があるためです。

離婚調停が始まった時点ですでに別居しているケースでは問題はありませんが、離婚調停中に別居する場合は、相手方に承諾を得ることを忘れないようにしましょう。

仮に、勝手に別居を始めた場合、法定離婚事由である悪意の遺棄に該当する場合があり、別居した側がもう一方から慰謝料を請求されるケースもあります。

ただし、別居する側がもう一方からDVなどの被害を受けているような場合は、身体の安全確保が必要になるため、勝手に別居しても構いません。

また、相手方が不貞行為やDVなどの法定離婚事由に該当する行為を行った場合も、別居する正当な理由があると判断されます。この場合は、相手方が有責であるという客観的な証拠が必要になる点には注意しましょう。

参考:民法第752条同居、協力及び扶助の義務

参考:民法第770条1項2号裁判上の離婚

離婚調停を申し立てられたら準備するべきこと

もし、配偶者に離婚調停を申し立てられた場合は、パニックになったり感情的になったりせずに、まずは以下の4つのことに関して、確認や準備をするようにしましょう。

  1. 予定されている調停期日に出席できるか確認する
  2. 相手方の主張の確認をする
  3. 提出する書類の準備をする
  4. 離婚に関連した問題について自分からも申立を行う

それぞれの準備事項について詳しく解説します。

予定されている調停期日に出席できるか確認する

離婚調停が申し立てられると、家庭裁判所から出席を求める書類が届きます。書類を受け取ったら、まずは予定されている「調停期日」に出席できるか確認してください。

離婚調停は平日の日中に開かれ、1回あたり1〜2時間程度かかります。初回は、調停委員がお互いの言い分を聞いて、離婚に関する争いの全体像をしっかり把握するために、1〜2時間以上の時間がかかる可能性もあるので、余裕を持ってスケジュールを空けておくのがおすすめです。

ただし、初回の調停は、調停を申し立てた人と裁判所の都合を踏まえて決定されるため、参加する意思があっても、「どうしても参加できない」という場合もあるでしょう。
そういう時は、できるだけ早く、裁判所に連絡を入れるようにしてください。

決められた日程での出席が原則ですが、どうしても出席できない事情がある場合には、裁判所に初回期日への欠席を伝えて、次回期日から出席する意思があることを伝えれば不利になることはありません。休む理由を連絡する際に、次回に出席できる日程の候補をいくつか伝えるのもおすすめです。

相手方の主張の確認をする

裁判所から送られる離婚調停に関する書類には、期日の連絡だけでなく、「調停申立書」の写しも一緒に送られてきます。

「調停申立書」には、財産分与、慰謝料、年金分割、子どもの親権や面会交流権、養育費などの離婚に関する条件についてや、配偶者が主張する離婚原因が記載されているので、しっかり読んで相手方の主張を確認するようにしましょう。

また、送られてくる書類の中には入っていませんが、調停の申立人である配偶者は「事情説明書」や「子についての事情説明書」という、離婚調停に至った事情や話し合いの状況、予想できる争点、離婚の有無などを記載した書類を提出しています。

この事情説明書は、裁判所の許可を得ると閲覧することができるので、相手の主張をより詳しく把握したい場合は、閲覧の申請を行いましょう。

提出する書類の準備をする

裁判所から送られてくる書類には、以下のような書類も入っています。

  • 答弁書
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 連絡先等の届出書

調停を申し立てられたら、これらの書類に必要事項を記入して、期限までに提出しましょう。

特に大切なのは答弁書です。答弁書は、裁判所によって、形式が多少変わることもありますが、基本的には簡単なチェック方式です。チェックできる項目だけでは、十分に考えを伝えられない場合は、「別紙の通り」として、別の紙に自分の考え・主張を記載して一緒に提出することもできます。

調停委員に自分の主張・考えを伝えるための重要な書類なので、よく考えながら記入するようにしてください。

また、「事情説明書」には、相手方と意見が異なる点・争点になりそうなことなどを記載します。

事情説明書は裁判所の許可で、相手方も閲覧することができる書類なので、記載内容には注意するようにしましょう。

どうしても相手方に閲覧されたくない場合は、「非開示の希望に関する申出書」を添付するのがおすすめです。

提出書類には、感情的な記載は控えて、できるだけ事実のみを記載するようにしましょう。

離婚に関連した問題について自分からも申立を行う

離婚に関連して主張したい問題について自分からも申し立てを行うことができます。

「離婚調停の関連事件」として申し立てを行うことで、同じ担当者が全ての事件を担当してくれるので、同日に複数事件の期日を設定してくれたり、一括解決を目指すことも可能。

例えば、自分の方が、相手よりも収入が低い場合や、子どもの監護をしている場合は「婚姻費用分担請求調停」を申し立てて、生活のための費用の婚姻費用を請求したり、親権を獲得したい場合には子どもの監護者指定・引き渡し請求をしたり、子どもとの面会をしたい場合は面会交流権の請求をしたりすることができます。

離婚調停の対応を弁護士に依頼するメリット

離婚調停は弁護士に依頼しなくても進められます。そのため、「本当に依頼する必要があるのか」と迷う方も少なくありません。

しかし実際には、弁護士を利用した多くの人が「依頼してよかった」と感じています。株式会社Clamppyが東京都内で弁護士に依頼した方を対象に実施したアンケートでは、利用者の96%が「相談してよかった」と回答しています。その理由としては、「複雑な法律問題について的確なアドバイスが受けられた」「ストレスの多い手続きをすべて任せられた」「短期間で納得のいく結果が得られた」といった声が多く挙げられています。

離婚調停は、法律や手続きに関する専門知識が求められる場面が多く、当事者だけで進めるには不安が伴うこともあります。そんなとき、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが得られます。

  • 弁護士が代理人として調停に出席し、法的根拠に基づいた主張や反論ができる
  • 書面作成や証拠提出、裁判所とのやりとりなどの煩雑な手続きを一任できる
  • 離婚条件に不備や不利な内容がないかをチェックしてもらえるため、安易な合意を防げる
  • 有利に進めるための証拠収集や交渉のアドバイスを受けられる
  • 仮に調停が不成立となっても、そのまま同じ弁護士が裁判を引き継ぐため、スムーズに対応できる

離婚調停で少しでも不安がある場合や、有利な解決を望む場合は、弁護士への依頼を検討してみると良いでしょう。

まとめ

離婚調停は、家庭裁判所の調停委員会を間に挟み、離婚の可否や条件について当事者同士が話し合う手続きです。双方が合意すれば調停は成立し、その内容は裁判の判決と同じ効力を持ちます。

とはいえ、離婚調停を経験したことのある人は少なく、多くの方が「調停をすべきなのか」「どう振る舞えばいいのか」「何を準備すればいいのか」など、さまざまな不安を抱えています。

事前に調停をすべきケースに該当するか、調停の流れや期間、費用、調停でやってはいけないことや、有利に進めるためのポイントなどを把握しておくと安心して調停に望めるでしょう。

また、離婚調停を有利に進めるためには、弁護士のサポートが武器になります。調停での対応や訴訟に発展した場合も考えて、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

離婚調停に関するよくある質問

離婚調停と協議離婚・審判離婚・裁判離婚の違いは?

各手続きの違いは下記のとおりです。

種類 概要 費用の目安 メリット デメリット 向いている人
協議離婚 夫婦の話し合いで成立させる離婚 ・夫婦の話し合いで成立させる場合は無料
・弁護士に依頼する場合は30~60万円程度の費用が必要
・公正証書を作成する場合は3万円から8万円程度の公証人手数料が発生
・手続きが早くて簡単
・費用が安い
・公的な証明力が弱い
・口約束だとトラブルになりやすい
離婚条件にお互い納得している人
離婚調停 家庭裁判所の調停委員を介して話し合い、双方が合意すれば成立する離婚 ・申立手続き費用が3,000円程度
・弁護士に依頼する場合は50~100万円程度の費用が必要
・調停委員が中立的にサポート
・合意内容は調停調書により法的効力あり
・時間がかかる
・合意できなければ不成立
話し合いがうまくいかないが、裁判までは望まない人
審判離婚 調停の不成立後、裁判所の判断で成立させる離婚

・申立手続き費用が3,000円程度
・弁護士に依頼する場合は40~100万円程度の費用が必要
・調停不成立でも離婚が成立する可能性あり 非常に稀なケースで、原則として不服申立てで取り消されやすい どもの利益が最優先される状況、どちらかが意思表示しない状況におかれる人
裁判離婚 裁判所の判決で成立させる離婚 ・裁判所の手続き費用が2万円程度
・弁護士に依頼する場合は60~100万円程度の費用が必要
・判決により離婚が成立
・法的拘束力が強い
・時間と費用がかかる
・証拠が必要
・精神的負担が大きい
相手が離婚に一切応じない、不貞・DVなど明確な離婚理由がある人

離婚調停で話し合いをスムーズに進めるには?

離婚調停で話し合いをスムーズに進めるためには、事前に陳述書を提出するのがおすすめです。
離婚調停の申立書には、申し立ての理由を記述できますが、すべてを書ききれない場合があるためです。
また、事前に主張したいことや希望することを整理して、陳述書にまとめておけば、こちらの考えを調停委員にきちんと伝えられます。
さらに、事前に陳述書を提出することで、調停委員が内容を確認した上で調停期日を迎えられる可能性があります。
離婚調停の時間には限りがあるため、事前に陳述書を提出することで、時間を短縮できる効果も期待できるでしょう。
このように、陳述書を作成・提出することで、離婚調停での話し合いをスムーズに進められるのです。

離婚調停はどのような雰囲気の中で行われる?

離婚調停の雰囲気は、比較的和やかな雰囲気で行われると考えておきましょう。
離婚調停は話し合いをするための手続きで、問い詰められたり、命令されたりするようなものではありません。肩の力を抜いて、冷静に対応できれば問題ないでしょう。
また、調停は調停室と呼ばれる小さな会議室のような部屋で行われます。長いテーブルと椅子が置いてあり、調停委員と当事者(弁護士同伴の場合あり)が着席して話し合いを進めていきます。
ただし、調停委員個人の性格によっては、冷たく感じられるような態度を取られるケースもあります。
このような場合に備えて、事前に弁護士に対応を依頼して同席してもらうのがおすすめです。弁護士なら調停委員の態度についても指摘してもらえるでしょう。

「離婚調停は女性が有利」なのは本当?

離婚調停では女性が有利になるという話を耳にしたことがあるかもしれませんが、実際には性別は関係ありません。

基本的には男女どちらに対して公平・中立となるのが原則と考えておきましょう。

離婚調停で女性の方が有利と感じられてしまう原因は以下のとおりです。

  • 女性側が親権を獲得するケースが圧倒的に多いから
  • 男性側が金銭を支払うことが決まるケースが多いから

子どもがいる夫婦が離婚する場合、女性が親権を獲得するケースが圧倒的に多い傾向にあります。これは母性優先の原則があるためです。
母性優先の原則とは、子どもの福祉の観点から、子どもは父親よりも母親と暮らす方が望ましいとされる一般原則です。
10歳以下の子どもがいる場合、母親と暮らすのが望ましいとされ、15歳以上になれば子どもの意思が尊重されることになります。
つまり、正当な理由がない限り、男性側が親権を獲得するケースはほとんどないともいえるのです。
次に、共働きの夫婦の場合、男性側の収入の方が多い傾向にあります。そのため、養育費や財産分与、婚姻費用などについて、男性側が女性側に支払うケースが多くなります。
この点も女性が有利と感じられやすい要因といえます。

親権争いを有利にするコツは?

未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合に親権争いを有利にするためには、育児ができる環境を整えることが重要です。
親権者は、育児環境や父母、子どもの事情など、さまざまな要素から判断されます。また、子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を尊重することが法律によって定められています。
そもそも、日本では共同親権が認められていないため、現時点で未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、夫婦のいずれかを親権者として決めなければなりません。
基本的には母性優先の原則があるものの、状況を見て公平に判断されます。そのため、子どもを監護する意欲や健康状態、経済状況、教育環境、親族の援助など、身の回りの環境を整えた上で、子どもを育てていく意思を表明する必要があります。
女性であるからといって、親権が必ず取れるわけではありません。調停前にできる限りの準備を整えておくことが大切です。

調停を申し立てられた場合、拒否できる?

離婚調停を申し立てられた人は、以下の方法で調停を拒否できます。

  • 離婚調停に出席して離婚を拒否する
  • 離婚調停を欠席する

離婚調停は夫婦の離婚の可否や養育費、財産分与といった条件について話し合い、お互いが合意することで成立するものです。互いもしくはいずれかが合意しない場合、調停は不成立となり、離婚は成立しないことになります。
また、両者が揃って実施できる手続きであるため、いずれかが欠席すると調停手続きを行うことができません。そのため、離婚したくない場合は、離婚調停を欠席すれば調停を拒否することは可能です。
しかし、拒否したい場合は調停に出席した上で、離婚を拒否するのがおすすめです。
出席を拒否したからといって相手側が離婚の意思を覆す可能性はほぼないからです。また、調停に出席せずに、こちらの主張や希望を表明しないことへのメリットもありません。
さらに調停を欠席し続ければ、調停が早期に不成立となり、相手方は離婚訴訟を起こす可能性があります。こうなると離婚が成立するまでの期間が短くなるケースもあるでしょう。
調停を拒否することは可能であるものの、拒否する場合は正しく拒否することが大切です。調停に出席した上で、意見を主張するといいでしょう。

離婚調停は弁護士に依頼しなくてもよい?

離婚調停は弁護士に依頼せずに、当事者だけで協議して離婚問題の解決を図ることが可能です。
ただし、離婚調停を弁護士に依頼しない場合、陳述書や資料の作成・取得、家庭裁判所との手続きややりとりなどもすべて1人で行わなければなりません。
そのため、できれば弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
弁護士に対応を依頼すれば、手続きや書類作成を代行してもらえる他、調停にも同席してもらえます。専門知識やノウハウを生かして調停を有利に進められます。
特に仕事や家事、育児に忙しい場合、すべて自分で対応するには限界があります。弁護士に早めに相談してサポートしてもらうことを検討しましょう。

調停成立後はいつまでに離婚届を提出すればいい?

当事者同士で離婚することや条件について合意した場合、離婚調停は成立します。

離婚調停の成立後は、成立日を含めて10日以内に離婚届と調停調書謄本を市区町村の役所に提出することで、正式に離婚成立となります。

離婚届の提出は、離婚調停の申立人が本籍地もしくは住んでいる地域の役所に提出する必要があります。夫婦の本籍地とは異なる市区町村役場に離婚届を提出する場合は、夫婦の戸籍謄本も提出しなければなりません。
離婚届の提出が調停の成立日から10日を過ぎてしまうと、5万円以下の過料が課されるため、提出期限には注意しましょう。
なお、通常の協議離婚の場合、離婚届には夫婦それぞれの署名捺印に加え、成年の証人2人の署名捺印が必要です。
ただし、調停離婚の場合、証人の署名捺印は不要で、かつ離婚届を提出する方のみの署名捺印で受理されます。

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更新日 : 2025年06月10日
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