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離婚調停とは?流れ・費用・期間・調停中にやってはいけないことを解説

離婚調停
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きである「夫婦関係調整調停」を利用して、調停委員に仲介されながら、夫婦が離婚の可否や関連する問題について話し合うための手続きのことです。

夫婦で話し合いをしたものの、離婚についての合意ができなかった場合や、夫婦のどちらかが離婚についての話し合い自体に応じてくれなかった場合に、調停を利用して離婚を目指します。

本記事では、離婚調停の概要や調停の流れ、かかる期間や費用の相場について解説します。

あわせて、以下のポイントについても詳しく解説しています。

  • 離婚調停と協議離婚・審判離婚・裁判離婚の違い
  • 離婚調停を申し立てるタイミング
  • 離婚調停を行うメリットやデメリット
  • 離婚調停でやってはいけないこと
  • 離婚調停を有利にするためのポイント
  • 離婚調停に関するよくある質問

離婚の協議がまとまらず、離婚調停の申し立てを考えている場合や、離婚調停に関しての疑問がある場合は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

離婚調停とは仲介(調停委員会)を入れて離婚について話し合うこと

当事者同士の協議で離婚に合意できなかった場合や、当事者同士の協議が難しい場合、夫婦のどちらかが離婚を求めて、夫婦関係調整調停を家庭裁判所に申立てられます。
離婚調停とは、離婚や関連する事柄について家庭裁判所で話し合うことです。
離婚についてはもちろん、慰謝料や財産分与、親権の所有者、養育費の支払い額、面会交流、年金分割など、さまざまなことを話し合います。

離婚調停では裁判官1名と調停委員2名以上(男女1名ずつが一般的)で構成される調停委員会を仲介して、夫婦が離婚に関連する問題を話し合います。正式名称を「夫婦関係調整調停」といいます。

調停委員会を仲介にした話し合いで解決できず、調停が不成立となった場合、一般的には裁判へと進み、離婚や慰謝料について判断を求めることになります。
なお、調停とは裁判所の手続きではあるものの、当事者同士の意思の尊重を重視する傾向があるため、夫婦間で納得できるのであれば離婚条件はある程度自由に決めることが可能です。

離婚調停と協議離婚・審判離婚・裁判離婚の違い

離婚には離婚調停の他、協議離婚、審判離婚、裁判離婚があります。それぞれの大まかな特徴は以下のとおりです。

  • 離婚調停:裁判所の調停員を介して夫婦が離婚や離婚条件について話し合うための手続き
  • 協議離婚:夫婦で話し合い離婚に合意したら離婚届を提出して離婚が成立する
  • 審判離婚:双方が離婚に同意しているものの細かいことで調停が決裂しそうな場合に裁判官の決定によって離婚が成立する
  • 裁判離婚:訴訟によって離婚を求めるための手続き

日本においては上記のいずれかの方法で夫婦は離婚することになります。それぞれの離婚の形態について詳しく見ていきましょう。

協議離婚は調停委員が仲介に入らない

協議離婚とは、夫婦同士で離婚について話し合い、お互いが合意した後に役所に離婚届を提出して成立する離婚の形です。

日本国内での離婚の約9割が協議離婚となっており、もっともポピュラーな離婚の形といえます。

当事者間での話し合いとなるため、離婚調停のように調停員が仲介に入ることはありません。

協議離婚では、夫婦が離婚や親権、養育費、慰謝料、財産分与などについて話し合い、合意を目指します。合意ができたら離婚届に必要事項を記入して役所に提出すれば離婚成立です。
離婚する際の慰謝料や財産分与、養育費などの条件が決まったら、協議離婚合意者(離婚協議書)を作成し、公正証書にしておくことで離婚後のトラブルを回避できるでしょう。
公正証書で作成しておけば、養育費の不払いなどの条件違反があった場合に直ちに強制執行をかけることができます。

協議離婚のメリットは、離婚が成立するまでのスピードが早いことや、法律上の離婚事由がなくても離婚が成立することです。
手続き自体に費用が発生しない他、離婚条件を自由に決められるため、合意できるのであれば養育費や慰謝料の金額を相場よりも高く設定することもできます。

一方、配偶者と直接話し合うためストレスを感じやすく、特にDVを受けている場合は被害が悪化する恐れがあります。
法的な知識がない場合は離婚条件がなかなか決まらなかったり、相場よりもかなり安い金額で養育費に同意したりすることもあります。

また離婚条件を決めないまま離婚したり、決まった条件を記録しなかったりすると、離婚成立後にトラブルに発展する恐れがあります。
なお、協議離婚出は費用が発生しませんが、弁護士に対応を依頼する場合は30万円から60万円程度の弁護士費用が発生します。合意内容を公正証書化する場合は、3万円から8万円程度の公証人手数料が掛かります。

協議離婚に至る期間はそれぞれ異なり、1回の協議で離婚となる場合もあれば、数ヶ月程度掛かる場合もあります。

審判離婚は裁判所の判断で離婚を成立させるか決める

審判離婚とは、家庭裁判所の審判手続きによって成立する離婚のことをいいます。

離婚調停が不成立となった際に、裁判所が離婚を成立させた方がいいと判断した場合、調停に代わる審判によって離婚が成立することになります。

特に調停で離婚についてほぼ合意しているものの、調停が不成立になりそうな場合に審判離婚につながることがあります。
具体的には以下のようなケースで審判離婚になることがあります。

  • 離婚することは争わないものの離婚条件でほんの少しの意見の食い違いがあり調停が不成立となる場合
  • 子どもの親権について早急に決めた方がいい状況にある場合
  • 病気などの理由で調停成立時に出席できず、調停が不成立になった場合

審判離婚は、裁判が確定した場合と同じ効力を持ち、決定内容に従わない場合は強制執行の申し立てが可能です。

強制執行とは、裁判所が財産の差し押さえや、間接強制金により離婚条件を守るよう催促したりする手続きです。

ただし、審判内容に不服の場合、夫婦のどちらかが異議申し立てをすれば、審判は無効となります。
審判離婚のメリットは、離婚裁判を回避できるため、時間や費用負担を避けられる他、審判は非公開で実施されるため、当事者のプライバシーが守られます。
一方で、利用可能なケースが限定されている他、異議が申し立てられると審判が無効になる点がデメリットです。
審判離婚に掛かる費用は、基本的に離婚調停と変わりません。手続や書類の取得に3,000円から4,000円程度、弁護士に対応を依頼する場合は40万円から100万円程度が必要です。
離婚に至るまでの期間は、離婚調停直後での離婚となるため、調停開始から3ヶ月から6ヶ月程度となるでしょう。

裁判離婚は裁判所が判決で離婚成立や条件を決める

裁判離婚とは、裁判所の判決によって離婚を求める手続きです。

調停が不成立になった場合や、審判に異議が申し立てられた場合に、家庭裁判所で離婚の可否や離婚条件を決める裁判を行います。どちらかの配偶者が離婚を拒んでいる場合や、財産分与、親権、養育費などの離婚条件で合意ができない場合に取られる手段です。

判決が確定した場合は離婚が成立しますが、判決に納得できない場合は控訴や上告が可能です。

なお、離婚調停とは異なり、離婚裁判は原則的に公開されますが、離婚の原因となる証拠やお互いの争点を整理するところについては一般公開されることはありません。

裁判離婚のメリットは、法律に基づいて裁判官が判断を下す点です。夫婦同士の話し合いでは感情的になりやすい他、相手の対応によっては聞く耳を持ってもらえない可能性があります。

裁判での判決は絶対であるため、相手が拒んでも離婚が強制的に成立する他、養育費や慰謝料の支払いを拒んだ場合も、法律に則って財産差し押さえなどの処分が可能になります。

一方、離婚に至るまでに費用や時間が掛かり、精神的な負担がかかりやすい点がデメリットです。また、裁判になることで離婚問題を抱えていることが公になるのはリスクになる他、裁判離婚を行えるのは、それまでに離婚調停を終えていることが前提(調停前置主義)となります。

裁判離婚に掛かる費用の目安は、家庭裁判所に亭主する戸籍謄本の取得費用に450円、裁判に使用する切手料金として6,000円程度、離婚の身を求める場合は裁判費用として13,000円、慰謝料、財産分与、親権なども争う場合は裁判費用として20,000円程度が必要です。

また、裁判となった場合の弁護士費用の目安は70万円から100万円程度になります。
裁判で離婚に至るまでの期間は、平均すると1年から2年程度で、長い場合は3年以上掛かるケースもあります。

離婚調停は協議が難しくなったタイミングで申し立てる

離婚調停を申し立てた方が良いタイミングは以下のとおりです。

  • 直接話し合いができない場合
  • 話し合いがまとまらない場合

お互いもしくは片方が感情的になるケースや、相手が暴力的で直接話をするのが怖いケースなどは、離婚調停を選択した方がいいでしょう。

離婚調停では一方の当事者及び代理人となる弁護士のみが調停室に入室し、調停委員と話をします。話を聞いた調停委員がもう一方の当事者と話をするため、離婚調停では、配偶者と顔を合わせる必要がありません。

また、離婚を拒絶される場合も離婚調停がおすすめです。調停の開始が遅くなるほど、離婚が成立するのも遅くなるためです。

ただし、離婚条件が合わない場合は、調停にするべきか慎重に判断すべきです。調停・裁判へと進んだ場合、裁判の判例を基にした基準で離婚条件の折り合いが付くことがあり、希望通りの離婚条件とならない場合があるためです。
場合によっては協議離婚を成立させた方がいいケースもあるため、弁護士と相談した方がいいでしょう。

また、暴力や暴言など相手方のDVが酷い場合や子どもの連れ去りがある場合などは、調停の是非よりもそちらへの対応を優先してください。

なお、相手方との話し合いができる場合は、離婚調停を行う必要はありません。前述のとおり、調停にしない方が有利に離婚できるケースもあるため、どうするべきか慎重に検討した方がいいでしょう。
調停離婚に掛かる費用の目安は後程解説しますが、手続きや書類の取得費用として3,000円から4,000円程度の費用が発生します。弁護費に対応を依頼する場合は、40万円から100万円程度の費用がかかるでしょう。

また、離婚調停で離婚に至るまでの期間は3ヶ月から6ヶ月程度です。

離婚調停の大まかな流れ

ここでは、離婚調停の大まかな流れについて解説します。具体的な流れは以下のとおりです。

  • 1.家庭裁判所への申し立て
  • 2.1回目の調停
  • 3.2回目以降の調停
  • 4.調停終了

それぞれ詳しく解説します。

1.家庭裁判所への申し立て

まずは離婚調停を家庭裁判所へ申し立てます。
家庭裁判所は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただし、夫婦間で合意している場合は、異なる家庭裁判所への申し立ても可能です。
申立書を裁判所が受理した場合、裁判所と申立人が第1回の調停の日時を決定します。第1回の調停の日時が決定したら、相手方に対して、調停期日通知書と申立書のコピーが送付され、申し立てに対する答弁書を提出するよう求められます。

答弁書とは、申立書の内容を踏まえて反論を記載する書類のことです。

答弁書を提出せずに放置した場合、申立書の内容を全面的に認めたと調停員に受け取られるリスクがあるため、注意が必要です。
なお、離婚調停の申し立てには離婚調停申立書と申立添付書類の提出が必要です。申立添付書類の一例は以下のとおりです。

  • 戸籍謄本
  • 年金分割を求める場合の情報通知書
  • 事情説明書
  • 進行に関連する照会回答書
  • 未成年の子どもがいる場合の事業説明書

2.一回目の調停

離婚調停の申し立てが受理されたら、1回目の調停に入ります。

1回目の調停の日時は、申し立てが受理されてからおよそ1~2ヶ月後となるのが一般的です。

調停当日は指定時間に遅れないよう家庭裁判所を訪問します。ただし、調停前に受付が必要になるため、指定時刻の15分前までには到着しておきたいところです。

なお、平成25年に施行された家事手続法によって、夫婦双方が立ち会うケースが増える調停運用となっています。
それぞれの調停期日の始めと終わりに、夫婦とも調停室に入室し、調停員立ち合いのうえで調停に関する手続きや次回の調停までにそれぞれがまとめておくべき課題について説明されます。

ただし、相手方との対面を避けたい場合は、理由を説明すれば同席を避けられますので安心してください。

当日準備しておくもの

離婚調停の期日当日には持参が必要なものがあります。具体的な持参物は以下のとおりです。

  • 調停期日通知書
  • 印鑑(認印でもOK)
  • 運転免許証やパスポートなどの身分証明書

また、上記以外にも状況によって調停に持参・提出した方がいいものがあります。例えば、以下のようなものです。

置かれている状況 持参するべきもの
離婚の是非について争う場合 離婚の原因を立証する証拠や資料
親権について争う場合 これまでの監護状況や監護実績を立証する証拠や資料
面会交流について争う場合 面会交流の必要性もしくは交流を制限するべき理由を証明する証拠や資料
相手方に養育費・婚姻費用を請求する場合 確定申告書などの年収の証拠や資料
相手方に財産分与を請求する場合 財産目録など財産の内容を証明する証拠や資料
相手方に慰謝料を請求する場合 不貞行為を客観的に立証する証拠や資料
相手方に年金分割を請求する場合 年金分割に関する情報通知書

状況に応じた具体的な持参物や準備物については、離婚問題に詳しい弁護士に事前に相談することをおすすめします。

調停室での話し合い

離婚調停が始まるまでは待合室で待機します。また、受付で直接調停室に向かい、定刻に調停委員に向かうよう指示されるケースもあります。

調停員に呼ばれたら調停室に入室し、はじめに離婚調停についての説明を受けます。
説明が終わった後は、離婚調停を申し立てるまでの経緯、離婚したい理由、求める離婚条件など、調停委員からの質問に答えます。30分程度やりとりを行い、質問が終了したら、一旦待合室に戻って待機します。

退室後は相手方が調停室に呼ばれ、同じように説明・質問が行われます。
その後、調停委員からお互いに主張を踏まえて解決策を提示し、お互いが内容に合意できた場合、調停は成立となります。
合意に至らない場合は、次回(第2回目)の調停期日が設定され、その日は終了です。1回の調停期日は2時間程度、長くても3時間程度で終了するのが一般的です。話し合う内容や争う項目の多さによって、時間は変動すると考えておきましょう。

3.二回目以降の調停

2回目の調停期日は、1回目のおおよそ1ヶ月~1ヶ月半後となるのが一般的です。

一般的に、1回目の調停で離婚成立となることはほとんどありません。2回以上の調停を経て離婚が成立する場合が多いですが、弁護士に対応を依頼する場合、少ない調停回数で離婚調停が成立する場合があります。

2回目の調停の進行は、1回目とほぼ同じです。ただし、1回目の調停を踏まえて、当事者に必要な証拠や資料の準備をするよう指示されるケースがあります。

4.調停終了

調停が終了するのは、以下のケースです。

  • 調停が成立して終了した場合
  • 調停が不成立で終了した場合
  • 調停が取り下げられて終了した場合

それぞれのケースについて詳しく解説します。

「離婚調停が成立したらどうなるの?」「不成立になったり取り下げられたりしたらどうなるの?」という疑問がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

調停が成立して終了した場合

調停でお互いに主張した上で、調停委員会から提示される解決案に対して当事者同士で合意に至れば、調停は終了となります。
合意内容に対して家庭裁判所は調停調書を作成します。

調停調書は裁判での判決と同等の法的な効力があります。相手方が養育費、慰謝料や財産分与など調書の内容に従わなければ、強制執行によって相手方の財産を差し押さえることが可能です。

調停が終了するまでには、平均して3~5回程度の話し合いで内容が取りまとめられるケースが多いといえます。

理解しておきたいのが、調停調書の内容を後から変更できないということです。
そのため、調停が成立する際に読み上げられる調停案の内容に、不足や不備がないか十分に確認しなければなりません。

なお、調停案を読み上げた後に、裁判官から内容に問題ないか聞かれるため、少しでも理解できない部分があれば確認し、必要であれば修正を求めましょう。
修正がない場合、調停案は成立となり、調停調書が作成されます。

調停の成立日から10日以内に本籍地もしくは届出人の住所地の市区町村役場に調停調書と離婚届を提出すれば、離婚は成立します。

調停が不成立で終了した場合

調停によって離婚や条件の合意が得られなかったり、相手方が調停に参加しなかったりした場合は、調停は不成立となり終了します。
特に相手方が離婚を拒絶している場合や、親権者の指定について合意できない場合、財産分与などの法的問題が合意できない場合は、調停が不成立となるのが一般的です。

なお、離婚自体や離婚調停で解決できる法的な問題のみを調停成立として、同時に解決できないものに関しては調停手続きから除外することが可能です。
これは家事事件手続法という法律での「手続の分離」と呼ばれるもので、裁判所の調停委員会の裁量によって判断され、当事者の了承が得られた場合に分離が行われます。

なお、分離された法的な問題は、当事者にどちらか一方が再度調停の申し立てを行います。

参考:家事事件手続法第260条1項4号・35条1項|e-GOV法令検索

調停が不成立になった場合、その事実は覆ることはありません。その後は協議離婚や離婚裁判のいずれかに進むことになります。

なお、離婚に関する主な項目は合意に至っており、離婚を選択することが当事者双方のために場合は、裁判所の職権で離婚の審判を下す審判離婚となるケースがあります。

ただし、審判離婚となるのはレアケースと考えておきましょう。

調停が取り下げられて終了した場合

調停の申立人は、調停の途中で調停を取り下げることが可能です。なお、調停の取り下げには明確な理由の表明や、相手方の了承を得る必要はありません。
調停が取り下げとなるのは、以下のような場合です。

  • 調停以外で夫婦同士が協議して離婚に合意した場合
  • 夫婦関係の修復に至り離婚調停が不要になった場合

ちなみに、調停を取り下げた後にもう一度調停を申し立てることは可能です。しかし、取り下げてからすぐに再度申し立てを行うと、裁判所が不当な申し立てと判断し、調停が認められないケースがあります。
そのため、調停の取り下げに関しては、慎重な判断が必要です。

離婚調停で調停委員から聞かれること

離婚調停は調停委員会に仲介してもらいながら、離婚について協議します。そのため、調停委員はお互いの事情や主張を知るために、さまざまな質問を行います。

では、いったいどのようなことを聞かれるのでしょうか。具体的には以下のような質問を受けると考えておきましょう。

  • 出会いから結婚までの経緯
  • 離婚したい理由
  • 現在の状況
  • 夫婦関係が元に戻る可能性
  • 子どもに関する質問
  • 養育費や財産分与、慰謝料について

それぞれ詳しく解説します。

出会いから結婚までの経緯

離婚調停では、お互いの出会いから結婚に至るまでの経緯を聞かれます。
離婚調停に至った理由を把握するためです。

質問に対しては、どのようにして2人が出会い、結婚から離婚にまで発展したのかを説明すれば問題ありません。

逆に、離婚調停に関係ないような思い出話を喋ると、自分に対する印象が悪くなる場合もあるため、注意してください。

離婚したい理由

離婚調停では、離婚したい理由についても聞かれます。
離婚したい理由は申立書にも記載されますが、内容を深く把握するために調停中でも質問されると考えておきましょう。

そのため、離婚理由について要点を整理しておき、調停委員会に伝わり理解しやすいように説明することが大切です。
ここで嘘をついたり、感情的になって調停委員会に主張が伝わらなかったりすると、逆効果になることもあります。冷静に話すことに努めて、離婚を望む理由を明確に表明しましょう。

なお、調停離婚では法定離婚事由がなくても、最終的に双方が離婚に応じる意思を示せば離婚をさせることが可能です。調停はあくまで話し合いであり、離婚事由があるかどうかを判断する場所ではないからです。調停委員に離婚したい理由を納得してもらい、調停委員から相手を説得してもらうようにしましょう。

例えば、特に理由はないものの、夫のことが気に入らなくなったので離婚したいと主張しても、調停委員は相手を説得できないでしょう。
法定離婚事由以外でも調停委員が相手を納得させやすい理由としては、相手によるモラハラやセックスレスの他、親や親戚との折り合いが悪いといったものが挙げられます。

ただし、これらの理由を上手く説明しなければ、相手方が悪いことを理解してもらえない恐れがあります。実際にどのような行為があったのか具体的に説明する必要がある他、行為の頻度などを丁寧に伝えて、調停委員が理解しやすくなるように工夫しましょう。

現在の状況

離婚調停では、現在の状況についても質問されることが多いでしょう。

調停委員会が現時点での夫婦の問題を整理するために必要であるためです。
具体的には、同居中か否か、別居経験があるか、別居中なら婚姻費用の支払いがあるか、婚姻費用の金額はどれくらいか、といった内容が質問されます。

状況によってはプライベートな質問が飛んでくることもありますが、調停委員は調停内容に対する守秘義務があるため、返答した内容が外部に漏れることはありません。

また、質問に対して事実に反する内容を返答して、後からそれが発覚した場合、調停委員会からの信頼を失うことになります。
質問された内容に対してありのままを返答するようにしましょう。

夫婦関係が元に戻る可能性

離婚調停では、夫婦関係が元に戻る可能性の有無についても質問されます。

離婚調停は離婚を含めて、夫婦関係を調整するための調停であるためです。
夫婦の離婚だけではなく、夫婦関係の再修復が提案されるケースもあることから、調停委員からは夫婦関係の再構築についても質問されるのです。

調停委員からの質問に対して曖昧に回答すると、再構築の可能性があると受け取られかねません。離婚への意思が固い場合は、修復する可能性がないことを明確に伝えることが大切です。

また、夫婦関係の修復のために行った努力の内容や、それでも修復できなかったことも伝えましょう。

子どもに関する質問

離婚調停では、子どもに関しても質問されます。
特に、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合は、以下のような質問があります。

  • 親権についてどのように考えているか
  • 子どもは現在どのように生活しているのか
  • 夫婦が離婚しようとしていることを把握しているのか
  • 夫婦のどちらと同居しているのか
  • 別居している場合は親と会えているのか など

親権がどちらになるかに影響することであるため、こちらもありのままを正確に伝えるようにしましょう。

養育費や財産分与、慰謝料について

離婚調停では、離婚した際のお金のことについても質問されます。
離婚に関わるお金の問題としては、養育費や財産分与、年金分割、婚姻費用、慰謝料などが挙げられます。

例えば、養育費や財産分与、慰謝料を相手方に請求する場合、具体的な請求額を提示するだけではなく、その金額を請求するに至った経緯や根拠を示す必要があります。
特に一般的な相場よりも高い金額を請求する場合は、より明確な根拠や資料の提示が必要です。
子どもに必要な教育費や医療費の見積書や明細書などの資料や、相手方の有責を客観的に証明できる証拠を提示することが求められます。

お金などの離婚条件に関しては相手方と揉めやすい要素でもあるため、事前に弁護士に相談したり、対応を依頼したりして、金額を検討した上で請求することが重要です。

離婚調停に必要な期間の目安は3~6ヶ月

離婚調停の流れや質問される内容について解説してきましたが、そもそも離婚調停を申し立ててから調停が終了するまでどれくらいの期間になるのでしょうか。

離婚調停は、状況や話し合う項目の多さによって時間が変動しますが、短い場合で2~3ヶ月程度、平均的には4~6カ月程度になるのが一般的です。

ただし、長い場合は1年以上かかるケースもあります。

また、調停期日は平均して2回~4回程度になると考えておきましょう。

離婚調停にかかる主な費用

離婚調停にかかる費用は、以下の2つに大きく分けられます。

  • 申立手続きにかかる費用相場
  • 弁護士に依頼する場合の費用相場

それぞれの費用相場について詳しく解説します。

申立手続きにかかる費用相場

離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てを行い、申し立てる側が費用を負担するのが一般的です。

申立手続きにかかる費用の相場は以下の通りです。

  • 離婚調停申立手数料:1,200円
  • 切手代:1,000円程度(家庭裁判所によって異なる)
  • 夫婦の戸籍謄本取得費用:450円
  • 調停調書謄本費用:1,000円程度

合計額の目安は3,650円程度。

高いとは言えない金額ですが、あらかじめ「手続きにはこれくらいの金額がかかる」ということを認識しておくと「突然の出費にモヤモヤする」という心理的なストレスを減らせるでしょう。

弁護士に依頼する場合の費用相場

離婚調停は当事者のみで行うことも可能ですが、弁護士を代理人として立てることもできます。

弁護士費用は、弁護士事務所や調停期日の回数などによって異なるものの、50万円~100万円程度が相場です。

弁護士費用の簡単な内訳は以下の通り。

  • 相談料:5,000円~1万円程度
  • 着手金:20万円~50万円程度
  • 報酬金:20万円~100万円程度
  • 日当・その他実費:3万円~5万円程度

弁護士に依頼すると、費用面で負担になるというデメリットがありますが、必要な手続きを委任できたり、調停への同席を依頼できるため、精神的な負担や手間を軽減できます。

また、法律の専門家であり、交渉や主張に長けている弁護士に対応を依頼するとで、スムーズな離婚や有利な条件での離婚を目指すこともできるので、離婚調停に関する疑問が不安が多い場合は弁護士に依頼すると安心でしょう。

離婚調停にかかる費用に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、費用面に関する疑問が多いという方は、ぜひ参考にしてみてください。

離婚調停を行うメリット

ここでは、離婚調停を行うメリットを紹介します。具体的なメリットは以下のとおりです。

  • 冷静に話し合えてスムーズに進められる
  • 柔軟な解決が望める

冷静に話し合えてスムーズに進められる

離婚調停を行うメリットの1つが、冷静に話し合えるために離婚協議がスムーズに進められるということです。

離婚調停では、調停委員会がそれぞれの主張を聞いて話し合いを仲介するため、相手方と顔を合わせて直接話をする必要がなく、感情的になることもありません。

協議離婚のように、当事者同士で話し合いをする場合、お互いが意見を主張するため、問題解決までに時間がかかったり、協議が不調に終わったりする恐れがあります。

離婚調停では冷静な話し合いが可能になるため、スムーズに離婚が成立する可能性もあるでしょう。

柔軟な解決が望める

柔軟な解決が望めるのも、離婚調停のメリットです。
離婚調停では、当事者たちの主張を尊重することに重きが置かれています。また、調停委員会に仲介してもらっているものの、基本的には話し合いによって離婚の可否や条件などが決定されます。

そのため、相手方との合意が得られるのであれば、離婚に関する条件をさまざま方法や内容で細かく定めることができるのです。
裁判離婚となった場合、離婚条件は過去の判例を基に判断されることが多いため、離婚条件について当事者が決められる範囲が限られてしまいます。

裁判では通らないような条件であっても、相手の同意次第で要求が通る可能性があるというのは離婚調停の大きなメリットといえます。

離婚調停を行うデメリット

一方、離婚調停には以下のようなデメリットもあります。

  • 長期化してお金や時間がかかる可能性がある
  • 自分にとって不利な条件になる可能性もある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

長期化してお金や時間がかかる可能性がある

調停が長期化して、費用や時間がかかる可能性があるのが、離婚調停のデメリットです。

離婚調停は当事者間の合意がなければ成立することはありません。

そのため、どちらか一方が解決案の内容に同意しない場合や、双方の主張がこじれてしまうような場合は、調停が長期化することになります。

離婚調停が長期化した場合、何度も家庭裁判所に足を運ぶことになるため、仕事をしている場合は休みを取得したり、早退・遅刻したりしなければならなくなる恐れがあります。また、家庭裁判所と自宅を往復する交通費も負担しなければなりません。

離婚調停が長期化するほど、お金と時間がかかってしまう点は、覚悟した方がいいでしょう。

自分にとって不利な条件になる可能性もある

自分にとって不利な条件で離婚になるケースがあるのも、離婚調停のデメリットです。

調停委員は中立的な立場ではあるものの、基本的に和解で落ち着かせたいとする傾向にあります。そのため、双方の主張の中間を取った解決案を提案することがよくあります。

また、相手方が強引な主張をしてきた場合、こちらに対して譲歩を求めてくるケースもあります。さらに、相手に弁護士が付いている場合、相手の意見に引っ張られることも考えられます。

他にも、不公正な方法で話し合いを進めようとする調停委員も、残念ながら存在します。
そして、相手方が主張してきた解決案が自分にとって不利なものであったとしても、合意してしまえば調停は成立してしまいますし、一度成立したものを後から覆すのはかなり難しくなります。

また、離婚調停の調停委員は法律の専門家ではない一般の方が務めます。
40歳以上70歳未満の弁護士や医師、大学教授、公認会計士などの専門家や、地域社会に密着して活躍してきた人など、さまざまな分野の人が調停委員に選出されています。これは、一般市民の良識を反映させるためです。

なお、調停委員は裁判官1名を含めて3名で構成されますが、裁判官は調停が成立するタイミングでのみ参加するため、調停中は調停委員と当事者のみで協議を行うことになります。

当事者のみで調停を進めることも可能ですが、自分の主張を通して有利に離婚したいのであれば、調停への対応を弁護士に依頼した方が得策といえます。

離婚調停を申し立てられたら準備するべきこと

もし、配偶者に離婚調停を申し立てられた場合は、パニックになったり感情的になったりせずに、まずは以下の4つのことに関して、確認や準備をするようにしましょう。

  1. 予定されている調停期日に出席できるか確認する
  2. 相手方の主張の確認をする
  3. 提出する書類の準備をする
  4. 離婚に関連した問題について自分からも申立を行う

それぞれの準備事項について詳しく解説します。

予定されている調停期日に出席できるか確認する

離婚調停が申し立てられると、家庭裁判所から出席を求める書類が届きます。

書類を受け取ったら、まずは予定されている「調停期日」に出席できるか確認してください。

離婚調停は平日の日中に開かれ、1回あたり1〜2時間程度かかります。

初回は、調停委員がお互いの言い分を聞いて、離婚に関する争いの全体像をしっかり把握するために、1〜2時間以上の時間がかかる可能性もあるので、余裕を持ってスケジュールを空けておくのがおすすめです。

ただし、初回の調停は、調停を申し立てた人と裁判所の都合を踏まえて決定されるため、参加する意思があっても、「どうしても参加できない」という場合もあるでしょう。
そういう時は、できるだけ早く、裁判所に連絡を入れるようにしてください。

決められた日程での出席が原則ですが、どうしても出席できない事情がある場合には、裁判所に初回期日への欠席を伝えて、次回期日から出席する意思があることを伝えれば不利になることはありません。
休む理由を連絡する際に、次回に出席できる日程の候補をいくつか伝えるのもおすすめです。

相手方の主張の確認をする

裁判所から送られる離婚調停に関する書類には、期日の連絡だけでなく、「調停申立書」の写しも一緒に送られてきます。

「調停申立書」には、財産分与、慰謝料、年金分割、子どもの親権や面会交流権、養育費などの離婚に関する条件についてや、配偶者が主張する離婚原因が記載されているので、しっかり読んで相手方の主張を確認するようにしましょう。

また、送られてくる書類の中には入っていませんが、調停の申立人である配偶者は「事情説明書」や「子についての事情説明書」という、離婚調停に至った事情や話し合いの状況、予想できる争点、離婚の有無などを記載した書類を提出しています。

この事情説明書は、裁判所の許可を得ると閲覧することができるので、相手の主張をより詳しく把握したい場合は、閲覧の申請を行いましょう。

提出する書類の準備をする

裁判所から送られてくる書類には、以下のような書類も入っています。

  • 答弁書
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 連絡先等の届出書

調停を申し立てられたら、これらの書類に必要事項を記入して、期限までに提出しましょう。

特に大切なのは答弁書。

答弁書は、裁判所によって、形式が多少変わることもありますが、基本的には簡単なチェック方式です。
チェックできる項目だけでは、十分に考えを伝えられない場合は、「別紙の通り」として、別の紙に自分の考え・主張を記載して一緒に提出することもできます。

調停委員に自分の主張・考えを伝えるための重要な書類なので、よく考えながら記入するようにしてください。

また、「事情説明書」には、相手方と意見が異なる点・争点になりそうなことなどを記載します。

事情説明書は裁判所の許可で、相手方も閲覧することができる書類なので、記載内容には注意するようにしましょう。
どうしても相手方に閲覧されたくない場合は、「非開示の希望に関する申出書」を添付するのがおすすめです。

提出書類には、感情的な記載は控えて、できるだけ事実のみを記載するようにしましょう。

離婚に関連した問題について自分からも申立を行う

離婚に関連して主張したい問題について自分からも申し立てを行うことができます。

「離婚調停の関連事件」として申し立てを行うことで、同じ担当者が全ての事件を担当してくれるので、同日に複数事件の期日を設定してくれたり、一括解決を目指すことも可能。

例えば、自分の方が、相手よりも収入が低い場合や、子どもの監護をしている場合は「婚姻費用分担請求調停」を申し立てて、生活のための費用の婚姻費用を請求したり、親権を獲得したい場合には子どもの監護者指定・引き渡し請求をしたり、子どもとの面会をしたい場合は面会交流権の請求をしたりすることができます。

離婚調停でやってはいけない4つのこと

離婚調停では「やってはいけないこと」があります。調停委員からの信頼を失う可能性があり、調停が不利になる恐れがあるためです。
以下に該当することはしないよう心がけましょう。

  1. 離婚調停で不利になるような発言をする
  2. 断で調停を欠席する
  3. 調停の内容を録音・撮影する
  4. 離婚調停中に別居を始める

それぞれ詳しく解説します。

1.離婚調停で不利になるような発言をする

離婚調停で注意したいのが、不利になるような発言をしないことです。

発言次第では、調停委員からの心証が悪くなる可能性があり、調停が不利に進む恐れがあります。

具体的に避けるべきなのは、以下のような発言です。

  • 相手や調停委員に対する悪口・暴言
  • 自分に都合のよい条件ばかりを強調する発言
  • 簡単に相手の条件を受け入れるような発言
  • 相手と直接交渉したいという発言
  • これまでの意見と矛盾するような発言

それぞれの発言や影響に関して、詳しく解説します。

相手や調停委員に対する悪口・暴言

調停の相手や調停委員に対する悪口や暴言は、離婚調停において不利になる可能性が高いといえます。

離婚調停の場においては、相手の悪口や愚痴などを伝えて、相手を不利にしようとする人がいます。

しかし、調停委員が把握したいのは、申立人が離婚を決断した事実や経緯です。相手の悪口や愚痴は、当事者が相手を許せないことは伝わっても、具体的な事実を伝えることにはならないのです。

そればかりか、調停委員に「感情的になりやすい人物」「相手を貶める発言をする人物」という印象を与えかねません。結果として、自分が不利になる可能性が高いため、相手に対する悪口は慎み、事実や経緯を明確に伝えられるようにしましょう。

また、調停委員に対する暴言も絶対に避けなければいけません。
離婚調停では相手に対する不満で感情的になりやすい状況にあるため、さまざまなことがきっかけで、暴言につながるケースが多いのです。
例えば、以下のようなケースでは苛立ちを感じやすく、暴言につながりやすいといえます。

  • 調停委員がこちらの話を聞かないように感じる
  • 調停委員が相手ではなくこちらばかりを説得しているように感じる
  • 複数回調停を重ねても同じことばかり話し合っているように感じる
  • 以前主張したことを調停員が把握してないように感じる
  • 相手方が前回の調停で決まったことを守ろうとしない

調停委員への暴言は、調停委員だけではなく裁判官からの心証も悪くなることがあり、その後の訴訟にも影響する可能性があります。
できるだけ冷静になるよう努めて、暴言につながらないよう気をつけましょう。

簡単に相手の条件を受け入れるような発言

離婚調停では、相手が提示してきた条件を簡単に受け入れるような発言も避けましょう。
相手方の条件に対して譲歩ばかりしていると、不利な条件での離婚となってしまうためです。

離婚調停は、調停委員会が仲介に入り、当事者がどこで折り合いをつけるのか、妥協点を探す性質があります。逆にいえば、適正な判断を下すというものではありません。
こちらが相手方の条件に受け入れる人物であると判断した場合、調停委員会はこちらに対してばかり譲歩を求めるよう動く可能性すらあります。

繰り返しになりますが、一度調停が成立してしまうと、後から覆すのは非常に困難です。そのため、譲れないポイントについては自分からも主張することが大切です。

特に、親権や養育費、財産分与、慰謝料など、譲れないポイントを明確に伝え、他の部分で調整できないか協議するようにしてください。

相手と直接交渉したいという発言

調停中に相手と直接交渉したいという発言も、避けるべきです。

調停委員や裁判官から危険人物であると認識される恐れがあるためです。
離婚調停は、内容や状況によって協議が難航するケースが多々あり、上記のような発言につながることがあります。

直接交渉を望むのはその方が有利になることをわかっていると考えられる他、相手に何らかの危害が加えられる可能性もあります。

そのため、調停委員や裁判官は直接交渉しないように止めることになります。
離婚調停になっている以上、相手方と直接交渉することはできません。それどころか発言によって調停がかなり不利になる他、相手方や子どもに危険が及ぶと判断されると面会交流について相手方に有利な結果になる恐れもあります。

男女問わず、相手と直接交渉する、相手に直接請求するという発言は控えるようにしましょう。

これまでの意見と矛盾するような発言

これまでの主張や意見とは矛盾するような発言も避けてください。

調停委員からの信用を失い、自分が主張することが受け入れられなくなる恐れがあるためです。

提示された客観的な証拠と発言が食い違う場合、単純に発言者を信用するのは難しくなります。

例えば、妻に対して「洗濯や掃除をせず、食事も作らない」と発言した後に、「家事ばかりしていて自分の相手をしてくれない」といった場合、どちらの発言が正しいのか判断できなくなる他、状況によってはどちらの発言も信じてもらえなくなるケースがあります。

離婚調停では論理が通っているか、客観的な事実は何かということが重視されます。これまでと矛盾するような発言があれば一気に不利になることもあるため、十分注意してください。

2.調停を無断欠席する

離婚調停の調停期日は、無断で欠席してはいけません。
無断欠席することで、以下のようなリスクが伴います。

  • 民事調停法により、5万円以下の過料が発生する
  • 調停委員会や裁判官からの印象が悪くなる
  • 調停が不成立となった場合、離婚成立まで時間がかかる
  • 訴訟に発展した場合に不利になる

離婚調停の申し立てがあった場合、第1回期日は裁判所から一方的に日時が指定されます。また、離婚調停は平日の日中に実施されるため、どうしても出席できないケースが発生します。

しかし、無断欠席は上記のようなリスクが発生するため、参加できない場合は必ず裁判所に連絡することをおすすめします。
なお、一度調停に参加すれば、次回以降の調停期日はお互いの予定を確認した上で日程が調整されます。

3.調停の内容を録音・撮影する

離婚調停などの家事調停において、録音や撮影は原則禁止されています。

これは家事事件手続規則と民事訴訟規則によって定められています。どのような理由があった場合でも、基本的に録音・撮影は認められないことを理解しておきましょう。

ただし、メモを取ることに関しては禁止されておらず、ペンやノートを持参して記録することは可能です。
協議の内容を忘れないようにする他、次回の調停の日時を記録するためにも、離婚調停にはノートや筆記具を持参することをおすすめします。

参考:民事訴訟規則平成8年12月17日最高裁判所規則第5号第77条|裁判所

参考:家事事件手続規則(原文は縦書き)平成24年最高裁判所規則第8号第126条2項|裁判所

4.離婚調停中に別居を始める

離婚調停中に、相手方と別居を始めるのも避けるべきです。
離婚調停中はお互いに夫婦の関係にあり、夫婦には民法によって同居の義務があるためです。

離婚調停が始まった時点ですでに別居しているケースでは問題はありませんが、離婚調停中に別居する場合は、相手方に承諾を得ることを忘れないようにしましょう。

仮に、勝手に別居を始めた場合、法定離婚事由である悪意の遺棄に該当する場合があり、別居した側がもう一方から慰謝料を請求されるケースもあります。

ただし、別居する側がもう一方からDVなどの被害を受けているような場合は、身体の安全確保が必要になるため、勝手に別居しても構いません。

また、相手方が不貞行為やDVなどの法定離婚事由に該当する行為を行った場合も、別居する正当な理由があると判断されます。この場合は、相手方が有責であるという客観的な証拠が必要になる点には注意しましょう。

参考:民法第752条同居、協力及び扶助の義務

参考:民法第770条1項2号裁判上の離婚

離婚調停を有利にするためのポイント

離婚調停を数多く経験することはほとんどありません。それは相手方も同じです。そのため、離婚調停を有利に進めるためのポイントを把握しておくことが大切になります。
具体的なポイントは以下のとおりです。

  • 主張や希望条件を明確にする
  • 証拠を用意しておく
  • リハーサルを行う
  • 調停委員を味方にする
  • 弁護士に依頼して調停に同席してもらう

それぞれ詳しく解説します。

主張や希望条件を明確にする

離婚調停を有利に進めるためには、自分の主張や希望条件を明確にすることが大切です。
自分の主張や希望が調停委員に伝わらなければ、不利な条件での離婚を強いられる可能性があるためです。

調停委員に対して主張・希望をきちんと伝えるためには、調停が始まる前に主張や条件について整理して陳述書としてまとめておきましょう。また、相手方の不倫やDV行為など、法定離婚事由がある場合も、書面に記録しておきます。
書面にまとめておくだけで、口頭で伝えるよりも確実にこちらの考えを伝えられるでしょう。

また、調停期日の1週間前くらいには、書面を調停委員に提出しておくことをおすすめします。
調停委員は普段から裁判所にいる人物ではありません。普段は別の仕事をしていて、調停の直前に集合し提出された書類に目を通して、簡単な打ち合わせをするだけで調停に臨んでいます。

調停期日前に時間を持って提出しておくことで、調停委員が書類を読む時間的な余裕ができる可能性があります。
また、膨大な情報の陳述書を提出しても、すべてに目を通すとは考えにくいため、陳述書はA4用紙1枚程度にまとめておきましょう。

その場で考えるだけでは、自分の考えが相手に伝わらないこともあるため、事前の準備をしっかり整えて調停の望むことを意識してください。

証拠を用意しておく

離婚調停を有利に進めるためには、離婚の原因となる事柄を客観的に証明できる証拠を準備しておくことも重要です。
相手方の不貞行為やDVといった法定離婚事由にあたる行為がある場合、証拠を提出することで客観的な裏付けとなるためです。

証拠を裁判まで残しておきたいと考える場合があるかもしれませんが、強力な証拠がある場合は責任のある相手方に対して譲歩を求める流れになる可能性があります。

また、法定離婚事由にあたる行為を証明する証拠があることで、調停内でも相手方に慰謝料を請求可能です。

裁判とは違い、離婚調停ではお互いの合意が得られれば相場よりも高額な慰謝料を獲得できる可能性もあります。

さらに、離婚時に請求する財産分与に関しても、預金通帳のコピーや源泉徴収票、保険証書など、相手方と自分の財産が客観的に確認できる資料や証拠があれば請求・計算がしやすくなります。
いずれの場合も離婚調停を有利に進められる材料となるでしょう。

リハーサルを行う

離婚調停を有利に進めるためには、事前にリハーサルをしておきましょう。
自分が分かりやすく伝えているつもりでも、実際には伝わりにくいケースがあるためです。また、実際に調停の場にいれば、緊張してうまく話せなくなることもあるでしょう。

さらに、調停委員に少しでも良い印象を持ってもらうためには、話し方や伝え方にも工夫が必要です。
自分の主張が相手にちゃんと伝わっているか確認するために、友人や知人、弁護士などに相談して事前に応答の練習をし、アドバイスをもらってください。

また、練習相手がいない場合は、自分の応答内容を録音して確認するのがおすすめです。話し方や声色、伝え方など、修正すべきポイントが見つかるはずです。

調停委員を味方にする

離婚調停を有利に進めるためには、調停委員を味方にすることが重要です。
調停委員には、中立や公平を保つ役割こそあるものの、それぞれ1人の人間であるため、印象が良ければ調停が有利に進む可能性があるためです。

特に、調停の初期の段階では、こちらの主張が無理難題ではなく、相手方の主張がおかしいことを理解してもらうために、調停委員とは言い争わず、良い印象を与えることを意識した方がいいでしょう。
調停委員に良い印象を与えるためには、服装や身だしなみを意識すべきです。華美な服装や清潔感のない服装は避けるようにしましょう。

また、調停委員と話をする際は、感情的にならないように意識し、冷静で落ち着いた対応を心がけましょう。

弁護士に依頼して調停に同席してもらう

離婚調停で、適切に自分の考えや意見を主張するのはなかなか難しいことです。

緊張して上手く話せずに不利になってしまうということもあります。

離婚調停で自分の主張を十分に伝えるためにも、弁護士に依頼して調停に同席してもらうのがおすすめです。

弁護士に依頼すれば、法的な知識や離婚調停に出席した経験から、自分の考えを適切に主張する方法についてアドバイスをもらえるため、離婚調停を有利に進めることができるでしょう。

また、弁護士に依頼すると、裁判所に提出する書面作成や、主張に必要な証拠集めのアドバイス、どうしても調停に出席できない場合の代理出席という対応もしてもらえるため、精神的な負担を減らすことができます。

弁護士に依頼しなくても離婚調停を進めることはできますが、「できるだけ有利に調停を進めたい」「離婚調停に不安がある」という人は、弁護士に相談することを検討してみてください。

まとめ

本記事では、離婚調停の流れや費用、解決までの期間、調停中にやってはいけないことなどについて解説しました。

離婚調停は家庭裁判所の調停委員会を仲介にして、離婚についての合意や離婚条件などについて話し合う手続きです。
双方が合意して離婚調停が成立した場合、裁判の判決と同等の効力を持ちます。

離婚調停を多く経験している人はほとんどいないため、どのように振る舞うべきか、どのように動くべきなのかがわからずに、不安に思っていることでしょう。

そのため、どのようなことをしてはいけないのか、調停を有利に進めるにはどうすればいいのか、本記事を参考に把握しておくことをおすすめします。

また、離婚調停を有利に進めるためには、弁護士のサポートが武器になります。調停での対応や訴訟に発展した場合も考えて、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

離婚調停に関するよくある質問

離婚調停で話し合いをスムーズに進めるには?

離婚調停で話し合いをスムーズに進めるためには、事前に陳述書を提出するのがおすすめです。
離婚調停の申立書には、申し立ての理由を記述できますが、すべてを書ききれない場合があるためです。
また、事前に主張したいことや希望することを整理して、陳述書にまとめておけば、こちらの考えを調停委員にきちんと伝えられます。
さらに、事前に陳述書を提出することで、調停委員が内容を確認した上で調停期日を迎えられる可能性があります。
離婚調停の時間には限りがあるため、事前に陳述書を提出することで、時間を短縮できる効果も期待できるでしょう。
このように、陳述書を作成・提出することで、離婚調停での話し合いをスムーズに進められるのです。

離婚調停はどのような雰囲気の中で行われる?

離婚調停の雰囲気は、比較的和やかな雰囲気で行われると考えておきましょう。
離婚調停は話し合いをするための手続きで、問い詰められたり、命令されたりするようなものではありません。肩の力を抜いて、冷静に対応できれば問題ないでしょう。
また、調停は調停室と呼ばれる小さな会議室のような部屋で行われます。長いテーブルと椅子が置いてあり、調停委員と当事者(弁護士同伴の場合あり)が着席して話し合いを進めていきます。
ただし、調停委員個人の性格によっては、冷たく感じられるような態度を取られるケースもあります。
このような場合に備えて、事前に弁護士に対応を依頼して同席してもらうのがおすすめです。弁護士なら調停委員の態度についても指摘してもらえるでしょう。

「離婚調停は女性が有利」なのは本当?

離婚調停では女性が有利になるという話を耳にしたことがあるかもしれませんが、実際には性別は関係ありません。

基本的には男女どちらに対して公平・中立となるのが原則と考えておきましょう。

離婚調停で女性の方が有利と感じられてしまう原因は以下のとおりです。

  • 女性側が親権を獲得するケースが圧倒的に多いから
  • 男性側が金銭を支払うことが決まるケースが多いから

子どもがいる夫婦が離婚する場合、女性が親権を獲得するケースが圧倒的に多い傾向にあります。これは母性優先の原則があるためです。
母性優先の原則とは、子どもの福祉の観点から、子どもは父親よりも母親と暮らす方が望ましいとされる一般原則です。
10歳以下の子どもがいる場合、母親と暮らすのが望ましいとされ、15歳以上になれば子どもの意思が尊重されることになります。
つまり、正当な理由がない限り、男性側が親権を獲得するケースはほとんどないともいえるのです。
次に、共働きの夫婦の場合、男性側の収入の方が多い傾向にあります。そのため、養育費や財産分与、婚姻費用などについて、男性側が女性側に支払うケースが多くなります。
この点も女性が有利と感じられやすい要因といえます。

親権争いを有利にするコツは?

未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合に親権争いを有利にするためには、育児ができる環境を整えることが重要です。
親権者は、育児環境や父母、子どもの事情など、さまざまな要素から判断されます。また、子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を尊重することが法律によって定められています。
そもそも、日本では共同親権が認められていないため、現時点で未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、夫婦のいずれかを親権者として決めなければなりません。
基本的には母性優先の原則があるものの、状況を見て公平に判断されます。そのため、子どもを監護する意欲や健康状態、経済状況、教育環境、親族の援助など、身の回りの環境を整えた上で、子どもを育てていく意思を表明する必要があります。
女性であるからといって、親権が必ず取れるわけではありません。調停前にできる限りの準備を整えておくことが大切です。

調停を申し立てられた場合、拒否できる?

離婚調停を申し立てられた人は、以下の方法で調停を拒否できます。

  • 離婚調停に出席して離婚を拒否する
  • 離婚調停を欠席する

離婚調停は夫婦の離婚の可否や養育費、財産分与といった条件について話し合い、お互いが合意することで成立するものです。互いもしくはいずれかが合意しない場合、調停は不成立となり、離婚は成立しないことになります。
また、両者が揃って実施できる手続きであるため、いずれかが欠席すると調停手続きを行うことができません。そのため、離婚したくない場合は、離婚調停を欠席すれば調停を拒否することは可能です。
しかし、拒否したい場合は調停に出席した上で、離婚を拒否するのがおすすめです。
出席を拒否したからといって相手側が離婚の意思を覆す可能性はほぼないからです。また、調停に出席せずに、こちらの主張や希望を表明しないことへのメリットもありません。
さらに調停を欠席し続ければ、調停が早期に不成立となり、相手方は離婚訴訟を起こす可能性があります。こうなると離婚が成立するまでの期間が短くなるケースもあるでしょう。
調停を拒否することは可能であるものの、拒否する場合は正しく拒否することが大切です。調停に出席した上で、意見を主張するといいでしょう。

離婚調停は弁護士に依頼しなくてもよい?

離婚調停は弁護士に依頼せずに、当事者だけで協議して離婚問題の解決を図ることが可能です。
ただし、離婚調停を弁護士に依頼しない場合、陳述書や資料の作成・取得、家庭裁判所との手続きややりとりなどもすべて1人で行わなければなりません。
そのため、できれば弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
弁護士に対応を依頼すれば、手続きや書類作成を代行してもらえる他、調停にも同席してもらえます。専門知識やノウハウを生かして調停を有利に進められます。
特に仕事や家事、育児に忙しい場合、すべて自分で対応するには限界があります。弁護士に早めに相談してサポートしてもらうことを検討しましょう。

調停成立後はいつまでに離婚届を提出すればいい?

当事者同士で離婚することや条件について合意した場合、離婚調停は成立します。

離婚調停の成立後は、成立日を含めて10日以内に離婚届と調停調書謄本を市区町村の役所に提出することで、正式に離婚成立となります。

離婚届の提出は、離婚調停の申立人が本籍地もしくは住んでいる地域の役所に提出する必要があります。夫婦の本籍地とは異なる市区町村役場に離婚届を提出する場合は、夫婦の戸籍謄本も提出しなければなりません。
離婚届の提出が調停の成立日から10日を過ぎてしまうと、5万円以下の過料が課されるため、提出期限には注意しましょう。
なお、通常の協議離婚の場合、離婚届には夫婦それぞれの署名捺印に加え、成年の証人2人の署名捺印が必要です。
ただし、調停離婚の場合、証人の署名捺印は不要で、かつ離婚届を提出する方のみの署名捺印で受理されます。

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更新日 : 2024年10月09日
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