離婚調停では、自分にとって不利な発言は避けたいところでしょう。とはいえ、慎重になりすぎてしまうと何も発言できなくなってしまい、調停がなかなか進みません。調停を有利に進めるためには不利な発言をあらかじめ把握し、準備しておくことが重要です。
調停で不利になる発言は下記の通りです。調停委員の心証を悪くするおそれがあるため、発言を控えましょう。
- 感情的・根拠のない発言
- 過去の言動と矛盾がある発言
- 希望条件に固執する発言
- 離婚条件を譲歩するような発言
- 不貞行為を疑われる発言
また、当日の発言だけでなく、離婚調停中の行動にも注意が必要です。下記のような行動は、調停を進める上で不利に働く可能性があります。
- 離婚調停の欠席・連絡無視
- 異性との交際・同棲
- 相手方への連絡・訪問
- 子供の連れ去り
- 財産の処分・売却
- 調停の録音・録画
- 無断での別居生活
調停委員は中立公平な存在ではありますが、上記のような発言や行動は避け、できるだけ好印象を与えられるように誠実な対応をとることが、調停を有利に進めるポイントです。また、調停当日にスムーズに話を進めるために、質問される内容を把握したり、陳述書を準備したりしておくのも良いでしょう。
離婚調停を自分で進めるのが不安な場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談する方法もあります。調停の申し立て手続きの負担が減り、適切な主張ができるようにアドバイスしてもらえます。仮に調停が不成立となり、離婚裁判へと発展する場合もサポートしてもらえるでしょう。
本記事では、離婚調停において不利な発言やNG行動、調停を有利に進めるためのポイントを解説します。
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離婚調停中に言わないほうがよい不利な発言
離婚調停では調停委員を味方につけることを意識し、発言する内容への配慮も必要です。下記の内容は調停においては不利な発言となり、調停委員の心証を悪くする可能性があります。冷静でいることを心がけ、調停委員には一貫性のある話を伝えられるように準備しましょう。
- 感情的・根拠のない発言
- 過去の言動と矛盾がある発言
- 希望条件に固執する発言
- 離婚条件を譲歩するような発言
- 不貞行為を疑われる発言
感情的・根拠のない発言
離婚調停で調停委員が知りたいのは、離婚の原因やその原因に至るまでの事実です。そのため、配偶者の批判や悪口などを伝えても意味がありません。
例えば、「収入が低く、家事や子育てに協力しない」「心底嫌いになったので、顔も見たくない」などと感情的な言葉を放ったり、「配偶者は不貞行為を繰り返している」「配偶者から暴力を受けたことがある」と根拠のない発言をしたりしても、調停委員に感情的な人だと判断され、不利に働くだけでしょう。
感情的な言葉や根拠のない発言が続くと、離婚に向けた争点がわかりづらくなるため、調停を長引かせたり、不成立になって裁判に発展したりする可能性もあります。調停委員への印象に配慮するのはもちろん、スムーズに話し合いが進むように、冷静になって事実を伝えるように意識しましょう。
過去の言動と矛盾がある発言
調停委員や裁判官は、発言に一貫性があるか、事実に基づいた話かを重視しています。そのため、過去の発言と矛盾のある発言をしてしまうと心証を悪くしてしまいます。
例えば、「子どもの面倒を一切みない」と言った後に「子どもと遊ぶばかりで家事に協力しない」と発言すれば、一貫性のない発言と捉えられるでしょう。
「この人の話は信頼できない」「自分に都合の良い方向に話をしている」と疑われないためにも、調停前に事実を整理しておき、整合性のとれた発言をしましょう。
希望条件に固執する発言
離婚においての自分の希望を明確にすることは大切ですが、希望条件にこだわりすぎてしまうと話が進まなくなってしまいます。
相場からかけ離れた慰謝料や現実的でない養育費などを要求すれば、調停で話をまとめるのは難しいと判断され、裁判することを勧められてしまいます。調停の場で話をまとめたいのであれば、ある程度譲歩する姿勢も大切です。
どうしても譲れない希望条件があれば、離婚裁判を検討しましょう。ただし、裁判を起こせば、離婚成立までに相当な時間が必要になり、さらに敗訴するおそれもあります。自分にとってメリットがあるのかを考慮したうえで、裁判するかを決めてください。
離婚条件を譲歩するような発言
離婚調停は話し合いによって双方の妥協点を探り、離婚を成立させる場であるため、必ずしも公平な条件で話がまとまるとは限りません。離婚条件に固執しすぎるのはよくありませんが、譲歩しすぎれば自分にとって損な条件で話がまとまる可能性もあります。
仮に、慰謝料の減額について「払えないのであれば、仕方ありませんね」と受け入れた場合、調停委員は「説得すれば譲歩する人」といった印象をもつ可能性があります。すると、その後の財産分与や養育費についても、調停委員が譲歩を促して解決しようとするおそれがあります。調停委員は説得しやすい相手に譲歩を促すこともあるため、相手方が希望条件に固執するタイプだった場合はなおさらでしょう。
不利な条件で話がまとまらないように、安易になんでも受け入れるのではなく、譲るべき点は譲り、堅持すべき点はしっかり主張しましょう。
不貞行為を疑われる発言
離婚調停では、調停委員から離婚を望む理由を聞かれたり、関係の修復を促されたりすることがあります。その際、交際相手の存在や再婚の予定などの話をしてしまうと、「離婚理由はこの人にある」「不貞行為をしていた可能性がある」と捉えられる可能性があります。
長期間の別居、DVやモラハラの事実があるような、夫婦関係が破綻した状態であれば、異性と交際していても不貞行為には該当しません。とはいえ配偶者以外の人との交際は、相手方から慰謝料を請求される、再婚させないために離婚を拒まれるなど、離婚時に不利に働くおそれもあるため、交際相手の存在については発言を控えるのが無難でしょう。
離婚調停中にしてはいけない不利になるNG行動
離婚調停中は、自分に不利になるような行動は避けましょう。下記のような行動は調停委員の心証を悪くし、自分の望む離婚条件が叶わない、離婚を請求できない立場になる可能性があります。
- 離婚調停の欠席・連絡無視
- 異性との交際・同棲
- 相手方への連絡・訪問
- 子供の連れ去り
- 財産の処分・売却
- 調停の録音・録画
- 無断での別居生活
離婚調停の欠席・連絡無視
離婚調停は、1〜2ヵ月に1回の頻度で平日に行われます。第1回目の調停は申立人と裁判所側の都合で日時が決められるため、場合によっては出席できないことも考えられます。仮に都合がつかない場合は、事前に裁判所に相談し、無断欠席するのは避けましょう。
無断欠席は、調停委員や裁判官に悪い印象を与えるおそれもあります。また、家庭裁判所からの連絡や手紙での呼び出しを無視し、複数回の無断欠席を繰り返せば、5万円以下の過料を負う可能性もあります。
異性との交際・同棲
離婚成立までは、異性との交際や同棲を控えましょう。先述した通り、夫婦関係が破綻している場合は不貞行為とみなされませんが、相手方や調停委員は「夫婦関係が破綻する前からの交際なのではないか」と捉える可能性もあります。
不貞行為の疑いをかけられると、慰謝料を請求されることも考えられます。また、不貞行為を行った側は有責配偶者となるため、原則、離婚の請求ができません。相手方が離婚したくないと考えている場合は、なおさら離婚が難しくなります。離婚調停中は異性との交際、離婚時に不利になる行動は避けましょう。
相手方への連絡・訪問
離婚調停は調停委員が双方の話を交互に聞き、その話を他方に伝える形式のため、基本的には当事者同士が顔を合わせて話をすることはありません。
なかなか話が進まなかったり、相手の主張や離婚条件に腹を立てたりすれば、直接相手と話をしたいと考えることもあるかもしれませんが、相手が直接の連絡を拒否している場合は、連絡や訪問を控えましょう。場合によっては、警察を呼ばれたり、ストーカー規制法違反に該当したりするおそれがあります。
また、嫌がる相手への接触で、裁判所より接触禁止令が命じられる場合もあります。接触禁止令とは被害者へのつきまといや、住居や職場近くの徘徊を禁止する保護命令です。接触禁止令を破れば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されることもあります。
子供の連れ去り
離婚調停中に別居している場合、調停と並行して子どもとの面会交流を行うことがあります。仮に面会交流中に相手方の同意を得ずに、子どもを連れ去った場合は誘拐とみなされ、「未成年者略取及び誘拐罪」に問われるおそれもあります。実の親であっても、子どもの生活環境を無理に変える行為は犯罪とみなされるリスクがあることを理解しておきましょう。
子どもの連れ去りによって調停委員や裁判官の心証を悪くし、親権を獲得するのが困難になる可能性も考えられます。離婚調停中は誤解を招かないよう、夫婦間で決めたルールに沿って子どもと関わりましょう。
財産の処分・売却
夫婦どちらかの単独名義のものでも、夫婦が協力し合って形成した資産であれば共有財産となります。共有財産は離婚時の財産分与の対象となるため、離婚調停中に勝手に処分したり、売却したりするのは避けましょう。調停委員や裁判官の心証を悪くし、不利に働くおそれもあります。
また、「自分の財産を使いたくない」など生活費への充当目的以外で、相手方の名義の預貯金を過度に引き出した場合は、損害賠償請求される可能性もあります。
なお、共有財産は現金や預貯金はもちろん、不動産や有価証券、家具や家電、美術品なども含まれます。独身時代に築いた資産、別居以降に築いた資産は共有財産に含まれません。
調停の録音・録画
離婚調停では、裁判官の許可がない限り、写真の撮影や録画、録音が禁止されています。調停中に伝えたいことや、記録したいことがある場合は、メモや筆記用具を持参しましょう。
無断での別居生活
DVやモラルハラスメントなど身の安全が脅かされない限りは、無断で別居するのは避けましょう。夫婦には同居義務があり、民法でも「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。
相手の同意を得ずに別居を開始した場合は、夫婦の協力・扶助の義務を怠ったとみなされる可能性があり、「悪意の遺棄」に該当する有責配偶者と判断されれば、慰謝料を請求されるおそれもあります。
別居したい場合は、配偶者が別居に合意したことを証明するメールやLINEのやり取りなどを残しておきましょう。DVやモラルハラスメントなどが原因で別居する場合は、別居に至る正当な理由があると判断されます。暴力や暴言の事実を示す写真や動画、医師の診断書などが証拠となります。
離婚調停で勝つためのポイント
離婚調停で自分の希望を叶えるためには、事前の準備や当日の振る舞いに配慮することが重要です。具体的には、下記のようなポイントを意識しましょう
- 調停委員によい印象を与える
- 離婚調停の質問を把握しておく
- 主張を陳述書にまとめておく
- 証拠資料を確保しておく
- 冷静な態度を心掛ける
調停委員によい印象を与える
調停委員は中立公平な存在ではありますが、話し合いをスムーズに進めるために、一方の意見に重きを置く場合もあります。そのため、誠実な対応を心がけ、調停委員の信頼を得ることが自分にとって有利に調停を進めることにつながります。
具体的には、下記のようなことを意識しましょう。
- 遅刻や無断欠席をしない
- 書類の提出期限を守る
- 感情的にならず、丁寧な言葉遣いで話す
- 身だしなみや服装に配慮する
離婚調停の質問を把握しておく
離婚調停では、調停委員よりさまざまなことを尋ねられます。事前に質問内容を把握しておけば、冷静に話ができるだけでなく、不利な発言を避けられるでしょう。
申立人と相手方では質問内容が多少異なりますが、離婚調停に至るまでの理由を探るため、どちらにも「結婚した経緯」を聞くケースが多い模様です。
続いて、申立人、相手方それぞれに尋ねられる質問について紹介します。
申立人は離婚を希望する理由を聞かれる
申立人は、離婚の意思をもって家庭裁判所に調停を申し立てている側のため、結婚生活で遭遇した困難や、離婚を考えるに至った背景について説明するように求められます。
その他には、下記のような質問をされます。
- 相手方と離婚についての話をしたか、またその時の反応はどうだったか
- 財産分与や慰謝料、親権、養育費など、どのような条件を提示したいか
- 自分か親権を獲得したい場合は、面会交流についてどのように考えているか
- 別居の有無、生活費など現在の生活状況はどのような状態か
- 離婚後の住まいや仕事、子どもの預け先などはどのように考えているか
- 現在の夫婦関係や、今後修復する可能性はあるか
相手方は離婚を受け入れる意思があるかを聞かれる
離婚調停における相手方とは、離婚を申し立てられた側を指します。離婚の意思がある申立人と異なり、相手方は離婚するつもりがないケースもあります。そのため、調停委員は相手方に対し、離婚を申し立てられてどのような感情を抱いているか、離婚を受け入れる意思があるかを尋ねます。
その他には、下記のような質問をされます。
- 申立人が離婚を望む理由について、思い当たるふしがあるか
- 調停前に申立人と離婚について話をしたか、またその時どのような様子だったか
- 離婚を避けられない場合、財産分与や慰謝料、親権、養育費などどのような条件を望むか
主張を陳述書にまとめておく
離婚調停の1回の時間はおよそ1〜2時間ほどです。限られた時間を有効に活用するためにも、自分の主張をまとめた陳述書を事前に提出しておくと良いでしょう。調停委員が事前に陳述書に目を通すことで、調停当日、話がスムーズに進みやすくなります。口頭で伝えるよりも主張や事実が伝わりやすく、内容に矛盾が生じにくいといったメリットもあります。
陳述書に決まった形式やルールはありませんが、A4サイズの用紙を使用するのが一般的です。枚数が多いと主張したい内容が伝わりづらくなるため、5枚程度までにまとめましょう。陳述書には下記のような内容を記載します。
- 自分と相手方の氏名、年齢、現住所、職業、年収など
- 子どもの氏名、年齢、性別、学校もしくは職業
- 離婚調停に至るまでの一連の出来事
- 離婚時の財産分与や慰謝料、親権、養育費などの希望条件
離婚調停に至るまでの一連の出来事は、離婚を考えるようになった原因や事実などを時系列に沿ってまとめるとわかりやすいでしょう。相手方の批判や悪口といった感情的な文章は避け、事実をベースに記載していくのがポイントです。
証拠資料を確保しておく
離婚調停は、話し合いで解決を目指す場であり、離婚の原因を示す証拠資料などの提出は必要ありません。しかし、自分の主張の根拠となる証拠資料があれば、調停委員もその主張を理解しやすくなります。
例えば、相手方の不貞行為が原因で離婚を望んでいるのなら、配偶者と不倫相手のLINEのやり取り、ラブホテルの領収書、浮気現場をおさえた写真などが証拠資料となります。DVやモラルハラスメントが原因であれば、暴力の事実を示す写真や動画、音声、日々の日記、医師の診断書などが証拠資料として役立ちます。
相手が不貞行為やDV、モラルハラスメントの事実を認めず、慰謝料請求ができないといったことを防ぐためにも、証拠資料をできるだけ集めておきましょう。
冷静な態度を心掛ける
離婚調停の目的は、双方が納得できる妥協点を見つけて解決することです。調停委員が争いになっている点について判断して決着をつけるというものではありません。裁判のように事実を明確化するわけではないため、相手方が事実と異なる内容を主張してきたり、不合理な反論をされたりすることも考えられます。
調停で話をまとめたいのであれば、相手方の対応に不満があっても過剰に反応したり、感情的になったりするのは得策ではありません。円滑に話を進めるためにも冷静さを維持し、妥協点を探りながら相手と交渉しましょう。
事実を明らかにしたい、どうしても相手の主張を受け入れられない、裁判所に判断してほしいといった場合は、離婚裁判を検討してみてください。
まとめ
離婚調停では、冷静な態度で調停委員に事実を伝えることが重要です。根拠のない発言や一貫性のない発言は、調停委員から「信頼性に乏しい」と判断されるおそれがあります。また、離婚条件に固執しすぎるのも考えものですが、譲歩しすぎると自分に不利に働くおそれもあるため、妥協できる点、譲れない点を明確にしておくこともポイントです。
離婚成立までは調停で不利になるような行動を避けるのはもちろん、当日スムーズに話し合いができるように陳述書を提出するなど、事前の準備も意識しておきましょう。
離婚調停の準備に不安を抱えている方や、離婚裁判にも備えておきたいといった方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてください。専門知識を活かしたアドバイスができるため、離婚を有利に進められるでしょう。
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