離婚調停は弁護士なしでも始められる
離婚調停は、弁護士なしのまま自分1人だけで申し立てから調停進行、合意まで進められます。
離婚調停は裁判所・調停委員を間に入れつつも、原則として当事者同士での話し合いによる合意によって円満解決を目指す手続きです。調停の場において、弁護士が家庭裁判所へ出廷しないことには何も問題がありません。
むしろ調停は「本人出頭主義」であり、弁護士を代理人として立てても、本人は出頭するのが原則です。少なくとも調停成立時には、必ずあなた自身が家庭裁判所へ出頭することが求められます。
第五条 事件の関係人は、自身出頭しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させ、又は補佐人とともに出頭することができる。
2 弁護士でない者が前項の代理人又は補佐人となるには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。
3 家庭裁判所は、何時でも、前項の許可を取り消すことができる。
裁判所 家事審判規則
ただし調停は、厳格な判決で勝ち負けを決める民事裁判とは異なります。
裁判官に加えて「調停委員(裁判官とともに話し合いの中で合意をあっせんし紛争解決へ導く者)」という第三者を入れて進められます。また民事裁判と比較すると、調停は必要書類を揃えて申し立てた後、調停期日に家庭裁判所へ赴くだけで始めることが可能です。民事裁判よりも、利用しやすい制度だと言えるでしょう。
なお調停に限らず、裁判所で民事裁判を提起する場合でも、弁護士を付けずに本人訴訟として手続きができます。
離婚調停を自分で行うときの流れ
弁護士なしで離婚調停を自分で行うときは、次の流れに沿って進めます。
- 離婚調停の申し立て:必要書類の提出
- 調停期日:調停員を介した話し合い
- 調停成立・不成立:調停調書の作成または審判手続
離婚調停の手続きを進める前には、「離婚調停で自分が求める結果(慰謝料の金額、養育費、子どもとの面会交流、親権など)」や「離婚調停で主張したいこととその証拠」などを確認しておきましょう。
主張が曖昧なまま離婚調停に挑むと、あなたが求める離婚の形にならなかったり、離婚自体が不成立になったりするリスクがあります。
以下では、離婚調停を自分で行うときの流れを見ていきます。
1.離婚調停の申し立て:必要書類の提出
離婚調停を申し立てるには、まず必要書類や申し立てに必要な収入印紙などを揃えます。その後、書類に必要事項を記入したら、「相手方の住所地を管轄とする家庭裁判所」または「当事者が合意で定める家庭裁判所」へ提出します。
離婚調停で必要になる書類は次の通りです。
- 夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
- 事情説明書(離婚または夫婦関係調整)
- 連絡先等届出書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
また、以下の書類も必要に応じて提出します。
- 子についての事情説明書
- 非開示の希望に関する申出書
- 年金分割のための情報通知書
提出後は1~2週間程度で家庭裁判所から初回の調停期日の候補を挙げられるので、都合がよい日を選んでください。
なお離婚調停では、離婚成立そのもの以外にも、離婚に付随して発生する慰謝料、養育費、財産分与、年金分割の割合などについても話し合いができます。もし離婚調停等で話し合いをしておらず、離婚後に財産や慰謝料について争いが発生したときは、別途調停を申し立てすることになります。
例えば財産について話し合いがまとまらない場合は「財産分与請求調停」、不貞行為などで受けた精神的苦痛や離婚に対する精神的苦痛で慰謝料について話し合うときは「慰謝料請求調停」、離婚後の年金の按分割合について決めたいときは「年金分割の割合を定める調停」などを申し立てましょう。
以下では、離婚調停の申し立てに関する必要書類の概要を解説します。裁判所には書類をコピーしたものを提出し、期日になったら原本を持参してください。
夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
夫婦関係調整調停(離婚)の申立書とは、申し立ての趣旨・理由や収入印紙・予納郵便切手、離婚調停の当事者の情報などを記入する書類です。調停用の申立書にはほかにも夫婦関係調整調停(円満)や離婚後の紛争調整調停などがあるので、書類の種類を間違えないように注意しましょう。
→裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)の申立書」
事情説明書(離婚または夫婦関係調整)
事情説明書(離婚または夫婦関係調整)は、申し立て内容に関する事項を記入する書類です。調停経験、調停で予想される対立事項、婚姻期間や別居期間、同居している家族、それぞれの収入、住居状況、財産状況、不和になった理由や調停を申し立てた経緯などを記入します。
→裁判所「家事調停の申立て」
連絡先等の届出書
連絡先等の届出書とは、調停に関する各種書類の送付先や、裁判所からの連絡を受ける連絡先などを記入する書類です。
進行に関する照会回答書
進行に関する照会回答書とは、調停を進めるうえで配慮してほしいことや気になることを記入する書類です。「相手が裁判所の呼び出しに応じるか」「調停での話し合いは円滑に進められるか」「相手方が暴力や暴言の恐れがあるか」などを回答します。回答結果を相手方に見せることはありません。
→裁判所「家事調停の申立て」
夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)は、2024年3月1日より始まった「広域交付制度」によって、本籍地以外の役所での手続きでも取得できるようになりました。提出を求められるのは、申立日より3ヶ月以内のものです。
子についての事情説明書
子についての事情説明書とは、未成年の子どもがいる場合に「誰が子どもの監護をしているか」「別居している親と子どもの関係」などを記入する書類です。
→裁判所「家事調停の申立て」
非開示の希望に関する申出書
非開示の希望に関する申出書とは、相手方に申立書に記載された住所や勤務先を知られたくないとき、申立書を相手方に送付しないという希望を出すために提出する書類です。
→裁判所「非開示の希望に関する申出について」
年金分割のための情報通知書
年金分割のための情報通知書とは、離婚に伴って相手方に年金分割を求めるときに提出する書類です。
→裁判所「年金分割の割合を定める調停の申立書」
そのほか必要な書類
離婚調停で養育費が必要な子どもがいる場合、源泉徴収票や給与明細の写しなど収入がわかる資料を準備しておく必要があります。財産分与を行うときは、不動産登記事項証明書や預金通称の写しなど夫婦の財産がわかる資料を準備しましょう。
2.調停期日:調停員を介した話し合い
第1回の調停期日は、申し立てから1〜2ヶ月後に設定されるケースが多いです。調停期日が来たら申し立てをした家庭裁判所へ向かい、初回の調停に進みます。調停の流れは次の通りです。
- 受付を行い、待合室で待機する(相手方とは別々の部屋になる)
- 調停委員から呼ばれたら調停室へ入室し、調停進行の説明や離婚調停の経緯などを話す(30分程度)
- 調停室から退室したら相手方が調停室へ入るので、待合室で待機する
- その後は交互に調停室にて話を行い、2~3時間程度話し合いを進める
- 解決案に合意できたら調停終了、まとまらないときは第2回期日を設定する
- その後は調停成立・不成立が決まるまで1ヶ月~1ヶ月半の間隔で離婚調停を継続する
なお、「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、婚姻関係事件の平均調停期日回数は3.4回、平均期日間隔は2ヶ月となっていました。
3.調停成立・不成立:調停調書の作成または審判手続
どこかの調停期日で双方が合意に至ったときは、合意内容に基づいた「調停調書」が作成されます。調停調書には、民事裁判における判決と同じ効力があります。
調停調書は一度作成されると、内容の変更や取消は認められません。調停調書が作成される前には裁判官が内容を読み上げるので、本当に内容に問題がないかをしっかりとチェックしましょう。
もし調停調書の内容にしたがわない場合は、財産を直接差し押さえる強制執行や、応じるまで金銭的ペナルティが発生する間接強制などを、調停調書にしたがわない側に申し立てできます。
調停が不成立に終わったときは、調停の内容などを基に裁判官が判決を下す審判に移行します。その審判結果に不服申立てが行われたら、その後は民事の離婚裁判となるのが一般的です。離婚裁判まで進むと、離婚成立まで年単位の時間がかかる可能性があります。
離婚調停に弁護士なしで臨むメリット・デメリット
離婚調停に弁護士なしで臨むことには、メリットとデメリットの両面があります。
まずメリットとして挙げられるのは、費用面の負担を大幅に抑えられる点です。弁護士に依頼すると50万~100万円程度の費用がかかりますが、自分で調停を進めれば収入印紙代や郵便切手代、戸籍謄本取得費など、合計でも3,000円前後ですので、費用を大きく節約できます。
また、自分自身のスケジュールに合わせて調停日程を調整しやすくなるのも利点です。さらに、調停の場で自分の意見を直接調停委員に伝えられるため、自分の気持ちや希望を率直に表現できるという良い面があります。
一方で、デメリットも多く存在します。法的知識が乏しいまま臨むと、自分に不利な条件で合意してしまうリスクがあります。特に相手に弁護士がついている場合は、交渉力の差が明らかになるケースが多いです。
また、書類作成や調停での主張準備、裁判所とのやりとりなど、すべて自分で対応しなければならないため、精神的な負担も大きくなります。加えて、裁判所のルールや法的手続きを理解していないと、提出書類に不備が生じたり、調停の進行が遅れたりすることもあります。
弁護士を依頼せずに離婚調停を成功させるためのコツ
弁護士に頼らず離婚調停を進めることは可能ですが、成功させるには準備と工夫が欠かせません。ここでは、調停を有利に進めるために知っておきたい4つのポイントをご紹介します。
証拠として認められる資料を準備する
離婚調停においては、主張の裏付けとなる証拠資料の有無が結果に大きく影響します。たとえば、不貞行為やDV、モラハラなどの法定離婚事由がある場合は、それを客観的に証明できる写真やメッセージ履歴、診断書、音声・動画などの記録を用意しましょう。これらの証拠がしっかりしていれば、調停委員や相手方にあなたの主張の正当性を理解してもらいやすくなります。
ただし、自分でこれらの証拠を集めるのは精神的・身体的な負担が大きく、場合によっては相手に気づかれて関係が悪化するなどのリスクも伴います。そのため、不貞行為の証拠収集などを確実かつ安全に進めたい場合は、探偵などの専門業者に依頼することも選択肢の一つです。専門家の力を借りることで、法的にも有効とされる証拠を適切な形で入手できる可能性が高まります。
自分の意見や要求の根拠を明確に示す
調停の場では、単に自分の気持ちを述べるのではなく、なぜその条件を求めるのか、どんな背景や事情があるのかを、冷静かつ論理的に伝えることが求められます。その際は、主張を事前に紙にまとめておくのがおすすめです。書面に整理しておくことで、調停中に話がまとまらなくなるのを防げるだけでなく、調停委員にとっても内容が理解しやすくなります。自分の主張を「分かりやすく説明する」ことが成功への鍵です。
調停委員の理解と共感を得る
調停では、相手と直接やり取りするのではなく、調停委員を介して話が進みます。そのため、調停委員との良好な関係づくりがとても重要です。丁寧な言葉遣いや誠実な態度を意識することで、調停委員の心象が良くなり、あなたの立場に寄り添ってくれる可能性が高まります。調停委員は中立な立場ではありますが、法的・道義的に納得できる主張に対しては、相手側に説得を試みてくれることもあります。
調停前に専門家のアドバイスを受ける
弁護士に依頼しない場合でも、事前に一度は相談してみることをおすすめします。すべてを任せる必要はありませんし、初回相談が無料の法律事務所もあります。専門家に話を聞くことで、調停の進め方や重視されるポイント、自分の主張の強み・弱みを整理できるため、調停当日に落ち着いて対応することが可能になります。準備不足が原因で不利にならないよう、専門家の知見をうまく活用しましょう。
離婚調停で弁護士に依頼したほうがよいケース
自分だけで離婚調停を進められるとはいえ、費用面でのデメリットを考慮しても、弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。ここからは、以下の離婚調停で弁護士に依頼したほうがよいケースについて詳細を見ていきます。
- 労力や時間をかけたくない場合
- 不利な条件を飲まされたくない場合
- 金銭面での争いがある場合
- 親権の取得を考えている場合
- 相手が弁護士を雇っている場合
- DVやモラハラがある場合
- 相手が調停を拒否している場合
労力や時間をかけたくない場合
家庭裁判所への申し立てに必要な書類の取得や、離婚調停中に使用する資料の作成には多大な労力と時間がかかります。また離婚調停中は、月に1回程度のペースで平日に家庭裁判所へ足を運ばなければなりません。とくに仕事や子育てがある人にとって、時間の捻出や体力消費は大きな負担となるでしょう。
弁護士に依頼すれば、必要書類の作成・提出のサポート、相手方との交渉・裁判所への出頭の代理を任せられます。例えば弁護士なら「職務上請求」を行うことで、第三者でありながら戸籍謄本や住民票などの書類を取得できます。
不利な条件を飲まされたくない場合
離婚調停においては、調停委員の意見や対応が結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。
前述のとおり、調停委員は有識者ではあるものの法律の専門家ではないケースもあります。法的に間違った解釈を指摘できなかったり、こちら側の主張の不備を見逃したりといったケースが想定されます。
また調停委員は裁判官のような中立の立場という前提があるものの、実際には説得しやすそうなほうを説得する、感情的な判断をするといった傾向があります。
弁護士を付けておけば、法的知識を基にしたアドバイスを受けることができ、陳述書、答弁書、主張書面などでの的確な反論が可能です。相手方や調停委員からこちら側に条件が掲示されても、不利な条件か妥当な条件かをしっかりと判断してくれます。弁護士は中立な立場ではなく、依頼者のあなたにとって有利になるように離婚調停を進めてくれます。
また弁護士が同席すれば、調停委員へ「弁護士を付けるほど本気で離婚したいのか」という確固たる意思を伝えることが可能です。
金銭面で争いがある場合
離婚調停では、慰謝料、養育費、財産分与、年金分割といったお金関係の話し合いが長期化する傾向にあります。心情的な問題だけでなく、相場を知らずに妥当な金額を掲示できていないケースがあるからです。
離婚調停の経験が豊富な弁護士を付けていれば、これまでの離婚調停の経験や過去の判例などから、金銭面で妥当な条件を算出してくれます。根拠のある金額なら相手方を説得しやすく、こちら側が一方的な不利な条件になるリスクもありません。
「弁護士費用を節約したら、離婚調停で弁護士費用以上の損失を被った」といったケースを避けるなら、弁護士へ依頼するのがおすすめです。
親権の取得を考えている場合
離婚調停で親権を取得したいときは、とくに弁護士への依頼を推奨します。
離婚当事者の親権がどちらに渡されるかは、複雑な判断基準と法的根拠を基に決定されます。例えば「母親の不貞行為が原因で離婚し、多額の慰謝料も母親側に発生した」という場合でも、父親が親権を得るかどうかは別問題です。
親権の判断は、監護実績や子どもへの愛情、子どもの意思、子どもの生活環境などが大きく影響します。夫婦関係の破綻と子どもへの幸せは、別ベクトルでの判断が求められているのです。
また、これまでの司法統計を見ると、親権を得るのは母親が約9割と母親有利の事実があります。
こうした事実から、親権を得るには法律の専門家による背景事情の分析、法的根拠の選別、裁判官や調停委員への論理的な説明などが必要不可欠と言えるでしょう。
相手が弁護士を雇っている場合
相手方が弁護士を雇っている場合、こちらが弁護士なしだと、法律の専門家を相手に調停を進めなければなりません。
相手方の弁護士は依頼者のために動くので、当然ながらこちら側に不利を押し付けてでも相手方が利益になるような主張を行います。相手方弁護士に対して法的根拠で対抗できなければ、調停委員の心証も相手方に傾き、離婚調停の結果が圧倒的不利に傾くかもしれません。
離婚調停時に弁護士に同席してもらえば、法的観点をもってすぐに反論できます。相手方に弁護士がいるかは裁判所へ問い合わせればわかるので、相手方の弁護士が確認できたら、こちら側も弁護士に依頼することを具体的に検討しましょう。
DVやモラハラがある場合
DV(家庭内暴力)やモラハラ(精神的虐待)がある場合は、弁護士への依頼を強くおすすめします。被害者が加害者と直接やり取りすることは、精神的な負担が大きく、調停の場でも萎縮して本来の主張ができない可能性があります。弁護士が代理人として交渉や調停に臨むことで、安全かつ冷静に手続きを進めることが可能になります。
また、DVやモラハラの証拠を適切に整理し、法的に有利な形で主張するためにも専門知識が不可欠です。接近禁止命令や保護命令の手続きも含め、安心して調停を進めるためには弁護士のサポートが重要です。
相手が調停を拒否している場合
相手が離婚調停に非協力的で、調停への出席を拒否している場合は、弁護士に依頼することで対応がスムーズになります。
調停は双方が出席して話し合いを行うことが前提ですが、相手が応じない場合、調停が不成立となり、訴訟に進む可能性もあります。こうした流れを見越して、弁護士が法的手続きを準備・対応してくれることで、不安や手間を軽減できます。
また、相手が意図的に手続きの遅延を図るケースもあるため、弁護士が代理人として出席・主張することで、調停をより効果的に進めることができます。弁護士の関与により、相手の態度が軟化するケースもあるため、有効な選択肢といえるでしょう。
以上のことを考慮すると
弁護士に依頼するかどうかの判断基準としては下記の4つです。
- 争点がシンプルである
- 相手が弁護士をつけていない
- 書類の作成・手続きができる
- 精神的負担に耐えられる
これらの条件をすべて満たしていれば、弁護士に依頼せずとも調停を進められる可能性があります。ただし、離婚調停は精神的に大きな負担がかかるうえ、法律の知識や調停委員とのやり取りが求められる場面も多くあります。不安が少しでもある場合や、相手に弁護士がついている場合には、無理をせず早めに弁護士への依頼を検討することが重要です。
離婚調停において弁護士に依頼できること
離婚調停の対応を弁護士にお願いする場合は、主に以下のことを依頼できます。
- 離婚条件のアドバイス
- 各種の書類作成
- 裁判所での手続き
- 離婚調停への同席・代理出席
- 代理人として相手に連絡
それぞれの詳細を見ていきましょう。
離婚条件のアドバイス
弁護士は、離婚調停で掲示する離婚条件について法的観点からさまざまなアドバイスをしてくれます。アドバイス内容の例は次の通りです。
- 慰謝料、養育費、財産分与、年金分割などお金に関する適切な請求費用について
- 子どもの親権や面会交流に関する、法的な権利の主張や主張に対する証拠の選別について
- こちら側の主張や背景について、相手方や調停委員に伝わりやすい論理展開について
- 相手方の主張を受けての反論や今後の戦略について
各種書類の作成
離婚調停の書類は、不備なく作成するだけではなく離婚調停に関する詳細な情報を記載する必要があります。
例えば離婚の経緯や請求内容を伝えるための事情説明書には、離婚や請求理由を客観的かつわかりやすく書かなければなりません。
また、非開示の希望に関する申出書を提出する際は、なぜ非開示にすべきかの具体的な根拠を示すことが大切になります。陳述書やそのほか資料を作るときも、法的根拠を入れながら論理的な主張をまとめなければ、相手方や調停委員を説得するのは難しいでしょう。
弁護士なら、上記に挙げた各種書類の作成・提出を適切にサポートしてくれます。年金分割のための情報通知書といった、自分1人では作成が難しい書類も任せられます。
裁判所での手続き
民事裁判と比較すると手軽とはいえ、申し立てや調停進行に関する各種手続きは煩雑で対応に労力がかかります。離婚調停が初めての方にとって、不備なく進めるのは簡単ではありません。また手続きの都合によっては、平日の日中などに時間を作る必要があります。
弁護士になら離婚調停に関する煩雑な手続きを、すべて任せることが可能です。あなたが仕事や子育てで忙しくても、その間に弁護士が不備なく手続きを進めてくれるでしょう。
離婚調停への同席・代理出席
本人出頭主義が原則の離婚調停であっても、やむを得ない事情や移動距離の関係で毎回の出席が難しいケースがあります。
もし体調不良といったやむを得ない事情で欠席が必要な場合でも、弁護士になら代理出席を依頼できます。家庭裁判所が遠方で出頭が難しいケースでも、調停成立時以外なら弁護士事務所からの電話会議という形で参加が可能です。
ただしあくまで本人出頭主義の離婚調停においては、戦略上出頭したほうがよいケースや本人出頭が求められる場合が存在します。また、調停成立時には代理人出席が原則として認められません。代理出席に関しては、事前に弁護士と相談しておきましょう。
代理人として相手に連絡
弁護士はあなたの代理人として、相手方や相手方弁護士と交渉してくれます。また相手側から連絡が来ても、原則として代理人の弁護士を通してあなたに届きます。
つまり弁護士に依頼すれば、離婚調停中でもあなた自身が相手側と話す必要はありません。お願いすれば、相手からの直接交渉を禁止してもらえます。「これから離婚する相手と話したくない」「子どものために接触は避けたい」といった方は、弁護士への依頼を推奨します。
離婚調停を弁護士なしで行うときの費用:3000円程度
実際に弁護士に依頼しないときの費用相場は、1万円未満と安めです。申立費用は2,650円程度、別途費用は数千円程度に収まるでしょう。以下では、費用の内訳を解説します。
弁護士なしで離婚調停を進めた場合の費用内訳
自分で離婚調停を申し立てる際に必要となる基本的な費用は以下のとおりです。これらを合計すると、おおよそ2,650円〜3,000円程度となります。
収入印紙 |
1,200円 |
戸籍謄本 |
1通450円 |
郵便切手 |
1,000円程度(各家庭裁判所によって異なる) |
弁護士費用が発生しないため、コストを大きく抑えることができます。
想定される追加費用とその対策
上記の費用以外にも、以下のような追加費用が発生する可能性があります。
- 交通費:裁判所へ出向く際の移動費用
- 必要書類の取得費用:住民票や財産資料などの取得に伴う費用
- 書類作成に必要な印刷・コピー代
これらはケースによって異なりますが、数百円〜数千円の範囲で発生する可能性があります。
費用を抑えるためには、必要書類を事前にリストアップし、無駄のない準備を行うことが大切です。また、郵送での取得が可能なものは早めに申請しておきましょう。
離婚調停を弁護士に依頼する場合の費用相場:50万~100万円程度
離婚調停を弁護士に依頼する場合、費用は「相談料」「着手金」「成功報酬」「日当・実費」などが含まれ、トータルで50万~100万円ほどかかるのが一般的です。ここでは、各費用の内訳について詳しく解説します。
依頼を相談する際に支払う「相談料」
弁護士へ初めて相談する際には、「相談料」が発生する場合があります。初回の相談は無料としている事務所も多く、有料の場合でも30分~1時間あたり5,000円~1万円程度が相場です。離婚調停を進める前に、費用や手続きの流れを確認する目的で相談するケースが多く、弁護士との相性や信頼性を見極める場でもあります。
実際に依頼する際に支払う「着手金」
「着手金」とは、弁護士に正式に依頼する際に最初に支払う費用で、成功・失敗に関係なく発生します。離婚調停の場合、一般的な着手金の相場は20万円~40万円程度です。案件の難易度や争点の数によって金額が変動することもあります。複雑な財産分与や親権争いがある場合は、やや高くなる傾向があります。
依頼が解決した際に支払う「成功報酬」
調停が無事に成立した場合、弁護士に「成功報酬」を支払う必要があります。
成功報酬の相場は、事務所によって異なりますが、得られた経済的利益(慰謝料、財産分与、養育費など)の10~20%程度が目安です。例えば300万円の慰謝料が認められた場合、成功報酬は30~60万円程度となることがあります。一部の事務所では、20万円~50万円といった定額で設定しているケースもありますが、成果に応じた変動制を採用している事務所が多いのが実情です。
下記は成功報酬に関する目安です。
弁護士が活動する際に必要な「日当・実費」
弁護士が裁判所に出向く場合や、書類の提出・証拠収集などの活動にかかる費用として「日当・実費」が発生します。相場は1万円~5万円程度で、出張が必要な場合や遠方の裁判所に行く場合は高くなることがあります。また、交通費・郵送代・コピー代などの実費も含まれるため、見積もり段階で明確に確認しておくと安心です。
離婚調停の弁護士費用を払えないときの対処法
離婚調停について弁護士に依頼しようと思っても、高額の弁護士費用を払えずに断念する方も多いと思われます。もし弁護士費用を払うのが難しいときは、法テラスに相談する、または弁護士に後払いや分割払いの相談をするといった対処法があります。
法テラスに費用を立て替えてもらう
法テラスとは、離婚や相続といった法的トラブルを抱えながらも、相談先や費用について悩む方に向けた機関です。国によって設立された法的トラブルのための総合案内所と言われています。
法テラスには、調停や裁判で必要な費用や弁護士費用(着手金、報酬金、実費などすべての費用)を立て替える制度があります。立て替えてもらった後は、無利息での分割払い(引き落しにかかる手数料あり)で返済が可能です。また生活保護を受けているといった理由で返済が困難となっている方は、事件が終了するまでの返済の猶予や、返済免除が受けられる可能性があります。
立替制度を利用するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 法テラスの資力基準で定められた収入等が一定額以下であること
- 離婚調停に関して勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨(報復的感情のみで動いていない、宣伝が目的である、権利濫用的な訴訟でないなど)に適すること
ただし、法テラスは自分で弁護士を選ぶことができず、離婚に強い弁護士と必ずしもマッチングできるとは限りません。また法テラスでの手続きや審査にかかる時間が長い、無料相談は1つの相談につき3回まで(1回30分程度)、経験が浅い弁護士も多いといったデメリットもあります。
資力基準や手続きの詳細は、法テラスの公式ホームページをご覧ください。
出典:日本司法支援センター法テラス「費用を立て替えてもらいたい」
出典:日本司法支援センター法テラス「立て替え費用の償還とは何ですか?」
弁護士に後払い・分割払いの相談をする
弁護士への依頼で発生した費用は、一括払いで請求されるのが原則です。とはいえ、法律で一括払いが決まっているわけではないので、弁護士によっては後払いや分割払いを承認してくれる可能性があります。
後払いや分割払いをお願いするときは、「何回まで分割できるのか」「追加費用がかかるのか」などを確認しておきましょう。また、後払いや分割払いとなる理由や今後の返済計画については、事前に弁護士へ具体的に伝えることが大切です。
弁護士事務所の多くは、初回相談が30〜60分ほど無料としています。そのため、無料相談を利用して詳しい料金体系を確認したり、後払い・分割払いが可能かを聞いてみたりなども検討してみてください。費用をより抑えたいなら、複数の弁護士事務所にて見積りを行い、サービス内容や料金を比較検討するのもよいでしょう。
なお分割払いに対応している弁護士事務所は、最大で12回払いを上限としているケースが多いようです。
クレジットカード払いができる弁護士事務所なら、クレジットカードの分割払い機能を利用する方法もあります。とはいえクレジットカード決済を見送っている弁護士事務所もあるので、あくまで対応しているところのみになります。
弁護士が夫婦関係調整調停事件に関与するケースは増加傾向にある
離婚や夫婦関係の調整をめぐる「夫婦関係調整調停」では、弁護士が関与するケースが年々増えています。弁護士白書2023年版によると、夫婦関係調整調停事件において代理人弁護士が関与する割合は、2008年には25.4%にとどまっていましたが、2022年には60.1%にまで上昇しています。これは、夫婦間の法的なトラブルにおいて、専門的な対応を求める人が増えていることを示しています。
このように、夫婦関係調整調停において弁護士の関与が大きく増加していることからも、当事者が自身の権利や立場をより適切に主張し、調停を円滑に進めるために、専門家である弁護士に依頼する傾向が一層強まっているといえるでしょう。
参考:弁護士白書2023年版(日本弁護士連合会)
まとめ
離婚調停は弁護士なしで臨めるものの、書類作成や手続き、相手方や調停委員との交渉、離婚調停の戦略などをすべて自分だけで対応しなければなりません。とくに相手方が弁護士を付けているときは、法律の専門家が掲示する法的主張や根拠に対抗しなければ、こちら側が不利な条件を飲まされるリスクが高くなります。
仮に合意しなかったとしても、その後の審判で不利な判決が下ったり離婚訴訟に発展したりなど、こちら側への負担は大きなものになるでしょう。
離婚調停について弁護士に依頼すれば、離婚調停関係の書類作成や手続きのサポート、離婚調停の進行や主張に関するアドバイス、相手方との交渉の代理といった各種作業を依頼できます。専門知識や実務経験を基にした、適切な対応を期待できるでしょう。
もし弁護士費用が難しいときは、日本司法支援センターの法テラスの立替制度や、弁護士費用の後払い・分割払いを検討してみてください。「お金がないから自分で全部やるしかない」と決めてしまう前に、まずは弁護士への無料相談などで話を聞いてみることを推奨します。
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