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離婚調停は弁護士なしでも大丈夫?自分で進めるときの流れや費用を解説

離婚調停は弁護士なしでも大丈夫?自分で進めるときの流れや費用を解説
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

離婚調停とは、裁判官や調停委員などの第三者を入れ、離婚についての協議を家庭裁判所で行う制度です。「相手が離婚に応じてくれない」「離婚の条件がまとまらない」といったケースで、離婚調停が行われます。

離婚調停は、弁護士なしでも申し立てから離婚調停の合意まで進められます。弁護士に依頼しない場合、離婚調停の弁護士費用の相場である40万~100万円を節約できるのがメリットです。

しかし、弁護士なしで離婚調停に臨むのには大きなデメリットが存在します。具体的なデメリットは次の通りです。

  • 書類作成に必要な資料集めや相手方との交渉に時間・労力がかかる
  • 離婚調停で主張する内容を自分でまとめる必要がある
  • 相手方に弁護士がいるとき、自分だけで弁護士を相手に対応しなければならない

デメリットの影響によっては、あなたが希望する離婚調停の結果を得られなかったり、弁護士への依頼料を超える損害を被ったりする可能性があります。弁護士なしで離婚調停に臨むときは、これらのデメリットを考慮したうえで慎重に検討しましょう。

弁護士に依頼するお金がなくてそもそも頼めないという場合は、国の機関である法テラスに弁護士費用を立て替えてもらう、弁護士に後払いや分割払いをお願いするといった方法があります。お金がないからと弁護士の利用を諦める前に、まずは一度法テラスや弁護士事務所に相談してみるのがおすすめです。

本記事では、離婚調停に弁護士なしで臨むメリット・デメリット、離婚調停の流れ、弁護士なしでの離婚調停の費用、離婚調停で弁護士に依頼すべきケース、弁護士に依頼できる範囲などを解説します。また、法テラスの立替制度や弁護士の後払い・分割払いについてもまとめました。

離婚調停は弁護士なしでも始められる

離婚調停は、弁護士なしのまま自分1人だけで申し立てから調停進行、合意まで進められます。

離婚調停は裁判所・調停委員を間に入れつつも、原則として当事者同士での話し合いによる合意によって円満解決を目指す手続きです。調停の場において、弁護士が家庭裁判所へ出廷しないことには何も問題がありません。

むしろ調停は「本人出頭主義」であり、弁護士を代理人として立てても、本人は出頭するのが原則です。少なくとも調停成立時には、必ずあなた自身が家庭裁判所へ出頭することが求められます。

第五条 事件の関係人は、自身出頭しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させ、又は補佐人とともに出頭することができる。
2 弁護士でない者が前項の代理人又は補佐人となるには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。
3 家庭裁判所は、何時でも、前項の許可を取り消すことができる。
裁判所 家事審判規則

ただし調停は、厳格な判決で勝ち負けを決める民事裁判とは異なります。

裁判官に加えて「調停委員(裁判官とともに話し合いの中で合意をあっせんし紛争解決へ導く者)」という第三者を入れて進められます。また民事裁判と比較すると、調停は必要書類を揃えて申し立てた後、調停期日に家庭裁判所へ赴くだけで始めることが可能です。民事裁判よりも、利用しやすい制度だと言えるでしょう。

なお調停に限らず、裁判所で民事裁判を提起する場合でも、弁護士を付けずに本人訴訟として手続きができます。

調停委員は必ずしも法律の専門家ではない

調停委員は、一般社会において豊富な経験や専門知識を持つ弁護士、医師、大学教授、そのほか士業の専門家、地域社会に密着して幅広く活動する人のうち、40歳以上70歳未満の方から選ばれるの原則です。調停の内容に応じて、もっとも適任と思われる専門家が指定されます。

調停で裁判官が出廷するのは、調停成立・不成立時や裁判官の意見が求められるときのみです。そのため、調停のときは基本的に調停委員と話します。

ただし調停委員は必ずしも法律の専門家ではないため、感情的な意見やこちら側に不利益な条件を掲示するケースがあります。弁護士なしで調停に臨む際は、調停委員に伝わる主張・根拠や誠実な態度を意識し、心情的にこちら側の味方として引き込む戦略も重要です。

婚姻関係事件でも弁護士なしは3~4割にとどまる

最高裁判所の「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、2022年度の婚姻関係事件で双方とも弁護士を雇わなかった割合は35.5%です。10件に3~4件は、調停の当事者のどちらも弁護士を付けていません。

「弁護士に依頼しないケースって意外と多いかも」と思われるかもしれませんが、逆に言えば過半数は弁護士を雇って調停に臨んでいます。年々弁護士に代理人を依頼する調停は増えており、2013年の57%と比較すると約10年間で20%以上増加しています。

手続代理人なしの婚姻関係事件の調停
2013年 57.0%
2014年 52.9%
2015年 51.1%
2016年 48.6%
2017年 45.9%
2018年 43.3%
2019年 41.7%
2020年 39.2%
2021年 35.9%
2022年 35.5%

出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等

離婚調停から離婚審判に移行したときは、約95%以上の方が弁護士に依頼しています。同調査の「財産分与の申立てがある離婚の訴えにおける訴訟代理人選任状況の推移(人事訴訟)」によると、双方が訴訟代理人を立てている割合は約80%、原告側のみは17~19%です。2016年からは、本人のみで行われるケース審判が1%未満となっていました。

離婚調停を始めとする家事事件の弁護士受任が増えている背景には、国民の権利意識の高まり、家族間の変化、家事事件や若手弁護士の増加、インターネット・SNSの普及や有名人の発信による弁護士の有用性の浸透などが考えられます。

離婚調停を自分で行うときの流れ

弁護士なしで離婚調停を自分で行うときは、次の流れに沿って進めます。

  1. 離婚調停の申し立て:必要書類の提出
  2. 調停期日:調停員を介した話し合い
  3. 調停成立・不成立:調停調書の作成または審判手続

離婚調停の手続きを進める前には、「離婚調停で自分が求める結果(慰謝料の金額、養育費、子どもとの面会交流、親権など)」や「離婚調停で主張したいこととその証拠」などを確認しておきましょう。

主張が曖昧なまま離婚調停に挑むと、あなたが求める離婚の形にならなかったり、離婚自体が不成立になったりするリスクがあります。

以下では、離婚調停を自分で行うときの流れを見ていきます。

1.離婚調停の申し立て:必要書類の提出

離婚調停を申し立てるには、まず必要書類や申し立てに必要な収入印紙などを揃えます。その後、書類に必要事項を記入したら、「相手方の住所地を管轄とする家庭裁判所」または「当事者が合意で定める家庭裁判所」へ提出します。

離婚調停で必要になる書類は次の通りです。

  • 夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
  • 事情説明書(離婚または夫婦関係調整)
  • 連絡先等届出書
  • 進行に関する照会回答書
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)

また、以下の書類も必要に応じて提出します。

  • 子についての事情説明書
  • 非開示の希望に関する申出書
  • 年金分割のための情報通知書

提出後は1~2週間程度で家庭裁判所から初回の調停期日の候補を挙げられるので、都合がよい日を選んでください。

なお離婚調停では、離婚成立そのもの以外にも、離婚に付随して発生する慰謝料、養育費、財産分与、年金分割の割合などについても話し合いができます。もし離婚調停等で話し合いをしておらず、離婚後に財産や慰謝料について争いが発生したときは、別途調停を申し立てすることになります。

例えば財産について話し合いがまとまらない場合は「財産分与請求調停」、不貞行為などで受けた精神的苦痛や離婚に対する精神的苦痛で慰謝料について話し合うときは「慰謝料請求調停」、離婚後の年金の按分割合について決めたいときは「年金分割の割合を定める調停」などを申し立てましょう。

以下では、離婚調停の申し立てに関する必要書類の概要を解説します。裁判所には書類をコピーしたものを提出し、期日になったら原本を持参してください。

夫婦関係調整調停(離婚)の申立書

夫婦関係調整調停(離婚)の申立書とは、申し立ての趣旨・理由や収入印紙・予納郵便切手、離婚調停の当事者の情報などを記入する書類です。調停用の申立書にはほかにも夫婦関係調整調停(円満)や離婚後の紛争調整調停などがあるので、書類の種類を間違えないように注意しましょう。

→裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)の申立書

事情説明書(離婚または夫婦関係調整)

事情説明書(離婚または夫婦関係調整)は、申し立て内容に関する事項を記入する書類です。調停経験、調停で予想される対立事項、婚姻期間や別居期間、同居している家族、それぞれの収入、住居状況、財産状況、不和になった理由や調停を申し立てた経緯などを記入します。

→裁判所「家事調停の申立て

連絡先等の届出書

連絡先等の届出書とは、調停に関する各種書類の送付先や、裁判所からの連絡を受ける連絡先などを記入する書類です。

進行に関する照会回答書

進行に関する照会回答書とは、調停を進めるうえで配慮してほしいことや気になることを記入する書類です。「相手が裁判所の呼び出しに応じるか」「調停での話し合いは円滑に進められるか」「相手方が暴力や暴言の恐れがあるか」などを回答します。回答結果を相手方に見せることはありません。

→裁判所「家事調停の申立て

夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)

夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)は、2024年3月1日より始まった「広域交付制度」によって、本籍地以外の役所での手続きでも取得できるようになりました。提出を求められるのは、申立日より3ヶ月以内のものです。

子についての事情説明書

子についての事情説明書とは、未成年の子どもがいる場合に「誰が子どもの監護をしているか」「別居している親と子どもの関係」などを記入する書類です。

→裁判所「家事調停の申立て

非開示の希望に関する申出書

非開示の希望に関する申出書とは、相手方に申立書に記載された住所や勤務先を知られたくないとき、申立書を相手方に送付しないという希望を出すために提出する書類です。

→裁判所「非開示の希望に関する申出について

年金分割のための情報通知書

年金分割のための情報通知書とは、離婚に伴って相手方に年金分割を求めるときに提出する書類です。

→裁判所「年金分割の割合を定める調停の申立書

そのほか必要な書類

離婚調停で養育費が必要な子どもがいる場合、源泉徴収票や給与明細の写しなど収入がわかる資料を準備しておく必要があります。財産分与を行うときは、不動産登記事項証明書や預金通称の写しなど夫婦の財産がわかる資料を準備しましょう。

2.調停期日:調停員を介した話し合い

第1回の調停期日は、申し立てから1〜2ヶ月後に設定されるケースが多いです。調停期日が来たら申し立てをした家庭裁判所へ向かい、初回の調停に進みます。調停の流れは次の通りです。

  • 受付を行い、待合室で待機する(相手方とは別々の部屋になる)
  • 調停委員から呼ばれたら調停室へ入室し、調停進行の説明や離婚調停の経緯などを話す(30分程度)
  • 調停室から退室したら相手方が調停室へ入るので、待合室で待機する
  • その後は交互に調停室にて話を行い、2~3時間程度話し合いを進める
  • 解決案に合意できたら調停終了、まとまらないときは第2回期日を設定する
  • その後は調停成立・不成立が決まるまで1ヶ月~1ヶ月半の間隔で離婚調停を継続する

なお、「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、婚姻関係事件の平均調停期日回数は3.4回、平均期日間隔は2ヶ月となっていました。

3.調停成立・不成立:調停調書の作成または審判手続

どこかの調停期日で双方が合意に至ったときは、合意内容に基づいた「調停調書」が作成されます。調停調書には、民事裁判における判決と同じ効力があります。

調停調書は一度作成されると、内容の変更や取消は認められません。調停調書が作成される前には裁判官が内容を読み上げるので、本当に内容に問題がないかをしっかりとチェックしましょう。

もし調停調書の内容にしたがわない場合は、財産を直接差し押さえる強制執行や、応じるまで金銭的ペナルティが発生する間接強制などを、調停調書にしたがわない側に申し立てできます。

調停が不成立に終わったときは、調停の内容などを基に裁判官が判決を下す審判に移行します。その審判結果に不服申立てが行われたら、その後は民事の離婚裁判となるのが一般的です。離婚裁判まで進むと、離婚成立まで年単位の時間がかかる可能性があります。

離婚調停に弁護士なしで臨むメリット

離婚調停に弁護士なしで臨むメリットは、相談料・着手金・報酬金などの弁護士費用をすべて節約できる点です。

弁護士に離婚調停の依頼をすると、トータルで40万〜100万円かかるのが相場と言われています。一方で弁護士なしで離婚調停を進める場合だと、手続きにかかる3,000円程度の負担だけになります。

また弁護士に依頼しないときは、離婚調停の期日を弁護士のスケジュールに合わせる必要がないのもメリットです。人気がある弁護士だと、数ヶ月や1年以上待たされるケースも存在するからです。

しかしコストなどが削減できるとはいえ、弁護士なしだと申し立てから調停対応、相手方との交渉などをすべて自分で進めなければなりません。

離婚調停を安く済ませられるメリットが、弁護士なしですべての対応を行うデメリットに釣り合っているか否かを慎重に検討してみてください。

離婚調停に弁護士なしで臨むデメリット

離婚調停に弁護士なしで臨むデメリットは、法律の専門家の知識・経験や実務能力を利用できないことです。

厚生労働省の調査によると、人生で離婚を実際に経験するのは平均でも1回未満です。その中から離婚調停に発展するケースは、より少なくなるでしょう。つまり多くの一般の人にとって、離婚関係の調停は初めて経験する手続きになります。

離婚調停や手続きに関する法的知識・経験が不足している中で、不備のない書類作成を進めなければなりません。書類作成に必要な資料集めや、相手方との直接交渉に時間や労力がかかります。離婚相手とのやり取りで発生する精神的負担も、自分1人で進めるデメリットの1つです。

また離婚調停の場では、弁護士なしで慰謝料の請求金額、財産分与、養育費、親権、面会交流、相手が約束を履行しなかったときの遅延損害金などを、自分1人で決めて主張する必要があります。

法的に問題がなく、相手方・裁判官・調停委員が納得する条件を提示するのは、知識や経験がないと難しい作業となるでしょう。自分だけでは離婚に関する重要な取り決め事項を見逃し、調停が成立してから不備に気づくパターンもありえます。

さらに相手側が弁護士を付けているときは、自分の力だけで相手弁護士に対抗することになります。相手弁護士の専門知識や実務経験を基にした的確な反論を受けて、離婚調停が不利な状況に陥るかもしれません。

相手弁護士の能力・主張に圧倒されたり、こちら側の法的知識不足があったりなどが原因で、不利な条件を飲んでしまうリスクがあります。

弁護士なしで離婚調停に臨むときには、デメリットによるさまざまな不利益を想定し、対策していくことが求められます。

出典:厚生労働省「令和4年度「離婚に関する統計」の概況

離婚調停を弁護士なしで行うときの費用

実際に弁護士に依頼しないときの費用相場は、1万円未満と安めです。申立費用は2,650円程度、別途費用は数千円程度に収まるでしょう。以下では、費用の内訳を解説します。

申立費用は2,650円から

離婚調停の申立費用は、収入印紙代、戸籍謄本取得費、郵便切手代の3つを合計して2,650円程度です。

収入印紙 1,200円
戸籍謄本 1通450円
郵便切手 1,000円程度(各家庭裁判所によって異なる)

離婚調停後に「離婚調停で決めた養育費を変更したい」といった場合は、別途養育費請求調停の申し立てが必要です。

→裁判所「養育費請求調停

別途費用は数千円程度

離婚調停を行うには、申立費用以外にもさまざまな実費が必要です。

例えば自分や相手方の本籍地がわからないときは、住民票を200円(コンビニ交付)または300円(窓口手数料)で取得します。養育費の話し合いをするなら相手方の収入を証明するための課税証明書、財産分与の話し合いをするなら不動産の登記事項証明書を取り寄せる費用がかかります。

ほかにも調停調書の交付申請や、家庭裁判所への移動費なども必要です。すべてを合計すると、およそ数千円の出費が見込まれるでしょう。

離婚調停で弁護士に依頼したほうがよいケース

自分だけで離婚調停を進められるとはいえ、費用面でのデメリットを考慮しても、弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。ここからは、以下の離婚調停で弁護士に依頼したほうがよいケースについて詳細を見ていきます。

  • 労力や時間をかけたくない場合
  • 不利な条件を飲まされたくない場合
  • 金銭面での争いがある場合
  • 親権の取得を考えている場合
  • 相手が弁護士を雇っている場合

労力や時間をかけたくない場合

家庭裁判所への申し立てに必要な書類の取得や、離婚調停中に使用する資料の作成には多大な労力と時間がかかります。また離婚調停中は、月に1回程度のペースで平日に家庭裁判所へ足を運ばなければなりません。とくに仕事や子育てがある人にとって、時間の捻出や体力消費は大きな負担となるでしょう。

弁護士に依頼すれば、必要書類の作成・提出のサポート、相手方との交渉・裁判所への出頭の代理を任せられます。例えば弁護士なら「職務上請求」を行うことで、第三者でありながら戸籍謄本や住民票などの書類を取得できます。

不利な条件を飲まされたくない場合

離婚調停においては、調停委員の意見や対応が結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。

前述のとおり、調停委員は有識者ではあるものの法律の専門家ではないケースもあります。法的に間違った解釈を指摘できなかったり、こちら側の主張の不備を見逃したりといったケースが想定されます。

また調停委員は裁判官のような中立の立場という前提があるものの、実際には説得しやすそうなほうを説得する、感情的な判断をするといった傾向があります。

弁護士を付けておけば、法的知識を基にしたアドバイスを受けることができ、陳述書、答弁書、主張書面などでの的確な反論が可能です。相手方や調停委員からこちら側に条件が掲示されても、不利な条件か妥当な条件かをしっかりと判断してくれます。弁護士は中立な立場ではなく、依頼者のあなたにとって有利になるように離婚調停を進めてくれます。
また弁護士が同席すれば、調停委員へ「弁護士を付けるほど本気で離婚したいのか」という確固たる意思を伝えることが可能です。

金銭面で争いがある場合

離婚調停では、慰謝料、養育費、財産分与、年金分割といったお金関係の話し合いが長期化する傾向にあります。心情的な問題だけでなく、相場を知らずに妥当な金額を掲示できていないケースがあるからです。

離婚調停の経験が豊富な弁護士を付けていれば、これまでの離婚調停の経験や過去の判例などから、金銭面で妥当な条件を算出してくれます。根拠のある金額なら相手方を説得しやすく、こちら側が一方的な不利な条件になるリスクもありません。

「弁護士費用を節約したら、離婚調停で弁護士費用以上の損失を被った」といったケースを避けるなら、弁護士へ依頼するのがおすすめです。

親権の取得を考えている場合

離婚調停で親権を取得したいときは、とくに弁護士への依頼を推奨します。

離婚当事者の親権がどちらに渡されるかは、複雑な判断基準と法的根拠を基に決定されます。例えば「母親の不貞行為が原因で離婚し、多額の慰謝料も母親側に発生した」という場合でも、父親が親権を得るかどうかは別問題です。

親権の判断は、監護実績や子どもへの愛情、子どもの意思、子どもの生活環境などが大きく影響します。夫婦関係の破綻と子どもへの幸せは、別ベクトルでの判断が求められているのです。

また、これまでの司法統計を見ると、親権を得るのは母親が約9割と母親有利の事実があります。

こうした事実から、親権を得るには法律の専門家による背景事情の分析、法的根拠の選別、裁判官や調停委員への論理的な説明などが必要不可欠と言えるでしょう。

相手が弁護士を雇っている場合

相手方が弁護士を雇っている場合、こちらが弁護士なしだと、法律の専門家を相手に調停を進めなければなりません。

相手方の弁護士は依頼者のために動くので、当然ながらこちら側に不利を押し付けてでも相手方が利益になるような主張を行います。相手方弁護士に対して法的根拠で対抗できなければ、調停委員の心証も相手方に傾き、離婚調停の結果が圧倒的不利に傾くかもしれません。

離婚調停時に弁護士に同席してもらえば、法的観点をもってすぐに反論できます。相手方に弁護士がいるかは裁判所へ問い合わせればわかるので、相手方の弁護士が確認できたら、こちら側も弁護士に依頼することを具体的に検討しましょう。

離婚調停において弁護士に依頼できること

離婚調停の対応を弁護士にお願いする場合は、主に以下のことを依頼できます。

  • 離婚条件のアドバイス
  • 各種の書類作成
  • 裁判所での手続き
  • 離婚調停への同席・代理出席
  • 代理人として相手に連絡
  • それぞれの詳細を見ていきましょう。

離婚条件のアドバイス

弁護士は、離婚調停で掲示する離婚条件について法的観点からさまざまなアドバイスをしてくれます。アドバイス内容の例は次の通りです。

  • 慰謝料、養育費、財産分与、年金分割などお金に関する適切な請求費用について
  • 子どもの親権や面会交流に関する、法的な権利の主張や主張に対する証拠の選別について
  • こちら側の主張や背景について、相手方や調停委員に伝わりやすい論理展開について
  • 相手方の主張を受けての反論や今後の戦略について

各種書類の作成

離婚調停の書類は、不備なく作成するだけではなく離婚調停に関する詳細な情報を記載する必要があります。

例えば離婚の経緯や請求内容を伝えるための事情説明書には、離婚や請求理由を客観的かつわかりやすく書かなければなりません。

また、非開示の希望に関する申出書を提出する際は、なぜ非開示にすべきかの具体的な根拠を示すことが大切になります。陳述書やそのほか資料を作るときも、法的根拠を入れながら論理的な主張をまとめなければ、相手方や調停委員を説得するのは難しいでしょう。

弁護士なら、上記に挙げた各種書類の作成・提出を適切にサポートしてくれます。年金分割のための情報通知書といった、自分1人では作成が難しい書類も任せられます。

裁判所での手続き

民事裁判と比較すると手軽とはいえ、申し立てや調停進行に関する各種手続きは煩雑で対応に労力がかかります。離婚調停が初めての方にとって、不備なく進めるのは簡単ではありません。また手続きの都合によっては、平日の日中などに時間を作る必要があります。

弁護士になら離婚調停に関する煩雑な手続きを、すべて任せることが可能です。あなたが仕事や子育てで忙しくても、その間に弁護士が不備なく手続きを進めてくれるでしょう。

離婚調停への同席・代理出席

本人出頭主義が原則の離婚調停であっても、やむを得ない事情や移動距離の関係で毎回の出席が難しいケースがあります。

もし体調不良といったやむを得ない事情で欠席が必要な場合でも、弁護士になら代理出席を依頼できます。家庭裁判所が遠方で出頭が難しいケースでも、調停成立時以外なら弁護士事務所からの電話会議という形で参加が可能です。

ただしあくまで本人出頭主義の離婚調停においては、戦略上出頭したほうがよいケースや本人出頭が求められる場合が存在します。また、調停成立時には代理人出席が原則として認められません。代理出席に関しては、事前に弁護士と相談しておきましょう。

代理人として相手に連絡

弁護士はあなたの代理人として、相手方や相手方弁護士と交渉してくれます。また相手側から連絡が来ても、原則として代理人の弁護士を通してあなたに届きます。

つまり弁護士に依頼すれば、離婚調停中でもあなた自身が相手側と話す必要はありません。お願いすれば、相手からの直接交渉を禁止してもらえます。「これから離婚する相手と話したくない」「子どものために接触は避けたい」といった方は、弁護士への依頼を推奨します。

離婚調停の弁護士費用を払えないときの対処法

離婚調停について弁護士に依頼しようと思っても、高額の弁護士費用を払えずに断念する方も多いと思われます。もし弁護士費用を払うのが難しいときは、法テラスに相談する、または弁護士に後払いや分割払いの相談をするといった対処法があります。

法テラスに費用を立て替えてもらう

法テラスとは、離婚や相続といった法的トラブルを抱えながらも、相談先や費用について悩む方に向けた機関です。国によって設立された法的トラブルのための総合案内所と言われています。

法テラスには、調停や裁判で必要な費用や弁護士費用(着手金、報酬金、実費などすべての費用)を立て替える制度があります。立て替えてもらった後は、無利息での分割払い(引き落しにかかる手数料あり)で返済が可能です。また生活保護を受けているといった理由で返済が困難となっている方は、事件が終了するまでの返済の猶予や、返済免除が受けられる可能性があります。

立替制度を利用するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

  1. 法テラスの資力基準で定められた収入等が一定額以下であること
  2. 離婚調停に関して勝訴の見込みがないとはいえないこと
  3. 民事法律扶助の趣旨(報復的感情のみで動いていない、宣伝が目的である、権利濫用的な訴訟でないなど)に適すること

ただし、法テラスは自分で弁護士を選ぶことができず、離婚に強い弁護士と必ずしもマッチングできるとは限りません。また法テラスでの手続きや審査にかかる時間が長い、無料相談は1つの相談につき3回まで(1回30分程度)、経験が浅い弁護士も多いといったデメリットもあります。

資力基準や手続きの詳細は、法テラスの公式ホームページをご覧ください。

出典:日本司法支援センター法テラス「費用を立て替えてもらいたい
出典:日本司法支援センター法テラス「立て替え費用の償還とは何ですか?

弁護士に後払い・分割払いの相談をする

弁護士への依頼で発生した費用は、一括払いで請求されるのが原則です。とはいえ、法律で一括払いが決まっているわけではないので、弁護士によっては後払いや分割払いを承認してくれる可能性があります。

後払いや分割払いをお願いするときは、「何回まで分割できるのか」「追加費用がかかるのか」などを確認しておきましょう。また、後払いや分割払いとなる理由や今後の返済計画については、事前に弁護士へ具体的に伝えることが大切です。

弁護士事務所の多くは、初回相談が30〜60分ほど無料としています。そのため、無料相談を利用して詳しい料金体系を確認したり、後払い・分割払いが可能かを聞いてみたりなども検討してみてください。費用をより抑えたいなら、複数の弁護士事務所にて見積りを行い、サービス内容や料金を比較検討するのもよいでしょう。

なお分割払いに対応している弁護士事務所は、最大で12回払いを上限としているケースが多いようです。

クレジットカード払いができる弁護士事務所なら、クレジットカードの分割払い機能を利用する方法もあります。とはいえクレジットカード決済を見送っている弁護士事務所もあるので、あくまで対応しているところのみになります。

まとめ

離婚調停は弁護士なしで臨めるものの、書類作成や手続き、相手方や調停委員との交渉、離婚調停の戦略などをすべて自分だけで対応しなければなりません。とくに相手方が弁護士を付けているときは、法律の専門家が掲示する法的主張や根拠に対抗しなければ、こちら側が不利な条件を飲まされるリスクが高くなります。

仮に合意しなかったとしても、その後の審判で不利な判決が下ったり離婚訴訟に発展したりなど、こちら側への負担は大きなものになるでしょう。

離婚調停について弁護士に依頼すれば、離婚調停関係の書類作成や手続きのサポート、離婚調停の進行や主張に関するアドバイス、相手方との交渉の代理といった各種作業を依頼できます。専門知識や実務経験を基にした、適切な対応を期待できるでしょう。

もし弁護士費用が難しいときは、日本司法支援センターの法テラスの立替制度や、弁護士費用の後払い・分割払いを検討してみてください。「お金がないから自分で全部やるしかない」と決めてしまう前に、まずは弁護士への無料相談などで話を聞いてみることを推奨します。