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離婚調停の平均期間はどのくらい?短期間で終わらせる方法や長引くケースを解説 

離婚調停の平均期間はどのくらい?約半年!短期間で終わらせる方法や長引くケースを解説 

離婚調停とは、夫婦間の問題を第三者の調停委員に仲裁してもらい、離婚に関する合意を得る手続きです。

離婚協議とは異なり、裁判所で決められた期日でしか話し合いができないため、離婚調停は時間がかかるのではないかと思う方も多いでしょう。

結論からいうと、離婚調停の平均期間は半年程度といわれています。ただし、これはあくまで必要な書類の提出から最終的に離婚が成立するまでの目安です。

実際は離婚条件についての争点が多かったり、子どもがいて親権争いをしていたりなど、お互いの意見が割れてまとまらない場合は1年以上長引くこともあります。

一方で、離婚条件についてお互いに譲歩できたり和解の方向で考えていたりなど、争点が少ない場合は離婚調停がスムーズに進み、短く終わる場合が多いです。

また、離婚調停を短期間で終わらせるためにはいくつかのポイントがあるので、この記事を機に覚えておきましょう。

  • 離婚調停前の準備を徹底する
  • 要求する内容は現実的なものにする
  • 妥協できるところは譲歩する
  • お互いのスケジュールを柔軟に合わせる
  • 和解の方向で進めて争点を減らす
  • 離婚問題に強い弁護士に相談する

本記事では、離婚調停の流れやかかる期間に加え、短期間で終結させるためのコツや注意すべきポイントなどについても詳しく解説します。離婚調停を検討している方は、離婚調停をスムーズに進めるための参考にしてください。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

離婚調停とは

離婚調停とは、夫婦双方が家庭裁判所に出席し、調停委員を介して離婚に関する話し合いを進め、双方の合意によって離婚の成立を目指す手続きです。

夫婦での話し合いで相手が離婚や話し合いに応じてくれない場合や、離婚条件について話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所の調停手続きを利用できます。

離婚調停では、調停委員が夫婦双方から交互に話を聴き、自分の主張は調停委員を介して相手方に伝えられるため、原則として相手方とは直接顔を合わせることはありません。

話し合いによって夫婦双方が合意すれば調停成立となり、成立日を含む10日以内に離婚届を提出すれば正式に離婚が成立します。逆に、話し合いを重ねても合意に至らなかった場合は調停不成立となり、離婚は成立しません。

離婚調停の平均期間は約半年

離婚調停を申し立ててから、成立・不成立が決まるまでの平均期間は約半年です。令和4年の司法統計によると、半年以内に離婚調停が終了したケースは全体の約6割を占めています。

離婚調停では、申し立ててから1~1ヶ月半後に第1回目の期日が設定され、それ以降は話し合いがまとまるまで1~1ヶ月半に1回のペースで期日が設定されます。

基本的に、3回ほどの調停期日で成立・不成立が決まるケースが多いです。調停期日を3回迎えるまでに半年ほどかかるため、平均期間は約半年とされています。

ただし、これはあくまでも目安なので、実際に離婚調停にかかる期間は夫婦によって大きな差があります。最短1ヶ月で調停成立となるケースもあれば、調停が長期化して1年以上の期間を要するケースもあります。

実際に、令和4年度の司法統計では1ヶ月で終わる割合は7%で、2年を超えて終わる割合は2%でした。

参考:2  令和4年 司法統計年報(家事編)

離婚調停の期間が長引くケース

ここからは、離婚調停の期間が長引くケースについて解説します。離婚調停の期間が長引くケースには、以下のようなケースが挙げられます。

  • スケジュールが合わない
  • 片方が離婚を拒否している
  • 親権争いで揉めている
  • 解決が求められる事柄が多い

離婚調停が長期化すると、精神的・身体的な負担が増えるためある程度の覚悟が必要です。そのため離婚調停を検討している場合、自分が上記の長期化しやすいケースに該当するか把握しておくとよいでしょう。

スケジュールが合わない

離婚調停は、出席者(当事者、弁護士、調停委員、裁判官)のスケジュールが合わなければ開催できません。

離婚調停は、裁判所が開廷している時間帯(平日の午前10~12時と午後13~17時の間)に行われます。以下の出席者の全員のスケジュールを、裁判所の開廷時間内に合わせなければなりません。

出席者 内訳
家庭裁判所側 担当裁判官1名・担当調停委員2名以上
申立人側 本人・代理人弁護士
相手方側 相手・相手方の代理人弁護士

本人が出席できない場合、代理人弁護士だけの出席も可能ですが、基本的には本人の出席が求められます。しかし、離婚調停の1回の話し合いは2~3時間程度と長時間に渡るため、出席者が多忙でスケジュールを合わせるのが難しいと調停が長引く原因になります。

また、以下の時期は裁判官の異動時期や長期休暇期間と重なるため、担当裁判官や調停委員のスケジュールの調整に時間がかかることがあります。裁判所からの連絡が遅れて離婚調停が遅延する可能性があるため、早めに終わらせたい場合は以下の時期を避けるのがおすすめです。

  • 年度末から年度初め(3月~4月)
  • 夏季休廷期間(7月~8月)
  • 年末年始(12月~1月)

片方が離婚を拒否している

離婚を一方が拒否している場合、話し合いが進まず、調停が長期化する可能性が高まります。離婚調停は裁判の判決とは異なり、話し合いによって解決を図る方法のため、離婚成立には双方の同意が必要です。

離婚を拒否する側が「離婚したくない」と頑なに拒否していると、話し合いは平行線をたどり長期化しやすいでしょう。特に離婚自体が争点となっている場合、離婚の条件について話し合う前に「離婚が適切かどうか」について話し合いをします。

この過程では調停員が当事者の意見と証拠をもとに判断しますが、相当な時間がかかります。また明確な離婚原因や証拠がない場合も、離婚が適切かどうかの判断や離婚の条件を決めるのが難しいため、離婚調停が長引きやすくなります。

親権争いで揉めている

子どもがいる場合、親権問題で調停が長期化しやすい傾向にあります。親権とは、子どもの監護や教育、法的な手続の代理を行える権利のことです。離婚時には、夫婦のどちらかが親権を獲得し、子どもと暮らすことになります。

夫婦の両方が親権を主張する場合、話し合いがまとまらずに調停が長期化してしまうでしょう。親権争いで揉めている場合、家庭裁判所の調査官によってどちらが親権者に適しているか調査が行われます。

この調査期間を確保するため、次の期日まで2~3カ月の感覚が空くことも調停が長期化する理由です。さらに親権自体はスムーズに決まったとしても、養育費や面会交流の頻度・方法について揉めて長期化するケースもあります。

解決が求められる事柄が多い

離婚調停では、解決すべき争点が多いほど調停が複雑になり、長期化する可能性が高まります。離婚においては、離婚時の状況に合わせて下記のように多くの事項を決定する必要があります。

争点になりやすい事項 概要 発生する状況
財産分与 婚姻期間中に築いた財産を分割する 例外なく請求可能
慰謝料 相場は50~500万円ほど。
不倫やDV、モラハラなど離婚原因となった行為の悪質性やお互いの収入によって異なる
相手による不法行為により損害を被った場合
親権者・養育費・面会交流の条件 養育費の金額や面会交流の頻度や時間、宿泊を伴う面会交流の条件などを決める ・未成年の子どもがいる場合
・双方の同意が得られない場合
年金分割 厚生年金に加入している場合、婚姻期間中に納めた年金を夫婦で分割できる制度。
収入が少ない方は、将来的に相手から分割された年金分も受け取れる
夫婦両方、もしくはどちらかが厚生年金に加入している場合
退職金分割 婚姻期間中に築いた退職金を夫婦で分割する制度。
受け取り前でも、受け取る見込みがある場合は請求可能
・すでに退職金を受け取っていて手元に残っている場合
・退職金を受け取る見込みがある場合
婚姻費用 衣食住や子どもの教育費、最低限の娯楽費などを請求できる 離婚前に別居したり、相手が生活費を納めなくなったりした場合

離婚調停は、話し合いによる解決を目指す手続きであり、各争点について双方の合意が必要です。そのため意見が一致しない場合、それだけ時間がかかるでしょう。

さらに、争点が多いと証拠となる資料も多く揃えなければなりません。必要な資料が揃わないと、手続きを進められず、調停が長期化する可能性があります。

離婚調停の申し立て~終了までの流れ

離婚調停を申し立ててから終了するまでの大まかな流れは下記の通りです。

  • 離婚調停を裁判所に申し立てる
  • 期日になったら家庭裁判所で調停人を介して話し合う
  • 調停終了まで 期日を繰り返す

ここからは、上記の流れについてそれぞれ詳しく解説していきます。

離婚調停を裁判所に申し立てる

離婚調停で話し合いをするには、まず離婚調停を家庭裁判所に申し立てます。申し立て先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、夫婦双方の合意で定めた家庭裁判所です。申し立ての際には、離婚調停申立書など多くの書類を準備する必要があります。

家庭裁判所の窓口や公式サイトからのダウンロードで受け取れるため、事前に準備しておきましょう。また、離婚調停を申し立てる際は下記の費用も必要になります。

  • 収入印紙代1,200円
  • 郵便切手代1,000円程度(裁判所によって異なる)

収入印紙は郵便局や法務局、コンビニなどで購入可能です。購入した収入印紙は離婚調停申立書に貼り付けます。離婚調停の申し立て方法は、家庭裁判所の窓口で直接申し立てる方法と、家庭裁判所へ必要書類を郵送して申し立てる方法の2通りです。

申し立てが完了すると、約2週間後に家庭裁判所から調停期日通知書(呼出状)が送られてきます。調停期日通知書には、第1回目の調停期日の日時や場所、事件番号などが記載されているので、必ず確認しましょう。

期日になったら家庭裁判所で調停人を介して話し合う

調停期日通知書に記載されている調停期日になったら、指定された時間までに申し立て先の家庭裁判所へ行き、家事書記官室で受付を済ませます。期日当日は下記のものが必要になるので、忘れずに持参しましょう。

  • 調停期日通知書
  • 印鑑(シャチハタは不可)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)

受付を済ませた後は、夫婦別々の控え室で待機します。調停室に呼び出された後は、第1回目のみ自己紹介と調停手続きの説明を受けます。

その際は申立人と相手方が同席するのが基本ですが、直接話す必要はありません。その後は、申立人と相手方が交互に調停室に呼び出され、調停委員から事情を聴かれます。

1回の面談は30分程度で、面談は双方交互に2回ずつ行うのが一般的です。調停委員との面談では主に下記の内容を質問されるので、事前に質問内容を想定してスムーズに答えられるように準備しておきましょう。

  • 離婚を決意した理由
  • 結婚した経緯
  • 現在の夫婦関係
  • 相手の不満点
  • 夫婦関係を修復できる可能性
  • 財産分与や親権などの離婚条件
  • 離婚した場合の経済状況

調停終了まで期日を繰り返す

調停成立・不成立・申立人による取り下げによって離婚調停が終了するまでは、調停期日を何回も繰り返すことになります。

第2回目以降も、第1回目と同様の流れで調停委員を介して話し合いを進めていきます。調停期日は1ヶ月~1ヶ月半に1回のペースで行われますが、裁判官の休暇や転勤、裁判所の混雑状況などによっては期日が遅れる場合もあることを頭に入れておきましょう。

話し合いによって夫婦双方が合意に至れば調停調書が作成され、調停が成立します。調停成立日を含む10日以内に離婚の届出をすれば、正式に離婚が成立する流れです。

逆に、何度も話し合いを重ねても離婚の成立が見込めないと判断された場合は不成立調書が作成され、調停不成立となります。

離婚調停を有利に進めて短期間で終わらせる方法

離婚調停を有利に進め、短期間で終わらせる方法は、以下の5つです。

  • 離婚調停前の準備を徹底する
  • 要求する内容は現実的なものにする
  • 妥協できるところは譲歩する
  • お互いのスケジュールを柔軟に合わせる
  • 和解の方向で進めて争点を減らす

離婚調停を有利に進め早めに終わらせるためには、上記のポイントを心に留めておくことが重要です。1つずつしっかりと理解していきましょう。

離婚調停前の準備を徹底する

離婚調停を円滑に進め、最短で終わらせるためには、事前の準備が重要です。具体的には以下の点を明確にしておくとよいでしょう。

離婚原因となった証拠 探偵事務所による調査報告書、不倫相手とのメッセージのやりとり、ホテルなどのクレジットカードの使用履歴、相手から受けた暴力によるケガの写真など
主張したい内容 離婚を望む具体的な理由、離婚調停に至るまでの過程、夫婦関係が修復不可能であるという事実など
譲れない条件 「親権を獲得し、自分が子どもを育てたい」、「養育費は多めに設定してほしい」など

1回の離婚調停で自分が話す時間は、1時間程度しかありません。事前に話す内容をある程度まとめていても、口頭で説明しようとするとうまく話せないこともあります。有利に進めるためにも、事前に話す内容を紙にまとめリハーサルも行うことで、当日も落ち着いて話せるでしょう。

さらに、離婚調停に必要な書類を早めに準備しておくことで、調停がスムーズに進行し、心理的な余裕にもつながります。
次の見出しで、離婚調停に必要な書類について具体的に解説します。

離婚調停に必要な書類は申立書や戸籍謄本など

離婚調停に必要な書類は、以下のとおりです。

必要書類 内容
申立書 ・離婚調停を申し立てるときに裁判所に提出する書類です。

・裁判所のウェブサイトから定型書式をダウンロードできます。

・家庭裁判所提出用、相手方用の控え、自分の控えの3通用意します。

戸籍謄本 ・全部事項証明書を用意します。

・本籍地の市役所で発行できます。

事情説明書 ・財産状況や離婚原因について記載する書類です。

・直接相手方には送付されませんが、相手方からの申請により、閲覧やコピーが許可されることがあります。

届出書 ・裁判所からの書類を受け取るための送付先と、平日の昼間に連絡可能な電話番号を明記します。

・弁護士を立てていない場合、記載した連絡先に裁判所から直接電話がかかってくることもあります。

照会回答書 ・裁判所が調停を進行する際の参考資料です。

・定型書式は裁判所の公式ウェブサイトからダウンロードできます。

・相手との協議の有無や、調停期日の希望日などについての回答を記入します。

前述の通り、調停期日通知書には初回の調停日時・出席すべき場所・裁判所の担当者の連絡先が明記されており、相手方はこの通知書を受け取って初めて調停が開始されることを知ることになります。

主張書面を準備しておくとスムーズに進めやすい

離婚調停では、主張書面を準備しておくとスムーズに話を進めやすいです。主張書面とは、自分が主張したいことをまとめた書面のことです。

これまでの経緯や自分の考えを口頭で全て説明しようとすると時間がかかりますし、調停委員に伝えたいことが正確に伝わらず、誤解を招いてしまう恐れもあります。

主張書面を調停委員に提出しておけば、自分の主張を正確に伝えられるほか、離婚調停で調整すべき重要なポイントも共有できるため効率的に話し合いが進められます。

要求する内容は現実的なものにする

調停が円滑に進行し、早期に終結するためには、現実的かつ公平な要求をすることが重要です。慰謝料や養育費を非現実的な金額で請求すると、話し合いが難航し、調停が長期化する可能性があります。

たとえば、不貞行為が原因で離婚する場合、慰謝料の相場は個々の事情やケースにもよりますが、一般的には10~300万円程度とされています。

特殊な事情があれば300万円を超えることもありますが、相場以上の極端に高額な慰謝料を求めると、相手方が納得せず、調停が難航する可能性が高いでしょう。

自分が希望する条件がすべて満たされることが理想的ですが、現実にはそれが難しい場合もあります。そのため、話し合いが難航する可能性に備え、自分が希望する条件以外にも、現実的な金額や条件の妥協点・優先順位を事前に決めておくことが有効です。

妥協点も考えておくことで、調停が難航した場合でも、自分の希望と現実とのバランスを保ちつつ、最善の解決策を見つけられます。また、自身の要求が現実的で公平であることを示すことで、調停委員からの理解も得やすくなるでしょう。

お互いのスケジュールを柔軟に合わせる

離婚調停は、当事者双方の話し合いによって進行します。そのため、双方が柔軟にスケジュールを調整できる場合、前回から短い期間で期日を設けることで離婚調停を短期間で終わらせやすくなります。

なお、裁判所が開廷している時間が平日の10~17時であるため、離婚調停は平日しかできません。スケジュール調整の際は注意しましょう。

和解の方向で進めて争点を減らす

和解とは、双方が譲歩しあって裁判所の判決を受けず離婚する方法です。和解の方向で話し合いを進めれば、意見の相違や対立が少なくなり離婚調停も短期間で終わる可能性が高まります。

話し合いで決めるべき争点が多く、お互いに感情的になって自分の主張を強引に押し通そうとすると、離婚調停が長期化しやすいです。

離婚調停は離婚裁判とは違い、夫婦で話し合って双方の合意を目指す場なのでお互いに譲歩しなければ短期間での解決は難しいでしょう。

そのため、相手と徹底的に争うのではなく、お互いに相手の意見を尊重して譲っても良いところは譲るという姿勢を示すことが大切です。

離婚問題に強い弁護士に相談する

専門的な知識と経験を持つ離婚問題に詳しい弁護士に相談することで、調停を迅速かつ有利に進めるためのアドバイスを得られます。

離婚調停を有利にかつスムーズに進めるためには、証拠の収集や提出書類の作成など、事前の念入りな準備が大切です。
しかし、法律に詳しくない素人にとっては、これらの準備が難しい場合もあります。
弁護士に相談することで、準備段階から離婚調停をどのように進めればよいかのアドバイスやサポートを受けられることは、心強いでしょう。

さらに、当日の離婚調停に弁護士が同席することも可能です。弁護士が同席することで、自分の主張をサポートしてもらえます。また、相手に対して自身の離婚に対する真剣さを伝える効果もあります。

離婚調停で注意するべきこと

離婚調停を進める際に、不利な状況に陥らず、後悔のない結果を得るためにはどのようなことに注意すべきかを確認しましょう。具体的に注意するべきことは、以下の6つです。

  • 納得できない条件には合意しない
  • 調停の期日に無断で欠席しない
  • 嘘・矛盾した主張や証拠の捏造をしない
  • 一方的に別居や子どもを連れ去ることをしない
  • 配偶者以外の異性と交際・同棲を始めない
  • 調停委員に悪い印象を与えない

離婚調停は、場合によっては長期にわたる可能性があります。そのストレスから誤った判断や行動をとってしまうことがないよう、これらの注意点を常に意識しておくことが大切です。

納得できない条件には合意しない

自分が納得できない条件であっても、調停を早く終えたいという気持ちから安易に合意してしまうと後悔する可能性があるため、無理に合意しないように気を付けましょう。

調停が成立した際に作成される調停調書は、確定判決と同じ効力を持っています。強制執行も可能となるなど、強い効力を持つため弁護士に依頼しても一度合意した内容は後から撤回できません。

そのため、「納得できない条件には合意しない」という原則を念頭に置き、自身の利益を守るためにも、調停の過程での判断は慎重に行うべきです。

調停の期日に無断で欠席しない

離婚調停で無断欠席をすると、以下のようにさまざまな不利益を招く可能性があるため絶対に避けましょう。

  • 裁判官や調停委員からの心証が悪くなる
  • 調停が長期化する
  • 5万円以下の過料を科せられることがある

初回の期日は多くの場合、初回の期日は裁判所側が指定しますが、初回以降の期日は調停の終了時に当事者と裁判所の予定を確認しながら調整します。そのため、なんらかの理由で参加できない場合は、必ず事前に裁判所に連絡するようにしましょう。

嘘・矛盾した主張や証拠の捏造をしない

離婚調停において、嘘や矛盾した主張、証拠の捏造をすると離婚調停を有利に進めるどころか、かえって不利に進める可能性があるため絶対に避けましょう。

具体的に以下のような行為が、嘘や矛盾した主張、証拠の捏造と捉えられます。

  • DVやモラハラの被害を受けていないにも関わらず、受けたと主張する
  • 不倫の事実があるにも関わらず、その行為を否定する
  • 育児放棄を行っていたにもかかわらず、「自分は可能な限り育児に努めてきた」と述べる
  • 相手方の不倫相手とのやりとりとして、嘘のメッセージを偽造する

もし虚偽の発言が明らかになった場合、慰謝料の増額につながったりその後の発言の信ぴょう性も失われたりしてしまいます。

とくに証拠の捏造は、内容によっては私文書偽造罪(刑法第159条)に該当する可能性があり、離婚とは別の法的な問題と判断される可能性も高いです。調停全体における自分の立場を不利にしてしまうことを避けるためにも、嘘や捏造を避け、誠実に対応することが重要であることを心に留めておきましょう。

子どもの連れ去りや一方的な別居をしない

一方的な別居や子どもの連れ去りをすると、「悪意の破棄」に該当して慰謝料請求の対象になる可能性があるため絶対にやめましょう。

これは、民法において、「同居・協力・扶助義務」(民法752条)が夫婦に定められているためです。また、離婚調停中であっても、夫婦が婚姻関係にある間は、子どもに対する親権は夫婦の双方が共有しています。

一方的に子どもを連れ去る行為は、実の親であっても「未成年者略取・誘拐罪」(刑法第224条)に該当する可能性が高いです。そのため、「早く離婚したい」「子どもの親権を得たい」という願望がある場合でも、完全に離婚して親権が認められるまで別居は控えましょう。

ただし、相手からのDVやモラハラから逃れるためであれば正当な理由が認められるため、離婚前に別居しても慰謝料を請求されることはありません。

配偶者以外の異性と交際・同棲を始めない

相手が離婚に納得していない状況で他の異性との交際や同居を始めると、不貞行為(既婚者が配偶者以外の人と性的な関係を持つこと)と見なされて「有責配偶者」となるリスクがあります。

有責配偶者とは、不貞行為や暴力(DV)など、離婚原因を作り出した配偶者のことです。一般的に有責配偶者による離婚請求は認められないほか、慰謝料を請求される可能性も高いです。

ただし、婚姻関係が破綻している状態で不貞行為を行った場合、離婚の成立や慰謝料の発生に影響を与えないケースがあります。婚姻関係が破綻しているかは、夫婦間の行為や態度・婚姻継続の意思の有無・子どもの有無や状況など、多くの要素から判断します。

しかし、裁判所は一般的な感覚よりも厳しく判断するため、たとえ配偶者と家庭内別居状態でほとんど会話がなかったとしても、婚姻関係の破綻が認定されるとは限りません。

したがって、婚姻関係が破綻していると自身で認識していても、離婚が正式に成立していない限り、配偶者以外の人との性的関係を持つ行為は避けたほうがよいでしょう。

調停の様子を録画・録音しない

離婚調停の過程を録画や録音することは、基本的に許されていません(家事事件手続規則第126条2項と民事訴訟規則第77条)。これは、離婚調停が裁判とは異なり、非公開の手続きであるためです。裁判長の許可があれば録画・録音は可能ですが、その許可が下りるケースはほとんどありません。

一方で、メモを取ることは禁止されていません。そのため調停の内容や進行を記録したい場合、無断で録画・録音を行うのではなく、メモを取ることで記録を残すことをおすすめします。

調停委員に悪い印象を与えない

調停委員に対して好印象を持たれるように意識することも大切です。調停委員は基本的に中立的な立場を保ちますが、好印象を与えることで、離婚調停がスムーズに進むようサポートしてくれる可能性があります。

そのため、陳述書の作成や調停での発言に際しては、感情的にならずに冷静さを保つことが重要です。客観的かつ明確に事実を伝えることを心掛けましょう。

前述の通り、調停委員からは結婚・離婚の経緯から現在の夫婦の状況までさまざまな質問がなされます。質問に対して発言する際は調停委員に対する敬意を保ち、冷静かつ明瞭に自分の立場を伝えることが大切です。

まとめ

本記事では、離婚調停の期間や有利に進めて短期間で終結させるためのコツ、注意すべきポイントについて詳しく解説しました。離婚調停の期間は平均で約半年とされていますが、その期間は各ケースによります。

離婚調停をスムーズに進行させ、短期間で終わらせるためには、事前の準備が重要です。具体的には、離婚問題に詳しい弁護士をつけたり要求する条件の優先順位を決めたりなどが挙げられます。ぜひ本記事で解説した内容を参考にしてください。

また、離婚調停は個々の状況により大きく異なるため、具体的なアドバイスや支援が必要な場合は、専門家である弁護士への相談をおすすめします。

離婚調停の期間に関するよくある質問

離婚調停の平均期間や回数は?

離婚調停の平均期間は約半年で、調停期日の平均回数は約3回です。ただし、これはあくまでも目安なので、平均よりも早く終わるケースもあれば、逆に長期化するケースもあります。

離婚調停期間を長引かせるメリットはある?

離婚調停期間が長引くと、夫婦双方にとって大きな負担となってしまいますが、状況によってはメリットとなる場合もあります。

  • すでに別居している場合は、離婚の方向に話を進めやすくなる
  • 現在未成年の子を監護している親は、親権を獲得しやすくなる
  • 離婚が成立するまで婚姻費用を請求し続けられる

配偶者とすでに別居している場合は、離婚調停期間が長引くことで別居期間も長引きます。長期間の別居は夫婦関係が破綻したとみなされやすいため、離婚調停では離婚の話に話を進めやすくなりますし、裁判に移行した場合も離婚が認められやすい傾向です。

また、別居中の配偶者と親権で揉めている場合、離婚調停期間の長期化は未成年の子を監護している親にとって有利に働きます。親権は現在の監護状況や実績が重視されます。離婚調停期間が長引いた分だけ監護実績も積めるため、離婚の際に親権を獲得しやすくなる点もメリットです。

そして、離婚調停中であっても法律上の夫婦であることには変わりないため、別居中であっても収入が低い方は多い方に対して婚姻費用を請求し続けられます。

離婚調停はどのくらいのペースで行われる?

離婚調停が行われるペースは、一般的に以下のとおりです。


・第1回期日の設定
離婚調停の申し立てから約1か月~1か月半後に第1回期日が設定されることが一般的です。申し立てから約1週間で第1回期日の日程が決定します。日程が決まると、裁判所から調停期日通知書(呼出状)が送られ、これは通常申し立てから約2週間で到着します。


・第2回期日以降?
第1回期日から約1か月~1か月半後に第2回期日が設定され、その後も同様のペースで進行します。ただし、これはあくまで目安であり、具体的な日程は各ケースによります。


また、離婚調停の全体の流れについては以下のとおりです。あらためて流れを理解しておきましょう。

・申し立て
・調停日の決定
・1回目調停2回以降の調停(繰り返し)
・調停成立もしくは不成立

離婚調停の不成立から裁判までにかかる期間は?

調停が不成立となった場合、次のステップとして離婚の訴訟を起こすかどうか検討することになります。法律上、調停が不成立となった後から裁判までの期間に、「いつまでに訴訟しなければならない」という特定の制限は設けられていません。

ただし、訴訟の提起が遅れ、調停不成立から裁判までの間に時間が空きすぎてしまうと、調停からやり直しとなるケースがあります。そのため、離婚に対しての意志が固い場合は、2週間以内を目安に早めに申し立てることをおすすめします。
不成立から2週間以内に離婚訴訟を起こした場合は、調停申立時に支払った印紙代を、訴訟提起の手数料に充当できるという利点もあります。

離婚調停期間中の生活費(婚姻費用)はどうなる?

調停中でも、別居事情に関わらず、生活費は必要です。婚姻関係が続いている間、同居していても別居していても、相手方の収入が多い場合には、離婚が成立するまでに発生した生活費(「婚姻費用」と呼ばれます)を請求できます。

これは、法律上まだ夫婦である限り、生活費の分担義務が存在するためです。婚姻費用とは、配偶者や経済的に自立が難しい未成年の子どもが日々の生活を営むために必要となる経済的な支出を指します。これには、食費、住居費、教育費など、日常生活を維持するための基本的な費用が含まれます。

離婚調停と協議離婚・離婚裁判との違いは?

離婚調停、協議離婚、離婚裁判はそれぞれ異なる特性と手続きを持つものです。協議離婚は、夫婦間の話し合いによって決定されます。裁判所を通じた裁判や調停は必要ありません。夫婦が離婚について合意し、離婚届を役所に提出することで離婚が成立します。

一方、離婚調停と離婚裁判は、裁判所の手続きを必要とするところで共通しています。
しかし、離婚調停は基本的に当事者間の話し合いを通じて解決を目指すものです。そのため、合意が得られない場合は不成立となるところに離婚調停と離婚裁判との違いがあります。

それに対して、離婚裁判は、離婚調停が不成立となった場合に行われます。基本的に、裁判は離婚調停を経た後にしかできません。離婚裁判では、裁判官からの判決により離婚が決定されます。

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