そもそも離婚調停とは?
そもそも「離婚調停」とは、裁判官1名と裁判所の職員である調停委員2名で構成される「調停委員会」を介して夫婦が「離婚するかどうか」を話し合う手続きのことです。裁判とは異なり、あくまでも話し合いによる解決を目指します。
離婚調停を行う場合は「相手方の住所を管轄する家庭裁判所」に以下の書類などを提出し、申し立てを行います。
- 夫婦関係調整(離婚・円満)調停申立書
- 送達場所の届出書
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本
- 収入印紙
- 郵便切手
申し立てが裁判所に受理されると、双方に呼出状が送付されます。お互いが離婚に合意したあとは、以下の条件についても話し合います。
- 財産分与
- 慰謝料
- 親権
- 養育費
- 面会交流の日時・頻度
- 婚姻費用
離婚条件はケースによってさまざまです。
話し合いが必要な事項が多ければ、その分調停が長引く可能性があります。優先したい条件と妥協できるラインを自分の中で明確にしておくと、合意に至るまでの道筋を立てやすくなるでしょう。
参考:裁判所の管轄区域|裁判所
参考:夫婦関係調整(離婚・円満)調停の申立て|裁判所
自分で離婚調停を申し立てる場合は3,000円程度
自分で離婚調停を申し立てる場合、合計で3,000円程度の費用が発生します。詳細は以下のとおりです。
項目 |
金額 |
内容 |
取得方法 |
収入印紙代 |
1,200円 |
申立手数料として離婚調停の申立書に貼り付ける |
郵便局・コンビニなどで購入 |
郵便切手代 |
1,000円前後 |
裁判所から申立人や相手方に書類を郵送する際にかかる郵送料 |
郵便局・コンビニなどで購入 |
戸籍謄本取得費用 |
450円 |
申立時の必要書類として夫婦の戸籍謄本を提出する |
本籍地の市区町村役場に請求
※郵送での取得も可能。令和6年3月1日以降は本籍地以外の役所でも取得可能。 |
住民票取得費用 |
200〜300円 |
ケースによって必要となる場合がある |
住所地の市区町村役場
※市区町村によってはコンビニでも取得可能。 |
それぞれ解説していきます。
収入印紙代:1,200円
申立手数料として、1,200円分の収入印紙を用意する必要があります。
離婚調停とはまた別に、ほかのことについても申立てを行う場合は、それぞれに申立手数料がかかります。例えば離婚調停だけでなく、離婚までに発生する生活費を請求する「婚姻費用の分担請求調停」も同時に申立てるケースでは、1,200円×2組で合計2,400円分の収入印紙が必要です。
収入印紙は郵便局やコンビニなどで購入できます。そのほか、法務局や金券ショップでも販売されています。
郵便切手代:1,000円前後
郵便切手代は各家庭裁判所によって異なりますが、1,000円前後であることが一般的です。裁判所から申立人や相手方に書類を郵送する際の郵送料として使用されます。
注意点は、切手の内訳が決められている点です。例えばさいたま家庭裁判所では、以下のように決まっています。
140円切手1枚+100円切手2枚+84円切手10枚+10円切手10枚+5円切手2枚+1円切手10枚
用意すべき金額や内訳については、管轄の家庭裁判所に問い合わせましょう。
なお、郵便切手も収入印紙と同様に、複数の調停を申立てるならそれぞれの申し立てに対して必要です。
戸籍謄本取得費用:450円
戸籍謄本の取得費用は、全国一律で1通450円です。戸籍謄本は市区町村役所で取得します。
これまでは本籍地でしか取得できませんでしたが、「広域交付制度」が施行されたことにより、令和6年3月1日以降は本籍地以外の市区町村役場でも取得できるようになりました。例えば最寄りの役場や、勤務先の近くにある役場などでも取得できます。
取得できるのは本人や配偶者、親や子どもといった直系血族です。
ただし、広域交付制度を利用して戸籍を取得する場合、郵送や代理請求はできません。郵送で取得したいなら、本籍地に請求する必要があります。
なお、夫婦の戸籍謄本は1通のみ準備すれば問題ありません。例えば離婚調停と婚姻費用の分担請求調停を申し立てる場合でも、1通のみ用意してください。
参考:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)|法務省
住民票取得費用:200〜300円
住民票取得費用として200〜300円程度かかります。ただし、交付手数料は市区町村によって異なります。事前にホームページなどで確認しておくと確実です。
裁判所のホームページには住民票が必要であるとの記載はありませんが、提出を求められることがあります。念のため、準備しておいたほうがスムーズでしょう。
住民票は住所地の市区町村役場で取得できます。市区町村によってはコンビニでも取得可能です。コンビニの場合、通常よりも安い金額で取得できることもあります。
その他
裁判所に出向くための交通費も必要です。
調停を行う裁判所は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」と定められているため、相手とすでに別居しており、相手が遠方に住んでいる場合は交通費が高額になる可能性があります。
ただし「電話会議システム」を活用すれば、裁判所に出頭しなくても電話でやりとりできるようになりました。裁判所から当事者の自宅や携帯電話に電話がかかってきて、そのまま電話越しに調停を行います。
第三者が立ち入らないよう個室で話す必要があることや、録音を行ってはならないなどの細かいルールを守る必要がありますが、交通費が負担に感じられる場合は申請を検討してみてもよいでしょう。
参考:民事調停 | 裁判所
参考:電話会議システム利用希望申出書
弁護士に離婚調停を依頼する場合は50~100万円程度
弁護士に離婚調停を依頼する場合、合計で50〜100万円程度の費用が発生します。ただし、争点が増えるごとに着手金や報酬金は増えるため、かかる費用はケースによって異なります。
弁護士に離婚調停を依頼する場合の費用の内訳は以下のとおりです。
項目 |
金額 |
内容 |
支払うタイミング |
相談料 |
5,000~1万円程度 |
法律相談にかかる費用 |
相談後 |
着手金 |
20~50万円程度 |
業務に着手する際にかかる初期費用 |
正式に依頼するとき |
報酬金 |
30~100万円程度 |
結果に応じて発生する費用 |
離婚が成立したとき |
日当・実費 |
3~5万円程度 |
弁護士が業務を行うために必要な費用 |
その都度
※弁護士事務所によって異なる |
それぞれ解説していきます。
相談料:5,000~1万円程度
弁護士に離婚調停を依頼する際の相談料は5,000〜1万円前後が相場です。相談の時間は30分〜1時間に設定されているケースが多く、長引く場合は延長料金がかかります。
弁護士事務所の中には、初回の相談料を無料に設定しているところもあります。「依頼するかどうかはまだわからないが、まずは相談してみたい」と考えている方は、無料相談が可能な弁護士事務所に足を運んでみると良いでしょう。
ただし、突然訪問してもすぐに対応してもらえるとはかぎらないため、まずは電話などで問い合わせ、日程を決めることをおすすめします。相談日までに相談内容をまとめておくと、与えられた時間を有効に活用できるでしょう。
なお、相談したからといって、必ずその事務所に依頼しなければならないわけではありません。例えば複数の事務所で無料相談を受け、弁護士の対応や自分との相性、費用感などを比較したうえで依頼する事務所を決定することも可能です。
着手金:20~50万円程度
弁護士に離婚調停を依頼する際の着手金は20〜50万円前後です。弁護士に依頼する際にかかる費用であり、結果にかかわらず発生します。
親権争いや財産分与争いなど、事案の難易度が上がる場合は費用が高額になるケースもあります。
注意点は、着手金が安いからといって、それだけで飛びつかないことです。着手金が安い代わりに他の名目で費用がかかり、トータルすると思ったより高額になるケースなどもあります。
例えば成功報酬の割合や日当などが、相場より高めに設定されているかもしれません。費用については相談の段階で詳細を確認し、弁護士の対応はどうか、きちんと説明してくれるかといった他の要素とあわせてしっかり検討することが大切です。
報酬金:30~100万円程度
弁護士に離婚調停を依頼する際の報酬金は30〜100万円程度です。報酬金は、調停が成立した場合に発生する費用のことをいい、「成功報酬」とも呼ばれます。
事務所ごとに規定が異なり、金額が固定されているところもあれば、「経済的利益の◯%」というように、得られた利益によって金額が変わる方式をとっているところもあります。
例えば、以下のケースでかかる報酬金は10万円です。
・報酬金は「経済的利益の10%」
・慰謝料100万円を獲得
内容や結果によっては高額の報酬金がかかることもあります。相談の際にしっかり確認しておきましょう。
ここからは、以下のケース別に報酬金の相場と費用例を紹介します。
- 養育費の請求:2〜5年分の養育費×10〜20%程度
- 親権の取得:10〜20万円程度
- 財産分与:得られた10〜20%程度
- 慰謝料の請求:獲得した慰謝料の10〜20%程度
- 婚姻費用の請求:獲得した婚姻費用の10〜15%程度
養育費の請求:2〜5年分の養育費×10〜20%程度
養育費に関する報酬金は、「相手方と取り決めた養育費の金額×2〜5年分の10〜20%」として設定されるのが一般的です。例えば3年分(36ヶ月)の養育費×10%で計算した場合、報酬金は以下の金額になります。
・養育費:毎月8万円
・報酬金:28万8,000円
(8万円×36カ月×10%=28万8,000円)
なお、養育費の平均金額は「母子世帯では5万485円」「父子世帯では2万6,992円」です。ただし相手の収入状況や生活事情に応じて請求できる金額は異なるため、弁護士に適正な金額を算出してもらうことが望ましいでしょう。
参考:令和 3年度 全国ひとり親世帯等調査結果
親権の取得:10〜20万円程度
親権を取得する場合の報酬金は10〜20万円程度が相場です。
ただし、依頼する事務所によっては基本となる報酬金が決まっており、得られた利益に応じてさらに追加報酬金がかかるケースもあります。
基本となる報酬金+追加報酬金がかかるケースの費用例は以下のとおりです。
・基本となる報酬金:20万円
・追加報酬金:20万円
・合計:40万円
どのような報酬体系をとっているかは事務所によって異なります。事前に確認しておきましょう。
財産分与:得られた利益の10〜20%程度
財産分与を弁護士に依頼する場合にかかる報酬金の相場は、得られた利益の10〜20%程度です。
500万円の利益を得た場合の費用例は以下のとおりです。
・得られた利益:500万円
・報酬金:50万円
(500万円×10%=50万円)
ただし依頼する事務所によっては、「20〜60万円」というように報酬金の金額が固定されている場合もあります。
慰謝料の請求:獲得した慰謝料の10〜20%程度
慰謝料を請求する場合の報酬金は、獲得した慰謝料の10〜20%程度が相場です。
250万円の慰謝料を獲得した場合の費用例を見てみましょう。
・慰謝料:250万円
・報酬金:50万円
(250万円×20%=50万円)
婚姻費用の請求:獲得した婚姻費用の10%〜15%程度
婚姻費用を請求する場合の報酬金は、獲得した婚姻費用の10〜15%程度が相場です。「2〜3年分の婚姻費用×10%」というような料金設定をしている事務所もあります。
そのほか、基本となる報酬金があらかじめ決まっており、得られた利益に応じてさらに追加報酬金がかかるケースもあります。
月額5万円の婚姻費用を獲得した場合の費用例を見てみましょう。
・婚姻費用:毎月5万円
・報酬金:12万円
(5万円×24カ月(2年分)×10%=12万円)
基本となる報酬金+追加報酬金がかかるケースの費用例は以下のとおりです。
・基本となる報酬金:20万円
・婚姻費用:120万円(月額5万円×24カ月)
・報酬金:38万円
(20万円+120万円×15%=38万円)
このように、依頼する事務所によって費用は大きく異なることがあります。無料相談の時点でよく確認しておくことをおすすめします。
日当・実費:3~5万円程度
弁護士に離婚調停を依頼する際の日当・実費は3万円〜5万円程度です。日当とは、弁護士が裁判所に出頭するごとに発生する費用のことです。実費とは、書類の取得費用や手続きなどに実際にかかる費用です。
日当に関しては半日か1日かによっても金額が異なりますが、半日であれば請求されない場合も多いです。事務所によっては着手金に含まれていることもあります。
離婚調停の弁護士費用を抑えるコツ
弁護士に依頼したくても、費用がネックになってしまう方も多いのではないでしょうか。そこで、「離婚調停の弁護士費用を抑えるコツ」をご紹介します。具体的には以下のとおりです。
- 複数の弁護士事務所から見積もりを出してもらう
- 法テラスの民事法律扶助制度を活用する
- 相談料や着手金がかからない事務所に相談する
それぞれ解説していきます。
複数の弁護士事務所から見積もりを出してもらう
弁護士事務所によって費用は異なります。相場を把握するためにも、複数の弁護士事務所から見積もりを出してもらい、料金を比較してみましょう。また料金の内訳を比較することで、事務所ごとの方針も理解しやすくなります。
単に費用が安いか高いかだけでなく、弁護士の実績・得意分野・人柄を確かめることも大切です。あくまで金額面は判断材料の1つとして捉えるようにしましょう。
法テラスの民事法律扶助制度を活用する
弁護士費用が用意できない場合は、法テラスの「民事法律扶助業務」を活用するのも有効です。
民事法律扶助業務とは、経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替え(「代理援助」、「書類作成援助」)を行う業務です。
引用元 民事法律扶助|法テラス
ただし収入や資産面での要件があるため、該当するか否かを確かめる必要があります。まずは、居住地の法テラスで無料の電話相談を受けてみるとよいでしょう。
参考:お近くの法テラス(地方事務所一覧)|法テラス
相談料や着手金がかからない事務所に相談する
無料相談や着手金無料の事務所に依頼することで、費用をある程度抑えられます。着手金無料の完全成功報酬型の事務所に依頼すれば、初期費用をかけずに済むでしょう。
ただし、着手料を無料や低額に設定している事務所に依頼する場合は、成功報酬の金額に注意する必要があります。着手金がかからない、または安い分、成功報酬の金額が大きく設定されている可能性があるためです。
初期費用は抑えられても、最終的に手元に残る金額が少なくなってしまうリスクがあることを理解しておきましょう。
離婚調停にかかる費用は誰が支払うの?
離婚調停にかかる費用は、基本的には申し立てた側が負担します。一方で、離婚裁判に発展した場合は敗訴した側が負担します。
ここでは、離婚調停にかかる費用を「誰が支払うか」について解説します。
- 相手方には支払義務がないため、原則申し立てた側が支払う
- 離婚裁判に発展した場合の裁判費用は、いったん原告が支払うが最終的に敗訴側が支払う
原則申し立てた側が支払う
離婚調停にかかる費用は、基本的には申し立てた側が全額自己負担で支払います。家事事件手続法により、離婚の原因が相手方にあったとしても、「家事調停に関する手続の費用は、各自の負担とする」と定められているためです。
離婚調停にかかる費用を負担してもらうよう相手方と交渉することは可能ですが、相手方に支払う義務はないため合意を得ることは難しいでしょう。
ただし相手方が早期の離婚を望んでいるなら、取引が成立する可能性もあります。そのほか、財産分与の金額に上乗せされるパターンや、解決金という名目で合意できるケースも挙げられます。
なお、弁護士費用については、離婚調停を申し立てた側・申し立てられた側に関係なく、弁護士に依頼した人自身が負担するのが原則です。
調停費用の場合と同様に、費用の支払いについて相手方と交渉すること自体は可能ですが、相手方に支払う義務はありません。負担してもらえない可能性のほうが高いでしょう。
参考:家事事件手続法第28条
離婚裁判に発展した時の費用は敗訴側が支払う
民事訴訟法では、離婚裁判の訴訟費用について「敗訴当事者の負担とする」と規定されています。つまり離婚裁判(訴訟)にかかった訴訟費用は、基本的に敗訴した方が負担するということです。
勝訴したのがこちらであれば、訴訟費用はすべて相手方の負担です。全面的に勝訴した場合は、判決後に訴訟費用を一括で相手方に請求できます。
ただし離婚裁判において、一方の言い分のみが認められる「全面的勝訴」となる可能性はそこまで高くありません。多くのケースでは「一部勝訴(一部敗訴)」となるため、その割合に応じて裁判費用を按分することになります。
それぞれの負担割合については判決とともに言い渡され、被告は自分の負担割合に応じた裁判費用を原告に支払います。
注意点は、判決が言い渡されるまではどちらが敗訴するかがわからないため、訴訟提起時・訴訟継続中に発生した費用については、原告が一時的に負担する必要がある点です。また、収入印紙代や切手代といった実費についても、いったん原告側が負担します。
なお、弁護士費用は訴訟費用に含まれないため、全額自己負担となるのが基本です。ただし、不貞行為などの不法行為により慰謝料(損害賠償請求)を求めるケースでは、例外的に弁護士費用の一部を相手に請求できる場合もあります。※判決で言い渡された損害賠償額の10%程度が目安
参考:民事訴訟法第61条
費用以外に把握すべき離婚調停のポイント
離婚調停において、費用面以外に把握すべきポイントは以下のとおりです。
- 離婚調停を有利に進めるための事前準備を行う
- 平均3~6カ月の期間がかかることを覚悟する
それぞれ解説していきます。
離婚調停を有利に進めるための事前準備を行う
離婚調停を有利に進めるためには、事前準備を怠らないことが非常に重要です。
口頭で自分の主張を伝えようとしても上手く伝えられなかったり、伝えた内容に誤解が生じたりする可能性も考えられます。そのため事前に有力な証拠を集めておき、事実関係や時系列を整理しておくようにしましょう。
調停で主張したいことがあるときは以下のような証拠を用意し、その写しを事前に提出しておくことが望ましいです。
不貞行為 |
・性交渉中の様子を撮影した動画や写真
・不貞行為に言及している手紙、メール、SNSのやりとり
・探偵業者の調査報告書など |
DV |
・医師の診断書
・怪我をした部位の写真
・DVの様子がわかる音声、映像
・DVの日時や内容を記載した日記
・メールやSNSのやりとりなど
|
財産分与・養育費 |
・通帳などの口座情報
・給与明細、源泉徴収票
・株式に関する証明書
・保険証券など |
親権 |
・子供の養育状況に関する日記・メモ(幼稚園の送り迎えをしているなど)
・親権者になろうとする者の健康状態や生活環境、経済状況が整っていることを証明できるものなど
|
調停委員に悪い印象を与えないよう、感情的にならず冷静を保つことも大切です。相手方の問題点を指摘しようとしても、不適切な言葉や一貫性のない発言をしてしまえば、調停委員からの信頼は得られません。
事前に第三者に資料を読んでもらい、整合性の取れている内容か確認を取るようにしましょう。リハーサルを行うことで緊張が和らぎ、自信を持って調停に臨めます。
離婚調停では、主に以下の内容が問われます。
- 結婚に至るまでの経緯
- 離婚を決意した理由
- 現在の夫婦状況
- 子供に関すること
- 夫婦関係が修復できる可能性
- 離婚条件について(財産分与・慰謝料・養育費など)
- 離婚後の生活について
事前に問われることを予想し、話す内容をまとめておくようにしましょう。
平均3~6カ月の期間がかかることを覚悟する
離婚調停にかかる期間は、平均して3〜6カ月です。調停期日の回数は2〜4回程度です。
ただし、1カ月程度で早期終了するケースもあれば数年かかる事案もあるため、どの程度かかるかはケースバイケースといえるでしょう。
そもそも離婚するかどうかで争っている場合、離婚調停は長期化しやすくなる傾向にあります。調停はあくまでも話し合いで解決を目指す手続きであるため、どちらか一方に離婚する意思がなければ、離婚調停は成立しません。
譲歩できる点を相手方に提示したり争点を絞ったりすれば、早期に離婚調停が成立する可能性も見込めます。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
弁護士に離婚調停を依頼するメリットは以下のとおりです。
- 有利に離婚調停を進めやすくなる
- 精神的な負担や労力を軽減できる
- 訴訟になった際もスムーズに対応しやすい
それぞれ解説していきます。
有利に離婚調停を進めやすくなる
弁護士が代理人としてサポートしてくれることで、離婚調停を有利に進めやすくなります。
調停では、「調停委員に共感してもらえるか」「味方につけられるか」が非常に重要です。離婚問題に強い弁護士に依頼すれば、筋の通った議論を展開してくれるでしょう。また、訴訟を見越したうえで交渉を進めてくれるため、長期間にわたる争いにも備えられます。
さらに、弁護士がついていれば「法律の知識がないために不利を被る」といった状況を避けられます。
親権や財産分与、養育費など、調停では合意に向けてさまざまなことを決めなければなりません。
弁護士に依頼せず自分で対応した場合、調停条項に記載された内容が理解できず、不利な内容で合意してしまうリスクが想定されます。法律の知識がなく、相手方に弁護士がついている状況では、優位な状況に立つことは難しいでしょう。
しかし弁護士のサポートを受けることで、調停条項に書かれている意味やリスクなど、十分に納得した上で手続きを進められます。単に調停を成立させるだけでなく、その内容が実現可能なのかどうかについても配慮してもらえるため、費用以上のメリットを得られる可能性があるでしょう。
精神的な負担や労力を軽減できる
法律のプロフェッショナルである弁護士に依頼を行うことで、 精神的な負担を軽減できるのも魅力です。
離婚調停において、必要な証拠や資料を揃えるのは途方もない労力がかかります。自分で全て対応するとなれば、仕事や睡眠の時間を削るほどの準備が要求されるのが実情です。裁判にまで発展するとなれば、1人で対応しながら優位な状況に立つのは不可能に近いといえるでしょう。
弁護士に全面的に作業を任せることで、本業に支障をきたすことなく、調停に自信を持って挑むことができます。調停に至るまでの準備で疲弊してしまい、早期解決のために自らに不利な条件で合意してしまう事態だけは避けたいものです。
訴訟になった際もスムーズに対応しやすい
離婚調停から弁護士に依頼すると、もし調停が不調に終わり離婚訴訟に移行した場合でも、スムーズな対応が可能です。
調停の段階で弁護士がついていれば、弁護士はすでに当事者の事情を把握しているうえ、調停の時点で訴訟を見越したシミュレーションをしているはずです。そのため、慌てず期日を迎えられるでしょう。
反対に、調停の段階で弁護士がついていない状況では、調停が不成立になってから弁護士を探さなければなりません。一から弁護士に状況を説明しなければならないうえ、知識がないために調停で自分に不利になるような発言をしてしまっている可能性もあります。
そのため、できれば調停を申立てる段階で弁護士に相談することをおすすめします。
離婚調停を弁護士に依頼するデメリット
弁護士に離婚調停を依頼するデメリットは以下のとおりです。
- 依頼者が弁護士費用を払う必要がある
- 弁護士への丸投げはできない
それぞれ解説していきます。
依頼者が弁護士費用を払う必要がある
離婚調停を進めていくのに、弁護士のサポートを受けたほうがよいのは間違いありません。
しかし、弁護士に依頼するなら当然費用がかかります。そのため「どの程度の費用が発生するか」が最大の懸念事項といえるでしょう。
離婚調停は話し合いで合意を目指していくため、どちらかが合意しなければ調停は不成立となります。そのあと離婚裁判に発展したとしても、望んだ結果になるとはかぎりません。
しかし、それでも弁護士費用はかかります。場合によっては納得のいかない結果になってしまう可能性があることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
慰謝料や養育費、財産分与など、お金に関わる争点があるケースでは、成果として見込まれる額と弁護士費用を見積もったうえで、弁護士に依頼するかどうかを判断することをおすすめします。
弁護士への丸投げはできない
「仕事が忙しいため、自分の代わりに離婚調停に出席して話し合いを進めてほしい」という理由から弁護士への依頼を検討している方もいるでしょう。しかし、「弁護士に丸投げ」はできないという認識を持つべきです。
離婚調停は、「離婚」という身分関係に関する調停です。原則として依頼者自身の出席が求められます。夫婦間の具体的な事実経過など細かいところは依頼者本人にしかわからず、弁護士は調停員から尋ねられてもその場で答えることができません。そうすると、次回の調停期日で回答するというということになり、調停が長引いてしまうリスクがあるのです。
出席する場合には、平日の日中に開催されるため、仕事があっても休んで調停に出席しなければなりません。
「弁護士にすべてお任せして、自分は結果だけを確認したい」とはいかないのです。
他方で、財産分与の方法等、離婚の条件のみを話し合うケースでは依頼者が出席しなくても良いケースもあります。依頼者が出席すべきかどうかは依頼する弁護士に尋ねてみてください。
また、本人の病気や親族の葬儀といった特別な理由がある場合、欠席が認められることもあります。
離婚問題専門の弁護士の探し方
弁護士に依頼するのであれば、離婚調停の実績や経験が豊富な弁護士を探すことをおすすめします。有利な状況を作り出せる可能性が高まるためです。
離婚問題を専門とする弁護士の探し方は以下のとおりです。
- 弁護士会から紹介してもらう
- 離婚問題に強い弁護士検索サイトを活用する
それぞれ解説していきます。
弁護士会から紹介してもらう
弁護士会から弁護士を紹介してもらうのもひとつの手段です。
弁護士会とは、弁護士への指導や連絡、監督を行う目的で構成された法人組織です。強制加入の組織であるため、弁護士登録をするなら弁護士会に所属しなければなりません。
各地域の弁護士会に紹介してもらえるため、信頼性が高いのがメリットです。なお、前述した「法テラス」でも弁護士の紹介を行っています。
ただし、離婚の分野で実績がある弁護士を紹介してくれるとは限らないため、あまり頼りにならないと感じてしまうケースも想定されます。自分で探しても良い弁護士に巡り会えなかったときの手段として、弁護士会や法テラスを検討してみるとよいでしょう。
参考:相談窓口・法制度|法テラス
参考:弁護士紹介センター|東京弁護士会
離婚問題に強い弁護士検索サイトを活用する
「ツナグ離婚弁護士」で離婚問題に強い弁護士を探すのもおすすめです。
ツナグ離婚弁護士では、居住地域や相談したい内容を選択するだけで、多数の弁護士事務所がリストアップされます。さらに、事務所ごとに以下の情報を確認できるため、どのような事務所かをイメージしたうえでコンタクトが取れます。
- 選ばれる特徴
- 相談者へのメッセージ
- 事務所の強み
- 費用
- 事務所情報
- 弁護士情報
「オンライン面談可能」「女性弁護士在籍」といった細かい条件も指定できるため、表示数が多すぎて絞り込めないといった煩わしさもありません。
簡単に自分の条件に合う弁護士を探せるのが最大の魅力です。
まとめ
離婚調停にかかる費用や弁護士費用、弁護士に依頼するメリット・デメリットなどについて紹介しました。
離婚調停にかかる費用の中でも、弁護士費用は大きなポイントです。弁護士に依頼することで、精神的負担やリスクの軽減、調停を有利に進められるといったメリットを得られる反面、「弁護士費用がいくらかかるのか」という不安を覚える方もいるでしょう。
費用面が心配なら、無料相談を通して費用の相見積もりを取ったり、法テラスを利用したりといった方法もあります。まずは、費用面もあわせて弁護士に相談してみましょう。
離婚調停の費用に関するよくある質問
協議離婚ではどれくらいの弁護士費用がかかりますか?
協議離婚の費用相場は、着手金と成功報酬を合わせて20〜60万円程度です。協議離婚では弁護士が中立の立場となり、相場の提示や和解案の提案を行ってくれます。
成功報酬の相場は内容ごとに異なります。弁護士費用の項目ごとの相場は以下の通りです。
内容 |
成功報酬の相場 |
慰謝料請求 |
獲得金額の10〜20% |
財産分与 |
獲得金額の10〜20% |
親権の獲得 |
10〜20万円 |
養育費の獲得 |
1年分の養育費の10%前後 |
協議離婚に基づく公正証書を作成した場合、作成費用として5,000〜2万円が必要です。
公正証書は、約束が守られず訴訟を提起した場合に有力な証拠となります。また、養育費などの支払いが滞ったときに差し押さえが可能になる「強制執行認諾文言」を記載することもできるため、お金を受け取る側の方が安心して協議離婚の条件に合意できます。
裁判離婚ではどれくらいの弁護士費用がかかりますか?
離婚裁判の弁護士費用は70〜110万円程度が相場です。ただし、離婚調停から継続して同じ弁護士が受任するか、離婚裁判から新たに弁護士が受任するかによって弁護士費用は異なります。同じ弁護士に引き続き依頼する場合、事務所によっては裁判での着手金を0円にしてもらえることもあります。
離婚調停が不成立となった場合、離婚裁判を提起するのが一般的な流れです。離婚裁判では、裁判官が原告・被告の主張や立証を踏まえて、離婚可否や離婚条件を提示してくれます。そのため、当事者同士での話し合いで結論が出ない問題でも解決できる可能性があります。
離婚調停から継続して同じ弁護士が受任する場合
離婚調停から継続して同じ弁護士が受任する場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
- 離婚裁判の着手金:0~20万円
- 離婚成立時の報酬金:30〜40万円
- 合計:30〜60万円
離婚調停のあと離婚裁判に発展したケースの弁護士費用は、70〜110万円程度が相場です。
ただしこの金額は、離婚の可否のみを争う場合です。離婚慰謝料や財産分与についても争うなら、得られた金額の10〜20%程度の報酬金が発生します。
請求する慰謝料や財産分与が高額であれば、着手金と報酬金を合わせて100万円を超える弁護士費用が発生する可能性がある点を念頭に置いておきましょう。
離婚裁判から新たに弁護士が受任する場合
離婚裁判から新たに弁護士が受任する場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
- 着手金:30〜40万円
- 離婚成立時の成功報酬金:30〜40万円
- 合計:60〜80万円
離婚慰謝料や財産分与について争う場合、得られた金額の10〜20%程度の報酬金が発生します。請求する慰謝料や財産分与が高額であれば、弁護士費用がトータルで100万円を超える可能性がある点にも留意しておきましょう。
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