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子連れ離婚に向けた準備とは?やることリストや適用可能な支援制度を解説

子連れ離婚に向けた準備とは?やることリストや適用可能な支援制度を解説

子連れ離婚を考える場合、子どもとの生活を安定させるためには事前の準備と情報収集が不可欠です。

親権者になるための準備や離婚後の面会交流について考えることが必要ですし、金銭的な面でも決めることは数多くあります。「養育費」「財産分与」「年金分割」「婚姻費用」また、離婚原因によっては慰謝料請求も必要です。

離婚協議で合意に至った場合は、養育費の支払いや財産分与などを確実に履行してもらい、離婚後のトラブルを避けるために離婚協議書を作成することが大切です。

離婚後の生活については、児童扶養手当をはじめ一人親世帯を支援する制度はさまざまあります。自治体によって異なる場合がありますので、しっかりと利用できる制度を確認しておくことが大切です。

また、子連れ離婚するとなると、離婚届の提出以外にさまざまな手続きが必要です。転居手続きや子どもの戸籍・姓の変更、健康保険・年金、取得した財産の名義変更などをしなければなりません。

離婚に至るまでには、夫婦間で協議して離婚するケースのほか、話し合いがまとまらなければ離婚調停、それでも合意に至らない場合は裁判所の審判手続きがあります。

裁判になると、話し合いではなく法的な根拠に基づき主張・立証することになります。離婚以外にも争点が多くなりやすい子連れ離婚の場合、弁護士へ依頼することも考えたほうがよいでしょう。

この記事では子連れ離婚に向けて必要な準備や手続き、流れについて、具体的に解説します。

子連れ離婚に向けた準備リスト

子どもを連れて離婚する場合、さまざまな準備が必要です。子連れ離婚に向けて準備すべき8つのことを解説します。

  • 親権者になるための準備
  • 養育費確保に向けた準備/li>
  • 面会交流の準備
  • 財産分与の準備
  • 慰謝料請求の準備
  • 【厚生年金のみ】年金分割の準備
  • 婚姻費用請求の準備
  • 離婚協議書の作成

親権者になるための準備

子どもの親権者になるための準備が必要です。

親権とは、子どもの監護、養育をし、子どもの財産を管理する権利です。子どもの代理人として法律行為をすることもできます(民法818条以下)。

日本の場合、婚姻中は父母が共同して親権を行いますが(共同親権)、離婚する場合、どちらか一方が親権を持つ単独親権となります(民法818条3項、819条1項・2項)。そのため、離婚する際は、どちらが親権を持つか決めることが必要です。

親権者になるための明確な基準が定められているわけではなく、話し合いで自由に親権者を決めることが可能です。ただ、協議で決められない場合、家庭裁判所の調停や裁判で決めることになります。

協議や調停の話し合いと異なり、裁判ではこれまでの子育ての状況や将来の環境などを踏まえ、家庭裁判所の裁判官が決めます。

親権者を決めるときに重視される基準として次のようなものがあります。

  • 現状優先の基準
  • 母親優先の基準
  • 子どもの意思の尊重
  • 兄弟不分離の基準
  • 子育て環境が整っているか

なお、裁判所の司法統計によると、約9割は母親が親権を獲得しています。

裁判所|司法統計

現状優先の基準

現状優先の基準は、現在の子どもの生活環境をできるだけ維持し、大きく変化することを避けることを重視する基準です。個々の状況によりますが、幼い子どもにとって大きく生活環境が変わることは心身とも負担が大きくなる点から考慮されます。

母親優先の基準

母親優先の基準は、特に子どもが乳幼児の場合、母親の愛情が必要なことを重視する基準です。ただし、子どもが幼くても、母親の健康状態やこれまでの監護状況から父親が親権を得るケースもあります。

子どもの意思の尊重

子どもがしっかりと意思表示ができる年齢であることが必要ですが、親権者を判断するうえで子どもの意思が尊重されます。子どもが15歳以上の場合、法律上子どもの意思を聴取することが必要とされています。

兄弟不分離の基準

兄弟姉妹を別々にすべきではないという考え方に基づくものです。これまで一緒に生活してきた兄弟姉妹と離ればなれになることは子どもへの精神的な影響は少なくありません。裁判所は子どもの幸せや安定的な生活を重視するなかで、兄弟姉妹との関係も考慮します。

子育て環境が整っているか

親権者を決めるうえで、子どもを養育していく環境が整っているかは重要な判断基準です。

親権者の経済力や健康状態、居住環境などのほか、子どもの幼稚園の送り迎えや日々の家事、緊急時の体制など、生活環境がどれくらい整っているかなどが判断材料になります。

親権者になるためには、このような点を踏まえ準備を進めることが必要です。

養育費確保に向けた準備

離婚後、子どもと経済的に安定した生活を送るためには、養育費をしっかりと確保することが必要です。養育費について、次のようなことを決めます。

  • 養育費の額(通常、月額〇〇円)
  • 支払日(毎月25日など)
  • 支払い方法(振込など)
  • 振込口座の指定
  • 支払い期間(何歳まで支払うか)

離婚の際の養育費を決める基準として用いられるのが、家庭裁判所の養育費の算定表です。子どもの人数と年齢ならびに養育費を支払う義務者と受け取る権利者の収入を基準に養育費の目安となる金額を定めています。

また、子どもに疾患があり高額な医療費を必要とする場合や私学に通っている場合など、特段の事情がある場合、養育費の増額を交渉することも可能です。

なお、子ども家庭庁のひとり親世帯に関する調査によると、養育費の平均月額は、母子家庭が50,485円/月、父子家庭が26,992円/月となっています。

養育費を請求するためには、相手の収入をしっかりと把握しておくことが大切です。そのため、相手の給与明細や自営業者であれば確定申告書の写しなどを事前に調べておくとよいでしょう。

なお、養育費については、長期間継続的に支払ってもらう必要がありますが、支払が滞った場合の対策も必要です。

離婚協議で養育費を決めるときは、離婚協議書を作成し、上記のような取り決めを契約書として定めるとよいでしょう。

万一、約束した支払いがされず訴訟となった場合、離婚協議書は有力な証拠になります。また、裁判手続きは時間も費用もかかるため、現実には裁判を提起できないケースもあります。

その場合、公正証書で離婚協議書を作成し、支払が滞った場合には直ちに強制執行を受けてもやむを得ないと言った文言(強制執行認諾文言といいます)を入れておくことで、裁判手続きを経ずに、相手の給与や財産の差し押さえなど強制執行が可能になります。

参照:裁判所|養育費・婚姻費用算定表

面会交流の準備

離婚後に子どもと離れて暮らす親が、子どもと会ったり手紙やプレゼントのやり取りをしたりなど交流する権利を面会交流権といいます。

離婚しても子どもにとって父母は1人です。面会交流は、子どもの健全な成長のためには、離れて暮らす親とも定期的に交流すべきという考えに基づいています。

そのため、離婚にあたって、子どもに暴力をふるうなど特別な事情がなければ、面会交流について取り決めることが必要です。
具体的には次のような事項を決めます。

  • 面会の頻度(月に〇回など)
  • 1回に何時間面会するか、宿泊は可能か
  • 面会する場所
  • 運動会などのイベントの参加可否
  • 祖父母との面会の可否
  • 子どもの受け渡し方法 など

離婚後は子どもを会わせたくないと思うこともあるかもしれません。ただし、親権者でなくても、親には子どもと面会、交流する権利が認められます。特別考慮すべき事情がなければ、子どもの意思を尊重することも大切です。

面会交流権についても、しっかりと決められるよう準備しましょう。

財産分与の準備

離婚時には財産分与の準備が必要です。
財産分与は、離婚した夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求できる制度です(民法768条)

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成したと考えられる財産すべてです。現金や貯金のほか、不動産や有価証券、自動車、生命保険の解約返戻金などが対象となります。また、住宅ローンや車、教育ローンなどのマイナス財産も対象です。名義が夫婦どちらかであっても、実質的に夫婦協力のもとで形成された財産は、財産分与の対象となります。

一方、財産分与の対象とならないのは、婚姻前か保有していた財産や相続により取得した財産、一方の親からもらった財産など、婚姻期間に夫婦協力して形成した財産とは言えないものです。

財産分与の方法は大きく次の3つがあります。

清算的財産分与

清算的財産分与は、財産分与の対象となる財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に分ける方法です。離婚原因がどちらにあるかなどには左右されず2人の財産を公平に分ける制度で、財産分与でもっとも一般的に用いられる方法です。

扶養的財産分与

扶養的財産分与は、離婚後に夫婦の一方の生活が困窮してしまうような場合に、離婚後の生活を経済的に補助するためにとられる方法です。

健康状態が悪くすぐに働くのが難しい、子どもが幼く経済的に自立できる収入を得られるまでに時間かかる場合などに、一定期間毎月生活費を補助する方法などを取り入れて財産分与が行われます。

慰謝料的財産分与

離婚にあたって、相手に対して慰謝料請求が認められる場合があります。本来、慰謝料請求と財産分与は異なる制度であり、別々に考えるものです。しかし、財産分与のなかに慰謝料請求の意味も含めて解決させることがあります。それが慰謝料的財産分与です。

夫婦共有の財産といえるものは何かなど、財産分与するための準備もしっかり行いましょう。

慰謝料請求の準備

離婚原因によっては、慰謝料を請求する準備が必要です。

慰謝料を請求できるのは、不倫やDVなどの身体的な暴力、言葉や態度による精神的な嫌がらせなどの行為があった場合です。

不倫の場合、裁判においては、不倫相手と性交渉や性交類似行為(一緒に入浴するなど)を証明できれば慰謝料請求が可能ですが、すでに夫婦関係が破たんしている場合には、不倫によって夫婦関係が破たんしたとは言えず慰謝料請求は認められません。

慰謝料は離婚によって被った精神的苦痛に対して支払われる金銭です。

離婚すること自体から生じる精神的苦痛に対する「離婚自体慰謝料」と離婚理由(不倫など)から生じる精神的苦痛に対する「離婚原因慰謝料」があります。

離婚慰謝料の相場は50〜300万円が相場と言われますが、婚姻期間や子どもの有無・人数、不倫やDVを受けた期間や回数などを考慮して受けた精神的苦痛の大きさによって決まります。

慰謝料請求の準備として、不倫やDV、モラハラなどの写真や映像、メールなどの証拠を集めておくことが大切です。

【厚生年金のみ】年金分割の準備

離婚するにあたって年金分割について準備することも大切です。

年金分割とは、夫婦が離婚する際に年金記録を分割することです。2007年から導入された制度で、婚姻期間中に積み立てた年金も夫婦共同で築いた財産としてみなされます。

年金分割は、夫婦の合意のもとに分割する「合意分割」と合意がなくても一方的に手続きできる「3号分割」があります。

夫婦で年金の分割に合意すれば合意分割しますが、合意できなければ、調停や審判手続きで決めることが必要です。最終的に合意できない場合、3号分割の制度を利用することになります。

年金分割の手続きは、年金基金のホームページで入手できる情報提供請求書に必要事項を記入し、年金事務所で請求します。

なお、合意分割は離婚から2年以内の手続きが必要です。また、年金分割は厚生年金、共済年金を対象とする制度で、国民年金だけの場合は分割の対象にはなりません。

参照:日本年金機構|年金分割のための情報提供請求書

婚姻費用請求の準備

婚姻費用を請求する準備が必要です。
婚姻費用は、家族が通常の社会生活を送るために必要となる生活費のことです。離婚前に別居中であっても、夫婦にはお互いの生活を助け合う義務がありますので、生活費を請求する権利があります。

相手が自分より高収入の場合に請求でき、金額は協議のもと決められます。金額は、子どもの人数や年齢などで変わり、裁判所の婚姻費用の算定表が参考になるでしょう。

参照:裁判所|養育費・婚姻費用算定表

離婚協議書の作成

離婚にあたってはさまざまな取り決めを行いますが、決めた内容が履行してもらえない可能性もあります。そのため、離婚協議書を作成しておくとよいでしょう。

離婚協議書は、離婚にあたって夫婦で取り決めた内容を書面にした合意書です。養育費や慰謝料など合意内容や支払い方法を記載しておくことで、のちのちのトラブルを防ぐことにつながります。

離婚協議書に決まった様式はありません。個別の状況によって記載内容は変わりますが、次のような内容を記載しておきます。

  • 離婚に合意したこと
  • 養育費
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 慰謝料
  • 親権者・監護者
  • 面会交流の内容
  • 清算条項
  • 公正証書にする場合は同意する旨 など

離婚協議書自体には法的な強制力はありませんが、離婚時に交わす契約書ですので、養育費などが未払いとなった場合には、証拠として活用することができます。

公正証書で作成し強制執行受諾文言を入れることで、裁判手続きをせず相手の給与や財産を差し押さえることも可能です。

子連れ離婚後の生活に向けた準備リスト

子連れ離婚した後の生活に向けて準備すべきことがいろいろあります。離婚後の生活に必要な準備について解説します。

  • 生活費の準備
  • 住まいの準備
  • 子どもの生活の準備
  • 離婚費用の準備

生活費の準備

まず、離婚後の生活に向けて必要な生活費を算出することが大切です。このとき注意したいのは少し余裕をもって計算しておくことです。一人で子育てするうえで、子どもを預けるなど、これまでにかからなかった費用が必要となることもあるでしょう。

また、それまで専業主婦や短時間のパートのみで収入が少ない場合は、あらかじめ仕事を探しておくことが必要です。離婚後に仕事を探すことも考えられますが、すぐに見つかるとは限りません。できるだけ早めに動くことが大切です。

必要な生活費で収まらない、十分な収入を継続的に確保することが厳しくなる場合もあり得ます。行政の支援について確認するとともに、経済的に落ち着くまで実家で暮らせないかなども検討するようにしましょう。

行政の支援については後述する「子連れ離婚の際に受けられる支援制度一覧」にまとめていますのでご覧ください。

住まいの準備

離婚後に住む住居について準備しておくことも必要です。賃貸住宅の場合、収入や連帯保証人について入居審査があります。

実際に入居時期が決まっていなくても物件探しはできますし、引っ越し先の環境などを確認することも大切です。子どもとの暮らしを考えて引っ越し先を選ぶ場合、次のような点に気をつけるとよいでしょう。

  • 転園や転校が必要か
  • 夜間、土日祝日に診療可能な医療機関はあるか
  • 買い物の利便性はどうか
  • 子どもを連れていける公園や児童館などはあるか
  • 交通アクセスはどうか
  • 治安は悪くないか など

賃貸住宅のなかには、礼金や更新料、仲介手数料が必要ない物件もありますが、引越し代や新居の生活を始めるために必要な費用もしっかりと計算しておきましょう。

また、収入が安定するまでは、市営住宅や可能であれば実家へ戻ることも選択肢として考えられます。国や自治体では、母子・父子家庭を含めた住宅困窮度の高い子育て世帯を優先的に公営住宅へ入居させる措置も実施しています。

参照:国土交通省|公営住宅の優先入居について

子どもの生活の準備

子どもの生活環境について準備しなければなりません。

子どもが保育園や幼稚園の場合、転園ができるかどうかを確認します。

また、公立の小・中学校で同一市区内に転校する場合、通学している学校から在学証明書と教科書給与証明書を発行してもらうことが必要です。そのうえで、市区役所に転出届けを提出、入学通知書を発行してもらいます。別の市区に引っ越す場合は、引っ越し先の市区町村で手続きが必要です。

離婚費用の準備

夫婦で協議し合意のうえ離婚する場合、離婚にかかる費用は必要ありません。しかし、離婚協議を弁護士に依頼する場合や調停や訴訟手続きで離婚する場合にはそれに伴う費用を準備しなければなりません。

弁護士費用の相場としては、相談料は1時間1万円程度。なかには無料相談を受け付けている弁護士事務所もあります。依頼する場合は、着手金と報酬金などが必要です。個々の事案によって変わりますが、協議離婚、離婚調停、裁判離婚それぞれの相場は次のとおりです。

着手金と報酬金の相場
弁護士費用(目安)
協議離婚 30~60万円
離婚調停 60~90万円
裁判離婚 70~100万円

なお、離婚事件の依頼にあわせて養育費や財産分与などの争点が多いほど費用は高くなりますし、別に慰謝料請求を依頼する場合は別途費用がかかります。

また、離婚調停の申立てにかかる費用は、次のようなものです。

  • 申立て手数料:1,200円(収入印紙を貼付)
  • 郵便切手:1,000~1,500円
  • 戸籍謄本:450円

離婚調停とあわせて慰謝料請求などについて話し合う場合は、別途申立て手数料が必要です。

離婚裁判(訴訟)にかかる費用は次のとおりです。

  • 離婚訴訟の手数料:13,000円(収入印紙)
  • 慰謝料、親権、財産分与などの訴訟も行う:20,000円程度(収入印紙)
  • 戸籍謄本:450円
  • 郵便切手:6,000円(東京都の場合)

裁判で証人を呼ぶ場合は、旅費や日当を支払います。また、証拠集めのために調査会社に依頼した場合、数十万円からの費用がかかる場合があります。

弁護士に依頼するもしくは調停や裁判まで争うとなった場合、こういった離婚費用の準備について考えておくことが必要です。

子連れ離婚の際に受けられる支援制度一覧

ここでは、子連れ離婚する場合に受けられる行政の支援制度などを紹介します。

  • 児童扶養手当
  • 児童手当
  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 住宅手当
  • ひとり親家庭医療費助成制度
  • こども医療助成
  • その他の割引制度

児童扶養手当

児童扶養手当は、父母が離婚した児童や、父が死亡した児童などを監護している母又は養育者に支給される手当です。対象となる児童は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間の者もしくは20歳未満で政令で定める障害がある者です。離婚の場合、離婚が成立している必要があります。

児童扶養手当の額は、子どもの数や所得によって変わります。

児童扶養手当の月額
全額支給の場合 一部支給の場合
月額 44,140円 10,410~44,130円
加算額(2人目) 10,420円 5,210~10,410円
加算額(3人目以降1人当たり) 6,250円 3,130~6,240円

参照:内閣府|児童扶養手当

児童手当

児童手当は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後、最初の3月31日まで)の子どもを養育している人に支給される手当です。扶養する親族等の数によって所得制限限度額が設けられています。

原則として毎年2月、6月、10月に前月分までの手当が支給されます。支給額は次のとおりです。

児童手当の支給額
子どもの年齢 児童手当の額(1人あたり)
3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円(第三子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

参照:こども家庭庁|児童手当制度のご案内

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、20歳未満の精神または身体に障害をもつ児童を監護、養育している父母などに支給される手当です。

支給額は、障害の程度で変わり、1級が55,350円/月、2級が36,860円/月です。原則として、毎年4月、8月、12月に前月分までが支給されます。

障害児の父母もしくは配偶者または生計を一にする扶養義務者の所得が一定限度額を超えると支給されません。

参照:厚生労働省|特別児童扶養手当

障害児福祉手当

障害児福祉手当は、精神または身体に重度の障害があるため、日常生活で常時介護を必要とする状態にある20歳未満の人に支給される手当です。

支給額は、障害の程度に関係なく一律月額15,690円です。原則として毎年2月、5月、8月、11月に前月分までが支給されます。

重度障害児の前年の所得が一定の額を超えるもしくはその配偶者または生計を維持する扶養義務者の所得が一定限度額を超えると支給されません。

参照:厚生労働省|障害児福祉手当について

住宅手当

市区町村によって、1人親世帯で一定額以上の家賃を払っている人に支給される手当があります。

自治体によって内容は異なりますが、例えば、神戸市では次のような「ひとり親世帯の家賃補助制度」を設けています(2025年5月時点)。

・家賃補助:月額15,000円(最大)
・家賃債務保証料の補助:6万円(最大)
※家賃債務保証料は、家を借りる際の賃貸借契約にあたって、家賃債務を担保するために家賃債務保証会社に支払う保証料
・補助期間:最大6年間(一番下の子どもが18歳に達して最初の3月31日まで)
・交付月:8月、12月、4月に前月分までの家賃支払いを確認後、請求に基づき補助金を交付

ひとり親世帯であること以外に、収入基準や住む住宅の要件など支給条件を満たす必要があります。

これは神戸市の例ですが、各自治体で家賃補助以外に公営住宅の抽選が優遇されるものなど、ひとり親世帯に対する住居の支援を行っている場合がありますので確認してみましょう。

参照:神戸市|ひとり親世帯の家賃補助制度

ひとり親家庭医療費助成制度

自治体によって、ひとり親の家庭の医療費を助成する制度があります。

横浜市では、ひとり親家庭等の人が医療機関で受診したときに、窓口で支払う保険診療の自己負担額を助成しています。

支給期間は、原則として、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある者です。ただし、所得制限があるほか、他の医療費助成や生活保護を受けている人などは対象外です。

助成額や支給要件は自治体によって異なる場合がありますので確認しましょう。

こども医療助成

自治体によって子ども医療助成制度があります。

例えば、横浜市では、0歳から中学校3年生までの子どもが病気やケガで医療機関を受診したとき、保険診療の自己負担額を助成する制度をもうけています。所得制限はありません。

対象は0歳から中学校3年生までで保険診療の自己負担額全額が助成の対象です。ただし、ひとり親家庭等医療費助成等をすでに受けている場合は重ねて受けることはできません。

また、入院の差額ベッド代や文書料、健康診断などは対象外です。

その他の割引制度

東京都では、父母が離婚した児童や父母のどちらかが死亡した児童などに、18歳に達する日以後の3月31日までの間、児童育成手当を設けています。所得制限はありますが、1人あたり月額1万3500円の手当を受けることができます。

また、児童扶養手当の受給を受けている場合に、JRの通勤定期券乗車券を3割引きで購入できる制度や水道料金・下水道料金基本料金などの免除が受けられる自治体があります。

そのほかにも、子どもの保育料の減免など経済的負担を軽減する制度を設けている自治体もありますので確認してみましょう。

参照:東京都|児童手当 児童育成手当 児童扶養手当

子連れ離婚に必要な手続き一覧

ここでは子連れ離婚に必要な手続きについて解説します。

  • 離婚届の提出
  • 転居に必要な手続き
  • 社会保険関連の手続き
  • 名字関連の手続き
  • 財産関連の手続き

離婚届の提出

離婚することで合意が得られれば離婚届を提出します。

離婚届の提出先は、夫婦の本籍地もしくは夫婦の所在地の役所(戸籍課)になります。協議離婚で、提出先が本籍地の場合は離婚届のみで手続き可能ですが、住所地の役所に提出する場合は婚姻中の戸籍謄本が必要です。

協議離婚の場合、夫婦どちらかもしくは夫婦以外でも提出可能です。離婚調停の場合、調停成立の日を含めて10日以内に、調停申立人が調停調書謄本とあわせて手続きします。

離婚裁判の場合、判決から10日以内に訴訟を提起した人が判決の謄本と確定証明書を持参し提出します。

  • 調停調書謄本:離婚調停などの調停で決まった内容を記載した書面で、調停が成立したことを証明するもの
  • 判決書の謄本;判決の写しで判決後に裁判所でもらいます
  • 確定証明書:判決が確定したあと裁判所でもらえます

離婚届は基本的に24時間365日提出することが可能です。土日祝日や平日の受付時間外でも多くの役所では時間外の受付ポストを設けており、離婚届と必要書類を添付して提出できます。郵送での提出も可能です。

転居に必要な手続き

離婚で住所が変わる場合、住所変更やそれに伴う変更手続きが必要です。

同一の市区町村内であれば「転居届」の提出、異なる市区町村への転居であれば転出証明書を取得し、転居先の市区町村役所で転入届の提出が必要です。これらの手続きは、14日以内に行わなければなりません。

また、住所の変更に伴い、印鑑登録の住所・名義変更のほか、金融機関の口座情報やクレジットカードなどの登録情報の変更が必要です。

社会保険関連の手続き

婚姻期間中に、元夫の扶養に入っていた場合は、社会保険や年金に関する届け出が必要です。

元夫の会社の健康保険に入っていた場合、離婚に伴い加入資格を失いますので、離婚から14日以内に国民健康保険の加入手続きが必要です。

また、元夫の会社の厚生年金に入っていた人は、国民年金への加入手続きが必要になります。扶養に入っている(第3号被保険者)ときは保険料の納付は必要ありませんでしたが、離婚すると第1号被保険者になり保険料の納付義務が生じます。

婚姻期間中から会社勤めをしていて勤務先の社会保険に加入している場合、離婚に伴う名前や住所の変更手続きが必要です。離婚にともない新たに仕事を始める場合は、勤務先の社会保険に加入手続きをします。

名字関連の手続き

離婚後に旧姓に戻る場合は、自分を筆頭とする新しい戸籍を作るか、婚姻前の親の戸籍に戻るかを選択することになります。このとき、親権者となったとしても子どもの姓が自分と同じ旧姓に自動的に変わるわけではありません。子どもの姓と戸籍を変更する手続きが必要です。

まず、子どもの住所地を管轄する裁判所に「子の氏の変更許可」の申立てをします。必要書類は次のとおりです。

  • 申立書(裁判所のホームページでダウンロード可)
  • 父親と子どもの戸籍謄本
  • 母親の戸籍謄本
  • 収入印紙(子ども一人につき800円)
  • 返信用の郵便切手

書類等の不備がなければ通常即日審判でその日のうちに裁判所から審判書謄本を受け取ることが可能です。

次に、審判書謄本を持参して子どもの本籍地もしくは母親の住所地の役所で子どもの入籍届を提出します。これで子どもの姓を母親の姓と一致させることができます。

財産関連の手続き

離婚にともなう財産分与や慰謝料として取得した財産があれば、名義変更が必要です。

普通自動車などの名義変更手続きのほか、不動産がある場合、夫名義や共有名義のマンションなどを単独名義に変更します。

不動産の場合、離婚、財産分与等による所有権移転登記が必要です。所有権移転登記する前提として、名義上の住所が異なる場合は住所変更登記、離婚によって氏名が変わった場合は氏名変更登記が必要になります。

また、登記原因となる離婚協議書にもとづいて登記申請書の作成が必要です。費用はかかりますが、司法書士に依頼することも検討しましょう。

支援制度関連の手続き

児童扶養手当や児童手当のほか、ひとり親家庭医療費助成制度などの支援制度の手続きをします。

シングルマザーなどひとり親世帯の場合、所得税・住民税の減免や水道料金の減免、JR通勤手当の割引などの制度が活用できる場合がありますので、各自治体の窓口で確認し手続きしましょう。

子連れ離婚のタイミング

子どもを連れて離婚する場合、子どもの精神的な負担をできるだけ少なくするためにもどのタイミングでするかも大切です。考えられる4つのタイミングについて解説します。

  • 子どもの記憶が曖昧なうち
  • 子どもが進学するとき
  • 子どもが自立してから

子どもの記憶が曖昧なうち

子どもの記憶がまだ残りにくい幼少期のうちに離婚することも1つのタイミングです。

親と接する期間が長ければ長いほど関係性や思い出は多くなり、離婚したあとの喪失感は大きくなるでしょう。幼少期であれば、まだ記憶は残りにくいため離婚で与える精神的負担は小さくしやすいといえます。

また、幼少期であれば、名前が変わっても本人や周りに与える影響はまだ小さく、周囲の目や違和感は感じにくいともいえるでしょう。

子どもが進学するとき

子どもが幼稚園に入園する時期や小学校、中学校などへ進学するときも、離婚のタイミングとして考えられます。

進学するタイミングは、周囲の人間関係も新しくリセットされやすい時期でもあります。離婚によって姓が変わる場合でも、学年の途中で姓が変わるよりも目立ちにくく、周囲へ与える影響も抑えやすいでしょう。ただし、中学受験や高校受験などが控えている場合は注意が必要です。

子どもが自立してから

子どもが自立してから離婚することも考えられます。

多感な時期を過ぎ、大学への進学や就職など、社会に広く関係性を作れる時期であれば、離婚による精神的な苦痛が抑えやすくなり、また、夫婦関係について理解できることも増えてくるでしょう。

成人になったあとであれば、親権のほか養育費の問題も生じにくくなります。

離婚する際の流れ

離婚するとなった場合でも、離婚協議によるか調停や審判手続きによるかで流れは異なります。ここでは、離婚に向けてしっかり準備するためにも離婚の流れについて解説します。

協議離婚

最初に、日本で最も多い離婚の方法である協議離婚の流れです。

  1. 離婚について話し合う
  2. 離婚の条件について夫婦間で合意する
  3. 離婚協議書を作成する
  4. 離婚届を提出する

協議離婚は夫婦間の合意だけで決められますので、話し合いがまとまり離婚届を提出すれば短期間で進めることもできます。

ただし、子どものこれからの生活を含めて、離婚条件をしっかりと話し合い決めることが大切です。養育費や面会交流、財産分与などについて十分な協議をしないまま決めてしまうと、のちのち子どもを含めた生活に大きな影響を与える可能性があります。

また、取り決めた内容はしっかりと離婚協議書にまとめ、公正証書で作成することも重要です。双方にとって、離婚問題を完全に解決しやすく、のちのトラブルを防止することにつながります。

調停離婚

次に、調停離婚の流れです。

離婚調停は、離婚のほか親権や養育費などさまざまな問題について、夫婦間の話し合いで解決が難しい場合に、裁判所(調停委員会)を交えて話し合い合意を目指す方法です。

  1. 調停の申立て
  2. 期日の調整
  3. 第1回調停
  4. 2回目以降の調停
  5. 調停成立 ※不成立の場合は審判・訴訟手続きへ移行

調停期日に、申立人と相手双方が家庭裁判所に呼び出されますが、話し合いは両者同席で行われるわけではありません。

それぞれ交替で調停室に入り、調停委員と協議を進めます。調停が成立すれば夫婦同席のもの調停調書が作成されますので、基本的に双方が顔を合わせるのは調停の最初と最後です。

調停期日は平均2~3回、調停にかかる期間は3~6ヶ月程度で終了するケースが多いようですが、親権を争う場合や争点が多ければ長期化することもあります。

調停は裁判手続きと異なり、調停委員の助言やサポートを受けながら話し合いをする手続きです。第三者が話し合いに参加することで妥協点を見いだせる場合もありますが、あくまでも夫婦双方の意思を尊重して進められます。

そのため、合意が得られず不成立となる場合もあり、その場合、裁判手続きへ移行することになります。

裁判離婚

最後に、裁判離婚の流れです。夫婦間の協議でも、調停離婚でも合意できなかった場合の最終的な方法が裁判離婚です。

離婚裁判を提起するには、原則として離婚調停の手続きを経ている必要があります。また、裁判で離婚が認められるためには、民法で定められた離婚事由とそれを証明する証拠が必要です(民法770条)。

具体的には、①不貞行為(同条1号)②悪意の遺棄(同条2号),③3年以上の生死不明(同条3号),④回復の見込みのない重度の精神病(同条4号),⑤その他婚姻を継続し難い重大な理由(同条5号)です。
裁判離婚の手続きは以下の通りです。

  1. 家庭裁判所に訴状を提出
  2. 第1回期日の指定
  3. 答弁書の提出
  4. 第1回口頭弁論
  5. 2回目以降の口頭弁論
  6. 判決の言い渡し

裁判は調停とは異なり、話し合いではなく当事者双方が証拠書類などに基づき、主張、立証します。また当事者本人への尋問も行われます。

裁判所が提示した和解案で合意できない場合や主張、立証がすべて出し尽くしたと判断した場合、裁判所は離婚の請求を認めるか否かの判決を下します。

判決内容に不服がある場合は、判決書の送達を受けてから2週間以内に控訴することが可能です。何もしないまま2週間を過ぎると判決が確定します。

なお、離婚の種類別に見た場合、裁判離婚の割合は11.7%と少なく、90%近くが協議離婚となっています。

参照:厚生労働省|令和4年度離婚に関する統計の概況

子連れ離婚は弁護士に相談がおすすめ

子連れの離婚は、子どもがいない場合と比べて、親権や養育費など決めることが多くなります。金銭面については、養育費のほか、財産分与や慰謝料請求がある場合、法的な解釈も踏まえ、必要な金額をしっかりと請求することが大切です。

そのため、子連れ離婚では、正当な離婚条件を引き出し、必要な金銭を確実に請求するためにも、弁護士に相談することがおすすめです。

夫婦間の関係は感情的になりやすく、交渉するとしても心身への負担やストレスは少なくありません。弁護士に相談することで、慰謝料請求をはじめ交渉や各種手続きも任せられるので、精神的な負担とともに子育てで忙しい人の時間や手間を省くこともできます。

離婚協議書の作成を含めて、確実に離婚条件を履行してもらい、離婚問題を円滑に解決するためにも弁護士に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

子連れ離婚する場合、合意に向けて準備すべきことは数多くあります。親権者になるための準備のほか、離婚後の面会交流について決めることが必要です。

経済的・金銭的な面では、養育費の確保のほか、財産分与、年金分割、状況に応じて慰謝料や婚姻費用の請求が必要な場合もあります。そして、離婚協議で合意した内容を確実に実行してもらうために離婚協議書を公正証書で作成しておくとよいでしょう。

また、離婚後の生活について、国や自治体がひとり親世帯を支援するさまざまな制度があります。しっかりと調べて活用するようにしましょう。

離婚する方法には、協議離婚のほか、離婚調停、裁判離婚の方法があります。子連れ離婚の場合、養育費や慰謝料請求など、離婚だけでなく争点が多くなるケースも少なくありません。確実に相手方に請求できるよう弁護士に依頼することも考えましょう。

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更新日 : 2024年10月09日
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