配偶者の不貞行為を疑っている場合、証拠を集めたいと考える人もいるでしょう。有力な証拠をつかめれば、離婚や慰謝料の請求の際も役に立ちます。
不貞行為とは、パートナー以外の相手と性的関係を結ぶことを指すため、その証拠も肉体関係にあることが証明できる内容であることが望ましいです。デートの約束のメッセージなどでは、不貞行為を立証するのは難しいでしょう。
本人が「肉体関係を結びました」と証言すれば、それは有力な証拠となりますが、本人が素直に認めるとは限りません。ラブホテルに入る2人の写真を撮影したり、裸同然の2人の写真を入手したりといったことも簡単ではないでしょう。どちらかといえば不貞行為がバレないように振る舞う人がほとんどであり、警戒心の強い人であれば証拠を残さないことも考えられるため、有力な証拠を掴むのはなかなか難しいものです。
不貞行為の証拠となるもの、ならないものの具体例は下記の通りです。
不貞行為の証拠となる | 不貞行為の証拠とならない |
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・ラブホテルに出入りする際の写真・動画 ・肉体関係を匂わせるメッセージのやり取り ・不貞行為を自白している音声や念書 ・下着姿または裸でくつろいでいる2人の写真や動画 ・宿泊先やプレゼントの領収書 ・探偵や興信所に依頼して得た証拠 |
・食事やデートしている様子が映っている写真 ・不貞行為について触れていないメールやLINEのやり取り(「好き」「愛してる」などのメッセージ) ・宿泊先やプレゼントの領収書 |
直接、肉体関係を示す証拠ではなくても、複数集めることで有力な証拠になることもあります。証拠集めは自力で行うこともできますが、探偵事務所に依頼する方が確実な場合もあります。探偵事務所の調査では有力な証拠を得られる可能性がありますが、10~100万円の費用を必要とします。
なお、有力な証拠が揃わなくても、不倫問題を得意とする弁護士であれば交渉によって離婚や慰謝料の請求ができる場合もあります。「証拠が十分かわからない」「どのように交渉を進めれば良いかわからない」といった場合は、まずは弁護士に相談するのもおすすめです。
本記事では、不貞行為の立証に有効な証拠と、証拠として認められにくいもの、証拠の集め方や気を付けたいポイントを解説します。不貞行為の証拠を出すタイミングや相手が認めなかった場合の対策などにも触れていきます。
不貞行為の立証は直接的な証拠がないと難しい
不貞行為とは、パートナー以外の人と性的関係(肉体関係)を結ぶことを指します。不貞行為を立証できれば、不倫相手や配偶者への慰謝料請求だけではなく、法定の離婚理由にもなります。
そのため、協議での離婚が進まず、裁判になった場合でも、不貞行為を立証することで離婚できる可能性があります。
ただし、不貞行為の立証は簡単ではありません。性行為に至った直接的な証拠がないと難しく、「顔が判別できない写真」「肉体関係をもったと言い切れないようなLINEのやり取り」など、曖昧な証拠であれば相手が言い逃れられてしまう可能性も考えられます。
示談交渉や裁判の場で慰謝料請求を行う場合は、「裸や下着姿で寄り添っている写真」「ラブホテルに出入りする写真」などの客観的な証拠を示す必要があります。
不貞行為の慰謝料の相場については、下記の記事で詳しく紹介しています。
不貞行為の立証に有効な証拠
一般的に不貞行為の立証に有効とされるのは、下記のような証拠です。
- ラブホテルに出入りする際の写真・動画
- 肉体関係を匂わせるメッセージのやり取り
- 不貞行為を自白している音声や念書
- 下着姿または裸でくつろいでいる2人の写真・動画
- 探偵や興信所に依頼して得た証拠
それぞれ詳しく解説していきます。
ラブホテルに出入りする際の写真・動画
ラブホテルは男女が性行為をする施設として社会的に認知されていることから、そこに二人で出入りしている写真や動画は両者の間に性的関係があることを示す、強い証拠となります。
ただし、パートナーと不倫相手が判別できる写真や動画でなければ意味がありません。ラブホテルに入った時と出た時の日時と場所がはっきりわかるもの、2人の顔が判別できるものを撮影する必要があります。
肉体関係を匂わせるメッセージのやり取り
LINEやメール、SNSなどにより、性行為があったことを匂わせるメッセージのやり取りや投稿がある場合はそれらも証拠となります。
「昨日は最高だった」など、それだけでは性行為があったか判別しにくいようなやり取りの場合は証拠として弱いといえます。しかし、そのメッセージが示す日と同じ日のラブホテルのレシートや領収書、ホテルの利用を示すクレジットカードの明細など、他の証拠と組み合わせれば不貞行為を立証できる可能性はあります。
なお、自分のスマホで撮影して証拠として残す場合は、パートナーのスマホであることがわかるようにスマホ全体を撮影しましょう。また、メッセージの送信日時がわかるもの、メッセージの前後が途切れていないこともポイントです。
不倫に関するLINEのスクリーンショットの残し方や注意点については、下記の記事も参考にしてみてください。
不貞行為を自白している音声や念書
不貞行為を自白している音声や念書なども、不貞行為の証拠となります。一方が不貞行為を認めていなくても、どちらかの自白があれば、裁判でも不貞行為の事実を認めてもらえる可能性が高まります。
なお、念書の作成やボイスレコーダーで録音する場合には、下記の内容を含めるようにしましょう。また、録音はコアとなるメッセージだけでなく、その前後のやり取りも含めて話合い全体の内容・雰囲気がわかるような内容で記録するべきでしょう。
- 自分の氏名
- 不貞行為の開始時期
- 不貞行為の期間や回数
- 交際したきっかけ
- 不倫相手が既婚者であると知っていたか
念書の場合は、作成日と署名も入れます。
下着姿または裸でくつろいでいる2人の写真・動画
パートナーと不倫相手が下着姿や裸で過ごしている、ベッドでくつろいでいる姿や抱き合っている姿を収めた写真や動画は、不貞行為の有力な証拠となります。顔がはっきりと判別できる写真であることがポイントです。性的関係にあることを示す証拠のため、相手も言い逃れが難しくなるでしょう。
証拠として残す場合は、LINEやメールと同様に、パートナーのスマホであることがわかるようにスマホ全体を撮影しましょう。
探偵や興信所に依頼して得た証拠
「配偶者のガードが固くて有力な証拠を得られない」「自分で写真を撮影するのは難しそう」などの場合は、探偵事務所や興信所に不倫の調査を依頼するのも1つの手です。どういったものが不貞行為の立証につながるかを熟知している探偵事務所や興信所であれば、有力な証拠を得られる可能性も高く、不貞行為の立証に役立ちます。
ただし、探偵事務所や興信所に依頼する場合、その分費用もかかってしまいます。調査費用の相場は1時間1万5,000~2万5,000円とされていますが、証拠を得るまでどのくらいの時間を要するかはわからないため、資金に余裕がないと難しい場合もあります。
その他証拠になり得るもの
下記のようなものは単体では証拠として脆弱ですが、他の証拠と組み合わせることで不貞行為を立証できることもあります。
- 交通系ICの履歴
- カーナビの履歴
- GPSの記録
- ドライブレコーダーの映像
- スケジュール帳に書かれた不自然な予定
- 見覚えのない性行為の道具や避妊具
- 不倫相手との通話履歴
- マッチングアプリの利用履歴
- 共通の友人からの証言
例えばカーナビの履歴、GPSの記録などから配偶者の行動パターンがわかる場合もあります。また、不貞行為に及んでいる本人達が見落としやすいのがドライブレコーダーの記録です。車を使ってデートしていた場合、性的関係を伺わせる社内の音声が残されていることもあります。その場合、不貞類似行為として慰謝料請求できる可能性もあります。
スケジュール帳に書かれた不自然な予定やハートマークなどは、不倫相手と会っていた日である可能性も考えられます。その他、見覚えのない避妊具や不倫相手との通話履歴、共通の友人からの証言など、単体では証拠として不十分なものも、複数組み合わせることで不貞行為の立証に役立つことがあります。
不貞行為の証拠として認められにくいもの
他方で、下記のようなものは性的関係(肉体関係)があることの証拠にはなりにくいとされています。
- 食事・デートしている様子が映っている写真
- 不貞行為について触れていないメール・LINEのやり取り
それぞれ詳しく説明していきます。
食事・デートしている様子が映っている写真
2人きりの食事やデートをしている証拠をつかんだとしても、肉体関係を結んだことは証明できないため、不貞行為の証拠としては認められにくいといえます。デートの場合は、長時間ラブホテルに滞在しているといった内容でなければ不貞行為の立証は難しいでしょう。
不貞行為について触れていないメール・LINEのやり取り
メールやLINEのやり取りがあった場合も、肉体関係を結んだことが証明できる内容でなければ、不貞行為の証拠にはなりません。「好き」「愛している」といった内容であっても、不貞行為を決定づける内容とはいえないため、証拠として認められる可能性は低いでしょう。
不貞行為の立証に必要な証拠の集め方
不貞行為の証拠は自力で集める他、探偵事務所に依頼する方法があります。自力で集める場合、費用などはかかりませんが、やり方によっては違法性を問われるおそれもあるため、細心の注意を払って行動する必要があります。
一方、探偵事務所は不倫調査のノウハウをもっている事務所に依頼すれば、有力な証拠を得られる可能性が高いといえます。ただし、費用もかかるため、資金に余裕がなければ依頼が難しいかもしれません。
自力で集める
自力で証拠を集めるメリットは、探偵事務所や興信所に依頼する費用がかからない点です。
ただし、専門的な知識やノウハウがないため、十分な証拠を集められなかったり、強引なやり方で違法性が問われてしまったりするリスクも考えられます。盗聴や盗撮などの行為は証拠集めにはなるかもしれませんが、そもそも時間やノウハウがない素人が的確な音声や映像を確保するのは難しい側面があります。また、十分な証拠集めをするためにも、配偶者にバレないように慎重に行動することが重要です。
自力で証拠を集める具体的な方法は下記の通りです。
- スマホを調べる
- 財布やクレジットカードの履歴を調べる
- バッグや車内を調べる
パートナーのスマホには、不倫相手とのメールやLINEのやり取り、写真や動画などが残されている可能性があります。パートナーのスマホだとわかる状態で写真に残しておけば、偽装や加工を疑われずに証拠として残せます。
財布の中にはラブホテルや不倫相手とのデートで利用したレストランなどのレシートが入っている場合があります。クレジットカードの利用明細にもホテルやレストランの利用、不倫相手へのプレゼント購入の履歴が残っている可能性があるため、併せて確認しましょう。関係をもった日時や場所などの把握につながります。
バッグの中にラブホテルのライターが入っていたり、車内に不倫相手のアクセサリーが落ちていたりする場合もあるため、いずれも確認してみましょう。車内はシートの位置や傾きに違和感があったり、知らない香水の香りがしたりする場合もあります。カーナビやドライブレコーダーを備えている場合は、ラブホテル付近への履歴や不倫相手との映像が残っている可能性もあるため、そちらも確認してみてください。
探偵事務所に依頼する
探偵事務所に依頼するメリットは、プロのノウハウによって強固な証拠を収集することが期待できる点です。不倫調査に秀でている事務所であれば、不貞行為を立証できる写真や動画などの有力な証拠を集めてくれるでしょう。
ただし、調査費用の相場は1時間1万5,000~2万5,000円で、証拠を集めるまでには10~100万円ほどかかる可能性があります。稼働時間で料金が発生するため、時間を要する場合は費用がかさんでしまいます。
また、特に気をつけたいのは、探偵事務所に依頼しても配偶者への慰謝料請求や離婚請求の証拠は確保できても、これが不倫相手への請求の証拠として機能するかは確実でないということです。
というのも、不貞相手に対して慰謝料請求をするためには、不貞の事実だけでなく、不貞相手において「既婚者と性的関係を持っている」ということを認識している又は容易に認識し得ることが必要なのです。
そのため、仮にラブホテルや相手の自宅に出入りしている様子が撮影できたとしても、この不貞相手の認識を証明する証拠がなければ、不貞相手への請求は困難です。せっかく多額の費用をかけても、結局、不貞相手への請求はできなかったということは十分あり得ますので、この点は十分に留意しましょう。
加工・編集がしやすいデータだと証拠になりにくいので気を付ける
メールやLINEのやり取りのスクリーンショットは証拠能力を有しますが、相手が「加工や編集をした」と言いがかりをつけてくる可能性も考えられます。
デジタルデータは加工や編集を疑われやすく、証拠として認められない場合もあるため、該当の画面を表示した状態のスマホ全体を撮影すると良いでしょう。日付が印字されるインスタントカメラを利用するのもおすすめです。
メールも改ざんが疑われないように、送信元と送信先のアドレスを表示させた状態で撮影しておきましょう。
不貞行為の証拠は認めざるを得ない証拠が出たタイミングで出す
不貞行為の証拠を提示するタイミングは、相手が不貞行為を認めざるを得ないほどの証拠が集まった時にしましょう。具体的には、肉体関係を結んだことがわかるメールやLINEのやり取り、裸や下着姿の2人の写真、不貞関係の立証につながる複数の証拠などです。
証拠が十分に揃っていない状態で配偶者に話を切り出してしまうと、言い逃れされてしまう可能性があります。また、不貞行為がバレたことで、配偶者が証拠隠滅をはかるおそれもあります。
離婚や慰謝料請求を検討している場合は、証拠が重要となります。つらい状況ではありますが、できるだけ多くの証拠、有力な証拠を集められるよう冷静に行動しましょう。
不貞行為の証拠がなくても慰謝料請求できる場合がある
不貞行為の証拠が揃っていない場合、通常は慰謝料請求するのは難しいといわれています。個人で交渉したとしても、証拠がない場合は言い逃れされるケースも珍しくありません。
一方で、弁護士に相談した場合は、十分な証拠が確保できていなくても話術や交渉力により慰謝料請求が叶う可能性もあります。弁護士が代理人として介入した場合、配偶者や不倫相手に「これ以上話を大きくしたくない」「もしや全部バレているのかもしれない」といった心理がはたらくことがあり、これにより慰謝料請求に応じる可能性もあります。不倫問題に詳しい弁護士であれば、交渉や慰謝料請求のノウハウをもっているため、有利に進めてくれる可能性があるかもしれません。
不貞行為の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットや費用などについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
不貞行為を相手が認めなかった場合の対策
配偶者や不倫相手に不貞行為の事実を突き付けても、認めない可能性も考えられます。どちらか一方が不貞行為を認めている場合は、それを証拠として提示してもう一方にも認めさせると良いでしょう。証拠があるにも関わらず認めない場合は裁判を検討します。十分な証拠が揃っていれば、相手がこれを否定しても離婚や慰謝料の請求が認められます。
不貞行為をした当事者のどちらかが認めなかった場合の対策
不貞行為をした当事者のどちらかが認めなかった場合、不貞行為を認めている方の自白を証拠として提示し、相手を説得する方法もあり得ます。
例えば、配偶者は不貞行為を認めているものの、不倫相手は認めないといったケースであれば、配偶者の自白の音声や念書を不倫相手に提示します。「夫(妻)は不倫したと言っています」だけでは不倫相手も折れない可能性が高いため、配偶者の自白をボイスレコーダーで録音したり、念書に残したりして提示するのがおすすめです。証拠として残るため、「言った」「言わない」のトラブルも防げます。
不貞行為を認める自白は、どちらか一方のものでも不貞行為の証拠となります。裁判になった際も有利にはたらくため、音声や念書で残しておきましょう。
証拠があるものの認めなかった場合の対策
明らかな証拠があるにも関わらず、不貞行為を認めない場合は裁判で決着をつけることになります。離婚請求であっても、慰謝料請求であっても、客観的な証拠が揃っていればたとえ英手が否定しても請求が認められる可能性は十分あります。
離婚請求に関しては、不貞行為以外の法定離婚事由を提示する方法もあります。法定離婚事由とは裁判所が離婚を認める理由のことで、「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」の5つの種類が存在します。
悪質なDV、長期間に亘るモラハラ、長期間の別居などは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。また、生活費を渡さないなどの経済的DV、別居中の生活費を渡さないなどの行為も同じです。
配偶者が不貞行為を認めず、離婚請求が難しい場合は、別の法定離婚事由を提示して決着をつけることも検討してみましょう。
まとめ
不貞行為を立証するためには、配偶者と不倫相手が肉体関係を結んだことを示す証拠が必要です。好意を寄せているメッセージのやり取りやデートの写真などだけでは、性的関係にあるかが判断できないため、不貞行為を立証するのは難しいといえます。
配偶者の不貞行為で離婚や慰謝料の請求を検討しているのであれば、配偶者に証拠を隠滅されないように秘密裏に証拠を集める必要があります。自力で証拠集めをするのが難しい場合は、探偵事務所や興信所への依頼も検討してみてください。
「証拠は複数集まったが、不貞行為を立証できるかわからない」「相手とうまく示談交渉できるか不安」「不貞行為を立証して離婚を有利に進めたい」といった場合は、不倫問題や離婚問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。専門家ならではのアドバイスはもちろん、示談交渉や離婚を有利に進めてくれるでしょう。