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2024年11月現在

離婚時に父親が親権を勝ち取るのは難しい?その理由や親権を勝ち取った事例などを紹介!

離婚時に父親が親権を勝ち取るのは難しい?その理由や親権を勝ち取った事例などを紹介!

「離婚したものの子どもと一緒に暮らしたい」「母親に親権を渡したくない」と思う父親は少なくありません。しかし仕事やライフスタイル、養育実績などの問題から、日本では父親が親権を勝ち取りにくい現状があります。

政府の調査によると、離婚をするときに父親が親権を獲得する割合は、5年間の平均でわずか11%ほどでした。2022年の離婚件数は45,551件ありましたが、父親が親権を獲得した件数は子どもの1人の場合5,475件、子ども2人の場合3,680件、子ども3人以上の場合1,308件です。

しかし事情によっては、母親が親権者として不適格だと判断され、父親が親権を獲得した事例もあります。たとえば母親が育児を放棄していたり、子どもを虐待していたりする場合、父親と暮らす方が子どもの利益になると判断される可能性があります。

本記事では、離婚で父親が親権を勝ち取るのが難しい理由に触れながら、親権を獲得した事例を紹介します。また親権を獲得するうえで重要なポイントや、勝ち取れなかった場合に取るべき行動などをまとめました。離婚して親権を勝ち取りたい父親や、親権を獲得で悩んでいる人は参考にしてください。

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離婚して父親が親権を勝ち取るのは難しい

日本では父親が親権を勝ち取るのが難しいといわれています。政府の調査によると、離婚にあたって父親が親権を獲得する割合は5年間の平均でわずか11%ほどです。母親が親権者となるケースが大半を占めており、たとえ裁判を起こしたとしても、父親が親権を獲得するのは簡単なことではありません。

次の項目から父親が親権を勝ち取るのが難しい現状や、理由を詳しく紹介します。

父親が親権を獲得する割合は約11%

政府の調査によると、離婚にあたって父親と母親が親権を獲得する割合は以下のとおりです。

総数 夫が全児の親権を獲得 妻が全児の親権を獲得 その他
子ども1人 45,551人 5,475人(12%) 40,076人(88%) -
子ども2人 34,640人 3,680人(11%) 29,435人(85%) 1,525人(4%)
子ども3人以上 14,374人 1,308人(9%) 11,708人(81%) 1,358人(10%)

参考元:人口動態調査 人口動態統計 確定数 離婚

このように、父親が親権を獲得する割合はわずか11%ほどで、離婚した夫婦の多くは母親が親権を持っていることがわかります。

父親が親権を勝ち取るのが難しい理由

現在、日本で父親が親権を獲得しづらいのは以下のような理由があるからです。

  • 大半の父親はフルタイムで働いていることが多く子どもの面倒をみるのが困難だから
  • これまでの判例で母親が親権を勝ち取ったケースが多かったから
  • 母親からの養育費をもらえる見込みが低いため
  • 父親が親権を取っても育児のためにライフスタイルを変更することが困難
  • 子どもが母親を選択する傾向がある
  • 離婚するまで母親が子どもを養育してきたケースが多いから

次の項目から、それぞれの詳しい事情やよくあるケースなどを紹介します。

大半の父親はフルタイムで働いていることが多く子どもの面倒をみるのが困難だから

日本では、父親の多くがフルタイムで仕事をしています。1日の大半を職場で過ごさなくてはならず、日頃から子どもと過ごす時間が短かったり、子育てに関与していなかったりする人も少なくありません。「離婚前は仕事ばかりで子どもを妻に任せきりにしていた」「フルタイムの勤務に加えて残業も発生する」などの場合、離婚後も子どもの監護や養育に時間を割けないと判断され、親権が獲得できない可能性が高いでしょう。

これまでの判例で母親が親権を勝ち取ったケースが多かったから

裁判所は判決を下すとき、先例を重視するのが一般的です。今まで日本では母親が親権を勝ち取ったケースが多く、父親が親権を獲得するのは、母親に何か重大な問題がある場合に限定されていました。「先例では母親が親権を獲得したから」という理由で認められないケースも多く、父親が親権を獲得しづらい要因の1つとなっています。

母親からの養育費をもらえる見込みが低いため

親権者がどちらになるかに関わらず、離婚後の子どもの養育費は父親と母親で分担する義務があります。しかし収入の少ないことが多い母親側から、養育費を受け取ることは困難だとみなされるケースもあります。厚生労働省の「令和 3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、父子家庭が母親側から養育費を受け取っている割合は全体のわずか8.7%でした。母親から養育費をもらえる見込みが低い場合は、親権争いで不利になる可能性があります。

参照元:厚生労働省|令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果

父親が親権を取っても育児のためにライフスタイルを変更することが困難

父親が親権を獲得しても、子育てをしやすいようにライフスタイルを変化させるのが難しいという考え方もあります。勤め先によっては、子どもを育てる父親を支援する仕組みがまだ整っていないケースも多いからです。たとえば男性が長期で育休を取得したり、子育てのために時短勤務に切り替えたりした事例がまだなく「周囲の理解を得づらい」という状況も珍しくありません。職場内に保育施設があるなど、子育てをしながら働きやすい環境が整っている会社であれば親権の獲得を有利に進められる可能性があります。

子どもが母親を選択する傾向がある

子どもが15歳以上の場合、子どもの意見を尊重する義務があります。子どもの意見は親権獲得に大きな影響を与えるため、子どもが母親を選ぶのであれば、父親の親権獲得は難しいかもしれません。

一般的な家庭では、父親よりも母親のほうが子どもと一緒にいる時間が長く、子どもが懐いているケースが多くあります。近年は共働きの家庭も増えているため一概には言い切れませんが、母親が専業主婦だったり、父親が多忙であまり家にいない状況だったりする場合は母親が選ばれる可能性が高いでしょう。

離婚するまで母親が子どもを養育してきたケースが多いから

「離婚するまで子どもの世話をどちらがしていたか」という点も親権を獲得するうえで重要なポイントです。次の項目で詳しく紹介しますが、裁判所の判断基準には「監護継続性の原則」があります。子どもを取り巻く環境をなるべく変化させないことが重要視されるため、今まで母親が子育てをしていたのであれば母親に親権が与えられる可能性が高いでしょう。父親に養育実績がない場合、親権を勝ち取れない可能性が高くなります。

裁判所が親権者を決める判断基準

そもそも親権とは、子どもの監護や教育、財産の管理などを行う権限・義務のことです。親権は子どもの利益のために行使されなければならず、裁判所が親権者を決めるときも子どもの利益が最も重要視されます。ほかにも、裁判所は以下のような判断基準を設けています。

  • 監護継続性の原則
  • 母性優先の原則
  • 兄弟姉妹不分離の原則
  • 子供の意思の尊重
  • 監護体制の優劣
  • 面会交流に関する寛容性の原則

次の項目から、それぞれの原則について詳しく紹介します。

監護継続性の原則

「監護継続性の原則」とは、子どもを取り巻く生活環境をなるべく変えるべきではないという考え方です。生活環境の大きな変化は、子どもの精神安定に影響を与える可能性があります。たとえば引っ越しで生活の拠点が変わり、今まで多くの時間を過ごしてきた母親(父親)と離ればなれになることは、子どもにとって大きな負担となるかもしれません。

裁判所は今まで主に夫婦どちらが子どもを監護していたかを調査し、特に問題がないのであれば今後も現状を維持すべきだと考えます。もし今まで母親が主に子育てをしていたのであれば、親権獲得は母親が有利になる可能性が高いでしょう。

ただし子どもを虐待しているなど、監護を続けることで子どもの利益に反すると裁判所が判断した場合はこの限りではありません。

母性優先の原則

「母性優先の原則」とは子どもの年齢が幼いほど、母親によって監護されたほうがよいという考え方です。特に子どもが乳幼児のときは母性優先の原則が重要視されやすく、母親が親権を獲得しやすい傾向があります。ただし、母親が育児放棄していたり、子どもを虐待していたりと親権を行使できない事情がある場合はこの限りではありません。

兄弟姉妹不分離の原則

「兄弟姉妹不分離の原則」とは、兄弟姉妹は離れて暮らすべきではないという考え方です。離婚は子どもの精神にダメージを与える可能性があり、兄弟姉妹が離ればなれになるとさらに負担が大きくなるリスクも少なくありません。「乳幼児は母親が親権を持ち、ほかの兄弟は父親が親権を持つ」など、親権者の分離は原則として避けるべきだと考えられています。基本的に未成年の子どもが複数人いる場合、それぞれに別の親権者を決めるのではなく、1人の親が親権者となるケースが一般的です。

子供の意思の尊重

「子供の意思の尊重」とは、親権者の決定に対して子どもの意見を尊重するべきだという考え方です。特に子どもが満15歳以上の場合、子どもの希望を聞くことが法律によって定められています。

しかし子どもが15歳以下だからといって、意見が全く考慮されないわけではありません。実際の裁判では意思能力がある10歳前後以上であれば、子どもの意見を聞いてもらえるケースが多いでしょう。希望が100%採用されるわけではないものの、ある程度尊重したうえで親権者が決定されます。

監護体制の優劣

「監護体制の優劣」とは、経済や居住、教育、家庭などの環境が子育てをするうえで父親と母親どちらが望ましいかを考慮するべきだという考え方です。たとえば「長期間家を空けることが多い」「稼ぎが少なく家賃が払えない」などの人は、離婚後に適切な監護体制を確立できるとは言い切れません。また子どもに愛情を注いでいるか、家事能力はあるかなど、監護の意欲や能力なども総合的に判断されます。

面会交流に関する寛容性の原則

「面会交流に関する寛容性の原則」とは、非親権者の親と子どもが面会することを認めるべきだという考え方を指します。子どもの精神的な安定や人格形成のためには、離婚後も離れて暮らす親と良好な関係を築くことが大切です。面会に積極的な親が親権者になったほうが子どもにとって利益が大きいため、「面会したい」という子どもの気持ちを尊重できるかどうかも重要な判断基準となります。

父親が父親親権を勝ち取ったケース

このように裁判所の判断基準においても、母親の親権獲得が有利な現状があります。しかし過去には父親が親権を勝ち取ったケースもあり、状況は以下のとおりです。

  • 母親が育児を放棄していた
  • 妻が浮気(不倫)していた
  • 母親が子どもを虐待していた
  • 親権者が決定前に母親が子どもを連れ去った
  • 母親が浪費家
  • 母親1人で家出した
  • 母親が親権を譲った
  • 子どもが父親と暮らすことを選択した

次の項目から、それぞれの事例を詳しく紹介します。

母親が育児を放棄していた

母親の育児放棄やネグレクトによって、父親の親権が優位になった事例です。母親が下記のような行為をしていた場合は育児放棄とみなされ、親権は認められません。

  • 食事を与えない
  • 不衛生な状態のまま放置している
  • 子どもに関心がない
  • 子どもが話しかけても無視したり拒絶したりする
  • 病気や怪我をしても医療ケアをしない
  • 家や自動車などに1人残して外出する
  • 閉じ込めたり家に入れなかったりする
  • 学校に行かせない

妻が浮気(不倫)していた

妻の浮気が発覚し、調停離婚で父親が小さい子どもの親権を勝ち取った事例もあります。しかし法的観点から述べると、浮気をしたからといって親権獲得で不利になるという決まりはありません。子どもの監護や養育をしっかりとしていれば、母性優先の原則や監護継続性の原則などによって母親が親権を獲得する可能性も十分に考えられます。

妻の浮気を理由に親権を勝ち取るには、信頼できる弁護士に依頼し、調停で勝つための作戦を立てることをおすすめします。また証拠を集めるために、浮気調査を探偵に依頼するのも効果的です。まずは離婚問題に精通した専門家に親権を獲得できる見込みがあるかどうかを相談するとよいでしょう。

母親が子どもを虐待していた

母親から子どもへの虐待を理由に、父親が親権を勝ち取った事例です。虐待に含まれるのは、暴力をふるうなどの身体的暴行だけではなく、性的暴行や心理的虐待、先述したネグレクトも含まれます。そのような行為が日常的に発生しており、父親は日頃から育児に積極的であったことから監護環境に問題がないと判断され親権獲得に至りました。

母親の虐待を理由に親権を獲得するには、証拠を集めることが重要です。なかには母親に自覚がなく、虐待していることを認めないケースも少なくありません。たとえば子どもにあざや怪我がある場合、写真を撮っておいたり医師に診断書を作成してもらったりする方法があります。また音声や動画、日記なども有力な証拠となるため、虐待に気づいたらなるべく早い段階で記録を残しておくとよいでしょう。

親権者が決定前に母親が子どもを連れ去った

親権者を決定する前に、母親が無断で子どもを連れ去った事例です。刑法224条では以下の決まりがあり、勝手に子どもを連れて別居したり、父親と暮らしている子どもを許可なく連れ去ったりする行為は未成年略取の罪に問われる可能性があります。


引用元 引用元タイトル


引用元 刑法 | e-Gov法令検索

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第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
引用元 刑法 | e-Gov法令検索

このように無断で子どもを連れ去る行為は、親権獲得において大きなマイナス要因です。「子どもの連れ去りを計画している」「準備を進めている」という段階でも刑法224条が成立するため、すぐに離婚問題に精通した弁護士などに相談することをおすすめします。

母親が浪費家

母親の浪費癖を理由に、父親が親権を獲得した事例もあります。母親は生活費や教育費などを自分のお金として使うようになり、離婚や親権問題に発展しました。浪費癖は簡単に治るものではなく、子どもにとって必要なお金までも使ってしまう可能性があります。調停では、現状子どもが健全な生活を送るのは難しいと判断され、父親が親権を獲得しました。

母親1人で家出した

「母親が許可なく家出をしてしまい、子どもの世話をせずにしばらく家に帰らなかった」という事例もあります。父親は母親がいない間も子どもの世話を問題なく行っていたことから、監護能力が認められ親権獲得に至りました。親族から子育てのサポートを得られるなど、今後の監護環境についても問題ないと認められれば親権を獲得できる可能性があります。

母親が親権を譲った

協議離婚では、夫婦の話し合いによって子どもの親権者を自由に決定できます。母親が親権を手放したいと言うのであれば、自動的に父親が親権者となります。「親権を決定する流れ」で詳しく後述しますが、手続きは離婚届に親権者を記載するだけで済み、家庭裁判所での調停などは必要ありません。

ただし離婚後に親権者を変更する場合、家庭裁判所に親権者変更の申し立てをする必要があります。

子どもが父親と暮らすことを選択した

「父親と暮らしたい」という子どもの意思が尊重され、父親が親権を獲得した事例です。「子供の意思の尊重」の項目で紹介したように、親権者の決定は子どもの意見も重要視されます。子どもが2人以上いる場合などは、兄弟姉妹それぞれが別の親と一緒にいたいと主張するケースも珍しくありません。兄弟姉妹が離れて暮らすことはあまり推奨されていないものの、状況によっては父親が親権を獲得できる可能性があります。

父親が親権を勝ち取るために重要なポイント

父親が親権を勝ち取るには以下のポイントがあります。

  • 子どもに愛情を持って接する
  • 子どもを養育した実績を作る
  • 父親が子どもを養育できる環境を整える
  • 父親の経済状況
  • 離婚前に別居を避ける
  • 心身ともに健康であるか
  • 母親に育児放棄やDVなど問題がある場合は証拠を集める
  • 子どもから選ばれるように努める
  • 別居の際子どもを引き取る

次の項目から、父親の親権獲得が有利になり得る条件を詳しく紹介します。

子どもに愛情を持って接する

先述したように、幼い子どもは母親に養育されるほうが望ましいと考えられています。子どもが0〜10歳ほどであれば親権獲得は母親が有利となるでしょう。

しかし「母親が子どもに関心がない」「子どもを拒絶したり無視したりする」などが日常的に発生しており、育児放棄の可能性がある場合はこの限りではありません。母親よりも父親のほうが愛情を注いでおり、子どもにとって利益があると判断されれば親権を獲得できる可能性もあります。

子どもを養育した実績を作る

日頃から率先して子育てに関わり、子どもを養育した実績を作ることが大切です。仕事をしている父親がどの程度子育ての時間を取れるのか、周囲にサポートを頼めるかという点は、親権決定において重要な判断材料となります。養育実績の一例は以下のとおりです。

  • 保育園の送り迎え、日誌の記入、持ち物の準備など
  • 子どもの食事や洗濯、寝かしつけなど家事・育児全般
  • 病院への付き添いや看護
  • 子どもと遊ぶ
  • 父親の両親や兄弟姉妹が養育をサポートしてくれる など

このような子育てを日常的に行っており、子どもを安定して養育していると認められれば親権獲得を有利に進められます。しかし「育児の大半を母親が行っている」「休日のみ育児に参加している」などの状況では養育実績として扱われないため注意が必要です。

父親が子どもを養育できる環境を整える

「父親が親権を勝ち取るのが難しい理由」の項目で紹介したように、父親が親権を獲得しづらい原因として養育環境が挙げられます。父親の多くは仕事で外出している時間が長く、子どもの世話ができる環境がないと判断されてしまうからです。養育環境を整える具体的な方法は、以下のものが挙げられます。

  • 子ども保育園に預ける
  • 父親の両親などと同居する、サポートを頼む
  • 保育施設が整備されている企業に勤める
  • 緊急時に仕事を休んだり早退したりできるように職場の理解を得る

父親の両親と同居したり近くに住んだりと、いざというときにサポートを頼める環境をつくっておくことが大切です。子どもを保育園に預けるだけでなく、緊急時に対応するためにも複数の対策を取るとよいでしょう。

父親の経済状況

収入など経済状況も親権を決める重要なポイントの1つです。「監護継続性の原則」の項目で紹介したように、子どもが健やかに成長するためには生活環境をなるべく変えずに養育することが大切だと考えられています。離婚後に経済状況が悪化し、衣食住が確保できなくなったり、生活水準が大幅に下がったりすると子どもに影響を与える可能性も少なくありません。父親は母親よりも経済状況がよいケースが多く、親権獲得のプラス材料として判断されます。

離婚前に別居を避ける

離婚前に別居をするとき、母親が子どもを連れて行くケースは多いものです。しかし親権決定では継続性が重視されるため、子どもと一緒に別居している期間が長くなるほど母親が親権を獲得しやすくなります。母親が子どもを連れて行くのであれば、なるべく離婚前の別居は割けるべきでしょう。

心身ともに健康であるか

親権者が高齢だったり健康状態が著しく悪かったりすると、子どもを適切に養育するのが難しいかもしれません。1人で子育てをしなければならないなか、長期で入院したり、寝たきりの状態が続いたりすると子どもに影響を与える可能性があるからです。親権決定では年齢や健康も考慮されるため、日頃から心身ともに良好な状態を維持するようにしましょう。

母親に育児放棄やDVなど問題がある場合は証拠を集める

「母親が浮気をしており子育てをしない」「子どもをたたいている」など、育児放棄やDVの問題がある場合は証拠を集めることが重要です。たとえ子どもに直接暴力をふるっていないとしても、養育者として問題があると判断されるケースもあります。些細な出来事だからと見過ごさず、念のため写真や録音、録画などを残すようにしましょう。

なお「妻が浮気(不倫)していた」の項目で紹介したように、妻が不貞行為をしていたからといって父親が親権決定で有利になることはあまりありません。子どもの世話をしっかりとしていたのであれば、母親は親権者としての役割を果たしているとみなされるからです。母親が親権者として不適格であると主張するには、ほかの証拠もあわせて提示することが大切です。

またギャンブル依存症やアルコール依存症なども、養育者として適切でないと判断される可能性があります。預金通帳やクレジットカードの明細、アルコール依存症が原因の暴力・怪我の写真なども率先して集めるようにしましょう。

子どもから選ばれるように努める

親権決定には子どもの希望を尊重しなければなりません。特に子どもが15歳以上の場合は意見を聞く義務があり、「父親と一緒に暮らしたい」と思ってもらえれば親権を獲得しやすくなります。日頃から子どもと一緒にいる時間をつくり、信頼関係を築くなど親権者として選んでもらえるよう努力することも大切です。

別居の際子どもを引き取る

離婚前に別居をするとき、父親側が子どもを引き取るという選択肢もあります。監護養育の実績ができるだけでなく、継続性が重視され親権が獲得しやすくなるからです。

しかし父親が引き取ることが、必ずしも子どもの利益につながるとは限らない点に注意が必要です。別居前から母親と同程度に子育てをしていた場合や、主に父親が育児をしていた場合は子どもを引き取っても問題ありません。しかし別居前にほとんど子育てに関わっていなかったのであれば、変わらず母親が子どもの監護をするべきだと考えられます。

先述のとおり、子どもを勝手に連れ去ると罪に問われ、かえって親権争いで不利になる可能性もあります。離れたくないからといってむやみに子どもを連れて行こうとせず、子どもの気持ちや生活を最優先に考えることが大切です。

親権を決定する流れ

子どもの親権を決定する流れは、以下のとおりです。

  • 離婚する当事者で話し合う
  • 話し合いで合意できなければ離婚調停を行う
  • 離婚調停でも合意できなければ離婚裁判を起こす

次の項目から、それぞれで押さえておくべきポイントを紹介します。

離婚する当事者で話し合う

協議離婚をするときは、夫婦の話し合いによって親権者を決定します離婚届には子どもの親権者を記載する項目があり、未記入のままでは届出そのものを受け取ってもらえません。特に子どもが未成年の場合、親権者が決まらないうちは離婚できないため、離婚届を提出する前に話し合いの場を設けることが大切です。

子どもが複数人いる場合は、それぞれの親権者を決める必要があります。なお協議離婚では夫婦の話し合いのみで子どもの親権者を決められるため、家庭裁判所での手続きは必要ありません。親権者についてお互いの合意が得られれば、離婚届に親権者を記載し役所に提出するのみで手続きが完了します。

話し合いで合意できなければ離婚調停を行う

夫婦での話し合いがまとまらず、協議離婚が難しい場合は家庭裁判所で離婚調停を行います。離婚調停とは、家庭裁判所の裁判官や調停委員が夫婦の間に立ち、話し合いのサポートをするものです。親権だけでなく、離婚する・しない、養育費、財産分与、面会交流権、慰謝料などについても話し合うことができます。

離婚調停でも合意できなければ離婚裁判を起こす

調停離婚で親権者が決まらない場合、調停不成立となり離婚裁判へステップを進める必要があります。離婚裁判とは、裁判官の判決によって強制的に離婚を認めてもらう手続きです。離婚そのものだけでなく、未成年のこどもの親権やそのほかの離婚条件についても同時に申し立てることができます。

また家庭裁判所には「審判離婚」という手続きも存在します。審判離婚とは離婚調停が不成立となったものの、裁判所の審判によって例外的に離婚を成立させることです。たとえば「離婚の合意はできているが、親権の条件がまとまらない」「慰謝料の金額のみ意見が対立している」などの場合、調停不成立後に審判が下されることもあります。しかし審判離婚が成立したケースは非常に少なく、そのまま裁判離婚に移行するケースが一般的です。

父親が親権を勝ち取れなかった場合に行うこと

協議離婚や離婚調停、離婚裁判などで父親が親権を勝ち取れなかった場合、取るべき行動は以下のとおりです。

  • 面会交流の取り決めを行う
  • 養育費を支払う
  • 母親に問題があれば親権者変更を申し立てる

以下の項目から、それぞれの手順や注意点などを紹介します。

面会交流の取り決めを行う

面会交流は非親権者の権利でもあり、子どもの権利でもあります。積極的に面会交流をすることで子どもは両親からの愛情を感じることができ、心の安定につながるからです。しかし関係性や婚姻期間中の思いなど、さまざまな事情から面会交流を嫌がる母親は多いものです。離婚後にトラブルに発展しないためにも、あらかじめ面会交流について条件を決めておくとよいでしょう。

面会交流の条件について、取り決めるべき内容は以下のとおりです。

  • 面会交流の時間や回数
  • 面会交流の場所
  • 緊急時の連絡手段
  • 面会時の交通機関や交通費、送迎の方法
  • お小遣いやプレゼントの可否、上限額
  • 子どもの学校行事やイベントに参加してもよいか
  • 非親権者の祖父母と面会してもよいか

口約束のみで済ますと、後々言った・言わないのトラブルに発展することがあります。面会交流の条件が決まったら必ず書面に残しておきましょう。

養育費を支払う

非親権者となった親は、親権者に養育費を支払う義務があります。基本的には、子どもが経済的に自立するまでは養育費の支払いを続けなくてはなりません。子どもが高校卒業後に働くのであれば18歳、大学卒業後に就職するのであれば22歳ごろまでが目安となりますが、浪人や留年、大学院への進学など状況によっては期間が延びる可能性もあります。

しかしなかには養育費の支払いが滞ったり、途中で支払いを辞めてしまったりするケースも少なくありません。養育費が止まると母親が面会交流に消極的になるケースも多いため、子どもとのつながりを持つためにもしっかりと支払うようにしましょう。

母親に問題があれば親権者変更を申し立てる

離婚後でも、母親に親権者として問題がある場合は親権者を変更できます。親権者を変更できるのは以下のようなケースです。

  • 母親が子どもを虐待・育児放棄している
  • 母親が重度の病気や怪我をした
  • 母親が死亡または行方不明になった
  • 海外転勤や転職などで監護環境が著しく変化した
  • 15歳以上の子どもが親権者の変更を希望している

しかし話し合いのみで親権者を決められるのは協議離婚の成立時に限られており、離婚後に変更する場合は家庭裁判所への申し立てが必要です。母親と父親の間で合意を得ていたとしても、必ず手続きが必要な点に注意しましょう。

父親が親権を勝ち取るためには弁護士へ依頼を依頼

父親が親権を勝ち取るためには、なるべく早い段階で離婚問題に精通した弁護士に相談をすることが大切です。以下の項目では、弁護士に親権問題を依頼するメリットや費用を詳しく紹介します。

弁護士に依頼するメリット

父親が親権を勝ち取るために、弁護士を頼るメリットは以下のとおりです。

  • 法的観点から親権獲得のアドバイスを受けられる
  • 親権についての話し合いを有利に進められる
  • 親権問題をスムーズに解決できる
  • 手間がかかる裁判所の手続きなどを任せられる
  • 親権獲得で優位に立てる証拠をそろえられる

親権問題を有利に進めるには専門知識が必要となるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談するのが望ましいでしょう。親権の交渉だけでなく書面の作成・提出など手続き面でもさまざまなメリットがあり、早期解決をサポートしてくれます。

弁護士に依頼した場合の費用相場

親権問題を弁護士に依頼した場合、費用相場は以下のとおりです。

  • 着手金:30万〜50万円
  • 報酬金:30万〜40万円
  • 事務手数料:1万〜4万円
  • 合計:40万〜100万円

弁護士費用は事務所によって異なり、調停や裁判の有無などによっても金額は変わります。状況によってはそのほかにも費用が発生する可能性があるため、契約する前に必ず費用の確認を行いましょう。

まとめ

現在、日本では父親が親権を獲得しづらい現状があります。裁判所は以下のような条件を設けており、幼い子どもは母親に監護されるべきだという考え方や、監護環境を変化させるべきではないという考え方があるからです。

  • 監護継続性の原則
  • 母性優先の原則
  • 兄弟姉妹不分離の原則
  • 子供の意思の尊重
  • 監護体制の優劣
  • 面会交流に関する寛容性の原則

しかし調停や裁判で父親が親権を勝ち取った事例もあります。母親が子どもを虐待していたり浪費家だったりすると、母親が親権者として不適格だと判断され、親権が認められない可能性も少なくありません。親権問題には先例や法律の知識が必要となるため、まずは親権に精通した弁護士に相談してみることをおすすめします。

離婚した父親の親権に関するよくある質問

母親が勝手に子どもを連れて行った場合、どのような対応を取ればいいですか?

家庭裁判所に「子の引渡請求」の調停または審判の申し立てを行いましょう。裁判所には「審判前の保全処分」という制度があり、すぐに子どもを連れ戻せる可能性があるからです。

審判前の保全処分とは、緊急性が高いと判断した場合に下される暫定的な処分のことです。申し立てから審判が下されるまでに時間がかかる場合、その期間で子どもの生活に影響が生じる可能性も少なくありません。子どもの健やかな成長を妨げないために、裁判所は調停や審判などの結果が出る前であっても、仮で子どもの引き渡しを許可するケースがあります。自力で子どもを連れ戻しに行くことは避け、すぐに子の引渡請求の調停・審判を申し立てましょう。

乳児の親権を勝ち取ることは父親では難しいですか?

不可能ではないものの、父親が乳児の親権を勝ち取ったケースはあまり多くないのが現状です。本記事でも紹介したように、日本では「母性優先の原則」という考え方があり、子どもが幼いほど母親の存在が必要であると考えられています。

ただし母親が育児放棄をしていたり子どもを虐待していたりする場合は、この限りではありません。母親が育児をすることで子どもに対して悪影響があると証明できれば、父親が親権を獲得できる可能性があります。

親権は父親に譲るが、養育は母親がすると主張されましたが、可能でしょうか?

実際に子どもを育てる親のことを「監護者」といい、親権者と監護者を分けることは可能です。しかし、裁判所は親権者と監護者を分離することに消極的な傾向があります。一般的には親権者と監護者を同一にするほうが、子どもにとって利益となると考えられているからです。認めてもらうには、親権者と監護者を分けるほうが子どもの利益につながる明確な理由が必要となるでしょう。

結婚せずに生まれた子どもの親権を父親が勝ち取ることは出来ますか?

結婚していない父親が、子どもの親権を獲得することはできません。未婚の男女に子どもが生まれた場合、原則として母親の単独親権となるからです。父親が子どもを認知したうえで、裁判などを利用して親権争いをすることもできますが、現状では親権を獲得するのは難しいかもしれません。

しかし母親が父親を親権者として認める場合や、母親に子どもを育てられない事情がある場合などは、父親が親権を獲得できる可能性があります。

父親が親権を獲得した場合でも、養育費を請求することはできますか?

父親が親権者となった場合、母親に養育費を請求できます。ただし金額を決めるときは収入を考慮する必要がある点に注意が必要です。母親の支払い能力によっては少額となったり、免除されるケースも見受けられます。

海外で国際結婚をして、離婚調停中に子どもを無断で連れ去った場合、どうなりますか?

国際結婚をして日本人の母親が子どもを連れ去った場合、「ハーグ条約」という法律によって罰せられる可能性があります。ハーグ条約は1980年10月に作成された法律で、2013年5月22日に日本でも承認されました。現在はもともと住んでいた国に子どもを返還するなどの措置が取られていますが、結婚相手の国によっては刑務所に収監される可能性も少なくありません。日本人女性が子どもを連れ去る事件は多く発生しており、国際社会でも問題となっています。

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