面会交流拒否は原則できない
原則として、親の意思だけで面会交流の拒否はできません。面会交流は「親ではなく子どもの権利」という側面が強く、子どもの利益が最大限に尊重されるからです。
たとえ監護権(子どもの近くで世話や教育を行う親権の一種)といった親権を持つ親側の拒否であっても、相当の理由がなければ認められないのが一般的な解釈となります。
親が離婚・別居していようとも、子どもにとって大切な父母であるのは事実です。2人の親からの愛情を受けて親子の信頼関係を築いてもらうことで、子どもに安心感、社会性、自信を与えることは子どもの健全な人格形成につながります。
面会交流においてはこうした「子どもの福祉」への配慮がもっとも優先されるべきだと、家事事件手続法・児童福祉法などの法律や、裁判所にて判断されてきました。
子どもの福祉にはっきりとした定義はないものの、「すべての子どもは良好な環境、健やかな成長、年齢に応じた意見の尊重などを保障すること」といった、子どもの幸せや利益であると言われています。
例えば児童福祉法の第1条と第2条では、子どもの権利や福祉について以下のように定めています。
面会交流における子どもの福祉を害するか否かの基準は、子どもの意思、健全な成長への利益の有無、交流による精神的安定の阻害、親子の関係性などです。
さらに民法改正によって、2012年4月より「面会交流等について協議する場合、子の利益をもっとも優先して考慮しなければならない」と、民法766条にて定められました。
第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。
第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
e-Gov法令検索 児童福祉法
こうした背景もあり、親の一方的な権限による面会交流の拒否は原則として認められないのです。
しかし、それでも親が正式な協議に基づいた面会交流や協議内容そのものを拒否する場合は、家庭裁判所での面会交流調停にて紛争を解決する必要があります。面会交流調停では、第三者である調停委員や裁判官を交えて、当事者同士の話し合いが行われます。
面会交流調停でも解決しないときに行うのが、面会交流審判です。当事者たちの主張や証拠を基に、家庭裁判所の裁判官が面会交流についての判断を下します。
面会交流の拒否や制限が認められる正当な理由
面会交流の拒否はできないのが原則ではあるものの、子どもの福祉を害するといった正当な理由があれば、拒否や制限が認められる可能性があります。
面会交流の拒否や制限が認められる正当な理由の例は、次の通りです。
- 虐待や連れ去りの恐れがある
- 相手が面会交流に関する約束を守らない
- 子どもが面会交流を嫌がっている
- 子どもの教育に悪影響を与える可能性がある
- 子どもが親権者の再婚相手と良好な親子関係を築いている
- 過去に監護権を持つ親に対して非監護親からDVがあった
それぞれの正当な理由について、判例や法律を交えながら解説します。
虐待や連れ去りの恐れがある
監護権を持たない非監護親からの虐待や、子どもの連れ去りの恐れがあるときは、子どもの福祉に反するとして面会交流を拒否できる理由になります。
具体的には暴力や連れ去りへの不安による精神的負担、暴力を振るわれることによる身体・精神への被害、連れ去りによる生活環境や交友関係の意図しない変化などが、理由として挙げられます。
ただし虐待や連れ去りがあると主張したからといって、直ちに拒否は認められません。「虐待や連れ去りは行われる事実があるのか」「暴力の程度や子の受けた影響がどの程度か」「現在の非監護親の態度や心情はどうか」といった、背景情報および証拠を基に最終判断が行われます。認められる証拠の例は次の通りです。
- 虐待などについて児童相談所や警察、医師に相談したことを示す証拠
- 暴力が原因のケガなどについての医師の診断書や過去の写真、残っているケガの跡など
- 監護親の悪口を吹き込む、子どもに同居を迫るといった、連れ去りの意思が記録されたLINEやメール、音声
ケースによっては、第三者機関の関与や面会場所の限定といった条件を課すことで、限定的に面会交流が認められる可能性があります。
相手が面会交流に関する約束を守らない
面会交流の方法は、親同士の事前協議や面会交流調停などで取り決められます。しかし一方の親が面会交流に関する約束を守らず、子どもの都合を無視して面会交流権を行使しようとする場合は、面会交流を拒否できる理由になります。
面会交流に関する約束を守らないケースとは、主に次の通りです。
- 面会交流日以外の日に、勝手な判断で子どもと接触する
- 定められた時間を超えて子どもと会ったり、自宅へ泊めたりする
- 子どもに対して「自分と一緒に暮らそう」と、無理に同居を迫る
例えば家庭裁判所の判例には、調停継続中に「下校途中で待ち伏せる」「幼稚園に会いに行く」といった取り決め外の行動をした母親が、面会交流を拒否されたものがあります。親権的に有利なケースが多い母親であっても、子どもの福祉を害するときは面会交流を拒否されるという事例です。さらにこのケースで被告は、未成年者誘拐容疑で逮捕されました。
同様に2021年8月の判例では、離婚係争中に父親が事前の取り決めを無視して子どもを連れ去り、懲役1年(執行猶予3年)の判決が出たものがあります。面会交流の取り決めを無視した子どもの連れ去りは、家庭裁判所の範囲を超えて刑事事件に発展する可能性があります。
監護権を持つ親側も他人事ではなく、面会交流の取り決めを遵守しなければなりません。監護親側が面会交流の約束を守らない場合は、法的争いや損害賠償請求になるリスクがあります。
子どもが面会交流を嫌がっている
面会交流は子どもの福祉を図るものという前提があることから、子どもが面会交流を嫌がっている場合、面会交流拒否の正当な理由になりえます。子どもの意思を無視して、強制的に面会交流をさせることはできません。
過去の判例には、「子どもが非監護親に親近感を抱いておらず、面会交流に強い嫌悪感を持っている」「非監護親の言動が常軌を逸しており、非監護親と子どもの意思疎通が取れず、会った後に子ども学習意欲の減退が見られた」として、面会交流が認められなかったケースもありました。
しかし15歳未満の子どもは、非監護親側に非がないにもかかわらず、その日の気分だけで会いたくないと主張する可能性があります。また15歳以上の子どもの中には、会ってほしくないという監護親の気持ちを察して、本心とは裏腹に「会わない」と伝えるケースも存在します。
子どもが面会交流を嫌がっているかどうかの判断は、子どもの年齢、背景情報、発達の度合い、非監護親との関係性などを総合的に判断し、真意を慎重に探る必要があるのです。
なお面会交流についての審判が行われる際には、10歳前後の子どもの意思は審判に反映される傾向にあり、15歳以上の子どもについては必ず陳述を聞かなければならないと、家事事件手続法第152条にて定められています。
(陳述の聴取)
第百五十二条 家庭裁判所は、夫婦財産契約による財産の管理者の変更等の審判をする場合には、夫及び妻(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。
2 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判を除く。)をする場合には、第六十八条の規定により当事者の陳述を聴くほか、子(十五歳以上のものに限る。)の陳述を聴かなければならない。
e-Gov法令検索 家事事件手続法
子どもの発育に悪影響を与える可能性がある
面会交流を実施・継続することで、子どもの発育に悪影響を与える可能性がある場合は、面会交流を拒否する正当な理由となります。子どもの発育に対する悪影響の事例は次の通りです。
- 子どもや監護親への言葉遣いや態度、行動(監護親の悪口を吹聴するなど)などによって子どもに不利益をもたらす
- 面会交流のルールや監護親の意向を無視し、自分の利益のために子どもを利用する
- 子どもの教育に悪影響を与える場所へ連れて行く
- 子どもを犯罪行為やその他不法行為に巻き込む
- 非監護親がアルコール依存症、薬物中毒、強度の精神疾患を抱えている
上記のケースであっても、第三者の立会いありの交流や間接的な交流など、子どもの不利益を取り除ける措置を講じる場合は認められる可能性があります。
子どもが親権者の再婚相手と良好な親子関係を築いている
再婚しただけでは面会交流拒否の理由にはならないものの、再婚後の面会交流によって子どもに動揺や混乱を与えると判断された場合は、面会交流拒否の理由になります。
具体的には「子どもが再婚相手と良好な親子関係を築いている」「再婚したばかりで関係性を構築している途中にあり、デリケートな時期にある」といったケースです。
再婚後の面会交流は、子どもへの影響や意向を基に慎重な判断が求められます。
「子どもが監護親の親に遠慮して非監護親との面会交流を我慢する」「子どもは面会交流を希望しているにもかかわらず、親が再婚相手を気にして拒否する」といった事態は、子どもの福祉を害すると解されるでしょう。
過去に監護権を持つ親に対して非監護親からDVがあった
子どもへの暴力行為ではなく、監護親が非監護親からDVといった暴力行為を受けていた過去があるときは、面会交流拒否の正当な理由になる可能性があります。
子どもにとって、親のDVの光景を間近で見た事実は精神的ダメージを負っていると判断できます。DVのキズが癒えていない状態での非監護親との面会交流は、トラウマの呼び起こしやフラッシュバックを引き起こすリスクも想定できるでしょう。子どもの福祉を害するとして、拒否や制限の対象になります。
ただし、子どもが非監護親との面会を望んでいる場合は、DVによる子どもへの影響や非監護親の現在の態度などを総合的に判断した対応が取られる可能性があります。
子どもではなく監護親がDVを理由に面会交流を強く拒否しているときは、それを理由に直ちに拒否とはならずとも一定の考慮がされる傾向があります。
例えば家庭裁判所の判例の中には、「子どもの事情だけ考慮すると面会拒否の事由とは言えないと家庭裁判所調査官が判断したものの、DVをした非監護親の態度や面会交流後の子どもの反応などを総合的に判断し、今後の悪影響が大きいと裁判所が拒否を認めた」というものがあります。
すでに決定している面会交流を拒否するリスク
いくら監護親が子どもを会わせたくないと思っていても、面会交流に関する協議での取り決めや面会交流調停の調停調書を無視して面会交流を拒否すると、違法行為に該当する可能性があります。そのため、非監護親側による裁判所を通じた法的措置を講じられるリスクがあります。
面会交流を拒否することで発生する、法的リスクは次の通りです。
- 履行勧告される
- 強制執行される
- 慰謝料や損害賠償を請求される
- 親権者の変更を申し立てられる
正当な理由なく面会交流を拒否している方は、ルールの範囲での対応や拒否理由の証拠の掲示など、正しい方法での対処を行いましょう。ここからは、すでに決定している面会交流を拒否するリスクを解説します。
履行勧告をされる
履行勧告とは、正当な理由なく面会交流を拒否している者に対して、家庭裁判所が直接説得したり勧告したりする措置です。あくまでお願いベースであるため、履行勧告にしたがわなくてもそれ自体にペナルティはありません。
しかし、法的機関からの干渉という強いプレッシャーを受けることになります。
何より履行勧告は「不当な理由で拒否を継続するなら、司法判断をもって親権の変更や金銭的ペナルティを与える可能性がある」という警告とも捉えられます。
履行勧告を受けたときは、無視を続けるのではなく履行勧告や事前の取り決めに沿った対応を早めに行いましょう。
強制執行される
履行勧告の無視を続けると、強制執行の措置に移行する可能性があります。
面会交流における強制執行とは、間接強制による金銭の徴収のことです。本来の強制執行をそのまま適用すると、「裁判所の実力行使で子どもを無理やり連れ出す」ことになりますが、これは子どもの利益とは言えない行為となってしまいます。
そのため面会交流における強制執行は、間接強制金による金銭的ペナルティを与えることで、子どもとの面会交流を心理的に促すための手続きとして間接強制が行われます。具体的には、「約束を1回破るごとに、◯万円の支払いを行う」といったペナルティです。
間接強制が認められると経済的な制裁が加えられ続けるので、履行勧告の時点で早めに対応しておくことを推奨します。
間接強制は、調停や審判にて面会交流の決定がなされたうえで、面会交流についての日時や頻度などが明確に定められているときに施行が可能です。万が一面会交流において「~程度」「別途協議する」といった曖昧な取り決めがなされていると、間接強制が認められない可能性があります。
最高裁判所の判例の中には、「調停調書にて面会の日時・頻度、面会時間の長さ、子どもの引き渡し方法などが曖昧で具体的に決まっておらず、監護親がすべき給付が十分に特定されていないとして、間接強制を認めなかった」というものがあります(最高裁判所2013年3月)。当該判例は、間接強制が認められないケースとして有名になりました。
また、子どもが面会を強く拒否し、子どもの福祉が害されると判断されたときは、間接強制が否定される可能性があります。
慰謝料や損害賠償を請求される
不当な面会交流拒否を続けていると、非監護親側から「決められている約束を守らない債務不履行に該当する」と、慰謝料や損害賠償を請求される可能性があります。
面会交流拒否における損害賠償請求の訴訟は、監護親や子どもの精神的苦痛に対する、強い違法性が必要です。面会交流の拒否は、「非監護親が持つ親としての権利を奪うことによる精神的苦痛を与えている状態」と言えます。
請求されたときは、慰謝料や損害賠償を速やかに支払う、違法性について裁判で争うといった対応が求められるでしょう。
さらに、慰謝料や損害賠償の支払い判決が決まった後も支払いを無視していると、今度は慰謝料や損害賠償の支払いに対する強制執行で財産を取り立てられる可能性があります。
親権者の変更を申し立てられる
面会交流を拒否するリスクは、間接強制や損害賠償といったお金に関するものだけではありません。非監護親による家庭裁判所への親権者変更調停や審判の申し立てによって、親権が非監護親側に移るケースがあります。
親権者変更調停においては、「面会交流拒否による子どもの権利の侵害を行っている」と、監護親側が不適格だと判断される可能性が出てきます。調停や審判の結果、親権が非監護親に移ると今度は監護親側が子どもに会えなくなります。
面会交流調停を申し立てられたときの対処法
最高裁判所の「司法統計年報(令和4年)」によると、2022年に申し立てられた面会交流調停の数は1万2,876件と、1日あたり約35件もの面会交流調停の申し立てがあったと判明しています。
相手側から面会交流調停を起こされるのは、決して珍しいことではないと言えるでしょう。そのため、面会交流調停を申し立てられたときの対処法を知っておくことは、不当な面会交流調停に対する対策になります。
面会交流調停が申し立てられたときは、以下の対処法を意識しましょう。
- 感情的にならず、論理的に事情を説明する
- 面会交流が子の利益に反することを証明する
- 調停委員に納得感を与え、味方になってもらう
- 離婚問題に強い弁護士に相談する
それぞれを詳しく見ていきましょう。
感情的にならず、論理的に事情を説明する
面会交流調停にて裁判官や調停委員に対して陳述を行う際は、感情的にならず論理的かつ冷静に伝えることが大切になります。
相手への憎しみや怒りのあまりに、本筋とは関係のない愚痴やエピソードを入れてしまうと、話にまとまりがなくなり主張が伝わらなくなります。スムーズな調停の進行の妨げや相手側との言い合い、効果が薄い陳述などにつながり、調停の結果にも悪影響が出るかもしれません。
事前に「主張内容」「主張する理由」「主張する根拠」を整理して論理的に組み立てておき、1番説明したい部分のみに絞って説明しましょう。
面会交流が子の利益に反することを証明する
面会交流調停において、もっとも立証すべきことは「面会交流が子どもの利益にどれだけ反するか(子どもの福祉を害するか)」です。立証するには、子どもの意思や状態、子どもの利益に反する証拠などを示す必要があります。
裁判所や調停委員には、親の気持ちや意向ではなく「子どもと非監護親との関係性」「子どもが面会交流することによる悪影響」「子どもの面会交流の捉え方」など、子どものことを中心に説明します。親が感情的に否定しているのではなく、子どもの権利が侵害されているという事実が伝わるようにしましょう。
そして調停の場では面会交流の拒否の正当な理由となる、確固たる証拠も提出します。例えば暴力が面会交流の拒否の理由なら、暴力による子どものケガの診断書やケガの写真、威圧的な言動を記録した録音、子どもの証言などが証拠として挙げられます。
もし証拠がない場合でも、暴力を受けた当時の子どもの様子や精神状態をしっかりと伝えましょう。
調停委員に納得感を与え、味方になってもらう
面会交流調停で大切なのは、相手側を直接説得するより、第三者である調停委員に納得感を得てもらうことです。調停委員が監護親の主張に納得してくれれば、調停委員側から相手側に説得を試みてもらえる期待が高まるからです。
第三者である調停委員を納得させるには、前述した論理的な説明と子の利益に反することの照明・証拠の掲示が重要になります。味方になってもらえれば、高い専門知識や問題解決能力を持つ調停委員からアドバイスをもらえる可能性があります。
離婚問題に強い弁護士に相談する
面会交流調停は当事者同士の話し合いが中心とは言え、通常の裁判と同じく法的根拠や主張が結果を左右します。審判まで進んだら、法的根拠・主張を基に裁判官が判断を下します。
面会交流調停や審判で争う場合は、面会交流関係を含めた離婚問題に強い弁護士への相談がおすすめです。離婚問題に強い弁護士に面会交流調停の相談をするメリットは次の通りです。
- 面会交流調停で必要な法的根拠や主張、調停委員への論理的な説明などについてのアドバイスを受けられる
- 自分の代理人として、相手との交渉や家庭裁判所での対応を任せられる(相手と顔を合わせずに済む)
- 専門的知識のある第三者による、感情に流されない客観的な判断を期待できる
- 相手側が弁護士をつけてきたときにも、冷静に対応できる
- 面会交流調停以外にも、養育費、財産分与、離婚調停などについて相談できる
1人だけで面会交流調停に挑むより、専門家である弁護士に頼ったほうが有利な結果を期待できます。多くの弁護士事務所では無料相談から受け付けているので、まずは気軽に相談してみるのがよいでしょう。
親権を持たない親が面会交流を拒否された場合の対処法
自分が親権を持たない親の立場で監護親から面会交流を拒否されたときは、前述した面会交流調停の申し立てを自分で進めていくことになります。ここからは面会交流調停の申し立て方法や不服申立てについて解説します。
面会交流調停を申し立てる
面会交流調停は、監護親である相手方が管轄する家庭裁判所または両親が合意した家庭裁判所にて申し立てを行います。家庭裁判所に申し立てた後は、お互いの日程を基に期日を調整し、実際に面会交流調停が開始されます。
申立てをしてから、1~2ヶ月後にスタートするのが一般的です(GWや年末年始などの長期休暇を挟む場合は除く)。その後は1~2ヶ月間隔の期日で進められ、半年以上の時間をかけて結論を出していきます。調停が成立したときは、面会交流調停の結果に応じて、裁判所の判決と同じ効力を持つ「調停調書」が作成されます。
もし相手方と直接顔を合わせるのを避けたいときは、家庭裁判所へ伝えることで別室利用や代理人出席が可能です。
面会交流調停は、あくまで「第三者(裁判官や調停委員)を入れた、当事者同士の話し合い」というスタンスで行われます。調停中には、調停委員からアドバイスがもらえます。
面会交流調停は調停室で行われ、両親と子どもが調停委員や家庭裁判所調査官との面接を通じて話し合いが行われます。
面会交流調停を行う際に必要な書類
面会交流調停を行う際に必要な書類等の準備物は次の通りです。
申立書およびその写し1通 |
裁判所の公式ホームページよりダウンロード |
標準的な申立添付書類(未成年者の戸籍謄本や全部事項証明書) |
役場、コンビニ、郵送などで取得 |
その他審理のために必要と思われる書類 |
事情説明書、連絡先等の届出書など、裁判所から求められた書類 |
戸籍の附票(子どもの母親の住所がわからないとき) |
・役場、コンビニ、郵送などで取得
・DV等支援対象者で取得できない場合は、裁判所に住所の調査を依頼
|
家庭裁判所に支払う費用:3,000円程度
面会交流調停の申し立て関係で家庭裁判所へ支払う費用は、3,000円程度です。大まかな内訳は以下の通りです。
収入印紙 |
子ども1人につき1,200円 |
連絡用の郵便切手 |
申立てを行った家庭裁判所へ確認 |
その他実費 |
各書類の取得費や交通費、調停調書交付の手数料など数千円 |
弁護士に支払う費用30万円~50万円程度
面会交流調停において弁護士に支払う費用の総額は、30万~50万円が目安です。
相談料 |
0~5,000円(初回30分程度や初回は無料のところが多い) |
着手金 |
20~40万円 |
成功報酬 |
20~40万円 |
日当 |
半日3万円~、1日5万円~ |
実費 |
数千円程度 |
詳細な費用は、依頼人の状況や弁護士事務所によって異なります。複数の事務所で見積もりを行い、予算やサービス内容との兼ね合いを比較するのがおすすめです。
調停が不成立になったら審判へ移行する
面会交流調停で話し合いがまとまらず、調停が不成立になったら面会交流審判へ自動的に移行します。調停委員の役割は終わり、両親が出した証拠・主張や裁判所の調査結果を基に審理が行われたうえで、裁判官が面会交流に関する判断を下します。
審判の内容に納得できない場合は不服申立てを行う
家庭裁判所が下した審判の内容に納得ができないときは、不服申立て(即時抗告)を行います。
審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間以内に、審判した家庭裁判所へ即時抗告申立書を提出しましょう。同時に、即時抗告をした理由となる証拠書類が必要になります。
他には収入印紙として1,800円(面会交流関係は家事事件手続法の別表第2に該当)や、連絡用の郵便切手が必要です。弁護士費用は面会交流調停・審判とは別途かかるのが一般的です。
不服申立てに関する審理は、高等裁判所で行われます。高等裁判所の判断をもって、当該面会交流の内容が確定します。
面会交流の拒否に関する損害賠償・慰謝料の請求について
面会交流を巡る争いには、面会交流の拒否によって発生した損害賠償・慰謝料請求も含まれます。面会交流の拒否によって子ども・親ともに精神的負担を強いられたときは、民事裁判にて違法性を問うことが可能です。
慰謝料を請求できるのは違法性が認められる場合に限る
民事裁判で面会交流の拒否による損害賠償・慰謝料請求事由が発生するのは、違法行為によって精神的負担を与えられたと証明できる場合のみです。
強い違法性が認められる例は次の通りです。
- 面会日時や時間、頻度、内容、連絡方法、引き渡し方法などが具体的に定まっているにもかかわらず、自分がそれらを破っている
- 面会交流を長期にわたって不当に拒否している、相手側の連絡に応じない、嘘の理由で面会交流に応じないなどの事情が立証される
慰謝料の相場は数十万円程度
面会交流拒否による損害賠償・慰謝料の裁判で命じられる支払額は、数十万円程度にとどめるケースが多いです。面会交流拒否における慰謝料請求の判例をご紹介します。
元妻と再婚相手が面会交流を拒み、調停で義務付けられた行為も怠ったため、慰謝料として元妻に70万円、再婚相手に元妻と連帯して30万円の支払いを命じられました(熊本地裁2016年12月27日)。
しかし悪質性によっては、面会交流拒否の事件でも総額100万円以上の金額の支払いとなる可能性があります。以下では、500万円の慰謝料が認められた事例を見ていきましょう。
別居の原因が被告の人格とわがままにもかかわらず、原告に責任転嫁し約4年間の面会交流拒否をしました。このケースでは子どもの福祉に反する特段の事情もないにもかかわらず、原告の親としての愛情に基づく自然な権利を妨害し続け、また歩み寄りも見せなかったとして慰謝料500万円の支払いを命じられています(静岡地裁1999年12月21日)。
慰謝料などを請求する場合は弁護士に相談しよう
面会交流拒否を理由とした損害賠償請求の民事訴訟を検討する場合は、面会交流調停と同じく離婚に強い弁護士への相談がおすすめです。
離婚分野に精通した弁護士なら、「本当に慰謝料を請求できる理由があるのか」「請求金額は妥当か」などを適切にアドバイスしてくれます。また、裁判になったら代理人として法的主張や交渉、手続きなどを進めてくれます。
民事裁判を本人訴訟で進めるのは、知識的にも労力的にも負担が大きく、裁判に負ける可能性も高いです。そのため、損害賠償請求の訴訟は弁護士の協力が必要不可欠と言えるでしょう。
まとめ
面会交流は親権を持たない親にとって子どもに会える機会であり、子どもにとっても健やかな成長のために必要な大切な権利です。正当な理由なく面会交流を拒否することは認められておらず、拒否を続ければ間接強制や損害賠償請求などの法的措置に移行する可能性があります。
それでも面会拒否を継続するときは、「子どもにとって不利益になる」「非監護親に問題があり会わせるのが危険」という正当な理由とその根拠を示しましょう。それでも決着がつかないときは、面会交流調停・審判にて裁判所に判断を求めましょう
面会交流調停・審判や損害賠償請求などの法的措置になったときは、専門家である弁護士に相談し対応してもらうのがよいでしょう。弁護士を選ぶときは、面会交流関係の実績や離婚問題への強みを持つ事務所がおすすめです。
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