離婚問題に強い弁護士を探すならツナグ離婚弁護士

面会交流とは?条件の決め方や注意点について解説

面会交流とは?条件の決め方や注意点について解説

離婚協議中に面会交流の話がでてきて、「面会交流って何をするの?」と、戸惑う人がいます。

面会交流は、離婚相手と子どもが交流を持つことです。

離婚後も、元夫(または元妻)が子どもと交流を持つことに、不安を感じる人もいます。

相手の不倫やモラハラで離婚に至った人は、面会交流に否定的な感情を抱くかもしれません。

しかし、面会交流には法的根拠があり、面会交流権として認められています。正当な理由なく拒否すると、最悪、親権者変更になる恐れもあります。

個人的な感情に任せた面会交流の拒否は、得策ではありません。

面会交流を受け入れた上で、面会交流に関して、具体性のある取り決めをする必要があります。面会交流の条件を、きっちり固めておくことで、相手の好き勝手な行動を抑止できるからです。

この記事では、面会交流の取り決め方のコツや、面会交流で失敗しないための注意点を解説しています。面会交流に対する不安を取りのぞきたい方は、参考にしてみてください。

面会交流とは離婚後に子どもと離れて暮らす親が交流すること

面会交流は、子どもを(直接)育てていない親が、子どもと交流する機会を持つことです。

親権を持たず、子どもと離れて暮らす親でも、面会交流を通して子どもと触れあえるようになっています。

どちらかというと、離れて暮らす父が、子どもと面会交流するパターンが多いです。

面会交流には、子どもと直接会うのみならず、電話やメールでのやり取りも含まれます。面会交流が含む範囲は、思いのほか広いです。

以下の行為はすべて面会交流に含まれます。

  • 直接会う
  • 電話・メール・LINE・手紙でのやり取り
  • 学校行事への参加
  • 子どもに贈り物をする

面会交流が認められるのは、子どもの教育にとってよいと考えられるからです。

母と父、両方と交流を持つことで、子どもは両親からの愛を実感できます。片方の親としか会えないと、十分に愛されてないと感じ、子どもは自信をなくすかもしれません。

また、父と母、両方と触れることで、二人の大人から知識を学んだり、大人としての振る舞いを学んだりできます。お手本とする大人が二人いるほうが、バランスのよい成長が期待できます。

父と母の両方に会える状況は、子どもの成長にプラスをもたらす可能性が高いです。これが、面会交流が認められている理由です。

また、親権者(子育てをする親)にとっても、面会交流のメリットはあります。

面会交流は、相手に養育費の支払いを促す作用があるからです。

離婚後に子どもと会う時間が長いほど、親としての自覚を持ち続けられます。

親としての自覚があると、おのずと、子どもの教育や進学先に興味を持つようになるでしょう。結果として、滞りのない養育費の支払いにつながります。

面会交流のメリット

メリット
子どもにとってのメリット ・父母両方からの愛情が、安心や自信につながる
・二人の大人から知識や考え方を学べる
親権者にとってのメリット ・養育費を払ってもらいやすくなる

面会交流の制度があるため、離婚後も元結婚相手と連絡を取る場面はあります。別れた相手とのやり取りに、うんざりする人もいるかもしれません。

しかし面会交流は、親のみならず、子どものための制度であり権利です。

子どもの利益のため、子どもの成長のために、面会交流の制度はあります。面会交流にネガティブな思考を持つ親もいますが、子どもにとってプラス材料がないか、あらためて確認してみましょう。

なお、面会交流は、通常、子どもが成人(18歳)に達するまで継続されます。

面会交流には法的な根拠がある

面会交流には法的な根拠があります。例外的な場合をのぞいて(詳細は後述)、面会交流は拒めません。

面会交流の根拠となる条文は、民法766条です。

民法766条では、面会交流の決め方について触れられています。

父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
引用元 Wikibooks

このように、面会交流は法的にも認められています。

実際、離婚届には、面会交流に関して「未決 or 既決」を選ぶ項目も設けられています。

もっとも、面会交流が子どもの利益につながらない場合、例外的に制限あるいは拒否も可能です。

条文にも「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と、明記されています。

このように、面会交流には、法的根拠があります。相手が面会交流を望んできた場合、基本的には、拒否するのは難しいです。

どうしても面会交流の制限または拒否を望む場合は、例外事由に該当(後述)するか、検討してみましょう。

面会交流を決める際の流れ

面会交流は、夫婦の話し合いで進めるのが基本です。

話し合いが上手くいかない場合は、調停または審判で、面会交流の内容が決まります。

監護者(ほとんどの場合で親権者が該当)によっては、元夫(または元妻)と子どもを会わせたくないと思う人もいるでしょう。

面会交流の内容云々ではなく、面会交流そのものを拒否する監護者もいます。

面会交流の拒否を調停や審判で主張することもできますが、その場合、面会交流妥当性の判断のため、試験的面会交流の機会が設けられる可能性があります。

  • 「協議 ⇒ 調停 ⇒ 審判」の順
  • 調停・審判では試験的面会交流実施の可能性あり

面会交流は協議・調停・審判で決める

面会交流の内容は、夫婦間の話し合いで決まります。

ただし話し合いが上手くいかない場合もあるでしょう。その場合は、調停での解決を試みて、それでも解決できないときは、最終的に審判で決します。

  1. 夫婦で協議
  2. 調停での解決
  3. 審判(裁判所が決定)

離婚時に夫婦間での話し合いで決める

面会交流の内容は、通常、夫婦で話し合って決めます。

話し合うタイミングは、いつでも構いませんが、離婚時に話し合う夫婦が多いです。

人にもよりますが、面会交流の話し合いは、あまり楽しいものではありません。相手の不倫やモラハラが原因で離婚する場合、夫婦二人での話し合いは、とくに苦痛に感じるでしょう。

面会交流の話し合いを後回しにすると、離婚後も、相手と付き合わなければならなくなります。また、面会交流の設定が遅れると、子どもが両方の親と会えない期間が長くなり、子どもの成長にとってもマイナスです。

したがって面会交流の話し合いは、離婚時にすませておくのをおすすめします。

なお、面会交流の内容に合意する際は、書面に残すのを忘れないようにしましょう。公正証書で作成しておくと、より強力な証拠書面になります。

話し合いで決まらなければ調停を申し立てる

面会交流の内容について、夫婦の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停申し立てをすることになります(面会交流調停)。

調停は、裁判官や調停委員を交えての話し合いです。

頻度や方法など面会交流の内容について、第三者を交え協議し、お互い納得できる形での解決を目指します。

調停でも決まらない場合は審判手続きに移行する

調停でも折り合いがつかなかった場合は、審判(面会交流審判)に移行します。

審判に移った場合、当事者の主張や証拠をもとに、裁判所が面会交流の内容を決めます。

面会交流の内容をどうするか、あるいは面会交流そのものを認めるべきか否かは、すべて裁判所の判断に委ねられるのです。

調停・審判では調査官調査と試行的面会交流が行われる場合も

面会交流における裁判手続きでは、試験的面会交流が実施される場合があります。

試験的面会交流は、試験的に面会交流を行ってみる方法です。

試験的面会交流は、監護者が面会交流そのものを拒否している場合に、実施されるケースが多いです。

面会交流の拒否を監護者が主張する場合、面会交流の必要性・妥当性を判断するため、裁判所は試験的面会交流の結果をみて判断することがあるのです。

試験的面会交流は、家庭裁判所調査官が調査結果をまとめ報告する形で、調停や審判の判断の材料とされます。

試験的面会交流のポイントは、次の通りです。

  • 家庭裁判所調査官立ち会いのもと実施
  • 実施場所は家庭裁判所内の一室
  • 家庭裁判所調査官の報告内容が審理に影響

調査官調査は面会交流時に子どもや監護者に与える影響を調べる

家庭裁判所調査官は、心理学や教育学に精通した、裁判所の職員です。

調査官は試験的面会交流の様子をチェックし、心理学等の観点から、面会交流が子どもや監護者に与える影響を考察します。

また、必要に応じて、子どもや父母と面談を実施します。

試験的面会交流では、家庭裁判所調査官が主要な役割を果たします。

家庭裁判所調査官の調査結果が、裁判官の心理に影響を与えるからです。

試行的面会交流はテスト的に実施される面会交流

試験的面会交流は、テスト的に実施される面会交流です。

試験的面会交流は、屋外ではなく、家庭裁判所内に備えられた児童室で行われます。

室内には、おもちゃやぬいぐるみが用意されており、面会交流を希望する親も、マジックミラー越しに、相手が子どもとどう触れ合うかを観察できます。

試験的面会交流は、家庭裁判所調査官立ち会いのもとで実施される点が、特徴的です。

調査官が、親子のやり取りを観察・記録し、結果をまとめ報告します。

報告内容は、調停や審判を進める上での、参考材料とされます。

面会交流の条件の決め方

面会交流の条件は、できるだけ具体的にしておくべきです。

曖昧な条件にしておくと、解釈の食い違いが起こりやすくなるからです。

また曖昧な条件を設定すると、いつでも簡単に変更できるため、相手の都合に振り回される恐れもあります。今日は都合が悪くなったから来週にしてほしい、のようなことが続くと、こちらも疲れてしまいます。

解釈の食い違いによるトラブルを防ぐためにも、相手の都合に振り回されないようにするためにも、面会交流の条件は具体的に設定しましょう。

<面会交流の取り決め事項(サンプル)>

項目 条件(なるべく具体的に)
面会の頻度 月に〇回
夏休み・冬休みの期間は月に〇回
面会時間 候補①(基本)~時から~まで
候補②(代案)~時から~まで *代案を2~3つ用意
候補③(代案)~時から~まで
子どもの引き渡し場所 引き渡し:〇〇広場に〇時
引き受け:〇〇駅に〇時
面会内容 宿泊:可 or 不可
旅行:国内に限る or 海外O.K
子どもとの連絡 電話は週〇回まで(〇時~〇時までの間)
LINEは週〇回まで(〇時~〇時までの間)
学校行事への参加・見学 情業参観:参加可 or 参加不可
入学式:参加可 or 参加不可
運動会:参加可 or 参加不可
プレゼント・贈り物 年に〇回まで
金額は1回につき〇円まで
交通費負担 夫負担 or 妻負担 or 折半
旅行の場合は~負担とする
(非監護者の)
祖父母との面会
可 or 不可
(可の場合)年〇回まで、面会場所は~とする
取り決め内容の変更 子どもが〇歳になったら変更の協議をする

面会交流の条件は、具体的であるのが望ましいです。

ただし条件を固定しすぎると、緊急時に対応できなくなり、実効性に欠ける取り決めになります。それゆえ条件を設定する際は、具体的にしつつも、柔軟性を持たせる工夫が求められます。

たとえば、特定の条件につき2〜3つの候補を用意すると、条件に柔軟性が生まれます。

基本「午前10時から〜午後1時までとする」を面会時間としつつ、代替として「午後3時~午後6時でも可」とするなど、基本+代替案を1〜2つつくっておくと、柔軟に対応できるのではないでしょうか。

条件に柔軟性を持たせる工夫は、親のみならず、子どもにとっても必要です。幼い子どもは体調を崩しやすく、当日になって、面会に行けなくなることも多々あるからです。

また、子どもには体調変化のほか、年齢による変化も激しいです。成長とともに趣味や交友関係、生活サイクルなど、様々な要素が変化していきます。

子どもの年齢が上がるにつれて、いずれ、面会交流の条件も設定し直す必要がでてきます。

したがって、「〇歳になったら条件を見直す話し合いをする」などの、条件変更に関する事項も設けておくのが、柔軟性の観点からは望ましいです。

面会交流条件の見直しは、別れた夫(または妻)との話し合いがともなうので、ストレスを感じるかもしれません。

しかし、面会交流は、子どものために用意された制度です。子どもにとって都合のよい内容に改善されるよう、定期的に見直されるべきです。取り決め条件の固定は、子どもの成長にとって、望ましくありません。

以上、面会交流の条件を決めるときは、具体性と柔軟性を意識しましょう。

取り決めの注意点をまとめると、以下の通りになります。

  • 子どもにとって都合のよい内容にする
  • 条件はできるだけ具体的に決めておく
  • 条件には柔軟性も持たせる
  • 子どもの成長に合わせて見直す機会を設ける
  • 取り決め内容は書面にして残す

面会交流は基本的に拒否できない

面会交流は、拒否できないのが原則です。

面会交流は、法律で認められた権利だからです(民法766条)。

面会交流は親のみならず、子どもの権利でもあります。面会交流を通して離れてくらす親とも触れ、健全に成長する過程が、子どもに与えられるべきです。

例外はあるものの、面会交流の拒否はできないのが基本です。子どもの利益にならないことが明らかでない限り、面会交流の機会はもうけなければなりません。

少なくとも、親の個人的な感情や都合による拒否は、認められません。

たとえば、次に挙げるものは、面会拒否の理由にならない可能性が高いです。

  • 夫が嫌い
  • 再婚相手の男性と仲良くさせたい
  • 相手の浮気やモラハラが原因で離婚
  • 夫が養育費を支払わない

浮気やモラハラで離婚に至った場合、元結婚相手に嫌悪感を抱くのも無理ないです。しかし、そういった個人的な感情は、面会拒否の理由にはなりません。夫婦間のトラブルは、子どもには直接関係なく、面会交流とは別の話だからです。

もっとも、父母のいがみ合いがひどいと、子どもの健全な成長に害を及ぼす恐れもあります。子どもの成長を損なうレベルにまで至った場合、夫婦間の事情も、面会交流拒否・制限の理由になりえるでしょう。

しかしその場合でも、子どもの成長にとってどうかが、あくまでも判断の基準です。親の個人的な事情のみで、面会拒否が受け入れられることはありません。

モラハラや浮気をした相手と子どもを会わせることに対して、抵抗を持つのは仕方がないです。

しかし離婚事由がもっぱら相手にあったとしても、子どもの利益につながる以上、面会交流は拒否できないのです。

面会交流を拒否できるケース

面会交流は拒否できないのが原則です。

しかし例外的に、面会交流の拒否が認められるケースもあります。

具体例としては、次の内容が考えられます。

  • 子どもへの虐待・暴力
  • 子どもを連れ去る危険がある
  • 子どもに違法行為を促す
  • 子どもにお金をせびる
  • 子どもの予定を無視(学校を休ませる等)
  • 子どもの強い拒否

上記の通り、面会交流を拒否できるのは、子どもの成長にマイナス影響を与える場合です。

拒否理由としてよく使われるのは、子どもからの拒否です。

ただし、単に子どもが拒否の表示をしているのみでは足りません。表面上、拒否していたとしても、実際は、大人の顔色をみて拒否しているだけの場合もあります。

子どもが、(離れて暮らす)父と会いたくないと口にしていても、母親に気をつかっているだけかもしれません。内心では、父親と会いたいと願っている子どももいます。

子どもの拒否については、慎重な判断が必要です。子どもが面会交流に消極的な言動を示した場合は、その裏にある背景や感情を読み取る姿勢が求められます。

もっとも、ある程度の年齢の子(中学3年生〜高校生)が、面会交流を拒否をした場合は、本心である可能性が、幼い子に比べて高いです。15歳以上ともなると、自己の判断で意思表示できる能力が備わっているからです。

それゆえ高い年齢の子が示す拒絶は、強い拒否に該当する可能性が高く、面会交流の拒否や制限が認められやすいでしょう。

いずれにせよ、拒否事由に共通するのは、子どもの利益を損なう場合です。

拒否を希望するのであれば、面会交流が子どもの利益に反するかどうかの検討が必要です。拒否事由に該当することが明らかなら、調停や裁判で主張できるよう、証拠を残しておきましょう。

面会交流を一方的に拒否した場合のリスク

正当な理由もなく、面会交流を一方的に拒否し続けると、相手が法的手段で対抗してくる可能性があります。

一般的に、面会交流拒否に対して、取られる手段は4つあります。

拒否に対して取られる手段 内容
履行勧告 裁判所から履行を促す書類が届く
間接強制 不履行1回あたり5~10万円の支払いを命じられる
損害賠償 精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求される
親権者変更 親権者の変更を命じられる

面会交流の機会を持つことは、親にとっても、子どもにとっても、権利として認められています。

面会交流を拒否すれば、権利侵害として法的手段を取ることもできます。

とくに注意したいのは、親権者変更です。

その他の手段は、強制力がなかったり、お金の支払いが必要になったりするだけで、人によってはデメリットが少ないと感じるかもしれません。

しかし、親権者の変更が認められてしまうと、子どもと暮らせなくなります。

安易な面会交流の拒否はリスクが高いです。面会交流の拒否を主張するなら、正当な理由と、それを示す証拠が必要です。

履行勧告を受ける可能性がある

面会交流を拒否すると、裁判所から履行勧告される可能性があります。

履行とは、約束を守ることを意味します。つまり履行勧告とは、約束を守るように注意を促す行為です。

面会交流を拒んだ場合、面会交流の機会が実現されるよう、相手が家庭裁判所に申し立てる可能性があります。

裁判所が、相手の申し立てを認めると、履行勧告がされます。

履行勧告がされると、面会交流を拒否する親に対し、面会交流を促す書類が裁判所から届きます。

履行勧告に強制力はなく、守らないからといって、罰則等が課されるわけではないです。しかし人によっては、裁判所から届く書類に、圧力やストレスを感じるかもしれません。

また、履行勧告に応じないと、相手方がより強力な手段を取ってくる可能性もあります。

間接強制を受ける場合もある

履行勧告に応じない場合、相手は、間接強制の手段を取ってくる可能性があります。

間接強制は、制裁金を課すことで、間接的に義務の履行を促す方法です。

間接強制も、相手が裁判所に申し立てることで、実行されます。

間接強制が実行されると、不履行1回あたり5万〜10万円程度の支払いを、裁判所から命じられます。

損害賠償請求をしてくる可能性がある

面会交流を拒否することで、相手が損害賠償を請求してくる可能性があります。

子どもと面会交流の機会を持つことは、法的根拠のある権利です。

正当な理由のない面会交流拒否は、相手の権利侵害に該当し、不法行為として損害賠償の対象になります(民法709条)。

取り決めたルールを守らない、個人的な感情を理由に拒否するなど、拒否の態様が悪質の場合、相手の損害賠償請求が認められるかもしれません。

なお、損害賠償で払うお金は、間接強制の制裁金とは別です。

賠償が命じられたあと、面会に応じたとしても、損害賠償の支払いは免除されません。

親権者を変更されてしまう

面会交流を拒否し続けた場合、最後に待っているのは、親権者の変更です。

頑なに面会交流の拒否を継続すると、親権者交代を、相手が申し立てる可能性があります。

民法は、親権者の途中変更を認めています(民法819条6項)。

子の利益にとって望ましいと判断した場合、家庭裁判所は、親権者を変更できるのです。

面会交流は、子どもの権利でもあります。

正当な理由のない面会交流拒否は権利侵害に該当し、子どもの利益のためには親権者の変更が望ましいと判断される恐れがあります。

面会交流に否定的な態度を示すよう、子どもを誘導した母親の行為が、親権者変更につながった判例も実際にあるのです。

正当理由のない面会交流拒否は、最悪、親権者交代を招きます。

親権者変更が認められてしまうと、子どもと暮らせなくなります。

面会交流拒否事由に該当する事実がない限り、面会交流には協力するほうが無難です。

もし面会交流拒否に値するだけの理由があるのなら、面会交流調停を申し立てて、面会交流の可否について、再検討を促したほうがよいです。また調停を申し立てる際は、面会交流の拒否事由に該当することの、証拠を用意しましょう。

面会交流における親権者側の心構えと注意点

面会交流における親権者(≒監護者)側の心構えと注意点を確認しましょう。

面会交流で意識すべき点は、次の通りです。

  • 子どもの都合・利益を優先
  • 離婚原因と面会交流は切り離して考える
  • 元夫婦ではなく父母の立場で取り組む
  • ルール(父母で決めた条件)を守る
  • 面会交流に対してポジティブな発言・態度を示す
  • 子どもの状況を相手に伝える
  • 元夫の悪口は言わない

まずは、面会交流が子どもの権利である点を確認しましょう。

面会交流においては、どんな場面でも子どもの都合・成長を重視するよう務めなければなりません。機械的にこなすのではなく、面会交流が楽しくなる工夫も必要です。

離婚原因と面会交流は割り切って考える

離婚原因と面会交流は切り離して考えましょう。

相手の浮気やモラハラで離婚に至った人にとって、この割り切りは難しいかもしれません。

なるべくなら相手とかかわりたくないでしょうし、相手と子どもを会わせたくないとも思う人もいるでしょう。

面会交流に対して、後ろ向きになる気持ちも理解できます。

しかし、面会交流は子どもの権利である点を忘れてはいけません。

相手が不倫した事実と、子どもの成長には、直接は関係ありません。不倫した夫であっても、子どもがなつく場合はありますし、父親から学べることもあるでしょう。

面会交流が子どもの成長にとってプラスをもたらす可能性がある以上、ある程度、割り切って受け入れる必要があります。

元夫、元妻の関係ではなく、あくまでも父母の立場で向き合う姿勢が、面会交流では求められます。

なるべく面会交流直前にキャンセルしない

面会交流直前のキャンセルは控えましょう。

面会交流の突然のキャンセルは、子どもをがっかりさせることにつながります。

もちろん、子どもが病気したなど、子どもの都合でキャンセルせざるを得なくなる場面もあります。幼い子どもは、とくに体調を崩しやすいため、ある程度のキャンセルは避けられません。

取り決め内容に振替日を設定しておくなど、アクシデントに対応できる体制を、整えておきましょう。

面会交流に対して前向きに捉える

面会交流に対しては、前向きに取り組むようにしましょう。

面会交流が楽しくなる努力や工夫も、親には求められます。

子どもが面会交流に行く際は、笑顔で送り出す、笑顔で迎えるなど、ポジティブな姿勢を示しましょう。親がポジティブな姿勢を示すと、子どもも自然と、面会交流に対して前向きになれます。

また、子どもの近況を相手に知らせる気づかいも、面会交流を成功させるためには有効です。子どもがハマっている遊びや、学校での出来事、友人関係など、情報提供することで、子どもと相手との会話は弾みやすくなります。

面会交流は機械的に行えばよいものではなく、楽しくするための工夫も必要です。面会交流の成功は、子どもの成長にとってプラスになります。

逆に、面会交流にネガティブな印象を抱かせる言動は、親として控えるべきです。

父親の悪口をいう、父親の悪い部分を吹き込むなど、子どもが離れて暮らす親に対してマイナスの印象を抱くような言動は、日頃から控えましょう。

父親に対して母親が良くない印象を持っているのが伝わると、子どもの心も不安定になります。面会交流で父親に会いに行くことに、罪悪感やストレスを感じるようになるかもしれません。

面会交流をポジティブなものにしようとする努力や心構えも、親権者には求められます。

非協力的な態度でいると、子どもは面会交流に対してどう向き合えばよいか分からなくなり、健全な成長を阻害される恐れがあります。面会交流が原因で、父母双方が子どもから嫌悪される可能性もあります。

まとめ

面会交流は、子どもと離れて暮らす親(親権を持たない親)が、子どもと交流を持つことです。

面会交流の機会を持つのは、法的根拠のある権利で、拒否できないのが原則です。拒否できるのは、虐待や連れ去りの恐れがあるなど、例外的な場合に限ります。

解釈の食い違いによるトラブルを避けるためにも、面会交流に関する取り決めは、できる限り具体的に定めましょう。具体的に定めつつも、代案を用意するなどして柔軟性を持たせるのが、上手な取り決めをするコツです。

また、面会交流は機械的にこなすだけでは不十分です。

面会交流に対してポジティブな態度を示したり、面会する相手に対して、子どもに関する情報提供をしたりと、子どもが面会交流を楽しめる環境を整える工夫も求められます。

不倫やモラハラなど、相手の不遜が原因で離婚に至った人は、面会交流に非協力的になりがちです。

しかし、正当な理由なく面会交流の拒否を続けると、相手側が、間接強制や損害賠償の手段を取る可能性もあります。最悪、親権者変更になる恐れもあります。

リスク回避のためにも、子どもの成長のためにも、個人的な感情はわきに置いて、面会交流に対して前向きに取り組みましょう。