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【原因別】離婚時に請求できる慰謝料の相場とは?高額請求のポイントや事例も解説

離婚 慰謝料 相場
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

離婚慰謝料とは、相手の不法行為や言動が原因で離婚する際に被った精神的・身体的苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。離婚を考えている場合、配偶者に慰謝料を請求できるのか、請求できるならどれくらいの金額になるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。

離婚の慰謝料請求が可能な場合、離婚の原因別の慰謝料相場は以下の通りです。

離婚原因 内容 慰謝料相場
不貞行為 配偶者が別の人と肉体関係を結んだ場合 100~500万円
DVやモラハラ 配偶者から暴行や暴言を受けていた場合 50~500万円
悪意の遺棄 配偶者から勝手に別居されたり、生活費を渡されなかったりした場合 50~300万円
セックスレス 正当な理由なく一方的に性行為を拒否され続けた場合 ~200万円

上記の金額はあくまでも相場であるため、婚姻期間の長さや子どもの有無、離婚原因の悪質性などによっては慰謝料の金額が変動します。

本記事では、配偶者が原因で離婚を考えている場合の慰謝料の相場や請求額が決まるポイント、請求できないケースについて詳しく解説していきます。

DVやモラハラで離婚する場合のように、相手に主導権を握られている関係性だと、相手が有利な条件で離婚できるように言いくるめられてしまうケースも少なくありません。

そのため、慰謝料を不当に低い金額に設定されたり支払ってもらえなかったりする可能性があります。弁護士に依頼すれば、相手に有利な状況で離婚されるのを防いでくれるほか、夫婦間で話し合う際にも同席してくれます。

夫婦のみだと話し合いに応じてくれなくても、第三者が入ることで冷静に話し合える可能性が高いです。また、DVやモラハラなどの危害を加えられる心配があったり直接顔を合わせたくなかったりする場合は代理で話し合いをしてもらえます。慰謝料や離婚条件など、有利な状況で進めるためにも弁護士に相談するのがおすすめです。

離婚慰謝料とは?請求できる2種類の慰謝料

離婚慰謝料とは、配偶者の行為により精神的苦痛を負い、離婚に至った場合に請求可能な賠償金のことです。

離婚慰謝料は、離婚の要因となる行為を行った配偶者から、精神的苦痛を負った配偶者に支払われます。

離婚原因がこちらにあるケースや、責任の所在がはっきりしないケースでは請求はできません。なお、離婚慰謝料には以下の2つがあります。

  • 離婚原因慰謝料
  • 離婚自体慰謝料

離婚に関する慰謝料には上記の種類があるものの、裁判ではそれぞれを区別せずに、一括して「慰謝料」として認定されるケースが多い傾向にあります。それぞれの内容を見ていきましょう。

離婚原因慰謝料

離婚原因慰謝料とは、やDV、モラハラ、悪意の遺棄、セックスレスなど、離婚に至る原因となる配偶者の行為によって負った精神的苦痛に対する賠償金です。

片方の配偶者のみが不法行為を行った場合は、その配偶者に対して慰謝料を請求し、不貞行為の場合、有責配偶者と不倫相手に請求します。

離婚自体慰謝料

離婚自体慰謝料とは、離婚で配偶者という地位を失った場合に生じる精神的苦痛に対して発生する賠償金です。

配偶者に対してのみ請求できる慰謝料のため、不倫が原因であっても不倫相手には請求できない点が離婚原因慰謝料とは異なります。

離婚の際に慰謝料請求できる条件

離婚の際に慰謝料請求できる条件としては、下記の4つが挙げられます。

  • 相手からの不法行為があった
  • 夫婦関係を続けられなくなった責任が自分にない
  • 相手が離婚の原因である証拠がある
  • 離婚後3年の慰謝料の時効以内に請求した

ここからは、上記の条件についてそれぞれ詳しく解説していきます。

相手からの不法行為があった

不法行為とは、故意や過失により相手に損害を与える行為を指しています。離婚の際は、相手による不法行為により損害を受けたことを認められれば慰謝料請求が可能です。不法行為には、以下の離婚理由が当てはまります。

  • DVやモラハラ
  • 不貞行為
  • 病気やケガなどの正当な理由がないのに、仕事や家事、育児などを一切しない(悪意の遺棄
  • 不妊や性交不能であることを隠して結婚した

DV(ドメスティックバイオレンス)とは、配偶者や恋人などの親密な関係にある人から振るわれる暴力全般のことです。

  • 身体的DV(殴る・蹴るなど相手にケガを負わせるような暴力行為)
  • 精神的DV(大声で怒鳴る、無視する、物にあたるなど、相手の心を傷つける言動や恐怖心で支配する行為)
  • 経済的DV(十分な生活費を渡さない、浪費や借金を繰り返すなど、相手を経済的に追い詰める行為)
  • 性的DV(性行為や中絶の強要、避妊に非協力的な行為など)

上記のように、肉体的な暴力だけでなく精神的な暴力もDVに該当します。また、不貞行為やモラハラ、悪意の遺棄により精神的な苦痛を与えられた場合も、不法行為と見なされるため慰謝料の請求が可能です。

悪意の遺棄とは、夫婦での共同生活や協力して生活する義務を理由もなく拒否することです。上記の理由のほかに、同意なく家出や別居をされた場合も悪意の遺棄に該当します。さらに、相手に不妊や性行不能であることを隠して結婚した場合も不法行為とみなされるため、慰謝料請求が認められる可能性は高いです。

不法行為に該当しない理由で離婚する場合も、以下のように相手の行為により損害を受けた場合は慰謝料を請求できます。

  • 相手の犯罪行為により、多大な迷惑をかけられた
  • 過度の飲酒、ギャンブルでの浪費癖がある
  • 相手の親族から身体的・精神的な暴力を受けていた
  • 性交渉ができる状態にもかかわらず理由もなく拒否され続けた

相手の行為により経済的に苦しくなるなど生活に支障をきたしたり、精神的な病を発症したりした場合は損害が認められるため、不法行為でなくても慰謝料の請求が可能です。ただし、家賃やローンの支払いなど夫婦の生活のために借金をしていた場合は不法行為に該当しません。

また、相手の親族から暴力を受けていた場合は相手に対してではなく、暴力をふるった相手の親族本人に対して慰謝料を請求します。離婚慰謝料とは異なり、複雑な手続きが必要になる可能性があるため、弁護士に相談するのがおすすめです。

夫婦関係を続けられなくなった責任が自分にない

離婚慰謝料を請求できるのは、あくまでも相手の行動のみが原因であり、損害を受けたことを証明する必要があります。

そのため、下記のように自分にも原因がある場合は慰謝料の請求は認められない可能性が高いです。

  • 相手の許可や正当な理由もなく家出・別居を繰り返した
  • 自分も不倫していた
  • 家事や育児を全く手伝っていなかった
  • DVやモラハラに該当する言動をしていた

相手の不法行為を証明する証拠があっても、相手からも自分の不法行為に関する訴えがあった場合は双方に離婚原因があるとみなされるため、離婚慰謝料の請求は難しいでしょう。

ただし、家出に関しては相手のDVやモラハラから逃れるためなど、正当な理由があれば不法行為には該当しません。そのため、事前にDVやモラハラなどの証拠を集めてから家出や別居をするのがおすすめです。

相手が離婚の原因である証拠がある

前述の通り、慰謝料を請求するためには相手に離婚の原因があり、かつ自分に損害が発生していることを立証する証拠が必要がです。

決定的な証拠があれば相手も言い逃れできず、慰謝料請求にも応じやすくなります。話し合いで相手が慰謝料請求に応じず裁判に発展した場合でも、自分の主張を裏付ける決定的な証拠を提出すれば、裁判所が慰謝料の請求を認めてくれる可能性が高いです。

では、具体的にはどのような証拠が必要になるのでしょうか。離婚の原因別の証拠は以下の通りです。

離婚の原因となる要因 慰謝料請求に必要な証拠の一例
不貞行為 ・不倫相手と性交渉があったと判断できるメールやチャット、SNSでのやりとり
・ラブホテルの領収書
・写真(ラブホテルへの出入り、密会写真)
・クレジットカードの利用明細書
・配偶者や不倫相手が不貞を自白している書面、音声、動画
DV・モラハラ ・暴言や暴力を録音した音声
・暴言や暴力を録画した動画
・配偶者の暴力によってけがをした際の写真、診断書
・暴力によって壊されたものの写真
・警察や公的機関へ相談した記録
・暴力や暴言の内容と日付を記載した日記 など
悪意の遺棄 ・配偶者が生活費を支払ってないことが分かる通帳や家計簿
・配偶者の源泉徴収票や給与明細
・家出を通知する手紙やメール、留守番電話
・悪意に遺棄について記した日記 など
その他 ・セックスレスの場合は性交渉を拒まれた日の日記や話し合いの記録

離婚慰謝料を受け取るには、不法行為や相手に原因があったことだけでなく、その行為によって精神的・肉体的苦痛や損害を与えられたことまでを証明する必要があります。そのため、不倫現場の写真やDV・モラハラの音声だけでなく、病院の診断書や当時の日記など受けた損害がわかる証拠を準備しておきましょう。

ただし、スマートフォンの写真や動画、音声、メールなどのデジタルデータは改ざんが可能なため、証拠能力が低く評価されるケースがあります。

そのため、証拠となる画像やテキストが表示されたパソコンやスマートフォンの画面を、別のスマートフォンやカメラなどで撮影するのがおすすめです。また、探偵による調査報告書も有効な証拠として提出できるため、証拠を集めるためだけであれば探偵に依頼してもよいでしょう。

ただし、証拠を集める場合は、配偶者のスマートフォンやパソコンに不正にアクセスしてはいけません。違法に証拠を集めたと判断された場合、裁判において証拠として認められないケースがあるため、気を付けましょう。

離婚後3年の慰謝料の時効以内に請求した

慰謝料の請求は離婚時ではなく離婚が成立した後も可能ですが、時効がある点に注意しなければなりません。

慰謝料請求の時効は、原則として離婚が成立した日から3年です。ただし、離婚後に配偶者の不貞行為を知った場合は、離婚が成立した日からではなく、不貞行為の事実を知った日から3年で時効となります。

なお、離婚が成立した日(不貞行為の事実を知った日)から3年経過した後でも、慰謝料を請求された側が時効を援用しない限り、時効は完成しません。

時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者が、書面や口頭で相手に時効の成立を主張することです。時効期間を過ぎても、時効の援用がされなければ慰謝料請求が可能です。

【原因別】離婚慰謝料の一般的な相場

まずは離婚時の慰謝料の相場を紹介します。原因ごとの相場は以下の通りです。

離婚原因 内容 慰謝料相場
不貞行為 配偶者が別の人と肉体関係を結んだ場合 100~500万円
DVやモラハラ 配偶者から暴行や暴言を受けていた場合 50~500万円
悪意の遺棄 配偶者から勝手に別居されたり、生活費を渡されなかったりした場合 50~300万円
セックスレス 正当な理由なく一方的に性行為を拒否され続けた場合 ~200万円

それぞれ詳しく見ていきましょう。

不貞行為があった場合【100~500万円】

配偶者による不貞行為で離婚するケースでは、慰謝料の相場は100~500万円程度です。

婚姻期間や不貞行為が行われた時期や回数、関係があった期間や相手に妊娠・出産が伴うなど、悪質性が高いと金額が相場以上になることもあります。

異性との肉体関係はもちろん、異性とラブホテルに入って数時間を過ごしたり風俗店に常習的に通ったりするケースも不貞行為になる場合があります。配偶者の不貞行為が原因で離婚する場合は、配偶者と不倫相手に対して慰謝料を請求可能です。

ただし、「不倫相手とメールで親密なやり取りをしていた」「不倫相手と手を繋いでデートをしていた」「不倫相手とキスをしていた」というだけでは不貞行為に該当しないため、基本的には慰謝料は請求できません。

DVやモラハラがあった場合【50~500万円】

配偶者によるDVやモラハラ(モラルハラスメント)で離婚するケースでは、50~500万円程度が相場になります。

いずれも客観的な証拠が確保され、被害を受けた期間が長い場合は慰謝料が高額になるケースもあります。たとえば、週の半分ほど1回につき数時間暴行を受けていた場合、継続的なDVとして高い悪質性が認められるため、慰謝料を請求できる可能性は高まります。

ただし、一度の喧嘩で平手打ちを一回されたがそれ以降はないなど、継続的な暴行でない場合はDVとはみなされません。そのため、長期にわたって継続的にDVやモラハラを受けたことが証明できるよう証拠を集めましょう。

悪意の遺棄があった場合【50~300万円】

配偶者の悪意の遺棄で離婚するケースでは、50~300万円が相場となります。

悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦としての同居義務や協力義務、扶助義務を放棄する行為を指します。具体的には以下の行為が当てはまります。

  • 配偶者の了承なしに別居する
  • 家事や育児を全くしない
  • 生活費を支払わない
  • 趣味やギャンブルに生活費を使い込む

ただし、配偶者のDVやモラハラが原因で別居している場合は、相手が了承していなくても悪意の遺棄には該当しません。

DVやモラハラによる別居を検討している場合は、離婚裁判時に相手から悪意の遺棄で訴えられるのを防ぐためにも、前述にある証拠を押さえてから別居するのがおすすめです。

セックスレスがあった場合【数十万円~200万円】

セックスレスによる離婚のケースでは、数十万~200万円程度が相場となります。

セックスレスの定義は「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ないこと」です(日本性科学会、1994年)

セックスレスの状態が長期間に渡り、精神的な苦痛が生じた場合は法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することがあり、相手に対して慰謝料の請求が認められるケースがあります。

ただし、セックスレスには不貞行為が関係する場合が多く、離婚の直接的な原因をすべて考慮した上で金額を設定するのが一般的です。

また、病気やケガなどで相手の要求に応えられなかったり、どちらも性行為を望んでいなかったりする場合は、慰謝料の請求が認められないことも頭に入れておきましょう。

慰謝料を請求できないケース

ここまで、離婚に際して相手に慰謝料を請求できるケースを紹介してきました。一方、以下のケースに該当する場合、慰謝料を請求できません。

  • 相手に責任がない場合
  • 自分に離婚の原因がある場合
  • 既に夫婦関係が破綻していた場合
  • 相手が離婚原因である証拠がない場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相手に責任がない場合

慰謝料を請求できない具体的なケースの1つ目は、相手に責任がない場合です。

  • 性格の不一致のみが原因で離婚する場合
  • 健康上の問題で離婚する場合
  • 義両親や親族との不仲で離婚する場合
  • 配偶者との信仰上の対立が原因で離婚する場合
  • 配偶者の借金のみが離婚の理由である場合

1つ1つ見ていきましょう。

性格の不一致のみが原因で離婚する場合

配偶者との性格の不一致によって離婚になる場合は、慰謝料を請求できません。

慰謝料を請求できるほどの精神的・肉体的な苦痛が生じたとは考えにくいほか、夫婦どちらか一方に原因があるとは言い切れないためです。

ただし、性格の不一致が原因で別の離婚事由が発生している場合は、慰謝料請求ができる可能性があります。

たとえば、性格の不一致から夫婦関係がぎくしゃくし、その後不倫やDVなどが発生した場合は慰謝料の請求が可能です。

健康上の問題で離婚する場合

配偶者に健康上の問題があって離婚する場合も、慰謝料請求はできません。この場合、配偶者に責任があるわけではないからです。

健康上の問題のうち、強度な精神病にかかり回復の見込みがない場合は法定離婚事由にあたるため、離婚の原因にはなり得ます。ただし、一般的には相手への慰謝料請求は認められません。

また、回復の見込みがある病であれば法定離婚事由に当てはまらないため、裁判に発展した場合は離婚自体が認められないことも頭に入れておきましょう。

義両親や親族との不仲で離婚する場合

義両親や配偶者の親族との不仲が原因で離婚する場合も、不法行為や違法行為をしているわけではないため基本的には慰謝料請求はできません。

ただし、義両親や親族からの仕打ちや嫌がらせなどに悪質性が認められる場合、名誉棄損による損害賠償請求ができる可能性があります。

その場合、配偶者ではなく原因となった義両親や親戚に対して損害賠償請求を行うため、離婚裁判とは別に訴訟を起こさなければなりません。

また、配偶者が不仲の状況を把握していながらも何ら解決しようとしなかった場合、配偶者に対しても慰謝料を請求できるケースもあります。

配偶者との信仰上の対立が原因で離婚する場合

配偶者と信仰上の対立が発生した場合は、基本的に慰謝料を請求できません。

日本では信仰の自由が認められているため、信仰の違いだけを離婚の理由にできないケースがほとんどです。そのため、

慰謝料請求だけではなく、離婚すらも認められないのが一般的です。

ただし、以下に該当する場合は法定離婚事由が認められ、慰謝料が発生する場合があります。

  • 配偶者による高額のお布施など行き過ぎた宗教活動によって夫婦関係が破綻した場合
  • 結婚してから信仰について初めて打ち明けたことで夫婦関係が破綻した場合

上記のように信仰の違いではなく、有責となる配偶者の行為がエスカレートすることが原因となった場合、離婚・慰謝料請求が認められることになります。

配偶者の借金のみが離婚の理由である場合

配偶者の借金のみが原因で離婚する場合も、慰謝料請求は認められにくいほか、離婚すらもできない可能性があります。

ただし、借金の問題が法定離婚事由の「婚姻を継続し難い事由」に該当する場合は、借金を理由にした離婚が認められやすいです。

たとえば、配偶者の借金のせいで借金取りの嫌がらせが続いていたり、借金をやめるよう伝えても配偶者が借金を繰り返したりしている場合などは、離婚が認められるケースがあります。

また、以下に該当する場合は慰謝料を請求できる場合があります。

  • ギャンブルのための借金を繰り返している
  • ギャンブルに使うために生活費に手を付け、家族の生活が困窮している
  • 自分が浪費したいために家族名義で借金をしている
  • 勝手に家族名義のクレジットカードを作成・使用して家族が損害を被っている
  • 借金に加えてDVをしている
  • 借金をして不倫相手に高額なプレゼントをしている

自分にも離婚の原因がある場合

離婚の原因を作り出したのが自分の場合、当然ながら慰謝料は請求できません。

離婚慰謝料は、離婚の原因となる行為を行った有責配偶者に対して、もう一方の配偶者が請求する性質であるためです。

また、夫婦でお互いが有責離婚事由にあたる行為を行っている場合、お互いに有責性があり、支払うべき慰謝料が相殺されると同等の状態と判断されるため慰謝料は発生しないケースが多いです。

たとえば、配偶者が不倫していて、自分も不倫している場合は、お互いに慰謝料が発生しない場合が多いでしょう。

既に夫婦関係が破綻していた場合

配偶者の不貞行為が発覚した場合でも、それ以前の夫婦関係が破綻していた場合は、慰謝料請求ができません。

不倫が不法行為となるのは、被害配偶者の結婚生活の平和という権利利益が害されるためですが、すでに夫婦関係が破綻している場合、守られるべき権利利益は存在しないと判断されるためです。

たとえば、長期間別居状態が続いており、離婚についての具体的な協議をしているような場合、夫婦関係が破綻していると判断される可能性が高いといえます。

夫婦関係が破綻しているかどうかは判断が難しいところですが、以下に該当している場合は破綻していると判断されるケースが多いといえます。

  • 配偶者からDVやモラハラを受けている
  • 長期間別居している場合
  • 家庭内別居が継続している場合
  • 夫婦間で関係性を修復しようとしている意思がない
  • 夫婦の関係がかなり悪化している(修復できない状態にある)
  • 性の不一致(長期間のセックスレスなど)

ただし、不貞行為を行った配偶者が、夫婦関係の破綻を主張して慰謝料の請求を拒む場合、慰謝料を請求する側・される側の両方が具体的な事実について主張・立証する必要があります。

証拠によって破綻関係を立証できない場合も多く、裁判所が破綻を認めるケースはそれほど多くないのが実情です。

いずれにせよ、弁護士に相談したり対応を依頼したりした方がいいでしょう。

相手が離婚原因である証拠がない場合

相手に不貞行為やDV、モラハラなどの離婚の原因があっても、その事実を証明できる決定的な証拠がなければ、慰謝料の請求は難しいです。

慰謝料は証拠がなくても請求は可能ですが、証拠がないと相手が離婚の原因となった事実を認めず、慰謝料請求に応じない可能性があるためです。

相手が慰謝料に応じなければ裁判で決着をつけることになりますが、裁判で慰謝料請求が認められるには、自分の主張を裏付ける客観的な証拠を提出する必要があります。

証拠がなく、相手に離婚原因があることを立証できなければ、裁判所も相手に非がなかったと判断せざるを得ないため、慰謝料請求が却下される可能性が高いです。

そのため、慰謝料を勝ち取るためには、相手に離婚の原因があることを証明できる証拠をできる限り多く集めておくことが重要です。

離婚を切り出した後だと、相手が証拠を隠滅したり証拠を掴まれないように不法行為を控えたりする可能性があるため、証拠集めは必ず離婚を切り出す前に行いましょう。

高額な慰謝料を獲得するために重要な証拠とは?

離婚する相手に対して相場以上の慰謝料を請求したい場合に大切になるのが証拠です。証拠によって相手の不法行為などが客観的に証明されれば、慰謝料は高くなる可能性があるためです。

では、具体的にはどのような証拠が必要になるのでしょうか。離婚の原因別の証拠は以下の通りです。

離婚の原因となる要因 慰謝料請求に必要な証拠の一例
不貞行為 ・不倫相手と性交渉があったと判断できるメールやチャット、SNSでのやりとり
・ラブホテルの領収書
・写真(ラブホテルへの出入り、密会写真)
・クレジットカードの利用明細書
・配偶者や不倫相手が不貞を自白している書面、音声、動画
DV・モラハラ ・暴言や暴力を録音した音声
・暴言や暴力を録画した動画
・配偶者の暴力によってけがをした際の写真、診断書
・暴力によって壊されたものの写真
・警察や公的機関へ相談した記録
・暴力や暴言の内容と日付を記載した日記 など
悪意の遺棄 ・配偶者が生活費を支払ってないことが分かる通帳や家計簿
・配偶者の源泉徴収票や給与明細
・家出を通知する手紙やメール、留守番電話
・悪意に遺棄について記した日記 など
その他 ・セックスレスの場合は性交渉を拒まれた日の日記や話し合いの記録

証拠によって有責配偶者の言動を証明したり、類推したりできれば、離婚協議や慰謝料請求には有利になります。

また、紙ではなくでも、スマートフォンの写真や動画、音声、メールなどでも証拠になり得ますが、デジタルデータは改ざんが可能なため、証拠能力が低く評価されるケースがあります。

そのため、証拠となる画像やテキストが表示されたパソコンやスマートフォンの画面を、別のスマートフォンやカメラなどで撮影することをおすすめします。

ただし、証拠を集める場合は、配偶者のスマートフォンやパソコンに不正にアクセスしてはいけません。

違法に証拠を集めたと判断された場合、裁判において証拠として認められないケースがあるため、気を付けましょう。

離婚慰謝料の金額が決まるポイント

慰謝料の金額の相場は冒頭で紹介した通りです。ただし、あくまでも相場であり、離婚時の状況などによって金額は変動します。

ここでは、離婚慰謝料の金額が決まるポイントについて解説します。具体的には以下の4つのポイントが慰謝料金額を決めるカギとなります。

  • 精神・身体的損害など 離婚の原因となった事柄の悪質性
  • 婚姻期間の長さ
  • 請求相手の支払い能力
  • 子どもの有無や人数
  • 請求側が専業主婦(主夫)の場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

精神・身体的損害など 離婚の原因となった事柄の悪質性

慰謝料金額が決まるポイントの1つが、不貞行為やDV、モラハラなど離婚の原因となった事柄の悪質性です。

離婚の原因を作った配偶者の行為の悪質性が高いほど、精神・身体的損害も大きいと判断されるため、慰謝料も高額になる傾向があります。

たとえば、有責配偶者の不倫が離婚の原因となる場合、以下のようなケースでは慰謝料の金額が高額になる可能性があります。

  • 不倫相手と関係を持った回数が多い
  • 不倫相手と肉体関係を持っていた期間が長い
  • 不倫相手が妊娠・出産していた
  • 不倫相手に貢いでいたため生活が困窮していた
  • 不倫をやめると約束したにもかかわらず、その後も不倫を続けていた
  • 配偶者の不倫によって精神的な病を発症した

不倫以外が原因の場合でも、悪質性が認められる場合は離婚慰謝料が高額になります。DVやモラハラが原因で離婚する場合は、下記のようなケースだと慰謝料が高額になる可能性が高いです。

  • DVやモラハラを受けた期間が長期にわたる
  • 暴力によって重傷や後遺症を負った
  • 暴力を受けた回数が多い
  • うつ病や不眠などの精神的な症状が出た

配偶者による違法行為の悪質性を立証するためには、その事実を裏付ける客観的な証拠が必要になるため、病院の診断書やDV・不貞行為などの証拠写真などを押さえておきましょう。

婚姻期間の長さ

婚姻期間の長さも、慰謝料の金額が決まるポイントの1つです。

婚姻期間が長いほど、精神的な苦痛が大きくなると判断されるため、離婚時の慰謝料は高くなる傾向にあります。

特に、婚姻期間が20年を超えるようなケースでは、高い慰謝料が認められるケースが多いです。たとえば不貞行為が原因で離婚する場合、慰謝料の相場は100~300万円程度ですが婚姻期間が20年を超えている場合は、相場よりも高額な金額が認められる可能性もあります。

また、不貞行為やDV、モラハラ、悪意の遺棄など、離婚の原因となる行為が長期間続いていた場合も、有責配偶者の悪質性が認められやすくなるため慰謝料の金額は高くなる傾向です

一方、婚姻期間が短い場合は慰謝料の金額は低くなりやすいです。ただし、有責配偶者の行為の悪質性が高いと判断される場合は、相場を超える慰謝料を請求できる場合があります。

請求相手の支払い能力

離婚時の慰謝料の金額は、請求する相手の支払い能力に影響される場合があります。

有責配偶者の年収が高い場合は慰謝料も高額になりやすく、年収が低い場合は慰謝料も低額になるケースが多くなります。

ただし、請求相手の年収は、あくまでも金額を決める要素の1つでしかありません。仮に有責配偶者の年収が低い場合でも、離婚原因の事柄の悪質性や婚姻期間などによって、相手の年収を超える金額を請求できる場合もあります。

子どもの有無や人数

夫婦間の子どもの有無や人数も、慰謝料の金額を決める要素となります。

子どもがいる夫婦といない夫婦を比較した場合、子どもがいる夫婦の方が、離婚慰謝料が高くなるのが一般的です。

理由として、未成熟児にとって自分の両親が離婚することは、生活や精神的に大きな悪影響を及ぼす可能性があると考えられるためです。

また、未成熟児の人数が多いほど、慰謝料の金額は高くなる傾向です。一方、子どもがいる場合でも、経済的に自立している場合や子どもが成人している場合は、慰謝料の増額要件にはならないケースもあります。

ただし、こちらも慰謝料金額を決める1つの要素であり、子どもの有無や人数だけで金額が決まるわけではないことを理解しておきましょう。

請求側が専業主婦(主夫)の場合

不貞行為やDV、悪意の遺棄といった不法行為の被害者が専業主婦(もしくは主夫)の場合も、慰謝料の金額が相場よりも高くなることがあります。

専業主婦(主夫)が離婚後の生活に収入的な不安を抱えている場合、その不安も精神的な損害として評価されるためです。

たとえば、婚姻生活が20年以上と長く、被害に遭った側の人が50代や60代となっている場合、離婚後に働くのが難しいケースがあります。このような場合は、相場よりも高い慰謝料が支払われるケースが多くなるのです。

一方、婚姻生活が短く被害者が20代といった場合には、離婚後に働くことが困難になることはないと判断されるため、相場通りの金額になるケースが多いでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、慰謝料金額はさまざまな要素を考慮して設定されるため、婚姻生活の長さや年齢が理由だけで金額が決まることはありません。

高額な慰謝料が認められた判例

裁判によって離婚慰謝料の金額が決められる場合、過去の判例や相場を基にするケースが多い傾向にあります。

しかし、過去には裁判によって高い慰謝料の請求が認められた事例があるため紹介します。

不貞行為と暴力による被害

夫の長年の浮気に悩まされてきた妻が、浮気をやめるよう配偶者に話したところ、夫が妻に暴力を振るった事件の判例です。

裁判では、婚姻期間が30年と長いことや、夫の不貞行為や妻に対する暴力による精神的苦痛が大きいと判断されました。

また、有形物の行使(物理的に攻撃を加えること)や夫からのDVも勘案され、総合的な慰謝料として夫にして1,000万円の支払いが命じられています。

不倫相手との子どもを出産し勝手に離婚届を提出

ある夫は不倫相手を妊娠させた上に出産させ、認知をしました。さらに、不倫相手と結婚するために配偶者である妻に内緒で離婚届を提出し、不倫相手との婚姻届を提出したという事件の判例です。

夫が勝手に離婚届を提出した事実を妻が知ったことで裁判に発展します。

裁判では夫婦で合意がない離婚が取り消され、夫と不倫相手との婚姻も取り消されます。また、夫の悪質性が認められ、夫に対して500万円の慰謝料支払いが命じられる結果となりました。

このケースでは、不倫相手との子を認知しており、戸籍にも記載されていることから、慰謝料を請求できる客観的な証拠が揃っている状況となっています。

なお、判決では夫には500万円の支払い命令が出ましたが、実際には妻に対して1,000万円の慰謝料を支払ったようです。

妻子への暴力と性行為の強要

次に、妻子への暴力や性行為の強要に対して慰謝料支払いが命じられたケースです。

夫は結婚当初から妻に対して暴力をにおわせる発言をしており、妻の体調や意思を無視して性行為を強要した他、応じない場合は暴力を振るっていました。

妻は自殺未遂を何度も繰り返しており、夫からのDVによってPTSDを発症します。しかし、その後も夫からの暴力は続き、子どもの前でも暴力や、子どもに対する暴力に発展していきます。

裁判では、婚姻期間が17年と長い他、精神疾患の発症による精神的苦痛が大きい他、子どもへの悪影響が計り知れないと判断され、夫に対して800万円の慰謝料、100万円の財産分与が命じられました。

参考:下級裁判所裁判例速報  平成12(タ)114  離婚等請求 平成13年11月5日  神戸地方裁判所|裁判所 - Courts in Japan

相場よりも高い慰謝料を請求できる2つの方法

相場以上の慰謝料を求める場合、以下の方法が有効です。

  • 話し合いで離婚に関する条件を決める
  • 支払い条件を分割にする

それぞれ詳しく解説します。

話し合いで離婚に関する条件を決める

高い慰謝料を請求したい場合は、話し合いで離婚に関する条件を決めましょう。

夫婦での話し合いによって離婚する場合、夫婦が同意すれば慰謝料の金額を自由に決められるからです。

離婚には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があります。どのような夫婦でも最初は離婚の協議から始まり、話がまとまらなければ調停や裁判へと発展していきます。

離婚について話し合う場合、両者が納得しさえすれば、相場に関係なく慰謝料について決められるため、相場以上の慰謝料を受け取れる可能性があるのです。

配偶者との話し合いだけで離婚と慰謝料支払いの合意を得られる自信がある場合は、協議離婚を目指してみるといいでしょう。

支払い条件を分割にする

相場以上の慰謝料を請求したい場合は、分割支払いを提案するのがおすすめです。

相手がまとまったお金を持ち合わせていない場合、分割支払いを提案する代わりに、慰謝料の総額を引き上げられる可能性があるためです。

まとまった支払いができない配偶者に対して、条件を有利に進められるよう、分割支払いという「譲歩」を交渉のカードとして持っておくことが大切です。

なお、協議で話がまとまらず、調停や裁判に発展した場合、過去の判例などを基にして慰謝料の金額が決められるケースがほとんどです。

相場以上慰謝料を求めるなら、裁判や調停以外での交渉によって、金額を決めましょう。

離婚はしない場合でも慰謝料請求は可能

配偶者の行動によって精神的苦痛を被ったものの離婚しない場合、慰謝料は請求できるのでしょうか。

結論からいうと、離婚しなくても配偶者に慰謝料を請求できる場合があります。

ここでは、離婚しない場合の慰謝料の相場や慰謝料に対する考え方、慰謝料を請求できないケースについて紹介します。

離婚しない場合は慰謝料の相場は低い【50~100万円】

配偶者による不法行為があった場合、離婚しなくても配偶者に対して慰謝料は請求できます。

不貞行為に対する慰謝料は、被害者の精神的苦痛に対するものであり、離婚とは関係ないからです。

この場合、慰謝料の相場は50万円から100万円程度となり、離婚する場合と比較して低くなります。離婚に至ったほうが、精神的苦痛が大きくなると判断されるためです。

ただし、具体的な金額は不貞行為の期間や回数、婚姻期間の長さなど、さまざまな要素によって異なり、場合によっては上記の相場よりも高くなるケースもあるでしょう。

慰謝料を支払っても意味がないという考え方もある

離婚を選択しない夫婦に対して、慰謝料の支払いに意味がないという考え方もあります。

夫婦で共に生活する場合、1つの銀行口座でお金を管理するのはよくあることです。このような状況で配偶者の不法行為が発覚し、問題を起こした側に対して慰謝料を支払う場合、結果的に将来の収入から支払うことになります。

ただし、将来の収入は夫婦にとっての共同財産となるため、夫婦間での慰謝料の受け渡し自体が非現実的とも考えられます。

そのため、不法行為があっても離婚しない場合、慰謝料を支払わないケースもあるのです。

一方、不貞行為があったケースでは、配偶者と不倫相手の共同不法行為にあたるため、不倫相手に慰謝料請求ができます。

なお、不法行為を行った配偶者に、婚前の預貯金(特有財産)がある場合、夫婦間でも慰謝料が支払われる場合があります。

不貞行為があった場合は不倫相手にも請求可能

離婚の原因が配偶者の不貞行為による場合、配偶者だけではなく、不倫相手にも慰謝料を請求できます。

不倫は法律で不貞行為と呼ばれており、不倫をした既婚者だけではなく不倫相手も責任(共同不法行為責任)を負うためです。

不倫相手に慰謝料を請求する場合は、内容証明郵便などで慰謝料を請求する意思表明と請求書を送付するのが一般的です。

その後、当事者間による協議を行い、双方が納得できれば合意書を作成して、慰謝料を支払ってもらいます。この場合も、合意書を公正証書にしておくと、のちのトラブルを回避できるでしょう。

協議では解決できない場合、損害賠償請求の裁判を起こして慰謝料請求について司法の判断をあおることになります。この場合、裁判は地方裁判所で行われます。

夫婦間での慰謝料請求と不倫相手への慰謝料請求では、手順や内容が異なる点に注意が必要です。

離婚慰謝料を請求する流れ

ここでは、離婚慰謝料を請求する流れについて解説します。大まかな手順は以下の通りです。

  1. 書面で請求する
  2. 協議において請求する
  3. 調停において請求する
  4. 裁判において請求する

それぞれ詳しく解説します。

書面で請求する

離婚慰謝料を請求する場合、まずは請求する意思があることを配偶者に対して伝える必要があります。その際、内容証明郵便を利用して書面で通知するのが一般的です。

内容証明郵便とは、郵便物の文書の内容や送付日、送付先、送付元、受取日などを記録・証明できる郵便物で、日本郵政が提供するサービスです。

内容証明郵便自体に法的な拘束力はありませんが、慰謝料請求の意思表示をしたことを証明できる他、送付する相手に対して心理的な圧迫効果を期待できます。

不倫の原因を作った配偶者などに対して、慰謝料請求の意思があることを明確に伝えましょう。

協議において請求する

書面で慰謝料請求の意思を表明した後は、夫婦間の協議によって慰謝料の請求や請求額について話し合います。

離婚や慰謝料などの夫婦間の問題について、本来は当事者間で協議して問題の解決を図るべきです。

配偶者との協議において、慰謝料請求や金額について合意できた場合は、条件を記載した示談書(離婚協議書)を作成します。作成した示談書を公正証書にすることで、交渉小屋離婚後のトラブルを避けられるでしょう。

公正証書とは、公証人が作成する公文書のことで、内容の証明や執行力があります。

たとえば、慰謝料の支払いについて条件や約束に違反した場合、公正証書があることで相手に強制的に支払ってもらえます。

調停において請求する

配偶者との協議では問題を解決できない場合、または配偶者が協議に応じない場合は、調停において慰謝料を請求します。

離婚や慰謝料について夫婦で話し合っても解決できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員会に仲介してもらって離婚問題について協議できます。

調停委員会とは、裁判官1名・調停委員2名(一般的には男女1名ずつ)の3名で構成され、お互いの主張を聴きながら協議を進めていったり、離婚条件を決定したりします。

離婚調停では、離婚や慰謝料の他、財産分与、年金分割、親権、養育費、面会交流、工員費用など、さまざまな事柄について話し合われます。

基本的には当事者の意思が尊重されるため、離婚条件もある程度自由に設定できるのが特徴です。

裁判において請求する

離婚調停が成立しない場合は、裁判で慰謝料を請求することになります。

離婚調停が成立しなかった場合、家庭裁判所に離婚裁判を申立てられます。

離婚裁判においては、夫婦間での事情や提出された証拠から、裁判所が離婚の可否や慰謝料の金額などについて判決を下します。

慰謝料請求が裁判にまで発展する場合は、弁護士に対応を依頼したほうがいいでしょう。

離婚慰謝料の請求を弁護士に依頼する4つのメリット

離婚慰謝料については通常夫婦間で話し合いますが、弁護士に対応を依頼することも可能です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 交渉・手続きを代行してもらえる
  • 離婚協議書を作成してもらえる
  • 調停や裁判になっても対応できる
  • ストレスや負担を軽減できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

交渉・手続きを代行してもらえる

離婚慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリットの1つが、交渉や手続きを代行してもらえるということです。

離婚慰謝料の請求や交渉は、相手方との交渉が必要になる他、調停や裁判になった場合にさまざまな手続きが発生するため、非常に手間がかかり負担となることがあります。

弁護士に対応を依頼すれば、代理人として代わりに相手方との交渉を任せられるため、時間や手間がかかりません。

また、夫婦間で協議する場合、相手に取り合ってもらえないケースがありますが、弁護士が交渉の代理人になることで、相手に本気であることが伝わり、真剣に受け止めるようになる効果も期待できます。

調停や裁判に必要な手続きも、慣れている弁護士が代行することでスムーズに進められるでしょう。

離婚協議書を作成してもらえる

離婚協議書を作成してもらえることも、弁護士に依頼するメリットです。

協議によって離婚の話がまとまった場合、離婚についての同意や慰謝料、養育費、財産分与、親権などについてまとめた離婚協議書を作成するのが一般的です。

弁護士に対応を依頼すれば、離婚や慰謝料の協議の代行だけではなく、離婚協議書の作成も依頼できます。

また、離婚協議書は正確な内容を記載する必要がありますが、弁護士は法的な観点から状況に応じた離婚協議書を作成してくれます。

協議の代行を依頼できる上に、協議した内容に応じて正確な離婚協議書を作成してもらい、公正証書にしてもらえば、離婚後に慰謝料支払いトラブルが発生するリスクを軽減できるでしょう。

調停や裁判になっても対応できる

慰謝料請求を弁護士に依頼することで、調停や裁判になったとしても対応しやすくなります。

離婚協議で話がまとまらなかった場合、離婚調停や離婚裁判に進むことになりますが、弁護士に対応を依頼している場合、手続きや弁護をそのまま依頼できます。

離婚調停や離婚裁判では、離婚の事情や慰謝料を請求する理由などを正確に説明する必要がありますが、調停や裁判に慣れていない人が多く、正しく対応するのは難しいでしょう。

弁護士は必要な内容や事柄について説明してくれる他、依頼者の発言についてフォローしてくれるため、こちらの主張や根拠を正確に伝えられるようになります。

慰謝料請求の段階で弁護士に依頼することも大切ですが、協議が長引きそうな場合や、調停・裁判に発展しそうな場合は、できるだけ早く弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

ストレスや負担を軽減できる

ストレスや精神的な負担を軽減できるのも、離婚慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリットです。

離婚する夫婦の中には、有責配偶者の顔を見たくない人がいます。また、DVで直接的な被害を被っている場合、有責配偶者に対して恐怖心を抱いているかもしれません。

弁護士に手続きや協議、対応を依頼すれば、自分が協議の場に出ずに済む他、プライベートの時間を犠牲にする必要もなくなるため、ストレスや負担を軽減できるようになるでしょう。

離婚慰謝料の請求にかかる弁護士費用の相場

離婚慰謝料の請求について弁護士に依頼するメリットを解説しましたが、実際に弁護に依頼する場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

離婚慰謝料の請求を依頼する場合の弁護士費用の相場は、受け取れた慰謝料の10%~20%となるのが一般的です。

ただし、これは慰謝料請求についてのみを考えた場合です。別に財産分与や養育費、親権などについても対応を依頼する場合は、項目ごとに費用が発生するため、上記の相場よりは高くなると考えておきましょう。

また、協議離婚について弁護士に依頼すると、弁護士費用が20万円~60万円程度に収まるのが一般的です。協議で話し合いがまとまらず、調停や裁判へと移行する場合、費用は増加します。

調停となる場合の弁護士費用の相場は、着手金と報酬を合計して60万円~80万円程度、裁判の場合は70万円~100万円程度となります。

離婚慰謝料の請求を弁護士に依頼した場合、以下の費用が発生します。

項目 内容 費用
相談料 弁護士に相談するときに発生する費用 5,000~10,000円程度/1時間
着手金 弁護士に依頼するときに支払う費用 11~33万円程度
成功報酬 離婚が成立したことに対して支払う費用 11~33万円程度
実費 交通費や切手代、印紙代など実際にかかった費用 交通費や出張費などのため、依頼状況による
日当 弁護士が出張するときに発生する費用 半日拘束:3万3000〜5万5000円程度
一日拘束:5万5000〜11万円程度

ここからは、費用の内訳についてそれぞれ解説していきます。

相談料

相談料とは、慰謝料請求について弁護士に相談する場合に発生する費用です。

個人での離婚相談の場合、1時間程度で5000円~10,000円程度になるのが一般的ですが、弁護士事務所にとっては初回相談が無料であったり、同じ件についての相談に限り複数回無料で相談できたりする場合があります。

着手金

着手金とは、弁護士に対応を依頼するタイミングで発生する費用です。案件に着手する際に発生する費用であるため、問題が解決したかしていないかに関わらず、返金されることはありません。

着手金相場の一例を挙げると、相手に請求する慰謝料の金額(=経済的利益)が300万円以下の請求となる場合はその8%程度、300万円を超えて3,000万円以下の場合は、その金額の5%に9万円程度を追加した金額となります。

上記の設定金額は、日弁連が定めていた旧報酬規程によるものですが、現在は弁護士報酬は自由化されており、弁護士事務所によって設定金額が異なるため、事前に必ず確認しましょう。

成功報酬

成功報酬とは、トラブルが解決に至った場合に弁護士に支払う報酬です。成功報酬は、依頼者が得た経済的利益(慰謝料や財産分与など)に対して一定割合の報酬を支払うケースや、事前に決められた金額を支払うケースなどがあります。

日弁連の旧報酬規程によれば、成功報酬は獲得した慰謝料の金額(=経済的利益)が300万円以下の場合はその金額の16%、300万円を超えて3,000万円以下の場合は、その金額の10%に18万円を追加した金額となります。

成功報酬に関しては、何をもって成功とするかを事前に定義しておくことが大切です。弁護士事務所によって報酬の計算方法や対応に違いがあるため、事前に確認しておきましょう。

実費

実費とは手続きなどで発生する手数料や印紙代、弁護士の出向が必要になった場合の交通費や宿泊費などの費用です。

弁護士事務所によって実費の設定金額が異なり、実際に支出した金額を全額請求される場合や、一律の金額を定めている場合があります。

日当

弁護士が事務所を離れて活動する場合は別途日当を支払う必要があります。弁護士費用の旧報酬規程では、半日の拘束で3万円~5万円、1日の拘束で5万円~10万円程度の日当が発生します。

ただし、電話やオンライン会議などで手続きを済ませることで、出張を避けるケースがある他、弁護士事務所によって費用が細かく決まっている場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。

離婚慰謝料に関する注意点

離婚慰謝料について知っておくべきポイントや注意点がいくつかあるため、紹介します。

  • 慰謝料の支払方法を決めておく
  • 慰謝料は二重取りできない
  • 慰謝料は非課税だが課税対象になることもある
  • 慰謝料を請求できないケースもある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

慰謝料の支払方法を決めておく

離婚慰謝料については、支払い方法を明確に決めておくことが重要です。

支払方法を決めていない場合、混乱が生じたり、支払いの約束を反故にされたりする恐れがあるためです。

請求した慰謝料をいつ受け取るのか、どのように受け取るのかといった条件は、離婚協議や調停のタイミングで決めるのが一般的です。

また支払条件がまとまれば、離婚協議書や調停調書といった書面に記載しておくことが重要になります。慰謝料の支払い方法については、以下の点について決めておきましょう。

  • 慰謝料が振り込まれる銀行口座
  • 支払日
  • 分割支払いの場合は初回支払日と最終支払日、毎月の支払いのタイミング

上記について明確に決めておくことで、支払い忘れや支払い漏れが分かりやすくなる他、支払いが行われなかった場合の請求が簡単になります。

なお、支払い遅れや支払いの拒否に対して対応できるように、以下についても決めておくことをおすすめします。

  • 分割支払いが遅れた場合には残金を一括請求できる
  • 約束の期日まで慰謝料が支払われなかった場合は損害遅延金を請求する

これらを決めておき、離婚協議書や調停調書に明記することで、実際に支払い遅れや支払い拒否が発生した場合でも、相手に対して正当に請求できるようになるでしょう。

慰謝料は二重取りできない

慰謝料は二重取りができない点にも注意が必要です。

慰謝料の二重取りとは、不貞行為の被害を受けた配偶者や、不倫した配偶者から慰謝料の全額を受け取りながら、不倫相手からも慰謝料を受けることをいいます。

たとえば、裁判によって不貞行為に対する慰謝料が200万円と決まった場合、被害配偶者は不貞配偶者と不倫相手にそれぞれ200万円を請求できます。

しかし、どちらか一方から慰謝料を受け取った場合、もう片方には受け取った慰謝料を控除した金額しか請求できないのです。

この場合、不貞配偶者から150万円を受け取っていれば、不倫相手には50万円しか請求できないことになります。

慰謝料の二重取りが発覚した場合、不貞配偶者や不倫相手から払いすぎた慰謝料を不当利益として返還するよう求められるケースがあるため注意が必要です。

ただし、以下に該当する場合、慰謝料の二重取りができるケースがあります。

  • 裁判外で慰謝料の金額や支払いについて三者の合意がなされた場合
  • 不貞行為以外の慰謝料が含まれている場合

裁判外での交渉において、不貞行為に対する慰謝料の上限額は決まっていません。そのため、被害配偶者と不貞配偶者、不倫相手の三者で協議が行われ、慰謝料の支払いや金額について合意された場合は、事実上慰謝料の二重取りが可能になります。

また、不貞行為が原因で慰謝料が発生する場合、不倫相手に支払い義務があるのは不貞行為に対する慰謝料のみです。

しかし、不貞配偶者が不貞行為以外に離婚原因を作っていた場合、すべての離婚原因に対して慰謝料を支払う必要があります。たとえば、不貞配偶者がDVと悪意の遺棄を行っていた場合、それぞれの慰謝料を支払わなければならないのです。

慰謝料はすべての離婚原因を考慮して決定します。離婚原因ごとの慰謝料に金額を分けられないため、被害を受けた配偶者も金額を把握できません。

その状況でも不倫相手には慰謝料請求が可能なため、不倫相手が支払う慰謝料と不貞配偶者が支払う慰謝料が一部重複するケースが発生し、事実上慰謝料の二重取りとなる可能性があります。

慰謝料は非課税だが課税対象になることもある

慰謝料は基本的に非課税ですが、状況によっては課税対象になりうる点には注意しましょう。

慰謝料は所得税法において非課税所得として規定されています。そのため、慰謝料に対して所得税が発生することはありません。これは財産分与や養育に関しても同じ扱いになります。

ただし、慰謝料の金額が社会通念上過大(多すぎる)と判断される場合、超過した金額分に対して贈与税が課せられる場合があります。

慰謝料がかなり高額になることが分かっているのであれば、事前に税理士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。

慰謝料を請求できないケースもある

慰謝料は財産分与と異なり、離婚の際に必ず請求できるものではありません。慰謝料請求が認められるのは、配偶者の一方的な有責行為によって精神的な苦痛を受けた場合に限られます。

下記のようなケースでは、基本的に慰謝料請求は認められません。

  • 性格・価値観の不一致
  • 宗教の違いによる対立
  • 相手の親族との不仲
  • 肉体関係を持たない不倫・浮気
  • 配偶者に有責行為が全くない
  • 夫婦双方が有責行為をしていた(例:夫がDV、妻が不倫をしていた)
  • 夫婦関係が破綻した後の不貞行為(長期間の別居・家庭内別居中の肉体関係のある不倫・浮気)

相手の不貞行為が原因で離婚する場合は、配偶者だけでなく不倫相手にも慰謝料を請求できます。ただし、下記のようなケースでは不倫相手への慰謝料請求が認められないので注意が必要です。

  • 相手が既婚者である事実を知らず、独身だと信じて肉体関係を持った場合
  • 不倫を立証する録音・録画の証言が、相手に脅されて証言したものであると判断された場合

慰謝料を請求できるケースであっても、離婚の原因となった相手の有責行為を裏付ける法的に有効な証拠がなければ、慰謝料請求が認められない可能性が高いです。

また先ほども説明した通り、慰謝料請求には時効があります。時効の成立日を迎え、相手が時効の成立を主張した後は慰謝料請求の権利が消滅するため、慰謝料請求が認められることはありません。

離婚慰謝料以外に相手に請求できるもの

離婚する際に発生するお金のやりとりは離婚慰謝料だけではありません。ここでは、離婚慰謝料以外に相手に請求できるものについて解説します。

請求できるものは以下の通りです。

  • 財産分与【共同財産を公平に分け合う】
  • 養育費【子どもが自立するまで支払う】
  • 年金分割【厚生年金を分け合う】
  • 退職金【婚姻期間中なら共有財産に】
  • 婚姻費用【婚姻生活維持のための生活費】

財産分与【共同財産を公平に分け合う】

離婚する際は配偶者に対して財産分与を請求できます。

財産分与とは、結婚後に夫婦が協力して築いた財産を、離婚する際に公平に分け合う制度です。

民法上で権利として設定されており、夫婦のどちらでも相手に対して財産分与を請求可能です。財産分与では、収入の差にかかわらず、公平に2分の1の財産を受け取れます。

財産分与の対象となる財産分与は以下のようなものです。

  • 不動産
  • 現金、預貯金
  • その他の経済的価値があるもの
  • 保険
  • 退職金
  • 年金

上記の財産について、不動産や自動車を自分が持つ代わりに相手に金銭の支払いをしたり、売却した利益や現物を分配したりして、財産分与を行います。

養育費【子どもが自立するまで支払う】

離婚する際は、親権を取得する側が相手に対して養育費を請求できます。

養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用のことをいいます。具体的には衣食住に必要な経費や医療費、教育費などが該当します。

原則的に養育費は分割払いになり、ひと月ごとの金額を決めて毎月支払いが行われるのが一般的です。

養育費は、両親の収入や子どもの年齢、人数を参考に決められます。なお、養育費の基準を裁判所がまとめた「養育費・婚姻費用算定表」があるので、養育費設定の参考に使用するのがおすすめです。

なお、離婚時に金額や支払い方法を決めていなくても、親権者は後から養育費を請求できます。

また、一旦養育費の金額を決めたとしても、就労状況や家庭環境が変化したり、何らかの事情が発生したりした場合、養育費の増額や減額を要求できます。

参考:養育費・婚姻費用算定表|裁判所

年金分割【厚生年金を分け合う】

離婚する際は年金分割も請求できます。

年金分割とは、婚姻期間中に納付した保険等に対応する年金を離婚時に分割することであり、分割された年金は将来的に自分の年金として受け取れます。

年金分割の対象となるのは厚生年金と共済年金の2種類のみで、国民年金や国民年金基金、確定給付企業年金は年金分割の対象外です。

また、対象となる期間は婚姻期間中のみとなります。対象の年金に加入してから現在までではないため注意しましょう。

なお、年金分割は自動的に行われるものではなく、相手に対して請求する必要があります。請求期限は離婚したときや婚姻の取り消しをしたときから2年以内です。

また、年金分割を行ったとしても、受け取れるのは自分の年金支給が開始されてからになります。すでに年金を受給している年齢の場合は、年金分割の請求があった日の翌月分から支給金額が変更されます。

退職金【婚姻期間中なら共有財産に】

離婚の際には、配偶者の退職金が財産分与の対象となることがあります。

退職金とは、退職する従業員や役員に対して企業から支払われる金銭です。

財産分与の対象となるのは、すでに支給済みの者もしくは将来10年以内に支払われる予定がある退職金です。

具体的には配偶者が働いていた期間と婚姻期間が重なる部分の金額のみとなり、婚姻前や離婚後に働いていた期間に対応した退職金は財産分与の対象外となります。

なお、分与される金額は婚姻期間に相当する金額の50%が目安となります。

年金分割と同じように、退職金の財産分与も相手に対して請求する必要があり、夫婦間での話し合いによって請求や支払いについて決められます。話し合いによって解決しない場合は、調停・裁判によって支払いの可否が決定されます。

なお、離婚した後でも2年以内であれば退職金の財産分与請求が可能です。

ただし、すでに支払い済みの退職金のうち、手元にお金が残っている場合は財産分与の対象となりますが、手元にお金が残っていない場合は財産分与の対象にはなりません。

そのため、退職金の使い込みを防ぐために仮差押えを行い、一時的に相手の財産を差し押さえて動かせないようにするケースもあります。

婚姻費用【婚姻生活維持のための生活費】

離婚の際には、婚姻費用を配偶者に請求可能なケースがあります。

婚姻費用とは家族が通常の社会生活を維持するために必要な費用(生活費)のことを指します。

民法において夫婦には扶助義務が定められており、婚姻費用を分担する必要があります。夫婦関係が悪化して別居した場合、家事や育児などの労働分担が難しくなるため、金銭的な分担が求められるのです。

そのため、収入が高い方の配偶者は、もう一方の配偶者に生活費を支払わなければなりません。

婚姻費用とは、以下の費用を指します。

  • 衣食住の費用
  • 子どもの生活費や教育費(子どもがいる場合)
  • 医療費、出産費
  • 冠婚葬祭費
  • 必要範囲の交際費、娯楽費など

婚姻費用を請求できるケースとして、夫婦間の関係悪化に伴い、別居を選択して生計が別々になった場合が挙げられます。また、同居中でも配偶者が生活費を支払わない家庭内別居のような場合も請求可能です。

一方、収入が少ない側の配偶者が有責配偶者の場合、婚姻費用の請求は認められません。

ただし、有責配偶者が子どもを連れて別居する場合、子どもの生活費については請求が認められるケースがあります。

まとめ

離婚する際に慰謝料が発生する場合、原因によって相場金額が異なります。

ただし、当事者間のみで協議して請求や金額に納得している場合や、離婚原因を作った配偶者の言動の悪質性が高い場合は、慰謝料の金額が相場よりも高くなることがあります。

また、慰謝料を請求できないケースもあるため、自分が離婚するときにどのような状況にあるのか、慰謝料を請求できるのか確認することが大切になるでしょう。

離婚や慰謝料については、基本的には夫婦間での協議で解決することになりますが、解決が見込めない場合は早めに弁護士に相談したり、対応を依頼したりすることを検討してください。

本記事を参考に、離婚慰謝料の相場や請求方法などを理解しておきましょう。

離婚時に請求できる慰謝料の相場についてのよくある質問

精神的・身体的苦痛による離婚の慰謝料の相場はいくらですか?

精神的・身体的苦痛による離婚の慰謝料の金額は、50~500万円が相場です。慰謝料の金額は、離婚の原因となった有責行為や悪質性、婚姻期間、子供の有無、離婚後のお互いの経済状態など、さまざまな要素によって変わってきます。

離婚後も慰謝料請求は可能ですか?

結論からいうと、離婚が成立した後でも請求は可能です。離婚後に請求する場合は、原則として離婚成立日から3年以内に請求する必要があります。

ただし、離婚後に元配偶者の不貞行為を初めて知った場合、慰謝料請求の時効は不貞行為の事実を知った日から3年となるため、離婚成立日から3年以上過ぎていても請求できます。

相手の年収が低いと慰謝料請求はできないですか?

離婚の原因となった相手の年収が低くても、慰謝料の請求は可能です。しかし、慰謝料は実際に回収できなければ意味がないため、相手の支払い能力を考慮して慰謝料の金額が相場よりも低くなる可能性があります。

また、慰謝料は一括払いが原則ですが、相手の年収が低く離婚後の経済状態が苦しい場合は、分割払いが認められるケースもあります。

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更新日 : 2024年10月09日
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